説明

無線リンク制御における再送を支援する目的でプロトコルデータユニットの再送の優先順位を上げるためのシステムおよび方法

【課題】再送データが送信バッファの輻輳に起因する遅延を回避できるようにすること。
【解決手段】メディアアクセス制御(MAC)構成がデータブロック再送のための送信待ち時間を短縮する。複数のデータブロックが受信され、一時的に第1のメモリ(815B)(例えば、待ち行列、バッファ)に格納される。その後、複数のデータブロックは送信される。送信された各データブロックの受信が成功したか、またはデータブロックの受信が成功しなかったために再送が必要かについて、判定が行われる。送信されたデータブロックのうち再送が必要な各データブロックには標識が付けられ、第1のメモリ(815B)よりも高い優先順位をもつ第2のメモリ(815A)に格納される。標識付きのデータブロックは、第1のメモリ(815B)位置に格納されたデータブロックを送信する前に再送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信の分野に関する。より詳細には、本発明は、無線リンク制御(RLC)層(radio link control layer)における再送(retransmission)を支援する目的で、プロトコルデータユニット(protocol data unit)(PDU)の再送の優先順位を上げるためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数分割複信(Frequency Division Duplex)(FDD)および時分割複信(Time Division Duplex)(TDD)を用いる第3世代(3G)セルラーシステムでは、エンドツーエンドのデータ伝送の高信頼性を実現するため、無線リンク制御(RLC)層の肯定応答モード(Acknowledgement Mode)に、再送機構が存在する。RLC層は、無線ネットワークコントローラ(Radio Network Controller)(RNC)とユーザ機器(User Equipment)(UE)の両方に存在する、同位エンティティである。
【0003】
図1に、UMTS地上無線アクセス網(UMTS terrestrial radio access network)(UTRAN)のMAC−hs層構成のブロック図を、また図2に、ユーザ機器(UE)のMAC−hs構成のブロック図を示す。図1および図2に示す構成は、本発明の譲受人に譲渡された、2002年10月15日出願の、同時係属中の特許文献1に詳しく説明されている。図1に示すUTRANのMAC−hs30は、伝送フォーマットリソースインジケータ(TFRI)セレクタ(transport format resource indicator selector)31、スケジューリング/優先順位付けエンティティ(scheduling and prioritization entity)32、複数のハイブリッド自動再送(H−ARQ)プロセッサ(Hybrid Automatic Repeat processor)33a、33b、フロー制御器(flow controller)34、および優先順位クラス/送信シーケンス番号(TSN)設定エンティティ(priority class and transmission sequence number setting entity)35を備える。
【0004】
UEのMAC−hs40は、H−ARQプロセッサ41を備える。図1および図2を参照して説明するように、UTRANのMAC−hs30内のH−ARQプロセッサ33a、33bとUEのMAC−hs40内のH−ARQプロセッサ41が協力してデータブロックを処理する。
【0005】
UTRANのMAC−hs30内のH−ARQプロセッサ33a、33bは、H−ARQプロセスが送信を行うために必要とされ、またエラーとなった送信に対する再送を行うために必要なすべてのタスクを処理する。UEのMAC−hs40内のH−ARQプロセッサ41は、送信が成功したことを示す肯定応答(ACK)と、送信が失敗したことを示す否定応答(NACK)を送信する役割を受けもつ。H−ARQプロセッサ33a、33b、41は、ユーザデータフロー毎に、連続データストリームを処理する。
【0006】
以下でさらに詳しく説明するように、ユーザデータフロー毎に受信されるデータブロックは、H−ARQプロセッサ33a、33bに割り当てられる。H−ARQプロセッサ33a、33bはそれぞれ、送信を開始し、エラーの場合、H−ARQプロセッサ41が、再送を要求する。その後の送信では、送信の成功を保証するため、変調レートおよび符号化レートを変更することができる。UEに再送されるデータブロックおよび新しい送信は、スケジューリング/優先順位付けエンティティ32によって、H−ARQプロセッサ33a、33bに提供される。
【0007】
スケジューリング/優先順位付けエンティティ32は、無線リソースマネージャ(radio resource manager)として機能し、必要とされるQoSを保つため、送信待ち時間を決定する。H−ARQプロセッサ33a、33bからの出力と、送信される新しいデータブロックの優先順位とに基づいて、スケジューリング/優先順位付けエンティティ32がデータブロックをTFRIセレクタ31に転送する。
【0008】
スケジューリング/優先順位付けエンティティ32に結合された、TFRIセレクタ31は、送信されるデータブロックを受信し、送信されるデータブロックに適した動的伝送フォーマットを選択する。H−ARQ送信および再送に関して、TFRIセレクタ31は、変調および符号化を決定する。
【0009】
いくつかの理由から、再送されたデータブロックが、受信側(すなわち、UE)のRLCエンティティに、できるだけ速やかに到着することが強く望まれる。第1に、消失データブロックがあると、順番通りの送達を要求する要件のため、後続のデータブロックを上位層に転送することができない。第2に、UEのバッファのサイズを十分大きくとって、効率的なデータレートを維持しながら、再送の待ち時間に対処できるようにする必要がある。待ち時間が長くなればなるだけ、正しい順番のデータブロックを上位層に転送するまで、滞留させているデータブロックと継続的に受信するデータをUEがバッファリングできるように、UEのバッファサイズを大きくしなければならない。バッファサイズが大きくなれば、UEのハードウェア費用もそれだけ増大する。これは非常に望ましくない。
【0010】
図3を参照すると、ノードB(図3の下側)とUE(図3の上側)間のデータフローに関する、簡略化されたフロー図が示されている。上位レベルの処理から渡されるPDUは、スケジューリングされ、1つのデータブロックに多重化することもできる。データブロックは、同じ優先順位をもつ上位層のPDUだけを含むことができる。一意のTSNが、スケジューラによって、データブロック毎に割り当てられる。上位層は、PDUからなる優先順位が異なる複数のストリームを提供することができ、優先順位毎に連続するTSNが与えられる。スケジューラは、複数のH−ARQプロセッサP1〜P5に、データブロックを振り分ける。H−ARQプロセッサP1〜P5はそれぞれ、データブロックを1つずつ処理する役割を受けもつ。例えば、図3に示されているように、優先順位1のPDUは、B1〜B1で示されるシーケンスを含む。同様に、優先順位2のPDUは、B2〜B2のように配列され、優先順位3のPDUは、B3〜B3のように配列される。これらのPDUは、スケジューリングされ(場合によっては多重化され)、共通のスケジューラによって、TSNを与えられる。本発明を説明するため、1つのPDUは1つのデータブロックに相当すると仮定する。各データブロックは、プロセッサP1〜P5のいずれかで処理されるようスケジューリングされた後、そのデータブロックを処理するプロセッサP1〜P5を識別するプロセッサ識別子に関連付けられる。
【0011】
次に、データは、各データブロックを受信し処理する、スケジューリングされたノードBのH−ARQプロセッサP1〜P5に入力される。ノードBのH−ARQプロセッサP1〜P5はそれぞれ、UE内のH−ARQプロセッサP1UE〜P5UEに対応する。したがって、ノードB内の第1のH−ARQプロセッサP1は、UE内の第1のH−ARQプロセッサP1UEと通信を行う。同様に、ノードB内の第2のH−ARQプロセッサP2は、UE内の第2のH−ARQプロセッサP2UEと通信を行う。ノードB内の残りのH−ARQプロセッサP3〜P5と、その相手となるUE内のH−ARQプロセッサP3UE〜P5UEについても同様である。H−ARQプロセスは、適切なタイミングでエアーインタフェース上に多重化され、エアーインタフェース上では、同時に1つのH−ARQ送信しか行われない。
【0012】
例えば、H−ARQプロセッサP1とP1UEが通信を行う第1のペアについて見ると、H−ARQプロセッサP1は、データブロックを多重化し、エアーインタフェースを介して送信するために、データブロック、例えば、B1を処理し、転送する。このデータブロックB1が、第1のH−ARQプロセッサP1UEによって受信されると、プロセッサP1UEは、データブロックがエラーなしに受信されたかどうかを判定する。データブロックB1がエラーなしに受信された場合、第1のH−ARQプロセッサP1UEは、データブロックの受信が成功したことを送信側のH−ARQプロセッサP1に知らせる、ACKを送信する。反対に、受信したデータブロックB1にエラーがある場合、受信側のH−ARQプロセッサP1UEは、送信側のH−ARQプロセッサP1にNACKを送信する。このプロセスは、送信側のプロセッサP1が、データブロックB1についてACKを受信するまで、続けられる。ACKを受信すると、プロセッサP1は、別のデータブロックを処理するため、「解放」される。スケジューラは、利用可能であれば、プロセッサP1を別のデータブロックに割り当て、再送または新しい送信の開始を、いつでも選択することができる。
【0013】
受信側のH−ARQプロセッサP1UE〜P5UEは、各データブロックを処理した後、優先順位に基づいて、それらを並び替えバッファ(reordering buffer)R、R、Rに転送する。並び替えバッファはそれぞれ、データの各優先順位レベルに対応する。例えば、優先順位1のデータブロックB1〜B1は、受信され、優先順位1の並び替えバッファR内で並べ替えられる。優先順位2のデータブロックB2〜B2は、受信され、優先順位2の並び替えバッファR内で並べ替えられる。優先順位3のデータブロックB3〜B3は、受信され、優先順位3の並び替えバッファRによって並べ替えられる。
【0014】
受信側のH−ARQプロセッサP1UE〜P5UEによるデータブロックの前処理、およびACK/NACK応答手順が原因で、データブロックは、TSNに関して順番通りではない順番で、しばしば受信される。並び替えバッファR〜Rは、順番通りでないデータブロックを受信し、RLC層への転送に先立ち、データブロックを順番通りに並べ替えようと試みる。例えば、優先順位1の並び替えバッファRは、最初の4つの優先順位1のデータブロックB1〜B1を受信し、それらを並べ替える。データブロックは、受信され、並べ替えられた後、RLC層に渡される。
【0015】
受信側では、H−ARQプロセッサIDはHS−SCCHなどの制御チャネルで送信されることもあり、またはデータブロックにタグ付けされていることもあるが、UEのMAC−hs(MAC−hsコントロールとして図示する)がH−ARQプロセッサIDを読み取って、どのH−ARQプロセッサP1UE〜P5UEが使用されたかを判定する。同じH−ARQプロセッサP1UE〜P5UEによって処理された別のデータブロックをUEが受信した場合、当該H−ARQプロセッサP1UE〜P5UEによって処理された先行データブロックの受信が成功したかどうかに関わらず、そのH−ARQプロセッサP1UE〜P5UEが解放されたことが、UEには分かる。
【0016】
図4に、RNC、ノードB、UE、およびそれらに関連付けられたバッファを含む、従来技術のシステムの一例を示す。この例では、UEが受信エンティティであり、ノードBが送信エンティティであると仮定されている。この従来技術のシステムでは、シーケンス番号(SN)=3のPDUは、UEによる受信が成功していない。したがって、UE内のRLCは、RNC内の同位のRLC層に、再送を要求する。その間に、SN=6〜9のPDUが、ノードB内にバッファリングされ、SN=4、5のPDUは、UE内にバッファリングされる。図4では、高々数個のPDUがバッファリングされるだけだが、実際には、より多くの(例えば、100を超える)PDU、および他のRLCエンティティからのPDUが、バッファリングされ得ることに留意されたい。
【0017】
図5に示すように、SN=3のPDUの再送が要求された場合、このPDUは、ノードBのバッファ内の待ち行列の最後尾で待機しなければならず、SN=6〜9のPDUが送信されてから、ようやく送信される。UE内のPDUは、すべてのPDUが順番通り受信されるまで、上位層に転送することはできない。
【0018】
この場合、SN=3のPDUが、後続のPDU(すなわち、SN=4〜9)の送信がすべて成功したと仮定して、それらの上位層への転送を立ち往生させる。この例では、高々11個のPDUが関係するだけだが、通常の動作においては、再送データPDUの前に、数100個のPDUがスケジューリングされることがあり、その場合、送信待ち時間およびデータのバッファ問題が、さらに悪化することにも留意されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許出願第10/270822号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
再送データが送信バッファの輻輳に起因する遅延を回避できるようにするシステムおよび方法があれば望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、無線通信システムにおいて、データを伝送するためのシステムおよび方法に関する。複数のデータブロックが受信され、一時的に第1のメモリに格納される。その後、複数のデータブロックは送信される。次に、送信された各データブロックの受信が成功したか、またはデータブロックの受信が成功しなかったために再送が必要かについて、判定が行われる。送信されたデータブロックのうち再送が必要な各データブロックには、標識が付けられ、第1のメモリよりも高い優先順位をもつ第2のメモリに格納される。第2のメモリに格納された標識付きのデータブロックは、第1のメモリに格納されたデータブロックを送信する前に送信される。
【0022】
標識付きの各データブロックは、共通チャネル優先順位インジケータ(common channel priority indicator)(CmCH−Pi)を含むことができる。標識付きデータブロックのCmCH−Piは、読み取られ、標識付きデータブロックを複数のメモリのうちのどれに格納すべきかを、CmCH−Piに基づいて判定するのに使用される。
【0023】
本発明の好ましい一実施形態によれば、データを伝送するための無線通信システムは、UEと、UEと通信を行うノードBと、ノードBおよびUEと通信を行う無線ネットワークコントローラ(RNC)とを含む。RNCは、複数のデータブロックを、ノードBを介してUEに送信する。UEは、ステータスレポート(status report)をRNCに送信する。このレポートは、送信された各データブロックの受信がUEで成功したか、またはデータブロックの受信がUEで成功しなかったために再送が必要かについて通知する。RNCは、再送が必要な各データブロックに標識を付け、標識付きデータブロックをノードBに送信する。ノードBは、標識付きデータブロックを受信し、一時的に格納し、標識付きデータブロックを送信する優先順位を、それ以前に受信され、ノードBに格納されている他のデータブロックよりも高くする。ノードBは、他のデータブロックより先に、標識付きデータブロックをUEに送信する。
【0024】
例としてのみ提示される以下の説明を、添付の図面と併せて理解することにより、本発明をより深く理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】UTRANのMAC−hsを示した図である。
【図2】従来技術のUEのMAC−hsを示した図である。
【図3】ノードBとUEの間のデータフローを示したブロック図である。
【図4】消失PDU送信が例示されたRLC層を示した図である。
【図5】消失PDU送信のRLC層による再送を示した図である。
【図6】本発明による、再送を優先させる方法を示した信号図である。
【図7】再送がより高い優先順位の待ち行列に割り当てられる、ノードBとUEの間のデータフローを示したブロック図である。
【図8】CmCH−Pi表示を有するPDUをスケジューリングする、DSCH送信のデータフローを示したブロック図である。
【図9】本発明による、消失PDU送信のRLC層による再送を示した図である。
【図10】本発明による、消失PDU送信のRLC層による再送を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。同じ参照番号は、すべての図面において同じ要素を表す。
【0027】
本発明を説明するに当たり、「バッファ」および「メモリ」という用語が使用される場合がある。これらの語が意味するものは同じであり、連続的な待ち行列内の複数のデータブロックまたはPDUを示すために使用される。
【0028】
RLC層における再送の待ち時間を短縮するため、本発明は、中間ノード、例えば、ノードBのバッファ内の後続PDUよりも、PDUの再送を優先する。
【0029】
ダウンリンク方向(サービス提供RNC(serving RNC)(SRNC)からUEへのデータ送信)では、再送待ち時間の発生源の1つは、SRNCの外部のUTRANにおいてバッファリングを行うアプリケーション中に生成される。例えば、アプリケーションのためのバッファリングは、制御RNC(Controlling RNC)(CRNC)またはノードBで行われる場合がある。いくつかのアプリケーションでは、RNC内のRLCは、RNC内のMAC−dにPDUを送信し、RNC内のMAC−dは、MAC−d PDUを生成し、それをCRNC、さらにノードBに送信する(UEがSRNCのセルサービス圏外に移動しない場合、CRNCは同じRNCであり、したがって、送信されるメッセージはいずれも、内部的なものであることに留意されたい。UEがSRNCのセルサービス圏外に移動する場合、新しいCRNCは周知のドリフトRNC(Drift RNC)(DRNC)となる。説明を簡略にするため、いずれのケースでも、当該RNCをCRNCと呼ぶ)。
【0030】
MAC−d PDUは、正確に1つのRLC PDU(さらに、含み得るその他のMAC情報)を含むので、MAC−d PDUは、RLC PDUと等価と考えることができる。本出願におけるCRNCまたはノードB内のPDUの説明は、(RLC PDUではなく)MAC−d PDUを対象に行うが、本発明の目的にとっては、それらは等価と考えることができ、以降本明細書で、PDUという用語が使用される場合は、両PDUを指しているものとする。
【0031】
連続的なデータフローを可能にするため、RNC内のRLCからのPDUは通常、しばらくの間、CRNCまたはノードBのバッファ内の待ち行列に入れられ、その後、UEに、したがって、同位RLCに送信される。以下で詳しく説明するように、より高い優先順位でデータを再送する本発明の方法は、UTRANにおけるデータのバッファリング/待ち行列への投入をバイパスする。
【0032】
本発明の一実施形態は、高速ダウンリンクパケットアクセス(High Speed Downlink Packet Access)(HSDPA)を利用するシステムにおける、無線ネットワークコントローラ(RNC)からユーザ機器(UE)へのRLC再送である。図6に、本発明による再送待ち時間短縮のための方法100を示す。図6には、RNC102とノードB104とUE106の間の通信が示されている。
【0033】
UE106内のRLC層は、PDU受信(すなわち、送信成功)またはPDU消失(すなわち、送信失敗)のステータスを示す、ステータスレポートPDUを生成する(ステップ108)。このステータスレポートPDUは、RNC102に送信される(ステップ110)。RNC102内のRLC層が、UE106内の同位エンティティからステータスレポートPDUを受信すると、RNC102は、消失PDUを再送する準備を行う(ステップ112)。
【0034】
本発明は、ノードBが再送されたPDUをその他のPDUから区別できるようにする方法を実施する。本発明の第1の実施形態では、RNC102は、フレームプロトコル(FP)付加領域の数ビット長のフィールドを利用して、再送PDUに標識を付ける。再送PDUは、PDUがRNC102からノードB104に送信される毎に(ステップ114)更新される(または増やされる)、CmCH−Piを含む。これによって、ノードB104は、PDUが送信された回数を把握することができ、したがって、当該PDUが格納されている正しい待ち行列を識別することができる。好ましくは、CmCH−Piは一般に、RNC102で設定され、更新される。しかし、ノードB104で、この機能を実行することもできる。ノードB104は、CmCH−Piを読み取り、当該PDUにとって正しい優先順位の待ち行列を決定する(ステップ116)。ノードB104の送信スケジューラは、より高い優先順位の待ち行列を、より低い優先順位の待ち行列より先に処理する。ノードB104は、RNC102によるCmCH−Piの設定の結果として、再送されるPDUを、そのPDUが最初に送信されたときにもっていた優先順位より高い優先順位をもつバッファに入れる。
【0035】
次に、最初の送信の優先順位より高い優先順位をもつバッファ(すなわち、メモリ)内のPDUが再送される(ステップ118)。同じUEに向けたその他の送信は、PDUを再送するときには、ノードB104のより低い優先順位をもつ送信待ち行列にバッファリングすることができる。再送PDUのCmCH−Piを増やして設定することにより、より以前にノードB104で受信され、バッファリングされたその他のPDUより先に、再送PDUが送信されるように、スケジューリングが行われる。
【0036】
図7を参照すると、再送信は、その「元の」送信バッファと同じバッファに入っているその他のデータブロックが送信されるよりも先に送信されるように、より高い優先順位の待ち行列に割り当てられる。受信側のH−ARQプロセッサP1UE〜P5UEは、各データブロックを処理した後、優先順位に基づいて、それらを並び替えバッファR、R、Rに転送する。並び替えバッファはそれぞれ、データの各優先順位レベルに対応する。例えば、並び替えバッファRは、データブロックB2、B2、B2を並べ替える。並び替えバッファRは、データブロックB3、B3、B3を並べ替える。1つのデータブロック(「X」)が、データブロックB2とB2の間で消失している。さらに、もう1つのデータブロック(「X」)が、データブロックB3とB3の間で消失している。すなわち、期待されるデータブロックB2およびB3が、例えば、NACKメッセージが誤ってACKメッセージと解釈されたことなどが原因となって、受信されていない。
【0037】
次に、消失データブロックが再送される。通常であれば、データブロックB2は、優先順位2の送信バッファに入れられる。しかし、データブロックB2は消失しており、再送しなければならないので、データブロックB2は、より高い優先順位の送信バッファに入れられ(この場合は、優先順位1の送信バッファ)、したがって、優先順位2または3の送信バッファに入れられた場合よりも早く送信される。同様に、データブロックB3は、通常であれば、優先順位3の送信バッファに入れられる。しかし、データブロックB3は消失しており、再送しなければならないので、データブロックB3は、優先順位1または2の送信バッファに入れられ、その結果、優先順位3の送信バッファに入れられた場合よりも早く送信される。
【0038】
ノードBでPDUが受信されると、CmCH−Piを用いて、優先順位別の待ち行列B1〜B3が決定される。スケジューラは、より高い優先順位の待ち行列を最初にし、送信側H−ARQプロセッサP1〜P5に送信を割り当てる。UEに向けた送信が成功すると、受信側のH−ARQプロセッサP1UE〜P5UEは、再送PDUをRLC層に転送する。
【0039】
この手順は、DSCHシステムに対しても適用することができ、その場合、中間ノードがノードBの代わりにCRNCになる点だけが異なる。図8を参照すると、CmCH−Pi表示を有するPDU805は、優先順位付けエンティティ810によって優先順位を与えられ、CRNC内のMAC−shによって送信するため、スケジューリングされる。MAC−shは、複数の優先順位別の待ち行列815A、815Bを維持し、DSCH送信スケジューラ820は、どのPDU805を送信すべきか、データの優先順位に基づいて決定する。したがって、再送DSCHのCmCH−Piを増やして設定することにより、UEに向けたその他のデータより先に、それらの送信が処理される。これは、ノードBのMAC−hsエンティティが送信をスケジューリングする、HS−DSCHの場合も同様である。
【0040】
図9を参照すると、図6の優先順位付け方法を実施する、本発明によるシステムが示されている。UE内のRLC層が、SN=3のPDUの受信が成功しなかったことを示すステータスレポートPDUを、RNC内のRLC層に送信した後、RNCは、SN=3のPDUを再送する。当該PDUは、より高い優先順位のバッファに入れられることで、中間ノードのバッファ内のその他のPDUより高い優先順位を与えられる。この例では、高々11個のPDUが示されているだけだが、実際には、数100個のPDUが待ち行列に入れられる場合があることに留意されたい。
【0041】
受信バッファにおける優先順位付け機能の結果を示す図10を参照することによって、本発明の利点が理解できるであろう。SN=3の再送PDUは、受信バッファに到着し、図5に示す従来技術のシナリオよりもはるかに早く、SN=3から5のPDUを順番通り、上位層に転送することができる。
【0042】
本発明をその好ましい実施形態によって説明してきたが、添付の特許請求の範囲において確定される本発明の範囲に包含される、その他の変形形態が、当業者には明らかであろう。
【符号の説明】
【0043】
102 RNC(無線ネットワークコントローラ(Radio Network Controller))
104 ノードB
106 UE(ユーザ機器(User Equipment))
805 PDU(プロトコルデータユニット(protocol data unit))
810 優先順位付けエンティティ
815A、815B 待ち行列
820 DSCH送信スケジューラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信のための方法において、
無線リンクコントロール(RLC)プロトコルデータユニット(PDU)を送信のための第1のメモリバッファに格納するステップと、
前記RLCPDUを送信するステップと、
前記RLCPDUの受信が成功であったか不成功であったかの指示を受信するステップと、
を含み、
前記RLCPDUの受信が不成功であったなら、
前記RLCPDUが送信/再送信された回数を判定するステップと、
受信が不成功であった前記RLCPDUを、再送信のための第2のメモリバッファであって前記第1のメモリバッファよりも高い送信優先度を持つ第2のメモリバッファに格納して、該第2のメモリバッファ中の前記RLCPDUが、前記第1のメモリバッファに格納されているRLCPDUに先立って送信されるようにするステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記RLCPDUが、高速ダウンリンク共有チャンネル上で送信されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、一意の送信シーケンス番号(TSN)をメディアアクセスコントロール(MAC)PDUに送信するステップを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記RLCPDUが送信/再送信された回数を指示するために共通チャンネル優先順位インジケータ(CmCH−Pi)が用いられ、さらに、
より少ない回数の受信されなかったRLCPDUを送信する前に、より多い回数の受信されなかったRLCPDUを送信するステップを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
ノードBによって実行されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
無線送信装置において、
無線リンクコントロール(RLC)プロトコルデータユニットを複数回、送信するように構成された送信機を備え、
前記送信機が、前記RLCプロトコルデータユニットを、送信のための、その第1のメモリ待ち行列に格納するように構成され、
前記送信機が、前記RLCプロトコルデータユニットの受信が成功であったか不成功であったかを判定するように構成され、
前記送信機が、前記RLCプロトコルデータユニットが送信/再送信された回数を判定するように構成され、
前記データユニットの受信が不成功であったなら、前記送信機が、前記RLCプロトコルデータユニットを再送信のために、前記第1のメモリ待ち行列よりも高い送信優先度を持つ第2のメモリ待ち行列に格納して、前記RLCプロトコルデータユニットが、前記第1のメモリ待ち行列に格納されているRLCプロトコルデータユニットに先立って送信されるように構成される、
ことを特徴とする無線送信装置。
【請求項7】
前記RLCプロトコルデータユニットを高速ダウンリンク共有チャンネル上で送信するように構成されていることを特徴とする請求項6記載の無線送信装置。
【請求項8】
前記RLCプロトコルデータユニットを多重化された複数のメディアアクセスコントロールプロトコルデータユニット(PDUs)としてストアするように構成されていることを特徴とする請求項6記載の無線送信装置。
【請求項9】
無線ノードの構成要素であることを特徴とする請求項6記載の無線送信装置。
【請求項10】
一意の送信シーケンス番号(TSN)をメディアアクセスコントロールPDUに割り当てるように構成されていることを特徴とする請求項6記載の無線送信装置。
【請求項11】
前記RLCプロトコルデータユニットが送信/再送信された回数を指示するために共通チャンネル優先順位インジケータ(CmCH−Pi)が用いられ、さらに、
前記第2のメモリ待ち行列を、標識付きの前記RLCプロトコルデータユニットのCmCH−Piを読むことに基づいて、前記第1のメモリ待ち行列よりも高い送信優先度を持った複数のメモリ待ち行列の中から選択するように構成されていることを特徴とする請求項6記載の無線送信装置。
【請求項12】
ノードBの構成要素であることを特徴とする請求項6記載の無線送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−105331(P2012−105331A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−625(P2012−625)
【出願日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【分割の表示】特願2009−105229(P2009−105229)の分割
【原出願日】平成15年5月9日(2003.5.9)
【出願人】(596008622)インターデイジタル テクノロジー コーポレーション (871)
【Fターム(参考)】