説明

無線中継システム、中継局装置、および、無線中継方法

【課題】無線中継システムにおいて、スループットを向上しながら、無線局間の伝搬距離を伸長する。
【解決手段】中継局2は、端局1−1、1−2それぞれに対向した指向性アンテナ20−1、20−2を備えており、時刻T1において端局1−1から情報フレームF1を、時刻T2において端局1−2から情報フレームF2を受信する。時刻T3において、中継局2は、情報フレームF1、F2をネットワーク符号化して符号化情報フレームXを生成し、指向性アンテナ20−1により端局1−1に、指向性アンテナ20−2により端局1−2に同報送信する。端局1−1は、自身が送信した情報フレームF1を用いて符号化情報フレームXのNC復号を行い、情報フレームF2を取得し、端局1−2は、自身が送信した情報フレームF2を用いて符号化情報フレームXのNC復号を行い、情報フレームF1を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークコーディングを用いた無線中継システム、中継局装置、および、無線中継方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マルチホップ通信のスループットの向上を目的とした、ネットワークコーディング(NC)技術が注目されている。ネットワークコーディング技術は、マルチホップ中継を行うネットワーク上の中継局において複数の情報系列を線形符号化することによって複数のマルチキャスト通信やユニキャスト通信を多重化した上で宛先ノードとなる複数の端局に送信し、各端局において復号操作を行う。これにより、ネットワークコーディングを用いない場合に比べてスループットの向上を図ることができる。
【0003】
ネットワークコーディングを用いたマルチホップ無線ネットワークでは、無線通信の同報性とネットワークコーディングを活用することにより、スループットの向上を実現する。中継局の役割を果たすノードは、複数の端局ノードから受信した情報フレームを線形符号によって符号化し、目的の端局に中継する。線形符号によって符号化された情報フレームを中継局ノードから受信した端局は、他のノードから受信した情報フレームあるいは自身が保持している情報フレームを用いて、符号化された情報フレームを同様の線形符号によって復号し、元の情報を得ることができる。
【0004】
以下では具体例として、ネットワークコーディング技術が適用できる代表的なマルチホップ無線トポロジである、Alice & Bobトポロジを挙げて、従来の無線によるネットワークコーディング技術を説明する。以下、ある情報フレームに対し、ネットワークコーディングの符号化を施すことをNC符号化と記載し、ネットワークコーディングにより符号化された情報フレームを復号することをNC復号と記載する。NC符号化及びNC復号には、情報フレーム同士のビット毎の排他的論理和(XOR)を用いるものとする。また、ネットワーク符号化された情報フレームを符号化情報フレームと記載し、符号化情報フレームと符号化されていない情報フレームとを明確に区別するために、NC符号化されていない情報フレームをネイティブ情報フレームと記載する。
【0005】
図12は、Alice & Bobトポロジの構成を示す図である。同図に示す無線マルチホップトポロジにおいて、両端の端局であるノードA(node-A)とノードB(node-B)が、互いに中継局であるノードR(node-R)を介して情報のやり取りを行う場合について考える。本トポロジの目的は、ノードAおよびノードBが、自身の保持する情報を情報フレームとして無線チャネルを用いて送信するとともに、相手方としての端局から情報フレームを受信することである。なお、全てのノードで単一の周波数チャネルを共有するとともに、各ノードはそれぞれ変復調回路を1つ、オムニアンテナを1本具備する。即ち、あるノードが情報フレームの送信を行っている間、他の全てのノードは同時刻に情報フレームを送信しない。
【0006】
図13は、ネットワークコーディング技術を用いない場合のAlice & Bobトポロジにおける通信手順を示す。ネットワークコーディング技術を用いない場合の通信手順は、以下のようになる。
【0007】
(1)時刻T1において、ノードAがネイティブ情報フレームである情報フレームAをノードRに送信する。ノードRは情報フレームAを受信する。
(2)時刻T2において、ノードRが情報フレームAをノードBに送信する。ノードBは情報フレームAを受信する。
(3)時刻T3において、ノードBがネイティブ情報フレームである情報フレームBをノードRに送信する。ノードRは情報フレームBを受信する。
(4)時刻T4において、ノードRが情報フレームBをノードAに送信する。ノードAは情報フレームBを受信する。
【0008】
上述のような手順が必要であるため、ノードAとノードBが互いに情報をやり取りするためには4つのタイムスロットが必要となる。
【0009】
一方、図14は、ネットワークコーディング技術を用いた場合のAlice & Bobトポロジにおける通信手順を示す。ネットワークコーディング技術を用いた場合の通信手順は、以下のようになる。
【0010】
(1)時刻T1において、ノードAがネイティブ情報フレームである情報フレームAをノードRに送信する。ノードRは情報フレームAを受信する。
(2)時刻T2において、ノードBがネイティブ情報フレームである情報フレームBをノードRに送信する。ノードRは情報フレームBを受信する。
【0011】
(3)時刻T3において、ノードRが情報フレームAと情報フレームBに対してNC符号化を行い、符号化情報フレームXを生成する。ノードRは、生成した符号化情報フレームXをノードAおよびノードBに対して同報送信する。ノードAは、自身が時刻T1において送信した情報フレームAと時刻T3において受信した符号化情報フレームXとを用いてNC復号を行うことにより、情報フレームBを取得する。同様に、ノードBにおいても、自身が時刻T2において送信した情報フレームBと時刻T3において受信した符号化情報フレームXとを用いてNC復号を行うことにより、情報フレームAを取得する。
【0012】
上記の手順を行なうことにより、必要となるタイムスロット数が3となる。ネットワークコーディング技術を用いない場合と用いた場合を比較すると、ネットワークコーディング技術を適用することにより、ノードAとノードBが情報のやり取りを行うために消費するタイムスロット数が3/4になる。すなわち、ネットワークコーディング技術の適用によるスループット増大効果(これを「NC利得」と呼ぶ。)はその逆数の4/3となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−206778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ネットワークコーディング技術は、オムニアンテナを用いることによって得られる無線の同報性という特徴を活用してスループットを向上する技術である。しかしながらオムニアンテナは、全ての空間に電力を出力するため、目的の無線局が位置する方向以外に対しても電力を出力してしまう。そのため、送信電力の無駄が発生してしまい、送信可能距離の伸長に適していないという問題がある。
【0015】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、ネットワークコーディング技術を適用した無線中継において、無線局間の伝搬距離を伸長することができる無線中継システム、中継局装置、および、無線中継方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するために、本発明は、中継局装置と複数の端局装置とを有する無線中継システムであって、前記中継局装置は、前記複数の端局装置のそれぞれに対向して設けられ、対向する前記端局装置から無線により情報フレームを受信するとともに、複数の情報フレームをネットワーク符号化した符号化情報フレームを対向する前記端局装置へ無線により同時に送信する複数の指向性アンテナと、前記複数の指向性アンテナが対向する前記端局装置から受信した情報フレームを復調する復調部と、前記復調部が復調した複数の情報フレームをネットワーク符号化して符号化情報フレームを生成するネットワーク符号化部と、前記ネットワーク符号化部が生成した符号化情報フレームを変調する変調部と、前記変調部が変調した符号化情報フレームを前記複数の指向性アンテナに出力する分配部とを備え、前記端局装置は、前記中継局装置の自局に対向する前記指向性アンテナから送信された符号化情報フレームを受信するアンテナと、符号化情報フレームの復号に用いる鍵情報フレームを格納する鍵記憶部と、前記アンテナが受信した符号化情報フレームを復調する端局復調部と、前記端局復調部が復調した前記符号化情報フレームを、前記鍵記憶部から読み出した鍵情報フレームにより復号するネットワーク符号化復号部とを備える、ことを特徴とする無線中継システムである。
【0017】
また、本発明は、中継局装置と複数の端局装置とを有する無線中継システムにおける前記中継局装置であって、前記複数の端局装置のそれぞれに対向して設けられ、対向する前記端局装置から無線により情報フレームを受信するとともに、複数の情報フレームをネットワーク符号化した符号化情報フレームを対向する前記端局装置へ無線により同時に送信する複数の指向性アンテナと、前記複数の指向性アンテナが対向する前記端局装置から受信した情報フレームを復調する復調部と、前記復調部が復調した複数の情報フレームをネットワーク符号化して符号化情報フレームを生成するネットワーク符号化部と、前記ネットワーク符号化部が生成した符号化情報フレームを変調する変調部と、前記変調部が変調した符号化情報フレームを前記複数の指向性アンテナに出力する分配部と、を備えることを特徴とする中継局装置である。
【0018】
また、本発明は、上述する中継局装置であって、前記変調部が変調した符号化情報フレームの送信電力を前記複数の中継局装置の数に応じて増幅し、前記分配部に出力する増幅部をさらに備え、前記分配部は、前記増幅部が送信電力を増幅した前記符号化情報フレームを前記複数の指向性アンテナに出力する、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上述する中継局装置であって、前記復調部が復調した情報フレームの誤り検出を行なう誤り検出回路と、前記誤り検出回路において誤りが検出されなかった複数の情報フレームを用いて符号化情報フレームを生成するよう前記ネットワーク符号化部へ指示するとともに、該複数の情報フレームの数に応じて送信電力を増幅するよう前記増幅部に指示し、さらに、該複数の情報フレームの宛先の端局装置に対向した前記複数の指向性アンテナへ前記変調部が変調した符号化情報フレームを出力するよう前記分配部に指示する制御部と、をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上述する中継局装置であって、前記複数の指向性アンテナのそれぞれに対応して設けられ、前記分配部が分配した前記符号化情報フレームの送信電力を増幅して対応する前記指向性アンテナへ出力する複数の増幅部をさらに備える、ことを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、上述する中継局装置であって、前記復調部が復調した情報フレームの誤り検出を行なう誤り検出回路と、前記誤り検出回路において誤りが検出されなかった複数の情報フレームを用いて符号化情報フレームを生成するよう前記ネットワーク符号化部へ指示するとともに、前記分配部に対して、前記変調部が変調した符号化情報フレームを、誤りが検出されなかった前記複数の情報フレームの宛先の端局装置に対向した前記複数の指向性アンテナに対応する前記複数の増幅部に出力するよう指示する制御部と、をさらに備えることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、中継局装置と複数の端局装置とを有する無線中継システムにおける前記中継局装置の無線中継方法であって、前記複数の端局装置それぞれに対向して設けられた指向性アンテナにより、前記端局装置から無線送信された情報フレームを受信する受信過程と、前記受信過程において前記指向性アンテナにより受信した情報フレームを復調する復調過程と、復調過程において復調された複数の情報フレームをネットワーク符号化して符号化情報フレームを生成するネットワーク符号化過程と、前記ネットワーク符号化過程において生成された符号化情報フレームを変調する変調過程と、前記変調過程において変調された符号化情報フレームを前記複数の指向性アンテナに出力する分配過程と、前記複数の指向性アンテナにより、前記分配過程において出力された前記符号化情報フレームを同時に無線送信する送信過程と、を有することを特徴とする無線中継方法である。
【0023】
また、本発明は、上述する無線中継方法であって、前記変調過程において変調された符号化情報フレームの送信電力を、前記複数の中継局装置の数に応じて増幅する増幅過程をさらに有し、前記分配過程においては、前記増幅過程において送信電力が増幅された前記符号化情報フレームを前記複数の指向性アンテナに出力する、ことを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、上述する無線中継方法であって、前記復調過程において復調された情報フレームの誤り検出を行なう誤り検出過程をさらに有し、前記ネットワーク符号化過程においては、前記誤り検出過程において誤りが検出されなかった複数の情報フレームを用いて符号化情報フレームを生成し、前記増幅過程においては、前記ネットワーク符号化過程において前記符号化情報フレームの生成に用いた前記複数の情報フレームの数に応じて送信電力を増幅し、前記分配過程においては、前記ネットワーク符号化過程において前記符号化情報フレームの生成に用いた前記複数の情報フレームの宛先の端局装置に対向した前記複数の指向性アンテナに、前記変調過程において変調された符号化情報フレームを出力する、ことを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、上述する無線中継方法であって、前記分配過程において分配された各符号化情報フレームの送信電力を増幅する増幅過程をさらに有する、ことを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、上述する無線中継方法であって、前記復調過程において復調された情報フレームの誤り検出を行なう誤り検出過程をさらに有し、前記ネットワーク符号化過程においては、前記誤り検出過程において誤りが検出されなかった複数の情報フレームを用いて符号化情報フレームを生成し、前記分配過程においては、前記ネットワーク符号化過程において前記符号化情報フレームの生成に用いた前記複数の情報フレームの宛先の端局装置に対向した前記複数の指向性アンテナに、前記変調過程において変調された符号化情報フレームを出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ネットワークコーディング技術を適用した無線中継システムにおいて、中継局にネットワーク符号化された情報フレームの宛先の数と同数の指向性アンテナを備え、各端局に対して指向性を合わせることで、オムニアンテナによる送信電力の無駄を削減し、各無線リンクの送信距離の伸長が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態による無線中継システムの通信手順を示す図である。
【図2】同実施形態による端局の機能ブロック図である。
【図3】同実施形態による中継局の機能ブロック図である。
【図4】同実施形態をAlice & Bobトポロジに適用した場合の端局の機能ブロック図である。
【図5】第2の実施形態による端局の機能ブロック図である。
【図6】同実施形態による中継局の機能ブロック図である。
【図7】第3の実施形態による中継局の機能ブロック図である。
【図8】第4の実施形態による端局の機能ブロック図である。
【図9】同実施形態による中継局の機能ブロック図である。
【図10】同実施形態をAlice & Bobトポロジに適用した場合の端局の機能ブロック図である。
【図11】第5の実施形態による中継局の機能ブロック図である。
【図12】Alice & Bobトポロジの構成を示す図である。
【図13】従来技術によるネットワーク符号化を用いない場合のAlice & Bobトポロジにおける通信手順を示す。
【図14】従来技術によるネットワーク符号化を用いた場合のAlice & Bobトポロジにおける通信手順を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0030】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態による無線中継システムにおける通信手順を示す図である。本実施形態の無線中継システムは、複数台の端局1と、1台の中継局2とからなる。以下、N台(Nは2以上の整数)の端局1をそれぞれ、端局1−1、1−2、…、1−nと記載する。同図は、本実施形態の無線中継システムを、ネットワークコーディング(以下、「NC」とも記載)技術を用いた2ホップ無線中継システムであるAlice & Bobトポロジに適用した場合について示しており、端局1−1、1−2の2台の端局1が記載されている。
【0031】
同図に示す無線中継システムにおいて、受信局装置と送信局装置を兼ねた端局装置である端局1−1、1−2は、中継局装置である中継局2を介して双方向の通信を行う。各端局1及び中継局2(以下、端局1と中継局2を総称して「ノード」とも記載する)はタイムスロット同期が取れているものとし、端局1−1、1−2はそれぞれ、中継局2に向けた指向性アンテナ10を備え、中継局2は端局1−1、1−2それぞれの指向性アンテナ10に向けた指向性アンテナ20−1、20−2を備えている。
【0032】
以下、システム全体におけるm番目の送信タイミングを時刻Tmと表す。また、ネットワークコーディングの符号化を施すことを「NC符号化」と記載し、ネットワークコーディングにより符号化された情報フレームを復号することを「NC復号」と記載する。そして、NC符号化されていない情報フレームを「ネイティブ情報フレーム」、NC符号化された情報フレームを「符号化情報フレーム」、符号化情報フレームをNC復号するために必要となる情報フレームを「鍵情報フレーム」と記載する。
【0033】
(1)時刻T1において、端局1−1がネイティブ情報フレームである情報フレームF1を中継局2に送信する。中継局2は、情報フレームF1を指向性アンテナ20−1により受信する。
(2)時刻T2において、端局1−2がネイティブ情報フレームである情報フレームF2を中継局2に送信する。中継局2は、情報フレームF2を指向性アンテナ20−2により受信する。
【0034】
(3)時刻T3において、中継局2は、受信した情報フレームF1、F2をNC符号化して符号化情報フレームXを生成し、生成した符号化情報フレームXを指向性アンテナ20−1、20−2により端局1−1、1−2それぞれに同報送信する。NC符号化には、例えば、情報フレーム同士のビット毎の排他的論理和(XOR)を用いる。端局1−1は、自身が時刻T1において送信した情報フレームF1を鍵情報フレームとして用い、指向性アンテナ10により受信した符号化情報フレームXのNC復号を行い、情報フレームF2を取得する。同様に、端局1−2は、自身が時刻T2において送信した情報フレームF2を鍵情報フレームとして用い、指向性アンテナ10により受信した符号化情報フレームXのNC復号を行い、情報フレームF2を取得する。NC復号には、NC符号化同様、情報フレーム同士の排他的論理和が用いられる。
【0035】
図2は、本実施形態による端局1の構成を示すブロック図である。端局1は、指向性アンテナ10、変調回路11、記憶回路12、増幅回路13、P分配回路14、送受信切替回路15、切替回路16、復調回路17、制御回路18、及び、ネットワーク符号化復号部(以下、「NC復号部」と記載)19を含んで構成される。端局1は、NC復号の際に、自局が送信したネイティブ情報フレームと、(P−1)台の他の端局1が送信したネットワーク情報フレームとを鍵情報フレームとして用いる(Pは、1以上(N−1)以下の整数)。このとき、端局1は、指向性アンテナ10をP本、送受信切替回路15をP個備える。P本の指向性アンテナ10をそれぞれ、指向性アンテナ10−1、10−2、…、10−pと記載し、P個の送受信切替回路15をそれぞれ、送受信切替回路15−1、15−2、…、15−pと記載する。
【0036】
指向性アンテナ10−i(i=1〜p)は、送受信切替回路15−iを介して入力された変調フレームを空中線としての空間に出力することにより対向する他の端局1または中継局2に無線送信を行なうとともに、対向する他の端局1または中継局2から無線送信された変調フレームを受信する。変調回路11は、上位層等から入力されたネイティブ情報フレームを変調する。記憶回路12は、変調回路11へ入力されたネイティブ情報フレームや、他の端局1から受信したネイティブ情報フレームなどの鍵情報フレームを記憶する。増幅回路13は、変調回路11から出力された変調フレームを所望の送信電力に増幅する。P分配回路14は、増幅回路13から出力された変調フレームをP分配し、指向性アンテナ10−1〜10−pに出力する。送受信切替回路15−1〜15−pは、予めスケジューリングされた信号の送受信タイミングに従って切り替えを行なう。各送受信切替回路15−i(i=1〜p)は、信号受信時には指向性アンテナ10−iにより受信した変調フレームを切替回路16に出力し、信号送信時には、P分配回路14によりP分配された変調フレームを指向性アンテナ10−iに出力する。
【0037】
切替回路16は、指向性アンテナ10−iが受信した変調フレームの入力に応じて入力元を送受信切替回路15−i(i=1〜p)のいずれか一つに切り替え、復調回路17へ出力する。復調回路17は、切替回路16から出力された変調フレームを復調する。制御部18は、受信した情報フレームの送信元が他の端局1である場合、復調回路17が復調して得たネイティブ情報フレームを記憶回路12に書き込み、情報フレームの送信元が中継局2である場合、記憶回路12へ鍵情報フレームとなるネイティブ情報フレームを出力するよう指示するとともに、NC復号部19へNC復号を行なうよう指示する。NC復号部19は、記憶回路12から出力された鍵情報フレームを用い、復調回路17により復調された情報フレームをNC復号する。
【0038】
図3は、本実施形態による中継局2の構成を示すブロック図である。中継局2は、指向性アンテナ20−1〜20−n、送受信切替回路21−1〜21−nからなる送受信切替回路群、切替回路22、復調回路23、ネットワーク符号化部(以下、「NC部」と記載)24、変調回路25、増幅回路26、及び、N分配回路27を含んで構成される(nは2以上の整数)。
【0039】
N本の指向性アンテナ20−1〜20−nはそれぞれ1台の端局1の指向性アンテナ10と対向しており、入力された変調フレームを空中線としての空間に出力することにより無線送信を行なうとともに、端局1から無線送信された変調フレームを受信する。送受信切替回路21−1〜21−nは、予めスケジューリングされた信号の送受信タイミングに従って切り替えを行なう。各送受信切替回路21−i(i=1〜n)は、信号受信時には指向性アンテナ20−iにより受信した変調フレームを切替回路22に出力し、信号送信時には、N分配回路27によりN分配された変調フレームを指向性アンテナ20−iに出力する。
【0040】
切替回路22は、指向性アンテナ20−iが受信した変調フレームの入力に応じて入力元を送受信切替回路21−i(i=1〜n)のいずれか一つに切り替え、復調回路23へ出力する。復調回路23は、切替回路22から出力された変調フレームを復調し、復調により得られたネイティブ情報フレームをNC部24へ出力する。NC部24は、復調回路23から出力された複数のネイティブ情報フレームをNC符号化して符号化情報フレームを生成し、変調回路25へ出力する。変調回路25は、NC部24から出力された符号化情報フレームを変調し、変調フレームを生成する。増幅回路26は、変調回路25から出力された変調フレームを所定の送信電力に増幅し、N分配回路27へ出力する。N分配回路27は、増幅回路26から出力された変調フレームを指向性アンテナ20−1〜20−nに分配する。
【0041】
次に、本実施形態の無線中継システムの動作について説明する。ここでは、簡単のため、中継局2の指向性アンテナ20−i(i=1〜n)は、端局1−iの指向性アンテナ10−pに対向しており、時刻Tiが、端局1−iの送信タイミングであるとする。
【0042】
(1)時刻Ti(i=1〜n)において、端局1−iは、ネイティブ情報フレームである情報フレームFiを変調した変調フレームを送信する。具体的には、端局1−iの変調回路11は、上位層等から入力された情報フレームFiを変調し、記憶回路12は、情報フレームFiを記憶する。端局1−iの増幅回路13は、変調回路11から出力された情報フレームFiの変調フレームを所望の送信電力に増幅し、P分配回路14へ出力する。P分配回路14は、増幅回路13から出力された変調フレームを送受信切替回路15−1〜15−pを介して送受信切替回路15−1〜15−pへ分配する。指向性アンテナ10−1〜10−pは、情報フレームFiの変調フレームを無線送信する。
【0043】
端局1−iのネイティブ情報フレームを鍵情報フレームとして用いる他の端局1−j(jはi以外の1以上n以下の整数)は、端局1−iから無線により送信された情報フレームFiの変調フレームを、端局1−iに対向した指向性アンテナ10−qにより受信する(qは1以上(p−1)以下の整数)。端局1−jの送受信切替回路15−qは、指向性アンテナ10−qの出力先を切替回路16に切り替え、切替回路16は、入力元を送受信切替回路10−qに切り替える。指向性アンテナ10−qが受信した変調フレームは送受信切替回路15−q及び切替回路16を介して復調回路17に入力され、復調回路17は、入力された変調フレームを復調して情報フレームFiを取得する。制御部18は、復調により得られた情報フレームFiを記憶回路12に記憶する。
【0044】
一方、中継局2の指向性アンテナ20−i(i=1〜n)は、端局1−iから無線により送信された情報フレームFiの変調フレームを受信する。中継局2の送受信切替回路21−i(i=1〜n)は、指向性アンテナ20−iの出力先を切替回路22に切り替え、切替回路22は、入力元を送受信切替回路21−iに切り替える。指向性アンテナ20−iが受信した変調フレームは送受信切替回路21−i及び切替回路22を介して復調回路23に入力され、復調回路23は、入力された変調フレームを復調して情報フレームFiを取得する。復調回路23は、復調により得られた情報フレームFiをNC部24に出力する。NC部24は、情報フレームFiを内部に備える記憶部(図示せず)に記憶する。
【0045】
(2)全ての端局1−1〜1−nから情報フレームを受信して(1)の処理を行なった後の時刻T(n+1)において、中継局2のNC部24は、内部に備える記憶部から読み出した情報フレームF1〜FnをNC符号化して符号化情報フレームXを生成する。NC部24は、生成した符号化情報フレームXを変調回路25へ出力し、変調回路25は、NC部24から出力された符号化情報フレームXを変調して増幅回路26へ出力する。増幅回路26は、変調回路25から出力された符号化情報フレームXの変調フレームを所定の送信電力に増幅し、N分配回路27へ出力する。N分配回路27は、増幅回路26から出力された変調フレームを送受信切替回路21−1〜21−nへ分配し、送受信切替回路21−i(i=1〜n)は、N分配回路27により分配された変調フレームを指向性アンテナ20−iに出力する。指向性アンテナ20−iは、符号化情報フレームXの変調フレームを対向する端局1−iに同報送信する。
【0046】
端局1−i(i=1〜n)は、中継局2から送信された変調フレームを指向性アンテナ10−pにより受信し、受信した変調フレームは送受信切替回路15−p及び切替回路16を介して復調回路17に入力され、復調される。制御部18は、記憶回路12へ鍵情報フレームとなるネイティブ情報フレームを出力するよう指示するとともに、NC復号部19へNC復号を行なうよう指示する。NC復号部19は、記憶回路12から出力された鍵情報フレームを用いて、復調回路17により復調された符号化情報フレームXをNC復号し、所望の情報フレームを得る。
【0047】
以降、無線中継システムは、上述した(1)〜(2)を繰り返し実行する。
【0048】
図1に示すAlice & Bobトポロジの2ホップ無線中継システムを例にして、端局1が2台の場合について説明する。
【0049】
図4は、本実施形態をAlice & Bobトポロジに適用した場合の端局1として用いることができる端局1’の構成を示すブロック図である。Alice & Bobトポロジの場合、端局1’は、他の端局1’から鍵情報フレームとなるネイティブ情報フレームを受信する必要がないため、中継局2と対向する指向性アンテナ10のみを備えればよい。従って、送受信切替回路15も1台のみ備えればよく、P分配回路14、切替回路16、及び、制御部18が不要となる。
【0050】
Alice & Bobトポロジを適用した本実施形態の無線中継システムは、以下のように動作する。
(1−1)時刻T1において、端局1’−1は、情報フレームF1を記憶回路12に記憶し、変調回路11が変調した情報フレームF1を指向性アンテナ10により送信する。中継局2の復調回路23は、指向性アンテナ20−1が受信した変調フレームを復調して情報フレームF1を取得し、NC部24に出力する。
【0051】
(1−2)時刻T2において、端局1’−2は、情報フレームF2を記憶回路12に記憶し、変調した情報フレームF2を指向性アンテナ10により送信する。中継局2の復調回路23は、指向性アンテナ20−2が受信した変調フレームを復調して情報フレームF2を取得し、NC部24に出力する。
【0052】
(2)時刻T3において、中継局2のNC部24は、情報フレームF1及び情報フレームF2をNC符号化して符号化情報フレームXを生成し、変調回路25は、符号化情報フレームXを変調して変調フレームを生成する。N分配回路27は、増幅回路26により送信電力が増幅された変調フレームを送受信切替回路21−1、21−2へ分配する。指向性アンテナ20−1は、送受信切替回路21−1を介して入力された変調フレームを端局1’−1に、指向性アンテナ20−2は、送受信切替回路21−2を介して入力された変調フレームを端局1’−2に同報送信する。端局1’−1の復調回路17は、指向性アンテナ10が受信した変調フレームを復調し、NC復号部19は、復調された符号化情報フレームXを、記憶回路12から読み出した情報フレームF1を用いてNC復号を行い、情報フレームF2を得る。同様に、端局1’−2の復調回路17は、指向性アンテナ10が受信した変調フレームを復調し、NC復号部19は、復調された符号化情報フレームXを記憶回路12から読み出した情報フレームF2を用いてNC復号を行い、情報フレームF1を得る。
【0053】
[第2の実施形態]
続いて、本発明の第2の実施形態を説明する。指向性アンテナを用いて目的の端局への無線の同報性を実現するために、中継局は目的の端局の数と同じだけのアンテナを具備する必要がある。例えば、図1に示すAlice and Bob トポロジの場合、中継局は、2台の端局それぞれに指向性を向けた指向性アンテナを2本備える必要がある。しかしながら第1の実施形態の中継局は、変調器(変調回路25)及び増幅器(増幅回路26)を1つしか持たず、増幅器からの出力を2本の指向性アンテナに分岐するため、指向性アンテナ1つあたりの電力が半減してしまう。そのため、中継局の備える増幅器が1台の端局1との無線通信に必要な送信電力までの増幅を行なう能力しかもたない場合、中継局から各端局への送信電力は、各端局から中継局への送信電力と比べて半分となる。すると、端局が中継局から受信する符号化情報フレームXの伝送品質は、中継局が端局から受信する情報フレームF1、F2に比べて劣化してしまう。符号化情報フレームの伝送品質がネイティブ情報フレームの伝送品質に比べて劣化すると、中継局がシステムスループットのボトルネックとなり、システムスループットが劣化する問題が発生する。また、中継局のバッファにネイティブ情報フレームが蓄積されていくため、遅延が増大し、バッファ容量が少ない場合にはバッファオーバーフローによりパケットロスが発生する問題がある。そこで、第2の実施形態では、中継局に増幅器を複数備えることにより、中継局の各指向性アンテナからの送信電力を、端局からの送信電力と同等にし、システムスループットの劣化や遅延の増大を防止する。以下、第1の実施形態との差分を中心に説明する。
【0054】
図5は、本実施形態による端局1aの構成を示すブロック図である。同図において、図2に示す第1の実施形態による端局1と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。図5に示す端局1aが、第1の実施形態の端局1と異なる点は、増幅回路13に代えて、増幅回路71及びP倍増幅回路72が備えられている点である。増幅回路71は、変調回路11から出力されたネイティブ情報フレームの変調フレームを所定の送信電力にまで増幅し、P倍増幅回路72へ出力する。P倍増幅回路72は、増幅回路71において増幅された変調フレームの送信電力をさらにP倍、つまり、自局のネイティブ情報フレームを鍵情報フレームとして使用する他の端局1の台数(P−1)に、中継局2aの台数1台分を加算した送信先ノードの台数分を乗算した送信電力に増幅し、P分配回路14へ出力する。
【0055】
図6は、本実施形態による中継局2aの構成を示すブロック図である。同図において、図3に示す第1の実施形態による中継局2と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。図6に示す中継局2aが、第1の実施形態の中継局2と異なる点は、増幅回路26に代えて、増幅回路31及びN倍増幅回路32が備えられている点である。増幅回路31は、変調回路25から出力された符号化情報フレームの変調フレームを所定の送信電力にまで増幅し、N倍増幅回路32へ出力する。N倍増幅回路32は、増幅回路31において増幅された変調フレームの送信電力をさらにN倍、つまり、端局1の台数分を乗算した送信電力に増幅し、N分配回路27へ出力する。
【0056】
次に、本実施形態の無線通信システムの動作について説明する。
(1)中継局2aが、時刻Ti(i=1〜n)において、端局1a−iの変調回路11は、上位層等から入力された情報フレームFiを変調し、記憶回路12は、情報フレームFiを記憶する。端局1a−iの増幅回路71は、変調回路11から出力された変調フレームを1台のノードへの無線信号の送信に必要な所定の送信電力に増幅し、P倍増幅回路72へ出力する。P倍増幅回路72は、増幅回路71において増幅された変調フレームの送信電力をさらにP倍に増幅し、P分配回路14へ出力する。以降の処理は、第1の実施形態の端局1と同様であり、指向性アンテナ10−1〜10−pにより、情報フレームFiの変調フレームが無線送信される。
端局1a−iのネイティブ情報フレームを鍵情報フレームとして用いる他の端局1a−j(j=1〜n,j≠i)が、端局1a−iから変調フレームを受信し、復調により得られた情報フレームFiを記憶回路12に記憶する処理、及び、中継局2aが端局1a−iから変調フレームを受信し、NC部24が復調により得られた情報フレームFiの入力を受け、記憶する処理は、第1の実施形態と同様である。
【0057】
(2)時刻T(n+1)において、中継局2aのNC部24が情報フレームF1〜FnをNC符号化して符号化情報フレームXを生成し、変調回路25が、符号化情報フレームXを変調する処理は、第1の実施形態と同様である。増幅回路31は、変調回路25から出力された変調フレームを1台の端局1aへの無線信号の送信に必要な所定の送信電力に増幅し、N倍増幅回路32へ出力する。N倍増幅回路32は、増幅回路31において増幅された変調フレームの送信電力をさらにN倍に増幅し、N分配回路27へ出力する。例えば、Alice and Bob トポロジの場合、N=2であるため、N倍増幅回路32は、増幅回路31において増幅された変調フレームの送信電力をさらに2倍に増幅してN分配回路27へ出力する。
以降の処理、すなわち、N分配回路27が符号化情報フレームXの変調フレームをN系統に分配し、指向性アンテナ20−iが、送受信切替回路21−iを介して入力された符号化情報フレームXの変調フレームを対向する端局1a−iに同報送信する処理は第1の実施形態と同様である。
【0058】
なお、本実施形態では、端局1aを用いることにより、端局1aから中継局2aへの無線信号と、中継局2aから端局1aへの無線信号の送信電力を同等とすることができるが、端局1aに代えて、第1の実施形態の端局1を用いることもできる。また、Alice and Bob トポロジの場合、他の端局1aから鍵情報フレームとなるネイティブ情報フレームを受信する必要がないため、第1の実施形態の端局1’を用いることができる。
【0059】
上述したように、本実施形態によれば、中継局は、符号化情報フレームの送信要求が発生した場合、変調された符号化情報フレームを、他のノードの送信電力と同等の送信電力まで増幅する。そして、N分配回路により電力が分割された後も指向性アンテナ1本あたりの所要送信電力を保持可能とするために、送信電力をさらにN倍に増幅する。その後、N分配回路を通して同じ変調フレームがN本の指向性アンテナへ入力され、各端局に送信される。
【0060】
このように本実施形態では、中継局の送信電力を指向性アンテナの本数倍に増幅することで、符号化情報フレームの伝送品質を、ネイティブ情報フレームの伝送品質と同等にすることが可能となり、中継局から端局へのリンクが、端局から中継局へのリンクに比べて相対的に劣悪なことに起因して発生するシステムスループットの劣化や、遅延の増大を防止することが可能となる。また、中継局から端局へ送信される無線信号の送信電力と、端局から中継局へ送信される無線信号の送信電力とを同等にすることが容易である。
【0061】
[第3の実施形態]
続いて、本発明の第3の実施形態を説明する。第2の実施形態において、中継局2aは、増幅回路により1台の端局1aへの無線信号の送信に必要な送信電力にまで増幅した後、N倍増幅回路において送信電力をさらにN倍に増幅していた。しかし、端局1aの台数が増加した場合、高い能力のN倍増幅回路が必要となり、高価になってしまう。そこで、本実施形態では、中継局に増幅回路をN個備え、符号化情報フレームの変調フレームをN分配した後、N個の増幅回路それぞれにおいて、N分配された変調フレームを1台の端局1aへの送信に必要な送信電力に増幅する。以下、第1の実施形態との差分を中心に説明する。
【0062】
図7は、本実施形態による中継局2bの構成を示すブロック図である。同図において、図3に示す第1の実施形態による中継局2と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。図7に示す中継局2bが、第1の実施形態の中継局2と異なる点は、増幅回路26を備えていない点、増幅回路36−1〜36−nからなる増幅回路群が備えられている点である。増幅回路36−i(i=1〜n)は、N分配回路27がN分配した符号化情報フレームの変調フレームを所定の送信電力にまで増幅し、指向性アンテナ20−iに分配する。
【0063】
次に、本実施形態の無線中継システムの動作について説明する。
(1)時刻Ti(i=1〜n)において、端局1a−iが情報フレームFiの変調フレームを送信し、端局1a−iのネイティブ情報フレームを鍵情報フレームとして用いる他の端局1a−j(jはi以外の1以上n以下の整数)が該変調フレームを受信して、復調により得られた情報フレームFiを記憶回路12に記憶する処理、及び、中継局2bが、該変調フレームを受信して、NC部24が復調により得られた情報フレームFiを記憶する処理は、第1の実施形態と同様である。
【0064】
(2)時刻T(n+1)において、中継局2bのNC部24が情報フレームF1〜FnをNC符号化して符号化情報フレームXを生成し、変調回路25が、符号化情報フレームXを変調する処理は、第1の実施形態と同様である。N分配回路27は、変調回路25から出力された符号化情報フレームXの変調フレームを増幅回路36−1〜36−Nに分配する。増幅回路36−i(i=1〜n)は、N分配回路27がN分配した符号化情報フレームの変調フレームを、1台の端局1aへの無線信号の送信に必要な所定の送信電力にまで増幅し、送受信切替回路21−iへ出力する。以降の処理、すなわち、中継局2bの指向性アンテナ20−1〜20−nが、符号化情報フレームXの変調フレームを同報送信する処理、端局1a−1〜1a−nが受信した変調フレームを復調し、復調された符号化情報フレームXをNC復号して所望の情報フレームを得る処理は第1の実施形態と同様である。
【0065】
例えば、Alice and Bob トポロジの場合、N=2であるため、中継局2bのN分配回路27は、変調回路25から出力された符号化情報フレームXを増幅回路36−1、36−2へ分配し、増幅回路36−1、36−2はそれぞれ、変調フレームの送信電力を増幅する。指向性アンテナ20−1は、増幅回路36−1により送信電力が増幅された変調フレームを端局1’−1に、指向性アンテナ20−2は、増幅回路36−2により送信電力が増幅された変調フレームを端局1’−2に同報送信する。
【0066】
上述したように、本実施形態によれば、中継局は、N分配回路を通じて変調フレームをN分配した後、分配されたそれぞれの変調フレームを指向性アンテナに入力する前に増幅する。これにより、第2の実施形態と比較して、増幅回路あたりの入力電力を小さくすることができるため、安価な増幅回路を用いて構成することが可能となる。中継局から端局へのリンクが、端局から中継局へのリンクに比べて相対的に劣悪なことに起因して発生するシステムスループットの劣化や、遅延の増大を防止することが可能となるという効果については、第2の実施形態と同様である。
【0067】
[第4の実施形態]
続いて、本発明の第4の実施形態を説明する。中継局が端局から受信したネイティブ情報フレームに誤りがあった場合、誤り情報フレームを省いたネイティブ情報フレームのみを用いてNC符号化を行うことが考えられる。しかしこの場合、誤りがあった情報フレームの宛先となる端局までも送信先に含めて送信電力を増幅させ、対応する指向性アンテナへの入力を行ってしまうと、送信電力が無駄となるという問題がある。そこで、本実施形態では、中継局が端局から正常に受信したネイティブ情報フレームの宛先となる端局のみに、符号化情報フレームを送信する。以下、第1の実施形態との差分を中心に説明する。
【0068】
図8は、本実施形態による端局1cの構成を示すブロック図である。同図において、図5に示す第2の実施形態による端局1aと同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。図8に示す端局1cが、第2の実施形態の端局1aと異なる点は、変調回路11に代えて変調回路11cが設けられている点、制御部18に代えて制御部18cが設けられている点、NC復号部19に代えてNC復号部19cが設けられている点である
【0069】
変調回路11cは、ネイティブ情報フレームの誤り検出符号化と変調を行なう。制御部18cは、受信した情報フレームの送信元が他の端局1である場合、復調回路17が復調して得たネイティブ情報フレームを記憶回路12に書き込む。また、制御部18cは、受信した情報フレームの送信元が中継局2である場合、情報フレームがNC符号化されていれば、記憶回路12から鍵情報フレームを出力するよう指示するとともに、NC復号部19cにNC復号を行なうよう指示し、情報フレームがNC符号化されていなければ、記憶回路12に鍵情報フレームを出力しないよう指示するとともに、NC復号部19cにNC復号を行なわないよう指示する。NC復号部19cは、制御部18からの指示に従って、復調回路17により復調された情報フレームを記憶回路12から出力された鍵情報フレームを用いてNC復号し、得られたネイティブ情報フレームを上位層等に出力したり、復調されたネイティブ情報フレームをそのまま上位層等に出力したりする。
【0070】
図9は、本実施形態による中継局2cの構成を示すブロック図である。同図において、図3に示す第1の実施形態による中継局2、図6に示す第2の実施形態による中継局2aと同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。図9に示す中継局2cが、第1の実施形態の中継局2と異なる点は、記憶回路41、誤り検出回路42、制御部43が設けられている点、NC部24に代えてNC部44が設けられている点、増幅回路26に代えて増幅回路31及び可変倍増幅回路45が設けられている点、N分配回路27に代えて可変分配回路46が設けられている点である。
【0071】
記憶回路41は、復調回路23により復調されたネイティブ情報フレームを記憶する。誤り検出回路42は、復調回路23が復調したネイティブ情報フレームの誤り検出を行い、その結果を制御部43に出力する。制御部43は、各送信タイミングにおけるNC符号化対象のネイティブ情報フレームの宛先(あるいは送信元)を記憶しており、現在の送信タイミングにおいてNC符号化対象となる宛先(あるいは送信元)のネイティブ情報フレームの中から、正常に復調されたネイティブ情報フレームを特定する。制御部43は、この特定されたネイティブ情報フレーム(以下、「特定情報フレーム」と記載)を用いて符号化情報フレームを生成するようNC部44に指示するとともに、特定情報フレームの数を送信電力の増幅利得として可変倍増幅回路45に指示し、さらに、この特定情報フレームの宛先の端局1cと対向する指向性アンテナ20−1〜20−nに変調フレームを分配するよう可変分配回路46に指示する。NC部44は、制御部43に指示された特定情報フレームを記憶回路41から読み出し、符号化情報フレームを生成する。可変分配回路46は、増幅回路31により増幅された変調フレームの送信電力を制御部43に指示された増幅利得に増幅する。可変分配回路46は、制御部43に指示された指向性アンテナ20−1〜20−nに、可変倍増幅回路45により増幅された変調フレームを分配する。
【0072】
次に、本実施形態による無線中継システムの動作について説明する。
(1)時刻Ti(i=1〜n)において、端局1c−i(i=1〜n)は、第1の実施形態と同様に、情報フレームFiの変調フレームを同時に無線送信する。但し、情報フレームFiには、変調回路11cにおいて誤り検出符号化が施されており、変調フレームには、該情報フレームFiを特定するフレーム識別情報が含まれている。誤り検出符号化には、例えば、CRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)符号等を用いることができる。
端局1c−iのネイティブ情報フレームを鍵情報フレームとして用いる他の端局1c−j(jはi以外の1以上n以下の整数)が、端局1c−iから変調フレームを受信し、復調により得られた情報フレームFiを記憶回路12に記憶する処理は、第1の実施形態と同様である。また、中継局2cは、第1の実施形態と同様に、端局1c−iから変調フレームを受信し、復調する。中継局2cの復調回路23は、復調により得られた情報フレームFiと、情報フレームFiのフレーム識別情報を記憶回路41に記憶させる。誤り検出回路42は、復調回路23から出力された情報フレームFiの誤り検出を行い、誤り検出結果を制御部43に出力する。
【0073】
(2)時刻T(1+n)において、中継局2cの制御部43は、NC符号化対象のネイティブ情報フレームを特定する。この送信タイミングにおいては、端局1c−1〜1c−nを宛先とするネイティブ情報フレームがNC符号化対象であったとする。制御部43は、誤り検出回路42から受信した誤り検出結果から、情報フレームF1〜Fnのうち、正常に復調された情報フレームFk(kは1以上n以下の整数)を認識すると、正常に復調された情報フレームFkを用いてNC符号化を行なうようNC部44に指示する。さらに、制御部43は、情報フレームFkの数N’を可変倍増幅回路45に出力し、情報フレームFkの宛先となる端局1c−k’(k’は1以上n以下の整数)に対応した指向性アンテナ20−k’に変調フレームを分配するよう可変分配回路46に出力する。宛先となる端局1cは、ネイティブ情報フレームの送信元の端局1cに対応して予め決められていてもよく、ネイティブ情報フレームに設定されている宛先情報から取得してもよい。
【0074】
NC部44は、制御部43からの指示に従って、記憶回路41から正常に復調された情報フレームFkを読み出してNC符号化し、符号化情報フレームXを生成する。NC部44は、生成した符号化情報フレームXと、記憶回路41から読み出した情報フレームFkのフレーム識別情報を変調回路25へ出力する。変調回路25は、NC部44から出力された符号化情報フレームXを変調し、増幅回路31へ出力する。変調回路25により生成された符号化情報フレームXの変調フレームには、NC符号化された情報フレームである旨を示すNC符号化情報と、情報フレームFkのフレーム識別情報が含まれる。増幅回路31は、変調回路25から出力された変調フレームを1台の端局1cへの無線信号の送信に必要な所定の送信電力に増幅し、可変倍増幅回路45へ出力する。可変倍増幅回路45は、増幅回路31において増幅された変調フレームの送信電力をさらにN’倍に増幅し、可変分配回路46へ出力する。可変分配回路46は、可変倍増幅回路45から出力された変調フレームを、制御部43から指示された指向性アンテナ20−k’に分配する。指向性アンテナ20−k’は、送受信切替回路21−k’を介して入力された変調フレームを、対向する端局1c−k’に同報送信する。
【0075】
なお、情報フレームがNC符号化されていることを示す情報、情報フレームFkのフレーム識別情報は、ヘッダ情報、あるいは、ペイロード内に埋め込む。これにより、端局1c−k’に符号化情報フレームが送信されたことを通知する。
【0076】
端局1c−k’が、中継局2cから送信された変調フレームを指向性アンテナ10−pにより受信すると、復調回路17は受信した変調フレームを復調する。端局1c−k’の制御部18cは、復調回路17により復調された情報フレームにNC符号化情報が付加されていると判断した場合、NC復号を行なうようNC復号部19cに指示するとともに、符号化情報フレームに付加されている情報フレームFkのフレーム識別情報に基づいて鍵情報フレームを選択し、選択した鍵情報フレームをNC復号部19cに出力するよう記憶部12に指示する。端局1c−k’のNC復号部19cは、記憶回路12から出力された鍵情報フレームを用いて、復調回路17により復調された符号化情報フレームXをNC復号し、所望の情報フレームを得ると、上位層等に出力する。
一方、中継局2cから受信すべきタイムスロットに無線信号を受信しなかった端局1cは、中継局2cにおいて対向ノードである端局1cからの情報フレームが誤って復調されたと判断できるため、復調動作を行わない。無線信号を受信したかどうかは、無線信号の受信強度を観測することによって判断することができる。例えば、受信強度が所定の閾値を超えた場合、無線信号を受信したと判断することが可能である。
【0077】
なお、NC符号化対象のネイティブ情報フレームのうち、正常に復調できたネイティブ情報フレームが1つの場合、中継局2cの制御部43は、ネットワーク符号化を行なわないようにNC部44に指示し、可変倍増幅回路45には増幅を行なわないよう指示する。また、ネイティブ情報フレームを受信した端局1c−k’では、NC復号を行なわない。
【0078】
本実施形態の無線中継システムをAlice and Bob トポロジに適用した場合について説明する。
【0079】
図10は、本実施形態をAlice & Bobトポロジに適用した場合の端局1cとして用いることができる端局1c’の構成を示すブロック図である。Alice & Bobトポロジの場合、端局1c’は、他の端局1c’から鍵情報フレームとなるネイティブ情報フレームを受信する必要がないため、中継局2と対応する指向性アンテナ10のみを備えればよい。従って、送受信切替回路15も1台のみ備えればよく、P倍増幅回路72、P分配回路14、切替回路16、及び、制御部18が不要となる。
【0080】
Alice & Bobトポロジを適用した本実施形態の無線中継システムは、以下のように動作する。
(1−1)時刻T1において、端局1c’−1は、情報フレームF1を記憶回路12に記憶し、変調回路11は情報フレームF1に誤り検出符号化を施して変調し、指向性アンテナ10により送信する。中継局2cの復調回路23は、指向性アンテナ20−1が受信した変調フレームを復調する。記憶回路41は、復調により得られた情報フレームF1と、情報フレームF1のフレーム識別情報を記憶し、誤り検出回路42は、復調された情報フレームF1の誤り検出を行い、誤り検出結果を制御部43に出力する。
【0081】
(1−2)時刻T2において、端局1c’−2は、情報フレームF2を記憶回路12に記憶し、変調回路11は情報フレームF2に誤り検出符号化を施して変調し、指向性アンテナ10により送信する。中継局2cの復調回路23は、指向性アンテナ20−2が受信した変調フレームを復調する。記憶回路41は、復調により得られた情報フレームF2と、情報フレームF2のフレーム識別情報を記憶し、誤り検出回路42は、復調された情報フレームF2の誤り検出を行い、誤り検出結果を制御部43に出力する。
【0082】
(2)時刻T3において、中継局2cの制御部43は、ネットワーク符号化対象が端局1c’−1、1c’−2を宛先としたネイティブ情報フレームであるため、情報フレームF1、F2の誤り検出結果を参照する。誤り検出結果から情報フレームF1、F2の双方ともに誤りがない場合、情報フレームF1、F2を用いてNC符号化を行なうようNC部44に指示するとともに、可変倍増幅回路45に増幅利得「2」を指示し、可変分配回路46に、指向性アンテナ20−1、20−2に変調フレームを分配するよう指示する。NC部44は、記憶回路41から情報フレームF1、F2を読み出してNC符号化を行って符号化情報フレームXを生成し、変調回路25は、符号化情報フレームXの変調フレームを生成する。増幅回路31は、変調フレームを1台の端局1c’への無線信号の送信に必要な所定の送信電力にまで増幅し、可変倍増幅回路45は、増幅回路31において増幅された変調フレームの送信電力をさらに2倍に増幅する。可変分配回路46は、可変倍増幅回路45から出力された変調フレームを、送受信切替回路21−1、21−2へ分配する。指向性アンテナ20−1は端局1c’−1に、指向性アンテナ20−2は端局1c’−2に変調フレームを同報送信する。
【0083】
端局1c’−1、1c’−2の復調回路17は、指向性アンテナ10が中継局2cから受信した変調フレームを復調し、制御部18cは、復調された符号化情報フレームXにNC符号化情報が付加されているため、NC復号を行なうようNC復号部19cに指示するとともに、符号化情報フレームXに付加されている情報フレームF1、F2のフレーム識別情報に基づいて鍵情報フレームを判断する。端局1c’−1の制御部18cは、フレーム識別情報により特定される、自局が送信した情報フレームF1を出力するよう記憶部12に指示し、NC復号部19cは、情報フレームF1を鍵情報フレームとして用い、復調された符号化情報フレームXをNC復号して情報フレームF2を得る。また、端局1c’−2の制御部18は、情報フレームF2を出力するよう記憶部12に指示し、NC復号部19cは、フレーム識別情報により特定される、自局が送信した情報フレームF2を鍵情報フレームとして用い、復調された符号化情報フレームXをNC復号して情報フレームF1を得る。
【0084】
上記の(2)において、情報フレームF1、F2のうち、一方のみが正常に復調され、他方に符号化誤りが検出された場合、以下の(2’)の処理を行なう。
【0085】
(2’)中継局2cの制御部43は、例えば、誤り検出結果から情報フレームF1は正常に復調され、情報フレームF2には符号化誤りが検出されことを認識すると、NC部44に、正常に復調された情報フレームF1をNC符号化せずに出力するよう指示するとともに、可変倍増幅回路45に増幅利得「1」を指示し、可変分配回路46に情報フレームF1の宛先である端局1c’−2に対向した指向性アンテナ20−2に変調フレームを出力するよう指示する。NC部44は、記憶回路41から読み出した情報フレームF1をそのまま変調回路25に出力し、変調回路25は、情報フレームF1を変調する。増幅回路31は、情報フレームF1の変調信号を1台の端局1c’への無線信号の送信に必要な所定の送信電力にまで増幅し、可変倍増幅回路45は、増幅回路31において増幅された変調フレームの送信電力を1倍に増幅する。すなわち、可変倍増幅回路45における増幅が行なわれない状態となる。可変分配回路46は、可変倍増幅回路45から出力された変調フレームを送受信切替回路21−2へのみ出力し、指向性アンテナ20−2は、変調フレームを端局1c’−2に送信する。
【0086】
端局1c’−2の制御部18cは、復調回路1により復調された情報フレームにNC符号化情報が付加されていないため、NC復号を行なわないようNC復号部19cに指示する。端局1c’−2のNC復号部19cは、復調回路17が変調して得た情報フレームF1をそのまま上位層等に出力する。端局1c’−1は、中継局2cから受信すべきタイムスロットに無線信号を受信しなかったため、復調動作を行わない。
【0087】
時刻T4以降の動作に関しては,時刻T1〜T3の繰り返しにより動作する。
【0088】
本実施形態によれば、中継局は、端局から受信したネイティブ情報フレームに対して誤り検出を行い、1つ以上のネイティブ情報フレームに誤りが検出された場合は、誤りがない情報フレームについてのみNC符号化を行い、誤りを含む情報フレームの宛先局を除いた端局に対してのみ符号化情報フレームを送信する。この時の増幅回路の利得は、誤りを含む情報フレームの宛先局を除いた端局の数でよい。これにより、送信電力の節約が実現可能となることに加え、誤り情報フレームまでまとめてNC符号化することによる誤り伝播の発生を防止することが可能となる。
【0089】
[第5の実施形態]
続いて、本発明の第5の実施形態を説明する。第4の実施形態では、第2の実施形態と同様、端局1cの台数が増加した場合には、可変倍増幅回路が高価になってしまう。そこで、本実施形態では、第3の実施形態と同様に、中継局に増幅回路をN個備え、変調フレームを分配した後に、各増幅回路において、1台の端局への送信に必要な送信電力に増幅する。以下、第4の実施形態との差分を中心に説明する。
【0090】
図11は、本実施形態による中継局2dの構成を示すブロック図である。同図において、図7に示す第3の実施形態による中継局2b、図9に示す第4の実施形態による中継局2cと同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。図9に示す中継局2dが、第4の実施形態の中継局2cと異なる点は、制御部43に代えて制御部47が設けられている点、増幅回路31及び可変倍増幅回路45が設けられていない点、増幅回路36−1〜36−nからなる増幅回路群が設けられている点である。
【0091】
制御部47は、第4の実施形態の制御部43と同様に、現在の送信タイミングにおいてNC符号化対象となるネイティブ情報フレームの中から、正常に復調されたネイティブ情報フレームを特定する。制御部47は、この特定されたネイティブ情報フレームである特定情報フレームを用いて符号化情報フレームを生成するようNC部44に指示するとともに、特定情報フレームの宛先の端局1cと対向する指向性アンテナ20−1〜20−nに変調フレームを分配するよう可変分配回路46に指示する。
【0092】
次に、本実施形態による無線通信システムの動作について説明する。
(1)時刻Ti(i=1〜n)において、端局1c−iが情報フレームFiの変調フレームを送信し、端局1c−iのネイティブ情報フレームを鍵情報フレームとして用いる他の端局1c−j(jはi以外の1以上n以下の整数)が該変調フレームを受信して、復調により得られた情報フレームFiを記憶回路12に記憶する処理、中継局2dが該変調フレームを受信し、受信した変調フレームを復調して得られた情報フレームFiと、情報フレームFiのフレーム識別情報を記憶回路41に記憶するとともに、誤り検出回路42が復調された情報フレームFiの誤り検出を行う処理は、第4の実施形態と同様である。誤り検出回路42は、誤り検出結果を制御部47に出力する。
【0093】
(2)時刻T(n+1)において、中継局2dの制御部47は、第4の実施形態と同様に、誤り検出結果から、この送信タイミングにおけるNC符号化対象の情報フレームのうち、正常に復調された情報フレームFk(kは1以上n以下の整数)を認識すると、正常に復調された情報フレームFkを用いてNC符号化を行なうようNC部44に指示するとともに、情報フレームFkの宛先となる端局1c−k’(k’は1以上n以下の整数)に対応した指向性アンテナ20−k’に変調フレームを分配するよう可変分配回路46に指示する。
【0094】
第4の実施形態と同様に、NC部44は、正常に復調された情報フレームFkをNC符号化して符号化情報フレームXを生成し、変調回路25は、符号化情報フレームXの変調フレームを生成する。可変分配回路46は、変調回路25から出力された変調フレームを、制御部47から指示された指向性アンテナ20−k’に分配する。増幅回路36−k’は、可変分配回路46から出力された変調フレームを、1台の端局1cへの無線信号の送信に必要な所定の送信電力にまで増幅し、送受信切替回路21−k’へ出力する。以降の処理、すなわち、指向性アンテナ20−k’が、送受信切替回路21−k’を介して入力された符号化情報フレームXの変調フレームを対向する端局1c−k’に同報送信する処理は第4の実施形態と同様である。
【0095】
なお、NC符号化対象のネイティブ情報フレームのうち、正常に復調できたネイティブ情報フレームが1つの場合、中継局2dの制御部47は、ネットワーク符号化を行なわないようにNC部44に指示する。
例えば、本実施形態の無線中継システムをAlice and Bob トポロジに適用した場合、中継局2dの制御部47は、情報フレームF1が正常に復調され、情報フレームF2には誤りが検出されたことを認識すると、NC部44に、情報フレームF1をNC符号化せずに出力するよう指示するとともに、可変分配回路46に指向性アンテナ20−2へ変調フレームを出力するよう指示する。NC部44は、記憶回路41から読み出した情報フレームF1をそのまま変調回路25に出力し、可変分配回路46は、情報フレームF1の変調フレームを送受信切替回路21−2へのみ出力する。変調フレームは、増幅回路36−2により増幅された後、指向性アンテナ20−2により端局1c’−2に送信される。
【0096】
上述したように、本実施形態によれば、中継局は、可変分配回路を通じて変調フレームを宛先局に応じて分配した後、分配されたそれぞれの変調フレームを指向性アンテナに入力する前に増幅する。これにより、第5の実施形態と比較して、増幅回路あたりの入力電力を小さくすることができるため、安価な増幅回路を用いて構成することが可能となる。また、第5の実施形態と同様に、送信電力の節約が実現可能であり、誤り情報フレームまでまとめてNC符号化することによる誤り伝播の発生を防止することも可能である。
【0097】
以上説明した本発明の実施形態によれば、各無線局における無線信号の送受信に指向性アンテナを用い、特に中継局にはネットワーク符号化情報フレームの宛先の数と同数の指向性アンテナを有し、各端局に対して指向性を合わせることで、オムニアンテナによる送信電力の無駄を削減し、各無線リンクの送信距離の伸長が可能となる。
【0098】
なお、端局1’、端局1c’は、指向性アンテナに代えてオムニアンテナを備えてもよい。また、端局1a、1cは、中継局2bのように、増幅回路71、P増幅回路72を備える代わりに、P分配回路14と送受信切替回路15−1〜15−pそれぞれとの間に、増幅回路を備える構成としてもよい。
また、送受信切替回路15−1〜15−pは、予め定められたタイミングによって切替を行うのではなく、サーキュレータ回路を用いて、指向性アンテナ10−1〜10−pからの入力を切替回路16へ出力し、P分配回路14からの入力を指向性アンテナ10−1〜10−pへ出力してもよい。
また、送受信切替回路21−1〜21−nも同様に、予め定められたタイミングによって切替を行うのではなく、サーキュレータ回路を用いて、指向性アンテナ20−1〜20−nらの入力を切替回路22へ出力し、N分配回路27または可変分配回路46からの入力を指向性アンテナ20−1〜20−nへ出力してもよい。
【0099】
なお、上述の端局1、1’、1c、1c’ならびに、中継局2、2a、2b、2c、2dは、内部にコンピュータシステムを有している。そして、変調回路11、11c、記憶回路12、増幅回路13、71、復調回路17、制御部18、18c、及び、NC復号部19、19c、ならびに、復調回路23、NC部24、44、変調回路25、増幅回路26、31、記憶回路41、誤り検出回路42、及び、制御部43、47の動作の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータシステムが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでいうコンピュータシステムとは、CPU及び各種メモリやOS、周辺機器等のハードウェアを含むものである。また、変調回路11、増幅回路13、71、及び、復調回路17、ならびに、復調回路23、変調回路25、及び、増幅回路26、31は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよい。
【0100】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0101】
1、1−1、1−2、1’、1c、1c’…端局(端局装置)
10、10−1〜10−p…指向性アンテナ(アンテナ)
11、11c…変調回路
12…記憶回路(鍵記憶部)
13、71…増幅回路
14…P分配回路
15、15−1〜15−p…送受信切替回路
16…切替回路
17…復調回路(端局復調部)
18、18c…制御部
19、19c…NC復号部(ネットワーク符号化復号部)
2、2a、2b、2c、2d…中継局(中継局装置)
20−1〜20−n…指向性アンテナ
21−1〜21−n…送受信切替回路
22…切替回路
23…復調回路
24、44…NC部(ネットワーク符号化部)
25…変調回路
26、31…増幅回路
27…N分配回路
32…N倍増幅回路
36−1〜36−n…増幅回路
41…記憶回路
42…誤り検出回路
43、47…制御部
45…可変倍増幅回路
46…可変分配回路
72…P倍増幅回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継局装置と複数の端局装置とを有する無線中継システムであって、
前記中継局装置は、
前記複数の端局装置のそれぞれに対向して設けられ、対向する前記端局装置から無線により情報フレームを受信するとともに、複数の情報フレームをネットワーク符号化した符号化情報フレームを対向する前記端局装置へ無線により同時に送信する複数の指向性アンテナと、
前記複数の指向性アンテナが対向する前記端局装置から受信した情報フレームを復調する復調部と、
前記復調部が復調した複数の情報フレームをネットワーク符号化して符号化情報フレームを生成するネットワーク符号化部と、
前記ネットワーク符号化部が生成した符号化情報フレームを変調する変調部と、
前記変調部が変調した符号化情報フレームを前記複数の指向性アンテナに出力する分配部とを備え、
前記端局装置は、
前記中継局装置の自局に対向する前記指向性アンテナから送信された符号化情報フレームを受信するアンテナと、
符号化情報フレームの復号に用いる鍵情報フレームを格納する鍵記憶部と、
前記アンテナが受信した符号化情報フレームを復調する端局復調部と、
前記端局復調部が復調した前記符号化情報フレームを、前記鍵記憶部から読み出した鍵情報フレームにより復号するネットワーク符号化復号部とを備える、
ことを特徴とする無線中継システム。
【請求項2】
中継局装置と複数の端局装置とを有する無線中継システムにおける前記中継局装置であって、
前記複数の端局装置のそれぞれに対向して設けられ、対向する前記端局装置から無線により情報フレームを受信するとともに、複数の情報フレームをネットワーク符号化した符号化情報フレームを対向する前記端局装置へ無線により同時に送信する複数の指向性アンテナと、
前記複数の指向性アンテナが対向する前記端局装置から受信した情報フレームを復調する復調部と、
前記復調部が復調した複数の情報フレームをネットワーク符号化して符号化情報フレームを生成するネットワーク符号化部と、
前記ネットワーク符号化部が生成した符号化情報フレームを変調する変調部と、
前記変調部が変調した符号化情報フレームを前記複数の指向性アンテナに出力する分配部と、
を備えることを特徴とする中継局装置。
【請求項3】
前記変調部が変調した符号化情報フレームの送信電力を前記複数の中継局装置の数に応じて増幅し、前記分配部に出力する増幅部をさらに備え、
前記分配部は、前記増幅部が送信電力を増幅した前記符号化情報フレームを前記複数の指向性アンテナに出力する、
ことを特徴とする請求項2に記載の中継局装置。
【請求項4】
前記復調部が復調した情報フレームの誤り検出を行なう誤り検出回路と、
前記誤り検出回路において誤りが検出されなかった複数の情報フレームを用いて符号化情報フレームを生成するよう前記ネットワーク符号化部へ指示するとともに、該複数の情報フレームの数に応じて送信電力を増幅するよう前記増幅部に指示し、さらに、該複数の情報フレームの宛先の端局装置に対向した前記複数の指向性アンテナへ前記変調部が変調した符号化情報フレームを出力するよう前記分配部に指示する制御部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の中継局装置。
【請求項5】
前記複数の指向性アンテナのそれぞれに対応して設けられ、前記分配部が分配した前記符号化情報フレームの送信電力を増幅して対応する前記指向性アンテナへ出力する複数の増幅部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の中継局装置。
【請求項6】
前記復調部が復調した情報フレームの誤り検出を行なう誤り検出回路と、
前記誤り検出回路において誤りが検出されなかった複数の情報フレームを用いて符号化情報フレームを生成するよう前記ネットワーク符号化部へ指示するとともに、前記分配部に対して、前記変調部が変調した符号化情報フレームを、誤りが検出されなかった前記複数の情報フレームの宛先の端局装置に対向した前記複数の指向性アンテナに対応する前記複数の増幅部に出力するよう指示する制御部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の中継局装置。
【請求項7】
中継局装置と複数の端局装置とを有する無線中継システムにおける前記中継局装置の無線中継方法であって、
前記複数の端局装置それぞれに対向して設けられた指向性アンテナにより、前記端局装置から無線送信された情報フレームを受信する受信過程と、
前記受信過程において前記指向性アンテナにより受信した情報フレームを復調する復調過程と、
復調過程において復調された複数の情報フレームをネットワーク符号化して符号化情報フレームを生成するネットワーク符号化過程と、
前記ネットワーク符号化過程において生成された符号化情報フレームを変調する変調過程と、
前記変調過程において変調された符号化情報フレームを前記複数の指向性アンテナに出力する分配過程と、
前記複数の指向性アンテナにより、前記分配過程において出力された前記符号化情報フレームを同時に無線送信する送信過程と、
を有することを特徴とする無線中継方法。
【請求項8】
前記変調過程において変調された符号化情報フレームの送信電力を、前記複数の中継局装置の数に応じて増幅する増幅過程をさらに有し、
前記分配過程においては、前記増幅過程において送信電力が増幅された前記符号化情報フレームを前記複数の指向性アンテナに出力する、
ことを特徴とする請求項7に記載の無線中継方法。
【請求項9】
前記復調過程において復調された情報フレームの誤り検出を行なう誤り検出過程をさらに有し、
前記ネットワーク符号化過程においては、前記誤り検出過程において誤りが検出されなかった複数の情報フレームを用いて符号化情報フレームを生成し、
前記増幅過程においては、前記ネットワーク符号化過程において前記符号化情報フレームの生成に用いた前記複数の情報フレームの数に応じて送信電力を増幅し、
前記分配過程においては、前記ネットワーク符号化過程において前記符号化情報フレームの生成に用いた前記複数の情報フレームの宛先の端局装置に対向した前記複数の指向性アンテナに、前記変調過程において変調された符号化情報フレームを出力する、
ことを特徴とする請求項8に記載の無線中継方法。
【請求項10】
前記分配過程において分配された各符号化情報フレームの送信電力を増幅する増幅過程をさらに有する、
ことを特徴とする請求項7に記載の無線中継方法。
【請求項11】
前記復調過程において復調された情報フレームの誤り検出を行なう誤り検出過程をさらに有し、
前記ネットワーク符号化過程においては、前記誤り検出過程において誤りが検出されなかった複数の情報フレームを用いて符号化情報フレームを生成し、
前記分配過程においては、前記ネットワーク符号化過程において前記符号化情報フレームの生成に用いた前記複数の情報フレームの宛先の端局装置に対向した前記複数の指向性アンテナに、前記変調過程において変調された符号化情報フレームを出力する、
ことを特徴とする請求項10に記載の無線中継方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−250015(P2011−250015A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119501(P2010−119501)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】