説明

無停電電源装置

【課題】商用電源異常時にDC−DCコンバータに流れる放電電流を低減し、無停電電源装置を低コスト・小型化する。
【解決手段】通常蓄電池を充電するDC−DCコンバータ5は、商用電源異常時に蓄電池7を昇圧して放電しインバータ3へ直流電力を供給する。商用電源正常時に交流を直流に変換するコンバータ2を、商用電源1に異常が発生した場合にコンバータ動作を停止し、切換器13はコンバータ2と蓄電池7を接続した状態にする。この状態で、コンバータ2のスイッチング素子22がDC−DCコンバータ5と同様の動作をすることにより、蓄電池7よりインバータ3への電力供給を可能とする。この手段により、商用電源異常時に動作するDC−DCコンバータが複数構成になり、DC−DCコンバータ5に流れる電流は低減し、使用するスイッチング素子21,22の低価格化や員数低減が可能であり、DC−DCコンバータ用リアクトルの小型化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電用DC−DCコンバータと、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などの可制御型スイッチング素子を用いた交流電圧を直流電圧に変換するコンバータを持つ無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無停電電源装置の使命は、商用電源の異常時においても安定した電圧源として負荷に電力を供給することである。すなわち、商用電源に異常が発生した場合、コンバータを即座に停止し、商用電源に換わり蓄電池を放電させて負荷に電力を供給する。商用電源正常時では、異常時の蓄電池放電に備え、蓄電池を充電する必要がある。この蓄電池に関する充電回路および放電回路の構成は様々である。
【0003】
従来の無停電電源装置では、整流した直流電圧部に蓄電池を配置しているものが多く、このように配置した蓄電池において、放電終止時に定格電圧をインバータから出力できるようにするためには、蓄電池の直列数を大きくする必要がある。また、蓄電池電圧は満充電時と放電終止時で差が大きいため、選定すべきスイッチング素子の定格電圧は、交流電圧から選定される定格電圧に比べて大きくする必要がある。
【0004】
これに対して、近年の無停電電源装置では、コンバータとインバータ間に平滑コンデンサを配置し、蓄電池にはDC−DCコンバータを介して直流電圧を供給する構成としたものが多く採用されている。この場合の蓄電池の充電方法としては、DC−DCコンバータにより直流電圧を降圧する手段が多く採られている。そしてこの方式の場合の商用電源異常時の蓄電池放電運転の方法には、大きく分けて二通りある。
【0005】
一つ目の方法は、DC−DCコンバータを充電と放電の双方向DC−DCコンバータ回路として構成し、充放電用回路を共通で使用する方法である。この方法では、スイッチング素子に逆接続されたダイオードを利用することで、降圧モードおよび昇圧モードで動作させる2つのスイッチング素子を、例えば同一のIGBTモジュールで構成することができるとともに、リアクトルも共通で使用できるという利点がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
二つ目の方法は、コンバータの入力接続先を蓄電池または商用電源に切り替える方法である。この方法では、商用電源異常時に、コンバータの入力を瞬間的に蓄電池に切り換え、コンバータを昇圧チョッパのスイッチング回路として動作させることにより、インバータに直流電力を供給するようにする。この放電方式は、ハーフブリッジあるいはフルブリッジ変換器を使用した無停電電源装置で採用されている。ただし、この方式の場合、充電回路を別に設ける必要がある(例えば、特許文献2、3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平10−248246号公報
【特許文献2】特開平8−65920号公報
【特許文献3】特開平11−234923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、蓄電池は、放電が継続すると、その電圧が小さくなり放電電流が大きくなる。一方、放電回路に使用するスイッチング素子の定格電流や定格損失は、放電電流が最大になるときを満足しなくてはならない。また、蓄電池のセル数が小さい場合や三相無停電電源装置である場合には、この放電電流が入出力の交流電流より比較的大きくなることがある。さらに放電電流は直流であるため平均電流が交流電流より大きく、スイッチング素子の損失は大きくなるという問題が発生する。
【0009】
すなわち、充放電用DC−DCコンバータに使用するスイッチング素子は、放電時の仕様により、所定の特性のものを選択して用いる必要がある。このため、コンバータやインバータの仕様から選定できる範囲のスイッチング素子よりも、電流や損失などの定格が大きいスイッチング素子を選定する必要があり、結果として高価なものになってしまう。また、DC−DCコンバータのスイッチング素子を、コンバータやインバータに使用するスイッチング素子を含んだ、例えば6素子入りの同一のモジュールで使用する場合には、放電電流による仕様から素子を選定しなくてはならない。さらにDC−DCコンバータに使用するリアクトルについても、最大放電電流を考慮して選定する必要がある。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みて成されたものであって、その目的は、蓄電池の充放電用DC−DCコンバータに流れる放電電流を低減させることにより、低コスト、省スペース化が可能な無停電現装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の無停電電源装置は、商用電源を直流に変換するAC−DCコンバータと、このAC−DCコンバータで変換された直流電圧を平滑するコンデンサと、平滑コンデンサで平滑された直流電圧を交流電圧に変換して負荷に電力を供給するインバータと、商用電源から電力が正常に供給されているときは、AC−DCコンバータで変換された直流電圧をインバータに供給すると共に、該直流電圧を降圧して蓄電池を充電し、商用電源が異常状態のときは、商用電源の正常時に充電された蓄電池の電力を昇圧して放電することにより、インバータに直流電力を供給する充放電用DC−DCコンバータと、を具備する無停電電源装置において、AC−DCコンバータの前段に、蓄電池の電力をAC−DCコンバータに供給する切換手段を設け、商用電源が異常状態のときは、この切換手段を商用電源側から蓄電池側に切り換え、蓄電池の電力を昇圧してAC−DCコンバータに供給することにより、AC−DCコンバータをDC−DCコンバータとして動作させることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の好ましい形態としては、さらに、出力電力を監視する電力監視手段を設け、この電力監視手段によって出力電力の値が閾値を超えたことが検出された場合に、AC−DCコンバータを放電用DC−DCコンバータとして動作させ、この放電用DC−DCコンバータを放電経路に複数台配置することを特徴としている。
【0013】
さらに、本発明の好ましい形態としては、上述した無停電電源装置において、商用電源が異常状態のときは、充放電用DC−DCコンバータのスイッチング周期と、放電用DC−DCコンバータとして兼用するAC−DCコンバータのスイッチング周期とをずらすことにより、平滑コンデンサへ供給する直流電圧のリップル電流を低減させるようにする。
【0014】
また、更なる好ましい形態として、充放電用DC−DCコンバータと蓄電池との間に充放電の経路を分離する分離手段を設け、充電方向の経路に追加のリアクトルを設けるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、商用電源正常時に交流を直流に変換するAC―DCコンバータを、商用電源の異常時には放電用DC−DCコンバータとして動作させることにより、充放電専用のDC−DCコンバータに流れる放電電流を低減することができる。これにより、DC−DCコンバータに使用するリアクトルの小型化が可能になる。また、DC−DCコンバータに使用するスイッチング素子の選定範囲が広くなるので、低価格のスイッチング素子の使用が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を説明する。図1は本発明の一実施の形態例に係る無停電電源装置の構成を示すブロック図である。
【0017】
図1において、商用電源1からの交流の一端が、切換器13及びリアクトル81を通じてコンバータ2を構成する直列接続されたスイッチング素子21、22の接続中点に接続される。また、商用電源1からの交流の他端が、コンバータ2を構成する直列接続されたスイッチング素子23、24の接続中点に接続される。これらのスイッチング素子21、22及びスイッチング素子23、24は制御回路100からの信号によって駆動される。そしてこれらのスイッチング素子21、22及びスイッチング素子23、24の両端間に平滑用のコンデンサ6が接続される。
【0018】
さらにコンデンサ6の両端が、インバータ3を構成するそれぞれ直列接続されたスイッチング素子31、32及びスイッチング素子33、34の両端に接続される。これらのスイッチング素子31、32及びスイッチング素子33、34も制御回路100からの信号によって駆動される。そしてこれらのスイッチング素子31、32及びスイッチング素子33、34の接続中点が、それぞれローパスフィルタ10を通じて負荷4に接続される。また、ローパスフィルタ10の出力(電圧及び電流)が制御回路100の動作の切り換えを行う電力判別回路101に供給される。
【0019】
一方、コンデンサ6の両端間には、DC−DCコンバータ5を構成する直列接続されたスイッチング素子51、52の両端が接続される。このスイッチング素子51、52も制御回路100からの信号によって駆動される。そしてこのスイッチング素子51、52の接続中点が、直列接続されたリアクトル9、14、ダイオード11と、リアクトル14及びダイオード11に並列接続された放電運転用スイッチ12の回路を通じて蓄電池7に接続される。さらに蓄電池7が切換器13に接続される。これらの放電運転用スイッチ12及び切換器13も制御回路100からの信号によって駆動される。
【0020】
以上の構成を有する無停電電源装置において、コンバータ2は商用電源1の交流を直流に変換する。直流はさらにインバータ3で交流に逆変換され、ローパスフィルタ10を介して負荷4に電力を供給する。また、コンデンサ6はコンバータ2によって変換された直流電圧を平滑にするために装備する。このコンデンサ6の直流電圧は蓄電池7の電圧よりも大きくする。
【0021】
また、充放電用のDC−DCコンバータ5は、商用電源1が正常のとき降圧チョッパ回路として動作し蓄電池7を充電する。さらに商用電源1が異常のときは、充放電用のDC−DCコンバータ5は昇圧チョッパ回路として動作し蓄電池7からインバータ3に直流電力を供給する。蓄電池充電時の充電電流はリアクトル9、14、ダイオード11を介して蓄電池7に流れ、放電時は放電運転用スイッチ12をオンし、蓄電池7から放電運転用スイッチ12、リアクトル9を介してコンデンサ6へ電流を流す。
【0022】
なお、放電運転用スイッチ12は直流回路に使用するものでありラッチ型でよいため、サイリスタを使用するのが適当である。またコンバータ用リアクトル81はコンバータ2から発生する高調波を除去するためのフィルタの一部である。さらに切換器13は商用電源1が正常時の場合、コンバータ5と商用電源1を接続し、異常時にはコンバータ5と蓄電池7を接続するように切換わる。
【0023】
従って上述の無停電電源装置において、商用電源1の正常時は、上記の通りDC−DCコンバータ5は蓄電池7を充電するため降圧チョッパ回路として動作するように制御する。このときの降圧チョッパ回路は、コンデンサ6の直流電圧を電源として、DC−DCコンバータ5とダイオード11、蓄電池7およびスイッチング素子52に逆接続されたダイオードから構成する。このときは、スイッチング素子51のみスイッチングすればよい。
【0024】
商用電源1が異常になった場合、スイッチング素子51を停止し放電運転用スイッチ12をオンする。スイッチング素子51が停止して間もなく、リアクトル9のエネルギは全て放出され充電電流はなくなり、ダイオード11はオフ状態になる。このとき、蓄電池7を電源とした昇圧チョッパ回路の構成になり、スイッチング素子52を動作させる。
【0025】
スイッチング素子52がオンすると、DC−DCコンバータ用リアクトル9は蓄電池7の電圧が印加され、充電時と逆方向にエネルギを蓄積し、放電電流15が流れる。スイッチング素子52がオフのとき、放電電流15はスイッチング素子51と逆接続のダイオードを通り、コンデンサ6に流れる。
【0026】
以上のように、DC−DCコンバータ5はいわゆる双方向DC−DCコンバータとして動作する。ここで、商用電源異常時に動作するDC−DCコンバータ用リアクトル9を使用した昇圧チョッパ回路を専用チョッパと呼ぶことにする。
【0027】
次にコンバータ2の動作について説明する。まず商用電源正常時は、コンデンサ6の直流電圧を一定に保たせ、かつ入力力率を高めるためリアクトル電流16を正弦波に整形するコンバータ制御が行われる。このときリアクトル81は、コンバータ2で発生する高調波電流を抑制するだけでなく、商用電源1の電圧を昇圧させる働きもある。
【0028】
これに対して、商用電源1に異常が発生した場合には、コンバータ2を停止し切換器13はコンバータ2の接続先を蓄電池7に換える。ここで蓄電池7とリアクトル81、スイッチング素子21、22で構成される回路構成は、前述のリアクトル9及びスイッチング素子51、52と蓄電池7で構成する昇圧チョッパ回路と同じになり、スイッチング素子22が先述したスイッチング素子52と同様の動作をすることにより、蓄電池電圧を昇圧して放電することができる。
【0029】
すなわち、商用電源正常時及び異常時において、スイッチング素子21、22は、例えば図2に波形図を示すように駆動される。
【0030】
ここで、図2A、Bは商用電源正常時の波形図であって、入力交流の波形に合わせてPWM変調されたパルスでスイッチング素子21、22を駆動することにより、交流を直流に変換する。また、図2C、Dは商用電源1に異常が発生した場合の波形図であって、スイッチング素子21を停止し、スイッチング素子22を図2Dに示すように駆動することにより、蓄電池電圧を昇圧して放電することができる。このようにコンバータ用リアクトル81を使用して構成する昇圧チョッパ回路を兼用チョッパと呼ぶことにする。
【0031】
そして、商用電源1が正常状態に戻った場合、スイッチング素子22の動作を停止し、切換器13はコンバータ2の接続先を商用電源1に切換える。スイッチング素子22を含んだコンバータ2は再び交流−直流変換する順変換器の動作に戻り、商用電源1から電力を供給される。これにより、商用電源異常発生しても、インバータ3に安定な電力供給を続けることができ、また蓄電池放電用の昇圧チョッパ回路が2構成となるため、1つの昇圧チョッパ回路に流れる電流が低減するという、本発明の第一の目的を達成する。
【0032】
さらに本発明の無停電電源装置は、図3に示すようなハーフブリッジ変換器に適用した装置や、図4や図5に示すような三相機無停電電源装置においても実施できる。
【0033】
すなわち、図3の装置では、コンバータ2をスイッチング素子21、22からなるハーフブリッジで構成し、またインバータ3をスイッチング素子31、32からなるハーフブリッジで構成しているものである。このようなハーフブリッジの構成においても、図1のフルブリッジの構成と同様の無停電電源装置を構成することができる。
【0034】
また、図4の装置では、コンバータ2を三相の入力ごとにスイッチング素子21−22、23−24、25−26からなるハーフブリッジで構成し、インバータ3を三相の出力ごとにスイッチング素子31−32、33−34、35−36からなるハーフブリッジで構成している。これによって、三相機無停電電源装置を構成することできる。
【0035】
さらに図5の装置では、コンバータ2は三相の内の二相の入力に対してスイッチング素子21−22、23−24からなるハーフブリッジで構成し、インバータ3を三相の出力ごとにスイッチング素子31−32、33−34、35−36からなるハーフブリッジで構成すると共に、ローパスフィルタ10の三相の出力の一つを、三相入力の残りの一つに接続している。これによっても、三相機無停電電源装置を構成することできる。
【0036】
このような無停電電源装置の内、図4、図5の構成では交流回路が三相になっているため、蓄電池7からの放電電流と、交流電流の大きさの差が単相機と比較して大きくなる。これに対し本発明では、充放電用DC−DCコンバータ5に流れる放電電流を小さくすることができる。特に、図4では、切換器18を設けることでコンバータ2を兼用チョッパとして動作可能な相数が2つとなり、放電用DC−DCコンバータが3並列となる。よって、1台あたりに流れる放電電流はさらに低減する。
【0037】
さらにこの場合には、DC−DCコンバータ5は、コンバータ2やインバータ3に使用するスイッチング素子と同等品のスイッチング素子の使用が可能になる。または、DC−DCコンバータ5で使用するスイッチング素子の並列数を小さくすることが可能であり、コスト低減化、省スペース化を実現することができる。
【0038】
また、図3や図5の構成では、コンデンサ6に関わるスイッチング素子が3組または6組であることから、それぞれのスイッチング素子1組あたり1並列である場合に、6素子入りのモジュール品の使用が可能であり、部品点数を減らすことができる。これらの回路も、本発明によりスイッチング素子52に流れる電流を低減するため、モジュールの定格仕様を下げることができ、低価格化が可能である。
【0039】
ところで商用電源異常時において、専用チョッパと兼用チョッパの二つの昇圧チョッパ回路を常時動作させる必要はない。これは例えば、専用チョッパのみで停電運転を実施することを基本とし、インバータ3の出力電力があらかじめ設定した閾値を超過した場合に、兼用チョッパを動作させることができる。閾値の設定の方法は様々だが、専用チョッパが単独で動作できる出力電力の限界値を閾値と定めることが適当な手段である。
【0040】
これにより、商用電源正常時においてインバータ3の出力電力が閾値を超過している場合は、停電運転に切換わる瞬間から兼用チョッパを動作させ、そうでない場合は出力電力が停電運転の際中に閾値を超過した時点から兼用チョッパを動作させる。ただし、切換器13は兼用チョッパの動作に依らず、蓄電池7側に切換えておく。
【0041】
また、図4に示した実施の形態例では、放電用昇圧チョッパ回路が3構成であるため、出力電力監視による動作を3段階で実施できる。これにより、軽負荷におけるDC−DCコンバータ全体の効率が高くなる効果が得られる。なお、このような動作の制御は、ローパスフィルタ10の出力電力を電力判別回路101で監視し、その判別出力により制御回路100の動作の切り換えて行うことができる。
【0042】
さらに本発明の無停電電源装置においては、商用電源異常時に複数構成の昇圧チョッパ回路のスイッチング周期をずらすことにより、蓄電池7よりコンデンサ6に流れるリップル電流を低減することができる。
【0043】
すなわち図6、図7には、図1に示した無停電電源装置の実施形態例において、スイッチング周期を揃えた場合(図6)と、半周期ずらした場合(図7)の放電電流のリップル波形図を示す。ここで図6B、Dに示すようにスイッチング素子52、22のスイッチング周期が揃っていた場合には、図6Aに示す放電電流15と、図6Cに示す放電電流16の波形が一致し、図6Eに示すトータル放電電流は大きくなる。
【0044】
これに対して、図7B、Dに示すようにスイッチング素子52、22のスイッチング周期を半周期ずらした場合には、図7Aに示す放電電流15と、図7Cに示す放電電流16の波形がずれて、図7Eに示すトータル放電電流は小さくなる。この場合にトータル放電電流の波高値は三分の一に減少され、かつリップルの周波数が2倍になっている。なお、このようなスイッチング周期を半周期ずらす制御は制御回路100で行われる。
【0045】
従って、蓄電池7のトータルの放電電流のリップル電流の波高値が減少され、また、コンデンサ6で使用される電解コンデンサはリップル電流が高周波であるほど内部温度上昇の影響は小さくなることから、コンデンサ6の温度上昇を低減することができ、コンデンサ6の長寿命化に効果がある。なお、図6と図7に示す波形図は、コンバータ用リアクトル81とDC−DCコンバータ用リアクトル9のインダクタンスが同値の場合である。
【0046】
さらに、図8、図9には、図4に示した三相機無停電電源装置の実施形態例において、スイッチング周期を揃えた場合(図8)と、三分の一周期ずつずらした場合(図9)の放電電流のリップル波形図を示す。ここで図8B、D、Fに示すようにスイッチング素子52、22、24のスイッチング周期が揃っていた場合には、図8Aに示す放電電流15と、図8Cに示す放電電流16、図8Eに示す放電電流17の波形が一致し、図8Gに示すトータル放電電流は大きくなる。
【0047】
これに対して、図9B、D、Fに示すようにスイッチング素子52、22、24のスイッチング周期を三分の一周期ずつずらした場合には、図9Aに示す放電電流15と、図9Cに示す放電電流16、図8Eに示す放電電流17の波形がずれて、図8Gに示すトータル放電電流は小さくなる。この場合にトータル放電電流の波高値は九分の一に減少され、かつリップルの周波数が3倍になっている。なお、このようなスイッチング周期を三分の一周期ずつずらす制御は制御回路100で行われる。
【0048】
従って、この場合においても蓄電池7のトータルの放電電流のリップル電流の波高値が減少され、また、コンデンサ6で使用される電解コンデンサはリップル電流が高周波であるほど内部温度上昇の影響は小さくなることから、コンデンサ6の温度上昇を低減することができ、コンデンサ6の長寿命化に効果がある。なお、図8と図9に示す波形図は、コンバータ用リアクトル81、82とDC−DCコンバータ用リアクトル9のインダクタンスが同値の場合である。
【0049】
さらに、上述の図6〜図9に示した波形図は、駆動波形のオンDUTYを25%とした場合であるが、リップルの低減率は、DUTYによってその大きさが変化する。すなわち上記の値は、オンDUTYが25%で、昇圧チョッパ動作が連続モードであること、またリアクトルのインダクタンスの値が等しいことを条件としたものである。
【0050】
そして、上述の構成では、オンDUTYが50%に近づけば近づくほど、その低減率は大きくなる。すなわち、2スイッチング素子の場合、オンDUTY50%だとリップルはなくなる。また、2スイッチング素子の場合に、オンDUTY40%で六分の一まで低減し、オンDUTY30%で約四分の一に低減(1/3.5)させることができる。さらにオンDUTY25%で三分の一まで低減できるものである。
【0051】
また、上述の構成では、コンバータ用リアクトル81とDC−DCコンバータ用リアクトル9のインダクタンスを同値としているが、例えば図1に示した実施形態例で、設計上、交流運転時にコンバータ用リアクトル81に必要なインダクタンス値が、DC−DCコンバータ用リアクトル9のインダクタンスと比べかなり小さくする必要の生じる場合がある。その場合には、例えば図10に示すような回路を構成すればよい。
【0052】
すなわち図10では、昇圧チョッパ回路用として、切換器13と蓄電池7の間に放電運転用リアクトル84を実装する。この場合に、リアクトル84には、コンバータ用リアクトル81との和がDC−DCコンバータ用リアクトル9に相当するようなリアクトルを選定すればよい。これによって、コンバータ用リアクトル81、84と、DC−DCコンバータ用リアクトル9のインダクタンスを同値にすることができる。
【0053】
さらに制御に関して、専用チョッパと兼用チョッパがもつそれぞれのインピーダンスに差がある場合には、コンデンサ6の直流電圧を対象とした制御のみでは、放電電流15とリアクトル電流16はアンバランスする。よって、専用チョッパと兼用チョッパの制御に、放電電流15とリアクトル電流16の大きさを任意の比率にする電流制御を加えるほうがよい。
【0054】
ここで、通常は回路インピーダンスが小さいため、電流をバランスさせるためのパルス調整量はパルス幅に対し微小なる。そこで例えば図11に示すように、専用チョッパの制御はコンデンサ6の直流電圧制御のみとし、兼用チョッパでは直流電圧制御に必要なデューティに電流が任意な比率になるための電流制御量を付加する。図11の比率係数93により、放電電流15とリアクトル電流16を任意の比率に設定することが可能である。
【0055】
また、電流バランス制御の制御量は微小になるので、リミッタ94は直流電圧AVR92の制御量の十分の一程度でよい。電流バランス制御を実施することにより、リアクトル81とリアクトル9の素子値にバラツキやインダクタンス値に差がある場合でも、例えばインダクタンスの比が1:2のような場合においても一定の電流比が実現できる。
【0056】
以上の各実施形態例の説明から明らかなように、本発明に開示された無停電電源装置によれば、DC−DCコンバータ5に流れる放電電流が低減されることにより、スイッチング素子、リアクトルの低価格化および小型化が図れ、無停電電源装置の低コスト、省スペース化が可能となる。
【0057】
すなわち、本発明に開示された無停電電源装置によれば、DC−DCコンバータに使用するリアクトルの小型化が可能である。また、DC−DCコンバータに使用するスイッチング素子の選定範囲が広がるので、低価格のスイッチング素子を使用することができる。
【0058】
さらに、本発明は、特に中小容量無停電電源装置において、DC−DCコンバータのスイッチング素子はコンバータやインバータで使用するスイッチング素子と同一のモジュールで使用することを可能にする。また、大容量無停電電源装置においては、DC−DCコンバータに使用するスイッチング素子の並列数を小さくすることができる。このように本発明の無停電電源装置によれば、部品数の低減および小型化を図ることができるので、作業工程の縮小および省スペース化が可能となる。
【0059】
なお本発明は、上述の説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能とされるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施の形態例に係る無停電電源装置の構成を示す簡易回路図である。
【図2】コンバータ2を構成するスイッチング素子21、22に対する電源正常時及び異常時のスイッチング駆動の波形図である。
【図3】ハーフブリッジ変換器に適用した本発明の無停電電源装置の実施形態例の簡易回路図である。
【図4】一般的な三相機に適用した本発明の無停電電源装置の実施形態例の簡易回路図である。
【図5】入出力共通の相をもつ三相機に適用した本発明の無停電電源装置の実施形態例の簡易回路図である。
【図6】商用電源異常時に動作する2台の昇圧チョッパ回路のスイッチング周期とそのタイミングが一致する場合の蓄電池放電電流のリップルを表す関係図である。
【図7】商用電源異常時に動作する2台の昇圧チョッパ回路のスイッチング周期を半周期ずらした場合の蓄電池放電電流のリップルを表す関係図である。
【図8】商用電源異常時に動作する3台の昇圧チョッパ回路のスイッチング周期とそのタイミングが一致する場合の蓄電池放電電流のリップルを表す関係図である。
【図9】商用電源異常時に動作する3台の昇圧チョッパ回路のスイッチング周期を三分の一周期ずつずらした場合の蓄電池放電電流のリップルを表す関係図である。
【図10】コンバータ用リアクトルが交流動作時と直流動作時で適用するインダクタンスが相違する場合における本発明の他の実施の形態例に係る無停電電源装置の一部を示した簡易回路図である。
【図11】2つの昇圧チョッパに流れる電流のバランスを実現するための制御法の一例を表す簡易ブロック図である。
【符号の説明】
【0061】
1…商用電源、2…コンバータ、3…インバータ、4…負荷、5…DC−DCコンバータ、6…コンデンサ、7…蓄電池、81〜83…コンバータ用リアクトル、84…放電運転用リアクトル、9…DC−DCコンバータ用リアクトル、10…ローパスフィルタ、11…ダイオード、12…放電運転用スイッチ、13,18…切換器、14…リアクトル、15…放電電流、16,17…リアクトル電流、21〜26,31〜36,51,52…スイッチング素子、91…直流電圧AVR、92…電流バランス用ACR、93…比率係数、94…リミッタ、100…制御回路、101…電力判別回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源を直流に変換するAC−DCコンバータと、
前記AC−DCコンバータで変換された直流電圧を平滑するコンデンサと、
前記平滑コンデンサで平滑された直流電圧を交流電圧に変換して負荷に電力を供給するインバータと、
前記商用電源から電力が正常に供給されているときは、前記コンバータで変換された直流電圧を前記インバータに供給すると共に、該直流電圧を降圧して蓄電池を充電し、前記商用電源が異常状態のときは、前記充電された蓄電池の電力を昇圧して放電することにより、前記インバータに直流電力を供給する前記充放電用DC−DCコンバータと、
を具備する無停電電源装置において、
前記AC−DCコンバータの前段に、前記蓄電池の電力を前記コンバータに供給する切換手段を設け、
前記商用電源が異常状態のときは、前記切換手段を前記商用電源側から前記蓄電池側に切り換え、前記蓄電池の電力を昇圧して前記AC−DCコンバータに供給することにより、前記AC−DCコンバータをDC−DCコンバータとして動作させる
ことを特徴とする無停電電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無停電電源装置において、
さらに、出力電力を監視する電力監視手段を設け、
前記電力監視手段によって前記出力電力の値が閾値を超えたことが検出された場合に、前記AC−DCコンバータを放電用DC−DCコンバータとして動作させ、該放電用DC−DCコンバータを放電経路に複数台配置する
ことを特徴とする無停電電源装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無停電電源装置において、
前記商用電源が異常状態のときは、前記充放電用DC−DCコンバータのスイッチング周期と、前記放電用DC−DCコンバータとして兼用する前記AC−DCコンバータのスイッチング周期とをずらすことにより、前記平滑コンデンサへ供給する直流電圧のリップル電流を低減させるようにした
ことを特徴とする無停電電源装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の無停電電源装置において、
前記充放電用DC−DCコンバータと前記蓄電池との間に充放電の経路を分離する分離手段を設け、充電方向の経路に追加のリアクトルを設ける
ことを特徴とする無停電電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−131122(P2009−131122A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306396(P2007−306396)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】