説明

点灯装置およびこの点灯装置を備える照明器具

【課題】 調光が深くなったときでも力率の低下を抑えた点灯装置を提供する。
【解決手段】 交流電源100を全波整流する整流回路200の出力側に整流電圧検出部300、その出力側に昇圧コンバータ制御部440を有する力率改善回路400を接続し、その出力電力を光源点灯部500に供給し、負荷の光源である発光ダイオード910を点灯する。調光度判別手段700は、調光信号入力部600から入力された調光信号を変換した出力信号に応じて、光源点灯部500が負荷の光源を調光点灯するように制御する。調光度判別手段700に深い調光レベルの調光信号が入力されたときは、整流電圧検出部300に接続された電圧判別部800が、交流電源100のゼロクロスに跨る所定の動作停止期間を設ける駆動信号を生成し、昇圧コンバータ制御部440に出力することで力率改善回路400を制御し、力率の低下を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードや放電ランプなどの光源を調光点灯させる点灯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昇圧チョッパを主体とする力率改善回路を用いる場合、ある程度の範囲の負荷に対して適切な制御動作を行うので、調光可能であるが、深い調光になって負荷が極めて軽くなったときに、制御動作異常が発生して間欠発振が生じて出力が変動してしまう。昇圧チョッパの後段にさらに直流コンバータを備えている場合、当該直流コンバータが出力一定化制御を行うように動作させ得る状態であればよいが、その制御動作が電源変動すなわち力率改善回路の出力変動に追従できない場合には、発光ダイオードの光出力が変動してちらつきが発生してしまうという問題がある。
このような問題を解決するため、調光信号に応じて力率改善回路の出力を制御し、発光ダイオードの光出力が所定レベル以下に低下したとき、力率改善回路の動作を停止して発光ダイオードのちらつきを防止している(例えば、特許文献1。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−40400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置では、深い調光のときには力率改善回路の動作を完全に停止させてしまうので、コンデンサインプット形の整流回路と同じように入力電流は、電気角90度近傍の狭い期間だけに急峻に流れる波形となり、力率が低下したり、入力電流の高周波成分が増加してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、調光が深くなって負荷が極めて軽くなったときでも、力率の低下、入力電流の高周波成分の増加を抑えた点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わる点灯装置は、交流電源を全波整流する整流回路の出力側に昇圧コンバータを含む力率改善回路を接続して、その出力電力を光源点灯部に供給し、負荷の光源である発光ダイオードや放電ランプを点灯する。さらに、調光信号を入力する手段を備え、光源点灯部は調光信号に応じて負荷の光源を調光点灯する。ここで、深い調光レベルの調光信号を調光度判別部に入力されたときは、昇圧コンバータ制御部が交流電源のゼロクロスに跨る所定期間、スイッチング素子の動作を停止するような駆動信号を生成し、力率改善回路の動作期間を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係わる点灯装置によれば、調光により調光度が所定レベル以下になったときに、交流電源のゼロクロスに跨る所定期間、力率改善回路を動作停止し、交流電源のゼロクロスに跨る所定期間以外では力率改善回路を動作させるので、深い調光になって負荷が極めて軽くなったときでも、力率の低下、入力電流の高周波成分の増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1の発光ダイオード接続時の点灯装置を示す回路図である。
【図2】本発明の実施の形態1の蛍光灯接続時の点灯装置を示す回路図である。
【図3】本発明の実施の形態1のPWM調光信号のオン、オフの周期を示す波形図である。
【図4】本発明の実施の形態1の整流電圧のしきい値と力率改善回路のオン、オフ期間を示す波形図である。
【図5】本発明の実施の形態1の整流電圧の二つのしきい値と力率改善回路のオン、オフ期間を示す波形図である。
【図6】本発明の実施の形態1の交流電源の電圧波形と力率改善回路のオン、オフ期間を説明する波形図である。
【図7】本発明の実施の形態1の交流電源の電圧波形と力率改善回路のオン、オフ期間を説明する図6とは別のパターンの波形図である。
【図8】本発明の実施の形態1の光源出力(調光度)と力率改善回路の出力電圧の特性図である。
【図9】従来と本発明の光源の調光度と力率改善回路の動作安定性の関係を示す表である。
【図10】本発明の実施の形態1の調光時の電気角と力率の特性図である。
【図11】本発明の実施の形態1の力率改善回路停止時の交流電源電圧と入力電流の波形図である。
【図12】Ton期間をゼロクロスを中心に対称に設けた場合の電気角の好適設定例を示す表である。
【図13】本発明の実施の形態2の整流電圧の周波数としきい値の関係を示す波形図である。
【図14】本発明の実施の形態2の整流電圧のしきい値と動作停止信号から動作開始信号出力までの時間を示す波形図である。
【図15】本発明の実施の形態2の整流電圧のしきい値とゼロクロスから信号出力までの時間を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1の点灯装置を、図1ないし図12に基づいて説明する。
【0010】
図1は発光ダイオード接続時の点灯装置を示す回路図、図2は蛍光灯接続時の点灯装置を示す回路図、図3はPWM調光信号のオン、オフの周期を示す波形図、図4は整流電圧のしきい値と力率改善回路のオン、オフ期間を示す波形図、図5は整流電圧の二つのしきい値と力率改善回路のオン、オフ期間を示す波形図、図6は交流電源の電圧波形と力率改善回路のオン、オフ期間を説明する波形図、図7は交流電源の電圧波形と力率改善回路のオン、オフ期間を説明する図6とは別のパターンの波形図である。
【0011】
本実施の形態において、点灯装置は、図1ないし図2に示す回路図のような構成となる。
交流電源100に接続される整流回路200、整流電圧検出部300、力率改善回路400、光源点灯回路500、調光信号入力部600、調光度判別部700、整流電圧判別部800、負荷の光源である発光ダイオード910または放電ランプ920を備える。
【0012】
例として、負荷に発光ダイオード910を接続した場合の構成および回路動作に関して以下に説明する。
【0013】
整流回路200は、交流電圧入力側が交流電源100に並列接続されたダイオードブリッジで構成され、交流電源100から入力された交流電圧を非平滑直流電圧に変換し、整流電圧検出部300を通して力率改善回路400に出力する。
【0014】
整流電圧検出部300は、整流回路200の直流出力端に接続されており、整流電圧を監視して検出した信号を整流電圧判別部800に出力する。
【0015】
整流電圧判別部800は、電圧しきい値検出部810、電圧周波数検出部820で構成されており、昇圧コンバータ制御部440に制御信号を出力する。
【0016】
力率改善回路400は、整流電圧検出部300の出力端に接続したコンデンサ410、インダクタ420およびスイッチング素子450の直列回路、スイッチング素子450に並列接続したダイオード430および出力コンデンサ470、ならびに昇圧コンバータ制御部440を備えた昇圧コンバータで構成されている。なお、スイッチング素子450はMOS FETなどの半導体素子で形成されている。
【0017】
昇圧コンバータ制御部440は、スイッチング素子450を高周波でスイッチングさせ、スイッチング素子450の電流ピーク値の包絡線は、交流電源100の正弦波とほぼ対応するような制御を行い、力率改善動作を行う。このような力率改善の動作原理を実現する信号の生成手段としては、力率改善用集積回路などが既知である。
【0018】
出力電圧検出抵抗461と出力電圧検出抵抗462は直列接続され、電圧分圧回路460を構成している。電圧分圧回路460は出力コンデンサ470に並列接続され、その両端に加わる電圧を分圧し、出力電圧検出抵抗462の端子電圧を昇圧コンバータ制御部440に出力する。
【0019】
光源点灯回路500は、発光ダイオード910を負荷とする場合、バックコンバータなどで負荷の電流制御を行うことで点灯し、かつ調光を実現できる。力率改善回路400の出力端の出力コンデンサ470の両端間に接続したスイッチング素子511およびダイオード513の直列回路、ダイオード513に並列接続したインダクタ512および平滑コンデンサ514の直列回路、ならびに発光ダイオード910に直列に接続された負荷検出抵抗515を備えていて、光源制御部520の制御によって直流電圧変換動作を行う。なお、スイッチング素子511はMOS FETなどの半導体素子で形成されている。
【0020】
光源制御部520は、バックコンバータのスイッチング素子511にパルス電圧からなる駆動信号を供給する。また、光源点灯回路500の負荷検出抵抗515から制御入力される負荷電流が一定になるように帰還制御するとともに、調光信号に応じて駆動信号をPWM制御する。
【0021】
調光信号入力部600は、外部から調光信号を入力する配線等を接続され、入力された調光信号を調光度判別部700に出力する。
【0022】
調光度判別部700は、調光信号入力部600から入力された調光信号を制御信号に変換し、力率改善回路400のスイッチング素子450と光源点灯回路500の光源制御部520に出力する。
【0023】
発光ダイオード910は、複数が直列接続され、負荷検出抵抗515を経由して平滑コンデンサ514の両端に接続されている。
【0024】
次に、本実施の形態の点灯装置の回路動作を説明する。
【0025】
整流回路200は、交流電源100から入力された交流電圧をダイオードブリッジで全波整流し、非平滑直流電圧に変換して整流電圧検出部300を通して力率改善回路400に出力する。
【0026】
力率改善回路400の昇圧コンバータが動作することにより点灯装置の力率が改善され、かつ交流電源100の電圧より高くなるように昇圧され、力率改善回路400から出力コンデンサ470によって平滑された直流電圧が光源点灯回路500に出力される。
【0027】
光源点灯回路500は、降圧動作を行い、負荷の発光ダイオード910に対して所要値に調整された直流電圧を出力する。その結果、光源点灯回路500の出力側に負荷として接続された発光ダイオード910に直流電流が流れて、発光ダイオード910が点灯する。この点灯は、光源点灯回路500の負荷検出抵抗515と光源制御部520によって定電流制御下で行われる。
【0028】
また、調光信号入力部600から出力された調光信号は、調光度判別部700に入力され、ここで調光信号が調光制御信号に変換され、光源制御部520に出力される。この光源制御部520は、入力された調光制御信号に対応するPWM制御された駆動信号を生成して、光源点灯回路500の負荷電力供給部510のスイッチング素子511に供給する。その結果、負荷電流の定電流制御の基準値が調光制御信号に応じて変更されるため、発光ダイオード910は、調光制御信号に対応する光出力の調光点灯を行う。
【0029】
また、調光度判別部700は、例えば図3のTa(ここでは所定レベルの調光度40%に相当する波形とする)で示す位相よりもH期間が長くなると、これを昇圧コンバータ制御部440に制御信号を出力する。このH期間が、Taを超えたか否かの判別は図示の調光信号(例えば1kHz周期信号)の立下りTeからの時間を計測することで実現する。あるいは、この直流信号を平滑した直流電圧にして、電圧値で調光度を判別する。調光度がTaより大きいとき、昇圧コンバータ制御部440は、整流電圧判別部800からの出力信号を有効な信号と判断せず、無視する「PFC動作モード」に移行し、力率改善回路400を常時動作させるように制御する。調光度がTa以下になったとき、調光度判別部700の出力信号が入力された昇圧コンバータ制御部440は、整流電圧判別部800からの出力信号を有効な信号と判断する「PFC部分停止モード」に移行し、力率改善回路400の動作を整流電圧判別部800からの出力信号によって制御するようになる。
【0030】
「PFC部分停止モード」時における整流電圧検出部300と整流電圧判別部800の動作を二つの場合に分けて説明する。
まず、力率改善回路400の動作停止および動作開始を整流電圧のしきい値で判定する場合について説明する。
【0031】
整流電圧検出部300は、図4のように整流回路200で整流された整流電圧を監視し、整流電圧判別部800に出力する。電圧しきい値検出部810で整流電圧の立下りを監視し、整流電圧が所定のしきい値を下回った場合、整流電圧判別部800から力率改善回路400の昇圧コンバータ制御部440に動作停止信号を出力し、力率改善回路400の動作を停止させる。力率改善回路400が停止しているとき、電圧しきい値検出部810は整流電圧の立上りを監視し、整流電圧が所定のしきい値を上回った場合、昇圧コンバータ制御部440に動作開始信号を出力し、力率改善回路400の動作を開始させる。
【0032】
図4において、前述の動作説明のように昇圧コンバータ制御部440が動作開始信号を入力されてから動作停止信号を入力されるまでが、力率改善回路400が動作している期間Tonである。同様に、昇圧コンバータ制御部440が動作停止信号を入力されてから動作開始信号を入力されるまでが、力率改善回路400が動作停止している期間Toffである。TonとToffの定義は、図5〜図7、図14および図15においても図4と同様である。
【0033】
次に、力率改善回路400の動作停止を整流電圧のしきい値1で、動作開始を整流電圧のしきい値2で判定する場合について説明する。
【0034】
整流電圧検出部300は、図5のように整流回路200で整流された整流電圧を監視し、整流電圧判別部800に出力する。電圧しきい値検出部810で整流電圧の立下りを監視し、整流電圧が力率改善回路400の動作停止させるためのしきい値1を下回った場合、整流電圧判別部800から力率改善回路400の昇圧コンバータ制御部440に動作停止信号を出力し、力率改善回路400の動作を停止させる。力率改善回路400が停止しているとき、電圧しきい値検出部810は整流電圧の立上りを監視し、整流電圧が力率改善回路400の動作開始させるためのしきい値2を上回った場合、昇圧コンバータ440に動作開始信号を出力し、力率改善回路400の動作を開始させる。
【0035】
このように力率改善回路400の動作停止と動作開始を判定する整流電圧のしきい値を別の値にする場合、動作停止と動作開始のしきい値を同じにする前述の条件と比べて整流電圧検出部300の構成が複雑になってしまう。しかし、整流電圧のしきい値2をしきい値1に比べて低く設定し、できるだけ交流電源100の電圧値が低いとき(ゼロクロスに近いとき)に、力率改善回路400が動作開始するようにできる。それにより、力率改善回路400の動作開始時に流れるラッシュ電流を抑えることができるので、回路を構成する部品にかかるストレスが軽減される効果が得られる。
【0036】
前述の整流電圧判別部800から出力される力率改善回路400の動作停止信号および動作開始信号は、昇圧コンバータ制御部440に調光度判別部700から調光度が所定レベルTa(図3参照)以下であることを示す出力信号が入力された「PFC部分停止モード」時のみ有効になる。なお、動作開始信号は、調光度によってしきい値を変更する設定にしていなければ、調光度に係わらず有効になるように設定してもよい。なぜなら、この条件であれば調光度がどのレベルであっても整流電圧がしきい値以上であれば必ず力率改善回路400が動作していなければならないからである。これにより、回路の簡略化やマイコン等を使用している場合はプログラムの簡略化の効果が得られる。
【0037】
昇圧コンバータ制御部440は、調光度判別部700、整流電圧判別部800および光源制御部520とは別のマイコンにより、昇圧コンバータと組み合わせて構成することができ、昇圧コンバータからなる力率改善回路400のスイッチング素子450にパルス電圧からなる駆動信号を供給する。また、出力電圧検出抵抗461と出力電圧検出抵抗462で構成される電圧分圧回路460から、入力される出力電圧が所定値になるように帰還制御して駆動信号のデューティを制御する。
【0038】
例えば、昇圧コンバータ制御部440が、正弦波の入力電圧波形を用いるアナログ乗算器を有する力率改善用集積回路であれば、例えばTon以外の期間では、この正弦波電圧を削除した電圧を信号として供給することで、Ton期間のみスイッチング素子450を駆動することができる。このようにして、調光度が40%以下になったとすると、この調光度判別部700の出力信号と前述の整流電圧判別部800の出力信号により、昇圧コンバータのスイッチング素子450は、図6のようにToffの期間は動作を停止する。
【0039】
昇圧コンバータ制御部440による力率改善回路400の動作停止、動作開始の制御は、調光度が所定レベルTa以下になった「PFC部分停止モード」時のみ実施されるので、整流電圧判別部800の出力信号よりも調光度判別部700の出力信号の方が優先される。つまり、調光度が所定レベルTaより大きければ、整流電圧判別部800が動作停止信号を出力しても、力率改善回路400は停止しないように昇圧コンバータ制御部440はスイッチング素子450を制御する。
【0040】
なお、Toffの期間は、ゼロクロスの点を中心に対称にする必要はないので、例えば図7のように図6に比べ、ゼロクロスの後の力率改善回路400の動作停止期間を短くし、力率改善回路400の動作開始を早めてもよい。これは前述したように、力率改善回路400の動作開始時に流れるラッシュ電流を抑制する効果がある。
【0041】
このように深い調光すなわち軽負荷のときは、昇圧コンバータはToffの期間は動作を停止する。また、Toffの期間内にも力率改善回路400からは、コンデンサインプット形の動作による出力電圧が連続的に供給されるので、負荷が軽いことから生じる昇圧コンバータの不要な間欠動作を防止できる。
【0042】
また、負荷が放電ランプ920であれば、ハーフブリッジインバータでその出力周波数を変化させることでランプ電流を制御し、負荷が発光ダイオード910の場合と同様に調光できる。負荷が放電ランプ920である場合の回路図は図2に示す通りである。このとき、放電ランプにはコンデンサ921が接続される。
【0043】
発光ダイオード910、放電ランプ920のいずれの負荷においても、複数灯でも1灯(LED1列分)でも適宜応用可能である。
【0044】
以上より、深い調光度でも力率改善回路400を動作させることができ、力率の低下や入力電流の高周波成分の増加を抑えた点灯装置を提供することができる。
【0045】
以下、本発明を適用する調光度の範囲について説明する。
図8は、実施の形態1の光源出力(調光度)と力率改善回路の出力電圧の特性図である。
【0046】
図8において、横軸は光源の出力(調光度)(%)を示し、縦軸は力率改善回路の出力電圧(%)を示す。破線が理想的な特性である比例関係の直線を示しているが、実際の特性は実線の通りとなる。その理由は、負荷が放電ランプの場合はもちろん、発光ダイオードの場合でも、負荷の出力電圧と力率改善回路の出力電力は同じ比率で変化せず、出力が低い場合には相対的な回路損失の増加などにより、力率改善回路からの電力が増加する傾向になるためである。
【0047】
例えば負荷の出力が40%(調光度40%)程度を超えるとき、入力電力は40%を超えており、力率改善回路に特別な動作停止期間を設けなくても、正常な動作を行える場合がほとんどである。
【0048】
また、従来と本発明の光源の調光度と力率改善回路の動作安定性の関係は、図9の通りとなる。従来の点灯装置では、調光度40%以下で力率改善回路の動作が不安定になり始める。
【0049】
したがって、本発明は少なくとも負荷の光源の出力が40%以下の場合に適用すれば適切である。
【0050】
また、調光信号入力部600に入力された調光信号の調光度が100%のときは、力率改善回路400の動作を停止させず、調光度が低くなるに従い、力率改善回路400の動作時間Ton(図6参照)を長くしていくように、調光度判別部700から昇圧コンバータ制御部440に制御信号を出力する方法でもよい。この方法を用いると、例えば調光率40%のときは、調光率10%のときよりも力率改善回路400の動作期間を長くできるので力率を高くすることができる。
【0051】
以下、力率改善回路の動作期間と力率の関係について説明する。
図10は調光時の電気角と力率の特性図、図11は力率改善回路停止時の交流電源電圧と入力電流の波形図である。
【0052】
力率改善回路400が、交流電源100の各サイクルのゼロクロス近傍で動作停止する期間を設けた場合、動作期間Ton(図6参照)の長さにより、力率が変化する。
【0053】
図10において横軸は、Tonの期間を電気角であらわし、縦軸は力率を示す。
【0054】
図10の特性は、力率改善回路400の性能と電源状態により、力率は多少変化するものではあるが、力率改善回路400を作動させないで、コンデンサインプット形の整流回路と等価な状態になった場合と比較する。
【0055】
コンデンサインプット形の動作になると、図11のように、入力電流は電源電圧の正弦波のピーク付近の狭い期間Tだけ流れる。この電流の流入期間(電流波形の幅)は、回路のコンデンサ容量などにも依存するが、電気角で30〜40度程度である。
【0056】
本発明の装置では、力率改善回路400の作用により、たとえToffの期間を設けてもTonの期間が、電気角で45度以上(すなわち各半サイクル中のToffの期間の合計が電気角で135度未満)であれば、このコンデンサインプット形での力率(一般的には50〜60%程度)より高い70%近い力率とすることができ、有効である。
【0057】
JIS規格等で高力率と定められている力率85%以上にするためには、Tonの期間を電気角で75度以上(すなわち各半サイクル中のToffの期間の合計が電気角で105度未満)にすればよい。
【0058】
図12は、Tonの期間をゼロクロスを中心に対称に設けた場合の電気角の好適設定例を示す表である。調光度が低くなるに従い、Tonの期間を短く、Toffの期間を長く、つまり力率改善回路400の動作停止期間を長くしていく方が、安定的な回路動作を期待できることを示している。また、Tonの期間を固定して使用する場合は、電気角を約90度に設定するとよい。これは力率が約90%を実現できるにもかかわらず、Toffの期間を比較的長くでき、様々な調光度に対して力率改善回路400の安定的な動作を期待できるからである。
【0059】
実施の形態2.
以下、本発明の実施の形態2の点灯装置を、図13ないし図15に基づいて説明する。
【0060】
図13は、整流電圧の周波数としきい値の関係を示す波形図である。2つの波がそれぞれ、交流電源の周波数が50Hzと60Hzのときに整流回路200が出力する整流電圧波形を示しており、Tが60Hzの電圧波形がしきい値以下になってから再度しきい値以上になるまでの時間、Tが50Hzの電圧波形がしきい値以下になってから再度しきい値以上になるまでの時間を示している。なお、T>Tとなる。
【0061】
また、コンデンサインプット形の電源回路動作の場合、交流電源100の周波数が50Hzのときよりも60Hzのときの方が、入力電流が少ない傾向があるのでTを長く、Tを短くしてもよい。
【0062】
図14は、整流電圧のしきい値と動作停止信号から動作開始信号出力までの時間を示す波形図である。整流電圧波形は、電源周波数50Hzまたは60Hzである。図14に基づいて交流電源100の電源周波数と電圧のしきい値を用いて、「PFC部分停止モード」時の力率改善回路400の制御方法について説明する。
【0063】
整流回路200が出力する整流電圧を整流電圧検出部300で検出し、整流電圧判別部800内にある電圧しきい値検出部810と電圧周波数検出部820に出力する。電圧周波数検出部820で交流電源100の周波数が50Hzか60Hzかを判別後、整流回路200が出力する整流電圧を電圧しきい値検出部810で監視し、整流電圧がしきい値を下回った場合、整流電圧判別部800は力率改善回路400に動作停止信号を出力する。力率改善回路400が動作停止してから、所定時間t経過後に整流電圧判別部800が動作開始信号を入力し、力率改善回路400を動作開始させる。この場合、所定時間tと力率改善回路400の動作停止時間Toffは同じ長さである。
【0064】
力率改善回路400の動作開始電圧は、力率改善回路400を動作停止させる整流電圧のしきい値と同じ電圧値でもよいが、しきい値の電圧値より低く設定してもよい。これは整流電圧のしきい値を二つ用いて、動作停止電圧と動作開始電圧を違う電圧値にした実施の形態1の場合と同様、力率改善回路400の動作開始時に流れるラッシュ電流を抑えるためである。この場合、所定時間tを変更することで、所望の動作開始電圧値を得る。
【0065】
各調光度において最大の力率を維持するため、力率改善回路400の動作期間を調光度が低下するに従い、短くしていく制御を行う場合、昇圧コンバータ制御部440をマイコン等で、図12のような最適の電気角になるようにtの長さを制御する。これは、実施の形態1で示した力率改善回路400の動作停止と動作開始で異なる二つのしきい値を用いて力率改善回路400の動作開始電圧を変更するのに比べ、制御回路を簡略化できる効果がある。
【0066】
図15は、整流電圧のしきい値とゼロクロスから信号出力までの時間を示す波形図である。整流電圧波形は、電源周波数50Hzまたは60Hzである。図15に基づいて交流電源100の電源周波数と電圧がゼロになってからの動作停止信号が出力されるまでの時間tと動作開始信号が出力されるまでの時間tを用いて、「PFC部分停止モード」時の力率改善回路400の制御方法について説明する。
【0067】
整流回路200が出力する整流電圧を整流電圧検出部300で検出し、整流電圧判別部800内にある電圧しきい値検出部810と電圧周波数検出部820に出力する。電圧周波数検出部820で交流電源100の周波数が50Hzか60Hzかを判別後、整流回路200が出力する整流電圧を電圧しきい値検出部810で監視し、整流電圧がゼロになった時間から所定時間t経過後に整流電圧判別部800が動作開始信号を力率改善回路400に入力して動作開始させる。同様に、整流電圧がゼロになった時間から所定時間t経過後に整流電圧判別部800が動作停止信号を力率改善回路400に入力して動作停止させる。
【0068】
本実施の形態によれば、整流電圧判別部800内に電圧周波数検出部820を設けなければならないが、整流電圧検出部300が検出する整流電圧のしきい値は一つで済むので、整流電圧検出部を簡略化でき、また力率改善回路400の動作停止時間と動作開始時間の設定を整流電圧のしきい値を二つ用いる場合に比べ、より簡単な回路で調光度の低下に従い、力率改善回路400の動作停止時間を長くする制御が実現できる。
【符号の説明】
【0069】
100 交流電源、200 整流回路、300 整流電圧検出部、400 力率改善回路、410 コンデンサ、420 インダクタ、430 ダイオード、440 昇圧コンバータ制御部、450 スイッチング素子、460 電圧分圧回路、461 出力電圧検出抵抗、462 出力電圧検出抵抗、470 出力コンデンサ、500 光源点灯回路、510 負荷電力供給部、511 スイッチング素子、512 インダクタ、513 ダイオード、514 平滑コンデンサ、515 負荷検出抵抗、520 光源制御部、600 調光信号入力部、700 調光度判別部、800 整流電圧判別部、810 電圧しきい値検出部、820 電圧周波数検出部、910 発光ダイオード、920 放電ランプ、921 コンデンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から入力される交流電圧を整流する電源整流回路と、
前記電源整流回路の出力が入力され、昇圧コンバータを含む力率改善回路と、
前記力率改善回路の出力を入力とする光源点灯回路と、
外部からの調光信号が入力される調光信号入力部と、
前記調光信号入力部に入力される前記調光信号の調光度を判別する調光度判別部と、
前記調光度判別部で検出した前記調光度が所定レベル以下であるとき、前記交流電源のゼロクロスに跨る所定期間、前記力率改善回路の動作を停止する制御手段と、
を備えることを特徴とする点灯装置。
【請求項2】
交流電源から入力される交流電圧を整流する電源整流回路と、
前記電源整流回路の出力が入力され、昇圧コンバータを含む力率改善回路と、
前記力率改善回路の出力を入力とする光源点灯回路と、
外部からの調光信号が入力される調光信号入力部と、
前記調光信号入力部に入力される前記調光信号の調光度を判別する調光度判別部と、
前記電源整流回路の出力電圧を監視する整流電圧検出部と、
前記整流電圧検出部の出力が入力され、電圧しきい値検出部を有する整流電圧判別部と、
前記調光度判別部で検出した前記調光度が所定レベル以下で、前記電圧しきい値検出部で検出した整流電圧が第一のしきい値以下であるとき、前記整流電圧判別部から動作停止信号が入力されて前記力率改善回路が動作停止し、前記整流電圧が第二のしきい値以上になったとき動作開始信号を出力し、前記交流電源のゼロクロスに跨る所定期間、前記力率改善回路の動作を停止する制御手段と、
を備えることを特徴とする点灯装置。
【請求項3】
交流電源から入力される交流電圧を整流する電源整流回路と、
前記電源整流回路の出力が入力され、昇圧コンバータを含む力率改善回路と、
前記力率改善回路の出力を入力とする光源点灯回路と、
外部からの調光信号が入力される調光信号入力部と、
前記調光信号入力部に入力される前記調光信号の調光度を判別する調光度判別部と、
前記電源整流回路の出力電圧を監視する整流電圧検出部と、
前記整流電圧検出部の出力が入力され、電圧しきい値検出部を有する整流電圧判別部と、
前記調光度判別部で検出した前記調光度が所定レベル以下で、前記電圧しきい値検出部で検出した整流電圧がしきい値以下であるとき、前記整流電圧判別部から動作停止信号が入力されて前記力率改善回路が動作停止し、ゼロクロスの検出から所定時間が経過したとき動作開始信号を出力し、前記交流電源のゼロクロスに跨る所定期間、前記力率改善回路の動作を停止する制御手段と、
を備えることを特徴とする点灯装置。
【請求項4】
前記整流電圧判別部内に設けられた電圧周波数検出部と、
前記電圧周波数検出部が前記整流電圧の周波数を監視し、前記調光度が所定レベル以下であり、かつ前記整流電圧がしきい値以下であることを検出したとき、前記力率改善回路を動作停止し、検出した前記整流電圧の周波数が50Hzまたは60Hzかで前記力率改善回路の動作開始時間が異なる制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の点灯装置。
【請求項5】
前記調光度が所定レベル以上のときは前記力率改善回路を停止させず、前記調光度が前記所定レベルから低くなるに従い、前記力率改善回路の停止時間を長くしていく制御手段を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の点灯装置。
【請求項6】
前記調光度判別部に入力される前記調光信号がパルス幅変調信号であり、前記調光信号のパルス幅か、あるいは前記調光信号を平滑した直流信号電圧レベルにより前記調光度を判別することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の点灯装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の点灯装置と、
前記点灯装置を固定する器具本体と、
を備えることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図3】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−64503(P2012−64503A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209331(P2010−209331)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(390014546)三菱電機照明株式会社 (585)
【Fターム(参考)】