説明

無線端末装置、無線伝送システム、及びプログラム

【課題】各無線端末装置が送信した本線系信号の、基地局装置における受信タイミングのずれをGIで吸収できる範囲内に抑えること、そしてパイロット信号の直交関係を保つことを、無線端末装置内の処理により実現できる無線端末装置を提供すること。
【解決手段】基地局装置20が無線送信した送り返し系信号を受信する受信手段と、基地局装置20が上記送り返し系信号を無線送信したタイミングに基づき、本線系信号の送信タイミングを決定する送信タイミング決定手段と、送信タイミング決定手段により決定された送信タイミングで、本線系信号を無線送信する送信手段と、を含むことを特徴とする無線端末装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末装置、無線伝送システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放送スタジオやスタジアム等、限定されたエリア内で使用するカメラのワイヤレス化を実現するための技術のひとつとして、ハイビジョンテレビ信号を低遅延かつ高い回線信頼性で無線伝送することのできる無線伝送システムが注目されている。
【0003】
上記無線伝送システムでは、カメラ及びモニタ(またはビューファインダ)を備える無線端末装置(いわゆる「ワイヤレスカメラ」に相当する)と、基地局装置と、番組に使用するために映像を編集する副調整室に備えられる映像編集装置と、が用いられ、無線端末装置と映像編集装置の間で、基地局装置を介した双方向伝送が行われる。
【0004】
上記双方向伝送のうち、無線端末装置から映像編集装置への伝送は「本線系」と呼ばれ、無線端末装置(のカメラ)の撮影した映像が、その無線端末装置から基地局装置、さらには、映像編集装置へと伝送される。また、映像編集装置から無線端末装置への伝送は「送り返し系」と呼ばれ、映像編集装置において選択される映像(番組に使用されている映像あるいは他のカメラが撮影している映像)が、その映像編集装置から基地局装置、さらには無線端末装置(のモニタ)へと伝送される。「送り返し系」では、他にも無線端末装置を制御するための制御信号や、カメラマンと副調整室などの連絡用の通信信号なども伝送される。
【0005】
基地局装置と無線端末装置とは、低遅延かつ高い信頼性を有する伝送を実現できるMIMO(Multiple Input Multiple Output)−OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)伝送方式を用いて、無線通信を行う。そのために、基地局装置は複数のアンテナを備えており、放送スタジオの一事例では、これらのアンテナは天井など頭上にマトリクス状に配置されることが考えられる。
【0006】
以下、MIMO−OFDM伝送方式について簡単に説明する。MIMO−OFDM伝送方式は、空間分割多重伝送による高速伝送を実現するMIMOと、高い周波数利用効率を有し、マルチパス環境下で優れた特性を発揮するOFDMと、を組み合わせたものである。
【0007】
MIMO−OFDM伝送方式では、図12に示すように、送信側装置・受信側装置ともに、複数の送信アンテナを備えている。送信側装置は、通信データを各送信アンテナに振り分けた後、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)を施してOFDM信号とする。そして、このOFDM信号を各送信アンテナから無線送信する。受信側装置は各受信アンテナでOFDM信号を受信するが、受信されるOFDM信号は、各送信アンテナからそれぞれ送信されたものが混信したものとなっている。そこで、受信側装置は、各受信アンテナで受信されたOFDM信号にFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)を施した後、各送信アンテナに対応する信号に分離する(後述)。ここまでで受信アンテナごとに各送信アンテナに対応する信号が得られ、受信側装置は、これらの信号から元の通信データを得る。以上のような処理により、MIMO−OFDM伝送方式では、伝送速度を送信アンテナ数倍(受信アンテナは同数以上必要)に拡大することができる。
【0008】
ここで、上記信号分離のための処理について説明する。上述のようにOFDM信号が混信して受信される環境において、混信前の信号を得るためには、送受信アンテナ間を結ぶ各伝搬路の伝達関数を推定する機能が必要である。そこで、送信側装置は、振幅や位相の基準となるパイロット信号であって、受信後に伝搬路ごとに分離して求めることが可能なように工夫を施したものを、データ信号と多重して各OFDM信号に含めて送信する。上記工夫の例としては、送信アンテナ間で直交関係を有するようにすることが考えられる。また、上記直交関係の例としては、時間的な間欠伝送や、符号分割多重の原理による直交符号化などが考えられる。受信側装置は、パイロット信号を用いて伝達関数を推定し、これを用いてFFT後の信号を分離する。
【0009】
ただし、上記パイロット信号の受信の際に、複数のOFDM信号間の受信タイミングにずれがあると、送信アンテナ間での上記直交関係が崩れ、各パイロット信号を正しく分離できないので、各伝搬路の伝達関数も正しく算出できない。
【0010】
そこで、特許文献1には、複数組の通信装置がそれぞれOFDM通信を行う場合に、ある通信装置が、自分の通信相手である通信装置から受信される信号(所望信号)と、自分の通信相手ではない通信装置から受信される信号(非所望信号)と、の受信タイミングの誤差を取得し、その誤差を用いて自分の通信相手である通信装置の送信タイミングを制御することにより、上記誤差が小さくなるようにする(すなわち、受信タイミングを同期させる)技術が開示されている。
【0011】
また、複数の映像信号の入力を受け付け、それらを選択的に切り替えつつ映像編集装置に入力する映像スイッチャ−装置が知られている。映像編集装置では、ケーブルなど有線系の伝送路を経て入力される映像信号と、ワイヤレスカメラなど無線系の伝送装置を経て同システムへ入力される映像信号と、を切り替えて番組素材として使用するために、全ての映像信号間で、これらの信号が当該映像編集装置へ入力されるタイミングを一致(同期)させる必要がある。そこで、上記映像スイッチャ−装置は、FS(Frame Synchronizer)装置という特殊な装置を有しており、このFS装置を用いることで、映像編集装置に映像信号が入力されるタイミングを映像信号間で同期させる。
【特許文献1】特開2006−352492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、放送スタジオ内では、複数台のカメラを同時に使えるようにすることが求められる。このために、図13に示すように、上記各送信アンテナを各無線端末装置に分配した形で、MIMO−OFDM伝送方式による伝送を行うことが考えられている。
【0013】
しかしながら、このようにすると、本線系の伝送において、各送信アンテナが各無線端末装置に分離配置されるため、各送信アンテナからの送信タイミングを一致させることが困難になる。一方、基地局装置は、GI(Guard Interval:ガードインターバル)で吸収できない程度に各無線端末装置から受信する本線系信号(OFDM信号)の受信タイミングがずれると、これらを受信できなくなる。このため、各無線端末装置が送信した本線系信号の、基地局装置における受信タイミングのずれを、GIで吸収できる範囲内に抑える必要がある。
【0014】
さらに、MIMO−OFDM伝送により複数のOFDM信号が混信して受信されても各OFDM信号が正しく分離されるためには、各送信アンテナから出力される各々のパイロット信号間で直交関係を保ち、各伝搬路の伝達関数を正しく算出する必要がある。そのためにも、受信タイミングのずれをGIで吸収できる範囲内に小さく抑える必要がある。
【0015】
この点、上記特許文献1に記載の技術を用いて、基地局装置における受信タイミングを同期させることも考えられる。しかしながら、この技術を用いる場合、基地局装置が、ある無線端末装置を「自分の通信相手である通信装置」とみなして、他の無線端末装置が送信する信号との受信タイミングの誤差を取得し、その誤差を用いて「自分の通信相手である通信装置」である無線端末装置の送信タイミングを制御することになる。すなわち、無線端末装置の送信タイミングを揃えるために基地局装置の処理が必要となり、効率が悪いという問題があった。
【0016】
従って、本発明の課題の一つは、各無線端末装置が送信した本線系信号の、基地局装置における受信タイミングのずれを、GIで吸収できる範囲内に抑えることを、無線端末装置内の処理により実現できる無線端末装置、無線伝送システム、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するための本発明にかかる無線端末装置は、基地局装置が無線送信した送り返し系信号を受信する受信手段と、前記基地局装置が前記送り返し系信号を無線送信したタイミングに基づき、本線系信号の送信タイミングを決定する送信タイミング決定手段と、前記送信タイミング決定手段により決定された送信タイミングで、本線系信号を無線送信する送信手段と、を含むことを特徴とする。
どの無線端末装置にとっても基地局装置が送り返し系信号を送信したタイミングは同じである。上記無線端末装置によれば、このタイミングに基づいて本線系信号の送信タイミングを決定するので、各無線端末装置の本線系信号の送信タイミングを揃えることも可能になり、その場合、基地局装置における受信タイミングのずれはGIで吸収できる範囲内の伝搬距離(あるいは伝搬時間)の違い程度に収まるので、各無線端末装置が送信した本線系信号の、基地局装置における受信タイミングのずれを、GIで吸収できる範囲内に抑えることができる。そして、以上の処理は、無線端末装置内の処理により実現できる。
【0018】
また、上記無線端末装置において、前記送り返し系信号の伝搬時間を取得する送り返し系伝搬時間取得手段、を含み、前記送信タイミング決定手段は、前記送り返し系信号が当該無線端末装置に到達したタイミングと、前記送り返し系伝搬時間取得手段により取得された伝搬時間と、に基づいて前記基地局装置が前記送り返し系信号を無線送信したタイミングを算出する、こととしてもよい。
これによれば、基地局装置が送り返し系信号を無線送信したタイミングを算出することが可能になる。
【0019】
また、上記無線端末装置において、前記送り返し系信号は、少なくとも3本のアンテナを備える基地局装置が、これら3本のアンテナそれぞれから同時送信した少なくとも3系統の送り返し系信号により構成され、前記受信手段は前記各系統の送り返し系信号を受信し、当該無線端末装置は、前記系統間の伝搬時間差を取得する伝搬時間差取得手段と、前記各アンテナの設置される位置を記憶する記憶手段と、を含み、前記送り返し系伝搬時間取得手段は、前記伝搬時間差取得手段により取得される伝搬時間差と、前記記憶手段に記憶される位置と、に基づき、少なくとも1系統についての前記伝搬時間を取得し、前記送信タイミング決定手段は、前記少なくとも3系統のうちの1系統の前記送り返し系信号が当該無線端末装置に到達したタイミングと、該系統について前記送り返し系伝搬時間取得手段により取得された前記伝搬時間と、に基づいて前記基地局装置が前記送り返し系信号を無線送信したタイミングを算出する、こととしてもよい。
これによれば、伝搬時間差と各アンテナの位置とから、伝搬時間を算出することができる。
【0020】
また、上記無線端末装置において、前記基地局装置が送信する送り返し系信号は、系統ごとに異なる直交符号が乗算されたパイロット信号を含み、当該無線端末装置は、前記受信手段により受信される信号に前記各直交符号を乗算することにより、系統ごとの伝達関数を算出する伝達関数算出手段、を含み、前記伝搬時間差取得手段は、前記伝達関数算出手段により算出された伝達関数に基づき、前記系統間の伝搬時間差を取得する、こととしてもよい。
これによれば、伝達関数を用いて伝搬時間差を取得することができる。
【0021】
また、上記各無線端末装置において、前記送信手段により送信された本線系信号が、前記各アンテナのうちの特定の1つに到達するのに要する伝搬時間を取得する本線系伝搬時間取得手段、を含み、前記送信タイミング決定手段は、算出した前記基地局装置が前記送り返し系信号を無線送信したタイミングと、前記本線系伝搬時間取得手段により取得された前記伝搬時間と、に基づいて、前記送信タイミングを決定する、こととしてもよい。
これによれば、基地局装置における本線系信号の受信タイミングを揃えることができるようになる。
【0022】
また、本発明にかかる無線伝送システムは、複数の無線端末装置を含む無線伝送システムであって、前記各無線端末装置は、基地局装置が無線送信した送り返し系信号を受信する受信手段と、前記基地局装置が前記送り返し系信号を無線送信したタイミングに基づき、本線系信号の送信タイミングを決定する送信タイミング決定手段と、前記送信タイミング決定手段により決定された送信タイミングで、本線系信号を無線送信する送信手段と、を含む、ことを特徴とする。
【0023】
また、本発明にかかるプログラムは、基地局装置が無線送信した送り返し系信号を受信する受信手段により受信された送り返し系信号を、前記基地局装置が無線送信したタイミングに基づき、本線系信号の送信タイミングを決定する送信タイミング決定手順、及び前記送信タイミング決定手順により決定された送信タイミングで、送信手段に本線系信号を無線送信させる手順、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態1及び2について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態にかかる無線伝送システム1のシステム構成及び利用シーンを示す図である。同図に示すように、無線伝送システム1は複数の無線端末装置10、基地局装置20、映像編集装置30を含んで構成される。
【0026】
各無線端末装置10は、放送スタジオ内に配備される。各無線端末装置10は、送信アンテナ11−1及び2と、受信アンテナ12とを備えており、これらのアンテナを用い、基地局装置20との間で双方向の無線通信を行う。
【0027】
また、各無線端末装置10は、カメラ及びモニタを備えており、カメラマンがカメラを用いて撮影した映像を示す映像信号を、本線系信号として、基地局装置20に対して無線送信する。また、基地局装置20から受信される送り返し系信号を受信し、該送り返し系信号に含まれる映像信号を、モニタを通じてカメラマンに提供する。
【0028】
基地局装置20は、放送スタジオの内又は外に配備され、送信アンテナ21−k(k=1〜4)と、受信アンテナ22−kとを備えて構成される。これらの各アンテナは、この事例では放送スタジオの天井付近に設置される。また、図1では各アンテナが一直線に並んでいるかのように描いているが、これは図示の便宜のためであり、矩形(正方形や長方形など)の頂点に配置されているものとする。しかし、実際は天井付近での矩形による配置に限定されるものではなく、運用方法や場所などの条件により様々な配置方法を用いる。
【0029】
ここで、無線端末装置10と基地局装置20の間で行われる無線通信について、簡単に説明する。本線系信号については、各無線端末装置10の送信アンテナ11−1及び2と、受信アンテナ22−1乃至4と、の間で、空間分割多重によるMIMO−OFDM伝送が行われる。一方、送り返し系信号については、送信アンテナ21−1乃至4と、各無線端末装置10の受信アンテナ12と、の間で、送信ダイバーシティのMIMO−OFDM伝送が行われる。この伝送は、4本の送信アンテナ21−1乃至4から送信され、1つの受信アンテナ12で混信して受信した信号を分離して復調できる、時空間ブロック符号を用いた方式(STBC:Space Time Block Coding)の伝送である。
【0030】
なお、本線系信号の搬送波周波数と、送り返し系信号の搬送波周波数と、は互いに異なっている。つまり、各無線端末装置10及び基地局装置20は、周波数分割複信方式により通信を行う。
【0031】
さて、基地局装置20は、副調整室内の映像編集装置30と接続されており、無線端末装置10から受信される本線系信号を、映像編集装置30に対して送信する。また、基地局装置20は、映像編集装置30から受信される送り返し系信号を無線端末装置10に向けて送信する。
【0032】
映像編集装置30は、モニタ及び操作パネルを備えており、基地局装置20から受信される本線系信号に含まれる映像信号をモニタに表示するとともに、ディレクタ等による編集操作を受け付ける。そして、編集の結果得られる映像信号を図示しない放送機器に出力するとともに、送り返し系信号として基地局装置20に対して送信する。
【0033】
図2は、無線端末装置10−1及び2が、基地局装置20との間で双方向のMIMO−OFDM伝送を行っている様子を示す図である。なお、同図では、各無線端末装置10の送信アンテナと受信アンテナをまとめて1つに描いている。同図に示すように、以下では、無線端末装置10−1及び2の平面座標(無線端末装置10−1および2の各アンテナならびに基地局装置20の各アンテナが放送スタジオ内の同一平面内にあるとした場合の位置座標、実際には立体となるのでさらにZ軸を加える)を、それぞれ[a,b]及び[a,b]とする。また、送信アンテナ21−1及び受信アンテナ22−1の平面座標を[X,Y]とし、他も同様に[X,Y]、[X,Y]、[X,Y]とする。ここで、[a,b]及び[a,b]は可変であり、無線端末装置10の移動に伴って変化する。これに対し、[X,Y]、[X,Y]、[X,Y]、[X,Y]は固定値である。
【0034】
基地局装置20は、各送信アンテナ21それぞれから送り返し系信号を同時送信することにより、各系統の送り返し系信号を送信する。基地局装置20は、こうして送信する各送り返し系信号に、系統ごとに異なる直交符号が乗算されたパイロット信号を含める。
【0035】
無線端末装置10は、こうして送信された送り返し系信号を受信するが、各送信アンテナ21との距離が異なると、系統ごとに送り返し系信号の受信タイミングが少しずつ異なることになる。各無線端末装置10は上記直交符号を記憶しており、受信された送り返し系信号に含まれるパイロット信号に記憶している直交符号を乗算することにより、系統ごとの伝搬路により歪を受けたパイロット信号に分離する。そして、その結果から送信アンテナ21ごとの伝達関数を算出し、さらにこれに基づき、系統間での伝搬時間差を算出する。以下では、1つの無線端末装置10に着目し、無線端末装置10と基地局装置20それぞれの処理を説明しつつ、基地局装置20の各送信アンテナと無線端末装置10の受信アンテナとの間の伝搬時間差の求め方について詳細に説明し、さらに求めた伝搬時間差に基づく送信タイミングの決定方法について説明する。
【0036】
図3及び図4は、それぞれ基地局装置20及び無線端末装置10の機能ブロックを示す図である。ここでは、基地局装置20の送信アンテナが4本、受信アンテナが4本、無線端末装置10の送信アンテナが2本、及び受信アンテナが1本の場合の事例である。
【0037】
図3に示すように、基地局装置20は、送り返し系送信部200と本線系受信部210を含んで構成される。このうち、送り返し系送信部200はその内部に、符号化部201、マッピング部202、STBC符号化部203を含み、さらに、送信アンテナ21ごとに、フレーム構成部204、IFFT部205、GI信号付加部206、直交変調部207、ミキサ208、ローカル信号発生器209を含んで構成される。また、本線系受信部210は、受信アンテナ22ごとに、ミキサ211、ローカル信号発生器212、直交復調部213、シンボル同期検出部214、GI信号除去部215、FFT部216、フレーム分離部217、直交符号乗算部218、伝搬路推定部219、フレーム検出部220を含んで構成され、さらにMIMO−OFDM復調部221、デマッピング部222−1及び2、P/S(Parallel-to-Serial Converter:パラレル・シリアル変換)部223、復号部224を含んで構成される。
【0038】
また、図4に示すように、無線端末装置10は、送り返し系受信部100、本線系送信部120、信号伝搬時間検出部301、送信タイミング調整部302を含んで構成される。このうち、送り返し系受信部100はその内部に、受信アンテナ12、ミキサ101、ローカル信号発生器102、直交復調部103、シンボル同期検出部104、GI信号除去部105、FFT部106、フレーム分離部107、直交符号乗算部108、伝搬路推定部109、フレーム検出部110、STBC復号部111、デマッピング部112、復号部113を含んで構成される。また、本線系送信部120はS/P(Serial-to-Parallel Converter:シリアル・パラレル変換)部121を含んで構成され、さらに送信アンテナ11ごとに、符号化部122、マッピング部123、フレーム構成部124、IFFT部125、GI信号付加部126、直交変調部127、ミキサ128、ローカル信号発生器129を含んで構成される。
【0039】
まず、送り返し系について説明する。基地局装置20は、送り返し系送信部200を用いて、送り返し系の送信データ信号(送り返し系信号)にSTBC符号化を施したOFDM信号として、各送信アンテナ21から送信する。無線端末装置10は、基地局装置20の各送信アンテナ21から送信された各OFDM信号を、送り返し系受信部100(受信手段)により受信する。送り返し系受信部100は、装備する1本の受信アンテナ12で受信し、送信アンテナ21ごとの成分に分離するための各送信アンテナ21と受信アンテナ12間の伝搬路の伝達関数をそれぞれ算出し、算出した伝達関数に基づいてSTBC復号を行うことにより元の送り返し系信号を復元する。以下、詳細に説明する。
【0040】
符号化部201は、映像編集装置30から送り返し系信号(映像信号)の入力を受け付け、誤り訂正符号化及びインターリーブなどの符号化を施す。符号化部201において符号化を施されたデータ信号はマッピング部202に送られ、マッピング部202は、符号化された送信データ信号をQAMなどキャリア変調のコンスタレーション上へマッピングすることにより、該送信データ信号をキャリア変調する。マッピング部202でキャリア変調が施された送信データ信号は、データキャリアとしてSTBC符号化部203へ送られる。STBC符号化部203は、データキャリアの4系統への振り分けと、速度変換を含むSTBC符号化と、を行う。STBC符号化を施された各系統のデータキャリアは、該各系統に接続された各フレーム構成部204へ送られる。
【0041】
各フレーム構成部204は、STBC符号化を施されたデータキャリアと、制御情報を伝送するTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)キャリア、付加情報を伝送するAC(Auxiliary Channel)キャリア、復調基準となる直交符号化されたパイロットキャリア(送信アンテナ21の系統ごとに異なる直交符号が乗算されたパイロット信号の搬送キャリア)、をそれぞれ決められた周波数位置に配置することによりフレームを構成し、OFDM信号を作成する。各フレーム構成部204でフレーム構成された4系統のOFDM信号は、対応するIFFT部205へ送られ、各IFFT部205は、各OFDM信号のIFFTを行い、OFDM信号を周波数軸信号から時間軸信号に変換する。
【0042】
その後、4系統の時間軸変換されたOFDM信号は、各GI信号付加部206でのGIの付加、各直交変調部207での直交化、各ローカル信号発生器209と各ミキサ208による周波数変換をそれぞれ経て、各送信アンテナ21から無線端末装置10へ向けて送信される。なお、送信される4系統のOFDM信号は、基地局装置20に接続している映像編集装置30が生成する基準信号に基づくタイミングに同期して、同時に送信される。
【0043】
無線端末装置10の受信アンテナ12は、基地局装置20が送信した上記4系統のOFDM信号の混信信号を受信する。
受信アンテナ12で受信された混信信号は、ローカル信号発生器102及びミキサ101によりIF(Intermediate Frequency:中間周波数)信号に変換され、直交復調部103に送られる。直交復調部103は、IF信号に変換されたOFDM信号に対し直交復調を行って同相信号と直交信号の2系統のベースバンド信号に分離し、複素数化の処理を行う。
【0044】
複素数化の処理が施された2系統のベースバンド信号は、シンボル同期検出部104とGI信号除去部105に送られる。このうちシンボル同期検出部104は、同相信号及び直交信号の2系統のベースバンド信号においてGI相関を行い、GIの位置を検出してOFDM信号のシンボルの先頭を検出し、OFDM信号のシンボル単位の同期をとる。一方、GI信号除去部105は、シンボル同期検出部104が出力するシンボル同期のタイミングに従い、複素数化の処理が施された2系統のベースバンド信号から送信側で付加したGIを除去する。
【0045】
GI信号除去部105においてGIが除去された2系統のベースバンド信号は、FFT部106へ送られる。FFT部106は、GIが除去された2系統のベースバンド信号に対し、それぞれ実数ならびに虚数としてFFTを施し、時間軸データから周波数軸データのOFDM信号に変換する。周波数軸データに変換されたOFDM信号はフレーム分離部107に送られる。
【0046】
フレーム分離部107は、この周波数軸データに変換されたOFDM信号から、パイロットキャリア、ACキャリア、TMCCキャリア、データキャリアのそれぞれを分離(フレーム分離)する。なお、ここで得られる各キャリアは、各系統(送信アンテナ21ごとの系統)のキャリアが混信したものとなっている。フレーム分離部107は、分離したパイロットキャリアを、直交符号乗算部108に送る。
【0047】
直交符号乗算部108は、パイロット信号に乗算されている各直交符号を記憶している。そして、直交符号乗算部108及び伝搬路推定部109は、受信される伝搬路により歪を受けたパイロット信号に各直交符号を乗算することにより、系統ごとの伝達関数を算出する伝達関数算出手段として機能する。すなわち、直交符号乗算部108は、フレーム分離部107から入力されるパイロットキャリアに、シンボル単位で、記憶している各直交符号を乗算し、伝搬路推定部109に送る。なお、乗算タイミングは、後述するフレーム検出部110が抽出するフレーム同期信号に応じて決定される。伝搬路推定部109は、この乗算が施されたパイロットキャリアに基づき、各送信アンテナ21から受信アンテナ12までの間の伝搬路特性を示す伝達関数を、送信アンテナ21の系統ごとに算出する。以下、伝達関数算出手段による伝達関数の算出について、詳細に説明する。
【0048】
まず初めに、伝達関数について説明する。送り返し系信号は、上述のように送信タイミングを同期して基地局装置20の各送信アンテナ21から送信されるNr系統(Nrは送信アンテナ21の本数。)のOFDM信号により構成されており、以下では、送り返し系信号をX=[x,x,・・・xNr(Tは転置を表す)と表すことにする。なお、送り返し系信号は多数のサブキャリアから構成されている。
【0049】
上記送り返し系信号は、伝搬路を経てNt系統(Ntは無線端末装置10の数。)の無線端末装置10がそれぞれ装備する送り返し系の受信アンテナ12で受信される。Nt本の受信アンテナ12のそれぞれで受信される送り返し系信号を、まとめてY=[y,y,・・・yNtと表記する。すると、XとYの関係は、以下の式(1)で表される。
【0050】
【数1】

【0051】
ここで、NNt=[N,N,・・・NNtはガウス雑音である。また、Hは伝搬路行列であり、基地局装置20のNr本の送信アンテナ21と、Nt個の無線端末装置10がおのおの有する合計Nt本の受信アンテナ12と、の間を結ぶ伝搬路の伝達関数を示すNt行Nr列の行列(要素hij、但し、i=1・・・Nt、j=1・・・Nr)である。伝搬路行列Hの各要素hijは、j番目の送信アンテナ21からi番目の無線端末装置10の受信アンテナ12への伝搬路の応答であり、伝達関数と呼ばれるものである。
【0052】
さて、直交符号乗算部108は、パイロット信号に、記憶している直交符号を乗算する。ここでは、3本の送信アンテナ21−1〜3を用いる場合を例にとって説明することとし、それぞれこの直交符号をA,B,Cとすると、これらの間には式(2)の関係が成立する。ただし、演算子・は内積で、aは0でない実数である。
【0053】
【数2】

【0054】
また、送信アンテナ21−1〜3から送信するパイロット信号を、それぞれP,P,Pとすると、送信アンテナ21−1〜3から実際に送信される際には上記直交符号を乗算したものになるので、それぞれA・P,B・P,C・Pとして送信される。すると、1番目の無線端末装置10の受信アンテナ12で受信される混信したパイロット信号は、式(3)に示すyで表される。ただし、h11,h12,h13は、上述の伝達関数である。
【0055】
【数3】

【0056】
直交符号乗算部108が、式(3)のyに、例えば直交符号Aを乗算すると式(4)のようになり、パイロット信号P,Pの成分が消える。
【0057】
【数4】

【0058】
パイロット信号P、直交符号A、及び直交符号Aの内積aはいずれも既知であるので、式(4)を式(5)のように変形することにより、伝達関数h11が求められる。
【0059】
【数5】

【0060】
直交符号乗算部108は、フレーム分離部107から入力されるパイロットキャリアに直交符号A,B,Cをそれぞれ乗算した結果を、伝搬路推定部109に出力する。伝搬路推定部109は、直交符号乗算部108から入力される直交符号ごとの乗算結果を用い、伝達関数h11,h12,h13のそれぞれについて式(5)と同様の処理(h12を導出するときは直交符号Bを、h13を導出するときは直交符号Cの乗算結果を用いる)を行うことにより、これらを算出する。
【0061】
さて、フレーム分離部107は、分離したTMCCキャリアを、フレーム検出部110に送る。フレーム検出部110は、入力されたTMCCキャリアからOFDM信号のフレーム周期単位(例えば408シンボル)での先頭位置を検出し、フレーム同期信号を抽出する。このフレーム同期信号は、フレーム単位でのOFDM信号群の先頭を表す。
【0062】
また、フレーム分離部107は、分離したデータキャリア及びACキャリアを、STBC復号部111に出力する。さらに、伝搬路推定部109は算出した伝達関数を、フレーム検出部110は抽出したフレーム同期信号を、それぞれSTBC復号部111に出力する。STBC復号部111は、入力される伝達関数をもとに、入力されるフレーム同期信号に従い、データキャリアのSTBC復号(STBC符号化を施された信号の復号)を行う。STBC復号部111においてSTBC復号されたデータキャリアは、その後、デマッピング部112でのQAM等からの復調、復号部113でのデインターリーブ及び誤り訂正を経て基地局装置20が送信した送り返し系信号に復元される。
【0063】
次に、伝達関数に基づいて、各送信アンテナ21系統間での伝搬時間差を算出するための構成について説明する。
上述したように、無線端末装置10は、受信アンテナ12が受信したOFDM信号からフレーム同期信号を検出し(フレーム検出部110)、この検出したフレーム同期信号のタイミングに合わせて、受信した送り返し信号のSTBC復号やデマッピングなどの復調処理とデインターリーブ、誤り訂正などの復号処理を行い、基地局装置20が送信した送り返し信号を再現する。
【0064】
送信タイミング調整部302は、後述する本線系送信部120が本線系信号を送信するタイミングを上記フレーム同期信号に同期させるのであるが、このフレーム同期信号を、基地局装置20の送り返し系の各送信アンテナ21から送信される送り返し系信号の送信タイミングと同期させる。これにより、送信タイミング調整部302は、本線系信号の送信タイミングを、基地局装置20が送り返し系信号を無線送信したタイミングに基づいて決定する送信タイミング決定手段として機能する。以下、信号伝搬時間検出部301の説明と合わせ、具体的に説明する。
【0065】
まず、信号伝搬時間検出部301は、送り返し系信号の伝搬時間を取得する送り返し系信号伝搬時間取得手段として機能する。その具体的な構成は、図5に示すように、IFFT部311、直接波時間位置検出部312、基地局装置情報メモリ313、信号伝搬時間演算部314を含んで構成される。なお、信号伝搬時間検出部301は、送り返し系受信部100の伝搬路推定部109に接続されている。
【0066】
IFFT部311は、無線端末装置10の送り返し系受信部100の伝搬路推定部109が出力し、IFFT部311に入力された伝搬路推定結果(伝達関数)にIFFTを施し、基地局装置20の送り返し系の各送信アンテナ21と無線端末装置10の送り返し系の受信アンテナ12の間の各伝搬路の遅延プロファイル特性を算出する。
【0067】
遅延プロファイル特性について説明する。上述した伝搬路行列Hの要素hijをOFDM信号の全キャリアについて逆フーリエ変換すると、基地局装置20のj番目の送信アンテナ21からi番目の無線端末装置10の受信アンテナ12への伝搬路を経由した時間領域での遅延波と直接波のインパルス応答特性を示す式(6)が求まる。
【0068】
【数6】

【0069】
式(6)において、τは時刻を、τは直接波に対する各遅延波の遅延時間を、Aは各遅延波の振幅を、それぞれ示す。IFFT部311は、伝搬路行列Hの各要素について上記逆フーリエ変換を行うことにより、基地局装置20と無線端末装置10の送り返し系の各アンテナ間での伝搬路におけるインパルス応答特性(遅延プロファイル特性)を算出する。
【0070】
直接波時間位置検出部312は、系統間の伝搬時間差を取得する伝搬時間差取得手段として機能する。すなわち、IFFT部311が求めた各伝搬路の遅延プロファイル特性から、基地局装置20の送り返し系の各送信アンテナ21と無線端末装置10の送り返し系の受信アンテナ12との各伝搬路の直接波同士の伝搬時間差を算出する。
【0071】
直接波時間位置検出部312による伝搬時間差の算出について、具体的な例を挙げて説明する。図6は、送信アンテナ21−1及び2と、受信アンテナ12との間の伝搬路特性より求めた、各伝搬路におけるそれぞれの遅延プロファイル特性の例を示したものである。
【0072】
図6において、曲線は遅延プロファイル曲線であり、縦方向の補助線は直接波の受信時刻(振幅が最大値となる時刻)を示す。直接波時間位置検出部312は、送信アンテナ21−1と受信アンテナ12との間の伝搬路における遅延プロファイル上の直接波の時間を基準0として、送信アンテナ21−2と受信アンテナ12との間の伝搬路における遅延プロファイル上の直接波を比較することで、各伝搬路の直接波同士の伝搬時間差を算出する。図6の例では、伝搬時間差は約0.06μ秒である。
【0073】
直接波時間位置検出部312は、各送信アンテナ21について、以上のようにして伝搬時間差を求める。例えば、図7は、送信アンテナ21−1〜4と、受信アンテナ12との間の伝搬路特性より求めた、各伝搬路におけるそれぞれの遅延プロファイル特性の例を示したものである。直接波時間位置検出部312は、送信アンテナ21−1と受信アンテナ12との間の伝搬路における遅延プロファイル上の直接波の時間を基準0として、送信アンテナ21−2,3,4に係る伝搬路との伝搬時間差△τ,△τ,△τをそれぞれ算出する。
【0074】
基地局装置情報メモリ313は、各送信アンテナ21の設置される位置の座標を記憶する記憶手段である。信号伝搬時間演算部314は、基地局装置情報メモリ313に記憶される各送信アンテナ21の位置座標と直接波同士の伝搬時間差とから、各伝搬路の送り返し系信号の伝搬時間を算出する。
【0075】
以下、3つの送信アンテナ21を用いる場合を例にとって説明する。この場合、各送信アンテナ21と受信アンテナ12との位置関係は、図2に示した各位置座標(無線端末装置10−1及び送信アンテナ21−1〜3の位置座標)と伝搬時間差△τ,△τを用いて式(7)のように表される。ここで、rは送信アンテナ21−1と受信アンテナ12の距離を、cは光速を、それぞれ示す。
【0076】
【数7】

【0077】
=Y=0として式(7)の連立方程式を解き、無線端末装置10−1の平面座標[a,b]及びXを消去すると、送信アンテナ21−1と受信アンテナ12の距離rが、式(8)のように求められる。
【0078】
【数8】

【0079】
ただし、rは送受信アンテナ間の距離を示すので、正の実数である。式(8)中のL及びLは、式(9)で表される。
【0080】
【数9】

【0081】
なお、図8に示すように、3つの送信アンテナ21を長方形又は正方形の頂点に配置し、Y=0とすると、式(8)は式(9)のように簡単化される。
【0082】
【数10】

【0083】
信号伝搬時間演算部314は、基地局装置情報メモリ313に記憶される各送信アンテナ21の位置座標と直接波時間位置検出部312で求めた直接波同士の伝搬時間差とを式(9)に代入することにより、送信アンテナ21−1と受信アンテナ12の距離rを算出する。そしてさらに、算出したrを光速cで除算することにより、送信アンテナ21−1から送信されたOFDM信号が受信アンテナ12に到達するのに要する時間(送り返し系の伝搬時間)を算出する。
【0084】
次に、送信タイミング調整部302は、送り返し系受信部100のフレーム検出部110と本線系送信部120の符号化部122に接続されており、図9に示すように、処理時間メモリ321、遅延時間制御部322、移相器323を含んで構成される。
【0085】
図10は、送信タイミング調整部302の処理の説明図である。以下、図9及び図10を参照しながら、送信タイミング調整部302の処理について説明する。
処理時間メモリ321は、受信アンテナ12においてOFDM信号を受信し、上述した各部での処理を経て、送信タイミング調整部302の処理が開始されるまでの時間(図10に示す「処理時間」)を記憶している。
【0086】
遅延時間制御部322は、信号伝搬時間検出部301が算出したOFDM信号の伝搬時間の入力を受け付け、送信アンテナ21−1系統から送信された送り返し系信号が当該無線端末装置10に到達したタイミングから、受け付けた伝搬時間を引くことにより、基地局装置20の送信タイミングを算出する。ただし、実際には処理遅延があるので、遅延時間制御部322は、処理時間メモリ321に記憶される処理時間を読み出し、今回の処理を開始した時刻(図10に示す「送信タイミング調整部302の処理開始タイミング」)から、処理時間及び伝搬時間を差し引くことにより、基地局装置20の送信タイミングを算出する。遅延時間制御部322は、算出した送信タイミングを移相器323の制御信号として、移相器323に出力する。
【0087】
移相器323は、入力された制御信号から基地局装置20の送信タイミングを取得し、フレーム検出部110から入力されるフレーム同期信号により示される直前のフレーム同期タイミングを差し引くことにより、遅延時間(図10に示す「遅延時間」)を算出する。そして、順次入力されるフレーム同期信号を、算出した遅延時間分だけ、位相調整により遅延させ、新たなフレーム同期信号として各符号化部122に出力する。こうして出力される新たなフレーム同期信号により示されるフレーム同期タイミングは、基地局装置20の送信タイミングと一致するものとなっている。
【0088】
本線系送信部120(送信手段)は、以上のようにして決定されるフレーム同期タイミングで、基地局装置20に対してOFDM信号を送信する。以下、本線系送信部120による送信と、基地局装置20の本線系受信部210による受信について、すなわち、本線系について説明する。
【0089】
S/P部121は、カメラによって撮影された映像信号(本線系信号)の入力を受け付け、映像信号のビットストリームをパケットの単位で分離し、異なる2系統のデータ信号として各符号化部122に出力する。
【0090】
各符号化部122は、入力されたデータ信号に対し、誤り訂正符号化及びインターリーブなどの符号化を施して、対応するマッピング部123に出力する。各マッピング部123は、入力された符号化データ信号を、QAMなどキャリア変調のコンスタレーション上へとマッピングする。そして、データキャリアとして対応するフレーム構成部124へ送る。
【0091】
各フレーム構成部124は、入力されたデータキャリアと、制御情報を伝送するTMCCキャリアと、付加情報を伝送するACキャリアと、各々の系統ごとに異なる直交符号を乗算された復調基準となるパイロットキャリアと、を決められた周波数位置に配置し、OFDM信号を作成する。そして、対応するIFFT部125に出力する。
【0092】
なお、各フレーム構成部124は、前述の各符号化部122、後述の各IFFT部125、及び図示しないTMCCキャリアの各生成回路などと同期して動作するとともに、送信タイミング調整部302の移相器323から入力されているフレーム同期タイミングに応じたタイミングで、データキャリアの出力を行う。この処理により、本線系送信部120は、上記フレーム同期タイミングで、基地局装置20に対してOFDM信号を送信することになる。
【0093】
各IFFT部125は、入力されたOFDM信号に対して逆フーリエ変換を施し、該OFDM信号を周波数軸データのOFDM信号から時間軸データのOFDM信号に変換する。そして、対応するGI信号付加部126に出力する。
【0094】
各GI信号付加部126は、入力されたOFDM信号にGIを付加し、対応する直交変調部127に出力する。各直交変調部127は、入力されたOFDM信号の直交化を行い、ミキサ128に出力する。ローカル信号発生器129及びミキサ128は、直交化されたOFDM信号の周波数変換を行う。こうして周波数変換が施されたOFDM信号は、対応する送信アンテナ11から基地局装置20へと無線送信される。
【0095】
基地局装置20の本線系の各受信アンテナ22は、各無線端末装置10が送信したOFDM信号を受信する。こうして受信されるOFDM信号は、各無線端末装置10から2系統ずつ送信されたものが混信した状態となっている。
【0096】
基地局装置20の本線系の各受信アンテナ22で受信されたOFDM信号は、対応するミキサ211に入力される。ローカル信号発生器212及びミキサ211は、入力されたOFDM信号をIF信号に変換し、対応する直交復調部213に出力する。
【0097】
各直交復調部213は、入力されたIF信号の直交復調を行って同相信号及び直交信号の2系統のベースバンド信号に分離し、シンボル同期検出部214に出力する。
各シンボル同期検出部214は、入力されたベースバンド信号のGI相関を計算し、GIを検出する。これによりシンボルの先頭位置を検出し、OFDM信号のシンボル単位の同期を行い、対応するGI信号除去部215に出力する。各GI信号除去部215は、2系統のベースバンド信号から、対応するシンボル同期検出部214が検出したシンボル単位の同期に従い、送信側で付加したGIを除去する。
【0098】
各FFT部216は、GIが除去された2系統のベースバンド信号のうち、同相信号を実数として、ならびに直交信号を虚数としてFFTを計算し、周波数軸データのOFDM信号を得る。そして、対応するフレーム分離部217に出力する。
【0099】
フレーム分離部217は、FFT部216から出力された周波数軸データのOFDM信号から、パイロットキャリア、ACキャリア、TMCCキャリア、及びデータキャリアを分離(フレーム分離)する。そして、パイロットキャリアを、対応する直交符号乗算部218に、ACキャリアとデータキャリアを、対応するMIMO−OFDM復調部221に、TMCCキャリアを、対応するフレーム検出部220に、それぞれ出力する。
【0100】
各直交符号乗算部218は、パイロット信号に乗算されている各直交符号を記憶している。そしてこれらを、フレーム分離部217から入力されるパイロットキャリアにシンボル単位で乗算し、対応する伝搬路推定部219に送る。なお、乗算タイミングは、対応するフレーム検出部220が抽出するフレーム同期信号に応じて決定される。伝搬路推定部219は、この乗算が施されたパイロットキャリアに基づき、各送信アンテナ11から、対応する受信アンテナ22までの間の伝搬路特性を示す伝達関数を、送信アンテナ11ごとに算出する。これらの処理の詳細は、直交符号乗算部108及び伝搬路推定部109の処理と同様である。
【0101】
各フレーム検出部220は、入力されるTMCCキャリアの同期ワード部分を元に、当該系統のOFDM信号のフレーム周期単位(例えば408シンボル)での先頭位置を検出してフレーム同期信号を出力し、対応する直交符号乗算部108とMIMO−OFDM復調部221へ入力する。このフレーム同期信号は、フレーム単位でのOFDM信号群の先頭を表している。
【0102】
MIMO−OFDM復調部221は、4系統のフレーム分離部217から出力される4系統のデータキャリアと、4系統の伝搬路推定部219から出力される4系統の伝搬路特性(実際には、無線端末装置10の送信アンテナ数に無線端末装置10の系統数をかけた数の系統分の伝達関数。無線端末装置10が2系統あり、各々2本の送信アンテナを有する場合には、4系統の伝搬路特性とは16経路分の伝達関数が得られる)とから、4系統のフレーム検出部220から出力される4系統のフレーム同期信号のうち例えば最も遅延したもののタイミングに従って、MIMO−OFDM信号の復号を行う。この復号では、各無線端末装置10の2系統の送信アンテナから送信され、当該の4系統の受信アンテナで受信されている信号の分離と波形等化が行われる。その結果、MIMO−OFDM復調部221は、各無線端末装置10の送信アンテナごとの信号を出力する。
【0103】
各デマッピング部222は、MIMO−OFDM復調部221から入力される信号(QAM等による変調信号)を復調する。P/S部223は、S/P部121において分離されていたデータ信号の結合を行い、復号部224は、復調後の上記信号にデインターリーブ及び誤り訂正復号を行い、無線端末装置が送信した元の本線系信号を復元する。
【0104】
以上説明したように、本実施の形態によれば、各無線端末装置10は、各送信アンテナ21と受信アンテナ12との間での直接波の伝搬時間差と、各送信アンテナ21の位置座標と、を用いることにより、基地局装置20の送信タイミングを算出している。そして、算出した送信タイミングでOFDM信号のフレーム同期信号を生成し、各無線端末装置10の本線系のOFDM信号の送信タイミングを合わせるようにしている。基地局装置20の送信タイミングは当然1つであるので、以上のようにすることで、各無線端末装置10で決定される送信タイミングを揃えることが可能となっている。そしてこれにより、各無線端末装置10が送信した本線系信号の基地局装置20での受信タイミングのずれはGIで吸収できる範囲内の伝搬距離(あるいは伝搬時間)の違い程度に収まり、GIで吸収できる範囲内に抑えられるようになる。そして、以上の処理は、無線端末装置10内の処理により実現できる。
【0105】
換言すれば、複数の無線端末装置10において本線系送信部120がそれぞれ基地局装置20の送り返し系送信部200が送り返し系信号を送信するタイミングと一致したタイミングで、本線系信号を送信することにより、結果的に全ての無線端末装置10の間で本線系信号を送信するタイミングを同期させることができる。そしてその結果、本線系信号(MIMO−OFDM信号)の復調に必要なパイロット信号(パイロットキャリア)の直交性を維持できる。
【0106】
なお、以上の説明においては、伝搬時間差を求める際、直接波同士の伝搬時間差を求めていたが、直接波が端末装置10に届かず反射波のみが届く環境(レイリー環境)では、上記のようにすると正しく基地局装置20の送信タイミングを算出できない。そこで、無線伝送システム1の動作開始時に見通し環境で予め各端末装置10の位置を記録し、上記のようにして算出した伝搬時間(r/c)が記録しておいた位置から推定される伝搬時間と大幅に異なった場合、その伝搬時間を無視し、前回算出していた伝搬時間を使うようにすることが好適である。また、算出した伝搬時間の、前回算出していた伝搬時間からの変化がある程度以上急激である場合にも、同様に、その伝搬時間を無視し、前回算出していた伝搬時間を使うようにすることが好適である。
【0107】
また、以上の説明では、3つの送信アンテナ21を用いて送信アンテナ21−1と受信アンテナ12の距離rを求める例について説明したが、4つ以上の送信アンテナ21を用いてもよいことは勿論である。この場合、式(7)に示した式が4つになるので、例えば、算出した伝搬時間差が、上述のようにして記録しておいた位置から推定される伝搬時間差と大幅に異なった経路(送信アンテナ21)にかかる式を伝搬時間算出の基礎とせずに、選択した式(7)の3つの式から上記伝搬時間の算出を行うことができる。
【0108】
[実施の形態2]
実施の形態1では、各無線端末装置10の送信タイミングと、基地局装置20の送信タイミングと、を一致させるようにした。その結果、基地局装置20の受信タイミングは無線端末装置10の位置によっており、通常、基地局装置20の受信タイミングは無線端末装置10間で揃っていない。これに対し、本実施の形態では、基地局装置20が備える複数の受信アンテナ22のうちのいずれか1つ(ここでは受信アンテナ22−1であるとする。)について、その受信タイミングを揃えるようにする。
【0109】
本実施の形態にかかる各装置の構成は、実施の形態1にかかるものとほぼ同様である。以下、相違点を中心に説明する。
本実施の形態において、送信タイミング調整部302の移相器323は、遅延時間制御部322から入力された制御信号から基地局装置20の送信タイミングを取得するとともに、本線系の伝搬時間(当該無線端末装置10の送信アンテナ11から送信されたOFDM信号が受信アンテナ22−1に到達するのに要する時間)を取得する(本線系伝搬時間取得手段)。
【0110】
なお、本実施の形態では受信アンテナ22−1と送信アンテナ21−1とは同じ位置にあるので、本線系の伝搬時間は、送信アンテナ21−1から送信されたOFDM信号が受信アンテナ12に到達するのに要する時間(送り返し系の伝搬時間)に等しい。そこで、移相器323は、信号伝搬時間演算部314により算出されている送り返し系の伝搬時間を、本線系の伝搬時間として取得するようにすることが好適である。
【0111】
移相器323は、算出した基地局装置20の送信タイミングから、フレーム検出部110から入力されるフレーム同期信号により示される直前のフレーム同期タイミングを差し引くことにより、遅延時間を算出する。そしてさらに、こうして算出した遅延時間から、本線系の伝搬時間を減算する。そして、順次入力されるフレーム同期信号を、こうして最終的に得られた遅延時間分だけ位相調整により遅延させ、新たなフレーム同期信号として各符号化部122に出力する。その結果、無線端末装置10の本線系信号の送信タイミングは、図11に示すように、図10に示したタイミングよりも少し前のタイミングとなる。
【0112】
以上のようにすることにより、受信アンテナ22−1から遠い無線端末装置10ほど早いタイミングでOFDM信号を送信することになり、受信アンテナ22−1での受信タイミングが揃うようになる。
【0113】
さらに、信号伝搬時間検出部301で推定した伝搬時間から、基地局装置20のある受信アンテナ22に対して、全ての無線端末装置10が出力する本線系信号が同時に受信されるように調整することで、上述したFS装置を用いずに全ての映像信号の同期を取ることが可能となっており、伝送システムの簡略化が期待できる。
【0114】
以上本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0115】
例えば、上記各実施の形態では、ワイヤレスカメラを例にとって説明した。しかし、複数の無線端末装置と複数の基地局装置又は1つの基地局装置間でOFDM信号の双方向伝送を行う他のシステムに対しても本発明の技術は適用可能であり、そうすることで、無線端末装置の本線系(上り系)のOFDM信号の送信タイミングと基地局装置の送り返し系(下り系)のOFDM信号の送信タイミングとの同期をとることができる。
【0116】
また、無線端末装置10の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、上記無線端末装置10の各処理を行ってもよい。
ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、この「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
さらに、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」には、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
さらに、上記プログラムは、上述した各機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した各機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる無線伝送システム1のシステム構成及び利用シーンを示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる各無線端末装置が、基地局装置との間で双方向のMIMO−OFDM伝送を行っている様子を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる基地局装置の機能ブロックを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる無線端末装置の機能ブロックを示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかる信号伝搬時間検出部の内部構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1にかかる2つの送信アンテナと、受信アンテナとの間の伝搬路特性より求めた、各伝搬路におけるそれぞれの遅延プロファイル特性の例を示したものである
【図7】本発明の実施の形態1にかかる4つの送信アンテナと、受信アンテナとの間の伝搬路特性より求めた、各伝搬路におけるそれぞれの遅延プロファイル特性の例を示したものである。
【図8】本発明の実施の形態1にかかる送信アンテナ3つおよび無線端末装置を示す図であり、同図ではこれら3つの送信アンテナが長方形又は正方形の頂点に配置されている。
【図9】本発明の実施の形態1にかかる送信タイミング調整部の内部構成を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1にかかる送信タイミング調整部の処理の説明図である。
【図11】本発明の実施の形態2にかかる送信タイミング調整部の処理の説明図である。
【図12】本発明の背景技術にかかるMIMO−OFDM伝送方式の送信側装置・受信側装置の例を示す図である。
【図13】本発明の課題にかかるMIMO−OFDM伝送方式の送信側装置・受信側装置の例を示す図である。
【符号の説明】
【0118】
1 無線伝送システム、
10 無線端末装置、
11,21 送信アンテナ、
12,22 受信アンテナ、
20 基地局装置、
30 映像編集装置、
100 送り返し系受信部、
101,128,208,211 ミキサ、
102,129,209,212 ローカル信号発生器、
103,213 直交復調部、
104,214 シンボル同期検出部、
105,215 GI信号除去部、
106,216 FFT部、
107,217 フレーム分離部、
108,218 直交符号乗算部、
109,219 伝搬路推定部、
110,220 フレーム検出部、
111 STBC復号部、
112,222 デマッピング部、
113,224 復号部、
120 本線系送信部、
121 S/P部、
122,201 符号化部、
123,202 マッピング部、
124,204 フレーム構成部、
125,205 IFFT部、
126,206 GI信号付加部、
127,207 直交変調部、
200 送り返し系送信部、
203 STBC符号化部、
204 フレーム構成部、
221 MIMO−OFDM復調部、
223 P/S部、
301 信号伝搬時間検出部、
302 送信タイミング調整部、
311 IFFT部、
312 直接波時間位置検出部、
313 基地局装置情報メモリ、
314 信号伝搬時間演算部、
321 処理時間メモリ、
322 遅延時間制御部、
323 移相器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置が無線送信した送り返し系信号を受信する受信手段と、
前記基地局装置が前記送り返し系信号を無線送信したタイミングに基づき、本線系信号の送信タイミングを決定する送信タイミング決定手段と、
前記送信タイミング決定手段により決定された送信タイミングで、本線系信号を無線送信する送信手段と、
を含むことを特徴とする無線端末装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線端末装置において、
前記送り返し系信号の伝搬時間を取得する送り返し系伝搬時間取得手段、
を含み、
前記送信タイミング決定手段は、前記送り返し系信号が当該無線端末装置に到達したタイミングと、前記送り返し系伝搬時間取得手段により取得された伝搬時間と、に基づいて前記基地局装置が前記送り返し系信号を無線送信したタイミングを算出する、
ことを特徴とする無線端末装置。
【請求項3】
請求項2に記載の無線端末装置において、
前記送り返し系信号は、少なくとも3本のアンテナを備える基地局装置が、これら3本のアンテナそれぞれから同時送信した少なくとも3系統の送り返し系信号により構成され、
前記受信手段は前記各系統の送り返し系信号を受信し、
当該無線端末装置は、
前記系統間の伝搬時間差を取得する伝搬時間差取得手段と、
前記各アンテナの設置される位置を記憶する記憶手段と、
を含み、
前記送り返し系伝搬時間取得手段は、前記伝搬時間差取得手段により取得される伝搬時間差と、前記記憶手段に記憶される位置と、に基づき、少なくとも1系統についての前記伝搬時間を取得し、
前記送信タイミング決定手段は、前記少なくとも3系統のうちの1系統の前記送り返し系信号が当該無線端末装置に到達したタイミングと、該系統について前記送り返し系伝搬時間取得手段により取得された前記伝搬時間と、に基づいて前記基地局装置が前記送り返し系信号を無線送信したタイミングを算出する、
ことを特徴とする無線端末装置。
【請求項4】
請求項3に記載の無線端末装置において、
前記基地局装置が送信する送り返し系信号は、系統ごとに異なる直交符号が乗算されたパイロット信号を含み、
当該無線端末装置は、
前記受信手段により受信される信号に前記各直交符号を乗算することにより、系統ごとの伝達関数を算出する伝達関数算出手段、
を含み、
前記伝搬時間差取得手段は、前記伝達関数算出手段により算出された伝達関数に基づき、前記系統間の伝搬時間差を取得する、
ことを特徴とする無線端末装置。
【請求項5】
請求項2から4までのいずれかに記載の無線端末装置において、
前記送信手段により送信された本線系信号が、前記各アンテナのうちの特定の1つに到達するのに要する伝搬時間を取得する本線系伝搬時間取得手段、
を含み、
前記送信タイミング決定手段は、算出した前記基地局装置が前記送り返し系信号を無線送信したタイミングと、前記本線系伝搬時間取得手段により取得された前記伝搬時間と、に基づいて、前記送信タイミングを決定する、
ことを特徴とする無線端末装置。
【請求項6】
複数の無線端末装置を含む無線伝送システムであって、
前記各無線端末装置は、
基地局装置が無線送信した送り返し系信号を受信する受信手段と、
前記基地局装置が前記送り返し系信号を無線送信したタイミングに基づき、本線系信号の送信タイミングを決定する送信タイミング決定手段と、
前記送信タイミング決定手段により決定された送信タイミングで、本線系信号を無線送信する送信手段と、
を含む、
ことを特徴とする無線伝送システム。
【請求項7】
基地局装置が無線送信した送り返し系信号を受信する受信手段により受信された送り返し系信号を、前記基地局装置が無線送信したタイミングに基づき、本線系信号の送信タイミングを決定する送信タイミング決定手順、及び
前記送信タイミング決定手順により決定された送信タイミングで、送信手段に本線系信号を無線送信させる手順、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−270880(P2008−270880A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107131(P2007−107131)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】