説明

無線センサ装置

【課題】移動体の有無と、移動体が存在する場合にはその移動体の方位とを同時に検知できる無線センサ装置を提供すること。
【解決手段】第1、第2及び第3の送受信アンテナ1L,1C,1Rと、第1、第2及び第3の検出用ダイオード3L,3C,3Rと、これら送受信アンテナ1L,1C,1R及び検出用ダイオード3L,3C,3Rにそれぞれパルス信号を供給するパルス発生器2と、第1の検出用ダイオード3Lの出力信号と第3の検出用ダイオード3Cの出力信号とが入力する第1の差動増幅回路4と、第2の検出用ダイオード3Rの出力信号と第3の検出用ダイオード3Cの出力信号とが入力する第2の差動増幅回路5と、第1の差動増幅回路4の出力信号と第2の差動増幅回路5の出力信号との和信号を検出する加算器11と、第1の差動増幅回路4の出力信号と第2の差動増幅回路5の出力信号との差信号を検出する減算回路12とを具備した無線センサ装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス信号をアンテナに供給して電波を放射すると共に、物体からの反射パルス信号をアンテナで受信して物体の状況を検知可能な無線センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体検知のための電波を送信する手段と、該送信手段によって送信された電波の反射波を受信する手段と、該受信手段で受信した信号の周波数と該送信手段によって送信された信号の周波数との差分を求めてその差分に応じた差分信号を生成する手段とを備えた無線センサ装置がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の無線センサ装置では、送信回路から出力した信号をアンテナから送信すると共に、移動体に当たって反射した反射信号を受信アンテナで受信して受信回路に取り込む。この時、動いている物体である移動体から反射された電波は、ドップラー効果により、送信した電波に比べ変化した周波数で受信されるので、差分検出回路によって差分周波数及び振幅を検出し、移動速度及び距離を得ている。
【0003】
上記無線センサ装置は、人の行動パターンによって、その差分信号の出力波形のパターンに特徴が出てくることを利用して、行動パターンを推定する。例えば、トイレに人が近づいて来る場合は、ある一定の周波数で振幅は徐々に大きくなってゆく。そして、便器の前で立ち止まると、急に波形がなくなり、低い周波数の波形となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−258799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した無線センサ装置は、差分信号の出力波形を連続的に取り込んで時経過に伴うパターンを認識して物体の移動パターンを推定するので、移動体の有無と移動体の方位とを同時に瞬間的に検知することができなかった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、移動体の有無と、移動体が存在する場合にはその移動体の方位とを同時に検知することができる無線センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線センサ装置は、第1、第2及び第3の送受信アンテナと、前記第1の送受信アンテナに接続された第1のミキサ回路と、前記第2の送受信アンテナに接続された第2のミキサ回路と、前記第3の送受信アンテナに接続された第3のミキサ回路と、前記第1、第2、第3の送受信アンテナ及び前記第1、第2、第3のミキサ回路にそれぞれパルス信号を供給する信号発生回路と、前記第1のミキサ回路の出力信号と前記第3のミキサ回路の出力信号とが入力する第1の差動増幅回路と、前記第2のミキサ回路の出力信号と前記第3のミキサ回路の出力信号とが入力する第2の差動増幅回路と、前記第1の差動増幅回路の出力信号と前記第2の差動増幅回路の出力信号との和信号を検出する第1の検出手段と、前記第1の差動増幅回路の出力信号と前記第2の差動増幅回路の出力信号との差信号を検出する第2の検出手段とを具備したことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、信号発生回路で生成されたパルス信号が第1、第2、第3の送受信アンテナ及び第1、第2、第3のミキサ回路にそれぞれ供給され、第1、第2、第3の送受信アンテナからはパルス信号による電波が放射される。移動体が存在する場合には移動体で反射した反射パルス信号が、ドップラー効果により、第1、第2、第3の送受信アンテナで異なる位相で受信され、各アンテナに接続された第1、第2、第3のミキサ回路にそれぞれ入力される。第1、第2、第3のミキサ回路において反射パルス信号に対して信号発生回路から直接入力するパルス信号がローカル信号として混合され、反射パルス信号が中間周波信号に周波数変換されて出力される。第1の差動増幅器では第3の送受信アンテナで受信された反射パルス信号を基準信号として、第1の送受信アンテナで受信された反射パルス信号との差動増幅信号が生成され、第2の差動増幅器では第3の送受信アンテナで受信された反射パルス信号を基準信号として、第2の送受信アンテナで受信された反射パルス信号との差動増幅信号が生成される。第1の差動増幅回路の出力信号と第2の差動増幅回路の出力信号とを合成した和信号から、信号レベルが所定値以上であれば移動体が存在すると判定でき、合成信号が出力されない場合又は実質的に合成信号が存在しないとみなせる程度まで信号レベルが小さい場合は物体が停止していると判定できる。一方、第1の差動増幅回路の出力信号と第2の差動増幅回路の出力信号との差信号から、該差信号の極性によって移動体の方位を判定することができる。したがって、第1及び第2の差動増幅回路の出力信号の和と差とを検出することで、移動体の有無と、移動体が存在する場合にはその移動体の方位とを同時に検知することができる。
【0009】
上記無線センサ装置において、前記第1、第2、第3の送受信アンテナは、前記第1の送受信アンテナ、前記第3の送受信アンテナ、前記第2の送受信アンテナの順に配置されることができる。
【0010】
上記無線センサ装置において、前記第1の検出手段は、前記第1及び第2の差動増幅回路の出力信号を加算する加算回路で構成され、前記第2の検出手段は、前記第1の差動増幅回路の出力信号から前記第2の差動増幅回路の出力信号を減算する減算回路で構成されることができ、前記加算回路からの出力信号の有無により移動体の有無を判定し、前記減算回路からの出力信号の極性により移動体の方位を判定することができる。
【0011】
上記無線センサ装置において、前記第1の差動増幅器の出力端と前記加算回路との間に設けられた第1の積分器と、前記第2の差動増幅器の出力端と前記減算回路との間に設けられた第2の積分器とを具備しても良い。これら第1及び第2の積分器により高周波成分を含んだ信号をDC成分に変換でき、感度の改善を図ることができる。
【0012】
上記無線センサ装置において、前記第1の差動増幅回路の入出力端間に設けられDCオフセットを除去するための第1の帰還回路と、前記第2の差動増幅回路の入出力端間に設けられDCオフセットを除去するための第2の帰還回路とを具備することができる。各差動増幅器出力に含まれるDCオフセットを系統毎に除去することで、第1及び第2の検出手段で和と差を演算する際にDCオフセットを含まない高精度の検出結果を得ることができる。
【0013】
上記無線センサ装置において、前記第1、第2、第3の送受信アンテナは、前記パルス信号が供給されると、VHF帯域の電波を放射することを特徴とする。これにより、パルス信号を用いることで超広帯域の電波を放射する場合は、各種法律により使用周波数が規制されるが、VHF帯域の電波を放射することで、法規制範囲内の電波を使用できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、移動体の有無と、移動体が存在する場合にはその移動体の方位とを同時に検知することができる無線センサ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る無線センサ装置のブロック図
【図2】送信パルス信号及び反射パルス信号を示すタイミング図
【図3】移動体の到来方向と信号レベルとの関係を示す図
【図4】上記一実施の形態における信号処理回路のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る無線センサ装置の機能ブロック図である。
本実施の形態の無線センサ装置は、空間的に離間して配置した3本の送受信アンテナとしてのアンテナ1L、1R、1Cを備えている。図1において左側に配置されたアンテナ1Lと中央に配置されたアンテナ1Cとで1つのペアを構成し、右側に配置されたアンテナ1Rと中央に配置されたアンテナ1Cとでもう1つのペアを構成している。本実施の形態では中央に配置されたアンテナ1Cを共用しているが、別々に設けることも可能である。
【0017】
パルス発生器2は、パルス信号を発生して3本のアンテナ1L,1R,1Cに対して同タイミングでパルス信号を供給する。パルス信号のパルス幅は、想定する測定対象物までの距離(測定レンジ)に応じて決めることができ、送信パルスと反射パルス信号とが時間的に重なる部分が生じる範囲で適宜設定する。また、パルス信号の送信間隔となるパルス間隔は所望の測定間隔に応じて決めることができ、測定間隔を拡大することで消費電力を低減することができる。たとえば、数m程度の測定レンジであれば、パルス幅を数十n秒、パルス間隔を十数μ秒とすることができる。また、アンテナ1L,1R,1Cから放射される電波は電波規制に関する法律を順守する必要があるが、本実施の形態ではVHF帯を使用するものとする。
【0018】
3本のアンテナ1L,1R,1Cの基端部側にシングルエンドミキサを構成する検出用ダイオード3L、3R、3Cがそれぞれ接続されている。検出用ダイオード3L、3R、3Cは、パルス発生器2から出力されたパルス信号と、各アンテナ1L,1R,1Cに入射した物体からの反射パルス信号とを混合する働きをする。アンテナから放射され物体で反射して再び同一アンテナで到達した反射パルス信号は、アンテナ−物体間の往復距離だけ位相が遅れている。検出用ダイオード3L、3R、3Cは、パルス発生器2から直接入力するパルス信号をローカル信号として反射パルス信号に掛け合せて周波数変換するように作用する。これにより、パルス信号と反射パルス信号との位相差に対応した信号(中間周波信号)を取り出すことができる。
【0019】
左側配置のアンテナ1Lに対応した検出用ダイオード3L、及び中央配置のアンテナ1Cに対応した検出用ダイオード3Cの出力信号が一方の差動増幅器4に入力される。差動増幅器4は、検出用ダイオード3Cの出力信号と検出用ダイオード3Lの出力信号とを入力して差動増幅する。また、右側配置のアンテナ1Rに対応した検出用ダイオード3R、及び中央配置のアンテナ1Cに対応した検出用ダイオード3Cの出力信号が他方の差動増幅器5に入力される。差動増幅器5は、検出用ダイオード3Cの出力信号と検出用ダイオード3Rの出力信号とを入力して差動増幅する。すなわち、シングルエンドミキサ(3L,3C,3R)を3系統設け、中央配置のアンテナ1Cに対応した検出用ダイオード3Cから出力される信号を基準信号とし、残りの2系統の信号を基準信号と差分処理する構成としている。
【0020】
なお、検出器用ダイオード3L,3C,3Rの出力には系統毎のDCオフセットや周囲固定物、アンテナの指向性、Diodeと各給電回路のばらつき、又はDiode,増幅器の温度特性Driftなど、受信信号レベルに起因しない信号差が含まれている。そこで、帰還回路で構成される補正回路6,7によりDCオフセットや固定出力の違いを補正する構成としている。たとえば、基準信号となる中央の系統を除く2系統についてDCオフセットのバラツキがあれば、2系統間のバラツキを補正する補正信号を補正回路6,7で生成しフィードバックするように構成している。
【0021】
2系統のうち一方の差動増幅器出力を積分器8に入力し、他方の差動増幅器出力を積分器9に入力している。積分器8、9は、差動増幅器出力を積分してDC成分の信号に変換する。2つの積分器8,9の出力信号は加算器11と減算器12にそれぞれ入力する。
【0022】
加算器11は、2つの積分器8,9の出力信号を加算して移動体の有無検出のための合成信号を生成する。積分器8、9から出力される差動増幅器出力は、後述するように移動体が存在する場合に検出されるので、2つの系統の差動増幅器出力を合成することにより、1系統だけの場合に比べて、より高い感度で移動体の有無を検出できる。
【0023】
減算器12は、一方の積分器8の出力信号(A)から他方の積分器9の出力信号(B)を減算する差分処理を行う。後述するように、差分値(A−B)の極性は当該無線センサ装置からみた移動体の方位を表すので、差分処理(A−B)により移動体の方位を検出できる。
【0024】
信号処理回路13は、加算器11から出力される移動体の有無を表す検出信号と、減算器12から出力される移動体の方位を表す検出信号とを取り込む。信号処理回路13は、移動体の有無検出と方位検出とを1パルスで瞬時的に同時判定して予め定められた処理を実行する。たとえば、所定距離以内で特定方向から移動体が接近してくる場合にアラームを出力する。
【0025】
次に、以上のように構成された本実施の形態の動作について説明する。
パルス発生器2から所定周期でパルス信号が出力され、左右のアンテナ1L,1Rに分配されると共に中央のアンテナ1Cに分配される。3本のアンテナ1L,1C,1Rはパルス発生器2から供給されるパルス信号を電波として放射すると共に、アンテナ周囲にある物体(生体を含む)で反射した反射パルス信号を受信する。
【0026】
図2(a)にパルス発生器2からアンテナに供給されるパルス信号を示し、図2(b)(c)にアンテナで受信される物体からの反射パルス信号を示す。同図に示すように、パル信号(a)に対して、反射パルス信号(b)(c)は伝搬距離に対応して振幅が減衰している。したがって、反射パルス信号(b)(c)の振幅は物体までの距離情報を含んでおり、振幅情報から物体までの距離を求めることができる。
【0027】
各アンテナから放射された電波が反射する物体が停止している場合、左右のアンテナ1L,1Rから物体までの伝搬距離の差は、電波の波長に対して十分に小さいので、左右のアンテナ1L,1Rで受信される反射パルス信号の位相はほとんど変わらない。このため、左右のアンテナ1L,1R共に略同一位相の反射パルス信号(例えば、図2(b))を受信する。
【0028】
一方、各アンテナから放射された電波が移動している物体である移動体で反射した場合、空間位置の異なる左右のアンテナ1L,1Rではドップラー効果によりアンテナ位置により大きく位相の異なる反射パルス信号を受信する。たとえば、左側のアンテナ1Lでは図2(b)に示す位相の反射パルス信号を受信し、右側のアンテナ1Rでは図2(c)に示す異なる位相の反射パルス信号を受信する。
【0029】
シングルエンドミキサを構成する検出用ダイオード3L、3R、3Cでは、パルス発生器2から直接入力するパルス信号をローカル信号として反射パルス信号と混合して周波数変換する。ローカル信号となるパルス信号と受信信号となる反射パルス信号とが重なる範囲で検出出力が得られる。パルス信号と反射パルス信号の周波数(位相)が同一の場合はDC信号が出力され、両者の位相が異なれば周波数差の中間周波信号が出力される。
【0030】
左側のアンテナ1Lに対応した系統(以下、「左検出系統」という)では、差動増幅器4が検出用ダイオード3Cの検出信号を基準信号として左側のアンテナ1Lで受信された反射パルス信号の検出信号との差分に応じて信号増幅する差動増幅を行う。同時に、右側のアンテナ1Rに対応した系統(以下、「右検出系統」という)では、差動増幅器5が検出用ダイオード3Cの検出信号を基準信号として右側のアンテナ1Rで受信された反射パルス信号の検出信号との差分に応じて信号増幅する差動増幅を行う。
【0031】
ここで、アンテナ1L,1Cから放射された電波が反射する物体が停止している場合、アンテナ1L,1Cで受信される反射パルス信号の位相差は十分に小さい。そのため、検出用ダイオード3L,3Cからほぼ同じ信号が出力される。差動増幅器4は検出用ダイオード3L,3Cからの2つの入力信号がほぼ同じ信号であるので、差動増幅出力は殆ど現れない。
【0032】
このとき、右側のアンテナ1Rに対応した右検出系統でも、同様に物体が停止しているので、検出用ダイオード3R,3Cからほぼ同じ信号が出力され、差動増幅器5の差動増幅出力は殆ど現れない。
【0033】
したがって、信号処理回路13は、加算器11から出力される検出信号の信号レベルが所定値より小さければ、移動体は存在しないと判定することができる。
【0034】
図3(a)は移動体OBが左側のアンテナ1L側に近い方位から接近している場合を例示している。図示するように、移動体OBが左側のアンテナ1L側の方角から接近している場合、移動体OBから各アンテナまでの距離はアンテナ1L<アンテナ1C<アンテナ1Rとなり、ドップラー効果により左右のアンテナ1L,1Rで受信される反射パルス信号の位相も大きく異なることになる。また、空気中を伝搬する電波は伝搬距離に比例して減衰するので、移動体OBに近い左側のアンテナ1Lは、右側のアンテナ1Rに比べて、反射パルス信号の受信電力がより大きくなる。アンテナ1Lで受信される反射パルス信号とアンテナ1Cで受信される反射パルス信号とは、ドップラー効果により位相が異なるので、左検出系統の2つの検出用ダイオード3L,3Cからは異なる信号(信号レベル)が出力される。差動増幅器4では、2つの検出用ダイオード3L,3Cから出力される異なる信号を差動増幅して積分器8へ出力する。同時に、右検出系統の2つの検出用ダイオード3R,3Cからも異なる信号(信号レベル)が出力されるので、差動増幅器4の差動増幅出力が現れるが、図3(a)に示すように移動体OBに近いアンテナ1Lに比べて遠い位置にあるアンテナ1Rの受信強度が減衰している。したがって、差動増幅器5は差動増幅器4よりも小さな差動増幅出力となる。
【0035】
図3(b)は移動体OBが右側のアンテナ1R側に近い方位から接近している場合を例示している。図示するように、移動体OBが左側のアンテナ1L側の方位から接近している場合、移動体OBから各アンテナまでの距離はアンテナ1R<アンテナ1C<アンテナ1Lとなり、ドップラー効果により左右のアンテナ1L,1Rで受信される反射パルス信号の位相も大きく異なることになる。また、移動体OBに近い右側のアンテナ1Rは、左側のアンテナ1Lに比べて、反射パルス信号の受信電力がより大きくなる。よって、差動増幅器5では、検出用ダイオード3R,3Cから出力される異なる信号を差動増幅して積分器9へ出力する。同時に、左検出系統の検出用ダイオード3L,3Cからも異なる信号(信号レベル)が出力されるが、図3(b)に示すように移動体OBに近いアンテナ1Rに比べて遠い位置にあるアンテナ1Lの受信強度が減衰している。したがって、差動増幅器4は差動増幅器5よりも小さな差動増幅出力となる。
【0036】
積分器8では左検出系統の差動増幅器4の出力信号を積分してDC信号に変換して加算器11及び減算器12へ出力する。また、もう一方の積分器9では右検出系統の差動増幅器5の出力信号を積分してDC信号に変換して加算器11及び減算器12へ出力する。減算器12では、方位検出信号(差分値(A−B)の極性)を生成する。移動体OBが左側のアンテナ1L側に近い方位から接近している場合(図3(a))、左検出系統の積分器8の方が右検出系統の積分器9よりも積分信号が大きくなるので、正極性の方位検出信号を出力する。また、移動体OBが右側のアンテナ1R側に近い方位から接近している場合(図3(b))、右検出系統の積分器9の方が左検出系統の積分器8よりも積分信号が大きくなるので、負極性の方位検出信号を出力する。また、加算器11は、積分器8と積分器9の双方の出力を加算するので、信号処理回路13は2系統(左検出系統+右検出系統)の出力信号を合成した信号値に基づいて移動体の有無を判定できるので、1系統のみの信号値から移動体の有無を判別する場合に比べて、検出感度を向上することができる。
【0037】
図4は信号処理回路13の処理フローを示すフロー図である。信号処理回路13は、所定の周期で、加算器11及び減算器12から検出信号を取り込む(ステップS1)。加算器11から取り込まれた検出信号は、移動体の有無および移動体までの距離情報を含んでいる。また、減算器12から取り込まれた検出信号は、移動体の存在する方位情報を含んでいる。
【0038】
信号処理回路13は、加算器11から取り込まれた検出信号の信号レベルが閾値よりも大きければ、移動体「有」と判定すると共に、当該信号レベルに基づいて移動体までの距離情報に変換する(ステップS2)。また信号処理回路13は、減算器12から取り込まれた方位検出信号が正極性((A−B>0)であれば、移動体OBが左側のアンテナ1L側に存在し、方位検出信号が負極性((A−B<0)であれば、移動体OBが右側のアンテナ1R側に存在すると判定する(ステップS3)。本例では、特定方向(左側又は右側)から接近する移動体が所定距離内に来たら、アラームを出力する(ステップS4)。たとえば、自動車のフロントパネルにおいて助手席側からの操作と運転席側からの操作を判別し、走行中に運転席側からの操作を検出した場合にはアラームを出力すると共に操作受付不可能な状態に制御する。これにより、自動車運転中に運転者によるパネル操作を確実に防止でき、安全運転の支援が可能になる。
【0039】
このように、本実施の形態によれば、空間的に配置された3つのアンテナ1L,1C,1Rと、シングルエンドミキサを構成する3つの検出用ダイオード3L,3C,3Rとを設け、中央配置のアンテナ1Cに対応した検出用ダイオード3Cから出力される信号を基準信号とし、残りの2系統の信号を基準信号との差分から差動増幅し、差動増幅した2系統の出力信号をさらに合成処理と差分処理したので、合成処理出力を移動体有無判定に用い、差分処理出力を方位判定に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、UWB信号を用いて移動体の有無および移動体の方位を検知する無線センサ装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1L、1R、1C アンテナ
2 パルス発生器
3L、3R、3C 検出用ダイオード
4、5 差動増幅器
6,7 補正回路
8、9 積分器
11 加算器
12 減算器
13 信号処理回路







【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2及び第3の送受信アンテナと、
前記第1の送受信アンテナに接続された第1のミキサ回路と、
前記第2の送受信アンテナに接続された第2のミキサ回路と、
前記第3の送受信アンテナに接続された第3のミキサ回路と、
前記第1、第2、第3の送受信アンテナ及び前記第1、第2、第3のミキサ回路にそれぞれパルス信号を供給する信号発生回路と、
前記第1のミキサ回路の出力信号と前記第3のミキサ回路の出力信号とが入力する第1の差動増幅回路と、
前記第2のミキサ回路の出力信号と前記第3のミキサ回路の出力信号とが入力する第2の差動増幅回路と、
前記第1の差動増幅回路の出力信号と前記第2の差動増幅回路の出力信号との和信号を検出する第1の検出手段と、
前記第1の差動増幅回路の出力信号と前記第2の差動増幅回路の出力信号との差信号を検出する第2の検出手段と、
を具備したことを特徴とする無線センサ装置。
【請求項2】
前記第1、第2、第3の送受信アンテナは、前記第1の送受信アンテナ、前記第3の送受信アンテナ、前記第2の送受信アンテナの順に配置されたことを特徴とする請求項1記載の無線センサ装置。
【請求項3】
前記第1の検出手段は、前記第1及び第2の差動増幅回路の出力信号を加算する加算回路で構成され、
前記第2の検出手段は、前記第1の差動増幅回路の出力信号から前記第2の差動増幅回路の出力信号を減算する減算回路で構成され、
前記加算回路からの出力信号の有無により移動体の有無を判定し、
前記減算回路からの出力信号の極性により移動体の方位を判定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の無線センサ装置。
【請求項4】
前記第1の差動増幅器の出力端と前記加算回路との間に設けられた第1の積分器と、
前記第2の差動増幅器の出力端と前記減算回路との間に設けられた第2の積分器と、
を具備したことを特徴とする請求項3記載の無線センサ装置。
【請求項5】
前記第1の差動増幅回路の入出力端間に設けられDCオフセットを除去するための第1の帰還回路と、
前記第2の差動増幅回路の入出力端間に設けられDCオフセットを除去するための第2の帰還回路と、
を具備したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の無線センサ装置。
【請求項6】
前記第1、第2、第3の送受信アンテナは、前記パルス信号が供給されると、VHF帯域の電波を放射することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の無線センサ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−249712(P2010−249712A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100504(P2009−100504)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】