説明

無人搬送システム

【課題】停止マークの汚れや欠けに強い無人搬送システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る無人搬送システムは、路面に敷設された誘導ライン2と、誘導ライン2上に設けられた停止マーク3と、誘導ライン2に沿って走行するとともに、停止マーク3を目印にして停止する無人搬送車とを備えたシステムである。停止マーク3は、誘導ライン2とは異なった色で着色された部分(3b、3d)を有し、色の違いにより交差する2本の線X、Yを認識させ得るようになっている。また、無人搬送車は、該2本の線X、Yの交点を目印にして停止するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導ラインと該誘導ラインに沿って走行する無人搬送車とを備えた無人搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場や倉庫等においては、路面に敷設された誘導ラインと、該誘導ラインに沿って走行する無人搬送車とを備えた無人搬送システムが活用されている。このような無人搬送システムは種々の方式のものが知られているが、例えば特許文献1には、誘導ラインの近傍に設けられた停止マークを目印にして無人搬送車が停止するよう構成された無人搬送システムが開示されている。
【0003】
図5(A)は、従来の一般的な停止マークである。同図に示すように、停止マーク3Dは誘導ライン2上に設けられており、平面視矩形状(同図では正方形)を有している。また、停止マーク3Dは誘導ライン2とは異なった色で着色されており、光学的にその形が認識され得るようになっている。
【0004】
かかる停止マーク3Dを用いた無人搬送システムにおいては、無人搬送車に備えられたCCDカメラ等の光学的撮像手段によって停止マーク3が撮像され、これにより得た画像データから停止マーク3Dの寸法(走行方向寸法a、ライン幅方向寸法b)が求められ、次いで停止マーク3Dの中心Cが特定される(同図(B)参照)。そして、無人搬送車は、該中心Cが撮像領域の中心にくるように走行制御され、中心Cと撮像領域の中心が重なった位置で停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−333927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の無人搬送システムは、停止マーク3Dの一部が汚れたり欠けたりした場合に、本来の位置からずれた位置が中心Cと特定されてしまい、無人搬送車の停止位置がずれてしまうという問題があった。
【0007】
例えば、図6は、停止マーク3Dの一部が汚れDに覆われた場合である。このうち、図6(A)の場合は、停止マーク3Dの走行方向寸法aを正しく求めることができず、本来の位置から走行方向にずれた位置C’が中心として特定される。また、図6(B)の場合は、停止マーク3Dのライン幅方向寸法bを正しく求めることができず、本来の位置からライン幅方向にずれた位置C”が中心として特定される。
【0008】
無人搬送車の停止位置がずれると、そのずれ量によっては、荷積み、荷下ろし、充電等が正常に行えなくなる。このため、従来の無人搬送システムにおいては、誘導ライン2および停止マーク3Dのメンテナンスを頻繁に行う必要があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、停止マークの汚れや欠けに強い無人搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る無人搬送システムは、路面に敷設された誘導ラインと、誘導ライン上に設けられた停止マークと、撮像手段によって誘導ラインを認識して該誘導ラインに沿って走行するとともに、撮像手段によって停止マークを認識して該停止マークを目印にして停止する無人搬送車とを備えた無人搬送システムであって、上記停止マークは、誘導ラインとは異なった色で着色された部分を有し、色の違いにより交差する2本の線を認識させ得るようになっており、無人搬送車は、上記2本の線の交点を目印にして停止することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、停止マークの外形ではなく、色の違いにより表現された交差する2本の線を認識し、該2本の線の交点を目標位置として無人搬送車が走行制御されるので、停止マークの一部が汚れたり欠けたりしても、2本の線の一部が認識可能であれば正しい位置で無人搬送車を停止させることができる。したがって、この構成によれば、停止マークの汚れや欠けに強い無人搬送システムを提供することができる。
【0012】
上記停止マークは、2本の線で区分された交点周りの4つの領域のうち、相対向する2つの領域が誘導ラインとは異なった色で着色されたものとすることができる。
【0013】
また、上記停止マークは、誘導ラインとは異なった色の×印または+印とすることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、停止マークが汚れたり欠けたりしても無人搬送車を正しい位置で停止させることができる無人搬送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る無人搬送システムの概略構成図である。
【図2】本発明における停止マークの一例であって、(A)は平面図、(B)は停止位置である2本の線の交点の特定方法を説明するための図である。
【図3】図2(A)に示す停止マークの一部が汚れた状態を示す平面図である。
【図4】本発明における停止マークの変形例を示す平面図である。
【図5】従来の停止マークであって、(A)は平面図、(B)は中心Cの特定方法を説明するための図である。
【図6】図6に示す停止マークの一部が汚れた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る無人搬送システムの好ましい実施形態について説明する。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係る無人搬送システムの概略構成図を示す。同図に示すように、無人搬送システム1は、走行経路の路面に敷設された誘導ライン2と、誘導ライン2上に設けられた停止マーク3と、誘導ライン2に沿って走行し、停止マーク3を目印にして停止する無人搬送車4とを備えている。
【0018】
無人搬送車4は、車体の四隅に設けられた車輪7と、誘導ライン2および停止マーク3を含む一定の領域Aを光学的に撮像して該領域Aの画像データを生成するCCDカメラ等の撮像手段5と、撮像手段5によって生成された画像データに基づいて停止マーク3中の目標位置を特定し、該目標位置が撮像領域Aの中心にくるように各車輪7を制御する走行制御部6とを備えている。走行制御部6は、マイコン、記憶装置(メモリ)等から構成されている。また、車輪7は、走行制御部6の制御下で少なくとも操舵角が個別に制御可能となっている。
【0019】
誘導ライン2は、路面と明確に区別可能な色で着色されている。路面の色は白色、灰色等の淡い色であることが多いので、誘導ライン2の色としては赤色、青色、緑色等の濃い色を選択することが好ましい。誘導ライン2は、塗料を塗布したり、色付きのテープを接着剤で貼り付けたりすることにより形成される。本実施形態では、赤色のテープで誘導ライン2を形成した。
【0020】
図2(A)は、本実施形態で使用される停止マークの平面図である。同図に示すように、停止マーク3は平面視矩形状を有し、交差する2つの線で区分けされた4つの領域3a、3b、3c、3dからなっている。上記2本の線のうち、線Xは誘導ライン2の幅方向に平行な線であり、線Yは無人搬送車4の走行方向に平行な線である。本実施形態では、線Xおよび線Yの交点が停止マーク3の中心Cに一致している。また、本実施形態では、線Xおよび線Yの交点が上記目標位置となる。
【0021】
上記4つの領域のうち、交点を挟んで相対向する2つの領域(3aおよび3c、3bおよび3d)は同じ色で着色されている。本実施形態では、領域3aおよび3cは、誘導ライン2と同じ赤色で着色されている。一方、領域3bおよび3dは、誘導ライン2と明確に区別可能な色で着色されている。本実施形態では、領域3bおよび3dを青色にした。
【0022】
無人搬送車4の走行制御部6は、撮像手段5によって停止マーク3を含む画像データが生成されると、該画像データに基づいて線Xおよび線Yを認識する。より詳しくは、画像データに含まれる画素のうち、隣接画素との色差が大きい画素を抽出することで線Xおよび線Yを認識する。その後、走行制御部6は、線Xおよび線Yの交点(図2(B)参照。本実施形態では、停止マーク3の中心C)を演算により特定し、該交点が撮像領域Aの中心にくるように各車輪7の操舵角等を制御する。
【0023】
上記画像データの生成、線Xおよび線Yの認識、および交点(目標位置)の特定は一定時間おきに連続的に行われる。
【0024】
本実施形態に係る無人搬送システム1によれば、停止マーク3の一部が汚れたり欠けたりした場合においても、線Xおよび線Yの交点を特定し、該交点を目印にして無人搬送車4を正しい位置で停止させることができる。
【0025】
例えば、図3(A)は、領域3a、3d(図2(A)参照)の一部が汚れDに覆われた場合である。この場合においても、走行制御部6は、汚れていない部分から線Xおよび線Yを認識し、線Xおよび線Yの交点を特定する。同様に、図3(B)は、領域3c、3dの一部が汚れDに覆われた場合であるが、この場合も、走行制御部6は、汚れていない部分から線Xおよび線Yを認識し、線Xおよび線Yの交点を特定する。
【0026】
また、図3(C)は、停止マーク3の中心、すなわち線Xと線Yの交点が汚れDに覆われている場合である。このような場合、走行制御部6は、認識可能な線Xと線Yの一部を延長したり繋ぎ合わせたりすることにより、汚れDに覆われているために認識できない部分を補完し、補完後の線Xおよび線Yに基づいて交点を特定する。つまり、本実施形態に係る無人搬送システム1によれば、線Xおよび線Yの一部が認識可能であれば、該一部に基づいて線Xおよび線Yを補完し、交点を特定することができる。よって、本実施形態に係る無人搬送システム1は、停止マーク3の汚れや欠けに強い無人搬送システムであるということができる。
【0027】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、種々の変形例が考えられる。
【0028】
例えば、停止マークは図2に示す停止マーク3に限定されず、図4(A)に示す停止マーク3Aのように対角線X’およびY’によって4つの領域に区分けされていてもよいし、図4(B)に示す停止マーク3Bのように、誘導ライン2とは異なる色で着色された“+印”であってもよいし、図4(C)に示す停止マーク3Cのように、誘導ライン2とは異なる色で着色された“×印”であってもよい。いずれの場合も、走行制御部6は、色の違いにより線X(X’)および線Y(Y’)を認識し、認識した線X(X’)および線Y(Y’)の交点を特定する。
【0029】
なお、線Xおよび線Yの交点は、停止マークの中心に一致する必要はなく、停止マーク中の任意の位置に変更することができる。
【0030】
また、無人搬送車は図1に示す無人搬送車4に限定されず、例えば、車輪7の数および位置並びに撮像手段5の位置は、任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 無人搬送システム
2 誘導ライン
3 停止マーク
4 無人搬送車
5 撮像手段
6 走行制御部
7 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に敷設された誘導ラインと、前記誘導ライン上に設けられた停止マークと、撮像手段によって前記誘導ラインを認識して該誘導ラインに沿って走行するとともに、前記撮像手段によって前記停止マークを認識して該停止マークを目印にして停止する無人搬送車とを備えた無人搬送システムであって、
前記停止マークは、前記誘導ラインとは異なった色で着色された部分を有し、色の違いにより交差する2本の線を認識させ得るようになっており、
前記無人搬送車は、前記2本の線の交点を目印にして停止する、
ことを特徴とする無人搬送システム。
【請求項2】
前記停止マークは、前記2本の線で区分された前記交点周りの4つの領域のうち、相対向する2つの領域が前記誘導ラインとは異なった色で着色されたものであることを特徴とする請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項3】
前記停止マークは、前記誘導ラインとは異なった色の×印または+印であることを特徴とする請求項1に記載の無人搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−208592(P2012−208592A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72161(P2011−72161)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】