説明

無停電電源装置、アプリケーションプログラム、コンピュータシステム、バックアップ処理方法およびプログラム

【課題】ユーザが常時インバータ方式と常時商用方式の切替え機能を有効に活用すること。
【解決手段】省電力モードを有し、自己が省電力モードを選択している旨の省電力モード選択情報を外部に伝達するコンピュータ装置3の電源をバックアップする無停電電源装置2において、省電力モード選択情報を受け取るモード選択情報受取部14と、モード選択情報受取部14が省電力モード選択情報を受け取ったことを契機として、商用電源4の異常の検出の有無に関わらず、インバータであるDC/AC変換部12から電源供給する常時インバータ方式、または、商用電源4の異常が検出されていないときは、商用電源4から電源供給し、商用電源4の異常が検出されたときは、DC/AC変換部12から電源供給する常時商用方式のいずれかを選択する処理を実行する制御部16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無停電電源装置、アプリケーションプログラム、コンピュータシステム、バックアップ処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無停電電源装置の役割は、商用電源の異常時においても商用電源で稼働するコンピュータ装置などの機器の電源を確保するところにある。ここで商用電源の異常とは、たとえば停電である。
【0003】
商用電源の停電時には、無停電電源装置が有するバッテリの直流電源をインバータによって交流電源に変換し、コンピュータ装置に供給することによってコンピュータ装置の電源を確保できる。
【0004】
あるいは、停電以外でも商用電源の電圧値や周波数が乱れるなどの異常に対しても無停電電源装置は、バッテリの直流電源を交流電源に変換し、コンピュータ装置に供給することによってコンピュータ装置の電源を安定的に確保することができる。
【0005】
また、特許文献1には、商用電源の異常の有無に関わらずインバータを介して交流電源をコンピュータ装置に供給する常時インバータ方式と、商用電源が正常時には商用電源を直接、コンピュータ装置に供給し、商用電源が異常のときだけインバータを介してコンピュータ装置に電源を供給する常時商用方式とがユーザの切替えによって選択できる無停電電源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−283729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した常時インバータ方式は、商用電源の異常の有無に関わらずインバータやインバータに係る回路を常に動作させている。このため、常時インバータ方式では、商用電源の異常検出時点からバックアップ開始時点までの時間がきわめて短いという利点がある。その一方で、常時インバータ方式では、インバータやインバータに係る回路を常時動作させているために、電力の消費量は、上述した常時商用方式よりも大きくなる。
【0008】
一方、上述した常時商用方式は、商用電源の正常時には、インバータやインバータに係る回路は動作させないので、常時インバータ方式と比較すると低消費電力であるという利点がある。その一方で、常時商用方式では、商用電源の異常を検出した後にインバータやインバータに係る回路の動作を開始する。このため、常時商用方式では、商用電源の異常検出時点からバックアップ開始時点までの時間が常時インバータ方式よりも長くなる。
【0009】
特許文献1の無停電電源装置では、常時インバータ方式と常時商用方式とが切替え可能であり、ユーザの要求に応じていずれか一方の方式が選択できる。たとえばコンピュータ装置がデータのバックアップ処理などの一時停止しては困るような重要な処理を行っているときには、常時インバータ方式とすることが好ましい。一方、コンピュータ装置がアイドリング中である場合や一時停止しても支障の無い処理を行っている場合であれば常時商用方式でよい。
【0010】
しかしながら、一般的にみて、無停電電源装置が置かれている場所は、ユーザの足元や物陰など、ユーザが直接操作を行うには適さない場所であることが多い。したがって、特許文献1のように、無停電電源装置が常時インバータ方式と常時商用方式の切替え機能を有していても、ユーザがこの機能を有効に活用できるとは限らない。
【0011】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、ユーザが常時インバータ方式と常時商用方式の切替え機能を有効に活用することができる無停電電源装置、アプリケーションプログラム、コンピュータシステム、バックアップ処理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の観点は、無停電電源装置としての観点である。すなわち、本発明の無停電電源装置は、省電力モードを有し、自己が省電力モードを選択している旨の省電力モード選択情報を外部に伝達するコンピュータ装置の電源をバックアップする無停電電源装置において、省電力モード選択情報を受け取るモード選択情報受取部と、モード選択情報受取部が省電力モード選択情報を受け取ったことを契機として、商用電源の異常の検出の有無に関わらず、インバータから電源供給する常時インバータ方式、または、商用電源の異常が検出されていないときは、商用電源から電源供給し、商用電源の異常が検出されたときは、インバータから電源供給する常時商用方式のいずれかを選択する処理を実行する制御部と、を備えるものである。
【0013】
たとえば制御部は、モード選択情報受取部が省電力モード選択情報を受け取っている期間では、常時商用方式に切替えることができる。あるいは、制御部は、モード選択情報受取部が省電力モード選択情報を受け取った時点から所定時間が経過するまでの期間では、常時商用方式に切替えることができる。もしくは、制御部における処理の内容を設定変更する処理内容設定部を備えることもできる。
【0014】
本発明の第二の観点は、アプリケーションプログラムとしての観点である。すなわち、本発明のアプリケーションプログラムは、省電力モードを有するコンピュータ装置にインストールされ、そのコンピュータ装置に、自己が省電力モードを選択している旨の省電力モード選択情報を外部に伝達するモード選択情報出力部の機能を実現するものである。
【0015】
本発明の第三の観点は、コンピュータシステムとしての観点である。すなわち、本発明のコンピュータシステムは、省電力モードを有し、自己が省電力モードを選択している旨の省電力モード選択情報を外部に伝達するコンピュータ装置と、コンピュータ装置の電源をバックアップする無停電電源装置と、を備えるコンピュータシステムにおいて、無停電電源装置は、省電力モード選択情報を受け取るモード選択情報受取部と、モード選択情報受取部が省電力モード選択情報を受け取ったことを契機として、商用電源の異常の検出の有無に関わらず、インバータから電源供給する常時インバータ方式、または、商用電源の異常が検出されていないときは、商用電源から電源供給し、商用電源の異常が検出されたときは、インバータから電源供給する常時商用方式のいずれかを選択する処理を実行する制御部と、を備えるものである。
【0016】
たとえば制御部は、モード選択情報受取部が省電力モード選択情報を受け取っている期間では、常時商用方式に切替えることができる。あるいは、制御部は、モード選択情報受取部が省電力モード選択情報を受け取った時点から所定時間が経過するまでの期間では、常時商用方式に切替えることができる。もしくは、制御部における処理の内容を設定変更する処理内容設定部を備えることもできる。
【0017】
本発明の第四の観点は、バックアップ処理方法としての観点である。すなわち、本発明のバックアップ処理方法は、省電力モードを有し、自己が省電力モードを選択している旨の省電力モード選択情報を外部に伝達するコンピュータ装置の電源をバックアップする無停電電源装置が実行するバックアップ処理方法において、省電力モード選択情報を受け取るモード選択情報受取ステップと、モード選択情報受取ステップの処理により省電力モード選択情報を受け取ったことを契機として、商用電源の異常の検出の有無に関わらず、インバータから電源供給する常時インバータ方式、または、商用電源の異常が検出されていないときは、商用電源から電源供給し、商用電源の異常が検出されたときは、インバータから電源供給する常時商用方式のいずれかを選択する処理を実行する省電力処理実行ステップと、を有するものである。
【0018】
たとえば省電力処理実行ステップの処理は、モード選択情報受取ステップの処理により省電力モード選択情報を受け取っている期間では、常時商用方式に切替える処理である。あるいは、省電力処理実行ステップの処理は、モード選択情報受取ステップの処理により省電力モード選択情報を受け取った時点から所定時間が経過するまでの期間では、常時商用方式に切替える処理であることもできる。もしくは、省電力処理実行ステップにおける処理の内容を設定変更する処理内容設定ステップを有することもできる。
【0019】
本発明の第五の観点は、プログラムとしての観点である。すなわち、本発明のプログラムは、情報処理装置にインストールすることにより、その情報処理装置に、本発明の無停電電源装置におけるモード選択情報受取部、制御部、処理内容設定部、の機能を実現するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ユーザが常時インバータ方式と常時商用方式の切替え機能を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るコンピュータシステムの全体構成図である。
【図2】図1の制御部の動作手順を示すフローチャートである。
【図3】図2の動作手順の実行に伴う図1の省電力モード選択スイッチのON/OFF状況、方式切替部の切替状況、コンピュータ装置の稼働状況を並列に示すタイムチャートを示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るコンピュータシステムの全体構成図である。
【図5】図4の制御部の動作手順を示すフローチャートである。
【図6】図5の動作手順の実行に伴う図4の省電力モード選択スイッチのON/OFF状況、方式切替部の切替状況、コンピュータ装置の稼働状況を並列に示すタイムチャートを示す図である。
【図7】図4の制御部の図5とは別の動作手順を示すフローチャートである。
【図8】図7の動作手順の実行に伴う図4の省電力モード選択スイッチのON/OFF状況、方式切替部の切替状況、コンピュータ装置の稼働状況を並列に示すタイムチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(本発明の第1の実施の形態に係るコンピュータシステム1について)
本発明の第1の実施の形態に係るコンピュータシステム1の構成について図1を参照して説明する。コンピュータシステム1は、無停電電源装置2およびコンピュータ装置3を備える。無停電電源装置2は、交流電源4から入力した交流電力をコンピュータ装置3に供給する。
【0023】
無停電電源装置2は、AC/DC変換部10、バッテリ11、DC/AC変換部12、方式切替部13、モード選択情報受付部14、電源出力部15、制御部16を備える。
【0024】
AC/DC変換部10は、交流電源4から入力した交流電力を直流電力に変換する部材であり、いわゆるコンバータと呼ばれる部材である。
【0025】
バッテリ11は、AC/DC変換部10から出力された直流電力を蓄積する部材である。
【0026】
DC/AC変換部12は、バッテリ11から出力される直流電力を交流電力に変換する部材であり、いわゆるインバータと呼ばれる部材である。
【0027】
方式切替部13は、制御部16からの指示に従って、電源出力部15の電源供給源を商用電源4またはDC/AC変換部12に切替える部材である。
【0028】
モード選択情報受取部14は、コンピュータ装置3からのモード選択情報を受け取り制御部16に伝える部材である。
【0029】
電源出力部15は、外部機器に対して電源を出力する部材であり、たとえば電源端子である。
【0030】
制御部16は、図1では、方式切替部13のみ制御するように図示したが、無停電電源装置2の各部を制御する部材であり、たとえばCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal
Processor)またはマイクロコンピュータチップとして構成されたLSI(Large Scale
Integration)である。また、図1では、商用電源4の異常を検出する部材の図示を省略してあるが、制御部16が図示しない商用電源4の異常監視部からの電源異常情報を受け取って商用電源4の異常を検出することとする。
【0031】
コンピュータ装置3は、コンピュータ機能部20、省電力モード選択スイッチ21、省電力処理実行部22、モード選択情報出力部23、電源入力部24を備える。また、コンピュータ装置3は、図示しない稼働状況出力部からの稼働情報を無停電電源装置2の制御部16に伝達するものとする。
【0032】
コンピュータ機能部20は、コンピュータ本来の演算機能および制御機能を有する部材である。
【0033】
省電力モード選択スイッチ21は、コンピュータ装置3を省電力モードで運用する際にユーザがON状態に操作するスイッチである。
【0034】
省電力処理実行部22は、省電力モード選択スイッチ21がユーザによってON状態に操作されたことを受け、コンピュータ装置3を省電力モードで運用する処理を実行する部材である。
【0035】
モード選択情報出力部23は、省電力モード選択スイッチ21がユーザによってON状態に操作されたことを外部に伝達するための部材である。
【0036】
なお、モード選択情報出力部23の機能については、コンピュータ装置3に、アプリケーションプログラムをインストールすることによって実現するようにしてもよい。また、このアプリケーションプログラムは、無停電電源装置2を購入した際に、無停電電源装置2に付属するCD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)などによってコンピュータ装置3のユーザに提供されてもよい。
【0037】
(コンピュータシステム1の動作について)
次に、コンピュータシステム1の動作について説明する。コンピュータ装置3の省電力処理実行部22が行うコンピュータ装置3における省電力モードとは、たとえばコンピュータ装置3のキーボード(不図示)やマウス(不図示)が一定時間操作されないとディプレイやHDD(Hard Disc Drive)の電源を自動的にOFF状態にするといったモードである。
【0038】
なお、コンピュータ装置3のキーボードやマウスが一定時間操作されないとディプレイやHDDの電源を自動的にOFF状態にするような機能は、通常のモードにおいても動作するが、省電力モードに切替えられた場合には、キーボードやマウスが操作されなくなってからディスプレイやHDDの電源を自動的にOFF状態にするまでの時間を通常のモードのときよりも短くするなどとする。
【0039】
その他にも省電力モードにおいてはディスプレイの明度を低くするなど、コンピュータ装置3の省電力化に配慮した様々な処理が行われる。この省電力処理は、省電力処理実行部22によって行われる。
【0040】
このように、コンピュータ装置3の省電力モード選択スイッチ21がユーザによってON状態に操作され、コンピュータ装置3が省電力モードである場合には、モード選択情報出力部23から無停電電源装置2のモード選択情報受取部14に対して省電力モード選択情報が出力される。
【0041】
なお、無停電電源装置2のDC/AC変換部12は、いわゆるインバータに相当する。したがって、方式切替部13がDC/AC変換部12の側に切替えられている場合、無停電電源装置2は特許文献1でいう常時インバータ方式によって運転されていることになる。また、方式切替部13が商用電源14の側に切替えられている場合、無停電電源装置2は特許文献1でいう常時商用方式によって運転されていることになる。
【0042】
また、図1では、説明を分り易くするために、方式切替部13が商用電源14の側に切替えられている場合、商用電源14と方式切替部13との間には何も介在しないように図示した。しかしながら、ここには特許文献1のフィルタなどが介在してもよい。
【0043】
次に、無停電電源装置2の動作について図2、図3を参照しながら説明する。図2は、無停電電源装置2の制御部16が行う動作手順を示すフローチャートである。図3は、図2の動作手順の実行に伴うコンピュータ装置3の省電力モード選択スイッチ21のON/OFF状況、方式切替部13の切替え状況、コンピュータ装置3の運転状況を並列に示すタイムチャートである。
【0044】
START:制御部16は、無停電電源装置2が起動されると、ステップS1の処理へ移行する。
【0045】
ステップS1:制御部16は、コンピュータ装置3の稼働情報に基づきコンピュータ装置3が稼働中か否かを判断する。すなわち、制御部16は、コンピュータ装置3が稼働中であれば(ステップS1でYes)、ステップS2の処理へ移行する。一方、制御部16は、コンピュータ装置3が停止中であれば(ステップS1でNo)、ステップS6の処理へ移行する。
【0046】
ステップS2:制御部16は、モード選択情報受取部14がコンピュータ装置3からの省電力モード選択情報を受け取っているか否かを判断する。すなわち、制御部16は、モード選択情報受取部14がコンピュータ装置3からの省電力モード選択情報を受け取っている場合(ステップS2でYes)、ステップS3の処理へ移行する。一方、制御部16は、モード選択情報受取部14がコンピュータ装置3からの省電力モード選択情報を受け取っていない場合(ステップS2でNo)、ステップS5の処理へ移行する。
【0047】
ステップS3:制御部16は、方式切替部13を商用電源4側に切替えてステップS4の処理へ移行する。
【0048】
ステップS4:制御部16は、モード選択情報受取部14がコンピュータ装置3からの省電力モード選択情報を受け取っていないか否かを判断する。すなわち、制御部16は、モード選択情報受取部14がコンピュータ装置3からの省電力モード選択情報を受け取っていない場合(ステップS4でYes)、ステップS5の処理へ移行する。一方、制御部16は、モード選択情報受取部14がコンピュータ装置3からの省電力モード選択情報を受け取っている場合(ステップS4でNo)、ステップS3の処理へ戻る。
【0049】
ステップS5:制御部16は、方式切替部13をDC/AC変換部12側に切替えてステップS1の処理へ戻る。
【0050】
ステップS6:制御部16は、方式切替部13を商用電源4側に切替えてステップS1の処理へ戻る。
【0051】
これにより、制御部16は、コンピュータ装置3の省電力モード選択スイッチ21がON状態である期間(図3のT1、T2)は、無停電電源装置2を常時商用方式で運転し(図3のT3、T4)、コンピュータ装置3の省電力モード選択スイッチ21がOFF状態である期間は(図3のT5、T6、T7)、無停電電源装置2を常時インバータ方式で運転する(図3のT8、T9、T10)ことができる。
【0052】
また、制御部16は、コンピュータ装置3が稼働中であれば(図3のT11)、コンピュータ装置3の省電力モード選択スイッチ21のON/OFF状況によって常時商用方式/常時インバータ方式を切り替えるが、コンピュータ装置3が停止中であれば(図3のT12)、無停電電源装置2を常時商用方式で運転する(図3のT13)。
【0053】
これによれば、ユーザは、単に、コンピュータ装置3の省電力モード選択スイッチ21のみを操作すればよく、無停電電源装置2は、自動的に省電力運転を行うことができる。したがって、無停電電源装置2がユーザの足元や物陰に置いてあってもユーザは無停電電源装置2を直接操作する必要がなく、ユーザが常時インバータ方式と常時商用方式の切替え機能を有効に活用することができる。
【0054】
また、ユーザがコンピュータ装置3の省電力モード選択スイッチ21をON状態に操作するという状況は、ユーザは、コンピュータ装置3が一時停止しては困るような重要な処理をコンピュータ装置3によって行っていない状況である。よって、ユーザは無意識に無停電電源装置2を最適化された省電力運転パターンで運用することができる。
【0055】
(本発明の第2の実施の形態に係るコンピュータシステム1Aについて)
本発明の第2の実施の形態に係るコンピュータシステム1Aの構成について図4を参照して説明する。コンピュータシステム1Aは、コンピュータシステム1とは一部が異なる。以下では、コンピュータシステム1と同一または同種の部材は同一または同一系の符号を用いて説明し、その説明を省略または簡略化し、かつ異なる部材について主として説明する。
【0056】
コンピュータシステム1Aにおける無停電電源装置2Aは、処理内容設定部17を備える。制御部16Aは、モード選択情報受取部14からの省電力モード選択情報および商用電源4の電源異常情報に従って、方式切替部13Aを商用電源4側またはDC/AC変換部12側に切替える。その際に、制御部16Aは、処理内容設定部17を参照して方式切替部13の切替処理を制御する。
【0057】
処理内容設定部17は、制御部16Aが行う処理の内容をユーザが設定できる部材であり、たとえばRAM(Random Access Memory)などのメモリを有する演算回路である。また、たとえばユーザは、処理内容設定部17に対し制御部16Aの動作手順を示すフローチャートを設定することができる。
【0058】
次に、無停電電源装置2Aの動作について図5、図6を参照しながら説明する。図5は、無停電電源装置2Aの制御部16Aが行う動作手順を示すフローチャートである。図6は、図5の動作手順の実行に伴うコンピュータ装置3の省電力モード選択スイッチ21のON/OFF状況、方式切替部13Aの切替え状況、コンピュータ装置3の運転状況を並列に示すタイムチャートである。
【0059】
なお、図5のフローチャートにおけるSTART、ステップS1、S2、S3、S5、S6の処理については、図2のフローチャートと同様であるので説明を省略する。
【0060】
また、図5のフローチャートでは、ステップS10において制御部16Aは「所定時間」の経過を判断しているが、この所定時間および図5に示すフローチャートは、ユーザが処理内容設定部17に設定したものである。
【0061】
ステップS10:制御部16Aは、処理内容設定部17に設定されている所定時間が経過したか否かを判断する。すなわち、制御部16Aは、所定時間が経過した場合(ステップS10でYes)、ステップS5の処理へ移行する。一方、制御部16Aは、所定時間が経過していない場合(ステップS10でNo)、ステップS3の処理へ戻る。
【0062】
これにより、制御部16Aは、コンピュータ装置3の省電力モード選択スイッチ21がON状態となった時点から所定時間が経過するまでの期間は、無停電電源装置2Aを常時商用方式で運転し、所定時間が経過した後は無停電電源装置2Aを常時インバータ方式で運転することができる。
【0063】
これによれば、コンピュータ装置3が通常モード(図6のT20)から省電力モード(図6のT21)になった後、省電力モードを解除したり(図6のT22)、稼働を停止した場合(図6のT24)でも所定時間が経過するまでの期間は、無停電電源装置2Aを常時商用方式としたままにすることができる(図6のT25)。たとえばユーザが終業時間前にコンピュータ装置3を省電力モードに設定した後、終業時間となりコンピュータ装置3を完全に停止させたような場合、翌朝の始業時間までの間、無停電電源装置2Aを常時商用方式のままとすることができる。
【0064】
したがって、コンピュータ装置3が完全に停止しているにも関わらず無停電電源装置2Aが常時インバータ方式になっているといった事態を回避でき、無停電電源装置2Aの省電力化を図ることができる。
【0065】
ただし、図5のフローチャートによれば、所定時間が経過する以前に、コンピュータ装置3が稼働中になっても(図6のT26)、無停電電源装置2Aは、常時商用方式のままとなる(図6のT27)。すなわち、図5の動作手順によれば、所定時間が経過するまでは(図6のT25)、コンピュータ装置3にデータのバックアップ処理などのコンピュータ装置3が一時停止しては困るような重要な処理を実行させないことが好ましい。
【0066】
このような動作手順は、たとえばコンピュータシステム1Aの管理者が予め決められた時間外におけるコンピュータ装置3の使用を差し控えるようにしたいといった要望に適する。すなわち、コンピュータシステム1Aの管理者が処理内容設定部17に図5のフローチャートおよび所定時間を設定することにより、いったん省電力モード選択スイッチ21をON状態とすれば、その時点から所定時間以内においては、無停電電源装置2Aは、常時商用方式となる。
【0067】
よって、この所定時間内においては、コンピュータ装置3を使用したデータのバックアップなどのコンピュータ装置3が一時停止しては困るような重要かつ高負荷な作業は行い難い状況になる。これにより、コンピュータシステム1Aは、管理者が設定した時間外における負荷の高い作業を行うことが難しくなり、管理者の思惑に沿ったコンピュータ装置3の運用を推進することができる。
【0068】
その一方で、無停電電源装置2Aは、処理内容設定部17の処理内容を変更することにより、別の動作手順も実行可能となる。この例を図7、図8を参照して説明する。
【0069】
図7は、無停電電源装置2Aの制御部16Aが行う動作手順を示すフローチャートである。図8は、図7の動作手順の実行に伴うコンピュータ装置3の省電力モード選択スイッチ21のON/OFF状況、方式切替部13Aの切替え状況、コンピュータ装置3の運転状況を並列に示すタイムチャートである。
【0070】
なお、図7のフローチャートにおけるSTART、ステップS1、S2、S3、S5、S6の処理については、図5のフローチャートと同様であるので説明を省略する。
【0071】
ステップS20:制御部16Aは、処理内容設定部17に設定されている所定時間が経過したか否かを判断する。すなわち、制御部16Aは、所定時間が経過した場合(ステップS20でYes)、ステップS5の処理へ移行する。一方、制御部16Aは、所定時間が経過していない場合(ステップS20でNo)、ステップS21の処理へ移行する。
【0072】
ステップS21:制御部16Aは、コンピュータ装置3が稼働中か否か判断する。すなわち、制御部16Aは、コンピュータ装置3が稼働中である場合(ステップS21でYes)、ステップS5の処理へ移行する。一方、制御部16Aは、コンピュータ装置3が停止中である場合(ステップS21でNo)、ステップS3の処理へ戻る。
【0073】
これにより、制御部16Aは、コンピュータ装置3の省電力モード選択スイッチ21がON状態となった時点(図8のT30)から所定時間の計時を開始する(図8のT31)が、コンピュータ装置3が停止した時点(図8のT32)で無停電電源装置2Aを常時商用方式で運転する(図8のT33)。また、制御部16Aは、所定時間内であってもコンピュータ装置3の運転が再開された時点で(図8のT34)、無停電電源装置2Aを常時インバータ方式で運転する(図8のT35)。
【0074】
これにより、上述した所定時間内においてもコンピュータ装置3を使用したデータのバックアップなどのコンピュータ装置3が一時停止しては困るような重要な作業を行うことができる。
【0075】
このように、コンピュータシステム1Aの管理者などのユーザが処理内容設定部17の処理内容を変更することによって、たとえば図5に示す動作手順や図7に示す動作手順などを制御部16Aに実行させることができる。なお、図5、図7に示す動作手順は一例であり、処理内容を設定することによってこの他にも様々な動作手順を制御部16Aに行わせることができる。
【0076】
(プログラムを用いた実施の形態)
また、無停電電源装置2の制御部16、無停電電源装置2Aの制御部16A、処理内容設定部17は、所定のプログラムにより動作する汎用の情報処理装置(CPU、DSP、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)など)によって構成されてもよい。例えば、汎用の情報処理装置は、メモリ、CPU、入出力ポートなどを有する。汎用の情報処理装置のCPUは、メモリなどから所定のプログラムとして制御プログラムを読み込んで実行する。これにより、汎用の情報処理装置には、制御部16、16A、処理内容設定部17の機能が実現される。また、その他の機能についてもソフトウェアにより実現可能な機能については汎用の情報処理装置とプログラムとによって実現することができる。
【0077】
なお、汎用の情報処理装置が実行する制御プログラムは、無停電電源装置2、2Aの出荷前に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであっても、無停電電源装置2、2Aの出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。また、制御プログラムの一部が、無停電電源装置2、2Aの出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。無停電電源装置2、2Aの出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶される制御プログラムは、例えば、CD−ROMなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶されているものをインストールしたものであっても、インターネットなどの伝送媒体を介してダウンロードしたものをインストールしたものであってもよい。
【0078】
また、制御プログラムは、汎用の情報処理装置によって直接実行可能なものだけでなく、ハードディスクなどにインストールすることによって実行可能となるものも含む。また、圧縮されたり、暗号化されたりしたものも含む。
【0079】
(他の実施の形態)
本発明の実施の形態は、その要旨を逸脱しない限り、様々に変更が可能である。たとえばコンピュータ装置3と無停電電源装置2、2Aとの間は、専用線によって接続されてもLAN(Local Area Network)などのネットワークによって接続されてもよい。あるいは、コンピュータ装置3と無停電電源装置2、2Aとの間は、有線信号で接続されても無線信号で接続されてもよい。
【0080】
また、処理内容設定部17に設定する動作手順については、図5、図7に示したようなフローチャートの全部ではなく、その一部の内容のみを変更するようにしてもよい。たとえば「所定時間」のみを変更可能にしたり、あるいは、予め図5、図7に示したようなフローチャートを処理内容設定部17に多数記憶しておき、その中からいずれか一つをユーザが単に選択するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1、1A…コンピュータシステム、2、2A…無停電電源装置、3…コンピュータ装置、4…交流電源、10…AC/DC変換部、11…バッテリ、12…DC/AC変換部、13、13A…方式切替部、14…モード選択情報受取部、15…電源出力部、16、16A…制御部、17…処理内容設定部、20…コンピュータ機能部、21…省電力モード選択スイッチ、22…省電力処理実行部、23…モード選択情報出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
省電力モードを有し、自己が上記省電力モードを選択している旨の省電力モード選択情報を外部に伝達するコンピュータ装置の電源をバックアップする無停電電源装置において、
上記省電力モード選択情報を受け取るモード選択情報受取部と、
上記モード選択情報受取部が上記省電力モード選択情報を受け取ったことを契機として、商用電源の異常の検出の有無に関わらず、インバータから電源供給する常時インバータ方式、または、上記商用電源の異常が検出されていないときは、上記商用電源から電源供給し、上記商用電源の異常が検出されたときは、上記インバータから電源供給する常時商用方式のいずれかを選択する処理を実行する制御部と、
を備える、
ことを特徴とする無停電電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の無停電電源装置において、
前記制御部は、前記モード選択情報受取部が前記省電力モード選択情報を受け取っている期間では、前記常時商用方式に切替える、
ことを特徴とする無停電電源装置。
【請求項3】
請求項1記載の無停電電源装置において、
前記制御部は、前記モード選択情報受取部が前記省電力モード選択情報を受け取った時点から所定時間が経過するまでの期間では、前記常時商用方式に切替える、
ことを特徴とする無停電電源装置。
【請求項4】
請求項1記載の無停電電源装置において、
前記制御部における処理の内容を設定変更する処理内容設定部を備える、
ことを特徴とする無停電電源装置。
【請求項5】
省電力モードを有するコンピュータ装置にインストールされ、
そのコンピュータ装置に、自己が上記省電力モードを選択している旨の省電力モード選択情報を外部に伝達するモード選択情報出力部の機能を実現する、
ことを特徴とするアプリケーションプログラム。
【請求項6】
省電力モードを有し、自己が上記省電力モードを選択している旨の省電力モード選択情報を外部に伝達するコンピュータ装置と、
上記コンピュータ装置の電源をバックアップする無停電電源装置と、
を備えるコンピュータシステムにおいて、
上記無停電電源装置は、
上記省電力モード選択情報を受け取るモード選択情報受取部と、
上記モード選択情報受取部が上記省電力モード選択情報を受け取ったことを契機として、商用電源の異常の検出の有無に関わらず、インバータから電源供給する常時インバータ方式、または、上記商用電源の異常が検出されていないときは、上記商用電源から電源供給し、上記商用電源の異常が検出されたときは、上記インバータから電源供給する常時商用方式のいずれかを選択する処理を実行する制御部と、
を備える、
ことを特徴とするコンピュータシステム。
【請求項7】
請求項6記載のコンピュータシステムにおいて、
前記制御部は、前記モード選択情報受取部が前記省電力モード選択情報を受け取っている期間では、前記常時商用方式に切替える、
ことを特徴とするコンピュータシステム。
【請求項8】
請求項6記載のコンピュータシステムにおいて、
前記制御部は、前記モード選択情報受取部が前記省電力モード選択情報を受け取った時点から所定時間が経過するまでの期間では、前記常時商用方式に切替える、
ことを特徴とするコンピュータシステム。
【請求項9】
請求項6記載のコンピュータシステムにおいて、
前記制御部における処理の内容を設定変更する処理内容設定部を備える、
ことを特徴とするコンピュータシステム。
【請求項10】
省電力モードを有し、自己が上記省電力モードを選択している旨の省電力モード選択情報を外部に伝達するコンピュータ装置の電源をバックアップする無停電電源装置が実行するバックアップ処理方法において、
上記省電力モード選択情報を受け取るモード選択情報受取ステップと、
上記モード選択情報受取ステップの処理により上記省電力モード選択情報を受け取ったことを契機として、商用電源の異常の検出の有無に関わらず、インバータから電源供給する常時インバータ方式、または、上記商用電源の異常が検出されていないときは、上記商用電源から電源供給し、上記商用電源の異常が検出されたときは、上記インバータから電源供給する常時商用方式のいずれかを選択する処理を実行する省電力処理実行ステップと、
を有する、
ことを特徴とするバックアップ処理方法。
【請求項11】
請求項10記載のバックアップ処理方法において、
前記省電力処理実行ステップの処理は、前記モード選択情報受取ステップの処理により前記省電力モード選択情報を受け取っている期間では、前記常時商用方式に切替える処理である、
ことを特徴とするバックアップ処理方法。
【請求項12】
請求項10記載のバックアップ処理方法において、
前記省電力処理実行ステップの処理は、前記モード選択情報受取ステップの処理により前記省電力モード選択情報を受け取った時点から所定時間が経過するまでの期間では、前記常時商用方式に切替える処理である、
ことを特徴とするバックアップ処理方法。
【請求項13】
請求項10記載のバックアップ処理方法において、
前記省電力処理実行ステップにおける処理の内容を設定変更する処理内容設定ステップを有する、
ことを特徴とするバックアップ処理方法。
【請求項14】
情報処理装置にインストールすることにより、その情報処理装置に、請求項1または4記載の無停電電源装置における前記モード選択情報受取部、前記制御部、前記処理内容設定部、の機能を実現する、
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−45176(P2011−45176A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190895(P2009−190895)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(390013723)TDKラムダ株式会社 (272)
【Fターム(参考)】