説明

無拘束生活リズムモニタ方法および無拘束生活リズムモニタ装置

【課題】生活リズムの把握に繋がる日常生活中の爆笑区間情報、会話区間情報、いびき区間情報、睡眠時無呼吸区間情報を、簡易な方法・装置でもって、日常行動の拘束感を伴うことなく自宅でも検知する。
【解決手段】口腔音センサと心拍センサを用いて、あるいは更に血中酸素濃度センサを用いて、長時間にわたって、無拘束状態の健康管理対象者の口腔音信号と心拍信号と、あるいは更に血中酸素濃度信号をそれぞれ検出し、口腔音信号を2値化した後さらに口腔音時系列データに変換し、心拍信号を心拍間隔時系列データならびに心拍数時系列データに変換し、血中酸素濃度信号を血中酸素濃度時系列データに変換し、その口腔音時系列データのパターンと心拍間隔時系列データのパターンから、健康管理対象者の日常生活の爆笑区間、会話区間、いびき区間および睡眠時無呼吸区間を識別検知することにより、健康管理対象者の生活リズムをモニタする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、日常生活の中で身体から発する心拍(脈拍でもある)、口腔音(咽喉音)、音声、更には動脈血酸素飽和度(血中酸素濃度)(「SpO2」と略する)などの生体信号を、普段の日常活動を妨げることなく、長時間にわたって継続的に検出し計測して生体情報として収集し集積し、その生体情報から生活リズムに関わる情報を生成し提供するための、無拘束生活リズムモニタ方法と、その方法に用いる無拘束生活リズムモニタ装置に関するものである。そして特に、いびき(鼾)音を含む口腔音と心拍、あるいは、いびき(鼾)音を含む口腔音と心拍とSpO2を、生体信号として長時間にわたって継続して検出し、計測し、収集し、それらのデータから、日常生活における爆笑区間(大笑いしていた時間帯)、会話区間(会話していた時間帯)、いびき区間(いびきを掻いた時間帯)、無呼吸区間(呼吸が止まっていた時間帯)を、それぞれ識別認識して生活リズム情報(例えば、爆笑、会話、いびき、無呼吸の発生回数、発生時刻、持続時間など)として集積し、あるいは、SpO2と脈拍数(PR)(心拍数(HR)でもある)の時間的推移から睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)を早期に感知し、あるいは心拍数を基に消費カロリーや適正運動量を算出し、それらの健康維持に関わる各種の生活イベント情報、生活リズム情報を総合的に提供するための無拘束生活リズムモニタ方法・装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
社会の高齢化が急速に進む中で、生活習慣病やそれに深く関わるメタボリック・シンドロームの予防と早期発見・診療が重要な政策課題の一つになっている。そして生活習慣病やメタボリック・シンドロームの予防・診療のためには、生活者各人と医療関係者の双方において、日常生活の中で現れる生体情報の把握が必要であることは言うまでもない。一方近年、爆笑することが、ストレス解消のみならず、糖尿病などの生活習慣病や、肥満などのメタボリック症候群の改善と健康増進に効果を奏するとして注目されている。すなわち、日常生活における笑いや会話の回数・時間が、心の健康管理情報として有用であることが指摘されており、生活習慣病の予防・治療への活用が期待されている。また睡眠中の無呼吸症候群が日常生活に及ぼす障害についても社会的関心が高まっている。睡眠時無呼吸症候群の患者は増加しているが、自覚症状が少ないために放置されて高血圧症や心不全症などの合併症の誘因にもなっていることから、睡眠時無呼吸症候群を日常生活の中で早期に感知できる手段が求められている。なおまた、これらと関連して、日常生活における消費カロリーや適正運動量に対する関心も衰えていない。このような背景から、爆笑状態、会話状態、いびき症状、睡眠時無呼吸症状の把握や、消費カロリーや適正運動量などの、日常の健康維持に有用な生活イベント情報や、生活リズム情報や、各種の健康バロメータ数値を、自宅でも簡単に且つ総合的に常時得られる方法と装置が求められている。
【0003】
従来、特開2004−243023号公開特許公報(特許文献1)に示されるように、喉頭部に配置したマイクロフォンで長時間にわたって取得した音声信号から、一定の周波数帯域の信号のみを抽出する手段によって、笑いがあった区間を判別検出し、その笑い区間の情報を心の健康に関する健康情報として提供する装置が提示されている。また、例えば特開平5−212126号公開特許公報(特許文献2)に示されるように、心拍数と消費カロリーとの相関関係に基づいて、測定心拍数に対応した消費カロリーを演算して、心拍数と同時に消費カロリーを表示するカロリー計付き心拍測定装置が従来から提示されている。また例えば、刊行物「在宅看護における携帯用パルスオキシメータ導入の基礎的研究」(日本呼吸管理学会誌V0l.2, No.2, 1993(非特許文献1)や、刊行物「オキシメータによる在宅呼吸モニターリング」(日本呼吸管理学会誌V0l.9, No.3, 2000(非特許文献2)などにも示されるように、睡眠時無呼吸症候群の診断手段として、手指型パルスオキシメータを用いてSpO2を計測し、そのSpO2と脈拍数・心拍数の関係から睡眠時無呼吸症候群を検知することが従来から知られている。しかし、特許文献1,2で提示されたような従来の装置では、音声信号を検知して笑い区間情報のみを生成して提供し、あるいは心拍信号を検知して消費カロリー情報のみを生成し提供できるに過ぎず、昨今高い関心をもって求められている生活リズムの把握に繋がる爆笑区間情報、会話区間情報、いびき区間情報、無呼吸区間情報、加えて消費カロリーや適正運動量などの多種の健康維持情報を必要に応じて簡単且つ総合的に提供することはできない。また、非特許文献1,2に示されるような手指型パルスオキシメータでSpO2を長時間にわたって計測しようとせれば、手指にパルスオキシメータを装着せねばならぬことから、日常頻繁に使う手指の拘束感が強く、日常生活の中での長時間にわたる生体信号の計測には馴染まない難点がある。なお、パルスオキシメータには、身体の動脈に向けて光を発する発光体(発光ダイオード)とその発光を動脈血管中の血液を透して受光する受光体(フォトダイオード)から成る血中酸素濃度センサと、その血中酸素濃度センサからの発光・受光信号に基づいて動脈血管中の血液の光透過度を算出しその光透過度から血中酸素濃度(SpO2)を算出する血中酸素濃度信号処理部が含まれている。
【特許文献1】特開2004−243023号公開特許公報
【特許文献2】特開平5−212136号公開特許公報
【非特許文献1】「在宅看護における携帯用パルスオキシメータ導入の基礎的研究」日本呼吸管理学会誌V0l.2, No.2, 1993
【非特許文献2】「オキシメータによる在宅呼吸モニターリング」日本呼吸管理学会誌V0l.9, No.3, 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、上記のような従来の健康管理情報の生成・提供のための方法・装置における難点を改善しようとするもので、日常生活の行動を妨げない状態を保ちながら、生活リズムの把握に繋がる日常生活中の爆笑区間情報、会話区間情報、いびき区間情報、無呼吸区間情報や、加えて消費カロリー情報や適正運動量情報など、健康維持管理に関わる多種の情報を、簡易な方法・装置でもって生成し提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、この発明では、口腔音センサと心拍センサ(脈拍センサでもある)を用いて、長時間にわたって、健康管理対象者の口腔音信号と心拍信号(脈拍信号でもある)をそれぞれ検出し、その口腔音信号を2値化した後さらに口腔音時系列データに変換すると共に、心拍信号を心拍間隔時系列データに変換し、それらの口腔音時系列データのパターンと心拍間隔時系列データのパターンから、健康管理対象者の日常生活における爆笑区間、会話区間、いびき区間および睡眠時無呼吸区間を識別検出する。
【0006】
また前記の課題を解決するために、この発明では、無拘束状態の健康管理対象者の口腔音信号と心拍信号をそれぞれ長時間にわたって検出する口腔音センサならびに心拍センサを含む生体信号検出部と、検出した口腔音信号を2値化し更に口腔音時系列データに変換する口腔音信号処理部ならびに検出した心拍信号を心拍間隔時系列データに変換する心拍信号処理部を有して、口腔音時系列データと心拍間隔時系列データを基に健康管理対象者の爆笑区間識別パターン情報、会話区間識別パターン情報、いびき区間識別パターン情報、睡眠時無呼吸区間識別パターン情報を出力する生体情報処理部を備えた無拘束生活リズムモニタ装置を用いる。
【発明の効果】
【0007】
そして、この発明に係る生活リズムモニタ方法・装置を用いれば、日常生活の行動が妨げない状態を保ちながら、昨今関心が高まっている生活リズムの把握に繋がる日常生活中の爆笑区間情報、会話区間情報、いびき区間情報、睡眠時無呼吸区間情報など、健康維持管理に大きく関わる多様な情報を、在宅でも簡単に得られ、とりわけ、在宅では計測・判断が困難であった無呼吸症候群の兆光候を早期に発見することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の最良の実施形態の一つは、口腔音センサと心拍センサと血中酸素濃度センサを用いて、長時間にわたって、健康管理対象者の口腔音信号と心拍信号と血中酸素濃度信号を検出し、その口腔音信号を2値化した後さらに口腔音時系列データに変換し、その心拍信号を心拍間隔時系列データならびに心拍数時系列データに変換し、血中酸素濃度信号を血中酸素濃度時系列データに変換し、その口腔音時系列データのパターンと心拍間隔時系列データのパターンから、健康管理対象者の日常生活における爆笑区間、会話区間、いびき区間を識別検知し、且つ心拍数時系列データと血中酸素濃度時系列データを基に、健康管理対象者の睡眠時無呼吸症候群を検知する無拘束生活リズムモニタ方法である。
【0009】
またこの発明の最良の実施形態の他の一つは、 健康管理対象者の口腔音信号と心拍信号と血中酸素濃度信号をそれぞれ長時間にわたって検出する口腔音センサ、心拍センサ、血中酸素濃度センサを含む生体信号検出部と、検出した口腔音信号を2値化し更に口腔音時系列データに変換する口腔音信号処理部と、検出した心拍信号を心拍間隔時系列データならびに心拍数時系列データに変換する心拍信号処理部と、検出した血中酸素濃度信号を血中酸素濃度時系列データに変換する血中酸素濃度信号処理部を有して、その口腔音時系列データと心拍間隔時系列データを基に健康管理対象者の爆笑区間識別パターン情報、会話区間識別パターン情報、いびき区間識別パターン情報を出力し、心拍数時系列データと血中酸素濃度時系列データを基に健康管理対象者の睡眠時無呼吸区間識別パターン情報を出力する生体情報処理部を備え、且つ、その生体信号検出部として、健康管理対象者の首周りに着脱自在に装着されてその首周りに接するネックバンドに、その首周りに近接して口腔音信号を検出する口腔音センサと、その首周りに近接して心拍信号を検出する心拍センサと、その首周りの頚動脈に近接して血中酸素濃度信号を検出する血中酸素濃度センサを保持させた生体信号検出部を用いた無拘束生活リズムモニタ装置である。
【実施例】
【0010】
以下、図面を参考にして、この発明の実施例を説明する。この発明に係る無拘束生活リズムモニタ装置は、図1に示すように、生体信号検出部1と生体情報処理部2を主要部として成り、また必要に応じて、生体情報処理部2の制御処理部24に転送制御モデム28を介してパソコン3を有線または無線で接続して、モニタ装置としてのシステムが構成される。生体信号検出部1は、口腔音センサ(マイクロフォン)11と、心拍センサ(心電センサ)12と、血中酸素濃度センサ13を備え、生体情報処理部2は、口腔音信号処理部21、心拍信号処理部22、制御スイッチ23、制御処理部24、メモリ25、表示制御部26、表示パネル27、転送制御モデム28、血中酸素濃度信号処理部29等から成っている。なお、血中酸素濃度センサ13の機能と血中酸素濃度信号処理部29の機能は、従来周知のパルスオキシメータにおいても既に存在する。また、口腔音信号処理部21は、図2に示すように、一定周波数帯域幅(例えば、300Hz〜2kHzの信号を通過させる帯域フィルタ回路211、A/D変換回路212、2値化処理回路213および符合化処理回路214が順次縦続接続されて成り、口腔音センサ11で集音した口腔音に基づく口腔音信号が、生体情報処理部2の口腔音信号処理部21に入力され、口腔音信号処理部21において、口腔音信号の有音区間の検出と符号化処理が行われる。すなわち、口腔音信号処理部21に入力された音声信号は、爆笑音や会話音やいびき音などの音声信号のみを取り出すために帯域フィルタ回路211で、口腔音信号から不要信号成分を除去した後、A/D変換回路212でディジタルデータに変換され、そのディジタルデータを2値化処理回路213で2値化信号に変換され、符号化処理回路214を通って符号化データとして出力される。
【0011】
なお、口腔音信号の2値化信号への変換処理は、次式に準じて行われる。
|G| >または=M ならば P=1 ・・・ (式 11.1)
|G| <M ならば P=0 ・・・ (式 11.2)
但し、G:音声信号の入力振幅値
M:閾値
P:出力
【0012】
口腔音信号は、上記の2値化信号への変換後に、"0","1" の時系列信号となるので、符号化処理回路214で同一符号の継続数を計数する。このときの継続数はミリ秒(mS)単位の時間長となっているので、計数値を符号化して口腔音時系列データを生成しメモリ25に保存する。この符号化処理によりデータ容量はA/D変換データ量よりも大幅に減少し、必要なメモリ容量も小さくできる。また、口腔音信号の2値化信号への変換は非可逆変換であることから、変換された口腔音2値化信号を元の音声信号に復号することは出来ず、したがって健康管理対象者からの発声言語情報が外部に対して秘匿処理されたことにもなる。なお、図3(a)は、口腔音センサ11で集音して生体情報処理部2の口腔音信号処理部21に入力される口腔音信号波形を示し、図3(b)は、口腔音信号処理部21において変換された口腔音2値化信号波形を示している。
【0013】
一方、生体信号検出部1の心拍センサ12で検出した心拍信号は、心拍信号処理部22に入って心拍間隔符号化処理がなされる。その心拍間隔符号化処理は、図7に示すように、心電パルス間隔をミリ秒(mS)単位で計数し、その係数値を符号化して心拍間隔時系列データを生成している。なお通常、心拍数は1分間の拍数で表わしているから、心拍間隔時系列データを心拍間隔の積算値が1分になる毎に区切って、その間に発生するパルス数を計数して心拍数とする。そして、この計数処理を繰り返して心拍数時系列データを生成し、メモリ25に保存する。また、上記の心拍数時系列データは、心拍数の変動を示す時系列データになる。また心拍センサ12で計測した心電値から心拍間隔を検出して心拍間隔時系列データに変換して保存する。更にまた、上記の心拍間隔時系列データから心拍変動係数を算出して心拍変動係数時系列データを作成保存する。同時にまた、心拍間隔の変動検定により不整脈検出も行うことができる。
【0014】
また、血中酸素濃度センサ13で検出された血中酸素濃度信号も、血中酸素濃度信号処理部29でデータ処理されてメモリ25に保存される。そして、この発明の他の実施例として、血中酸素濃度センサ13で検出・測定した血中酸素濃度の時間的推移と、心拍センサ12で検出・測定した心拍数・脈拍数の時間的推移の相互関係のから、無呼吸症候群の早期発見と、無呼吸症候群の発症予防を可能にする。図8は、夜間の就眠中に、心拍センサ12で検出・測定した脈拍数(PR)データと、同時に血中酸素濃度センサ13で検出・測定した血中酸素濃度(SpO2)データと、同時に口腔音センサ11で検出・測定した音声データを、測定時刻を合わせた状態で並べて示したものである。そして、図8(a)は血中酸素濃度(SpO2)と脈拍数(PR)の時間的推移を示し、図8は(b)は睡眠中の口腔音声の時間的変化を示したものであり、図8(b)に現れた白黒縦縞の白色縞の時間帯は、無呼吸区間を示している。なお、図8(c)はその音声データの2値化データを示し、図8(d)は図8(b)中の一つの無呼吸時間帯を時間軸方向に拡大したものである。そして、図8(a)(b)から明らかなように、無呼吸区間付近で、SpO2の値が下降し、PRの値が上昇する変動が見られる。したがって、睡眠中におけるSpO2とPRの相互の変動関係を見張ることにより、睡眠時の無呼吸症候群の早期発見と、それを手がかりにした無呼吸症候群の発症予防を可能にできるものである。
【0015】
生体信号検出部1の構造は、図9に示すように、健康管理対象者の首周りに着脱自在に
装着されてその首周りに接するネックバンドBに、その首周りに近接して口腔音信号を検出する口腔音センサ11と、その首周りに近接して心拍信号を検出する心拍センサ12と、その首周りの頚動脈に近接して血中酸素濃度信号を検出する血中酸素濃度センサ13をそれぞれ保持させた構造である。そして、ネックバンドB、口腔音センサ11、心拍信号センサ12、血中酸素濃度センサ13は共に小型軽量で、違和感なく簡単に身体へ着脱でき、普段の日常生活行動の妨げには全くならないものである。なお、この発明に係る無拘束生活リズムモニタ方法・装置としては、血中酸素濃度センサ13ならびに血中酸素濃度信号処理部を除いたものを実用に供することも可能で、その場合には、生体信号検出部1に血中酸素濃度センサ13は含まれず、したがって生体情報処理部2に血中酸素濃度信号処理部29は含まれず、ネックバンドBにも血中酸素濃度センサ13は存しない。
【0016】
次に、口腔音時系列データと心拍間隔時系列データから、爆笑区間、発声区間、いびき区間、および無呼吸区間をそれぞれの発生パターンの特徴から識別検出する。前記の2値化時系列データを解析すると、爆笑区間では、同じ笑い声(/ha/等)が同じ間隔で繰り返し発声されるため、図4に示すように、有音区間(有音レベル時間巾)Tpと無音区間(無音レベル時間巾)Tqを1組Tとする同じパターンが複数回反復される特徴がある。会話区間では、異なる単音が連続して発声され、図5に示すように、有音区間(有音レベル区間)と無音区間(無音レベル区間)が不規則な間隔で続くパターンとなる。そして、いびき区間では、図6に示すように、いびき音を示す有音レベル(呼気)と次のいびき音を発声するまでの長い無音レベル(吐息)が続くパターンが繰返される特徴がある。また、このいびき音に挟まれる無音レベルの時間の大小と前記心拍間隔時系列データから心拍変動を検定し、無呼吸が発生していることを検出する。
【0017】
前記爆笑区間と前記会話区間の検出アルゴリズムは、図4と図5に示す2値化信号の有音レベル時間巾Tpと無音レベル時間巾Tqの生起パターンから判定する。すなわち、爆笑区間と会話区間の判定は、有音区間中に式1に示す有音レベルTpと無音レベルTqのペアTが、式2に示すように類似の時間幅(約1秒以内)で4回以上連続して発生し、同時にこの間で式3に示すTpiとTiの比も類似の値となるときは前記爆笑区間とする。
Ti=Tpi+Tqi ・・・ (式1)
Ti≒Ti+1≒Ti+2≒Ti+3 ≦ 1秒 ・・・(式2)
Tpi/Ti≒Tpi+1/Ti+1≒Tpi+2/Ti+2≒Tpi+3/Ti+3 ・・・(式3)
式2と式3を同時に満足し、かつこの区間における前記心拍間隔が変動していることを検定して爆笑区間と判定する。式2と式3を同時に満足しない有音区間は前記会話区間とする。
【0018】
就眠中のいびき区間と無呼吸区間の検出アルゴリズムは図6に示す2値化信号の生起パターンから判定する。いびきと区間と無呼吸区間の判定は、式1に示すTiが5秒以上あり、同時に無音レベルTqiが3秒〜10秒であり、これが5回以上連続生起するときはいびき区間とする。またこの間での無音レベルTqiが30秒以上のときは無呼吸区間とする。
20秒>Ti>5秒 ・・・ (式4)
Ti≒Ti+1≒Ti+2≒Ti+3≒Ti+4 ・・・ (式5)
そして、式4と式5を同時に満足する区間をいびき区間と判定する。
【0019】
いびき区間と判定された後に、無音区間Tqiが30秒以上になるときは、無呼吸区間として検出する。
Tqi>30秒 ・・・ (式6)
この無呼吸区間では心拍が上昇するので、検出した無呼吸区間における心拍間隔の変動を検定し、変動が大きいときに無呼吸症候群が発生していると判定する。このように口腔音時系列データと心拍間隔時系列データとを解析して、爆笑区間、発声区間、いびき区間、および無呼吸区間のそれぞれの発生パターンの特徴に該当する区間を検出識別し、これらの発生区間を決定して発生時刻と累積回数や累積時間を算出する。
【0020】
更に前記心拍間隔時系列データからは1分あたりの心拍数を算出して心拍数(拍/分)を求め、心拍数時系列デーを作成する。また心拍数と消費カロリーは比例関係にあり、式7に示す換算式を用いて心拍数Hから消費カロリーEを算出できる。
消費カロリーE(kcal)=5α心拍数(拍/分)+β ・・・ (式7)
ここで式1のα,βは個人別にトレッドミルなどを用いて行う運動負荷試験で計測する心拍数Hと酸素摂取量Vは最大運動量以下では比例関係にあるため、式2および式3を用いて算出できる個人属数データである。前記運動負荷試験で負荷(走行測度)を変えて計測した前記心拍数Hと前記酸素摂取量Vは2点のデータ(H1,V1)と(H2,V2)から式2及び式3を用いて前記α及び前記βを算出する。
α=(V2−V1)/(H2−H1) ・・・ (式8)
β=(V2×H1−V1×H2)/(H2−H1) ・・・ (式9)
前記心拍数と使用者の前記個人属性データ(α,β)から式1を用いて1日の消費カロリーを算出する。また前記心拍数が使用者の年齢、性別で定まる目標心拍数を超える時間を積算し適正運動量を算出する。そして、前記目標心拍数は式10に示すKarvonenの公式を適用して求める。
目標心拍数=[(220−年齢)−安静時心拍数]×運動強度%+安静時心拍数
・・・ (式10)
これらの処理で口腔音と心拍数から得られた生体情報を健康管理対象者の生活パターンが容易に把握できるように数表やグラフで表示する無拘束生活リズムモニタ装置を提供する。
【0021】
心拍信号処理部22での心拍間隔符号化処理は、図7のように心電パルス間隔を(mS)単位で計数し、この計数値を符号化し前記心拍間隔時系列データを生成する。通常心拍数は1分間の拍数で表しているから、前記心拍間隔時系列データを心拍間隔の積算値が1分になる毎に区切り、この間で発生するパルス数を計数して心拍数とする。この計数処理を繰返して心拍数時系列データを生成し、メモリ部25に保存する。前記心拍数時系列データは心拍数の変動を示す時系列データになる。
【0022】
制御処理部24では、前記口腔音時系列データと前記心拍間隔時系列データを用いて、式1から式6までのアルゴリズムを適用し、爆笑区間、会話区間、いびき区間および無呼吸区間を判定抽出し、式7から式10までの計算式により前記心拍数時系列データから消費カロリーと適正運動量を算出する。先ず前記口腔音時系列データを解析して、図4、図5、および図6に示す2値化信号系列の生起パターンに該当する区間をそれぞれ抽出し、前記心拍間隔時系列データからこの区間の心拍変動を検定する。式1から式6までのアルゴリズムを適用した解析処理により、爆笑区間、会話区間、いびき区間および無呼吸区間を判定抽出し、発生時刻と継続時間を算出する。またそれぞれの回数を累積し、1日の発生回数を算出する。これらの数値は、爆笑回数、会話時間、いびき回数および無呼吸回数としてメモリ25に保存する。
【0023】
また、心拍数時系列データから前記の式7を用いて消費カロリーを算出し、これを1時間単位で累積しメモリ25に保存する。式1で用いている個人属性データ(α,β)はパソコン3で個人の運動負荷試験で得られた計測値から式8と式9で算出し、この数値を生体情報処理部2に転送保存しておく。また同様の手段で目標心拍数も式10で算出してパソコン3に個人属性データとして入力し、生体情報処理部2に転送保存しておく。前記心拍数時系列データで前記目標心拍数より大きい心拍数となる時間長の累積を算出して適正運動量としメモリ部25に保存する。
【0024】
メモリ22に保存している爆笑回数、会話時間、いびき回数、無呼吸回数、消費カロリーおよび適正運動量などの生活イベント情報は表示パネル27に図10に示すように表示される。この表示は各種の情報を複数枚の画面に分けておき、制御スイッチ23の中の表示ボタンを押すたびに画面を順次切り替えて表示するようにして小さな表示パネル27でも多種の情報が表示できるようにしている。なお、これらの表示制御は表示制御部26で行っている。
【0025】
なお、生体情報処理部2とパソコン3はデータ転送ができるように有線または無線で連結し、データの算出処理に必要な個人属性データα,βなどはパソコン3に入力保存し、図1に示す転送制御モデム28を介して生体情報処理部2に転送設定する。また生体情報処理部2で計測保存している心拍間隔時系列データと口腔音時系列データは転送制御モデム28を介してパソコン3に取り込む。パソコン3では図11に示すように、これらのファイルは個人別フォルダに日別計測データファイルとして編集保存し、ファイル管理を行う。そして、取り込んだデータファイルを解析処理し、図4,図5,図6に示すそれぞれの特徴パターンに該当する区間を検定抽出し、爆笑区間、会話区間、いびき区間および無呼吸区間をそれぞれ識別判定する。これらの解析処理で得られる各種の生体情報は生体情報表示処理により多様な表やグラフ図形でパソコン3のモニタに表示される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上記のように、この発明に係る生活リズムモニタ方法・装置を用いれば、自分の健康維持に関わるバロメータ数値や生体情報を、自宅において、日常生活の活動が拘束されることなく、自分自身で、長期にわたって継続して計測し把握管理することができるようになり、生活環境病やメタボリック症候群の予防や、従来は在宅判定が困難といわれた無呼吸症状の早期発見に効を奏することから、高齢化か進む社会の中で、この発明の効用の認識・評価が高まって需要が拡大すると考えられ、保健・医療機関や、保健・医療サービス業界に於いてはもとより、保健・医療機器の製造・販売・サービス関係の業界において、この発明の利用の可能性は今後極めて高くなると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明に係る無拘束生活リズムモニタ装置の構成を示すブロック図
【図2】同無拘束生活リズムモニタ装置の口腔音信号処理部の構成を示すブロック図
【図3】同無拘束生活リズムモニタ装置における口腔音信号波形図
【図4】同無拘束生活リズムモニタ装置で生成される爆笑区間識別パターン波形図
【図5】同無拘束生活リズムモニタ装置で生成される会話区間識別パターン波形図
【図6】同無拘束生活リズムモニタ装置で生成されるいびき区間識別パターン波形図
【図7】同無拘束生活リズムモニタ装置で生成される心拍間隔時系列データの波形図
【図8】この発明に係る拘束生活リズムモニタ方法による無睡眠時呼吸症候群検知説明図
【図9】同無拘束生活リズムモニタ装置の生体信号検出部の構造を示す斜視図
【図10】同無拘束生活リズムモニタ装置の表示パネルのイベント表示例図
【図11】同無拘束生活リズムモニタ装置のコンピュータ処理機能説明図
【符号の説明】
【0028】
1:生体信号検出部
2:生体情報処理部
3:パソコン
11:口腔音センサ(マイクロフォン)
12:心拍センサ(心電センサ)
13:血中酸素濃度センサ
21:口腔音信号処理部
22:心拍信号処理部
23:制御スイッチ
24:制御処理部
25:メモリ
26:表示制御部
27:表示パネル
28:転送制御モデム
211:帯域フィルタ回路
212:A/D変換回路
213:2値化処理回路
214:符号化処理回路
B:ネックバンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔音センサと心拍センサを用いて、長時間にわたって、無拘束状態の健康管理対象者の口腔音信号と心拍信号をそれぞれ検出し、前記口腔音信号を2値化した後さらに口腔音時系列データに変換すると共に、前記心拍信号を心拍間隔時系列データに変換し、前記口腔音時系列データのパターンと前記心拍間隔時系列データのパターンから、前記健康管理対象者の日常生活における爆笑区間、会話区間、いびき区間および睡眠時無呼吸区間を識別検知することを特徴とする無拘束生活リズムモニタ方法。
【請求項2】
口腔音センサと心拍センサと血中酸素濃度センサを用いて、長時間にわたって、無拘束状態の健康管理対象者の口腔音信号と心拍信号と血中酸素濃度信号を検出し、前記口腔音信号を2値化した後さらに口腔音時系列データに変換し、前記心拍信号を心拍間隔時系列データならびに心拍数時系列データに変換し、血中酸素濃度信号を血中酸素濃度時系列データに変換し、前記口腔音時系列データのパターンと前記心拍間隔時系列データのパターンから、前記健康管理対象者の日常生活における爆笑区間、会話区間、いびき区間を識別検知し、且つ前記心拍数時系列データと前記血中酸素濃度時系列データを基に前記健康管理対象者の睡眠時無呼吸症候群を検知することを特徴とする無拘束生活リズムモニタ方法。
【請求項3】
無拘束状態の健康管理対象者の口腔音信号と心拍信号をそれぞれ長時間にわたって検出する口腔音センサならびに心拍センサを含む生体信号検出部と;検出した前記口腔音信号を2値化し更に口腔音時系列データに変換する口腔音信号処理部ならびに検出した前記心拍信号を心拍間隔時系列データに変換する心拍信号処理部を有し、前記口腔音時系列データと前記心拍間隔時系列データを基に前記健康管理対象者の爆笑区間識別パターン情報、会話区間識別パターン情報、いびき区間識別パターン情報、睡眠時無呼吸区間識別パターン情報を出力する生体情報処理部を備えたことを特徴とする無拘束生活リズムモニタ装置。
【請求項4】
無拘束状態の健康管理対象者の口腔音信号と心拍信号と血中酸素濃度信号をそれぞれ長時間にわたって検出する口腔音センサ、心拍センサ、血中酸素濃度センサを含む生体信号検出部と;検出した前記口腔音信号を2値化し更に口腔音時系列データに変換する口腔音信号処理部と、検出した前記心拍信号を心拍間隔時系列データならびに心拍数時系列データに変換する心拍信号処理部と、検出した前記血中酸素濃度信号を血中酸素濃度時系列データに変換する血中酸素濃度信号処理部を有して、前記口腔音時系列データと前記心拍間隔時系列データを基に前記健康管理対象者の爆笑区間識別パターン情報、会話区間識別パターン情報、いびき区間識別パターン情報を出力し、心拍数時系列データと前記血中酸素濃度時系列データを基に前記健康管理対象者の睡眠時無呼吸区間識別パターン情報を出力する生体情報処理部を備えたことを特徴とする無拘束生活リズムモニタ装置。
【請求項5】
健康管理対象者の個人属性データを入力保存してその個人属性データを生体情報処理部の制御処理部に転送設定し且つその制御処理部から口腔音時系列データと心拍間隔時系列データを取り込んで個人の生体情報を受信しモニタするパソコンを、有線または無線で、転送制御モデムを介して前記制御処理部に接続されることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の無拘束生活リズムモニタ装置。
【請求項6】
健康管理対象者の首周りに着脱自在に装着されてその首周りに接するネックバンドに、その首周りに近接して口腔音信号を検出する口腔音センサと、その首周りに近接して心拍信号を検出する心拍センサを保持させた生体信号検出部を用いたことを特徴とする請求項3に記載の無拘束生活リズムモニタ装置。
【請求項7】
健康管理対象者の首周りに着脱自在に装着されてその首周りに接するネックバンドに、その首周りに近接して口腔音信号を検出する口腔音センサと、その首周りに近接して心拍信号を検出する心拍センサと、その首周りの頚動脈に近接して血中酸素濃度信号を検出する血中酸素濃度センサを保持させた生体信号検出部を用いたことを特徴とする請求項4に記載の無拘束生活リズムモニタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−161657(P2008−161657A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25772(P2007−25772)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(593210983)
【Fターム(参考)】