説明

炭酸ガス循環式石灰石焼成炉

【課題】石灰石を焼成する際に、石灰石焼成炉から排出される大量の石灰石分解による炭酸ガスを高純度で回収でき、液化炭酸ガスとしての利用や地中固定化処理を可能にする炭酸ガス循環式石灰石焼成炉を提供する。
【解決手段】石灰石分解により発生した炭酸ガスを炭酸ガス循環ファン106を使って循環させ、電熱ヒーター107あるいはラジアントチューブヒーターにて循環炭酸ガスを燃焼ガスの混入なく焼成温度まで昇温することで石灰石焼成に必要な温度と熱量を確保して石灰石の焼成を行う。この時発生した高純度の炭酸ガス4は焼成炉出口配管より抽気して貯蔵し処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
石灰工場においては石灰石焼成時に大量の炭酸ガスが大気中に放出され地球温暖化への悪影響が懸念されており、これを防止するために炭酸ガスを回収する技術開発が進められている。石灰石焼成により排出される炭酸ガスを高濃度で回収するために、焼成燃料としてコークスを使用し、酸素で燃焼させることにより炭酸ガスを回収する方法、あるいは石灰石を間接的に加熱して炭酸ガスを回収する方法が提案されている。
【背景技術】
【0002】
石灰石焼成時に発生する炭酸ガスを回収する方法として、石灰石中に一定割合で混入させたコークスを酸素で燃焼させれば、炭酸ガス以外のガスは発生しないため炉内から排出されるガスはコークスの燃焼による炭酸ガスと石灰石の分解による炭酸ガスのみとなるが、石灰石とコークスを均一に混合し均一に燃焼させないと酸素の過不足が生じたり熱媒となるガス不足のために石灰石へ熱が均一に伝わらず石灰石に焼きむらが出来ることが避けられないという問題がある。
【0003】
また、間接加熱による石灰石焼成炉は石灰石に伝える熱量が伝熱面積に比例するため生産量も伝熱面積に比例することになるが、伝熱面積は炉体の表面積自体であるため構造上その伝熱面積には限界がある。従って、石灰石焼成炉1基当りの生産量はせいぜい1日当り数トンであり数百トンの実用規模にスケールアップが難しく数量を増やして対応することとなりスケールメリットが少なく経済性に難点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
石灰石を焼成するためには少なくとも石灰石を850℃以上に加熱し、石灰石の分解熱に相当する熱量を石灰石に与える必要があり、その熱量を与える高温ガスを得るための燃料としては容易に燃焼し高温ガスを発生しやすい化石燃料を使用するのが一般的である。この燃料を燃焼させるのに空気を使用するため燃焼ガス中には空気中の窒素がのこり、燃焼で発生した炭酸ガスや水蒸気と石灰石分解により発生する炭酸ガスが混合し全排ガス中の炭酸ガス濃度は30%以下になり発生する炭酸ガスの有効利用が難しく1部を除いてほとんどが大気中に放出され地球温暖化の一因となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するための請求項1の発明は、石灰石焼成用熱媒として焼成時に発生した炭酸ガスを利用し、循環ガスファンを用いて循環させ電熱ヒーターあるいはラジアントチューブヒーターにて焼成に必要な温度まで当該炭酸ガスを加熱昇温することで、発生炭酸ガス以外のガスの混入をなくし発生炭酸ガスを高純度の炭酸ガスとして回収することを可能にする。
【0006】
請求項2の発明は、循環ガスは充填層の入口側と出口側とでは温度差が出来るため入口側に比べ出口側の石灰石は分解に時間がかかり生産効率が低下する傾向がありそれを防止するためにあらかじめ石灰石中にコークスを混入させておくとともに循環ガスの入口出口ともに仕切りを入れて上下に分け、焼成帯下部に流入する循環ガスにコークス燃焼に見合った量の酸素を注入することにより焼成帯下部において石灰石中のコークスを燃焼させて循環ガス温度の低下を防ぎ不足熱量を補うことで石灰石焼成を均一化させる。
【0007】
請求項3の発明は、焼成を完了した製品は900℃程度に加熱されておりそのまま搬送貯蔵することは出来ないため常温近くまで冷却する必要があるが、炭酸ガスで冷却すると製品が再炭酸化する恐れがあるため高温のまま定量排出器で製品を切り出し、炉内炭酸ガスが大気中に漏れ出さないようシール性のある排出弁を経由して排出した後、別置きの製品冷却器で冷却して取り扱いの容易な100℃以下にする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により純度の高い炭酸ガスを回収することが出来るため圧縮冷却して市販性があり付加価値の高い液化炭酸ガスとすることができるし、圧縮して地中に埋めたり海中に投棄することが可能となり地球温暖化防止対策の一助として期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の石灰石焼成炉に関する実施の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために説明するものであり、特に指定しない限り、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の炭酸ガス循環式石灰石焼成炉の構成機器と石灰石およびガスの全体の流れを示すもので表1には生産量を100T/Dとした時の石灰石焼成における各部の熱量、圧力および物量の収支を示す。石灰石焼成炉100の上部より石灰石分解熱量の20%に相当する量のコークスを混入した石灰石はシール性を有する供給器103を介して充填層に供給され電熱ヒーター107により1100℃に加熱された循環炭酸ガスにより上部焼成帯101でおよそ80%焼成されさらに降下して下部焼成帯102においてコークスの燃焼熱を得て焼成を完了させ製品として定量排出器104により排出されシール性のある排出バルブ105を経て炉外排出される。また石灰焼成炉出口の循環炭酸ガス中の発生炭酸ガスは充填層出口圧力がプラスマイナスゼロになるよう抽気配管中に設けられた圧力調整弁108にて制御されながら抽気され冷却貯蔵される。発生炭酸ガスを抽気した後の循環炭酸ガスは循環ガスファン106により昇圧された後電熱ヒーター107で昇温されて石灰石焼成炉100に流入し充填層を通過する間に石灰石を焼成する。
【0011】
表1は、図1に示された場所における物質、温度、圧力、流量、顕熱を示す。
【0012】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0013】
石灰石焼成時に大量に排出される炭酸ガスを高濃度回収することにより後処理が容易となり地球温暖化対策として有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】石灰炉全体構成機器とものの流れを示すフロー図である。
【符号の説明】
【0015】
100 石灰石焼成炉
101 上段焼成帯
102 下段焼成帯
103 供給バルブ
104 定量排出器
105 排出バルブ
106 循環ガスファン
107 電熱ヒーター
108 圧力調整弁



【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対する二層の格子煉瓦壁内に充填された石灰石充填層に炭酸ガスを通過させることにより石灰石を焼成する炭酸ガス循環式石灰石焼成炉において、石灰石の熱分解および石灰石の予熱により700℃乃至800℃まで温度の低下した石灰石焼成炉出口の炭酸ガスを炭酸ガス循環ファンを使用して循環させ電熱ヒーターあるいはラジアントチューブヒーターでガスが発生することなく石灰石焼成温度の1100℃程度まで昇温して石灰石充填層内を循環通過させ、石灰石の分解により新たに発生した分の炭酸ガスを炉出口配管より抽気して格子煉瓦出口の圧力が大気圧になるよう制御しながら高純度の炭酸ガスとして回収することを特徴とする請求項1記載の炭酸ガス循環式石灰石焼成炉。
【請求項2】
石灰石の分解に必要な熱量の10%乃至20%に相当する熱量を発熱できる量のコークスを石灰石の中に混入させることにより石灰石の分解が完結しない場合の熱量を補充させる石灰石焼成炉において、石灰焼成帯の炭酸ガス出入口空間部に仕切りを設けて上下に分け下段の循環炭酸ガスにのみコークス量に見合った酸素を導入し焼成帯下部にてコークスを燃焼させることを特徴する請求項1に記載の炭酸ガス循環式石灰石焼成炉
【請求項3】
焼成を完了した製品は高温のまま定量排出器で定量切り出し、炉内炭酸ガスと外気を遮断できる排出弁を経て炉外へ排出し、別置きの冷却器にて100℃以下に冷却して製品貯槽に貯蔵することを特徴とする請求項1に記載の炭酸ガス循環式石灰石焼成炉。







【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−161391(P2009−161391A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73(P2008−73)
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【出願人】(302070534)有限会社アイエンジ (12)
【出願人】(591051335)河合石灰工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】