説明

無機質板の製造方法

【課題】層間密着強度や耐凍害性確保のための最低面圧を確保してプレス成形を行うために、能力の非常に高いプレス機を不要とすることができる無機質板の製造方法を提供する。
【解決手段】未硬化のセメント基板1の表面に、セメントを主成分とする表層材料6を散布して表層14を形成する。この後、凹凸面を有するプレス型15を表層14側から押し付けて加圧成形することにより模様凸部18と模様凹部17とを形成する無機質板の製造方法に関する。模様凸部18の部分における未硬化のセメント基板1の圧縮率と模様凹部17の部分における未硬化のセメント基板1の圧縮率との差が20%以下となるように加圧成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁材(外装材)等の建材として用いられる無機質板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、セメントを主成分とする無機質板を建材として用いることが行われている。このような無機質板としては、抄造法などの湿式法で形成されるセメント基板と乾式法で形成された表層とが積層成形されたものがある。すなわち、水硬性のセメントと水とを主成分とするスラリーを抄造法により抄き上げてセメント基板(グリーンシート)を作製し、抄造直後の未硬化のセメント基材の表面に含水率が小さくて(約50%以下)セメントを主成分とする表層材料を散布して表層を形成し、この後、凹凸面を有するプレス型を表層側から押し付けて加圧成形することにより模様凸部と模様凹部とを形成し、この後、養生硬化することにより無機質板を製造することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のような無機質板の製造方法において、セメント基板と表層との密着性を高めるために、表層材料を散布する前の未硬化のセメント基板の表面に粗面化処理を施すことが行われている。従来、この粗面化処理を行うにあたっては、図5に示すような粗面化ロール50が用いられている。この粗面化ロール50は、帯状に連ねた多数の鋸刃51、51…をロール本体52の外周面に螺旋状に巻き付けて形成されるものである。そして、この粗面化ロール50を抄造直後で含水率80〜100%の状態のセメント基板の表面に押し当てると共に抄造速度(すなわちセメント基板の搬送速度)よりも幾分速い周速で回転させることにより、鋸刃51でセメント基板の上面を掘り起こして粗面化するようにしている。この粗面化ロール50で粗面化されたセメント基板1を図6に示す。セメント基板1の上面には切り起こし形状の突起部1aが突出長さH=1〜2mmで形成される。この場合、突起部1aの一個一個の大きさが小さく、また、セメント基材1は含水率が低くて固いため突起部1aの突出長さ(切り起こし深さ)も小さい(浅い)。
【0004】
上記のようにセメント基板1の上面を粗面化した後、図7(a)に示すように、その上面に表層材料6を散布して一定の厚みの表層14を形成する。この後、表層14の上側にプレス型15を配置する。このプレス型15の下面には複数の成形凸部16、16…が突設されており、成形凸部16以外の部分は成形凹部20として形成されている。そして、図7(b)に示すように、プレス型15の下面の凹凸面を表層14の上面に押し付けながら、セメント基板1と表層14とを厚み方向に圧縮して加圧成形する。このとき、表層14には成形凸部16が食い込んでその部分が無機質板の模様凹部17となり、成形凹部20で押圧される部分は無機質板の模様凸部18となる。ここで、模様凸部18における品質確保、例えば、セメント基板1と表層14との層間密着強度や耐凍害性確保のため及び無機質板の比重を所定の値(例えば1.05)に確保するために、加圧成形時のプレス型15の成形凹部20から模様凸部18にかかる最低面圧を18kgf/cm(1.8MPa)に確保する必要がある。
【0005】
例えば、未硬化のセメント基板1として厚みR=17mmを形成し、粗面化処理を施した後、表層材料6を散布して厚みY=5mmの表層14を形成し、これに成形凹部20からの成形凸部16の突出寸法X=4mmのプレス型15を用いて加圧成形し、この後、養生硬化することにより、厚みZ=15mmの無機質板(硬化後のセメント基板1の最大厚みP=12mm、硬化後の表層14の最大厚みN=3mm、模様凹部17における表層14の厚みM=1mm)を製造する場合、セメント基板1の圧縮率は最大箇所(模様凹部17となる部分であって、図7(b)に実線で囲まれる部分ハ)で約41%になり、非常に高い成形圧力が必要となる。尚、模様凹部17の部分におけるセメント基板1と表層14を合わせた圧縮率は、(P−M)/(R+Y)×100=11mm/22mm×100=50%となる。また、上記の「41%」という数値は、模様凹部17の部分におけるセメント基板1の厚み寸法SがS=(P−2×M)で算出されるので、(R−S)/R×100=7mm/17mm×100≒41%から求められる。また、模様凸部18の部分におけるセメント基板1の圧縮率は、(R−P)/R×100=5mm/17mm×100≒29%になる。そして、上記の最低面圧を確保しようとすると、模様凹部17の深さが深くなるほど、その模様凹部17の深い部分に圧力が集中するために、大きな加圧成形圧力(トータルのプレス圧)が必要となり(図8のグラフ参照)、能力の非常に高いプレス機を用いなければならないという問題があった。
【特許文献1】特開平10−235633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、層間密着強度や耐凍害性確保のための最低面圧を確保してプレス成形を行うために、能力の非常に高いプレス機を不要とすることができる無機質板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の無機質板の製造方法は、未硬化のセメント基板1の表面に、セメントを主成分とする表層材料6を散布して表層14を形成し、この後、凹凸面を有するプレス型15を表層14側から押し付けて加圧成形することにより模様凸部18と模様凹部17とを形成する無機質板の製造方法において、模様凸部18の部分における未硬化のセメント基板1の圧縮率と模様凹部17の部分における未硬化のセメント基板1の圧縮率との差が20%以下となるように加圧成形することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項2に記載の無機質板の製造方法は、請求項1において、表層材料6を散布する前に、未硬化のセメント基板1の表面に粗面化処理を施すことにより突起部1aと窪み部1bとを形成し、この後、未硬化のセメント基板1の表面に表層14を形成するにあたって、突起部1aの先端が表層14でほぼ覆われるように表層材料6を散布することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、模様凸部18の部分における未硬化のセメント基板1の圧縮率と模様凹部17の部分における未硬化のセメント基板1の圧縮率との差が20%以下と小さくするために、模様凸部18の部分に比べて模様凹部17の部分に特に大きな加圧力を集中させなくても層間密着強度や耐凍害性確保のための最低面圧を確保することができ、能力の非常に高いプレス機を不要とすることができるものである。
【0010】
請求項2の発明では、窪み部1bの部分で模様凹部17を形成することによって、模様凹部17を形成するための加圧力を小さくすることができ、模様凸部18の部分に比べて模様凹部17の部分に特に大きな加圧力を集中させなくても層間密着強度や耐凍害性確保のための最低面圧を確保することができ、能力の非常に高いプレス機を不要とすることができるものである。しかも、セメント基板1の表面の粗面化処理により、セメント基板1と表層14の結合が強くなって密着性を向上させることができ、無機質板の層間密着品質を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0012】
本発明の無機質板の製造方法では、まず、未硬化のセメント基板1を形成する。この未硬化のセメント基板1は抄造法で形成することができる。この場合、セメント、珪石粉、フライアッシュ、パルプ繊維などの固形分を水に分散させてスラリーを調製し、このスラリーを長網や丸網で抄き上げることにより、グリーンシートとして未硬化のセメント基板1を形成することができる。また、未硬化のセメント基板1は高含水率にするのが好ましく、例えば、200%程度にすることができる。このように含水率を高くすると、未硬化のセメント基板1が軟らかくなり、後述の粗面化処理により容易に粗面化の度合いを大きく(突起部1aと窪み部1bの凹凸差を大きく)することができる。湿式の抄造法によって、高含水率のセメント基板1を製造するにあたっては、スラリーとして水硬性セメントを主成分として、高炉水砕スラグ、フライアッシュ、珪石粉、パルプ、ビニロン繊維、ロックウール等の補強繊維等を含有する組成とし、これを例えば固形分が30%程度の濃度としたものを用いることができる。具体的には、例えば、セメント100重量部に対してフライアッシュ20〜60重量部、補強繊維5〜20重量部程度の割合のものを例示することができる。
【0013】
次に、上記の未硬化のセメント基板1の上面に粗面化処理を施して突起部1aと窪み部1bを形成する。この粗面化処理を行うにあたっては表面粗面化装置Aを用いる。表面粗面化装置Aは、図2(a)(b)に示すように、下面が開口する箱状の装置本体10と、装置本体10の下面の開口に取り付けられるプレート部材4と、プレート部材4の上側において装置本体10内に配置される駆動装置3及び移動プレート11、及び複数の掘り起し部材2、2…を備えて形成されている。
【0014】
プレート部材4には複数(掘り起し部材2の個数と同じ)の貫通孔5、5…が上下に貫通して形成されている。このようなプレート部材4は樹脂板、ゴムプレート、パンチングメタルなどを用いて形成することができる。貫通孔5は水平断面形状(開口形状)が掘り起し部材2の水平断面形状と同じである。
【0015】
掘り起し部材2は丸棒状のピンや板状に形成されるものであって、各貫通孔5に上下移動自在に挿着されている。上記のように貫通孔5の水平断面形状と掘り起し部材2の水平断面形状とは同じであり、貫通孔5の開口径は掘り起し部材2の外径よりもやや大きく形成されているが、掘り起し部材2の外周が貫通孔5の開口縁部に摺接した状態で掘り起し部材2が貫通孔5に上下移動自在に挿着されている。
【0016】
移動プレート11は装置本体10内に上下移動自在に配設されるものであり、その下面には上記掘り起し部材2、2…の上端が連結されている。
【0017】
駆動装置3は移動プレート11の上側で装置本体10の上部内面に取り付けられている。駆動装置3は油圧シリンダー等で形成されるものであって、そのロッド3aの下端が移動プレート11の上面に連結されている。
【0018】
このように形成される表面粗面化装置Aを用いて未硬化のセメント基板の表面(上面)を粗面化するにあたって、次のようにして行う。まず、図2(a)に示すように、表面粗面化装置Aの下方において未硬化のセメント基板1を一方向に搬送する。ここで、未硬化のセメント基板1はその上面と平行な方向(水平方向)に搬送されるものであり、また、未硬化のセメント基板1の搬送速度は一定にすることができる。尚、未硬化のセメント基板1は抄造法で形成することができる。この場合、セメント、珪石粉、フライアッシュ、パルプ繊維などの固形分を水に分散させてスラリーを調製し、このスラリーを長網や丸網で抄き上げることにより、未硬化のセメント基板1を形成することができる。また、未硬化のセメント基板1は抄造直後のものが好ましい。また、未硬化のセメント基板1の搬送速度は抄造速度と同じにすることができる。
【0019】
次に、図2(b)に示すように、搬送されている未硬化のセメント基板1の上面に掘り起し部材2、2…を突き刺す。このとき、掘り起し部材2、2…はその下方の未硬化のセメント基板1の上面に向かって下動するように駆動される。すなわち、駆動装置3を駆動させることによりロッド3aを下方に突き出して移動プレート11を下動し、この移動プレート11の下動により全部の掘り起し部材2、2…を同時に下動して掘り起し部材2、2…の下端部を未硬化のセメント基板1の上面に突き刺すものである。
【0020】
この後、掘り起し部材2、2…を突き刺した状態で未硬化のセメント基板1の搬送を続ける。そして、未硬化のセメント基板1が所定量だけ搬送されると、図2(a)に示すように、掘り起し部材2、2…を未硬化のセメント基板1の上面から引き抜く。このとき、掘り起し部材2、2…は上動するように駆動される。すなわち、駆動装置3を駆動させることによりロッド3aを上方に移動して移動プレート11を上動し、この移動プレート11の上動により全部の掘り起し部材2、2…を同時に上動して掘り起し部材2、2…の下端部を未硬化のセメント基板1の上面から引き抜くものである。
【0021】
この後、掘り起し部材2、2…が未硬化のセメント基板1の上面に突き刺さっていない状態で未硬化のセメント基板1の搬送を続ける。そして、未硬化のセメント基板1が所定量だけ搬送されると、再び、掘り起し部材2、2…を下動して未硬化のセメント基板1の表面に突き刺す。このようにして図3に示すような突起部1aと窪み部1bとが交互に並んだ波状の粗面を未硬化のセメント基板1の上面に形成することができる。ここで、図中の寸法Lは掘り起し部材2が未硬化のセメント基板1の上面に突き刺さった状態で移動した距離を示す。また、掘り起し部材2、2…が未硬化のセメント基板1の上面に突き刺さっていない状態で未硬化のセメント基板1を搬送する距離は、未硬化のセメント基板1の搬送方向において並設された掘り起し部材2、2…のうちの両端の掘り起し部材2、2の間の寸法Wとすることができ、これにより、未硬化のセメント基板1に掘り起し部材2が二回以上突き刺さる部分が無くなるものである。そして、上記のような掘り起し部材2、2…の上下動を周期的に繰り返し行うことによって、長尺の未硬化のセメント基板1の上面を連続的に粗面化することができるものである。
【0022】
上記のようにして未硬化のセメント基板1の上面を粗面化した後、図1(a)に示すように、未硬化のセメント基板1の上面に表層材料6を散布して表層14を形成する。ここで、表層材料6は未硬化のセメント基板1の固形分と同様の材料(スラリーの水以外の成分)であって、セメント、珪石粉、フライアッシュ、パルプ繊維などの混合材料である。また、表層材料6は乾式材料あるいは半乾式材料であって、その含水率は50%以下にすることができる。また、本発明において乾式ないしは半乾式で散布される表層材料6は、水硬性セメントを主成分とし、高炉水砕スラグ、フライアッシュ、珪石粉、パルプ、ビニロン繊維、ロックウール、パーミュキュライト等の補強繊維や軽量骨材等を適宜に配合した組成とし、これを例えば含水率が0〜50%程度としたものを用いることができる。具体的には、例えば、セメント100重量部に対して、フライアッシュ10〜40重量部、補強繊維2〜10重量部、軽量骨材5〜15重量部程度の割合のものを例示することができる。また、表層材料6は窪み部1bに充填しながら未硬化のセメント基板1の上面に散布するが、突起部1aの先端が表層14でほぼ覆われるまで表層材料6の散布を行うのが好ましい。これにより、表層14の上面よりも突起部1aの上端がやや下側に位置することになる。
【0023】
上記のようにして表層材料6を散布して表層14を形成した後、表層の上方からプレス型15を押しつけながら加圧成形(プレス成形)する。プレス型15の下面は凹凸面に形成されており、複数の成形凸部16、16…が突設されていると共に成形凸部16以外の部分は成形凹部20として形成されている。そして、図3(b)に示すように、成形凸部16を窪み部1bに形成される表層14に食い込ませながらプレス型15の下面全体で表層14及び未硬化のセメント基板1に押し付けて成形する。これにより、未硬化のセメント基板1が厚み方向で圧縮されると共に表層14が未硬化のセメント基板1の上面を覆うように成形される。次に、表層14を成形した未硬化のセメント基板1をプレス型15から脱型し、この後、養生硬化することにより、図4に示すように、凹凸模様を有する硬化した表層14と硬化したセメント基板1とが積層した二層の無機質板Bを形成することができる。模様凹部(例えば、目地)17は成形凸部16により押圧されて加圧成形された部分であり、模様凸部18は成形凹部20により加圧成形された部分である。尚、養生硬化は、蒸気養生、オートクレーブ養生等が適宜に行われる。例えば、温度40〜80℃、湿度90〜100%の雰囲気で10〜30時間程度蒸気養生し、さらに140〜200℃で2〜10時間程度オートクレーブ養生して硬化させる等の操作が採用される。また、無機質板Bの表面仕上げのためのシーラーや塗料の塗布についても、従来から外装材として用いられる無機質板と同様にして行うことができる。
【0024】
そして、本発明では、プレス型15を用いた加圧成形において、模様凸部18の部分における未硬化のセメント基板1の圧縮率と模様凹部17の部分における未硬化のセメント基板1の圧縮率との差が20%以下で0よりも大きくなるように加圧成形する。すなわち、プレス型15の成形凹部20で圧縮成形される部分における未硬化のセメント基板1の圧縮率と、成形凸部16で圧縮成形される部分における未硬化のセメント基板1の圧縮率との差を20%以下で0よりも大きくなるようにする。このような圧縮率の差を20%以下とするためには、成形凸部16からの成形凹部20の突出寸法を小さくしたり、窪み部1bの深さ寸法を大きくしたりすることができる。また、窪み部1bの部分に成形凸部16を押し付けて模様凹部17を形成するようにすることができる。この場合、窪み部1bの部分では未硬化のセメント基板1の厚み寸法が突起部1aの部分に比べて薄くなっているために、成形凸部16で成形しても未硬化のセメント基板1の圧縮率が小さくなって、成形凹部20で成形される部分との圧縮率の差が小さくなるものである。
【0025】
そして、セメント基板1と表層14との層間密着強度や耐凍害性確保のために、加圧成形時のプレス型15の成形凹部20から模様凸部18にかかる最低面圧を18kgf/cm(1.8MPa)に確保する必要があるが、本発明では、上記の圧縮率の差を20%以下としているので、模様凹部17が形成される部分において未硬化のセメント基板1に圧力が集中しなくなって、能力の非常に高いプレス機を不要とすることができるものである。また、セメント基板1の表面の粗面化処理により、セメント基板1と表層14の結合が強くなって密着性を向上させることができ、無機質板の層間密着品質を高くすることができる。
【0026】
以下、具体例を示して本発明を説明する。
【0027】
この具体例は、厚み(製品厚み)Zが15mmの無機質板Bを製造する場合であり、無機質板Bの硬化したセメント基板1の最大厚みPが12mm、硬化した表層14の最大厚みNが3mm、模様凹部17における表層14の厚みMが1mmである場合である。
【0028】
まず、抄造後の未硬化のセメント基板1の上面に粗面化処理を施して、突起部1aを突出長さ(窪み部1bの深さ寸法)H=8mmに形成する。このとき、窪み部1bよりも下側における未硬化のセメント基板1の厚み寸法はT=14mmとする。次に、表層材料6を散布して表層14を形成する。表層14は表層材料6を窪み部1bに充填して形成し、表層14の上面と突起部1aの上端とは同じ高さにする。次に、プレス型15を用いて加圧成形する。このプレス型15としては成形凹部20からの成形凸部16の突出寸法Xが4mmのものを用いた。そして、この加圧成形により、模様凹部17の部分における未硬化のセメント基板1の厚みSを10mm、模様凹部17の底面における表層14の厚みMを1mm、模様凸部18の部分における未硬化のセメント基板1の厚みPを12mm、模様凸部18の部分における表層14の厚みNを3mmとした。次に、加圧成形後の未硬化のセメント基板1及びその表層14を養生硬化して無機質板Bを形成した。尚、突起部1aの上端よりも上側における表層14の厚み(突起部1aの上端と表層14の上面との間の寸法)は0mmよりも大きくて突起部1aを突出長さHの半分以下にするのが好ましい。
【0029】
上記のような具体例において、模様凹部17の部分における未硬化のセメント基板1の圧縮率は、(T−S)/T×100=4mm/14mm×100≒29%となる。一方、模様凸部18の部分における未硬化のセメント基板1の圧縮率は、(T−P)/T×100=2mm/14mm×100≒14%となる。従って、模様凸部18の部分における未硬化のセメント基板1の圧縮率と模様凹部17の部分における未硬化のセメント基板1の圧縮率との差が約15%となる。尚、図1において、実線で囲まれる部分イと部分ロにおける未硬化のセメント基板1の圧縮率は多少異なり、突起部1aの一部を圧縮する部分ロの圧縮率が突起部1aを圧縮しない部分イの圧縮率よりもやや高くなるが、部分ロにおいて圧縮される突起部1aの厚みは小さいので、部分イの圧縮率と部分ロの圧縮率はほぼ同じで、部分ロの圧縮率は従来とほとんど変わらない。従って、部分イの圧縮率の低下により、従来のものに比べて、加圧成形に要するトータルの圧力(未硬化のセメント基板1および表層14を圧縮するための圧力)を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)(b)は断面図である。
【図2】同上の表面粗面化装置の一例を示し、(a)(b)は断面図である。
【図3】同上の粗面化された未硬化のセメント基板を示す一部の断面図である。
【図4】同上の無機質板を示す一部の断面図である。
【図5】従来の粗面化ロールを示す斜視図である。
【図6】従来の未硬化のセメント基板の一例を示す断面図である。
【図7】従来の加圧成形工程を示し、(a)(b)は断面図である。
【図8】従来の模様凹部の深さとプレス圧との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0031】
B 無機質板
1 未硬化のセメント基板
1a 突起部
1b 窪み部
6 表層材料
14 表層
15 プレス型
17 模様凹部
18 模様凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未硬化のセメント基板の表面に、セメントを主成分とする表層材料を散布して表層を形成し、この後、凹凸面を有するプレス型を表層側から押し付けて加圧成形することにより模様凸部と模様凹部とを形成する無機質板の製造方法において、模様凸部における未硬化のセメント基板の圧縮率と模様凹部における未硬化のセメント基板の圧縮率との差が20%以下となるように加圧成形することを特徴とする無機質板の製造方法。
【請求項2】
表層材料を散布する前に、未硬化のセメント基板の表面に粗面化処理を施すことにより突起部と窪み部とを形成し、この後、未硬化のセメント基板の表面に表層を形成するにあたって、突起部の先端が表層でほぼ覆われるように表層材料を散布することを特徴とする請求項1に記載の無機質板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−246773(P2008−246773A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89323(P2007−89323)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】