説明

焙煎装置

【課題】所望の排気機構を有する焙煎装置を提供すること。
【解決手段】倒置された円筒状の回転ドラム14内に焙煎対象を搬入した状態で、回転ドラム14を回転させながら焙煎対象を焙煎する焙煎装置10に、前記焙煎対象の焙煎時に生じる煙を排気する排気機構60を備える。排気機構60は、頂部に開口スペース65が形成されていて、前記煙が排気機構60の底部から漏れることなく、前記開口スペース65に向けて進む形状とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焙煎装置に関し、特に、珈琲豆の家庭用焙煎装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人による、製造が容易で、低廉で、小型の焙煎装置が、特許文献1に記載されている。この焙煎装置は、水平に置かれた円筒状の回転ドラム内に焙煎対象を搬入した状態で、当該回転ドラムを回転させながら焙煎対象を焙煎する焙煎装置であり、前記回転ドラムは、回転ドラム本体の一端に形成されており前記焙煎対象を搬入及び搬出をするための開口部と、前記開口部から回転ドラム本体の他端に向けて拡がるテーパ部と、前記テーパ部内壁に取り付けられており前記焙煎対象の搬出を誘導する誘導部材と、前記回転ドラム本体の一端と前記回転ドラム本体の他端との間に位置する網部と、前記網部の内壁に取り付けられており当該誘導部材から回転ドラム本体の他端に向けて延びる螺旋状の撹拌材とを備える。
【0003】
この焙煎装置は、回転ドラムに特殊な装置がなくとも製造ができ、そのため製造コストの抑制により低廉で、焙煎対象の搬入及び搬出のためにスペースを割くことがなく小型となる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−245206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1には、焙煎装置の内部構造の小型化については、開示されているもの、その排気機構及び焙煎装置用筐体については開示されていない。
【0006】
また、本出願人が、上記発明の完成後に、更なる研究・開発を行った結果、焙煎時に発生する煙の排気効率を調整すると、焙煎時に必要な電力量を抑制できることを見出した。
【0007】
そこで、本発明は、所望の排気機構及びそれに伴う焙煎装置用筐体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、倒置された円筒状の回転ドラム内に焙煎対象を搬入した状態で、当該回転ドラムを回転させながら焙煎対象を焙煎する焙煎装置であって、
前記焙煎対象の焙煎時に生じる煙を排気する排気機構を有し、
当該排気機構は、
頂部に開口スペースが形成されていて、
前記煙が排気機構の底部から漏れることなく、前記開口スペースに向けて進む形状とされている。
【0009】
このような排気機構を有する焙煎装置は、排気効果に優れ、焙煎時に必要な電力量を抑制できる。
【0010】
具体的には、前記排気機構は、前記回転ドラムの円筒部分を被う概形であって、
少なくとも上側に平板状の煙収集部が位置し、下側に平板状の煙拡散防止上部が位置する。こうすると、回転ドラムの回転がファンの役目をして、焙煎装置内に煙が充満しにくく、排気効率が高い。
【0011】
なお、前記煙収集部と煙拡散防止上部とが一体形成されていると、排気機構の製造面で
加工がしやすいというメリットがある。
【0012】
また、本発明の焙煎装置は、前記排気機構と接続される筐体を有し、
前記筐体は、複数の孔が形成された外装部を有する。これにより、放熱効果が高まるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態の焙煎装置10の模式的な内部構成図である。図1に示す焙煎装置10は、水平に置かれた回転ドラム14と、回転ドラム14の下方に位置する棒状のヒーター26と、回転ドラム14を双方向に回転可能なモータ42とに大別される。
【0015】
回転ドラム14は、例えば長さaが90mm〜120mm程度(本実施形態では118mm)、直径bが75mm〜100mm程度(本実施形態では83mm)の円筒状の大きさとしている。回転ドラム14は、SUS304などのステンレスから成る。回転ドラム14の一方端には、水平方向に対して20°〜30°(本実施形態では22°)の傾斜で、丈が30mm〜40mm程度(本実施形態では35mm)のテーパ部20を形成している。回転ドラム14の他端には、円盤状で丈が6mm程度の底部21を形成している。回転ドラム14の中央部は、各開口が例えば3mm〜4mmとなるように0.8m/m程度のステンレス線に編み込んでなる(符号C参照)網部16を形成している。
【0016】
テーパ部20の開口部23は、例えば53mm〜55mm(本実施形態では54mm)の直径としている。開口部23は、珈琲豆等の搬入と搬出との双方を行えるようにしている。
【0017】
網部16は、底部21に対して水平又は垂直方向にステンレス線を配するように形成してもよいし、これに対して例えば45°程度斜めに配するようにしてもよい。ただし、後者の方が、回転ドラム14の回転時に、珈琲豆等が回転し易いという点で好ましい。
【0018】
網部16の内側には、直径が3mm程度のステンレス棒から成る撹拌材18を螺旋状に配している。撹拌材18は、底部21又はその付近に一端が位置し、網部16内側を一周強螺旋状に巻き、網部16とテーパ部20との境界よりもやや先に他端が位置する。
【0019】
撹拌材18の他端は、珈琲豆等の搬出を誘導する誘導部22の第1の面に取り付けられている。誘導部22の第2の面は、テーパ部20の内壁に取り付けられている。誘導部22は、後述するように、台形状のステンレス板を丸めることによって形成している。
【0020】
底部21の中心には、モータ42側との連結部材24の一端が接続されている。連結部材24は、回転ドラム14側とモータ42側とを仕切る断熱板12と介して、その他端がモータ42の取付部材28内に収容されている。
【0021】
断熱板12を備えることにより、ヒーター26からの放射熱が、モータ42側に伝わることを防止し、効率よく珈琲豆等を焙煎できるようになる。このため、断熱板12には、連結部材24を通すために必要十分な大きさの貫通孔が形成されている。なお、連結部材24は、ガラス繊維、陶磁器などの断熱材料から成ることが好ましい。
【0022】
モータ42の取付部材28は、連結部材24の他端を収容する例えばアーチ形状の第1の部分28aと、第1の部分28aの底部から水平に延在する矩形の第2の部分28bと、第2の部分28bの終端側で上方向に延在する第3の部分28cとを含む。取付部材28は、鉄などから成る。
【0023】
第1の部分28aは、断熱板12の貫通孔と同程度の大きさの第1の貫通孔が形成されており、ここに、例えば上部に解放端を有するオイルレスブッシュ32が収容される。また、第1の貫通孔の例えば上部には、取付部材28と断熱板12とを接続する一又は二以上のねじ38を受けるねじ穴が形成されている。
【0024】
第2の部分28bは、取付部材28の軽量化と放熱効率の向上とのために、一又は二以上の開口部30が形成されている。
【0025】
第3の部分28cは、第1の部分28aと略同形であり、モータ42のモータ軸36を通す第2の貫通孔が形成されている。また、第2の貫通孔の例えば上部には、取付部材28とモータ42とを接続する一又は二以上のねじ40を受けるねじ穴が形成されている。
【0026】
オイルレスブッシュ32内には、連結部材24の他端と、モータ軸36の先端に取り付けられたシャフト34とが収容されている。モータ42の駆動により、効率よく回転ドラム14を回転させるために、オイルレスブッシュ32内では、シャフト34と連結部材24とを多少偏心させている。
【0027】
偏心に基づく軸ぶれは、オイルレスブッシュ32の開放端で吸収される。さらに、回転ドラム14側の熱が、モータ42に伝達することを防止するために、本実施形態では、シャフト34のモータ軸36側に例えばすりわり部を形成し、モータ軸36のシャフト34側を当該すりわり部内に対応する形状とし、これらの接触面を少なくしている。
【0028】
たとえるならば、シャフト34を例えばマイナスドライバの先端のような形状とし、かつ、モータ軸36をマイナスドライバ用のねじの頭部のようにしている。なお、シャフト34の先端部にシャフト34の軸方向に直交する開口部を設け、そこに上記すりわり部に対応する割りピン等を差込んでもよい。
【0029】
また、取付部材28の構造、形状等は、上記例に限定されるものではない。例えば、モータ軸36とシャフト34とを、耐熱性に優れたカップリング等で連結してもよい。こうすると、モータ軸36とシャフト34が接触しないので、モータ42に対して更に熱が伝わりにくくなるという利点がある。
【0030】
ここで、回転ドラム14の回転数は、例えば30rpmとしている。モータ42は、配線44を通じて、回転ドラム14の回転方向を切り換えるモータスイッチ46に電気的に接続されている。モータスイッチ46には、つまみ46cが設けられている。
【0031】
つまみ46cは、珈琲豆等の焙煎時には例えば領域46a側に切り替えればよく、珈琲豆等の搬出時には例えば領域46b側に切り替えればよい。モータ42の駆動を停止させる場合には、領域46a,46bの中間につまみ46cを切り替えればよい。モータスイッチ46は、実際には、焙煎装置10の筐体側面等に取り付けている。
【0032】
モータスイッチ46の取付位置近傍には、ヒーター26のオン/オフを切り換えるヒータースイッチ50が取り付けられている。ヒータースイッチ50には、タイマー機能を備えており、ヒーター26をオンしてから、例えば15〜20分でオフするようにしている。
【0033】
また、ヒータースイッチ50には、ヒーター26がオフしたことを報知するための鈴等を備えている。ヒータースイッチ50は、配線52を介して、電気的にヒーター26に接続されている。
【0034】
ここで、ヒーター26は、例えば110Vで200W〜400Wのガラス管、セラミック管又は遠赤外線管などの電熱管、これらと同程度の火力のガスヒーターとしている。ヒーター26の直径は、例えば10φ〜15φ(本実施形態では14φ)としている。このようなヒーター26を用いると、珈琲豆等は400℃〜600℃程度の放射熱で加熱される。
【0035】
また、選択的に、回転ドラム14の上部に、珈琲豆等の焙煎時に生じる煙を除去するために、活性炭などからなる煙取り材48を備えてもよい。さらに、選択的に、回転ドラム14の下部に、珈琲豆の焙煎時に生じる珈琲豆のチャフを受けるチャフ受け部54を備えてもよい。チャフ受け部54は、引き出し式で焙煎装置10本体に対して着脱可能とするとよい。
【0036】
焙煎装置10の筐体は、断熱板12付近で切り離し可能とし、回転ドラム14等のクリーニングを行えるようにすると好ましい。さらに、例えば連結部材24を二重構造とし、ピンなどでこれらを相互に接続しておけば、焙煎装置10本体から回転ドラム14が着脱可能となり、クリーニングが更に容易に行えるようになるので更に好ましい。
【0037】
また、焙煎装置10の筐体は、内部でねじ止め等することで、外部の凹凸を少なくしている。また、この筐体は、ステンレス板、メッキ加工が施された鉄板等を二重構造としており、筐体表面側が熱くなりにくくしている。この筐体上部は、焙煎時に生じる煙を排気する排気口を設けている。
【0038】
また、開口部23から搬入した珈琲豆が、回転ドラム14からこぼれ落ちないように、この筐体の開口部23側は、開口部23とあまり間隔を空けないようにしている。また、この筐体の開口部23付近には、開口部23よりやや大きい珈琲豆の搬入及び搬出用の扉を設けている。
【0039】
図2は、図1に示すヒーター26と回転ドラム14とを軸方向から見た図である。既述のように、本実施形態では、回転ドラム14の回転数は、例えば30rpmとしている。また、ヒーター26は、例えば110Vで200W〜400Wの電熱管としている。そして、回転ドラム14の直径を80〜85mmとしている。なお、回転ドラム14は、焙煎時には、図2の時計回りに回転するようにしている。
【0040】
この条件の場合、回転ドラム14とヒーター26との好ましい配置関係は、回転ドラム14の中心軸に対して、ヒーター26の中心軸が、左下の位置にすることである。そして、ヒーター26の中心軸と回転ドラム14の中心軸との水平方向の長さcは、例えば10mm〜45mm(本実施形態では、ヒーター26を300Wのものを用いて35mm)とする。また、垂直方向の長さdは、例えば40mm〜65mm(本実施形態では、ヒーター26を300Wのものを用いて45mm)とする。
【0041】
さらに、後述する排気機構を採用すると、ヒーター26を250Wのものを用いたときに、長さcが14mm、長さdが63mmとすることが望ましかった。なお、この場合、ヒーター26の中心軸を通る垂直線に対して、ヒーター26の中心軸とヒーター26の中心軸とを結ぶ線分がなす角度θは12度であった。
【0042】
回転ドラム14に搬入した珈琲豆を焙煎するために、回転ドラム14を図2の時計回りに回転させると、回転ドラム14内の左下方向に珈琲豆が多く集まる。このため、珈琲豆を効率よく焙煎される。
【0043】
実際に、上記の回転ドラム14の回転数、ヒーター26のワット数、回転ドラム14の大きさ、ヒーター26と回転ドラム14との位置関係で、約カップ3倍分の珈琲をいれるのに必要な珈琲豆を焙煎したところ、焼きムラが生じることなく焙煎できた。
【0044】
また、回転ドラム14の中心軸に対して、ヒーター26の中心軸が、左下の位置にくるようにすることによって、珈琲豆の焙煎時に生じる珈琲豆のチャフが落下して、ヒーター26に付着するということが少なくなる。
【0045】
このため、ヒーター26に付着したチャフが焦げて、無用な煙が発生するということが抑えられる。また、ヒーター26にチャフが付着しにくいため、ヒーター26のクリーニングが楽になる。
【0046】
図3(a)は、図1に示す回転ドラム14の模式的な斜視図である。図3(b)は、誘導部22を拡げた状態を示す平面図である。誘導部22は、例えば、30mm×52mmのステンレス板を台形状に加工してから長手方向側が軸となる態様で丸めることによって形成している。
【0047】
具体的には、30mm×52mmのステンレス板(0.5mm厚)を、図3(b)に示すような形状に切断等によって加工している。長さf〜長さlは、例えば以下の通りとしている。長さfは30mm、長さgは16mm、長さhは2mm、長さiは5mm、長さjは10mm、長さkは12mm、長さlは52mm。このようにすると、角αは40°程度、角βは60°程度になる。誘導部22は、図3(a)に示すように、底面側の角相互の間隔eが、例えば10mm〜20mmに成る程度に、例えばプレス機を用いて、第2辺22bを基線として丸めればよい。
【0048】
開口部23側に位置することとなる第1辺22aは、対向する第3辺22cよりも長い。また、テーパ部20に接続される側である第4辺22dは相対的に鈍角な角部を有し、対向する第2辺22bは相対的に鋭角な角部を有する。誘導部22は、第1辺22aを開口部23側にして、テーパ部20の内壁に、時計回りに15°〜40°程度(本実施形態では36°)ずらして接続している。
【0049】
上記のような条件で、誘導部22を回転ドラム14に接続すると、誘導部22の第3辺22cと開口部23とが、同一平面上に位置することになる。このような接続態様とすれば、回転ドラム14内から珈琲豆を、すべて取り出すことができる。
【0050】
つづいて、図1に示す焙煎装置10によって珈琲豆を焙煎する手法について説明する。まず、筐体の扉を開けて、所要量の珈琲豆等を、開口部23から回転ドラム14に搬入する。それから扉を閉める。つぎに、モータスイッチ46のつまみ46cを46a側に切り換えるとともに、ヒータースイッチ50をオンする。
【0051】
こうすると、モータ42が駆動して、図2の時計回りに回転ドラム14が回転し始めるとともに、ヒーター26がオンして熱放射が始まる。回転ドラム14内に搬入されている珈琲豆等は、撹拌材18により回転ドラム14内を底部21側に移動していき、底部21に当たることで開口部23側に戻るという動作を繰り返す。このため、珈琲豆を撹拌しながら、ヒーター26からの放射熱で焙煎することができる。
【0052】
その後、焙煎開始から約15〜20分が経過すると、ヒータースイッチ50に備えている鈴等が鳴るとともに、ヒーター26がオフして焙煎終了が報知される。つづいて、筐体の扉下方に容器を設置する。そして、筐体の扉を開けて、モータスイッチ46のつまみ46cを、46a側から46b側に切り換える。
【0053】
こうすると、図2における反時計回りに回転ドラム14が回転し始め、回転ドラム14内の焙煎された珈琲豆等が、撹拌材18により回転ドラム14内を開口部23側に移動してくる。そして、誘導部22に到達した珈琲豆等は、誘導部22よって誘導されながら回転ドラム14から搬出され、容器内に入る。以上の手順により、焙煎され且つ酸化していない珈琲豆を得ることができる。
【0054】
なお、実際に、回転ドラム14内に搬入する珈琲豆の任意のものに、目印をつけて撹拌したところ、この珈琲豆が、開口部23側と底部21側との間を数回往復移動し、十分に撹拌されていたことがわかった。
【0055】
図4(a)は、図1に示す回転ドラム14の円筒部分を被う態様で用いられる排気部材60の斜視図である。図4(b)は、図4(a)の開口スペース65側からの平面図である。排気部材60は、例えば、厚さが0.3〜0.8程度の、矩形状のステンレス板、メッキ加工が施された鉄板を、所定位置で折り曲げ、かつ、所定位置を開口し、切断することによって作成される。
【0056】
排気部材60は、頂部の中央部に短辺の長さが10〜30mmの矩形状の開口スペース65が形成されている。開口スペース65の長手方向の各辺側には、相互に例えば90度を為す煙収集部62,63が位置する。煙収集部62,63の下側には、これらに対して例えば90度を為す煙拡散防止上部61,64が位置する。拡散防止上部61,64の下側には、これらに対して例えば135度を為す拡散防止下部66,67が位置する。煙収集部62,63及び煙拡散防止上部61,64には、これらを後述する筐体に取り付けるためのねじを通す、複数のねじ穴68が形成されている。
【0057】
上記各角度、開口スペース65の形状、間隔、拡散防止下部66,67の丈などは、相互に依存する関係にあり、これらのうち何れかの設定を変更することにより他の設定も変更される。結局のところ、これらの条件は、焙煎時に生じる煙が開口スペース65に向けて進み、かつ、煙拡散防止下部66,67間に進まないものであればよい。
【0058】
例えば、煙収集部62,63と煙拡散防止上部61,64との間の角度は、煙拡散防止上部61,64の下端が、回転ドラム14の下端以下であれば、たとえ開口スペース65が10mm程度の場合でも、75度程度まで許容できる。
【0059】
すなわち、この条件下では、煙が排気部材60によって形成される空間内に停滞することなく、開口スペース65から適度に排気されるので、煙拡散防止上部61,64間から下方に進むことは目視ではほとんど確認できない。ましてや、焙煎装置10の拡散防止下部66,67と筐体との隙間から、煙が漏れることは目視で確認できない。逆に、煙収集部62,63と煙拡散防止上部61,64との間の角度を110度程度としても、煙が煙拡散防止部61,64間から下方に進むことは、目視ではほとんど確認できない。煙収集部62,63と煙拡散防止上部61,64との連結部分等に、アールをつけた場合も、同様であった。この場合、ヒーター26の電力量は、ほぼ200Wであっても、十分な焙煎ができた。
【0060】
ちなみに、煙収集部62,63と煙拡散防止上部61,64との間の角度を70度以下とした場合には、チャフ受け部54の周辺からも煙が排気されることが確認できた。これは、焙煎装置10内に煙が充満し、開口スペース65から排気し切れなかったことを意味する。これらの条件下で焙煎した珈琲豆から抽出した珈琲は、過度にいぶされ万人受けするようなものではなかった。しかも、ヒーター26の電力量は、ほぼ400W必要であった。排気機構60の形状を図4に示すような角柱状とせず、アーチ状とした場合にも、同様の結果となった。
【0061】
一方、煙収集部62,63と煙拡散防止上部61,64との間の角度を、120度以上とした場合には、相対的に、排気される煙の量が多かった。業務用、あるいは、室外用であれば、このような条件下でも、十分使用可能であろう。ただし、家庭用としては、一般的には不向きであろう。上記各検討により、開口スペース65の間隔は、ユーザによって設定できるようにすることが好ましいことがわかった。
【0062】
図5は、回転ドラム14、ヒーター26及び排気機構60を筐体内に収容した状態を開口部23側から見た模式的な断面図である。この筐体は、煙収集部62,63が取り付けられるムク材からなる角柱状の上枠70及びアルミニウムなどの角パイプ状の上枠71と、煙拡散防止上部61,64が取り付けられるアルミニウムなどの角パイプ状の下枠72,ムク材からなる角柱状の下枠73と、煙拡散防止下部66,67を受けるムク材からなる角柱状の足部74,75と、足部74,75を相互に連結するアルミニウムなどの角パイプ状の床部76とを備える。排気機構60と筐体とは、ねじ69によって留められている。上枠70,71相互、下枠72,73相互、足部74,75と床部76とは、ねじ81によって、それぞれ、留められている。
【0063】
さらに、この筐体は、回転ドラム14の底部21側に位置する、上枠70,71、下枠72,73と、足部74,75及び床部76に対応する各枠、各部を備える。これらの対応する各枠は、複数の留部77及びこれらの奥側に位置する、柱状の支持梁77〜80を介して接続されている。さらにまた、この筐体は、後述する外装部も含む。
【0064】
ここで、本実施形態では、焙煎装置10の小型化を図るために、筐体の概形と排気機構60の概形とを同じにしてある。筐体の各部のサイズ・位置等の一例は、以下の通りである。
【0065】
上枠70は、外形が10mm角で、長さが144mm、
上枠71は、外形が10mm角で、長さが164mm、
下枠72は、外形が10mm角で、長さが164mm、
下枠73は、外形が10mm角で、長さが144mm、
足部74,75は、両面共に外形が10mm×10mm角で、長さが75mm、
床部76は、114mm×140mm(足部74,75間が114mm)、
梁部78と梁部79との間隔、梁部77と梁部80との間隔は、それぞれ71mmである。
【0066】
ただし、筐体の形状は、後述するように、種々の形状とすることができるし、寸法もこれらに限定されるものではない。
【0067】
図6〜図11は、それぞれ、焙煎装置10の外観の正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、底面図である。
【0068】
図6には、回転ドラム14の対応位置に設けられた円筒状の扉部90と、扉部90に対応する開口部が形成されていて各枠70〜73側を覆う外装部98と、足部74,75及び底部76側を覆う外装部99と、底面に設けられたゴムなどの設置部100とを示している。外装部99は、チャフ受け部54の引き出し面を除いた側面を一体で覆っている。
【0069】
扉部90は、扉部90の開閉時にユーザが掴むつまみ部91と、つまみ部91が表面に取り付けられているステンレス製等の輪部92と、輪部92の外径と同外径の筒状の連結部93(図8)と、扉部90の開閉軸となる軸部94と、筐体内を覗くための石英ガラス製の覗き窓95と、つまみ部91の裏側に設けられていて扉部90の最大開位置を規定するステンレス製の規定ピン97とを備えている。
【0070】
図7には、扉部90に対応する大きさ及び形状のタイマー・スイッチユニット101示している。タイマー・スイッチユニット101は、既述のモータスイッチ46とヒータースイッチとを兼用したスイッチ部106と、ヒーター26の加熱時間を設定するものであり設定時間目盛りが付された設定部107と、スイッチ部106が設けられていてモータ42等が収容されている筒状の収容部108(図8)と、商用電源に電気的に接続される接続線102と、接続線102の端部に取り付けられていて当該端部にかかる応力を軽減するための線受部103とを備えている。
【0071】
スイッチ部106は、例えば、中央ではヒーター26及び回転ドラム14がオフし、一方側を押すとヒーター26がオンとなりかつ回転ドラム14が順回転することで焙煎可能となり、他方側を押すとヒーター26がオフとなりかつ回転ドラム14が逆回転することで搬出可能となる。
【0072】
図8〜図10には、各枠70〜73間の斜面を覆う外装部110を示している。外装部110には、放熱効率を高めるために、複数のパンチ孔111が形成されている。パンチ孔111は、例えば、直径が1mm、ピッチが2mmとしてある。図8,図9には、足部74,75と対応する足部との間を覆うアルミニウム製の外装部112を示している。また、図9に示すように、焙煎装置10の右側面には、例えば鉄製の引き出しタイプのチャフ受け部54と、チャフ受け部54を挿抜するつまみ55とが位置する。さらに、図10に示すように、スイッチ部106と設定部107との間には、設定部107による加熱時間の設定時間を決定する際の基準位置部107aが設けられている。
【0073】
図11には、合計4つの設置部100が外装部98の折り返し部分に設けられている状態を示している。線受部103に隣接して、モータ42等の駆動により発生する熱などによるタイマー・スイッチユニット101内外の温度差を是正する空気穴108aが設けられている。
【0074】
なお、本実施形態では、外装部98,112、連結部93、収容部108、チャフ受け部54等は、ステンレス製、アルミニウム製又は鉄製などとしている。このような材料の選択により、焙煎装置10は、金属光沢が得られるという点でデザイン性に優れているという効果がある。さらに、焙煎装置10の形状には、装置使用時に発生する熱の冷却、装置の小型化を可能とするという効果があることはもとより、形状自体に斬新さと独創性とがあるという意匠的効果も有する。
【0075】
図12(a)〜図12(g)は、焙煎装置10の外観の変形例を示すものである。本実施形態では、図12に示す各焙煎装置10には、既述の排気機構及び外装部等を採用している。図12に示す種々の変形例の場合にも、図6等に示す焙煎装置に対して、さほど装置を大型化することなく、装置使用時に発生する熱の冷却効果を高めることができる。
【0076】
本実施形態では、主として、珈琲豆を焙煎する場合を例に説明したが、焙煎対象は大豆、銀杏、とうもろこし、栗、麦、南京豆、ひまわりの種、スイカの種などとすることもできる。また、既述の各部の寸法等は、焙煎装置10を家庭用とし、カップ3杯程度の珈琲豆を焙煎することを想定してものである。したがって、焙煎装置10を業務用とする場合には、例えば回転ドラム14の長さaを長くしたり、ヒーター26をS字状の連続カーブとしたりするなどの設計変更を行えばよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
珈琲、大豆、銀杏、とうもろこし、栗、麦、南京豆、ひまわりの種、スイカの種などの焙煎に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施形態の焙煎装置10の模式的な構成図である。
【図2】図1に示すヒーター26と回転ドラム14とを軸方向から見た図である。
【図3】図1に示す回転ドラム14の模式的な斜視図である。
【図4】排気部材60の斜視図及び平面図である。
【図5】回転ドラム14、ヒーター26及び排気機構60を筐体内に収容した状態を開口部23側から見た模式的な断面図である。
【図6】焙煎装置10の外観の正面図である。
【図7】焙煎装置10の外観の背面図である。
【図8】焙煎装置10の外観の左側面図である。
【図9】焙煎装置10の外観の右側面図である。
【図10】焙煎装置10の外観の平面図である。
【図11】焙煎装置10の外観の底面図である。
【図12】焙煎装置10の外観の変形例である。
【符号の説明】
【0079】
10 焙煎装置
12 断熱板
14 回転ドラム
16 網部
18 撹拌材
20 テーパ部
21 底部
22 誘導部
23 開口部
24 連結部材
26 ヒーター
28 取付部材
28a 第1の部分
28b 第2の部分
28c 第3の部分
30 開口部
32 オイルレスブッシュ
34 シャフト
36 モータ軸
38,40 ねじ
42 モータ
44,52 配線
46 モータスイッチ
46a,46b 領域
46c つまみ
48 煙取り材
50 ヒータースイッチ
54 チャフ受け部
60 排気部材
61,64 拡散防止上部
62,63 煙収集部
65 開口スペース
66,67 拡散防止下部
70,71 上枠
72,73 下枠
74,75 足部
76 床部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
倒置された円筒状の回転ドラム内に焙煎対象を搬入した状態で、当該回転ドラムを回転させながら焙煎対象を焙煎する焙煎装置であって、
前記焙煎対象の焙煎時に生じる煙を排気する排気機構を有し、
当該排気機構は、
頂部に開口スペースが形成されていて、
前記煙が排気機構の底部から漏れることなく、前記開口スペースに向けて進む形状とされている、焙煎装置。
【請求項2】
前記排気機構は、前記回転ドラムの円筒部分を被う概形であって、
少なくとも上側に平板状の煙収集部が位置し、下側に平板状の煙拡散防止上部が位置する、請求項1記載の焙煎装置。
【請求項3】
前記煙収集部と煙拡散防止上部とが一体形成されている、請求項2記載の焙煎装置。
【請求項4】
前記排気機構と接続される筐体を有し、
前記筐体は、複数の孔が形成された外装部を有する請求項1から3のいずれか記載の焙煎装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−104925(P2007−104925A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297067(P2005−297067)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(504079977)有限会社 豪円工業 (1)
【Fターム(参考)】