説明

無線区間におけるマルチキャスト転送方式

【課題】ゲートウェイおよび受信端末間を無線LANで接続する場合におけるIPマルチキャストの品質低下を防止可能なIPマルチキャストの配信技術を提供する。
【解決手段】ホームゲートウェイ1は、エッジルータ7から受信したマルチキャストフレームの宛先アドレスを、マルチキャストアドレスから、マルチキャストフレーム内のマルチキャストパケットのマルチキャストグループに属するセットトップボックス3と接続する無線LANアダプタ2のMACアドレスに変更して無線LAN5に送信する。無線LANアダプタ2は、無線LAN5を介してホームゲートウェイ1から受信したユニキャストフレームの宛先アドレスを、自無線LANアダプタ2のMACアドレスから、ユニキャストフレームに格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストグループに対応するマルチキャストMACアドレスに変更してセットトップボックス3に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPマルチキャストデータの転送方式に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マルチキャスト非対応ネットワークを介して相互接続されたマルチキャスト対応ネットワーク間でマルチキャストパケットを送受する技術が開示されている。この技術において、マルチキャスト対応ネットワークとマルチキャスト非対応ネットワークとの間に設置されたゲートウェイ装置は、マルチキャスト対応ネットワークから受け取ったマルチキャストフレームのマルチキャストMACアドレスを、そのマルチキャストフレームに格納されているマルチキャストパケットを送信すべきゲートウェイ装置のMACアドレスに変換してマルチキャスト非対応ネットワークに送信する。また、マルチキャスト非対応ネットワークから受け取ったユニキャストフレームのMACアドレスを、そのユニキャストフレームに格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストIPアドレスに対応するマルチキャストMACアドレスに変換してマルチキャスト対応ネットワークに送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−245713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、NGN(Next Generation Network)等の、通信品質が保証されたIP網の提供サービスであるIPマルチキャストを受信して、セットトップボックス等の受信端末に配信するIPマルチキャスト対応のゲートウェイが提案されている。そして、このゲートウェイと受信端末との間の接続には、マルチキャスト対応ネットワークである無線LANを用いることが考えられる。
【0005】
しかし、無線LANは、有線LANに比べて通信帯域が狭い。また、マルチキャストフレームには、エラー等が発生した場合の再送手順が存在しない。このため、IPマルチキャストにおいて十分な品質を得ることができず、滑らかな動画再生ができない事態の発生が想定される。
【0006】
なお、特許文献1に記載の技術は、マルチキャスト非対応ネットワークを介して相互接続されたマルチキャスト対応ネットワーク間でマルチキャストパケットを送受するための技術であり、マルチキャスト対応ネットワークである無線LAN上におけるマルチキャストパケットの品質保証を考慮するものではない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ゲートウェイおよび受信端末間を無線LANで接続する場合におけるIPマルチキャストの品質低下を防止することが可能なIPマルチキャストの配信技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明において、ゲートウェイは、IPマルチキャストネットワークから受信したマルチキャストフレームの宛先アドレスを、マルチキャストアドレスから、このマルチキャストフレームに格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストグループに属する受信端末と接続する無線LANアダプタのMACアドレスに変更して、無線LANに送信する。そして、無線LANアダプタは、無線LANを介してゲートウェイから受信したユニキャストフレームの宛先アドレスを、自無線LANアダプタのMACアドレスから、このユニキャストフレームに格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストグループに対応するマルチキャストMACアドレスに変更して、自無線LANアダプタに接続されている受信端末に送信する。
【0009】
例えば、本発明は、少なくとも一台の受信端末にIPマルチキャストを配信するIPマルチキャスト配信システムであって、
IPマルチキャストネットワークに無線LANを接続するゲートウェイと、
前記無線LANを介して前記受信端末を接続する少なくとも一台の無線LANアダプタと、を有し、
前記ゲートウェイは、
前記IPマルチキャストネットワークから受信したマルチキャストフレームに格納されているマルチキャストパケットを受信する前記受信端末と接続する前記無線LANアダプタ毎に、当該マルチキャストフレームの宛先アドレスを、マルチキャストアドレスから当該無線LANアダプタのMACアドレスに変更して、当該無線LANアダプタ宛のユニキャストフレームを生成するユニキャストフレーム生成手段と、
前記ユニキャストフレーム生成手段により生成されたユニキャストフレームを前記無線LANに送信するユニキャストフレーム送信手段と、を有し、
前記無線LANアダプタは、
前記無線LANから受信したユニキャストフレームの宛先アドレスを、自無線LANアダプタのMACアドレスから、当該ユニキャストフレームに格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストグループに対応するマルチキャストMACアドレスに変更して、マルチキャストフレームを生成するマルチキャストフレーム生成手段と、
前記マルチキャストフレーム生成手段により生成されたマルチキャストフレームを、前記受信端末に送信するマルチキャストフレーム送信手段と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゲートウェイおよび受信端末間を無線LANで接続する場合でも、IPマルチキャストの配信に無線LANの再送手順を利用できるので、IPマルチキャスト転送の品質低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態が適用されたIPマルチキャスト配信システムの概略図である。
【図2】図2は、ホームゲートウェイ1の概略構成図である。
【図3】図3は、マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131の登録内容例を模式的に表した図である。
【図4】図4は、マルチキャストフレームからユニキャストフレーム、およびユニキャストフレームからマルチキャストフレームを生成する原理を説明するための図である。
【図5】図5は、図2に示すホームゲートウェイ1の動作を説明するためのフロー図である。
【図6】図6は、無線LANアダプタ2の概略構成図である。
【図7】図7は、マルチキャストIPアドレス1427からマルチキャストMACアドレス1428を生成する原理を説明するための図であり、図7(A)は、マルチキャストIPアドレス1427がIPv6の場合の説明図、そして図7(B)は、マルチキャストIPアドレス1427がIPv4の場合の説明図である。
【図8】図8は、図6に示す無線LANアダプタ2の動作を説明するためのフロー図である。
【図9】図9は、本発明の一実施の形態に係るIPマルチキャスト配信システムの動作例を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態が適用されたIPマルチキャスト配信システムの概略図である。
【0014】
図示するように、本実施の形態に係るIPマルチキャスト配信システムは、ホームゲートウェイ(HGW)1と、少なくとも一台の無線LANアダプタ(WADP)2と、を有する。ホームゲートウェイ1は、NGN等のWAN6内に設けられた最寄りのエッジルータ(ER)7に無線LAN(WLAN)5を接続する。無線LANアダプタ2は、IPマルチキャストを受信してテレビジョン(TV)4にAV信号を出力するセットトップボックス(STB)3を少なくとも一台、無線LAN5に接続する。なお、図1において、セットトップボックス3、テレビジョン4、およびエッジルータ7には既存の装置を利用できるので、それらの詳細な説明を省略する。
【0015】
先ず、ホームゲートウェイ1について説明する。
【0016】
ホームゲートウェイ1は、エッジルータ7を介して、図示していないサーバからIPマルチキャストを受信する。そして、無線LAN5を介して、配下のセットトップボックス3に、この受信したIPマルチキャストを配信する。
【0017】
図2は、ホームゲートウェイ1の概略構成図である。
【0018】
図示するように、ホームゲートウェイ1は、WANインターフェース(WANIF)部11と、無線LANインターフェース(WLANIF)部12と、記憶部13と、主制御部14と、を有する。
【0019】
WANインターフェース部11は、WAN6に接続するためのインターフェースである。
【0020】
無線LANインターフェース部12は、無線LAN5に接続するためのインターフェースである。
【0021】
記憶部13には、マルチキャストパケットのマルチキャストグループと無線LANアダプタ2のMACアドレスとの対応関係を登録するためのマルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131が記憶されている。
【0022】
図3は、マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131の登録内容例を模式的に表した図である。図示するように、マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131には、IPマルチキャストを受信中のセットトップボックス3に接続されている無線LANアダプタ2毎にレコード1310が登録される。レコード1310は、マルチキャストパケットのマルチキャストグループを登録するフィールド1311と、このマルチキャストパケットに対応するIPマルチキャストを受信中のセットトップボックス3に接続されている無線LANアダプタ2のMACアドレスを登録するフィールド1312と、を有する。
【0023】
主制御部14は、IPマルチキャスト制御部141と、ユニキャストフレーム生成部142と、アドレス記憶制御部143と、を有する。
【0024】
IPマルチキャスト制御部141は、MLD(Multicast Listener Discovery:IPv6の場合)、IGMP(Internet Group Management Protocol:IPv4の場合)等の所定のプロトコルに従い、配下のセットトップボックス3が所望のIPマルチキャストのマルチキャストグループに加入、あるいは所望のIPマルチキャストのマルチキャストグループから脱退するために必要な制御を行う。
【0025】
また、IPマルチキャスト制御部141は、無線LANインターフェース部12を介して、無線LANアダプタ2経由でセットトップボックス3から受信したIPマルチキャストの視聴要求をアドレス記憶制御部143に通知する。
【0026】
また、IPマルチキャスト制御部141は、マルチキャストグループの視聴確認を無線LANインターフェース部12からマルチキャストで送信した場合、所定時間内に無線LANアダプタ2経由でセットトップボックス3から受け取った視聴確認に対する応答を、この視聴確認とともにアドレス記憶制御部143に通知する。このとき、何れのセットトップボックス3からも応答を受け取らなかった場合は、視聴確認のみをアドレス記憶制御部143に通知する。
【0027】
ユニキャストフレーム生成部142は、WANインターフェース部11を介して最寄りのエッジルータ7から受信したマルチキャストフレームに基づいて、このマルチキャストフレームに格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストグループに属するセットトップボックス3と接続する無線LANアダプタ2毎に、無線LANアダプタ2を宛先とするユニキャストフレームを生成し、無線LANインターフェース部12から送信する。
【0028】
具体的には、図4に示すように、ユニキャストフレーム生成部142は、最寄りのエッジルータ7から受信したマルチキャストフレーム1421に格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストIPアドレス(マルチキャストグループ)1430をキーにして、マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131からレコード1310を検索する。そして、オリジナルのマルチキャストフレーム1421を含めた数が、検索したレコード1310のレコード数となるように、マルチキャストフレーム1421のコピーを生成して、各レコード1310にマルチキャストフレーム1421を一対一で割り当てる。次に、各マルチキャストフレーム1421の宛先MACアドレス(Wireless DA)を、マルチキャストIPアドレス1430から、このマルチキャストフレーム1421に割り当てられたレコード1310のフィールド1312に登録されている無線LANアダプタ2のMACアドレスに変換するとともに(S401)、送信元MACアドレス(SA)を、最寄りのエッジルータ7のMACアドレス1429から自ホームゲートウェイ1のMACアドレス1426に変換する(S402)。これにより、各マルチキャストフレーム1421を無線LANアダプタ2宛てのユニキャストフレーム1422に変換し、これらのユニキャストフレーム1422を無線LANインターフェース部12から送信する。
【0029】
アドレス記憶制御部143は、IPマルチキャスト制御部141から視聴要求を受け取った場合に、マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131にレコード1310を追加する。そして、追加したレコード1310のフィールド1311に、この視聴要求で指定されているマルチキャストグループを登録し、フィールド1312に、この視聴要求の送信元である無線LANアダプタ2のMACアドレスを登録する。
【0030】
また、アドレス記憶制御部143は、IPマルチキャスト制御部141から視聴確認を受け取った場合に、この視聴確認で指定されているマルチキャストグループをキーにして、マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131からレコード1310を検索する。そして、検索したレコード1310のうち、この視聴確認とともに受け取った応答の送信元である無線LANアダプタ2のMACアドレスがフィールド1312に登録されているレコード1310以外のレコード1310を、マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131から削除する。
【0031】
図5は、図2に示すホームゲートウェイ1の動作を説明するためのフロー図である。
【0032】
IPマルチキャスト制御部141は、無線LANインターフェース部12を介して、無線LANアダプタ2経由でセットトップボックス3から視聴要求(例えばALLOW_NEW_SOURCESのREPORTメッセージ)を受信した場合は(S101でYES)、この視聴要求をアドレス記憶制御部143に通知する。
【0033】
これを受けて、アドレス記憶制御部143は、マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131にレコード1310を追加する。そして、追加したレコード1310のフィールド1311に、この視聴要求で指定されているマルチキャストグループを登録し、フィールド1312に、この視聴要求の送信元である無線LANアダプタ2のMACアドレスを登録する(S102)。
【0034】
次に、IPマルチキャスト制御部141は、視聴要求で指定されているマルチキャストグループのマルチキャストパケットを受信中でないならば(S103でNO)、WANインターフェース部11を介して最寄りのエッジルータ7に、この視聴要求を転送する(S104)。
【0035】
また、IPマルチキャスト制御部141は、無線LANインターフェース部12を介して、無線LANアダプタ2経由でセットトップボックス3から視聴停止要求(例えばBLOCK_OLD_SOURCESのREPORTメッセージ)を受信した場合は(S105でYES)、この視聴停止要求で指定されているマルチキャストグループの視聴確認(例えばMULTICAST ADDRESS AND SOURCE SPECIFICのQUERYメッセージ)を、無線LANインターフェース部12からマルチキャストで送信する(S106)。そして、所定時間の経過によりタイムアウトするまで(S108でYESになるまで)に、無線LANアダプタ2経由でセットトップボックス3から受け取った視聴確認に対する応答(例えばMODE_IS_INCLUDEのREPORTメッセージ)を、この視聴確認とともにアドレス記憶制御部143に通知する(S107)。このとき、何れのセットトップボックス3からも応答を受け取らなかったならば、視聴確認のみをアドレス記憶制御部143に通知する。
【0036】
これを受けて、アドレス記憶制御部143は、この視聴確認で指定されているマルチキャストグループをキーにして、マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131からレコード1310を検索する。そして、検索したレコード1310のうち、この視聴確認とともに受け取った応答の送信元である無線LANアダプタ2のMACアドレスがフィールド1312に登録されているレコード1310以外のレコード1310を、マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131から削除する(S109)。
【0037】
次に、IPマルチキャスト制御部141は、所定時間の経過によりタイムアウトするまでに、何れのセットトップボックス3からも応答を受信しなかったならば(S110でYES)、WANインターフェース部11を介して最寄りのエッジルータ7に、この視聴停止要求を転送する(S111)。
【0038】
また、IPマルチキャスト制御部141は、WANインターフェース部11を介して最寄りのエッジルータ7からマルチキャストフレームを受信すると(S112でYES)、このマルチキャストフレームをユニキャストフレーム生成部142に渡す。
【0039】
これを受けて、ユニキャストフレーム生成部142は、マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131を参照し、このマルチキャストフレーム1421に格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストグループに対応付けられている無線LANアダプタ2のMACアドレス毎に、このマルチキャストパケットを格納した、無線LANアダプタ2を宛先とするユニキャストフレーム1422を生成する(S113)。そして、ユニキャストフレーム生成部142は、生成したユニキャストフレーム1422を、無線LANインターフェース部12から送信する(S114)。
【0040】
次に、無線LANアダプタ2について説明する。
【0041】
無線LANアダプタ2は、IPマルチキャストのマルチキャストパケットを格納したユニキャストフレームを、無線LAN5を介してホームゲートウェイ1から受信し、このユニキャストフレームをマルチキャストフレームに変換して自無線LANアダプタ2に接続されているセットトップボックス3に送信する。
【0042】
図6は、無線LANアダプタ2の概略構成図である。
【0043】
図示するように、無線LANアダプタ2は、STBインターフェース(STBIF)部21と、無線LANインターフェース(WLANIF)部22と、主制御部23と、を有する。
【0044】
STBインターフェース部21は、セットトップボックス3と接続するためのインターフェースである。
【0045】
無線LANインターフェース部22は、無線LAN5に接続するためのインターフェースである。
【0046】
主制御部23は、中継部231と、マルチキャストフレーム生成部232と、を有する。
【0047】
中継部231は、STBインターフェース部21および無線LANインターフェース部22間のフレーム中継を行う。また、無線LANインターフェース部22を介してホームゲートウェイ1から受信した自無線LANアダプタ2宛てのユニキャストフレームをマルチキャストフレーム生成部232に渡す。
【0048】
マルチキャストフレーム生成部232は、中継部231から受け取ったユニキャストフレーム1422の宛先アドレスを、自無線LANアダプタ2のMACアドレスから、このユニキャストフレーム1422に格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストグループに対応するマルチキャストMACアドレスに変換してマルチキャストフレームを生成し、このマルチキャストフレームをSTBインターフェース部21から送信する。
【0049】
具体的には、図4に示すように、マルチキャストフレーム生成部232は、ホームゲートウェイ1から受信したユニキャストフレーム1422に格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストIPアドレス1427に基づいてマルチキャストMACアドレス1428を生成する。そして、このユニキャストフレーム1422の宛先アドレス(DA)を、自無線LANアダプタ2のMACアドレス1425から、このマルチキャストMACアドレス1428に変換する(S403)。これにより、このユニキャストフレーム1422をマルチキャストフレーム1423に変換し、このマルチキャストフレーム1423をSTBインターフェース部21から送信する。
【0050】
図7は、マルチキャストIPアドレス1427からマルチキャストMACアドレス1428を生成する原理を説明するための図である。ここで、図7(A)はマルチキャストIPアドレス1427がIPv6の場合の説明図であり、図7(B)はマルチキャストIPアドレス1427がIPv4の場合の説明図である。
【0051】
マルチキャストIPアドレス1427がIPv6の場合、図7(A)に示すように、マルチキャストフレーム生成部232は、マルチキャストIPアドレス1427の下位32ビットに所定の上位15ビット2321を付加することにより、マルチキャストMACアドレス1428を生成する。一方、マルチキャストIPアドレス1427がIPv4の場合、図7(B)に示すように、マルチキャストフレーム生成部232は、マルチキャストIPアドレス1427の下位23ビットに所定の上位24ビット2322を付加することにより、マルチキャストMACアドレス1428を生成する。
【0052】
図8は、図6に示す無線LANアダプタ2の動作を説明するためのフロー図である。
【0053】
中継部231は、STBインターフェース部21を介してセットトップボックス3からフレームを受信した場合は(S201でYES)、無線LANインターフェース部22を介してホームゲートウェイ1に、このフレームを転送する(S202)。
【0054】
また、中継部231は、無線LANインターフェース部22を介してホームゲートウェイ1からフレームを受信した場合は(S203でYES)、このフレームが、自無線LANアダプタ2を宛先とするユニキャストフレーム1422でないならば(S204でNO)、STBインターフェース部21を介してセットトップボックス3に、このフレームを転送する(S207)。
【0055】
一方、このフレームが、自無線LANアダプタ2を宛先とするユニキャストフレーム1422であるならば(S204でYES)、中継部231は、このユニキャストフレーム1422をマルチキャストフレーム生成部232に渡す。これを受けて、マルチキャストフレーム生成部232は、このユニキャストフレーム1422の宛先アドレス(DA)を、自無線LANアダプタ2のMACアドレス1425から、このユニキャストフレーム1422に格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストグループに対応するマルチキャストMACアドレス1428に変換してマルチキャストフレーム1423を生成する(S205)。そして、マルチキャストフレーム生成部232は、STBインターフェース部21を介してセットトップボックス3に、この生成したマルチキャストフレーム1423を送信する(S206)。
【0056】
次に、本発明の一実施の形態が適用されたIPマルチキャスト配信システムの動作例を説明する。
【0057】
図9は、本発明の一実施の形態に係るIPマルチキャスト配信システムの動作例を説明するためのシーケンス図である。
【0058】
この例では、IPv6を前提とし、マルチキャストグループを認識するためのプロトコルとしてMLDを用いている。なお、IPv4の場合は、MLDの代わりにIGMPが用いられる。
【0059】
セットトップボックス3は、自セットトップボックス3に接続されているテレビジョン4の視聴者によりチャネルが選択されると(S301)、選択チャネルのマルチキャストグループに加入するために、選択チャネルのデータの送信元アドレスS1およびマルチキャストアドレスG1の指定を伴うALLOW_NEW_SOURCESのREPORTメッセージであるReport Allow(G1,S1)をホームゲートウェイ1に送信する(S302)。このReport Allow(G1,S1)は、無線LANアダプタ2経由でホームゲートウェイ1に届けられる(S303)。
【0060】
ホームゲートウェイ1は、無線LANアダプタ2からReport Allow(G1,S1)を受信すると、マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131にレコード1310を追加し、このレコード1310のフィールド1311に、Report Allow(G1,S1)で指定されているマルチキャストグループを、そしてフィールド1312に、Report Allow(G1,S1)を送信した無線LANアダプタ2のMACアドレスを登録する(S304)。
【0061】
また、ホームゲートウェイ1は、Report Allow(G1,S1)で指定されているマルチキャストグループのマルチキャストパケットを受信中か否かを判断する。ここでは受信中でないものとする。この場合、ホームゲートウェイ1は、Report Allow(G1,S1)を最寄りのエッジルータ7に転送する(S305)。
【0062】
これを受けて、エッジルータ7は、Report Allow(G1,S1)で指定されているマルチキャストグループのマルチキャストパケット(選択チャネルのIPマルチキャストデータ)を格納したマルチキャストフレーム1421の、ホームゲートウェイ1への送信を開始する(S306)。
【0063】
ホームゲートウェイ1は、エッジルータ7からマルチキャストフレーム1421を受信すると、マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131を参照し、このマルチキャストフレーム1421の宛先アドレス(DA)を、マルチキャストIPアドレス1430から、Report Allow(G1,S1)を送信した無線LANアダプタ2のMACアドレス1425に変換するとともに、このマルチキャストフレーム1421の送信元MACアドレス(SA)を、最寄りのエッジルータ7のMACアドレス1429から自ホームゲートウェイ1のMACアドレス1426に変換する。これにより、このマルチキャストフレーム1421を、Report Allow(G1,S1)を送信した無線LANアダプタ2を宛先とするユニキャストフレーム1422に変換する(S307)。そして、ホームゲートウェイ1は、このユニキャストフレーム1422を、この無線LANアダプタ2に送信する(S308)。
【0064】
無線LANアダプタ2は、自無線LANアダプタ2宛てのユニキャストフレーム1422を受信すると、このユニキャストフレーム1422の宛先アドレス(DA)を、自無線LANアダプタ2のMACアドレス1425から、このユニキャストフレームに格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストIPアドレス1427より生成されるマルチキャストMACアドレス1428に変換する。これにより、このユニキャストフレーム1422を、選択チャネルのマルチキャストグループ加入者宛のマルチキャストフレーム1423に変換する(S309)。そして、無線LANアダプタ2は、このマルチキャストフレーム1423をセットトップボックス3に送信する(S310)。
【0065】
さて、セットトップボックス3は、自セットトップボックス3に接続されているテレビジョン4の視聴者により視聴停止が選択されると(S311)、視聴中のチャネルのマルチキャストグループから脱退するために、視聴中のチャネルのデータの送信元アドレスS1およびマルチキャストアドレスG1の指定を伴うBLOCK_OLD_SOURCESのREPORTメッセージであるReport Block(G1,S1)をホームゲートウェイ1に送信する(S312)。このReport Block(G1,S1)は、無線LANアダプタ2経由でホームゲートウェイ1に届けられる(S313)。
【0066】
ホームゲートウェイ1は、無線LANアダプタ2からReport Block(G1,S1)を受信すると、このReport Block(G1,S1)で指定されているマルチキャストグループの加入者を確認するために、送信元アドレスS1およびマルチキャストアドレスG1の指定を伴うMULTICAST ADDRESS AND SOURCE SPECIFICのQUERYメッセージであるQuery(MASS,G1,S1)を無線LAN5に送信する(S314)。このQuery(MASS,G1,S1)は、無線LANアダプタ2経由でセットトップボックス3に届けられる(S315)。ここで、セットトップボックス3は、視聴中のマルチキャストグループから脱退するため、このQuery(MASS,G1,S1)に対する応答、すなわちデータの送信元アドレスS1およびマルチキャストアドレスG1の指定を伴うMODE_IS_INCLUDEのREPORTメッセージであるReport Include(G1,S1)を、ホームゲートウェイ1に返信しない。
【0067】
ホームゲートウェイ1は、Report Include(G1,S1)を受信することなく所定時間の経過によりタイムアウトすると(S316)、このQuery(MASS,G1,S1)で指定されているマルチキャストグループをキーにして、マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131からレコード1310を検索し、検索したレコード1310を削除する(S317)。また、ホームゲートウェイ1は、Report Block(G1,S1)を最寄りのエッジルータ7に転送する(S318)。
【0068】
以上、本発明の実施の形態について説明した。
【0069】
本実施の形態において、ホームゲートウェイ1は、最寄りのエッジルータ7から受信したマルチキャストフレーム1421の宛先アドレス(DA)を、マルチキャストIPアドレス1430から、このマルチキャストフレームに格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストグループに属するセットトップボックス3と接続する無線LANアダプタ2のMACアドレス1425に変更してユニキャストフレーム1422を生成し、このユニキャストフレーム1422を無線LAN5に送信する。そして、無線LANアダプタ2は、無線LAN5を介してホームゲートウェイ1から受信したユニキャストフレーム1422の宛先アドレス(DA)を、自無線LANアダプタ2のMACアドレス1425から、このユニキャストフレームに格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストグループに対応するマルチキャストMACアドレス1428に変更してマルチキャストフレーム1423を生成し、このマルチキャストフレーム1423を自無線LANアダプタ2に接続されているセットトップボックス3に送信する。
【0070】
したがって、本実施の形態によれば、無線LAN5の区間においてIPマルチキャストをユニキャストフレーム1422で配信することにより、ホームゲートウェイ1およびセットトップボックス3間を無線LAN5で接続する場合でも、無線LAN5の再送手順を利用することができる。このため、IPマルチキャストの品質低下を防止することが可能となる。
【0071】
また、本実施の形態において、ホームゲートウェイ1は、無線LANアダプタ2を介してセットトップボックス3からIPマルチキャストの視聴要求を受信した場合に、マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131に、この視聴要求で指定されているマルチキャストグループを、この無線LANアダプタ2のMACアドレスに対応付けて記憶する。また、最寄りのエッジルータ7から、IPマルチキャストのマルチキャストパケットを格納したマルチキャストフレーム1421を受信した場合に、このマルチキャストパケット1421のマルチキャストグループに対応付けられてマルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131に記憶されている無線LANアダプタ2のMACアドレス毎に、このマルチキャストフレーム1421の宛先アドレス(DA)を、マルチキャストIPアドレス1430から無線LANアダプタ2のMACアドレス1425に変更して、無線LANアダプタ2宛のユニキャストフレーム1422を生成する。
【0072】
したがって、本実施の形態によれば、IPマルチキャストの視聴要求に基づいて、このIPマルチキャストのマルチキャストグループと、このIPマルチキャストの送信先であるセットトップボックス3に接続された無線LANアダプタ2のMACアドレスとの対応関係がマルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131に自動登録されるので、IPマルチキャストのマルチキャストパケットを格納したユニキャストフレーム1422の送信先となる無線LANアダプタ2のMACアドレスを予め登録しておく必要がない。
【0073】
また、本実施の形態において、ホームゲートウェイ1は、無線LANアダプタ2を介してセットトップボックス3からIPマルチキャストの視聴停止要求を受信した場合に、この視聴停止要求で指定されているマルチキャストグループに対応付けられてマルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131に記憶されている無線LANアダプタ2のMACアドレスのうち、このマルチキャストグループの視聴確認に応答したセットトップボックス3に接続されている無線LANアダプタ2のMACアドレス以外のMACアドレスを、マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131から削除する。
【0074】
したがって、本実施の形態によれば、IPマルチキャストの視聴確認に対する応答に基づいて、このIPマルチキャストのマルチキャストグループと、このIPマルチキャストの配信が不要になったセットトップボックス3に接続された無線LANアダプタ2のMACアドレスとの対応関係がマルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル131から自動削除されるので、IPマルチキャストのマルチキャストパケットを格納したユニキャストフレーム1422の無駄な送信を防止できる。
【0075】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0076】
例えば、上記実施の形態において、無線LANアダプタ2を、セットトップボックス3と同じ筐体に収めて一体化しても構わない。
【0077】
また、上記実施の形態において、ホームゲートウェイ1、および無線LANアダプタ2の構成は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積ロジックICによりハード的に実行されるものでもよい。あるいは、DSP(Digital Signal Processor)によりソフト的に実行されるものでもよい。もしくは、CPU、メモリ、HDD、DVD−ROM等の補助記憶装置、およびNIC(Network Interface Card)を備えたPC(Personal Computer)等の汎用コンピュータにおいて、CPUが所定のプログラムを補助記憶装置からメモリ上にロードして実行することにより実現されるものでもよい。
【符号の説明】
【0078】
1:ホームゲートウェイ、2:無線LANアダプタ、3:セットトップボックス、4:テレビジョン、5:無線LAN、6:WAN、7:エッジルータ、11:WANインターフェース部、12:無線LANインターフェース部、13:記憶部、14:主制御部、21:STBインターフェース部、22:WLANインターフェース部、23:主制御部、131:マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブル、141:IPマルチキャスト制御部、142:ユニキャストフレーム生成部、143:アドレス記憶制御部、231:中継部、232:マルチキャストフレーム生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一台の受信端末にIPマルチキャストを配信するIPマルチキャスト配信システムであって、
IPマルチキャストネットワークに無線LANを接続するゲートウェイと、
前記無線LANを介して前記受信端末を接続する少なくとも一台の無線LANアダプタと、を有し、
前記ゲートウェイは、
前記IPマルチキャストネットワークから受信したマルチキャストフレームに格納されているマルチキャストパケットを受信する前記受信端末と接続する前記無線LANアダプタ毎に、当該マルチキャストフレームの宛先アドレスを、マルチキャストアドレスから当該無線LANアダプタのMACアドレスに変更して、当該無線LANアダプタ宛のユニキャストフレームを生成するユニキャストフレーム生成手段と、
前記ユニキャストフレーム生成手段により生成されたユニキャストフレームを前記無線LANに送信するユニキャストフレーム送信手段と、を有し、
前記無線LANアダプタは、
前記無線LANから受信したユニキャストフレームの宛先アドレスを、自無線LANアダプタのMACアドレスから、当該ユニキャストフレームに格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストグループに対応するマルチキャストMACアドレスに変更して、マルチキャストフレームを生成するマルチキャストフレーム生成手段と、
前記マルチキャストフレーム生成手段により生成されたマルチキャストフレームを、前記受信端末に送信するマルチキャストフレーム送信手段と、を有する
ことを特徴とするIPマルチキャスト配信システム。
【請求項2】
請求項1に記載のIPマルチキャスト配信システムであって、
前記ゲートウェイは、
前記無線LANアダプタを介して前記受信端末からIPマルチキャストの受信要求を受信した場合に、当該受信要求で指定されているマルチキャストグループを、当該無線LANアダプタのMACアドレスに対応付けてマルチキャスト−ユニキャスト変換テーブルに記憶するアドレス記憶制御手段をさらに有し、
前記ユニキャストフレーム生成手段は、
前記IPマルチキャストネットワークから受信したマルチキャストフレームに格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストグループに対応付けられて前記マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブルに記憶されている前記無線LANアダプタのMACアドレス毎に、当該マルチキャストフレームの宛先アドレスを、マルチキャストアドレスから当該無線LANアダプタのMACアドレスに変更して、当該無線LANアダプタ宛のユニキャストフレームを生成する
ことを特徴とするIPマルチキャスト配信システム。
【請求項3】
請求項2に記載のIPマルチキャスト配信システムであって、
前記アドレス記憶制御手段は、
前記無線LANアダプタを介して前記受信端末からIPマルチキャストの受信停止要求を受信した場合に、当該受信停止要求で指定されているマルチキャストグループに対応付けられて前記マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブルに記憶されている前記無線LANアダプタのMACアドレスのうち、当該マルチキャストグループの受信確認に応答した前記受信端末に接続する前記無線LANアダプタのMACアドレス以外のMACアドレスを、前記マルチキャスト−ユニキャスト変換テーブルから削除する
ことを特徴とするIPマルチキャスト配信システム。
【請求項4】
IPマルチキャストネットワークから受信したIPマルチキャストを無線LANによって中継し、少なくとも一台の受信端末に配信するIPマルチキャスト配信方法であって、 IPマルチキャストネットワークから受信したマルチキャストフレームの宛先アドレスを、マルチキャストアドレスから、マルチキャストフレームに格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストグループに属する受信端末を接続する無線LAN端末のMACアドレスに変更してユニキャストフレームを生成し、このユニキャストフレームを無線LANに送信し、 無線LANから受信したユニキャストフレームの宛先アドレスを、自無線LAN端末のMACアドレスからユニキャストフレームに格納されているマルチキャストパケットのマルチキャストグループに対応するマルチキャストMACアドレスに変更してマルチキャストフレームを生成し、マルチキャストフレームを受信端末に送信する
ことを特徴とするIPマルチキャスト配信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−10208(P2011−10208A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153937(P2009−153937)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(399041158)西日本電信電話株式会社 (215)
【Fターム(参考)】