説明

無線機

【課題】面積やコストの増加を抑え、差動信号を扱うことを可能としつつ、ダイバーシティ効果を実現する無線機を提供する。
【解決手段】無線機は、アンテナ11と、第1および第2インピーダンス変換回路22,23と、差動出力部31とを備える。前記アンテナ11は、第1端子12および第2端子13を有する。前記第1および第2インピーダンス変換回路22,23は、それぞれ制御可能な第1および第2インピーダンスを有し、一端が前記アンテナ11の前記第1および第2端子に接続される。前記差動出力部31は、前記第1および第2インピーダンス変換回路22,23の他端に接続され、前記第1および前記第2インピーダンス変換回路22,23を介して入力される前記アンテナ11の受信信号を差動信号に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、無線機に関し、たとえば差動平衡アンテナを備えた無線送受信器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つのアンテナがそれぞれ切替器に接続されており、切替器により2つのアンテナのいずれか一方の信号を受信器に入力することができる機能を備えたアンテナ装置が提案されている。
【0003】
このアンテナ装置では、アンテナを選択することにより放射パターンを変更することができ、ダイバーシティ効果を得ることができる。しかしながら、ダイバーシティ効果を得るために複数のアンテナ及び受信器が必要となり、実装面積の増加及び実装コストの増大が発生してしまう。
【0004】
また別の従来技術として、ループアンテナの両端を短絡して、放射パターンを変更するアンテナ装置が知られている。この場合は、1つのアンテナでパターンを変更することが可能となる。しかしながら、アンテナの各端子が短絡されるため、差動信号を扱う送受信器が接続された際に、信号の入出力が不可能となってしまう問題が発生する。なお、差動信号は、一般的に外来雑音や無線機に接続される配線等による性能劣化を大幅に低減できるため、高周波を扱う無線機にとって非常に有力な特性改善手段であるといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-303021号公報
【特許文献2】特開2008-294748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように従来においては、実装面積増加・コスト増大もしくは差動の送受信器が接続不可能となるという問題があった。
【0007】
この発明の一側面は、面積やコストの増加を抑え、差動信号を扱うことを可能としつつ、ダイバーシティ効果を実現する無線機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様としての無線機は、アンテナと、第1および第2インピーダンス変換回路と、差動出力部とを備える。
【0009】
前記アンテナは、第1端子および第2端子を有する。
【0010】
前記第1および第2インピーダンス変換回路は、それぞれ制御可能な第1および第2インピーダンスを有し、一端が前記アンテナの前記第1および第2端子に接続される。
【0011】
前記差動出力部は、前記第1および第2インピーダンス変換回路の他端に接続され、前記第1および前記第2インピーダンス変換回路を介して入力される前記アンテナの受信信号を差動信号に変換する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る無線機を示す。
【図2】無線機の第1の構成例を示す。
【図3】バランの他の構成例を示す。
【図4】放射パターンが変更される様子を示す。
【図5】無線機の第2の構成例を示す。
【図6】無線機の第3の構成例を示す。
【図7】無線機の第4の構成例を示す。
【図8】第2の実施形態に係る無線機を示す。
【図9】第2の実施形態に係る無線機の構成例を示す。
【図10】第3の実施形態に係る無線機を示す。
【図11】第3の実施形態に係る無線機の構成例を示す。
【図12】第4の実施形態に係る無線機を示す。
【図13】第5の実施形態に係る無線機を示す。
【図14】第5の実施形態に係る無線機の構成例を示す。
【図15】結合線路を用いたバランの構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態について説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1に、第1の実施形態に係る無線機の構成を示す。
【0015】
この無線機は、アンテナ11、インピーダンス変換回路21、差動出力部31を含む受信機として構成される。
【0016】
アンテナ11は、第1および第2端子として、2つの端子12、13を備える差動入出力アンテナである。このような2つの端子を備えたアンテナとしては、たとえばループアンテナ、ダイポールアンテナがある。これら2つの端子12、13では、差動信号が入出力される。アンテナは、受信動作時、空中から入射した電波信号を、アナログ信号として、これらの端子12,13から出力する。
【0017】
インピーダンス変換部21は、2つのインピーダンス変換回路(第1および第2のインピーダンス回路)22、23を含む。インピーダンス変換回路22,23の各一端は、それぞれ端子12、13に接続される。
【0018】
インピーダンス変換回路22,23は、それぞれ制御可能な第1および第2インピーダンスを有する。各インピーダンス変換回路は、たとえばローインピーダンスと、ハイインピーダンス(たとえば無限大)に切り換え可能である。これにより、アンテナの端子12,13に対するインピーダンスを異なる値とすることができ、端子12,13に対するインピーダンスの組み合わせにより、アンテナの放射パターンを変更することができ、したがって、アンテナダイバーシティ効果を得ることができる。
【0019】
インピーダンス変換回路22,23のインピーダンスが互いに等しいとき(両方ともローインピーダンスのとき)、アンテナ11の端子12,13からの信号が、等しい条件でインピーダンス回路22,23を通過するため、インピーダンス変換回路22、23の他端に相当する端子24,25から、差動信号(平衡信号)が出力される。
【0020】
一方、インピーダンス変換回路22,23のインピーダンスが互いに等しくないとき、端子24,25から、非平衡信号(単相信号)が出力される。たとえばインピーダンス変換回路22のインピーダンスがローで、インピーダンス変換回路23のインピーダンスが無限大のときは、端子24には、アンテナの端子12の出力信号が、端子24から出力され、端子25はグランドとなる。
【0021】
差動出力部31は、端子24,25から信号を受ける。
【0022】
差動出力部31は、インピーダンス変換回路22,23のインピーダンスがともに等しいとき(ローインピーダンスのとき)は、端子24,25から受けた信号(差動信号)を、出力端子32、33に与える。この際、差動出力部31は、差動信号の増幅または周波数変換などの処理を行ってから出力してもよい。出力端子32、33は、与えられた信号を、後段回路(図示せず)に出力する。
【0023】
一方、差動出力部31は、インピーダンス変換回路22,23のインピーダンスが等しくないときは、端子24、25から受けた信号(非平衡信号)を、差動信号に変換し、変換後の差動信号を、出力端子32、33に与える。この際、差動出力部31は、差動信号の増幅または周波数変換などの処理を行っても良い。
【0024】
このように差動出力部31への入力は、差動信号の場合と、非平衡信号の場合があり得るが、どちらが入力されても、差動出力部31の出力は、差動信号となる。
【0025】
以上の構成により、1つのアンテナで、ダイバーシティ機能を無線機に持たせることができるとともに、アンテナの受信信号を、差動信号として出力することができる。
【0026】
以下、図1の無線機の具体的な構成例を示す。
【0027】
図2に、無線機の第1の構成例を示す。
【0028】
差動入出力アンテナとして、ループアンテナ51が用いられている。
【0029】
インピーダンス変換部60は、第1インピーダンス変換回路61および第2インピーダンス変換回路71を含む。
【0030】
第1インピーダンス変換回路61は、1/4波長線路(λ/4線路)62と第1のスイッチ63を含む。1/4波長線路は、信号周波数に対して1/4波長の電気長と等価な伝送線路である。1/4波長線路62の入力が、アンテナ51の端子52に接続されている。1/4波長線路62の出力は、第1スイッチ63の一端に接続されている。第1スイッチ63の他端は、高周波接地点(グランド)に接続されている。
【0031】
第2インピーダンス変換回路71は、1/4波長線路(λ/4線路)72と第1のスイッチ73を含む。1/4波長線路は、信号周波数に対して1/4波長の電気長と等価な伝送線路である。1/4波長線路72の入力が、アンテナ51の端子53に接続されている。1/4波長線路72の出力は、第1スイッチ73の一端に接続されている。第1スイッチ73の他端は、高周波接地点(グランド)に接続されている。
【0032】
差動出力部81は、バラン(トランス)82と、差動増幅器83とを含む。バランは、結合コイルまたは結合線路を用いて構成できる。図示の例は、結合コイルを用いた例が示されている。バラン82は、入力側の2つの端子をもつコイル74と、出力側の2つの端子をもつコイル75とを含む。コイル74,75は互いに結合可能に配置される。入力側の2つの端子は、第1および第2スイッチ63,73の一端にそれぞれ接続される。入力側の2つの端子で受けた信号を、コイル結合を介して、出力側の2つの端子へ結合する。このときバラン82は、入力側の2つの端子で受けた信号が差動信号のときは、差動のまま、出力端子に結合する。非平衡信号(本例では単相信号)のときは、その信号を差動信号に変換して、出力端子に結合するように動作する。
【0033】
結合コイルを用いたバランの他の構成例として、図3のような構成を用いてもよい。バラン78が差動出力部84に配置されている。コイル76,77が互いに結合可能に配置され、コイル76の一方の端子、コイル77の一方の端子を、それぞれ入力側の端子として、スイッチ63、73の一端に接続している。また、コイル76の他方の端子、コイル77の他方の端子をそれぞれ出力側の端子として、増幅器83の差動入力端子に接続している。また結合線路を用いたバランの構成例としては、図15の構成を用いてもよい。差動出力部80において、結合線路80b、80cと、結合線路80dとが結合可能に配置されることにより、バラン80aが構成される。
【0034】
差増増幅器83は、バラン82で得られた信号(すなわち差動信号)を増幅して、出力端子32,33から出力する。
【0035】
図2の無線機の動作例を説明する。
【0036】
アンテナ51は、入射した信号を、インピーダンス変換部60のインピーダンス変換回路61、71に対し、2つの端子を介して出力する。出力される信号は、差動信号である。
【0037】
インピーダンス変換部60の第1および第2スイッチ63、73はいずれも解放状態となっているとする。このとき、入力された差動信号は、そのままバラン82を介して、差動増幅器83に伝送され、増幅されて出力される。
【0038】
一方、インピーダンス変換部60の第1および第2スイッチ63,73のいずれか一方を短絡状態にしたとする。このとき、アンテナ51から短絡状態となったスイッチ側を見込んだインピーダンスは、1/4波長線路が短絡された回路のインピーダンスとなるため、非常に高いインピーダンスとなる。このように、アンテナの2つの端子のいずれか一方の終端条件が他方の端子と異なる状態となることで、アンテナの放射パターンが変更することができ、アンテナダイバーシティ効果を得ることが可能となる。すなわち、2つのスイッチのいずれか一方をオンで他方をオフ、または両方ともオフにすることで、図4のように、放射パターンを変更できる。
【0039】
いずれか一方のスイッチがオンの際、インピーダンス変換部60から出力される信号は、インピーダンス回路61,71のうちのいずれか一方の出力が高周波接地点電位(グランド電位)である非平衡信号となる。
【0040】
差動出力部81のバラン82は、このような非平衡信号が入力されたとき、当該非平衡信号を、差動信号に変換する。したがって、差動入出力アンプ83には、両方のスイッチが解放状態の場合と同様に、差動信号が供給され、差動入出力アンプ83から、増幅された差動信号を得ることが可能となる。
【0041】
このように第1の構成例により、ひとつのアンテナ素子でダイバーシティ機能を持たせることができるとともに、差動信号を差動出力部より出力できる。
【0042】
図5に、無線機の第2の構成例を示す。
【0043】
図2に示した第1の構成例との違いは、差動出力部91にある。第1の構成例と同等部分には同一の符号を付して説明を省略し、以下では差動出力部91を中心に説明する。
【0044】
差動出力部91は、単相入出力アンプ92,93および電流源94からなる差動対増幅器により構成される。インピーダンス変換回路61,71の出力が、2つの単相入出力アンプ92、93の入力に接続されている。アンプ92,93の同相端子はそれぞれ同一の電流源94に接続されている。なお、この電流源94は、トランジスタ等の能動素子により構成されても良いし、抵抗やインダクタで構成されていても良い。
【0045】
第1および第2のスイッチ63、73がいずれも解放状態のとき、第1の構成例と同様、インピーダンス変換部60から差動信号が、差動出力部91に入力され、この差動信号は差動対型増幅器(92,93,94)により増幅されて、出力される。
【0046】
一方、第1および第2のスイッチ63,73のいずれか一方が短絡状態のとき、第1の構成例と同様に、インピーダンス変換部60では、2つのインピーダンス変換回路61、71の出力のうち、いずれか一方が高周波接地点電位である、非平衡信号となる。したがって、スイッチが解放状態のインピーダンス変換回路からは、大きな振幅の信号が出力され、短絡状態のインピーダンス変換回路からは、非常に小さい(たとえば実質的に振幅がゼロ)の信号が出力される。
【0047】
差動出力部91の差動対型増幅器(92,93,94)では、一方の単相増幅器の同相端子から、対となる単相増幅器に対して、電流信号が伝送される。したがって、振幅の大きい側の単相増幅器から、振幅の小さい側の単相増幅器に対し、同相端子より差分信号が供給されることとなり、同一の振幅を持った差動信号(増幅された差動信号)を、出力することができる。
【0048】
このように第2の構成例によっても、ひとつのアンテナ素子でダイバーシティ機能を得ることができるとともに、差動信号を差動出力部より出力できる。
【0049】
図6に、無線機の第3の構成例を示す。
【0050】
図2に示した第1および2の構成例との違いは、差動出力部101にある。第1および第2の構成例と同等部分には同一の符号を付して説明を省略し、以下では差動出力部101を中心に説明する。
【0051】
差動出力部101は、増幅器103,104と、平衡型周波数変換器102とにより構成される。
【0052】
インピーダンス変換回路61、71の出力が、単相入出力の増幅器103、104の入力にそれぞれ接続され、増幅器103,104の出力が、差動ローカル信号(差動LO信号)を用いる平衡型周波数変換器102の入力に接続されている。
【0053】
第1および第2のスイッチ63、73がいずれも解放状態のとき、インピーダンス変換部60から差動信号が、増幅器103,104に入力される。入力された差動信号は、増幅器103,104で増幅された後、平衡型周波数変換器102により周波数変換されて、出力される。
【0054】
一方、第1および第2のスイッチ63,73のいずれか一方が短絡状態のとき、第1の構成例と同様に、インピーダンス変換部60の出力は、2つのインピーダンス変換回路61、71の出力のうちのいずれか一方が、高周波接地点電位である非平衡信号となる。したがって、2つの単相アンプ103、104の出力も非平衡信号となるが、差動LO信号を用いた平衡型周波数変換器102により、周波数変換した差動信号を出力できる。
【0055】
このように第3の構成例によっても、ひとつのアンテナ素子でダイバーシティ機能を得ることができると同時に、差動信号を差動出力部より出力できる。
【0056】
図7に、無線機の第4の構成例を示す。
【0057】
第1の構成例と異なる点は、ループアンテナが、ダイポールアンテナ54に代わった点である。それ以外の点は、第1の構成例と同一であるため、説明を省略する。
【0058】
このように第4の構成例によっても、ひとつのアンテナ素子でダイバーシティ機能を得ることができるとともに、差動信号を差動出力部より出力できる。
【0059】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、無線機として、受信機の構成を示したが、本実施形態では送信機の構成を示す。
【0060】
図8は、第2の実施形態に係る無線機の構成を示す。
【0061】
この無線機は、アンテナ111、インピーダンス変換部121、差動入力部131を含む送信機である。
【0062】
アンテナ111は、2つの端子112、113を備える。アンテナ111は、送信動作時、2つの端子112,113で受けた送信アナログ信号を、電波信号として空中に放射する。
【0063】
インピーダンス変換部121は、2つのインピーダンス変換回路(第1および第2のインピーダンス回路)122、123を含む。インピーダンス変換回路122,123の出力は、それぞれアンテナ111の端子112、113に接続される。
【0064】
インピーダンス変換回路122,123は、それぞれ制御可能な第1および第2インピーダンスを有する。インピーダンス変換回路122,123の構成は、第1の実施形態と同様である。すなわち、各インピーダンス変換回路122,123は、たとえばローインピーダンスと、ハイインピーダンス(たとえば無限大)に切り換え可能であり、アンテナの端子112,113に対するインピーダンスを異なる値とすることができる。これにより、アンテナの放射パターンを変更することができ、したがって、アンテナダイバーシティ効果を得ることができる。
【0065】
差動入力部131は、送信信号として、端子124,125から差動信号の入力を受ける。差動入力部131は、インピーダンス変換回路122,123のインピーダンスの差異に応じた非平衡信号に、送信信号を変換する。両インピーダンスが互いに等しいときは、変換後の信号も差動信号となる。
【0066】
変換後の信号をインピーダンス変換回路122、123の入力に与える。具体的に、インピーダンス変換回路122,123のインピーダンスがともに等しいとき(ローインピーダンスのとき)は、入力された差動信号を、インピーダンス変換回路122,123の入力に与える。この際、差動入力部31は、差動信号の増幅または周波数変換などの処理を行ってから出力してもよい。インピーダンス変換回路122、123に入力された差動信号は、アンテナ111へ入力され、空間へ電波として放射される。
【0067】
一方、差動入力部131は、インピーダンス変換回路122,123のインピーダンスが等しくないときは、差動入力部131の出力のうちの一方は、ローインピーダンス、他方はハイインピーダンスとなるため、差動入力部131から非平衡信号が出力される。
【0068】
たとえばインピーダンス変換回路122がローインピーダンス、インピーダンス変換回路123がハイインピーダンスのときは、インピーダンス変換122を振幅の大きい信号が通過して、アンテナの端子112に入力され、小さい振幅(たとえば実質的にゼロ)の信号が、インピーダンス変換回路123を介して、アンテナの端子113に入力される。すなわち、アンテナ111の端子112、113に非平衡信号が入力される。入力された非平衡信号は、空間に電波として放射される。放射の方向は、インピーダンス変換回路122,123がともにローインピーダンスのときと異なる方向となる。これにより送信の場合も、入力信号を差動信号としつつも、1つのアンテナで、ダイバーシティ効果が得られる。
【0069】
なお、差動入力部131は、非平衡信号の出力の際、信号の増幅または周波数変換などの処理を行ってから出力してもよい。
【0070】
図9に、第2の実施形態に係る無線機の構成例を示す。
【0071】
図9の構成は、第1の実施形態における図2の構成例を、送信機用に改変したものに相当する。
【0072】
アンテナとして、ループアンテナ141が用いられている。ダイポールアンテナが用いられても良い。
【0073】
第1インピーダンス変換回路151は、1/4波長線路(λ/4線路)152と第1のスイッチ153を含む。1/4波長線路152は、信号周波数に対して1/4波長の電気長と等価な伝送線路である。1/4波長線路152の一端が、アンテナ141の端子142に接続されている。1/4波長線路152の他端は、第1スイッチ153の一端に接続されている。第1スイッチ153の他端は、高周波接地点(グランド)に接続されている。
【0074】
第2インピーダンス変換回路161は、1/4波長線路(λ/4線路)162と第2のスイッチ163を含む。1/4波長線路162は、信号周波数に対して1/4波長の電気長と等価な伝送線路である。1/4波長線路162の一端が、アンテナ141の端子143に接続されている。1/4波長線路162の他端は、第2スイッチ163の一端に接続されている。第2スイッチ163の他端は、高周波接地点(グランド)に接続されている。
【0075】
差動入力部171は、バラン(トランス)172と、差動増幅器173とを含む。バランは、結合コイルまたは結合線路を用いて構成できる。図示の例では、バラン172は、出力側の2つの端子をもつコイル175と、入力側の2つの端子をもつコイル174とを含む。コイル175,174は互いに結合可能に配置される。出力側の2つの端子は、第1および第2スイッチ153,163の一端にそれぞれ接続される。入力側の2つの端子は、差動増幅器173の出力に接続されている。差動増幅器173は、差動信号の入力を受け、増幅した差動信号を、バラン172の入力端子に入力する。なお、第1の実施形態と同様、バランの構成としては、図3の構成を用いてもよい。
【0076】
バラン172は、コイル174の端子で受けた差動信号を、コイル175に結合する。このときバラン172は、2つのスイッチいずれも解放のときは、入力端子で受けた差動信号をそのままコイル175に結合する。コイル175に結合された差動信号は、コイル175の出力端子から出力され、インピーダンス変換回路151、161を介して、アンテナ141から放射される。
【0077】
一方、いずれか一方のスイッチがオフのときは、バラン172に入力された差動信号は非平衡信号に変換される。つまり、ハイインピーダンスのインピーダンス変換回路につながる出力端子には、振幅の非常に小さい信号が入力され、ローインピーダンスのインピーダンス変換回路につながる出力端子には、振幅の大きな信号が入力される。この結果、アンテナ141の2つの端子142,143には、これらの2つのインピーダンス変換回路152,162を介して、非平衡信号が入力される。入力された非平衡信号は、空間へ電波として放射される。
【0078】
このように本構成により、入力(送信信号)を差動信号としつつも、ひとつのアンテナ素子で、ダイバーシティ機能を実現することができる。
【0079】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1および第2の実施形態を組み合わせたものである。
【0080】
図10に第3の実施形態に係る無線機(送受信機)の構成を示す。
【0081】
この無線機は、アンテナ181、インピーダンス変換部191、差動出力部201、および差動入力部211を備える。アンテナ181は端子182,183を含む。アンテナ181、差動出力部201、差動入力部211はこれまで述べてきた第1および第2の実施形態の同一名称の要素と同様であるため説明を省略する。
【0082】
インピーダンス変換部191は、第1インピーダンス変換回路192、第2インピーダンス変換回路193、第3インピーダンス変換回路194、第4インピーダンス変換回路195を含む。各回路は、それぞれのインピーダンス(第1〜第4インピーダンス)を制御可能である。
【0083】
第1インピーダンス変換回路192は、アンテナ181の端子182と、差動出力部201の入力端子202との間に配置される。第2インピーダンス変換回路193は、アンテナ181の端子183と、差動出力部201の入力端子203との間に配置される。
【0084】
第3インピーダンス変換回路194は、アンテナ181の端子182と、差動入力部211の出力端子204との間に配置される。第4インピーダンス変換回路195は、アンテナ181の端子183と、差動入力部211の出力端子205との間に配置される。
【0085】
受信動作時は、第3および第4のインピーダンス変換回路194,195は常にハイインピーダンスに設定され、これによりアンテナ181の受信信号が、差動入力部211に入力されることは阻止される。一方、第1および第2のインピーダンス変換回路192,193は両方ともローインピーダンス、あるいはいずれか一方をハイインピーダンスに設定することで、ダイバーシティが行われ、差動出力部201には差動信号、あるいは非平衡信号が入力される。
【0086】
送信動作時は、第1および第2のインピーダンス変換回路192,193はハイインピーダンスに設定され、これにより送信信号が差動出力部201へ入力されるのを阻止する。一方、第3および第4のインピーダンス変換回路194,195は両方ともローインピーダンス、あるいはいずれか一方をハイインピーダンスに設定することで、ダイバーシティが行われ、アンテナ181の端子182、183には、差動信号、あるいは非平衡信号が入力される。
【0087】
このように本構成により、受信時に1つのアンテナ素子でダイバーシティ機能を得ることができるとともに、差動信号を差動出力部より出力できる。また送信時に、入力(送信信号)を差動信号としつつも、ひとつのアンテナ素子で、ダイバーシティ機能を実現することができる。
【0088】
図11に、第3の実施形態に係る無線機の構成例を示す。
【0089】
この構成は、基本的に第1の実施形態の図2の構成と、第2の実施形態の図11の構成との組み合わせに基づくが、インピーダンス変換部231の構成が、これまで述べた構成(1/4波長線路、スイッチおよび高周波接地点)と大きく異なる。
【0090】
アンテナ211はループアンテナである。差動出力部232は、図2の差動出力部81と同等である。差動入力部234は、図9の差動入力部171と同等である。したがって、これらの説明は省略する。
【0091】
インピーダンス変換部231は、第1〜第4のインピーダンス変換回路232、233、234、235を含む。
【0092】
各インピーダンス変換回路は、それぞれスイッチにより構成される。スイッチの短絡および解放により、アンテナと差動出力部232/差動入力部234と間の接続および切断、すなわち、ローインピーダンスおよびハイインピーダンスの設定を行う。すなわち各インピーダンス変換回路232〜235は、短絡のときローインピーダンスになり、解放のときハイインピーダンスになる。
【0093】
このように本構成により、受信時に1つのアンテナ素子でダイバーシティ機能を得ることができるとともに、差動信号を差動出力部より出力できる。また送信時に、入力(送信信号)を差動信号としつつも、ひとつのアンテナ素子で、ダイバーシティ機能を実現することができる。
【0094】
(第4の実施形態)
図12に第4の実施形態に係る無線機(送受信機)の構成を示す。
【0095】
この無線機は、アンテナ251、インピーダンス変換部261、差動出力部271、および差動入力部271を備える。インピーダンス変換部261は、インピーダンス変換回路262、263を含む。
【0096】
アンテナ251、インピーダンス変換部261、差動出力部271、差動入力部273はこれまで述べてきた第1および第2の実施形態と基本的に同様である。異なる点は、受信動作時、差動出力部271の電源はオンにされるものの、差動入力部273が電源オフにされ、送信時は逆に、差動出力部271の電源はオフにされ、差動入力部273の電源はオンにされる。
【0097】
したがって、受信動作時は、アンテナ251の受信信号(差動信号)は、インピーダンス変換部261を介して、差動出力部271に、差動信号のままあるいは非平衡信号として与えられる。送信動作時は、送信信号(差動信号)は、差動入力部273およびインピーダンス変換部261を介して、アンテナ251に、差動信号のままあるいは非平衡信号として与えられる。
【0098】
インピーダンス変換回路262、263の具体的な構成例としては図8の構成(1/4波長線路、スイッチ、高周波短絡点)を用いてもよいし、図11のようにスイッチのみにより構成してもよい。
【0099】
このように本構成により、1つのアンテナ素子でダイバーシティ機能を持たせることができるとともに、差動信号を差動出力部より出力できる。また入力(送信信号)を差動信号としつつも、ひとつのアンテナ素子で、ダイバーシティ機能を実現することができる。
【0100】
(第5の実施形態)
これまで述べた実施形態では、インピーダンス変換回路のインピーダンスをローインピーダンスとハイインピーダンスの2通りに制御したが、3段階以上のインピーダンスに制御して、ダイバーシティ機能を高めることも可能である。
【0101】
図13に、3段階以上のインピーダンスに制御可能なインピーダンス変換回路を有する無線機の構成例を示す。
【0102】
インピーダンス変換部65は、インピーダンス変換回路67,77を含む。アンテナ51および差動出力部81は、第1の実施形態における図2と同様であるため、説明を省略する。
【0103】
インピーダンス変換回路67は、図2のインピーダンス変換回路61のスイッチ63を、可変インピーダンス素子(図示の例では可変抵抗)64に置き換えたものである。同様に、インピーダンス変換回路77は、図2のインピーダンス変換回路62のスイッチ73を、可変インピーダンス素子(図示の例では可変抵抗)74に置き換えたものである。
【0104】
このように可変インピーダンス素子を用いることで、より粒度の高いインピーダンス制御が可能となり、したがってダイバーシティ効果を高めることができる。
【0105】
可変インピーダンス素子64、74の具体的な構成は、MOSFETまたは可変容量など、任意の構成を用いることができる。
【0106】
図14に、MOSFETを用いた場合の構成例を示す。
【0107】
インピーダンス変換部66は、インピーダンス変換回路69,79を含む。インピーダンス変換回路69は、可変インピーダンス素子として、MOSFET68を用いている。インピーダンス変換回路79は、可変インピーダンス素子として、MOSFET78を用いている。MOSFETは、制御電圧に応じた抵抗がMOSFETの両端(ドレイン・ソース)間に発生することを利用し、この制御電圧を0(GND)から1(電源)に段階的に切り換えることにより、多様なインピーダンスを設定できる。
【0108】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子および第2端子を有するアンテナと、
それぞれ制御可能な第1および第2インピーダンスを有し、一端が前記アンテナの前記第1および第2端子に接続された、第1および第2インピーダンス変換回路と、
前記第1および第2インピーダンス変換回路の他端に接続され、前記第1および前記第2インピーダンス変換回路を介して入力される前記アンテナの受信信号を差動信号に変換する差動出力部と、
を備えた無線機。
【請求項2】
送信信号である差動信号を受ける第1および第2入力端子と、
前記第1および第2インピーダンス変換回路の他端に接続され、前記差動信号を、前記第1および第2インピーダンスの差異に応じた非平衡信号に変換する差動入力部と、をさらに備え、
前記アンテナは、前記第1および第2インピーダンス変換回路を介して受ける前記非平衡信号を送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線機。
【請求項3】
第1端子および第2端子を有するアンテナと、
それぞれ制御可能な第1および第2インピーダンスを有し、一端が前記アンテナの前記第1および第2端子に接続された、第1および第2インピーダンス変換回路と、
送信信号である差動信号を受ける第1および第2入力端子と、
前記第1および第2インピーダンス変換回路の他端に接続され、前記差動信号を、前記第1および第2インピーダンスの差異に応じた非平衡信号に変換する差動入力部と、を備え、
前記アンテナは、前記差動入力部から前記第1および第2インピーダンス変換回路を介して受ける前記非平衡信号を送信する
無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−195779(P2012−195779A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58342(P2011−58342)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省「電波資源拡大のための研究開発」のうち「超高速近距離無線伝送技術等の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】