説明

無線中継増幅装置

【課題】上り送信電力を増幅するための増幅部を、通信ネットワークを切断することなく保護する。
【解決手段】増幅部7に入力される上り送信信号の平均電力値11を算出する電波検波部9と、増幅部7にて電力が増幅された上り送信信号の電力を、入力された制御信号12に応じた減衰値によって減衰させる可変減衰部8と、電波検波部9にて算出された平均電力値11と、増幅部7に入力可能な上り送信信号の電力の限界値とを比較し、平均電力値11が限界値以下である場合は、減衰値が予め決められた設定値となるような制御信号12を可変減衰部8に出力し、平均電力値11が限界値よりも大きな場合は、減衰値が平均電力値11と限界値との差だけ設定値よりも小さくなるような制御信号12を可変減衰部8に出力する判定部10とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、符号分割多重方式通信ネットワークで使用される無線中継増幅装置に関し、特に、無線中継増幅装置内部で用いられる上り増幅部の過入力保護に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、符号分割多重方式通信ネットワークで使用される無線中継増幅装置においては、移動端末から基地局装置に向けた上り送信と、基地局装置から移動端末に向けた下り送信とのそれぞれについて、送信電力を増幅するために増幅部が設けられている。そのうち、移動端末から基地局装置に向けた上り送信における送信電力を増幅するための増幅部においては、無線中継増幅装置を介して基地局装置と通信を行う移動端末の数が増える等して増幅部に入力される送信電力が増加する場合があるため、保護する必要がある。
【0003】
上り送信電力を増幅するための増幅部を保護するために、従来は、増幅部に入力される電力を監視し、入力される電力が基準電力値を超えた場合、増幅部に入力される信号を遮断したり、増幅部の機能を停止させたりすることが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−271054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように、上り送信電力を増幅するための増幅部を保護するために、増幅部に入力される電力が基準電力値を超えた場合に、増幅部に入力される信号を遮断したり、増幅部の機能を停止させたりするものにおいては、通信ネットワークが切断されてしまうという問題点がある。
【0005】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、上り送信電力を増幅するための増幅部を、通信ネットワークを切断することなく保護することができる無線中継増幅装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、
移動端末から基地局装置に向けての上り送信における送信電力を増幅する増幅部を有し、前記移動端末から送信された送信信号を受信し、該送信信号をその電力を前記増幅部にて増幅して前記基地局装置に送信する無線中継増幅装置において、
前記受信した送信信号の電力に基づいて、前記増幅部を用いた前記送信信号の増幅の程度を制御する増幅制御手段を有することを特徴とする。
【0007】
上記のように構成された本発明においては、無線中継増幅装置にて移動端末から送信された送信信号が受信されると、無線中継増幅装置内の増幅部において、受信された送信信号の電力が増幅され、電力が増幅された送信信号が基地局装置に送信されることになるが、その際、無線中継増幅装置内の増幅制御手段において、受信された送信信号の電力に基づいて、増幅部を用いた送信信号の増幅の程度が制御される。ここで、符号分割多重方式通信ネットワークでは、基地局装置と移動端末の距離の差によって発生する送受信電力間の干渉を避けるため、基準受信SIRを設定し、その基準値に導くように高精度の電力制御が実施されている。そのため、上述したように、受信された送信信号の電力を監視し、その電力に基づいて増幅部を用いた送信信号の増幅の程度を制御することで、基地局装置に対してSIRを高く見せ、符号分割多重方式ネットワーク自身がもつ電力制御機能により、無線中継増幅装置に入力される送信信号の電力を減少させる。その結果、通信ネットワークの切断は発生しない。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明においては、符号分割多重通信方式ネットワークにおいて基地局と端末間で実施される電力制御を活用することで、無線中継増幅装置において、上り送信における送信電力を増幅するための増幅部を、通信ネットワークを切断することなく保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の無線中継増幅装置の実施の一形態を示す図である。
【0011】
本形態は図1に示すように、基地局装置との無線インタフェースとなる屋外アンテナ1と、屋外アンテナ1を送受信共用可能とするための共用フィルタ2と、基地局装置から移動端末に向けた送信(以下、下り送信と称する)における送信電力を増幅する増幅部3と、移動端末との無線インタフェースとなる屋内アンテナ5と、屋内アンテナ5を送受信共用可能とするための共用フィルタ4と、移動端末から基地局装置に向けた送信(以下、上り送信と称する)における送信電力を分配する分配器6と、上り送信における送信電力を増幅する増幅部7と、上り送信における送信電力の減衰量を可変する可変減衰部8と、上り送信における送信電力の平均電力値を算出する平均値算出手段である電力検波部9と、可変減衰部8における減衰量を制御するための制御信号12を出力する判定部10とから構成されている。なお、可変減衰部8、電力検波部9及び判定部10から本発明の増幅制御手段が構成される。本形態においては、上り送信信号13の電力を増幅する増幅部7が保護される対象である。
【0012】
以下に、上記のように構成された無線中継増幅装置の動作について説明する。
【0013】
移動端末から基地局装置に送信された上り送信の送信信号が屋内アンテナ5にて受信されると、共用フィルタ4にて上り送信信号と下り送信信号とが分離され、上り送信信号13は分配器6に供給される。
【0014】
分配器6においては、共用フィルタ4から供給された上り送信信号13が、増幅部7を経由して基地局装置に送信される上り送信信号と、電力検波部9及び判定部10を経由し、可変減衰部8を制御することで増幅部7を保護するために使用される上り送信信号とに分離される。
【0015】
分配器6にて分離された上り送信信号のうち一方の上り送信信号は、増幅部7に入力され、増幅部7にて設定された利得によってその電力が増幅され、可変減衰部8に対して出力される。
【0016】
一方、分配器6にて分離された上り送信信号のうち他方の上り送信信号は、電力検波部9に入力され、電力検波部9において、入力された上り送信信号の電力が積分されることにより、屋内アンテナ5にて受信され、増幅部7に入力される上り送信信号13の平均電力値11が算出され、判定部10に出力される。
【0017】
判定部10においては、電力検波部9から出力された平均電力値11に基づいて、可変減衰部8において増幅部7にて増幅された上り送信信号の電力を減衰させるための減衰値を設定するための制御信号12が生成され、出力される。
【0018】
以下に、判定部10における処理を詳細に説明する。
【0019】
判定部10においては、増幅部7に入力可能な上り送信信号13の電力の限界値である基準値Sが設定されており、この基準値Sと電力検波部9にて算出された平均電力値11とが比較され、比較結果に基づいて、可変減衰器部8における減衰値を設定するための制御信号12が生成、出力される。基準値Sと平均電力値11との比較結果が、平均電力値11≦基準値Sである場合は、可変減衰器部8における減衰値が予め決められた設定値である固定の減衰値Cとなるような制御信号12が判定部10から可変減衰部8に出力される。また、基準値Sと平均電力値11との比較結果が、平均電力値11>基準値Sである場合は、可変減衰部8における減衰値が、(平均電力値11−基準値S)分だけ減衰値Cから減算したものとなるような制御信号12が判定部10から可変減衰部8に出力される。すなわち、可変減衰部8においては、電力検波部9にて算出された平均電力値11が基準値Sを超える場合のみその減衰値が制御されることになる。
【0020】
可変減衰部8においては、増幅部7にて電力が増幅されて出力された上り送信信号が、判定部10から出力された制御信号12に応じた減衰値によって減衰され、共用フィルタ2に出力される。
【0021】
その後、共用フィルタ2において、上り送信信号と下り送信信号とが一つの電波伝送路に合成され、上り送信信号が屋外アンテナ1を介して基地局装置に向けて送信される。
【0022】
以下に、上述した無線中継増幅装置の符号分割多重方式通信ネットワークでの具体的な動作について説明する。
【0023】
図2は、図1に示した無線中継増幅装置を用いた符号分割多重方式通信ネットワークの一例を示す図である。
【0024】
図2に示した符号分割多重方式通信ネットワークにおいて、無線中継増幅装置200を介して基地局装置100と通信を行う移動端末300の数が増える等の何らかの要因で、無線中継増幅装置200内の増幅部7に入力される上り送信信号の電力が基準値Sを超えた場合、(平均電力値11−基準値S)分の重みだけ可変減衰部8の減衰量が減らされ、基地局装置100に対して、無線中継増幅装置200を介して通信する移動端末300の上り送信電力を高く見せる。すると、基地局装置100は、サービスエリア内の他の移動端末との干渉を回避するため、無線中継増幅装置200を介して通信を行っている移動端末300に対して、上り送信電力を下げるように要求する。その結果、無線中継増幅装置200内の増幅部7に入力される上り送信電力が低下する。
【0025】
(他の実施の形態)
本発明の他の実施の形態として、その基本的構成は上述した実施の形態に示したものと同様であるが、増幅部7を、電力検波部9、判定部10及び可変減衰部8から構成されるループの後に配置しても同様の効果が得られる。その場合、可変減衰部8は、屋内アンテナ5にて受信され、分配器6にて分配された上り送信信号13の電力を減衰させ、増幅部7は、可変減衰部8にて減衰した上り送信信号13の電力を所定の利得で増幅することになる。
【0026】
また、増幅部7が、利得コントロール機能を有している場合は、判定部10から出力された制御信号12を増幅部7に入力し、可変減衰部8を省略しても同様の効果が得られる。その場合、判定部10は、基準値Sと平均電力値11との比較結果が、平均電力値11≦基準値Sである場合は、増幅部7における利得が予め決められた設定値となるような制御信号を増幅部7に出力し、また、基準値Sと平均電力値11との比較結果が、平均電力値11>基準値Sである場合は、増幅部7における利得が、(平均電力値11−基準値S)分だけ設定値に加算したものとなるような制御信号を増幅部7に出力することになる。
【0027】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の無線中継増幅装置の実施の一形態を示す図である。
【図2】図1に示した無線中継増幅装置を用いた符号分割多重方式通信ネットワークの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 屋外アンテナ
2,4 共用フィルタ
3,7 増幅部
5 屋内アンテナ
6 分配器
8 可変減衰部
9 電力検波部
10 判定部
11 平均電力値
12 制御信号
13 上り送信信号
14 下り送信信号
100 基地局装置
200 無線中継増幅装置
300 移動端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動端末から基地局装置に向けての上り送信における送信電力を増幅する増幅部を有し、前記移動端末から送信された送信信号を受信し、該送信信号をその電力を前記増幅部にて増幅して前記基地局装置に送信する無線中継増幅装置において、
前記受信した送信信号の電力に基づいて、前記増幅部を用いた前記送信信号の増幅の程度を制御する増幅制御手段を有することを特徴とする無線中継増幅装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線中継増幅装置において、
前記増幅制御手段は、
前記増幅部に入力される送信信号の平均値を算出する平均値算出手段と、
前記増幅部にて電力が増幅された送信信号の電力を、入力された制御信号に応じた減衰値によって減衰させる可変減衰手段と、
前記平均値算出手段にて算出された平均値と、前記増幅部に入力可能な送信信号の電力の限界値とを比較し、前記平均値が前記限界値以下である場合は、前記減衰値が予め決められた設定値となるような制御信号を前記可変減衰手段に出力し、前記平均値が前記限界値よりも大きな場合は、前記減衰値が前記平均値と前記限界値との差だけ前記設定値よりも小さくなるような制御信号を前記可変減衰手段に出力する判定手段とを有することを特徴とする無線中継増幅装置。
【請求項3】
請求項1に記載の無線中継増幅装置において、
前記増幅制御手段は、
前記受信した送信信号の平均値を算出する平均値算出手段と、
前記受信した送信信号の電力を、入力された制御信号に応じた減衰値によって減衰させ、電力が減衰した送信信号を前記増幅部に出力する可変減衰手段と、
前記平均値算出手段にて算出された平均値と、前記増幅部に入力可能な送信信号の電力の限界値とを比較し、前記平均値が前記限界値以下である場合は、前記減衰値が予め決められた設定値となるような制御信号を前記可変減衰手段に出力し、前記平均値が前記限界値よりも大きな場合は、前記減衰値が前記平均値と前記限界値との差だけ前記設定値よりも小さくなるような制御信号を前記可変減衰手段に出力する判定手段とを有することを特徴とする無線中継増幅装置。
【請求項4】
請求項1に記載の無線中継増幅装置において、
前記増幅部は、入力された制御信号に応じて利得を制御する利得制御機能を有し、
前記増幅制御手段は、
前記増幅部に入力される送信信号の平均値を算出する平均値算出手段と、
前記平均値算出手段にて算出された平均値と、前記増幅部に入力可能な送信信号の電力の限界値とを比較し、前記平均値が前記限界値以下である場合は、前記利得が予め決められた設定値となるような制御信号を前記増幅部に出力し、前記平均値が前記限界値よりも大きな場合は、前記利得が前記平均値と前記限界値との差だけ前記設定値よりも大きくなるような制御信号を前記増幅部に出力する判定手段とを有することを特徴とする無線中継増幅装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−205576(P2008−205576A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36407(P2007−36407)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】