説明

点灯装置、及びこれを用いた照明器具並びにバックライト装置

【課題】蛍光ランプなどを点灯させる点灯回路において、ランプの電流が少なく電圧が高い状態においてもランプを安定に点灯させ、安価で高効率な点灯装置を提供する。
【解決手段】インバータ回路の入力電流またはランプ電流に相当する電流が一定値となるようにインバータ回路の周波数設定信号Frqを制御するフィードバック制御器FB1と、前記インバータ回路の入力電圧または平滑回路の入力電圧を検知して前記インバータ回路のスイッチ素子のオン時間または開閉位相を設定するパルス幅信号Dty1を補正するフィードフォワード制御器FF1を併用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインバータ回路を用いてランプを点灯させる点灯装置、及びこれを用いた照明器具並びにバックライト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶表示装置などに用いられるバックライト装置では、一般的に冷陰極ランプなどの蛍光ランプを複数点灯させた光を用いて画像表示を行っている。この種の蛍光ランプの点灯回路にはインバータ回路が一般的に用いられる。インバータ回路で蛍光ランプを高周波点灯させることにより蛍光ランプの発光効率が向上し、また、トランスなどの電子部品の小型化が可能となっている。
【0003】
しかし、液晶表示装置においては、普及に伴い更なる機器の高効率化が求められており、液晶表示装置の大部分の電力を消費するバックライト装置の高効率化は重要な課題となっている。この要請に応えるために、点灯装置においては、ゼロ電圧スイッチング手法などでインバータ回路のスイッチングロスを低減したり、インバータ回路に入力する直流電源を高電圧化してトランスのロスを低減することが考案されている。
【0004】
しかしながら、液晶表示装置のバックライト装置において、点灯回路の電力変換の効率は、一般照明用の点灯回路に比べると低いものとなる。その理由は、一般照明用の点灯回路よりもさらにちらつきを抑えるための電源の安定化を必要とすることと、ノイズや安全性の観点から絶縁回路が必要だからである。
【0005】
ちらつきに関しては、液晶表示装置をテレビのように利用した場合は画像が随時更新されるので目立たないが、静止画の表示などを行った場合は、光源である蛍光ランプのちらつきがそのまま画面のちらつきとなって現れるので問題である。さらにちらつきが問題となりやすい理由としては、液晶表示パネルの画像更新周波数との干渉が挙げられる。これは、商用電源の周波数が50Hzか60Hzであるのに対し、画像更新周波数もそれと近い周波数(60Hz〜120Hz)であるため、光変動の周波数干渉が起こりやすいのである。
【0006】
たとえば、商用電源が50Hzである場合に、インバータ回路の入力の直流電圧に100Hzのリップル電圧が生じているとする。このリップル電圧を除去せずにインバータ回路でランプを点灯させると光に100Hzの周波数成分で変動が生じる。たとえば一般照明用のインバータ回路のリップル電圧の変動幅は、平均値の10%以下である。この光を直視しても、ちらつきはほとんど感じない。これは光変化の周波数が100Hzと高いからである。しかし液晶フィルタを通過した光では、ちらつきが発生する。つまり液晶フィルタで100Hzの光を画像更新周波数60Hzで変調すると、光には60Hzと100Hzの周波数成分の変動が混在し、その周波数差成分100Hz−60Hz=40Hzが生じてしまう。これがちらつきとして感じられるのである。個人差はあるが、光変動の周波数が50Hz以下になると、数%程度の変動があってもちらつきは感じることとなる。よって、リップル電圧10%のちらつきは周波数が40Hzともなると、大きいちらつきとなるのである。
【0007】
そこで、一般的な液晶表示装置では、商用電源に起因する直流電源のリップル電圧を除去する安定化電源回路を備えている。その回路損失が発生するため、光への変換効率が低下するのである。
【0008】
点灯回路の効率改善とちらつきの低減を両立する方法として考えられるのは、インバータ回路に電源リップル除去機能を付加するということである。たとえばランプ電流をフィードバック制御すればよい。フィードバック制御を行えばランプ電流は一定となり、リップル電圧による光の変動を除去できる。また、温度によるランプ特性の変化や近接導体によるランプ電圧変化などの様々な変動を除去することも可能である。
【0009】
もうひとつの手法として、フィードフォワード制御を行うことが考えられる。リップル電圧に応じてインバータ回路の出力を増減させれば、制御回路は非絶縁の1次側で構成することができ、制御回路の設計は容易である。また、リップル電圧は比較的安定に発生するのでフィードフォワード制御には適している。この放電灯点灯装置のフィードフォワード制御についても従来から様々な手法が提案されている。
【0010】
特許文献1(特開2002−330591号公報)には、インバータ回路の入力電圧を検知し、入力電圧の変動によるランプ電流変化を抑制するように、スイッチ素子の駆動周波数またはスイッチオン時間比を変化させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−330591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
液晶表示装置の光源に限らず、放電ランプを調光点灯させることは一般的となっている。調光により無駄なエネルギー消費も防止できるので、点灯装置の重要な機能となっている。蛍光ランプのような低圧アーク放電ランプを調光すると、ランプ電流に反比例してランプ電圧が上昇する。すなわちランプ電流を少なくするとランプ電圧が上昇する。そのため放電ランプを調光する点灯装置では、調光時にランプ電圧が上昇しても安定したランプ放電を維持するように設計する必要がある。
【0012】
蛍光ランプにおいては、LC共振回路を用いて周波数調光することが一般的である。主としてLC共振回路のインダクタのインピーダンス変化を利用してランプ電流を制御する方法である。調光時にはインバータ回路の動作周波数を高めてインダクタのインピーダンスを増加させる。その結果、ランプ電流は減少する。
【0013】
このように調光を行えば、ランプの電圧上昇に応じてインバータ回路の出力インピーダンスが増加するので、定電流特性を維持できる。この周波数調光にフィードバック制御を組み合わせることによりさらに広範囲な調光を行う技術もある。たとえば定電流フィードバック制御と周波数調光を併用すれば、調光を行いながらも電源変動やランプ特性変動を抑制する点灯が可能である。
【0014】
しかし、液晶表示装置などに用いられる冷陰極蛍光ランプは、一般的な照明で用いられる熱陰極蛍光ランプと比ベるとランプ電圧が高くなる。これは発光管が長く、発光管の内径が小さいためである。そしてこのようなランプの電流を増減する調光は難しくなる。すなわち、さまざまな調光条件においてインバータ回路の出力インピーダンスがランプの等価的なインピーダンスより十分大きな値とするように設計ができないのである。そのような状況においては、出力インピーダンスで定電流性が足りない分をフィードバック制御のゲインを増加させるなどの方策が採られている。
【0015】
ところが、フィードバック制御により発振周波数を変化させると、ランプ電流を安定な方向へ制御する反面、フィードバック制御が発振してしまうという問題がある。たとえば、インダクタによる定電流特性を利用したインバータ回路において、ランプ電流が少ないために周波数を下げて出力インピーダンスを下げることによりランプ電流を増加させるとき、出力インピーダンスの低下により定電流特性が悪化し、ランプ放電が不安定となり、ちらつきが発生するのである。
【0016】
そこで、フィードバック制御ではなく安易にフィードフォワード制御を用いれば、発振などの問題は解決できそうであるが、さまざまな調光状態における制御パラメータの設定が複雑となり、設計が困難である。よって現実的ではない。
【0017】
本発明は、このような従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、蛍光ランプなどを点灯させる点灯回路において、ランプの電流が少なく電圧が高い状態においてもランプを安定に点灯させ、安価で高効率な点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1の発明は、上記の課題を解決するために、図1に示すように、商用電源Vinを整流する整流器DBと、前記整流器DBの出力を平滑する少なくとも1つの平滑回路(力率改善回路PFC)と、前記平滑回路の出力を入力して高周波電圧を出力するスイッチ素子Q1,Q2を有するインバータ回路と、前記インバータ回路の出力と負荷であるランプLamp1の間に挿入されたインピーダンス素子(インダクタLr1)と、前記インバータ回路の駆動周波数を設定する周波数設定手段(周波数設定信号Frq)と、前記インバータ回路の入力電流またはランプ電流に相当する電流が一定値となるように前記周波数設定回路を制御するフィードバック回路(フィードバック制御器FB1)と、前記インバータ回路のスイッチ素子のオン時間または開閉位相を制御するパルス幅設定手段(パルス幅信号Dty1)と、前記インバータ回路の入力電圧または平滑回路の入力電圧を検知して前記インバータ回路の出力を補正する制御信号を前記パルス幅設定手段に与えるフィードフォワード回路(フィードフォワード制御器FF1)を備えることを特徴とするものである。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、図1に示すように、前記平滑回路(力率改善回路PFC)は出力電圧を略一定に制御する手段(出力電圧フィードバック回路CTR1)を備え、前記フィードフォワード回路(フィードフォワード制御器FF1)は、前記インバータ回路のスイッチオンデューティ比を30%〜50%の範囲で制御することを特徴とする。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記パルス幅設定手段は、図5に示すように、前記フィードフォワード回路(フィードフォワード制御器FF1)の出力に所定値Adj1〜Adj3を加算する調整手段(加算器ADD1〜ADD3)を備え、前記調整手段の出力によって前記インバータ回路のスイッチ素子を制御することを特徴とする。
【0021】
請求項4の発明は、請求項1または2の発明において、前記フィードフォワード回路は、図6、図7に示すように、前記パルス幅設定手段の設定値に応じて利得を増加させることを特徴とする。
【0022】
請求項5の発明は、請求項1〜4の発明において、前記フィードバック回路は低域通過フィルタを備え、図4に示すように、閉回路利得が商用電源の2倍の周波数以下で1となる点を有することを特徴とする。
【0023】
請求項6の発明は、請求項1〜5の発明において、図1に示すように、前記平滑回路(力率改善回路PFC)は、出力電圧VDCを検出する直流電圧検出器(抵抗Ra1とRa2の直列回路)を備え、前記フィードフォワード回路(フィードフォワード制御器FF1)は前記直流電圧検出器の出力を検知して前記インバータ回路の出力を補正することを特徴とする。
【0024】
請求項7の発明は、請求項1〜6の点灯装置を備えた照明器具である。
請求項8の発明は、請求項1〜6の点灯装置を備えたバックライト装置である(図8)。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、インバータ回路のスイッチ素子のオン時間または開閉位相を電源変動に応じてフィードフォワード制御すると共に、インバータ回路の発振周波数はランプ電流に応じてフィードバック制御するように構成したので、ランプの出力光のちらつきを低減できるとともに、電源の安定化が容易となり、回路効率の改善が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点を明確にすべく、以下添付した図面を参照しながら、本発明の実施の形態につき詳細に説明する。
【0027】
(実施形態1)
図1に本発明の実施形態1の点灯回路を示す。本点灯回路は、商用電源Vinを整流する整流回路DBと、その出力を昇圧して平滑する力率改善回路PFCを有する。力率改善回路PFCは、出力電圧フィードバック回路CTR1を備えている。すなわち、出力電圧VDCを抵抗Ra1とRa2の直列回路で分圧し、その電圧が所定の値となるようにスイッチ素子Q0のオン時間を制御する。この力率改善回路PFCは、インダクタL0、ダイオードD0、平滑コンデンサC0、スイッチ素子Q0よりなる周知の昇圧チョッパ回路である。スイッチ素子Q0は商用交流周波数よりも十分に高い周波数でオン・オフ制御され、平滑コンデンサC0には整流回路DBの出力電圧を昇圧した直流電圧VDCが充電される。
【0028】
力率改善回路PFCの出力電圧は、半導体スイッチ素子Q1,Q2とその駆動回路DRV、中間タップ付きトランスTr1からなるプッシュプル型インバータ回路に供給される。駆動回路DRVはパルス幅変調器PWM1の出力に応じて半導体スイッチ素子Q1,Q2を交互にON/OFFさせる。中間タップ付きトランスTr1の2次巻線出力間には、インダクタLr1と蛍光ランプLamp1の直列回路が接続される。また、蛍光ランプLamp1の端子間にはキャパシタCr1が接続されている。プッシュプルインバータ回路の高周波矩形波出力はインダクタLr1とキャパシタCr1の直列回路により波形整形され、蛍光ランプLamp1へ電力が供給される。
【0029】
本回路は、プッシュプル型インバータ回路の入力電流を一定に制御するフィードバック回路を備える。すなわち、インバータ回路の入力電流を電流検出回路DET1により検出し、その出力はフィードバック制御器FB1の比較値として入力される。また、フィードバック制御器FB1には調光器Dim1からの目標値信号Aimが入力されている。フィードバック制御器FB1は比較値が目標値Aimと一致するように周波数設定信号Frqをパルス幅変調器PWM1に送出する。フィードバック制御器FB1は例えば帰還インピーダンスとして積分回路を有するオペアンプなどで構成される。また、パルス幅変調器PWM1はスイッチングレギュレータ制御用IC(例えばTL494など)で構成され、周波数とパルス幅を制御可能となっている。
【0030】
また、力率改善回路PFCの抵抗Ra1,Ra2の分圧電圧を入力とし、電源変動を相殺するようにパルス幅変調器PWM1にパルス幅信号Dtyを与えるフィードフォワード制御器FF1を備えている。このように力率改善回路PFCの検出電圧(抵抗Ra1,Ra2の分圧電圧)をフィードフォワード制御器FF1の入力信号として共用することで電圧検出回路のコストを低減できる。また、電圧検出回路の消費電力も削減できる。
【0031】
本実施形態の動作状態を図2に示す。図2には、力率改善回路PFCの出力電圧VDCと、フィードフォワード制御器FF1の出力電圧であるパルス幅信号Dtyと、調光器Dim1の出力である目標値Aimと、フィードバック制御器FB1の制御出力である周波数設定信号Frqと、ランプ電流Ilaが示されている。
【0032】
力率改善回路PFCの出力電圧VDCは、図2のように周期的に電圧が変動する所謂リップル電圧を含んでいる。力率改善回路PFC内の平滑コンデンサC0の容量を大きくすればリップル電圧を小さく出来るが、リップル電圧をゼロとするのは力率改善回路の原理的に困難である。また、平滑コンデンサC0の劣化によりリップル電圧は変化する。このリップル電圧によってランプなど負荷回路の周期的な電力変化が発生して問題となる。したがって、別途DC−DCコンバータなどで電圧を安定化する必要があるが、DC−DCコンバータによる電力ロスが生じてしまう。
【0033】
そこで、本実施形態では、インバータ回路でリップル電圧分を出力補正する制御を行うのである。フィードフォワード制御器FF1により、力率改善回路PFCの出力電圧VDCが高いときにはインバータ回路の出力を少なくするように補正し、力率改善回路PFCの出力電圧VDCが低いときにはインバータ回路の出力を多くするように補正される。すなわち、力率改善回路PFCの出力電圧VDCが高いときは補正信号としてのパルス幅信号Dtyを低くし、力率改善回路PFCの出力電圧VDCが低いときは補正信号としてのパルス幅信号Dtyは高くする。パルス幅信号Dtyに比例してパルス幅変調器PWM1は半導体スイッチ素子Q1,Q2のスイッチング時間を増減させる。
【0034】
一般的な設計の力率改善回路では、直流電圧のリップル電圧成分は、直流平均電圧値の±5%程度で振れる。さらに直流電圧には、負荷変動や入力電圧、素子のばらつきの影響で±10%程度は変動が現れる。またさらにインバータ回路の半導体スイッチ素子Q1,Q2が同時にオンすることのないように、デューティ比3〜5%程度のデッドタイムが必要である。したがって、パルス幅変調器PWM1のスイッチオン時間は最大オンデューティ比を50%として、30%〜45%の範囲となるように設計すればよい。
【0035】
さらに、力率改善回路PFCの設計によっては、上記の直流電圧変化幅を少なくした設計は可能であり、その場合はスイッチオン時間の変化幅を小さく設計できるので、インバータ回路の電力変換効率を改善できる。
【0036】
調光器Dim1はランプ電流の目標値Aimをフィードバック制御器FB1に設定する。その目標値Aimに応じてフィードバック制御器FB1は周波数設定信号Frqを算出する。本実施形態では、インダクタLr1のインピーダンスを可変することでランプ電流を増減しているので、ランプ電流を少なくするときは周波数設定信号Frqを高くして、インバータ回路の動作周波数を高くし、ランプ電流を多くするときは周波数設定信号Frqを低くして、インバータ回路の動作周波数を低くする。
【0037】
その結果、図2のようにランプ電流Ilaは調光器Dim1の出力信号Aimに応じて増減する。また、フィードフォワード制御器FF1により動作周波数とは独立してスイッチング時間が電源リップルに応じて変更されるので、ランプのちらつきを低減することができる。
【0038】
本実施形態の回路では、フィードフォワード制御とフィードバック制御を組み合わせて最適な制御を実現することができる。以下、それぞれの制御の特徴を説明する。
【0039】
まず、フィードフォワード制御は、あらかじめ予測可能な外乱に対して適している。前述のとおり、力率改善回路PFCを用いたとしても直流電圧VDCにはリップル電圧が発生している。しかしリップル電圧は安定に発生する外乱とも言える。つまり、決まった周期でしかも安定した振幅で変動が発生しているのである。このようなあらかじめ予測可能な外乱に対してはフィードフォワード制御が適する。そこで、インバータ回路において電源電圧変動を相殺するように半導体スイッチ素子Q1,Q2のスイッチング時間をフィードフォワードで制御するのである。スイッチング時間をリップル電圧に応じて調整することで等価的に入力電圧を定電圧に近づけることが出来る。
【0040】
ここで、フィードフォワード制御の応答特性は、電源周波数の2倍の周波数付近で十分な応答となるように設計すれば、誤動作も防止できるので好都合である。たとえば商用電源の周波数が60Hzであれば120Hzのリップル電圧が発生するので、その120Hzに十分応答できればよい。
【0041】
一方、フィードバック制御はランプの温度特性やばらつき、経年変化を抑制するように動作する。これらの変動要素は予測が困難なため、フィードバック制御が適する。本実施形態では、入力電流が一定となるように、ランプ電流の増減をフィードバック制御して、ランプに供給する電力を一定に制御するのである。
【0042】
このように本実施形態では、フィードフォワード制御とフィードバック制御をそれぞれ異なる入力信号と出力信号で独立して制御を行うことにより、最終的にはランプへの供給電力を一定に制御するのである。つまり、スイッチオン時間は電源変動による影響を抑制する制御系を構成し、スイッチング周波数はランプ出力を補正する制御系を構成することで、インバータ回路の出力インピーダンスが安定に設定制御される。よって、ランプの等価的なインピーダンスが高い調光状態においてもランプ安定点灯が可能となる。また、絶縁回路が容易に構成できるのでインバータ回路だけで絶縁とリップル電圧のレギュレーションが可能となり、本発明の目的である高効率とちらつきの抑制が安価に両立できる。
【0043】
なお、本実施形態ではインバータ回路の構成として、プッシュプル型を例示したが、ハーフブリッジ型やフルブルッジ型でも同様な制御が可能である。特にフルブリッジ型では、スイッチングの位相制御により電力制御を行えるので、スイッチ素子の利用効率を高くすることができ、また、ハーフブリッジ型に比べるとトランスの1次電圧を高くでき、トランスの利用効率も高く出来るので、回路の小型化に有効である。
【0044】
本実施形態では放電ランプの点灯回路を例示したが、インバータ回路の周波数を可変して負荷光源への電力量を調整する場合でも同様の効果を得ることが出来る。負荷光源としては、LEDなどの正の負荷特性を持つものにも応用できる。
【0045】
本実施形態を用いれば、商用電源に起因する光変動を抑制し、高効率にランプに電力を供給することの出来る点灯装置を安価に提供できる。
【0046】
(実施形態2)
図3に本発明の実施形態2の点灯回路を示す。本点灯回路は、商用電源Vinを整流する整流回路DBと、その出力を昇圧して平滑する力率改善回路PFCを有する。力率改善回路PFCは、出力電圧フィードバック回路CTR1を備えている。力率改善回路PFCの出力電圧VDCは、半導体スイッチ素子Q1,Q2とその駆動回路DRV11、中間タップ付きトランスTr1からなるプッシュプル型インバータ回路に供給される。
【0047】
駆動回路DRV11は内部に絶縁構造を有し、絶縁された1次側に結線されたパルス幅変調器PWM11の出力に応じて半導体スイッチ素子Q1とQ2を交互にON/OFFさせる。中間タップ付きトランスTr1の2次巻線の出力間には、インダクタLr1と蛍光ランプLamp1の直列回路が接続されている。プッシュプル型のインバータ回路の高周波矩形出力はインダクタLr1を介して、蛍光ランプLamp1ヘ供給される。
【0048】
また、ランプ電流を一定に制御するフィードバック回路を備えている。すなわち、ランプLamp1に流れる電流を電流検出回路DET1で検知し、その検出信号をフィードバック制御器FB1の比較値として入力する。そしてフィードバック制御器FB1には調光器Dim1からの目標値信号Aimが入力されている。フィードバック制御器FB1は、比較値が目標値Aimと一致するように、周波数設定信号Frqをパルス幅変調器PWM11に送出する。
【0049】
また、力率改善回路PFCのチョークトランスL1の2次巻線電圧を入力とし、ランプ電流が一定となるようにパルス幅変調器PWM11にパルス幅信号Dty1を与えるフィードフォワード制御器FF1を備えている。チョークトランスL1には力率改善回路PFCの入力電圧に応じた電圧が発生しているので、リップル電圧の変動を検知でき、これをフィードフォワード制御に利用できる。なお、絶縁部を示す破線は、これを境として電源側と負荷側が絶縁されていることを示しており、各トランスのコアは独立である。
【0050】
本実施形態では、フィードバック制御の設計に関して説明する。前述のとおり、フィードバック制御は、ランプの温度特性やばらつき、経年変化を抑制するように動作する。これらの変動要素は予測が困難なため、フィードバック制御が適している。しかし、フィードフォワード制御とフィードバック制御が同時に行われると、点灯制御は不安定な状態となることがある。その結果としてランプがちらつく問題がある。
【0051】
この問題を解決するためにフィードバック制御の応答性を適切に設定する。本実施形態において、フィードバック制御はランプの温度特性やばらつき、経年変化を抑制する制御であるから、制御の応答速度は比較的遅く設計しても問題はない。そこで、フィードフォワード制御が主体的に動作する周波数領域において、フィードバック制御は応答しないように設計すればよい。すなわち、フィードバックループ内に低域通過フィルタを備え、商用電源周波数の2倍の帯域においてフィードバックゲインが1(0dB)となるようにフィードバック回路を設計する。
【0052】
図4は設計の一例を示す説明図であり、フィードフォワード制御とフィードバック制御の周波数に対する利得の変化が示されている。図より、フィードフォワード制御は周波数fc1を極として、利得を低減する特性であり、フィードバック制御は周波数fc2を極として利得を低減する特性となっていることが分かる。そして、周波数fc1においてフィードバック制御の利得は1(0dB)となっている。
【0053】
ここで、周波数fc1は商用電源周波数の2倍に設定される。すなわち、商用電源周波数が50Hzの場合、周波数fc1は100Hzである。この周波数fc1においてフィードバック制御は応答しないように設定される。このようにすれば、電源リップルに起因したフィードバック制御の不安定な動作を防止できる。
【0054】
ところで、この利得特性で周波数fc2より低い周波数において、フィードフォワード制御とフィードバック制御の両方の利得が最大となっているが、これは問題ではない。なぜなら、実際にフィードバック制御の対象となる外乱要因は、電源リップルと直流電圧のばらつきだけだからである。つまり、力率改善回路PFCの出力電圧VDCは、商用電源周波数以下では定電圧制御が有効となるからである。直流電圧のばらつきは、力率改善回路PFCの制御指令値のずれなどによるものであり、周期的な変動ではない。したがって、フィードバック制御が応答してランプがちらつくことはない。もし力率改善回路PFCにより安定化できない周期的な電圧変動が生じた場合は、遮断周波数fc2をさらに低く設定すればよい。
【0055】
本実施形態を用いれば、商用電源に起因する光変動を抑制し、高効率にランプに電力を供給することの出来る点灯装置を安価に提供できる。
【0056】
(実施形態3)
図5に本発明の実施形態3の点灯回路を示す。本点灯回路は、商用電源Vinを整流する整流器DB、整流器DBの出力を平滑して直流電圧VDCを出力する力率改善回路PFC、力率改善回路PFCの出力を入力して高周波電圧を出力するインバータ回路INV1〜INV3、インバータ回路INV1〜INV3の出力に接続されるバラスト素子Z1〜Z3を備えている。ランプLamp1〜Lamp3はそれぞれバラスト素子Z1〜Z3を介してインバータ回路INV1〜INV3に接続されている。また、それぞれのインバータ回路INV1〜INV3は、パルス幅変調器PWM1〜PWM3によって動作している。
【0057】
パルス幅変調器PWM1〜PWM3の発振周波数はフィードバック制御器FB1で決定されている。また、パルス幅変調器PWM1〜PWM3のオン・デューティ(スイッチON時間)は加算器ADD1〜ADD3の出力で個別に決定されている。加算器ADD1〜ADD3は、フィードフォワード制御器FF1の出力とそれぞれの加算器ADD1〜ADD3に対応する調整値Adj1〜Adj3を加算する動作を行っている。
【0058】
本実施形態では、同一周波数で一度に複数のランプLamp1〜Lamp3を点灯させるときに生じるちらつきやむらを解決することが出来る。点灯回路のランプ電流を安定にするためのバラスト素子Z1〜Z3には素子ばらつきが存在し、ランプ電流のばらつきに影響する。バラスト素子Z1〜Z3には損失を低減するためにインダクタまたはキャパシタなどのリアクタンス素子を用いることが多く、その素子ばらつきによるランプ電流のばらつきを補正するために、インバータ回路の動作周波数に偏差を設けて調整することが一般的になされている。しかし、この周波数による補正には、周波数差による電圧干渉という課題がある。すなわち複数のインバータ回路でランプをそれぞれ点灯させたときに、インバータ回路の周波数差によりランプ間に電圧干渉が生じてランプ電流が変化してちらつくのである。
【0059】
そこで本実施形態では、各インバータ回路INV1〜INV3の動作周波数を一定に制御して、スイッチオン時間について個別に調整回路を設けることで電圧干渉によるちらつきの回避とランプ電流のばらつき低減を両立しようというのである。たとえばバラスト素子Z1のばらつきによりランプ電流が5%増加したときは、調整値Adj1によりインバータ回路INV1のスイッチ素子のオン時間を標準の5%程度短くする。すなわち標準がDuty40%のオン時間であれば、Duty38%付近となるように調整値Adj1を設定すればよい。調整値Adj1〜Adj3は半固定抵抗器やトリミング抵抗を用いて製品調整時に容易に設定可能である。また、デジタル的な記憶手段などを用いて使用途中で自己調整などを行うことも可能である。さらにマイクロプロセッサのタイマ機能などを用いてインバータ回路INV1〜INV3の各スイッチ素子をPWM制御すれば制御回路が大幅に簡略化できる。すなわちフィードバック制御部FB1やフィードフォワード制御部FF1に高速な演算を必要としないので、1つのマイクロプロセッサで多くのインバータ回路INV1〜INV3を同時に制御出来る。
【0060】
本実施形態を用いれば、多数のランプを一度に点灯する点灯回路においても、商用電源に起因する光変動を抑制し、高効率にランプに電力を供給することの出来る点灯装置を安価に提供できる。
【0061】
(実施形態4)
図6に本発明の実施形態4の点灯回路を示す。本点灯回路は、商用電源Vinを整流する整流器DB、整流器DBの出力を平滑して直流電圧VDCを出力する力率改善回路PFC、力率改善回路PFCの出力を入力して高周波電圧を出力するインバータ回路INV1、インバータ回路INV1の出力に接続されるバラスト素子Z1を備えている。放電ランプLamp1はバラスト素子Z1を介してインバータ回路INV1の出力に接続されている。インバータ回路INV1はパルス幅変調器PWM1によって動作している。
【0062】
パルス幅変調器PWM1の発振周波数は、フィードバック制御器FB1で決定されている。また、パルス幅変調器PWM1のオン・デューティ(スイッチON時間)は加算器ADD1の出力で決定されている。加算器ADD1は、フィードフォワード制御器FF1の出力とスイープ発生器Swpの信号を加算する動作を行っている。
【0063】
図7は本実施形態の動作を示す。図7には上から、力率改善回路PFCの出力電圧VDC、パルス幅変調器PWM1のデューティ制御信号Dty1、スイープ発生器Swpの信号出力、ランプLamp1に流れる電流の時間変化が示されている。スイープ発生器Swpは台形状の電圧を周期的に発生する。すなわち、時間t1〜t2で電圧を緩やかに立ち上げ、t2〜t3で電圧を維持し、t3〜t4で電圧を緩やかに立ち下げる。t5の時点以降もt1〜t5の期間と同様な動作を繰り返す。
【0064】
スイープ発生器Swpの信号出力とフィードフォワード制御器FF1の信号は加算され、図のようなパルス幅変調器PWM1のデューティ制御信号Dty1が生成される。このパルス幅変調器PWM1のデューティ制御信号Dty1を元にインバータ回路INV1はスイッチ素子のON時間制御を行う。その結果、ランプLamp1の点灯電流もスロープを持って周期的に発生する、いわゆるバースト点灯となる。
【0065】
時間t1〜t2の期間は、インバータ回路INV1の出力電圧を高くしてランプを始動させる期間である。また、時間t3〜t4は、インバータ回路INV1の出力電圧を低くしてランプを消灯させる期間である。
【0066】
本実施形態は、バースト点灯制御においてランプの始動部分と消灯部分の光変動を低減する効果を奏する。ランプ出力が高いときは期間t2〜t3のような点灯期間が長く、ランプの始動部分や消灯部分での光変動の影響が少なく、光が変動する問題は生じにくい。しかし、期間t2〜t3が短くなるような深い調光状態では、始動部分や消灯部分の光の割合が大きくなる。そのため、インバータ回路の入力電圧の変動による始動部分や消灯部分のランプ電圧変化のために光が変動することが問題となってくる。
【0067】
そこで、本実施形態ではスイープ発生器Swpの信号に応じてフィードフォワード制御器FF1のゲインGainを変更する。つまり、デューティ制御信号Dty1が小さいときはフィードフォワード制御のゲインは小さくし、デューティ制御信号Dty1のレベルが増大するのに応じて徐々にフィードフォワード制御のゲインを大きくする。そうすれば、スイープの途中においてもインバータ回路の入力電圧の変動によるインバータ回路の出力電圧のばらつきを抑えることが出来る。
【0068】
本実施形態を用いれば、深い調光を行う点灯回路においても、商用電源に起因する光変動を抑制し、高効率にランプに電力を供給することの出来る点灯装置を安価に提供できる。
【0069】
(実施形態5)
図8は本発明の点灯装置を用いた液晶表示装置の概略構成を示す分解斜視図である。液晶パネルLCPの背面(直下)にバックライト装置が配置されており、バックライト装置は、筐体22と、この上に設置された反射板23及び複数の放電ランプLamp1〜Lamp4と、その上方に設置された拡散板25、プリズムシート等の光学シート26とから構成されている。また、筐体22の背面に放電ランプLamp1〜Lamp4を点灯するランプ点灯装置21が設置されている。反射板23は各放電ランプLamp1〜Lamp4の照射光を有効に前面に指向させるものである。拡散板25は放電ランプLamp1〜Lamp4及び反射板23からの光を拡散させて前面への照明光の明るさ分布を平均化する機能を有する。
【0070】
なお、本発明の点灯装置の用途は液晶表示装置のバックライト装置に限定されるものではなく、一般の照明器具にも搭載できることは言うまでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態1の回路図である。
【図2】本発明の実施形態1の動作説明図である。
【図3】本発明の実施形態2の回路図である。
【図4】本発明の実施形態2の動作説明図である。
【図5】本発明の実施形態3の回路図である。
【図6】本発明の実施形態4の回路図である。
【図7】本発明の実施形態4の動作説明図である。
【図8】本発明の点灯装置を用いた液晶表示装置の概略構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
FF1 フィードフォワード制御器
FB1 フィードバック制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源を整流する整流器と、前記整流器の出力を平滑する少なくとも1つの平滑回路と、前記平滑回路の出力を入力して高周波電圧を出力するスイッチ素子を有するインバータ回路と、前記インバータ回路の出力と負荷であるランプの間に挿入されたインピーダンス素子と、前記インバータ回路の駆動周波数を設定する周波数設定手段と、前記インバータ回路の入力電流またはランプ電流に相当する電流が一定値となるように前記周波数設定手段を制御するフィードバック回路と、前記インバータ回路のスイッチ素子のオン時間または開閉位相を設定するパルス幅設定手段と、前記インバータ回路の入力電圧または平滑回路の入力電圧を検知して前記インバータ回路の出力を補正する制御信号を前記パルス幅設定手段に与えるフィードフォワード回路を備えることを特徴とする点灯装置。
【請求項2】
前記平滑回路は出力電圧を略一定に制御する手段を備え、前記フィードフォワード回路は、前記インバータ回路のスイッチオンデューティ比を30%〜50%の範囲で制御することを特徴とする請求項1記載の点灯装置。
【請求項3】
前記パルス幅設定手段は、前記フィードフォワード回路の出力に所定値を加算する調整手段を備え、前記調整手段の出力によって前記インバータ回路のスイッチ素子を制御することを特徴とする請求項1または2記載の点灯装置。
【請求項4】
前記フィードフォワード回路は、前記パルス幅設定手段の設定値に応じて利得を増加させることを特徴とする請求項1または2記載の点灯装置。
【請求項5】
前記フィードバック回路は低域通過フィルタを備え、閉回路利得が商用電源の2倍の周波数以下で1となる点を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の点灯装置。
【請求項6】
前記平滑回路は、出力電圧を検出する直流電圧検出器を備え、前記フィードフォワード回路は前記直流電圧検出器の出力を検知して前記インバータ回路の出力を補正することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の点灯装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の点灯装置を備えた照明器具。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の点灯装置を備えたバックライト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−146967(P2010−146967A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325886(P2008−325886)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】