説明

無線端末および移動速度検知方法

【課題】 ユーザの高速移動を迅速かつ確実に認識することで、ユーザの手を煩わすことなく、ドライブモードやマナーモードを自動的に設定および解除し、モード切替の失念による着信の弊害を回避することを目的とする。
【解決手段】
本発明の無線端末140は、通信可能範囲における基地局130に固有の識別子を取得する無線通信部218と、識別子の取得対象に変化があった場合、変化後に取得した識別子を記憶する識別子記憶部230と、過去所定時間内に記憶された異なる識別子の個数を所定の高速閾値と比較し、所定の高速閾値以上となった場合、当該無線端末が高速移動中であることを検知する高速移動検知部232と、を備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の無線端末にかかり、さらに詳細には、それを携帯するユーザの移動状況を特定可能な無線端末および移動速度検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やPHS(Personal Handy phone System)等に代表される無線端末が普及し、場所や時間を問わず通話や情報入手が可能となった。また、その小型化、軽量化により、ユーザが常に無線端末を携帯するようになり、所在不明な相手であっても連絡がとれる可能性が高くなった。
【0003】
このような無線通信システムの下では、ユーザは、自己が所有する無線端末の電源を入れておくだけで、どのような状況下においても必要な着信を受け付けることができる。しかし、このことは、無線端末を利用すべきでない状況、例えば、自動車の運転中といった場合においてまで利用を促す結果を招く。かかる状況における利用を避けるため、無線端末には、運転中により利用困難であることを発信者に伝達する、所謂「ドライブモード(公共モード)」機能が設けられている。
【0004】
また、車載アダプタへの接続や、自己の無線端末に入力される信号強度または信号品質の変化に基づいて、無線端末が高速移動中であるか低速移動中であるかを判定し、自動的にマナーモードを設定する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
さらに、自己の無線端末に対する通信路切替手段による無線通信路の切替頻度、即ちハンドオーバの発生頻度に応じて移動状態を検出し、自動的にマナーモードを設定する技術も開示されている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−157268号公報
【特許文献2】特開2002−369250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、自己の無線端末に入力される信号強度や信号品質の変化に基づいて移動状態を判定する技術では、ユーザの移動に起因しない、例えば、自己と基地局との間を自動車が遮ることによる信号強度の変化等でも高速移動中と判断することになる。また、頻繁にハンドオーバが繰り返される状態において、信号強度の変化のみを用い、移動速度を判定するのは不可能である。
【0007】
また、ハンドオーバの発生頻度に応じて移動状態を検出する技術は、単にハンドオーバの回数を計数しているに過ぎず、例えば、電波状況の悪い環境下や基地局の電波到達領域の境界付近における無線端末の利用では、ユーザが静止または低速移動中であっても頻繁にハンドオーバが生じ、高速移動中という判断の下、意図せずマナーモードに移行してしまうといった問題が生じる。
【0008】
本発明は、従来におけるユーザの移動速度の検出方法が有する上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ユーザの高速移動を迅速かつ確実に認識することで、ユーザの手を煩わすことなく、ドライブモードやマナーモードを自動的に設定および解除し、モード切替の失念による着信の弊害を回避可能な、新規かつ改良された無線端末および移動速度検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、通信可能範囲における基地局に固有の識別子を取得する無線通信部と、識別子の取得対象に変化があった場合、変化後に取得した識別子を記憶する識別子記憶部と、過去所定時間内に記憶された異なる識別子の個数を所定の高速閾値と比較し、所定の高速閾値以上となった場合、当該無線端末が高速移動中であることを検知する高速移動検知部と、を備えることを特徴とする、無線端末が提供される。ここで識別子の取得対象の変化は、識別子の取得対象となる基地局の変更、追加、喪失を含む概念である。
【0010】
識別子の取得対象の変化を単に計数すると、例えば、電波状況の悪い環境下や基地局の電波到達領域の境界付近において、頻繁に取得対象の切り替えが生じ、ユーザが高速移動中であると誤認する虞がある。これは、等しい組合せの基地局間で繰り返し切り替えが生じるからである。本発明では、識別子の取得対象が変化していること、および、その変化が等しい組合せの基地局間で行われているものではないことを、過去所定時間内に記憶された異なる識別子の個数(単位時間当たりの基地局発生率)と所定の高速閾値とを比較することで判断する。こうして、ユーザの高速移動を迅速かつ確実に認識することが可能となる。
【0011】
このように、高速移動中を検出することで、無線端末の動作アプリケーション(例えば、待ち受け画面や再生音楽)を自動的に変化させたり、子供や老人の移動経路を、無線端末を介して監視する監視システムにおいて移動速度を監視者が把握するのに利用したりすることができる。
【0012】
また、上記識別子の取得対象の具体例として、(1)通信可能範囲における全ての基地局、(2)着信待ち受けのためのページングチャネルの送信元基地局、(3)無線通信を確立している基地局、のいずれかにおける異なる基地局の発生率をもって高速移動中を判断することができる。
【0013】
従って、無線通信部は、通信可能範囲における全ての基地局の識別子を取得し、識別子記憶部は、変化後の全ての識別子を記憶してもよいし、無線通信部は、着信待ち受けのためのページングチャネルを受信し、その送信元基地局の識別子を取得し、識別子記憶部は、ページングチャネルの送信元基地局が切り替わった場合に、切替後の基地局の識別子を記憶してもよいし、無線通信部は、無線通信を確立している基地局の識別子を取得し、識別子記憶部は、ハンドオーバが生じた場合に、ハンドオーバ後の基地局の識別子を記憶してもよい。
【0014】
高速移動検知部が高速移動中であることを検知すると、当該無線端末をドライブモードまたはマナーモードに設定し、高速移動中が検知されていないときモードを解除するモード設定部をさらに備えてもよい。
【0015】
かかるユーザの高速移動を無線端末自体で迅速かつ確実に認識する構成により、ユーザの手を煩わすことなく、ドライブモードやマナーモードを自動的に設定および解除することができる。従って、モード切替を失念し、高速移動中に通常着信が遂行されるといった着信の弊害を回避することが可能となる。
【0016】
高速移動検知部は、所定の高速閾値より小さい所定の低速閾値以下となるまで高速移動中の検知状態を解除しないとしてもよい。
【0017】
かかる高速移動中の解除にヒステリシス特性を設けることで、停止または低速移動しているが高速移動中と判断する必要がある場合、例えば、自動車で移動中に信号停止しただけに過ぎない場合において、安易に高速移動が解除されてしまうといった問題を回避することができる。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明のさらに他の観点によれば、通信可能範囲における基地局に固有の識別子を取得し、識別子の取得対象に変化があった場合、変化後に取得した識別子を記憶し、過去所定時間内に記憶された異なる識別子の個数を所定の高速閾値と比較し、所定の高速閾値以上となった場合、当該無線端末が高速移動中であることを検知することを特徴とする、移動速度検知方法が提供される。
【0019】
上述した無線端末における技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該移動速度検知方法にも適用可能である。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明の無線端末は、ユーザの高速移動を迅速かつ確実に認識することで、ユーザの手を煩わすことなく、ドライブモードやマナーモードを自動的に設定および解除する。従って、モード切替の失念による着信の弊害を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
携帯電話やPHS等に代表される無線端末では、他の端末と無線通信システムを利用して通信を行うことができる。特に携帯電話やPHS等では、基地局との無線通信が構築される。
【0023】
(無線通信システム100)
図1は、無線通信システム100を説明するためのシステムブロック図である。かかる無線通信システム100は、中継サーバ110と、インターネットや専用回線等の通信網120と、基地局130と、ユーザが所有する無線端末140とを含んで構成される。
【0024】
上記無線通信システム100では、無線端末140を利用して他の無線端末150に電話しようと試みた場合、ユーザ152は、自己の無線端末140を操作して、無線通信可能領域にある基地局130と無線通信を確立し、通信網120、中継サーバ110、および、他の無線端末150の無線通信可能領域にある基地局130を介して、通信相手154の有する他の無線端末150と音声通話を遂行する。ユーザは、無線端末140を、中継サーバ110を介して通信網120に接続し、インターネット等から様々なサービスを受けることもできる。
【0025】
また、ユーザ152自体が移動したことにより、今まで接続していた基地局130との通信状態が悪化した場合、電波状況の良い新たな基地局との通信を確立して、無線通信対象となる基地局を移行する。このような移行動作をハンドオーバという。
【0026】
上記無線通信システム100の下では、何れの場所においても通信可能範囲にある基地局130との無線通信が可能なので、ユーザ152は、自己が所有する無線端末140の電源を入れておくだけで、どのような状況下においても必要な着信を受け付けることができる。また、自動車の運転中といった無線端末140を利用すべきでない状況においては、運転中により利用困難であることを発信者に伝達する、所謂「ドライブモード(公共モード)」機能が設けられている。
【0027】
ユーザ152は、かかるドライブモードを手動または自動で設定することができる。ここで、ドライブモードの自動設定は、自動車等で高速に移動したことによる、無線通信対象の基地局130の切り替わり(ハンドオーバする)頻度に応じてなされてもよい。
【0028】
しかし、ハンドオーバの数を単に計数すると、例えば、電波状況の悪い環境下や基地局の電波到達領域の境界付近において、頻繁にハンドオーバが生じ、ユーザ152が高速移動中であると誤認する虞がある。これは、等しい組合せの基地局130間で繰り返しハンドオーバが生じるからである。
【0029】
本実施形態では、無線通信対象の基地局130が変化していること、および、その変化が等しい組合せの基地局130間で行われているものではないことを、過去所定時間内に記憶された異なる識別子の個数(単位時間当たりの基地局発生率)と所定の高速閾値とを比較することで判断する。こうして、ユーザの高速移動を迅速かつ確実に認識することが可能となる。
【0030】
以下、無線通信システム100における無線端末140の構成と、それを利用した移動速度検知方法とを詳述する。
【0031】
(無線端末140)
図2は、無線端末140の概略的な機能を示した機能ブロック図である。かかる無線端末140は、端末制御部210と、メモリ212と、表示部214と、操作部216と、無線通信部218とを含んで構成される。
【0032】
上記端末制御部210は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により無線端末140全体を管理および制御する。端末制御部210は、メモリ212のプログラムを用いて、無線端末140を利用した通話機能やメール配信機能を遂行する。また、後述する識別子記憶部230、高速移動検知部232、モード設定部234としても機能する。
【0033】
上記メモリ212は、ROM、RAM、EPROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、端末制御部210で処理されるプログラム等を記憶する。
【0034】
上記表示部214は、カラーまたは単色のディスプレイで構成され、メモリ212に記憶された、または通信網を介してアプリケーションサーバ(図示せず)から提供される、WebブラウザやアプリケーションのGUI(Graphical User Interface)を表示することができる。
【0035】
上記操作部216は、キーボード、十字キー、ジョイスティック等のスイッチから構成され、ユーザの操作入力を受け付ける。
【0036】
上記無線通信部218は、無線通信システム100における基地局130と無線通信を行う。かかる無線通信としては、基地局130内でフレームを時分割した複数のタイムスロットをそれぞれ無線端末140のチャネルに割り当てて通信を行う時分割多重方式等がある。また、無線通信部218は、通信可能範囲における基地局130と通信信号のやりとりを行い、その通信信号に含まれる基地局130固有の識別子(ID)を取得する。
【0037】
上記識別子記憶部230は、識別子の取得対象に変化があった場合、即ち、対象となる基地局130の変更、追加、喪失があった場合、変化後に取得した識別子をメモリ212記憶する。
【0038】
上記高速移動検知部232は、過去所定時間内に記憶された異なる識別子の個数(以下、単に基地局発生数という。)を所定の高速閾値と比較し、所定の高速閾値以上となった場合、当該無線端末140が高速移動中であることを検知する。かかる比較処理は後ほど詳述する。
【0039】
このように、無線端末140の高速移動中を検出することで、無線端末140の動作アプリケーション(例えば、待ち受け画面や再生音楽)を自動的に変化させたり、子供や老人の移動経路を、無線端末140を介して監視する監視システムにおいて移動速度を監視者が把握するのに利用したりすることができる。
【0040】
また、高速移動検知部232は、一旦、基地局発生数が所定の閾値以上になり、高速移動中であることを検知すると、単純に所定の高速閾値以下で高速移動中を解除せず、所定の高速閾値より小さい所定の低速閾値以下となってはじめて高速移動中の検知状態を解除する。
【0041】
このように高速移動中の解除にヒステリシス特性を設けることで、停止または低速移動しているが高速移動中と判断する必要がある場合、例えば、自動車で移動中に信号停止しただけに過ぎない場合において、安易に高速移動が解除されてしまうといった問題を回避することができる。
【0042】
上記モード設定部234は、高速移動検知部232が高速移動中であることを検知すると、当該無線端末140を、自動車運転中を示す「ドライブモード」、または着呼音、メール着信音を抑制する「マナーモード」に設定し、高速移動中が検知されていないときモードを解除する。かかる各モードは、ユーザが手動で行うこともできるし、本実施形態によって自動的に行うこともできる。また、ユーザの移動手段が、移動速度によって自動車であるか電車等他の公共的な乗り物であるか把握できる場合、例えば、所定速度が一定時間続いているので電車であると把握できる場合、マナーモードと特定して設定するとしてもよい。
【0043】
かかるユーザの高速移動を無線端末140自体で迅速かつ確実に認識する構成により、ユーザの手を煩わすことなく、ドライブモードやマナーモードを自動的に設定および解除することができる。従って、モード切替を失念し、高速移動中に通常着信が遂行されるといった着信の弊害を回避することが可能となる。
【0044】
また、上記識別子の取得対象の具体例として、(1)通信可能範囲における全ての基地局、(2)着信待ち受けのためのページングチャネルの送信元基地局、(3)無線通信を確立している基地局、を挙げ、その発生率をもって高速移動中を判断することができる。ここでは、代表的な3つの状況を想定しているが、かかる場合に限らず、互いに距離が離隔して配される基地局130のうち、自己の無線端末140に近い基地局130を把握できる信号であれば、例えば、基地局からの制御信号等様々な信号を適用することができる。
【0045】
ここで、(1)通信可能範囲における全ての基地局130が取得対象の場合、無線通信部218は、通信可能範囲における全ての基地局130の識別子を取得し、識別子記憶部230は、変化後の全ての識別子を記憶する。
【0046】
(2)着信待ち受けのためのページングチャネルの送信元基地局130が取得対象の場合、無線通信部218は、着信待ち受けのためのページングチャネルを受信し、その送信元基地局130の識別子を取得し、識別子記憶部230は、ページングチャネルの送信元基地局130が切り替わった場合に、切替後の基地局130の識別子を記憶する。ここで、待ち受けとは、通信相手154からの着信を受けるため、基地局130からページングチャネルを用いて間欠的に制御信号を受け付けることである。
【0047】
(3)無線通信を確立している基地局が取得対象の場合、無線通信部218は、無線通信を確立している基地局130の識別子を取得し、識別子記憶部230は、ハンドオーバが生じた場合に、ハンドオーバ後の基地局130の識別子を記憶する。
【0048】
以下、上記3つの取得対象のうち、(3)ハンドオーバの場合を例に挙げて説明する。ここでは、理解を容易にするために代表的な例を示すが、かかる説明が(1)通信可能基地局や(2)待ち受け基地局に適用可能なことは言うまでもない。
【0049】
図3は、高速移動検知部232による基地局発生数の導出と高速閾値との比較を説明するための説明図である。ここでは、ユーザ152が自動車250を運転して走行する場合を示している。
【0050】
図3(a)に示すように、自動車250が、基地局130A、130B、130C、130Dの間を走行した場合、無線端末140は、無線端末140との電波強度が強い基地局、即ち直線距離が短い基地局と順次通信を確立し、基地局130A→基地局130B→基地局130C→基地局130Dの順にハンドオーバする。
【0051】
ここで、識別子記憶部230は、ハンドオーバした時点でのハンドオーバ後の基地局130の識別子とそのハンドオーバ時刻とを関連付けてメモリ212に記憶する。従って、メモリ212内には、図3(b)の如く、基地局リスト260が生成される。
【0052】
高速移動検知部232は、まず、過去所定時間、ここでは、現在(12:00:10)から10秒以内(12:00:00〜12:00:10)に記憶された異なる識別子(130A、130B、130C、130D)の個数(基地局発生数)を計数する。ここで、基地局発生数は、「4」である。また、高速移動検知部232は、予め設定された所定の高速閾値、ここでは「3」と、計数した基地局発生数「4」とを比較し、所定の高速閾値以上となっているので、当該無線端末140が高速移動中であることを検知する。ここでは、理解を容易にするため、基地局130の識別子として130A、130B、130C、130Dを用いているが、アルファベット、数値等により様々な組合せの識別子を構成できることは言うまでもない。また、上述の説明に用いた所定時間や高速閾値は、単なる例示に過ぎず、当然他の値を採用することができる。
【0053】
図4は、高速移動検知部232による基地局発生数の他の導出方法を説明するための説明図である。図4によると、時刻11:59:54の時点で高速移動検知部232は、基地局130Yを検知し、基地局リスト270に追加する。それと同時に基地局130Y用のタイマカウンタ272が所定時間(ここでは、10秒)のカウントを開始する。
【0054】
続いて、時刻11:59:57の時点で高速移動検知部232は、基地局130Y同様に、基地局130Zを検知、基地局リスト270に追加し、基地局130Z用のタイマカウンタ274のカウントを開始する。以後も同様にして基地局130の識別子の追加およびカウントを繰り返す。但し、等しい基地局130の識別子があった場合、その基地局130に関するカウントをリセットして開始し、識別子の追加は行わない。
【0055】
また、タイムカウンタ272が10秒のカウントを完了276すると、今度は、基地局リスト270から当該基地局130Yの識別子を削除する。以後も同様にしてカウント完了した基地局130の識別子が削除される。
【0056】
かかる構成により識別子リスト270には、過去10秒以内に更新された基地局の識別子のみが残り、かかる識別子の数を計数するだけで、基地局発生数を把握できる。例えば、図4の例では、時刻12:00:00から基地局発生数が所定の高速閾値である「3」以上となり、時刻12:00:00から高速移動中と検知される。
【0057】
高速移動検知部232による基地局発生数の導出方法は、上述した方法に限られず、例えば、無線通信を確立している基地局130を定期的に取得および記憶し、基地局発生数を導出する等、様々な方法が適用できる。
【0058】
図5は、静止または低速移動の場合における高速移動検知部232の処理を示した説明図である。ここでは、ユーザ152が低速で歩行している場合を示している。
【0059】
図5(a)に示すように、ユーザ152が、基地局130A、130B、130C、130Dの間を歩行した場合、図3同様、無線端末140は、無線端末140との電波強度が強い基地局、即ち直線距離が短い基地局と順次通信を確立し、基地局130A→基地局130B→基地局130C→基地局130Dの順にハンドオーバする。識別子記憶部230は、メモリ212内に図5(b)の如く、基地局リスト260を生成する。
【0060】
高速移動検知部232は、まず、過去所定時間、ここでは、現在(12:06:00)から10秒以内(12:05:50〜12:06:00)に記憶された異なる識別子(130D)の個数(基地局発生数)を計数する。ここで基地局発生数は、「1」となる。高速移動検知部232は、予め設定された所定の高速閾値、ここでは「3」と、計数した基地局発生数「1」とを比較し、所定の高速閾値に達していないので、無線端末140は高速移動中ではないことを検知する。
【0061】
図6は、電波状況の悪い環境下や基地局130の電波到達領域の境界付近における高速移動検知部232の処理を示した説明図である。ここでは、ユーザ152は基地局130A、130Bの間で静止しているとする。
【0062】
図6(a)に示すように、ユーザ152が、基地局130A、130Bの間にいる場合、ハンドオーバが煩雑に実行される場合がある。例えば、図6(a)に示すように、互いの電波到達領域の境界付近で静止するといった場合である。
【0063】
ここで、識別子記憶部230は、メモリ212内に、図6(b)の如く、基地局リスト260を生成する。高速移動検知部232は、まず、過去所定時間、現在(12:00:10)から10秒以内(12:00:00〜12:00:10)に記憶された異なる識別子(130A、130B、)の個数(基地局発生数)を計数する。ここでは、「2」となる。また、高速移動検知部232は、予め設定された所定の高速閾値「3」と、計数した基地局発生数「2」とを比較し、所定の高速閾値に到達していないので、無線端末140は高速移動中ではないことを検知する。
【0064】
図7は、高速移動検知部232による基地局発生数の他の導出方法を説明するための説明図である。図7によると、時刻11:59:54の時点で高速移動検知部232は、基地局130Cを検知し、基地局リスト270に追加する。それと同時に基地局130C用のタイマカウンタ280が所定時間(ここでは、10秒)のカウントを開始する。
【0065】
続いて、時刻11:59:57の時点で高速移動検知部232は、基地局130Y同様に、基地局130Bを検知、基地局リスト270に追加し、基地局130B用のタイマカウンタ282のカウントを開始する。以後も同様にして基地局130の識別子の追加およびカウントを繰り返す。但し、時刻12:00:03の時点に基地局130Bを検知しても、かかる基地局Bは既に基地局リスト270に記憶済みなので、カウンタ280のリセットのみを行い、識別子の追加は行わない。
【0066】
かかる構成により識別子リスト270には、過去10秒以内に更新された基地局130の識別子のみが残り、例えば、図7の例では、時刻12:00:00〜12:00:03までのみ高速移動中と判断され、それ以降は、高速移動中とはならない。
【0067】
本実施形態では、上述したように識別子の取得対象が変化していることに加え、その変化が等しい組合せの基地局間で行われているものではないことを、過去所定時間内に記憶された異なる識別子の個数(単位時間当たりの基地局発生率)と所定の高速閾値とを比較することで判断している。こうして、ユーザの高速移動を迅速かつ確実に認識することが可能となる。
【0068】
次に、上述した無線端末140を利用してユーザ152の移動速度を検知する移動速度検知方法を説明する。
【0069】
(移動速度検知方法)
図8は、移動速度検知方法の処理の流れを示したフローチャートである。無線端末140の無線通信部218が、通信可能範囲における基地局130に固有の識別子を取得し(S300)、識別子記憶部230が、ハンドオーバ等によって識別子の取得対象に変化があった場合、変化後に取得した識別子を記憶する(S302)。
【0070】
そして、高速移動検知部232が、過去所定時間内に記憶された異なる識別子の個数(基地局発生数)を所定の高速閾値と比較し(S304)、所定の高速閾値以上となった場合、無線端末140が高速移動中であることを検知する(S306)。最後に、モード設定部234が、高速移動検知部232の検知内容を判定し(S308)、高速移動中であれば、無線端末140をドライブモードまたはマナーモードに設定し(S310)、高速移動中が検知されていない場合、各モードを解除する(S312)。
【0071】
以上説明した移動速度検知方法においても、ユーザの高速移動を迅速かつ確実に認識することができ、ユーザの手を煩わすことなく、ドライブモードやマナーモードを自動的に設定および解除することが可能となる。従って、モード切替の失念による着信の弊害を回避することができる。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、携帯電話等の無線端末にかかり、さらに詳細には、自体を携帯するユーザの移動状況を特定可能な無線端末および移動速度検知方法に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】無線通信システムを説明するためのシステムブロック図である。
【図2】無線端末の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【図3】高速移動検知部による基地局発生数の導出と高速閾値との比較を説明するための説明図である。
【図4】高速移動検知部による基地局発生数の他の導出方法を説明するための説明図である。
【図5】静止または低速移動の場合における高速移動検知部の処理を示した説明図である。
【図6】電波状況の悪い環境下や基地局の電波到達領域の境界付近における高速移動検知部の処理を示した説明図である。
【図7】高速移動検知部による基地局発生数の他の導出方法を説明するための説明図である。
【図8】移動速度検知方法の処理の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
100 無線通信システム
130 基地局
140 無線端末
218 無線通信部
230 識別子記憶部
232 高速移動検知部
234 モード設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信可能範囲における基地局に固有の識別子を取得する無線通信部と、
前記識別子の取得対象に変化があった場合、該変化後に取得した識別子を記憶する識別子記憶部と、
過去所定時間内に記憶された異なる識別子の個数を所定の高速閾値と比較し、該所定の高速閾値以上となった場合、当該無線端末が高速移動中であることを検知する高速移動検知部と、
を備えることを特徴とする、無線端末。
【請求項2】
前記無線通信部は、通信可能範囲における全ての基地局の識別子を取得し、
前記識別子記憶部は、変化後の全ての識別子を記憶することを特徴とする、請求項1に記載の無線端末。
【請求項3】
前記無線通信部は、着信待ち受けのためのページングチャネルを受信し、その送信元基地局の識別子を取得し、
前記識別子記憶部は、前記ページングチャネルの送信元基地局が切り替わった場合に、該切替後の基地局の識別子を記憶することを特徴とする、請求項1に記載の無線端末。
【請求項4】
前記無線通信部は、無線通信を確立している基地局の識別子を取得し、
前記識別子記憶部は、ハンドオーバが生じた場合に、該ハンドオーバ後の基地局の識別子を記憶することを特徴とする、請求項1に記載の無線端末。
【請求項5】
前記高速移動検知部が高速移動中であることを検知すると、当該無線端末をドライブモードまたはマナーモードに設定し、高速移動中が検知されていないとき該モードを解除するモード設定部をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の無線端末。
【請求項6】
前記高速移動検知部は、前記所定の高速閾値より小さい所定の低速閾値以下となるまで高速移動中の検知状態を解除しないことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の無線端末。
【請求項7】
通信可能範囲における基地局に固有の識別子を取得し、
前記識別子の取得対象に変化があった場合、該変化後に取得した識別子を記憶し、
過去所定時間内に記憶された異なる識別子の個数を所定の高速閾値と比較し、該所定の高速閾値以上となった場合、当該無線端末が高速移動中であることを検知することを特徴とする、移動速度検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−244532(P2008−244532A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78035(P2007−78035)
【出願日】平成19年3月25日(2007.3.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】