説明

無線ネットワークモデルを実際の無線ネットワークの状態に適合させるための方法および装置

この発明は、実際の無線ネットワークからのモデル変数の測定データによって、無線ネットワークモデルを、場所依存性のモデル変数を供給する実際の無線ネットワークの状態に適合させるための方法および装置に関し、前記測定データは或る測定点で収集される。この発明の目的は、測定データによって無線ネットワークモデルを無線ネットワークの実際の状態に簡単に適合させることである。このため、モデル変数の各々は、モデル変数が測定データに適合される数学演算により、測定データに従って直接修正される。このように、無線ネットワークモデルのパラメータは測定データに従って変更されず、むしろ、モデル変数が直接修正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測定位置で得られた実際の無線ネットワークからのモデリング値についての測定データを用いて、無線ネットワークモデルを、位置依存性のモデリング値を提供する実際の無線ネットワークの状態に適合させるための方法に関する。
【0002】
この発明はさらに、そのような方法を実行するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
先行技術
モバイルネットワーク、たとえば携帯電話用のモバイルネットワークは、地域全体に分布している送信局を含む。各送信局は1つの「無線セル」に帰属される。各無線セルに「セルコード」が帰属される。無線セルの計画および関数に関連する値には、無線セルの区域にわたって変化するものがあり、例として「経路損失データ」が挙げられる。これらは、物理学に基づいた無線伝搬減衰を特徴付ける。所与の方向に放出された送信局の所与の送信パワーに対し、末端装置、たとえば携帯電話の受信パワーは、送信局からの距離が増加するにつれて減少する。この減少は一方では、光の場合と同様に距離とともに増大する波面区域への放出送信パワーの分布によって生じる。しかしながら、この減少は、吸収、または建物、もしくは地域の地形によっても決定される。
【0004】
無線ネットワークの計画および最適化のために、無線ネットワークモデルが生成される。このため、無線セルの区域は比較的小さい区域部分のパターンに分割される。これらの区域部分の各々に「モデル値」が帰属される。それらは、この区域部分について有効なモバイルネットワークの関数に関連する変数の値である。そのような変数は、特に、経路損失である。また、送信パワーは、無線セルの或る点で異なる強度および実行時間を有して、送信局により受信され得る。次に、インパルス形状の送信信号が、異なる高さを有するいくつかの時間遅延インパルスの形で受信される。これは「インパルス応答」と呼ばれる。個々の区域部分に帰属されるそのようなモデル変数の値は、マトリックスを形成する。
【0005】
計画段階、すなわち無線ネットワークの設置前では、関連する物理的値は測定できない。無線ネットワークの設置後も、各個々の区域部分についての経路損失といったそのような物理的値を測定することはできない。区域部分の大抵は、問題なくアクセスすることができない。さらに、各区域部分におけるそのような測定にかかる労力および費用は甚大である。したがって、無線チャネルを予測するための数学的モデルがこれまで開発されており、さまざまな影響変数と、たとえば物理的規則または実験的に発見された関係による経路損失に対するそれらの影響とをモデル化している。これらのモデルは或るパラメータを含んでいる。
【0006】
そのようにして得られたチャネルモデルは通常、現実に適正に適合してはいない。したがって、最初に得られたチャネルモデルを、実際の変数の測定データを用いてできるだけ現実に適合させることが必要である。このため、公知の方法におけるチャネルモデルのパラメータは、測定データに基づいて変更される。チャネルモデルのパラメータおよび項は段階的に適合され、経路損失についての値は繰返し新しく計算される。この方法は多大な労力を必要とする。なぜなら、どのパラメータがどのように測定値とモデル値との偏差の原因になっているか、すなわち、モデルと現実との偏差を最小限に抑えるためにパラメータをどのように変更すべきかがわからないためである。
【0007】
この先行技術についての一例は、D.J.Y リー(Lee)およびW.C.Y リーによる刊行物「微調整リーモデル」(Fine Tune Lee Model)406〜410頁、個人、屋内および移動無線通信についてのIEEE会議(IEEE Conference on Personal, Indoor and Mobile Radio Communications)、2000年9月18〜21日である。
【0008】
WO 02/073997A1からは、経路損失モデルを実際の無線ネットワークの状態に適合させるための方法が公知であり、最初に基地局についての情報から経路損失モデルが測定位置で得られ、それは、送信パワー、放出パターンおよび高さ、地理的情報および測定データ、すなわち信号強度である。物理的状態から得られたモデルは、実際の測定データによってサポートされる。測定データは、上述のように、モデルのパラメータに影響を与える。そのような経路損失モデルは、検討される送信区域の各点に、経路損失値の形をしたモデル値を提供する。通常、モデルから得られた経路損失値の、実際の測定データからの偏差が生じる。そのような偏差はシェーディング(Abschattungen)によって生じる。そのようなシェーディングを考慮に入れると、このシェーディングは、検討される区域におけるシェーディング予測のためのパラメータを提供するさらなるステップにおいて、統計的に評価される。それにより、第2のモデルがシェーディングのために使用され、そのパラメータは、第1のモデルから得られた経路損失値からの測定データの偏差から決定される。そのようにして得られたシェーディング値は、第1のモデルから得られた経路損失値の上に重ね合わされる。測定値が非常に信頼できるものである場合、測定位置でこれらのモデルから得られた経路損失値は、実際の測定値によって置換可能である。測定値の信頼性がより低い場合、測定データとモデル値との加重平均値が測定値の代わりに使用される。
【0009】
WO 02/073997A1に従った方法は、したがって、二段階の2つのモデルで機能し、これらのモデルのパラメータは、或る測定位置で得られた測定データを用いて決定される。したがって、これは前述の先行技術の場合と同様、モデルのパラメータの決定である。実際の測定データによるモデル値の置換は、もしあれば、測定位置自体において行なわれる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の一目的は、測定データを用いる先行技術よりも簡潔に無線ネットワークモデルを無線ネットワークの実際の状態に適合させることである。
【0011】
この発明によれば、この目的は、上述の種類の方法を用いて達成され、前記方法は、
無線セルに細かい格子を設定し、小区域部分を規定するステップを含み、各区域部分にモデリング変数の値が無線ネットワークモデルによって帰属され、前記方法はさらに、
モデリング値を測定データに適合させることによって、細かい格子の全区域部分のモデリング値を修正するための数学演算を設定するステップを含み、
数学演算は、各区域部分について、それぞれの区域部分の測定データおよび位置に直接依存している。
【0012】
この発明に従った方法によれば、無線ネットワークモデルのパラメータはしたがって変更されず、モデリング値自体が直接修正される。これは、或る数学演算に従った全区域部分のモデリング値を用いて行なわれる。この演算は、それぞれの区域部分の測定データおよび位置に直接依存する。
【0013】
この発明に従った方法は、好ましくは、
細かい格子の上に重ね合わされた粗い格子を設定し、それにより、細かい格子の複数の区域部分を各々含む区域を規定するステップと、
測定位置で測定データを得るステップと、
粗い格子の区域の測定値に従った数学演算によって、異なる区域における区域部分に帰属された測定値を修正するステップとによって実行可能である。
【0014】
数学演算は補間を含み得る。
補間は、
粗い格子のそれぞれの区域の測定位置での測定値を、これらの測定値の一般値を表わす1つの値に集約するステップと、
測定値を表わす値が帰属された粗い格子の区域内に基準点を設定するステップと、
基準点の周りに影響半径を設定するステップと、
影響半径内の全区域部分におけるモデリング値を、それぞれの区域部分の基準点までの距離の減少関数に従って変更するステップとを用いて実行され得る。
【0015】
測定データの値を表わす値が、測定データの(相加または相乗)平均値であれば、有利である。それはまた、加重平均値であってもよい。
【0016】
この発明に従った方法の好ましい適用は、モデリング値がモデル化された経路損失データであり、測定データが、無線ネットワークの無線セルによって放出された基準信号の受信パワーから求められた経路損失データであることである。
【0017】
モデリング値はまた、上述の意味において、モデル化されたインパルス応答であってもよい。これらのインパルス応答は、いくつかの物理的変数、すなわち、受信パワーまたは経路損失、およびそれぞれの位相差または実行時間差によって特徴付けられる。これらの物理的変数はマトリックスの形に集約可能である。
【0018】
好ましくは、最初に、
無線セル全体にわたって測定データを得るステップと、
そのような測定データの値を表わす値を求めるステップと、
無線セル全体にわたってモデリング値の値を表わす値を形成するステップと、
測定データの値を表わす値とモデリングデータの値を表わす値との差を形成するステップと、
この差を用いてモデリング値を訂正するステップとが実行される。
【0019】
好ましくは、モデリングデータの値を表わす値および測定データの値を表わす値は、ここでも平均値である。
【0020】
そのようにして、最初に、無線ネットワークモデル全体と測定データとの差が取除かれる。無線セル全体にわたる測定データの平均値は、無線セルにおけるモデリング値全体の平均値と一致する。しかしながら、局所的な偏差が通常、依然として起り得る。そのような局所的偏差は、上述のように補われる。
【0021】
位置依存性のモデリング値を有する仮想無線ネットワークモデルを記憶するデータベースと、測定位置でのモデル化された実際の無線ネットワークの位置依存性の測定データの生成のための測定装置とを有する、上述の方法を実行するための装置は、この発明によれば、モデリング値を測定値に適合させることによる数学演算により、モデリング値の各々を測定データに従って直接修正するよう適合されたデータ処理手段によって特徴付けられる。
【0022】
測定装置は、無線セルによって放出された基準信号の受信パワーに応答可能である。さらに、測定装置は、無線セルのコードを検出するよう適合可能である。好ましくは、測定
装置は移動式であり、たとえば無線セルの区域の街路に沿って走行する測定台車に搭載されている。測定装置はまた、無線ネットワークの末端局でもあり得る。さらに、測定装置が、それぞれの実際の受信位置を検出するための手段、たとえば衛星ナビゲーション用受信機を含んでいれば、妥当である。さらに、測定値を、無線セルのそれぞれのコードおよび測定時の位置とともに記録し、出力するための手段が設けられ得る。
【0023】
述べられたように適合された無線ネットワークモデルにより、送信局のアンテナ角度の変更といった無線ネットワークの最適化が行なわれ得る。
【0024】
この発明の一実施例を以下により詳細に、添付図面を参照して説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
発明の好ましい実施例
図1では、符号10は、無線ネットワークの無線セルを小区域部分12のパターンに分割した細かい格子を示している。各区域部分12にモデリング変数の値が帰属される。これらのモデリング値は、たとえば、経路損失データによって定義される。経路損失データは、送信局によって無線チャネルのそれぞれの区域部分の方向に放出され、それぞれの区域部分12に至るまでの送信パワーの減衰を表わしている。区域部分12に帰属されるモデリング値は、点14によって示される。モデリング値はチャネルモデルから得られる。最初に、このチャネルモデルは、距離、地域の地形、建物および工場などの異なる影響を検討し、また実験的に発見された関係を用いて、数学的モデルの形で開発されてきた。チャネルモデルは通常、依然として現実とは一致しない。それは測定によって現実に適合される。そのような測定は、各個々の区域部分について実行することはできない。図1では、モデリング変数の実際の値、またはモデリング変数に由来する物理的変数、たとえば経路16に沿った経路損失データから得られた受信パワーの測定が実行される。この経路は、たとえば、測定車両が走行する街路であり得る。これは、図1に点18で表わされた位置依存性測定データをもたらす。
【0026】
全区域部分を網羅していないこれらの測定データ18を用いて、モデリング値14を直接補間することによって訂正が実行される。これは以下のように行なわれる。
【0027】
細かい格子10の上に粗い格子20が重ね合わされる。粗い格子20は無線セルを領域22に分割する。これらの領域22の各々は多数の小区域部分12を含む。これらの領域22の各々において基準点24が設定されている。基準点24が基本的に正方形の領域22の中心であれば有用である。
【0028】
無線ネットワークモデルの訂正のために、以下の手順が実行される。
まず第1に、無線セル全体のモデリング値の変位の全体的訂正が行なわれる。このため、無線セル全体について、一方で測定値の平均値が、他方でモデリング値の平均値が形成される。モデリング値はすべて、これらの平均値の差の分、訂正される。
【0029】
このステップは依然として、そのようにして訂正される測定値とモデリング値との局所的な偏差の余地がある。モデリング値のさらなる局所的適合が補間によって行なわれる。このため、測定データが得られた粗い格子20の各領域22について、平均測定データが形成される。そのような領域の中心24におけるモデリング値は、この平均値に依存する値に設定される。この領域の他の区域部分12のモデリング値は、中心点からの距離が増加するにつれてこの点から減少する関数を用いて訂正される。
【0030】
この方法を実行するための装置を図2に示す。図2では、符号26は、概略的に図示された無線ネットワークを示している。測定装置28が無線ネットワークから測定データを
受信する。測定装置28は移動式であり、この例では図1の経路16に沿って動く。測定装置28は測定車両に搭載可能である。それはまた、無線ネットワークの末端装置であってもよい。測定装置は、測定装置の実際の位置を判断するための装置を含む。これは、いくつかの送信局に接触することによって測定装置の位置を判断する衛星ナビゲーション受信機(たとえばGPS)または位置発見器であり得る。
【0031】
無線ネットワークはいくつかの無線セルを含み、それらは重複していてもよい。各無線セルにはそれ自体のコードが与えられる。測定装置はこれらのコードに応答する。それにより、得られた測定データは各個々の重複する無線セルに帰属されるようになる。
【0032】
測定装置28は、得られた測定データを判断し、記録し、出力することができる。無線ネットワーク26のデータはデータベース32に記憶される。また、「元の」未修正の無線ネットワークモデルのモデリング値も存在する。図2には、データベース32と無線ネットワーク26との間の双方向インターフェイスが示されている。データベース32は、双方向インターフェイス34を介してコンピュータ装置36と通信する。
【0033】
最初に、無線ネットワーク計画データの形をしたモデリング値を有する無線ネットワークモデルが、コンピュータ装置36のストレージ38に記憶される。コンピュータユニット40は、測定装置28からの測定データを含む。これは矢印42によって示される。コンピュータユニット40はストレージ38と双方向に通信する。したがって、それは無線ネットワークモデルのモデリング値と測定データとを含む。コンピュータユニットは、上述の数学演算、すなわち測定値に対するモデリング値の変位の訂正と、以下の局所的訂正とを実行する。そのようにして訂正されたモデリング値はインターフェイス34を介して送り返され、データベース32に記憶される。コンピュータユニット40は、無線ネットワークの計画およびその最適化に慣れた者によって操作される。
【0034】
インターフェイス30を介して、データベースは、無線ネットワークにおける変更、またはたとえば確定していない接続の量について、無線ネットワーク26から情報を受信する。これらは、無線ネットワークが最適化される際に検討される。
【0035】
この発明に従った方法の図3に従った精密な実行のために、UMTSネットワークの送信局を66局有する約53km2の都市部についての無線ネットワーク計画データ44が存在した。送信局の各々には、別個のアンテナを各々有する1〜3個のセルが設けられた。
【0036】
この無線ネットワーク計画データには、比較的粗い無線拡散モデルに従った全無線セル経路損失マトリックスの計算に使用される地形高度マップが含まれていた。特に、検討される区域における建物構造の影響を、この展開モデルを用いて検討することはできなかった。なぜなら、この目的のために利用可能なデータがなかったためであった。この点において、経路損失予測データと区域について記録された測定データとの部分的に検討可能な偏差が、経路損失について予期された。経路損失マトリックス用に25m×25mの解像度が選択され、それにより、請求項1に述べる細かい格子の小区域部分が設定された。
【0037】
さらに、送信局の位置についての情報、無線セルにおいて使用されるアンテナおよびその方向、ならびにさらに別の減衰要因が、無線ネットワーク計画データに含まれた。アンテナは、そのアンテナ図の好適な3方向モデルによって表わされた。さらに、個々の無線セルによって放出された基準信号またはパイロット信号の送信パワー、および同様に放出されたセルコードが、無線ネットワーク計画データにスクランブル用コードの形で記憶された。この情報を用いて、パイロット信号の予測受信パワーの区域分布を、マトリックスで与えられた経路損失から、同様にマトリックスの形で計算することができた。これらの
受信パワーマトリックスは、それらが基づく経路損失マトリックスと同じ格子区分け、すなわちこの例では25m×25mを有している。
【0038】
UMTS無線ネットワークの現在の無線ネットワーク計画データによって表わされた実際の区域において、移動式無線測定装置を用いて測定が実行された。測定装置は、対応するスクランブル用コードを用いて、パイロット信号の受信パワーを測定し、かつどの無線信号がそれぞれのパイロット信号を放出したかを検出する位置にあった。さらに、記録された各測定値についての受信位置がGPS受信機を用いて判断され、記憶もされた。測定中、検討された区域について十分な量の測定値46が図3に従った入力値の形で利用可能となるように、移動式無線測定装置は一連の街路を走行した。適合前に測定値をパイロット信号の受信パワーの予測値と比較するため、それら双方についての平均値が好適に計算され、その後、全測定位置において比較される。この例では、11dBを上回る標準偏差を有する、13.5dBを上回る平均偏差が発見された。
【0039】
この発明に従った方法は、経路損失マトリックスの適合が測定値から自動的に達成され得るようにコンピュータ装置上で実現された。最初に、ステップ48で入力データが前処理された。図4に従って、第1のステップ56で250m×250mの区分けを有する粗い格子が設定され、この粗い格子の2つの区域部分の距離は、測定データが存在した2つの街路の平均距離に対応していた。このパラメータ化を用いて、ステップ58で、粗い格子のそれぞれの区域部分に測定値が地理的に帰属され、ステップ60で、各セルについて平均値が形成された。さらに、或るセルに帰属されるすべての値がまとめて、および粗い格子の各区域部分について計数された。セル帰属はそれぞれのスクランブル用コードによって確定された。セルごとの測定値の全量を用いて、ステップ64で、この発明に従った経路損失マトリックスの適合をそれぞれのセルについて実行すべきかどうかが決定された。1つのセルについて測定値が十分になかった場合、測定値は十分に信頼できるものではなかったため、適合は実行されなかった。いくつかの無線セルについては、たとえば、利用可能な測定値はなかった。なぜなら、それらは測定ラウンド中にオフに切り替えられており、放出しなかったためである。したがって、これらのセルは適合には使用されなかった。さらに、ステップ66で、各無線セルおよび粗い格子の各区域部分について、後の段階での局所的適合のために十分な測定値があるかどうかが決定された。或るセルについての或る区域部分用の測定値の量が所与の最小量を下回った場合、それぞれの区域部分は局所用適合には使用されなかった。
【0040】
次に、図3の2つのステップ50および52において、測定値による経路損失マトリックスの実際の適合が実行される。
【0041】
最初に、十分な量の測定値が存在する各セルの全体的な適合が、図5のフローチャートに従って実行された。このため、ステップ68で、スクランブル用コードによってそれぞれの無線セルに帰属された全測定値がセルごとに平均化された。さらに、ステップ70で、それぞれの測定位置でのパイロット信号の予測受信パワーが各セルについて平均化され、2つの平均値は互いに比較された。ステップ72における2つの平均値の比率(または、対数単位デシベルではそれは差である)は、測定値に対する予測値の総変位をもたらす。ステップ74で、細かい格子の全区域部分のマトリックス値が、この総変位によって訂正される。
【0042】
経路損失マトリックスの局所的適合は、図6のフローチャートの第2のステップにおいて行なわれる。ステップ76で、粗い格子の各区域部分について、それぞれの中心点が基準点として決定される。ステップ78で、各無線セルおよび粗い格子の各区域部分について、以前に平均化された測定値とパイロット信号の予測受信パワーとの偏差が、パイロット信号について決定された。これらの偏差(さらに測定値変位と呼ばれる)は、ステップ
80で、対応する基準点にセルごとに帰属された。サポート位置における測定値変位を用いて補間関数が形成され、サポート点間の区分は、距離の増加とともに減少する関数で充填された。例示的な補間関数88が図7にランダムセルについて示されており、サポート位置における測定変位値は点86の形で与えられている。補間関数について各サポート位置の周りに影響半径が規定可能であり、距離の増加とともに減少する関数の影響区域を示している。この影響半径は、たとえば、粗い格子の格子幅(すなわちこの場合では250m)であり得る。図8は、例示的な補間関数88の等高線を表わしている。サポート点の周りの楕円がはっきりと見え、距離の増加とともに減少することを表わしている。補間関数の形成後、それはそれぞれのセルの元の経路損失マトリックス90のすべての小区域部分に適用される。双方のマトリックスが対数目盛で与えられている場合、この演算は加算である。結果は、図7の右手側に示された適合された経路損失マトリックス92であり、それぞれのセルの測定されたパイロット信号受信パワーの影響を含んでいる。元の経路損失マトリックス90と比べ、補間関数の効果がはっきりと認識され得る。例示によって挙げられた3つのサポート値86を、結果として生じる経路損失マトリックスにおいて、対応する増加94の形で見ることができる。
【0043】
この2ステップの方法は、たった数秒で、全経路損失マトリックスについて完全に実行可能である。上述のように全無線セルの全経路損失マトリックスを測定値に適合した後で、測定データおよび予測受信パワーマトリックスの新たな比較が実行された。平均偏差は1.4dBに減少可能で、標準偏差は9dB未満であったことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明に従った方法を例示するための概略図であって、無線セルの区域における細かい格子と粗い格子とを示しており、小区域部分は細かい格子により決定され、より大きい領域は粗い格子により決定され、細かい格子の複数の区域部分を含んでいる図である。
【図2】この発明に従った方法を実行するための装置の概略図である。
【図3】この発明に従った方法の手順全体を示すブロック図である。
【図4】図3のブロック48に従った前処理を詳細に示すブロック図である。
【図5】図3のブロック50に従った総変位の訂正を詳細に示すブロック図である。
【図6】図3のブロック52に従った局所的適合を詳細に示すブロック図である。
【図7】元々存在する経路損失マトリックスの、実際の測定値による訂正を示す概略図である。
【図8】等高線の形で基準点から全側面へ減少している補間関数の経過を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定位置で得られた実際の無線ネットワークからのモデリング値についての測定データを用いて、無線ネットワークモデルを、位置依存性のモデリング値を提供する実際の無線ネットワークの状態に適合させるための方法であって、
無線セルに細かい格子(10)を設定し、小区域部分(12)を規定するステップによって特徴付けられ、各区域部分にモデリング変数の値が無線ネットワークモデルによって帰属され、前記方法はさらに、
モデリング値を測定データに適合させることによって、細かい格子(10)の全区域部分(12)のモデリング値を修正するための数学演算を設定するステップによって特徴付けられ、
数学演算は、各区域部分(12)について、それぞれの区域部分(12)の測定データおよび位置に直接依存している、方法。
【請求項2】
細かい格子(10)の上に重ね合わされた粗い格子(20)を設定し、それにより、細かい格子(10)の複数の区域部分(12)を各々含む区域(22)を規定するステップと、
測定位置で測定データ(18)を得るステップと、
粗い格子(20)の区域(22)の測定値に従った数学演算によって、異なる区域(22)における区域部分(12)に帰属された測定値を修正するステップとによって特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
数学演算は補間を含むことを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
数学関数は、
粗い格子(20)のそれぞれの区域(22)の測定位置での測定値(18)を、これらの測定値の一般値を表わす1つの値に集約するステップと、
測定値(18)を表わす値が帰属された粗い格子(20)の区域(22)内に基準点(24)を設定するステップと、
基準点(24)の周りに影響半径を設定するステップと、
影響半径内の全区域部分(12)におけるモデリング値を、それぞれの区域部分の基準点(24)までの距離の減少関数に従って変更するステップとを含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
測定データの値を表わす値は、測定データの平均値であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
モデリング値はモデル化された経路損失データであり、測定データは、無線ネットワークの無線セルによって放出された基準信号の受信パワーから求められた経路損失データであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
モデリング値はモデル化されたインパルス応答であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
無線セル全体にわたって測定データを得るステップと、
そのような測定データの値を表わす値を求めるステップと、
無線セル全体にわたってモデリング値の値を表わす値を形成するステップと、
測定データの値を表わす値とモデリングデータの値を表わす値との差を形成するステップと、
この差を用いてモデリング値を訂正するステップとが実行されることを特徴とする、請
求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
モデリングデータの値を表わす値および測定データの値を表わす値は平均値であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のうちの1つに従った方法を実行するための装置であって、位置依存性のモデリング値を有する仮想無線ネットワークモデルを記憶するデータベース(38)と、測定位置でのモデル化された実際の無線ネットワークの位置依存性の測定データ(18)の生成のための測定装置(28)とを有し、
モデリング値を測定値に適合させることによる数学演算により、モデリング値の各々を測定データ(18)に従って直接修正するよう適合されたデータ処理手段(36)によって特徴付けられる、装置。
【請求項11】
測定装置(28)は、無線セルによって放出された基準信号の受信パワーに応答することを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
測定装置(28)は、無線セルのコードを検出するよう適合されていることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
測定装置(28)は移動式であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
測定装置(28)は、無線ネットワークの末端局であることを特徴とする、請求項10〜13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
測定装置(28)は、それぞれの実際の受信位置を検出するための手段を含むことを特徴とする、請求項10〜14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
測定値を、無線セルのそれぞれのコードおよび測定時の位置とともに記録し、出力するための手段を特徴とする、請求項12〜15のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−525879(P2007−525879A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548238(P2006−548238)
【出願日】平成17年1月10日(2005.1.10)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000134
【国際公開番号】WO2005/069666
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(505166834)ラジオプラン・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】RADIOPLAN GMBH
【Fターム(参考)】