無段変速装置
【課題】 自動車用変速装置を、高効率でかつコンパクトな構造にすることができる無段変速装置を提供する。
【解決手段】 エンジン1などにより自動車などを可変速に駆動させる無段変速装置にあって、バリエータ9の入力ディスク91,93と出力ディスク95の間に生じる軸方向反力を前記バリエータ9と同軸に配設した連結軸10及び遊星歯車機構Gのキャリア17を介して伝達すると共に、遊星歯車機構Gを第2サンギヤ16の回転を第1サンギヤ12の回転と同じ方向に且つ減速するように構成する。
【解決手段】 エンジン1などにより自動車などを可変速に駆動させる無段変速装置にあって、バリエータ9の入力ディスク91,93と出力ディスク95の間に生じる軸方向反力を前記バリエータ9と同軸に配設した連結軸10及び遊星歯車機構Gのキャリア17を介して伝達すると共に、遊星歯車機構Gを第2サンギヤ16の回転を第1サンギヤ12の回転と同じ方向に且つ減速するように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車用の変速機として用いる無段変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の変速機としては、トロイダル式バリエータを用いる無段変速装置があり、例えば、特許文献1の図1に記載されたものが知られている。
【0003】
この無段変速装置は、入力ディスク及び出力ディスクを同軸に貫通する入力軸が配設されたトロイダル変速部(以下ではバリエータと記載する。)と、このバリエータの後部にいわゆるダブルピニオン型の第1遊星歯車機構と、この第1の遊星歯車機構の後部に同じくダブルピニオン型の第2遊星歯車機構とを備えている。
【0004】
第1遊星歯車機構は、第1遊星ギア及び第2遊星ギアと、これら第1遊星ギア及び第2遊星ギアを回転自在に支持すると共に入力軸に連結された第1キャリアと、出力ディスクに連結された第1サンギヤと、第1リングギヤとを備えている。
【0005】
第2遊星歯車機構は、第3遊星ギア及び第4遊星ギアと、これら第3遊星ギア及び第4遊星ギアを回転自在に支持すると共に出力軸に連結された第2キャリアと、ステップギヤを介して第1遊星ギヤに連結された第2サンギヤと、第2リングギヤとを備えている。
【0006】
第1リングギヤと第2キャリアは、ローレンジ用の第1クラッチを介して締結可能である。また、第2リングギヤは、ハイレンジ用の第2クラッチを介してケースに固定可能である。
【0007】
この無段変速装置では、第2クラッチを解放し、第1クラッチを締結することにより、第1リングギヤが出力軸に直接動力を伝達する第1のモード(後進〜停止〜低速前進)を得ている。また、この無段変速装置では、第1クラッチを解放し、第2クラッチを締結することにより、第2サンギヤの動力が第2遊星歯車機構により逆転され出力軸に伝達する第2のモード(高速前進)を得ている。
【0008】
詳述すると、この無段変速装置は、特許文献1の図2に示す如く、前記第1のモードにおいて、バリエータの変速比を変えることにより、後進から停止、停止から低速前進へと連続的に変速比(=入力軸の回転数/出力軸の回転数)が変えられるいわゆる無限大連続変速装置を構成しており、前後進切替機構が廃止できるという特徴がある。
【0009】
さらに、この無段変速装置は、第1のモードと第2のモードとを切り替えることにより、バリエータ単体での変速比巾(=最Lowの変速比/最Highの変速比)より広い変速比巾を得ることが可能となる。
【特許文献1】特開2000―220719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記例で示した無段変速装置は、第1のモードと第2のモードとを切り替える必要があり、本来、無段階で変速する変速機にモード切替、すなわち、変速切替を導入することになり、この切替によるモード切替ショックが生じる可能性があり、無段変速装置としての特性を損なうことになる。
【0011】
また、前記例で示した無段変速装置は、第1のモードにおいて、停止状態から縁石乗り上げのような場合を想定すると、駆動輪がロックするため、バリエータの入力側に非常に大きなトルクが流入し、バリエータや第1クラッチを破損させるおそれがある。
【0012】
そこで、モード切替を行うことなく、例えば、第1のモードのみを用いることや、第2のモードのみを用いることも考えられる。
【0013】
しかし、前者では、出力軸の回転を入力軸の回転より増加させる、いわゆる、オーバードライブの変速比が得られない欠点がある。また、後者では、出力軸の回転を入力軸の回転より減速させる、いわゆる、アンダードライブから前記のオーバードライブまで変速可能であるが、その変速比巾は特許文献1の表1に示す如くバリエータ単体の変速比巾よりも狭くなる欠点がある。
【0014】
この発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、モード切替をすることなく、バリエータ単体の変速比巾よりも広い変速比巾を有し、かつ、同軸配置によりコンパクトな無段変速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本発明に係る無段変速装置は、入力軸と出力軸との間に配設され、互いに対向配置した入力ディスク及び出力ディスクと、入力ディスク及び出力ディスクの間に傾転自在に配設されたパワーローラとを有するバリエータを備える無段変速装置において、バリエータの軸方向後部に配設され、入力軸と連結されたキャリアと、同軸に配設された第1ギヤ及び第2ギヤが連結されてなりキャリアに回転自在に支持されたピニオンギヤと、第1ギヤに噛合すると共に出力ディスクに連結された第1サンギヤと、第2ギヤに噛合すると共に前記出力軸に連結された第2サンギヤとを有し、第2サンギヤの回転を第1サンギヤの回転と同じ方向に且つ減速する遊星歯車機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第2サンギヤの回転を第1サンギヤの回転と同じ方向に且つ減速を行う遊星歯車機構としたことで、車両の前進時にモード切替を行うことなく、トロイダル式バリエータ単体の変速比巾よりも広い変速比巾の無段変速装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の各実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
まず、第1の実施形態におけるトロイダル式同軸型無段変速装置(以下、無段変速装置と記載する。)を図1に示し説明する。
【0019】
この無段変速装置は、エンジン1等の駆動源に連結された変速機入力軸2と、変速機入力軸2に接続されたトルクコンバータ等の発進装置3と、発進装置3にタービン軸4を介して連結された前後進機構5と、前後進機構5にバリエータ入力軸7を介して連結されたローディングカム8と、ローディングカム8に連結されたトロイダル式バリエータ(以下では、単にバリエータと記載する。)9と、ローディングカム8に連結軸10を介して連結されるとともにバリエータ9にバリエータ出力軸11を介して連結された遊星歯車機構Gと、遊星歯車機構Gと連結された逆転機構20と、逆転機構20と連結された変速機出力軸19とを備えている。
【0020】
前後進機構5は、タービン軸4と連結されたサンギヤ53と、サンギヤ53と噛合するピニオンギヤ54と、ピニオンギヤ54を回転自在に支持するキャリア55と、ピニオンギヤ54と噛合すると共にバリエータ入力軸7と連結されたリングギヤ56と、タービン軸4とサンギヤ53を選択的に接続する前進クラッチ51と、キャリア55とケース6とを選択的に接続する逆転ブレーキ52とを有している。
【0021】
バリエータ9は、前部入力ディスク91及び後部入力ディスク93と、これら入力ディスク91,93の間に配設された出力ディスク95と、前部入力ディスク91と出力ディスク95の間に傾転可能に配設された複数の前部パワーローラ92と、後部入力ディスク93と出力ディスク95の間に傾転可能に配設された複数の後部パワーローラ94とを有している。なお、パワーローラ92,94は、図示しないトラニオンにより傾転可能に支持されている
バリエータ9は、前部入力ディスク91、後部入力ディスク93、出力ディスク95及びバリエータ出力軸11に対して同軸かつ回転自在に連結軸10が配設されており、また、後部入力ディスク93及び連結軸10に対して同軸かつ回転自在にバリエータ出力軸11が配設されている。
【0022】
ローディングカム8は、バリエータ入力軸7と連結されており、バリエータ9への入力トルクに応じて、入力ディスク91,93と出力ディスク95との間で押圧力を発生するように配設されている。
【0023】
遊星歯車機構Gは、バリエータ出力軸11と連結された第1サンギヤ12と、互いに同軸に配設された大径ギヤ(第1ギヤ)14及び小径ギヤ(第2ギヤ)15からなるピニオンギヤ13と、サンギヤ出力軸18に連結された第2サンギヤ16と、連結軸10及び後部入力ディスク93に連結されるとともにピニオンギヤ13を回転自在に支持するキャリア17とを有している。
【0024】
この遊星歯車機構Gは、第2サンギヤ16の回転を第1サンギヤ12の回転と同じ方向に且つ減速を行うように、第1サンギヤ12、第2サンギヤ16及びピニオンギヤ13の歯数が設定されている。
【0025】
ここで、ピニオンギヤ13は、大径ギヤ14で第1サンギヤ12と噛合し、小径ギヤ15で第2サンギヤ16と噛合するいわゆる段付ピニオンギヤであり、大径ギヤ14と小径ギヤ15との間で径方向に段を有している。また、ピニオンギヤ13は、大径ギヤ14の噛み合い半径が小径ギヤ15の噛み合い半径より大きく設定されている。
【0026】
逆転機構20は、サンギヤ出力軸18と連結されたサンギヤ21と、サンギヤ21に噛合する第1ピニオンギヤ22と、第1ピニオンギヤ22に噛合する第2ピニオンギヤ23と、第2のピニオンギヤ23に噛合すると共にケース6に固定されたリングギヤ24と、第1ピニオンギヤ22及び第2ピニオンギヤ23を回転自在に支持すると共に変速機出力軸19に連結されたキャリア25とを有している。
【0027】
次に、前述した第1の実施形態における無段変速装置の動作を説明する。
【0028】
今、タービン軸4が停止しており、且つ、バリエータ9が最大減速位置にあると共に、前後進機構5で前進クラッチ51が締結、後進ブレーキ52が解放された状態(前進状態)にある。
【0029】
この状態で、発進装置3が作動しタービン軸4を所定方向に回転開始させると、このタービン軸4の回転に伴ってバリエータ入力軸7及びローディングカム8がタービン軸4と同一方向に同一回転速度で回転する。
【0030】
このローディングカム8に伝達された動力の一部は前部入力ディスク91、前部パワーローラ92、出力ディスク95に伝達され、残りは連結軸10、キャリア17を経て後部入力ディスク93、後部パワーローラ94、出力ディスク95に伝達される。
【0031】
なお、出力ディスク95の回転方向は、前記バリエータ入力軸7の回転方向と逆になる。
【0032】
出力ディスク95により合流した動力は、バリエータ出力軸11を経て第1サンギヤ12に伝達され、さらに、第1サンギヤ12と噛合するピニオンギヤ13の一部を構成する大径ギヤ14に伝達される。
【0033】
大径ギヤ14に伝達された動力の一部は、ピニオンギヤ13を回転自在に支持するキャリア17に、残りの動力はピニオンギヤ13の他部を構成する小径ギヤ15に伝達される。
【0034】
ここで、キャリア17に伝達された動力の半分は、直接後部入力ディスク93に伝達され、残りの半分は、連結軸10及びローディングカム8を経て前部入力ディスク91に伝達される。すなわち、動力循環が行われる。
【0035】
小径ギヤ15に伝達された動力は、小径ギヤ15と連結された逆転機構20のサンギヤ21に伝達される。ここで、サンギヤ21に伝達された動力は、逆転(バリエータ入力軸7の回転方向と同じ方向)され変速機出力軸19に所定方向の回転で、且つ、変速機入力軸2よりも低速回転となるように伝達される。すなわち、アンダードライブが得られる。
【0036】
そして、前後進機構5を前進状態に維持しながらバリエータ9を最大増速側に変速させると、変速機出力軸19の回転速度が増加する。このように無段変速装置では、速度比が増加する。すなわち、オーバードライブが得られる。
【0037】
次に、自動車を後退させるべく、変速機出力軸19を逆回転させる際には、前後進機構5で前進クラッチ51が解放、後進ブレーキ52が締結された状態(後進状態)にする。その結果、バリエータ入力軸7の回転方向が変速機入力軸2と逆転方向に回転し、従って、変速機出力軸19が逆転する後進状態が得られる。
【0038】
ここで、バリエータ入力軸7の回転数をN1、サンギヤ出力軸18の回転数をNsun、バリエータ9の変速比(バリエータ入力軸7の回転数/バリエータ出力軸11の回転数)をV、無段変速装置全体での変速比(バリエータ入力軸7の回転数/サンギヤ出力軸18の回転数)をR、第1サンギヤ12の噛み合い半径をRsun1、第2サンギヤ16の噛み合い半径をRsun2、ピニオンギヤ13の大径ギヤ14の噛み合い半径をRpinion1、ピニオンギヤ13の小径ギヤ15の噛み合い半径をRpinion2とし、
I1=Rsun1/Rpinion1
I2=Rsun2/Rpinion2
I=I2/I1
とすると、無段変速装置全体での変速比Rは、
R=1/(1−1/I−1/I/V)
で表される。すなわち、I=1の時、R=−Vとなる。ここで、負の記号は、回転方向が逆転していることを示すが、無段変速装置全体での変速比はバリエータ9の変速比と同じであることがわかる。また、I>1の時は無段変速装置全体での変速比はバリエータ9の変速比より減速になり、逆に、I<1の時は無段変速装置全体での変速比はバリエータ9の変速比より増速になる。
【0039】
バリエータ9の最大減速位置における変速比、すなわち、最LowをVlow、最大増速位置における変速比、すなわち、最HighをVhighとし、さらに、無段変速装置全体での最大減速位置における変速比、すなわち、最LowをRlow、最大増速位置における変速比、すなわち、最HighをRhighとすると、
Rlow=1/(1−1/I−1/I/Vlow)
Rhigh=1/(1−1/I−1/I/Vhigh)
となる。従って、無段変速装置全体での変速比巾(=Rlow/Rhigh)は、
Rlow/Rhigh
=(I−1−1/Vhigh)/(I−1−1/Vlow)
で表される。ここで、Vhigh=0.5、Vlow=2.0、すなわち、バリエータの変速比巾(=Vlow/Vhigh)は、2.0/0.5=4.0とすると、Rlow/Rhighは、図3で示す結果になる。図3より、I=1の時、Rlow/Rhigh=Vlow/Vhigh=4.0となり、I>1の時、Rlow/Rhigh>Vlow/Vhighとなる。前記式より、I>1になる条件は、Rpinion1>Rpinion2であることが明白である。
【0040】
すなわち、本実施例のように、ピニオンギヤ13の大径ギヤ14の噛み合い半径が小径ギヤ15の噛み合い半径より大きくなるように設定すると、無段変速装置全体の変速比巾はバリエータ9の変速比巾よりも大きい値を得られることがわかる。これにより、動力性能の向上と同時に燃費性能の向上を図ることができる。
【0041】
次に、第2の実施形態における無段変速装置を図2に示し説明する。第2の実施形態においては、説明の重複を避けるため、第1の実施形態と異なる箇所のみを説明する。
【0042】
無段変速装置は、エンジン1等の駆動源に連結された変速機入力軸2と、変速機入力軸2に接続されたトルクコンバータ等の発進装置3と、発進装置3とバリエータ入力軸7を介して接続されたローディングカム8と、ローディングカム8と接続されたバリエータ9と、ローディングカム8と連結軸10を介して接続されるとともにバリエータ9とバリエータ出力軸11を介して接続された遊星歯車機構Gと、遊星歯車機構Gと接続された前後進機構30と、前後進機構30と接続された変速機出力軸19とを備えている。
【0043】
すなわち、第2の実施形態における無段変速装置は、第1の実施形態における無段変速装置のバリエータ9の軸方向前方に配置した前後進機構5を廃止し、バリエータ9の後部に同軸に配置した逆転機構20を前後進機構30に置き換えた構成とされている。
【0044】
前後進機構30は、サンギヤ出力軸18と接続されたサンギヤ31と、サンギヤ31と噛合する第1ピニオンギヤ32と、第1ピニオンギヤ32と噛合する第2ピニオンギヤ33と、第2ピニオンギヤと噛合するリングギヤ34と、変速機出力軸19と接続され、第1ピニオンギヤ32及び第2ピニオンギヤ33を回転自在に支持するキャリア35と、リングギヤ34とケース6とを選択的に接続する前進ブレーキ36と、キャリア35とサンギヤ31とを選択的に接続する後進クラッチ37とを有している。
【0045】
従って、サンギヤ31に伝達された動力は、前後進機構30の前進ブレーキ36と後進クラッチ37とを選択することにより、正転または逆転で変速機出力軸19に伝達される。
【0046】
なお、前述した第1の実施形態においては、前後進機構5にシングルピニオン遊星歯車を、第2の実施形態においては、前後進機構30にダブルピニオン遊星歯車をそれぞれ用いているが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でシングルピニオン遊星歯車をダブルピニオン遊星歯車へ、または、ダブルピニオン遊星歯車をシングルピニオン遊星歯車へ変更することが可能であることは言うまでもない。
【0047】
第1及び第2の実施形態で説明したように、本発明を適用した無段変速装置では、遊星歯車機構Gの第2サンギヤ16の回転を第1サンギヤ12の回転と同じ方向にかつ減速を行うように、第1サンギヤ12、第2サンギヤ16及びピニオンギヤ13の歯数を設定したことにより、車両の前進時にモード切替を行うことなく、バリエータ9単体の変速比巾よりも広い変速比巾を得ることができる(請求項1に対応)。
【0048】
また、本発明を適用した無段変速装置では、第1サンギヤ12と噛合するピニオンギヤ13の歯部の噛み合い径を、第2サンギヤ16と噛合するピニオンギヤ13の歯部の噛み合い径より大きくしたため、バリエータ9単体の変速比巾よりも広い変速比巾を得ることができる(請求項2に対応)。
【0049】
また、本発明を適用した無段変速装置では、連結軸10をバリエータ9と同軸に配設したため、径方向の寸法を大幅に小さくすることができ、装置全体でも小型化を達成することができる(請求項3に対応)。
【0050】
また、本発明を適用した無段変速装置では、ピニオンギヤ13を段付きピニオンギヤとしたため、従来技術に比してリングギヤ等を追加する必要が無くなり、部品点数削減、重量低減及びコスト低減を図ることができる。
【0051】
また、本発明を適用した無段変速装置では、前後進機構5を同軸に配設することで、後進におけるギヤ比の選択の自由度が増加できる(請求項4に対応)。
【0052】
また、本発明を適用した無段変速装置では、バリエータ9の軸方向前部に前後進機構5を同軸に配設することで、さらに装置後部の小型化を図ることができる。
【0053】
また、本発明を適用した無段変速装置では、遊星歯車機構Gの軸方向後部に逆転機構20を同軸に配設することで、上述の構成であっても変速機入力軸2と同じ回転方向で動力を伝達することができる。
【0054】
また、本発明を適用した無段変速装置では、遊星歯車機構Gの軸方向後部に前後進機構30を同軸に配設することで、遊星ギヤを1組廃止でき、その結果、装置の小型化、部品点数削減、重量低減及びコスト低減を図ることができる。
【0055】
また、本発明を適用した無段変速装置は、バリエータ9をダブルキャビティ型トロイダル式バリエータとすることで、トルク容量を大容量化するこができる(請求項5に対応)。
【0056】
また、本発明を適用した無段変速装置は、バリエータ9をシングルキャビティ型トロイダル式バリエータとすることで、装置の小型化、軽量化を図ることができる(請求項6に対応)。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明の第1の実施形態における無段変速装置の系統図。
【図2】この発明の第2の実施形態における無段変速装置の系統図。
【図3】バリエータの変速比巾が4.0の場合の、I=I2/I1に対する無段変速装置全体での変速比巾(Rlow/Rhigh)を示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
1 …エンジン
2 …変速機入力軸
3 …発進装置
4 …タービン軸
5 …前後進機構
51…前進クラッチ
52…後進ブレーキ
53…サンギヤ
54…ピニオンギヤ
55…キャリア
56…リングギヤ
6 …ケース
7 …バリエータ入力軸
8 …ローディングカム
9 …バリエータ
91…前部入力ディスク
92…前部パワーローラ
93…後部入力ディスク
94…後部パワーローラ
95…出力ディスク
G …遊星歯車機構
10…連結軸
11…バリエータ出力軸
12…第1サンギヤ
13…ピニオンギヤ
14…大径ギヤ(第1ギヤ)
15…小径ギヤ(第2ギヤ)
16…第2サンギヤ
17…キャリア
18…サンギヤ出力軸
19…変速機出力軸
20…逆転機構
21…サンギヤ
22…第1ピニオンギヤ
23…第2ピニオンギヤ
24…リングギヤ
25…キャリア
30…前後進機構
31…サンギヤ
32…第1ピニオンギヤ
33…第2ピニオンギヤ
34…リングギヤ
35…キャリア
36…前進ブレーキ
37…後進クラッチ
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車用の変速機として用いる無段変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の変速機としては、トロイダル式バリエータを用いる無段変速装置があり、例えば、特許文献1の図1に記載されたものが知られている。
【0003】
この無段変速装置は、入力ディスク及び出力ディスクを同軸に貫通する入力軸が配設されたトロイダル変速部(以下ではバリエータと記載する。)と、このバリエータの後部にいわゆるダブルピニオン型の第1遊星歯車機構と、この第1の遊星歯車機構の後部に同じくダブルピニオン型の第2遊星歯車機構とを備えている。
【0004】
第1遊星歯車機構は、第1遊星ギア及び第2遊星ギアと、これら第1遊星ギア及び第2遊星ギアを回転自在に支持すると共に入力軸に連結された第1キャリアと、出力ディスクに連結された第1サンギヤと、第1リングギヤとを備えている。
【0005】
第2遊星歯車機構は、第3遊星ギア及び第4遊星ギアと、これら第3遊星ギア及び第4遊星ギアを回転自在に支持すると共に出力軸に連結された第2キャリアと、ステップギヤを介して第1遊星ギヤに連結された第2サンギヤと、第2リングギヤとを備えている。
【0006】
第1リングギヤと第2キャリアは、ローレンジ用の第1クラッチを介して締結可能である。また、第2リングギヤは、ハイレンジ用の第2クラッチを介してケースに固定可能である。
【0007】
この無段変速装置では、第2クラッチを解放し、第1クラッチを締結することにより、第1リングギヤが出力軸に直接動力を伝達する第1のモード(後進〜停止〜低速前進)を得ている。また、この無段変速装置では、第1クラッチを解放し、第2クラッチを締結することにより、第2サンギヤの動力が第2遊星歯車機構により逆転され出力軸に伝達する第2のモード(高速前進)を得ている。
【0008】
詳述すると、この無段変速装置は、特許文献1の図2に示す如く、前記第1のモードにおいて、バリエータの変速比を変えることにより、後進から停止、停止から低速前進へと連続的に変速比(=入力軸の回転数/出力軸の回転数)が変えられるいわゆる無限大連続変速装置を構成しており、前後進切替機構が廃止できるという特徴がある。
【0009】
さらに、この無段変速装置は、第1のモードと第2のモードとを切り替えることにより、バリエータ単体での変速比巾(=最Lowの変速比/最Highの変速比)より広い変速比巾を得ることが可能となる。
【特許文献1】特開2000―220719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記例で示した無段変速装置は、第1のモードと第2のモードとを切り替える必要があり、本来、無段階で変速する変速機にモード切替、すなわち、変速切替を導入することになり、この切替によるモード切替ショックが生じる可能性があり、無段変速装置としての特性を損なうことになる。
【0011】
また、前記例で示した無段変速装置は、第1のモードにおいて、停止状態から縁石乗り上げのような場合を想定すると、駆動輪がロックするため、バリエータの入力側に非常に大きなトルクが流入し、バリエータや第1クラッチを破損させるおそれがある。
【0012】
そこで、モード切替を行うことなく、例えば、第1のモードのみを用いることや、第2のモードのみを用いることも考えられる。
【0013】
しかし、前者では、出力軸の回転を入力軸の回転より増加させる、いわゆる、オーバードライブの変速比が得られない欠点がある。また、後者では、出力軸の回転を入力軸の回転より減速させる、いわゆる、アンダードライブから前記のオーバードライブまで変速可能であるが、その変速比巾は特許文献1の表1に示す如くバリエータ単体の変速比巾よりも狭くなる欠点がある。
【0014】
この発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、モード切替をすることなく、バリエータ単体の変速比巾よりも広い変速比巾を有し、かつ、同軸配置によりコンパクトな無段変速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本発明に係る無段変速装置は、入力軸と出力軸との間に配設され、互いに対向配置した入力ディスク及び出力ディスクと、入力ディスク及び出力ディスクの間に傾転自在に配設されたパワーローラとを有するバリエータを備える無段変速装置において、バリエータの軸方向後部に配設され、入力軸と連結されたキャリアと、同軸に配設された第1ギヤ及び第2ギヤが連結されてなりキャリアに回転自在に支持されたピニオンギヤと、第1ギヤに噛合すると共に出力ディスクに連結された第1サンギヤと、第2ギヤに噛合すると共に前記出力軸に連結された第2サンギヤとを有し、第2サンギヤの回転を第1サンギヤの回転と同じ方向に且つ減速する遊星歯車機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第2サンギヤの回転を第1サンギヤの回転と同じ方向に且つ減速を行う遊星歯車機構としたことで、車両の前進時にモード切替を行うことなく、トロイダル式バリエータ単体の変速比巾よりも広い変速比巾の無段変速装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の各実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
まず、第1の実施形態におけるトロイダル式同軸型無段変速装置(以下、無段変速装置と記載する。)を図1に示し説明する。
【0019】
この無段変速装置は、エンジン1等の駆動源に連結された変速機入力軸2と、変速機入力軸2に接続されたトルクコンバータ等の発進装置3と、発進装置3にタービン軸4を介して連結された前後進機構5と、前後進機構5にバリエータ入力軸7を介して連結されたローディングカム8と、ローディングカム8に連結されたトロイダル式バリエータ(以下では、単にバリエータと記載する。)9と、ローディングカム8に連結軸10を介して連結されるとともにバリエータ9にバリエータ出力軸11を介して連結された遊星歯車機構Gと、遊星歯車機構Gと連結された逆転機構20と、逆転機構20と連結された変速機出力軸19とを備えている。
【0020】
前後進機構5は、タービン軸4と連結されたサンギヤ53と、サンギヤ53と噛合するピニオンギヤ54と、ピニオンギヤ54を回転自在に支持するキャリア55と、ピニオンギヤ54と噛合すると共にバリエータ入力軸7と連結されたリングギヤ56と、タービン軸4とサンギヤ53を選択的に接続する前進クラッチ51と、キャリア55とケース6とを選択的に接続する逆転ブレーキ52とを有している。
【0021】
バリエータ9は、前部入力ディスク91及び後部入力ディスク93と、これら入力ディスク91,93の間に配設された出力ディスク95と、前部入力ディスク91と出力ディスク95の間に傾転可能に配設された複数の前部パワーローラ92と、後部入力ディスク93と出力ディスク95の間に傾転可能に配設された複数の後部パワーローラ94とを有している。なお、パワーローラ92,94は、図示しないトラニオンにより傾転可能に支持されている
バリエータ9は、前部入力ディスク91、後部入力ディスク93、出力ディスク95及びバリエータ出力軸11に対して同軸かつ回転自在に連結軸10が配設されており、また、後部入力ディスク93及び連結軸10に対して同軸かつ回転自在にバリエータ出力軸11が配設されている。
【0022】
ローディングカム8は、バリエータ入力軸7と連結されており、バリエータ9への入力トルクに応じて、入力ディスク91,93と出力ディスク95との間で押圧力を発生するように配設されている。
【0023】
遊星歯車機構Gは、バリエータ出力軸11と連結された第1サンギヤ12と、互いに同軸に配設された大径ギヤ(第1ギヤ)14及び小径ギヤ(第2ギヤ)15からなるピニオンギヤ13と、サンギヤ出力軸18に連結された第2サンギヤ16と、連結軸10及び後部入力ディスク93に連結されるとともにピニオンギヤ13を回転自在に支持するキャリア17とを有している。
【0024】
この遊星歯車機構Gは、第2サンギヤ16の回転を第1サンギヤ12の回転と同じ方向に且つ減速を行うように、第1サンギヤ12、第2サンギヤ16及びピニオンギヤ13の歯数が設定されている。
【0025】
ここで、ピニオンギヤ13は、大径ギヤ14で第1サンギヤ12と噛合し、小径ギヤ15で第2サンギヤ16と噛合するいわゆる段付ピニオンギヤであり、大径ギヤ14と小径ギヤ15との間で径方向に段を有している。また、ピニオンギヤ13は、大径ギヤ14の噛み合い半径が小径ギヤ15の噛み合い半径より大きく設定されている。
【0026】
逆転機構20は、サンギヤ出力軸18と連結されたサンギヤ21と、サンギヤ21に噛合する第1ピニオンギヤ22と、第1ピニオンギヤ22に噛合する第2ピニオンギヤ23と、第2のピニオンギヤ23に噛合すると共にケース6に固定されたリングギヤ24と、第1ピニオンギヤ22及び第2ピニオンギヤ23を回転自在に支持すると共に変速機出力軸19に連結されたキャリア25とを有している。
【0027】
次に、前述した第1の実施形態における無段変速装置の動作を説明する。
【0028】
今、タービン軸4が停止しており、且つ、バリエータ9が最大減速位置にあると共に、前後進機構5で前進クラッチ51が締結、後進ブレーキ52が解放された状態(前進状態)にある。
【0029】
この状態で、発進装置3が作動しタービン軸4を所定方向に回転開始させると、このタービン軸4の回転に伴ってバリエータ入力軸7及びローディングカム8がタービン軸4と同一方向に同一回転速度で回転する。
【0030】
このローディングカム8に伝達された動力の一部は前部入力ディスク91、前部パワーローラ92、出力ディスク95に伝達され、残りは連結軸10、キャリア17を経て後部入力ディスク93、後部パワーローラ94、出力ディスク95に伝達される。
【0031】
なお、出力ディスク95の回転方向は、前記バリエータ入力軸7の回転方向と逆になる。
【0032】
出力ディスク95により合流した動力は、バリエータ出力軸11を経て第1サンギヤ12に伝達され、さらに、第1サンギヤ12と噛合するピニオンギヤ13の一部を構成する大径ギヤ14に伝達される。
【0033】
大径ギヤ14に伝達された動力の一部は、ピニオンギヤ13を回転自在に支持するキャリア17に、残りの動力はピニオンギヤ13の他部を構成する小径ギヤ15に伝達される。
【0034】
ここで、キャリア17に伝達された動力の半分は、直接後部入力ディスク93に伝達され、残りの半分は、連結軸10及びローディングカム8を経て前部入力ディスク91に伝達される。すなわち、動力循環が行われる。
【0035】
小径ギヤ15に伝達された動力は、小径ギヤ15と連結された逆転機構20のサンギヤ21に伝達される。ここで、サンギヤ21に伝達された動力は、逆転(バリエータ入力軸7の回転方向と同じ方向)され変速機出力軸19に所定方向の回転で、且つ、変速機入力軸2よりも低速回転となるように伝達される。すなわち、アンダードライブが得られる。
【0036】
そして、前後進機構5を前進状態に維持しながらバリエータ9を最大増速側に変速させると、変速機出力軸19の回転速度が増加する。このように無段変速装置では、速度比が増加する。すなわち、オーバードライブが得られる。
【0037】
次に、自動車を後退させるべく、変速機出力軸19を逆回転させる際には、前後進機構5で前進クラッチ51が解放、後進ブレーキ52が締結された状態(後進状態)にする。その結果、バリエータ入力軸7の回転方向が変速機入力軸2と逆転方向に回転し、従って、変速機出力軸19が逆転する後進状態が得られる。
【0038】
ここで、バリエータ入力軸7の回転数をN1、サンギヤ出力軸18の回転数をNsun、バリエータ9の変速比(バリエータ入力軸7の回転数/バリエータ出力軸11の回転数)をV、無段変速装置全体での変速比(バリエータ入力軸7の回転数/サンギヤ出力軸18の回転数)をR、第1サンギヤ12の噛み合い半径をRsun1、第2サンギヤ16の噛み合い半径をRsun2、ピニオンギヤ13の大径ギヤ14の噛み合い半径をRpinion1、ピニオンギヤ13の小径ギヤ15の噛み合い半径をRpinion2とし、
I1=Rsun1/Rpinion1
I2=Rsun2/Rpinion2
I=I2/I1
とすると、無段変速装置全体での変速比Rは、
R=1/(1−1/I−1/I/V)
で表される。すなわち、I=1の時、R=−Vとなる。ここで、負の記号は、回転方向が逆転していることを示すが、無段変速装置全体での変速比はバリエータ9の変速比と同じであることがわかる。また、I>1の時は無段変速装置全体での変速比はバリエータ9の変速比より減速になり、逆に、I<1の時は無段変速装置全体での変速比はバリエータ9の変速比より増速になる。
【0039】
バリエータ9の最大減速位置における変速比、すなわち、最LowをVlow、最大増速位置における変速比、すなわち、最HighをVhighとし、さらに、無段変速装置全体での最大減速位置における変速比、すなわち、最LowをRlow、最大増速位置における変速比、すなわち、最HighをRhighとすると、
Rlow=1/(1−1/I−1/I/Vlow)
Rhigh=1/(1−1/I−1/I/Vhigh)
となる。従って、無段変速装置全体での変速比巾(=Rlow/Rhigh)は、
Rlow/Rhigh
=(I−1−1/Vhigh)/(I−1−1/Vlow)
で表される。ここで、Vhigh=0.5、Vlow=2.0、すなわち、バリエータの変速比巾(=Vlow/Vhigh)は、2.0/0.5=4.0とすると、Rlow/Rhighは、図3で示す結果になる。図3より、I=1の時、Rlow/Rhigh=Vlow/Vhigh=4.0となり、I>1の時、Rlow/Rhigh>Vlow/Vhighとなる。前記式より、I>1になる条件は、Rpinion1>Rpinion2であることが明白である。
【0040】
すなわち、本実施例のように、ピニオンギヤ13の大径ギヤ14の噛み合い半径が小径ギヤ15の噛み合い半径より大きくなるように設定すると、無段変速装置全体の変速比巾はバリエータ9の変速比巾よりも大きい値を得られることがわかる。これにより、動力性能の向上と同時に燃費性能の向上を図ることができる。
【0041】
次に、第2の実施形態における無段変速装置を図2に示し説明する。第2の実施形態においては、説明の重複を避けるため、第1の実施形態と異なる箇所のみを説明する。
【0042】
無段変速装置は、エンジン1等の駆動源に連結された変速機入力軸2と、変速機入力軸2に接続されたトルクコンバータ等の発進装置3と、発進装置3とバリエータ入力軸7を介して接続されたローディングカム8と、ローディングカム8と接続されたバリエータ9と、ローディングカム8と連結軸10を介して接続されるとともにバリエータ9とバリエータ出力軸11を介して接続された遊星歯車機構Gと、遊星歯車機構Gと接続された前後進機構30と、前後進機構30と接続された変速機出力軸19とを備えている。
【0043】
すなわち、第2の実施形態における無段変速装置は、第1の実施形態における無段変速装置のバリエータ9の軸方向前方に配置した前後進機構5を廃止し、バリエータ9の後部に同軸に配置した逆転機構20を前後進機構30に置き換えた構成とされている。
【0044】
前後進機構30は、サンギヤ出力軸18と接続されたサンギヤ31と、サンギヤ31と噛合する第1ピニオンギヤ32と、第1ピニオンギヤ32と噛合する第2ピニオンギヤ33と、第2ピニオンギヤと噛合するリングギヤ34と、変速機出力軸19と接続され、第1ピニオンギヤ32及び第2ピニオンギヤ33を回転自在に支持するキャリア35と、リングギヤ34とケース6とを選択的に接続する前進ブレーキ36と、キャリア35とサンギヤ31とを選択的に接続する後進クラッチ37とを有している。
【0045】
従って、サンギヤ31に伝達された動力は、前後進機構30の前進ブレーキ36と後進クラッチ37とを選択することにより、正転または逆転で変速機出力軸19に伝達される。
【0046】
なお、前述した第1の実施形態においては、前後進機構5にシングルピニオン遊星歯車を、第2の実施形態においては、前後進機構30にダブルピニオン遊星歯車をそれぞれ用いているが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でシングルピニオン遊星歯車をダブルピニオン遊星歯車へ、または、ダブルピニオン遊星歯車をシングルピニオン遊星歯車へ変更することが可能であることは言うまでもない。
【0047】
第1及び第2の実施形態で説明したように、本発明を適用した無段変速装置では、遊星歯車機構Gの第2サンギヤ16の回転を第1サンギヤ12の回転と同じ方向にかつ減速を行うように、第1サンギヤ12、第2サンギヤ16及びピニオンギヤ13の歯数を設定したことにより、車両の前進時にモード切替を行うことなく、バリエータ9単体の変速比巾よりも広い変速比巾を得ることができる(請求項1に対応)。
【0048】
また、本発明を適用した無段変速装置では、第1サンギヤ12と噛合するピニオンギヤ13の歯部の噛み合い径を、第2サンギヤ16と噛合するピニオンギヤ13の歯部の噛み合い径より大きくしたため、バリエータ9単体の変速比巾よりも広い変速比巾を得ることができる(請求項2に対応)。
【0049】
また、本発明を適用した無段変速装置では、連結軸10をバリエータ9と同軸に配設したため、径方向の寸法を大幅に小さくすることができ、装置全体でも小型化を達成することができる(請求項3に対応)。
【0050】
また、本発明を適用した無段変速装置では、ピニオンギヤ13を段付きピニオンギヤとしたため、従来技術に比してリングギヤ等を追加する必要が無くなり、部品点数削減、重量低減及びコスト低減を図ることができる。
【0051】
また、本発明を適用した無段変速装置では、前後進機構5を同軸に配設することで、後進におけるギヤ比の選択の自由度が増加できる(請求項4に対応)。
【0052】
また、本発明を適用した無段変速装置では、バリエータ9の軸方向前部に前後進機構5を同軸に配設することで、さらに装置後部の小型化を図ることができる。
【0053】
また、本発明を適用した無段変速装置では、遊星歯車機構Gの軸方向後部に逆転機構20を同軸に配設することで、上述の構成であっても変速機入力軸2と同じ回転方向で動力を伝達することができる。
【0054】
また、本発明を適用した無段変速装置では、遊星歯車機構Gの軸方向後部に前後進機構30を同軸に配設することで、遊星ギヤを1組廃止でき、その結果、装置の小型化、部品点数削減、重量低減及びコスト低減を図ることができる。
【0055】
また、本発明を適用した無段変速装置は、バリエータ9をダブルキャビティ型トロイダル式バリエータとすることで、トルク容量を大容量化するこができる(請求項5に対応)。
【0056】
また、本発明を適用した無段変速装置は、バリエータ9をシングルキャビティ型トロイダル式バリエータとすることで、装置の小型化、軽量化を図ることができる(請求項6に対応)。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明の第1の実施形態における無段変速装置の系統図。
【図2】この発明の第2の実施形態における無段変速装置の系統図。
【図3】バリエータの変速比巾が4.0の場合の、I=I2/I1に対する無段変速装置全体での変速比巾(Rlow/Rhigh)を示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
1 …エンジン
2 …変速機入力軸
3 …発進装置
4 …タービン軸
5 …前後進機構
51…前進クラッチ
52…後進ブレーキ
53…サンギヤ
54…ピニオンギヤ
55…キャリア
56…リングギヤ
6 …ケース
7 …バリエータ入力軸
8 …ローディングカム
9 …バリエータ
91…前部入力ディスク
92…前部パワーローラ
93…後部入力ディスク
94…後部パワーローラ
95…出力ディスク
G …遊星歯車機構
10…連結軸
11…バリエータ出力軸
12…第1サンギヤ
13…ピニオンギヤ
14…大径ギヤ(第1ギヤ)
15…小径ギヤ(第2ギヤ)
16…第2サンギヤ
17…キャリア
18…サンギヤ出力軸
19…変速機出力軸
20…逆転機構
21…サンギヤ
22…第1ピニオンギヤ
23…第2ピニオンギヤ
24…リングギヤ
25…キャリア
30…前後進機構
31…サンギヤ
32…第1ピニオンギヤ
33…第2ピニオンギヤ
34…リングギヤ
35…キャリア
36…前進ブレーキ
37…後進クラッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と出力軸との間に配設され、互いに対向配置した入力ディスク及び出力ディスクと、前記入力ディスク及び前記出力ディスクの間に傾転自在に配設されたパワーローラとを有するバリエータを備える無段変速装置において、
前記バリエータの軸方向後部に配設され、前記入力軸と連結されたキャリアと、同軸に配設された第1ギヤ及び第2ギヤが連結されてなり前記キャリアに回転自在に支持されたピニオンギヤと、前記第1ギヤに噛合すると共に前記出力ディスクに連結された第1サンギヤと、前記第2ギヤに噛合すると共に前記出力軸に連結された第2サンギヤとを有し、前記第2サンギヤの回転を前記第1サンギヤの回転と同じ方向に且つ減速する遊星歯車機構を備えることを特徴とする無段変速装置。
【請求項2】
前記遊星歯車機構は、前記第1サンギヤと噛合する前記第1ギヤの歯部の噛み合い径が、前記第2サンギヤと噛合する前記第2ギヤの歯部の噛み合い径より大きく設定されていることを特徴とする請求項1記載の無段変速装置。
【請求項3】
さらに、前記バリエータと同軸に配設され、前記入力軸と前記キャリアとを連結する連結軸を備えることを特徴とする請求項1乃至2記載の無段変速装置。
【請求項4】
さらに、前後進を切り替える前後進機構を備えることを特徴とする請求項1乃至3記載の無段変速装置。
【請求項5】
前記バリエータは、前記入力ディスク及び前記出力ディスクを二組有するダブルキャビティ型トロイダル式バリエータであることを特徴とする請求項1乃至4記載の無段変速装置。
【請求項6】
前記バリエータは、前記入力ディスク及び前記出力ディスクを一組有するシングルキャビティ型トロイダル式バリエータであることを特徴とする請求項1乃至4記載の無段変速装置。
【請求項1】
入力軸と出力軸との間に配設され、互いに対向配置した入力ディスク及び出力ディスクと、前記入力ディスク及び前記出力ディスクの間に傾転自在に配設されたパワーローラとを有するバリエータを備える無段変速装置において、
前記バリエータの軸方向後部に配設され、前記入力軸と連結されたキャリアと、同軸に配設された第1ギヤ及び第2ギヤが連結されてなり前記キャリアに回転自在に支持されたピニオンギヤと、前記第1ギヤに噛合すると共に前記出力ディスクに連結された第1サンギヤと、前記第2ギヤに噛合すると共に前記出力軸に連結された第2サンギヤとを有し、前記第2サンギヤの回転を前記第1サンギヤの回転と同じ方向に且つ減速する遊星歯車機構を備えることを特徴とする無段変速装置。
【請求項2】
前記遊星歯車機構は、前記第1サンギヤと噛合する前記第1ギヤの歯部の噛み合い径が、前記第2サンギヤと噛合する前記第2ギヤの歯部の噛み合い径より大きく設定されていることを特徴とする請求項1記載の無段変速装置。
【請求項3】
さらに、前記バリエータと同軸に配設され、前記入力軸と前記キャリアとを連結する連結軸を備えることを特徴とする請求項1乃至2記載の無段変速装置。
【請求項4】
さらに、前後進を切り替える前後進機構を備えることを特徴とする請求項1乃至3記載の無段変速装置。
【請求項5】
前記バリエータは、前記入力ディスク及び前記出力ディスクを二組有するダブルキャビティ型トロイダル式バリエータであることを特徴とする請求項1乃至4記載の無段変速装置。
【請求項6】
前記バリエータは、前記入力ディスク及び前記出力ディスクを一組有するシングルキャビティ型トロイダル式バリエータであることを特徴とする請求項1乃至4記載の無段変速装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2006−275202(P2006−275202A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97288(P2005−97288)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
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