無線装置、通信障害対策方法および通信障害対策プログラム
【課題】障害原因を精度よく推定して有効な対策を少ない処理量で実行する。
【解決手段】他の無線局との間の無線リンクの障害原因を特定して対策を実行する無線装置は、無線リンクの状態を表す統計情報の特性値を取得する統計情報取得部と、特性値に基づいて、統計情報に予め関連づけられた複数の障害原因を所定の順序で検出する障害原因検出部と、障害原因検出部で検出された障害原因に予め関連づけられた対策を実行する対策実行部と、を備える。複数の障害原因は、シャドウイングの存在と電波雑音の存在とを含んでおり、所定の順序で検出とは、シャドウイングの存在を検出した後に、電波雑音の存在を検出する。
【解決手段】他の無線局との間の無線リンクの障害原因を特定して対策を実行する無線装置は、無線リンクの状態を表す統計情報の特性値を取得する統計情報取得部と、特性値に基づいて、統計情報に予め関連づけられた複数の障害原因を所定の順序で検出する障害原因検出部と、障害原因検出部で検出された障害原因に予め関連づけられた対策を実行する対策実行部と、を備える。複数の障害原因は、シャドウイングの存在と電波雑音の存在とを含んでおり、所定の順序で検出とは、シャドウイングの存在を検出した後に、電波雑音の存在を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、他の無線局と無線通信を行う無線装置、通信障害対策方法および通信障害対策プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信障害と相関関係を持つ統計情報を組み合わせて観測し、その変動パターンから、発生した通信障害の種別を推定する技術が知られている。
【0003】
しかしながら、通信障害と統計情報は必ずしも一対一に対応しているとは限らないため、単一の通信障害が単独で発生した場合には精度の高い推定が可能であるが、複数種類の通信障害が多重に発生した場合には、推定精度が悪くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−117954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、障害原因を精度よく推定して有効な対策を少ない処理量で実行可能な無線装置、通信障害対策方法および通信障害対策プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態によれば、他の無線局との間の無線リンクの障害原因を特定して対策を実行する無線装置であって、前記無線リンクの状態を表す統計情報の特性値を取得する統計情報取得部と、前記特性値に基づいて、前記統計情報に予め関連づけられた複数の障害原因を所定の順序で検出する障害原因検出部と、前記障害原因検出部で検出された障害原因に予め関連づけられた対策を実行する対策実行部と、を備える。前記複数の障害原因は、シャドウイングの存在と電波雑音の存在とを含んでおり、前記所定の順序で検出とは、前記シャドウイングの存在を検出した後に、前記電波雑音の存在を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施の形態に係る無線装置を有する無線通信システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】無線装置Mの内部構成の一例を示すブロック図。
【図3】シャドウイングが発生している状態を示す図。
【図4】電波雑音による干渉が発生している状態を示す図。
【図5】第1の実施の形態に係る統計情報取得部11の処理手順の一例を示すフローチャート。
【図6】第1の実施の形態に係る障害原因検出部13および対策実行部14の処理手順の一例を示すフローチャート。
【図7】(a)は障害原因の発生パターンを示し、(b)は障害原因の発生パターンと統計情報の特性値との関係を示す図。
【図8】重複フレームが増加する状態を示す図。
【図9】マルチパスフェージングが発生している状態を示す図。
【図10】無線基地局Aに無線端末B1および無線端末B2が接続し混雑が発生している状態を示す図。
【図11】無線端末B1と無線端末B2'がお互いに隠れ端末となる状態を示す図。
【図12】第2の実施の形態に係る障害原因検出部13および対策実行部14の処理手順の一例を示すフローチャート。
【図13A】統計情報と障害原因の関係、および、障害原因の推定と対策の処理手順の具体例を示す図。
【図13B】図13Aに続く具体例を示す図。
【図14】第3の実施の形態に係る無線装置Mの内部構成の一例を示すブロック図。
【図15】トラフィック要求に含まれるトラフィックパラメータの具体例を示す図。
【図16】無線基地局が送信する無線フレームのパラメータを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0009】
図1は一実施の形態に係る無線装置を有する無線通信システムの概略構成を示すブロック図である。図1において、1はネットワークであり、Aはネットワーク1に接続した無線基地局である。2は無線リンクであり、Bは無線リンク2に接続した無線端末である。なお、図1では、無線基地局Aに接続する無線端末Bを1台だけ示しているが、複数台の無線端末を接続しても構わない。無線リンクは例えば無線LANであるが、必ずしも無線LANに限定されるものではなく、例えば、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)に基づく無線通信方式でよい。
【0010】
図1において、無線基地局Aと無線端末Bのいずれか一方が一実施の形態に係る無線装置Mであり、他方が他の無線局である。
【0011】
図2は無線装置Mの内部構成の一例を示すブロック図である。図2の無線装置Mは、統計情報取得部11と、統計情報記憶部12と、障害原因検出部13と、対策実行部14とを有する。
【0012】
統計情報取得部11は、無線リンクの状態を表す統計情報の特性値を取得する。統計情報記憶部12は、統計情報取得部11で取得した統計情報の特性値を時間情報と共に記憶する。障害原因検出部13は、統計情報記憶部12に記憶した統計情報の特性値に基づいて、前記統計情報に予め関連づけられた複数の障害原因(フォールト)を所定の順序で検出する。対策実行部14は、障害原因検出部13で検出された障害原因に予め関連づけられた対策を実行する。
【0013】
以下では、無線装置Mが無線端末Bに実装される例を説明するが、上述したように無線装置Mは無線基地局Aに実装されることも可能である。
【0014】
まず、本実施の形態で使用する統計情報の具体例と障害原因の具体例について述べる。
【0015】
<統計情報の具体例>
(1) 受信信号強度
(2) ノイズレベル、もしくはチャネル負荷
【0016】
(1)の受信信号強度は受信信号の品質を示す指標であり、例えば、RSSI(Received Signal Strength Identifier)がその一例として利用されている。無線基地局Aと無線端末Bの間に壁等の障害物がある場合には、直接波が減衰し回折波や反射波で通信する状態となり、受信信号強度は低下するという特徴がある。
【0017】
(2)のノイズレベルとは、電波伝搬路上で生じる干渉信号や無線装置の信号受信回路で生じる熱雑音等の強度を示す指標であり、例えば、IEEE802.11k規格にて規定されたNoise Histogramが該当する。ノイズレベルは、電子レンジやBluetooth等の他規格の信号電力により増加するほか、IEEE802.11規格の無線信号であってもキャリアセンスの検出閾値に満たない低受信レベルで受信した無線信号により増加するという特徴がある。
【0018】
また、ノイズレベルの代わりに利用可能な統計情報としてチャネル負荷がある。チャネル負荷は、無線装置がキャリアセンスによりビジー状態と判断している時間の割合を示す指標であり、例えば、IEEE802.11k規格にて規定されたChannel Loadが該当する。チャネル負荷は、他の無線装置が送信する無線信号を検知した場合に増加するほか、電子レンジやBluetooth等の他規格の電波を検知した場合等にも増加する。
【0019】
<障害原因の具体例>
(1) シャドウイング
(2) 電波雑音
【0020】
(1)のシャドウイングとは、無線基地局Aと無線端末Bとが物理的に離れていて、無線信号の減衰が大きい状態、あるいは、無線基地局Aと無線端末Bとの間に壁等の遮蔽物が存在し、直接波が遮られて反射波や回折波で通信する状態を指す。
【0021】
図3はシャドウイングが発生している状態を示す図である。シャドウイングが生じると、無線端末Bで受信するフレームの受信信号電力が弱まって、フレーム復調処理が失敗する確率が高まる。また、シャドウイングには、統計情報の具体例で示した受信信号強度の低下や、無線信号が低受信レベルで受信されることによるノイズレベルの増加、フレーム再送が頻発することによるチャネル負荷の増加等を引き起こすという特徴がある。
【0022】
(2)の電波雑音とは、電子レンジやBluetooth[TM]等のIEEE802.11とは規格の異なる同一周波数帯の電波と干渉を生じる状態を指す。
【0023】
図4は電波雑音(電子レンジC)による干渉が発生している状態を示す図である。電波雑音が生じると、無線基地局Aが無線端末B宛に送信したフレームと電波雑音との間で干渉が発生する。また、電波雑音には、統計情報の具体例で示したノイズレベルおよびチャネル負荷が増加するという特徴がある。
【0024】
図5は第1の実施の形態に係る統計情報取得部11の処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、予め定められた統計情報を取得する処理を実行する(ステップS11)。次に、統計情報取得部11で取得した統計情報を統計情報記憶部12に時間情報と共に記憶する(ステップS12)。統計情報の取得を周期的に実行するために、一定時間待機して(ステップS13)、ステップS11に戻る。
【0025】
ここで、周期間隔は、例えば、インターネット上の統計取得ツールでは5分間隔で行うのが一般的である。また、同一周期で統計情報の具体例に示した全ての統計情報を取得しても構わないし、統計情報ごとに個別の周期間隔を設定して取得しても構わない。また、短時間で変動する統計情報については、平均値、最大値、最小値、標準偏差等を算出した上で、これらを統計情報記憶部12に記憶しても構わない。
【0026】
図6は第1の実施の形態に係る障害原因検出部13および対策実行部14の処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、障害原因検出部13は処理の開始入力を検知する(ステップS21)。開始入力は、例えば、周期タイマ等から定期的にトリガ信号を入力してもよいし、あるいは例えば、無線端末Bの本体にハードウェアスイッチ(ボタン)を設置し、ユーザが希望に応じて該ボタンを押した場合に、該ボタンが押されたことを開始入力として検知してもよい。前者のように、定期的に障害原因検出部13に開始入力を与えれば障害の発生状況を定期的に監視することが可能となり、後者のように、ユーザからの指示を開始入力として与えれば、ユーザがオンデマンドでかつリアルタイムに障害原因の検出を行うことが可能となる。
【0027】
次に、障害原因検出部13は、開始入力を検知した後に、統計情報記憶部12から統計情報の具体例で示した受信信号強度を取得し、シャドウイングが発生しているかどうかを判定する(ステップS22)。判定基準は、例えば、受信信号強度が予め設定した閾値(例えば-80dBm)を下回るか否かであり、下回る場合にはシャドウイングが発生しているものと判定する。
【0028】
ここで、障害原因検出部13が、シャドウイングが発生していると判定した場合には、対策実行部14はシャドウイングを解消するための予め設定された対策処理を実行する(ステップ23)。対策処理は、受信信号強度を回復する処理であればよく、例えば、IEEE802.11規格で定められる送信電力制御機能(Transmit Power Control)を用いて互いの送信電力を増強する手法でもよい。また、シャドウイングの対策処理としては、無線基地局Aと無線端末Bを物理的に近づける、あるいは、壁等の遮蔽物の無い位置へ移動することで受信信号強度を回復するという人手を介する手法でも効果が得られる。従って、例えば、無線端末Bの本体に表示装置を設置し、表示装置に具体的な対策処理を表示して、ユーザにその対策の実行を促す手法を採用してもよい。
【0029】
対策実行部14が対策を実行した後に、障害原因検出部13はシャドウイングの有無の再判定を行う。対策実行部14は、障害原因検出部13によりシャドウイングが発生していないと判定されるまで、繰り返し対策を行う。
【0030】
繰り返し対策として、繰り返しに応じて他の対策処理に切り替えても構わない。この場合、例えば、最初に送信電力制御機能による送信電力の増強を実行し、次に、ユーザに無線端末Bの物理位置の変更を指示する手法が挙げられる。
【0031】
あるいは、繰り返し対策として、同一の対策処理であっても対策効果の度合を変更して再実行しても構わない。この場合、例えば、送信電力制御機能による送信電力の増強を段階的に行う手法、あるいは、ユーザに指示する無線端末Bの物理的な変更位置を段階的に変更する手法が挙げられる。
【0032】
障害原因検出部13が、シャドウイングが発生していないと判定した場合には、統計情報記憶部12から統計情報の具体例で示したノイズレベルを取得し、電波雑音が発生しているかどうかを判定する(ステップS24)。判定基準は、例えば、ノイズレベルが予め設定した閾値(例えば-70dBm)を上回るか否かであり、上回る場合に電波雑音が発生しているものと判定する。また、ここでの判定基準にはノイズレベルではなく統計情報の具体例で示したチャネル負荷を採用しても構わない。例えば、判定基準はチャネル負荷が予め設定した閾値(例えば50%)を上回るか否かであり、上回る場合に電波雑音が発生しているものと判定する。
【0033】
ここで、障害原因検出部13が、電波雑音が発生していると判定した場合には、対策実行部14は電波雑音を解消するための予め設定された対策処理を実行する(ステップS25)。電波雑音の対策処理としては、無線基地局Aと無線端末Bを物理的に近づける、無線端末Bを電波雑音の届かない位置へ移動する、電波雑音の発信源を撤去する、という人手を介する手法が有効である。従って、例えば、無線端末Bの本体に表示装置を設置し、表示装置に対策処理を表示することでユーザにその対策の実行を促す手法を採用してもよい。
【0034】
対策実行部14が上述した対策を実行した後、障害原因検出部13は電波雑音の有無の再判定を行う。対策実行部14は、障害原因検出部13により電波雑音が発生していないと判定されるまで繰り返し対策を行う。また、繰り返し行う対策処理は、繰り返しに応じて他の対策処理に切り替えても構わない。この場合、電波雑音の発信源を撤去する指示を行った後に、次に、ユーザに無線端末Bの物理位置の変更を指示する手法が挙げられる。あるいは、繰り返しを行う対策処理は、同一の対策処理であっても対策効果の度合を変更して再実行しても構わない。この場合、ユーザに指示する無線端末Bの物理的な変更位置を段階的に変更する手法が挙げられる。
【0035】
図7は統計情報と障害原因の関係を示す図であり、図7(a)は障害原因の発生パターンを示し、図7(b)は障害原因の発生パターンと統計情報の特性値との関係を示している。図7(a)では、障害原因としてシャドウイングと電波障害の2種類のみを例示しており、図7(b)では、統計情報として受信信号強度とノイズレベルの2種類のみを例示している。また、図7(b)では、統計情報の特性値として、受信信号強度に関しては、受信信号強度が弱いことを示す「弱」と、受信信号強度に変化がないことを示す「−」の2種類を例示し、ノイズレベルに関しては、ノイズレベルが増大したことを示す「増」と、ノイズレベルに変化がないことを示す「−」の2種類を例示している。
【0036】
図7(a)において、パターン1は障害原因が発生していない状態であり、パターン2と3はいずれか一方の障害原因が発生している状態、パターン4は両方の障害原因が発生している状態を示している。
【0037】
図7(b)からわかるように、受信信号強度はシャドウイングが発生する際(パターン3と4)で低下する。また、ノイズレベルはシャドウイングまたは電波雑音が発生する際(パターン2〜4)で増加する。
【0038】
特許文献1が示す従来技術に従えば、ノイズレベルのみが増加するパターン2の場合には電波雑音が発生しているものと推定できる。しかし、受信信号強度の低下とノイズレベルの増加が同時に起こる場合(パターン3とパターン4)は、シャドウイングと電波雑音のどちらが発生したのか区別できないことから、発生している障害原因の種別を推定できない。従って、障害対策を行う上では、シャドウイングと電波雑音の両方の対策を実行するか、あるいは、効果測定を行いながら試行錯誤的に対策を実行する必要が生じる。ところが、前者では、もしシャドウイングのみが発生しているパターン3の場合には不要な電波雑音対策を実行していることになり、無駄な対策コストがかかるという問題が生じる。また、後者では、試行錯誤する上での作業ステップ数が増大し、作業が長期化するという問題が生じる。
【0039】
本実施の形態で示した障害原因の推定方式には、パターン1〜4の全てのパターンで障害原因の推定が可能であり、かつ、必要最低限の対策を最短ステップ数で実行できるという利点がある。また、本実施の形態で示した障害原因の推定方式は、汎用の無線装置Mで取得して活用できる統計情報は限定的であるという制約下において、特に効果を発揮しうる。一般的に、取り扱える統計情報が乏しければ推定可能となる障害原因も乏しくなる。その制約下において、ある特定の順序で障害原因の判定および対策を実行する工夫を行うことで、障害原因を推定可能な範囲を広げることができる。
【0040】
より具体的には、第1の実施の形態では、受信信号強度はシャドウイングと一対一に対応することに着目して、まずは、シャドウイング対策を実行する。次に、シャドウイングの問題が解消すると、今度はノイズレベルが電波雑音と一体一に対応することに着目して、電波雑音対策を実行する。これにより、シャドウイングと電波雑音が多重発生した場合でも、両者の対策を最短ステップ数で確実に実行できる。
【0041】
また、本実施の形態では、受信信号強度とノイズレベルの検出を行うだけで、シャドウイングと電波雑音の対策を実行できるため、高価な測定機器などは不要であり、ハードウェアコストを抑制できる。特に、受信信号強度とノイズレベルの検出は、汎用の無線装置が標準装備している機能で実現できるため、無線装置のハードウェア上の改良も不要であり、シャドウイングと電波雑音の対策を手軽に行うことができる。
【0042】
なお、障害原因の発生パターンは図7(a)に示した4種類に限定されないし、障害原因も図7(a)に示した2種類に限定されない。また、統計情報も図7(b)に示した2種類に限定されないし、統計情報の特性値も図7(b)に示した値に限定されない。以下に説明する第2の実施の形態では、統計情報の数と障害原因の数を第1の実施の形態よりも増やした例について説明する。
【0043】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る無線通信システムは図1と同様の構成を備え、無線基地局Aか無線端末Bのいずれか一方である無線装置Mの内部構成も図2と同様である。以下では、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0044】
まず、第2の実施の形態で使用する統計情報の具体例および障害原因の具体例について述べる。
【0045】
<統計情報の具体例>
(1) 受信信号強度
(2) ノイズレベル
(3) 重複フレーム受信割合
(4) チャネル負荷
(5) 再送割合
【0046】
(1)の受信信号強度、(2)ノイズレベル、(4)のチャネル負荷は、第1の実施の形態でも説明したため、詳細な説明を割愛する。
【0047】
(3)の重複フレーム受信割合とは、既に受信したデータフレームを再び受信する割合のことであり、例えば、IEEE802.11規格にて規定されたFrame Duplicate Countを基に計算される。重複フレームが増加する状態を図8に示す。重複フレームとして判定されるフレームは、既に受信したことがあるフレームである。つまり、DATAフレームが損失した場合の再送フレームは重複フレームとしては判定されず、ACKフレームが損失した場合の再送フレームは重複フレームとして判定される。このように、重複フレーム受信を観測することで、DATAフレームは正常に届くがACKフレームは損失するという状態の判定が可能となる。また、フレームの再送と組み合わせて観測することで、ACKフレームは正常に届くがDATAフレームは損失するという状態の判定も可能となる。
【0048】
(5)の再送割合とは、無線装置がフレームを送信したにもかかわらず、送信先からのACKフレームが得られない割合のことであり、例えば、IEEE802.11規格にて規定されたRetry Countを基に計算される。再送割合は、DATAフレームが損失した場合に増加し、また、DATAフレームが正常に届いた場合でもACKフレームが損失すれば増加する特徴がある。
【0049】
<障害原因の具体例>
(1) シャドウイング
(2) 電波雑音
(3) マルチパスフェージング
(4) 混雑
(5) 隠れ端末
【0050】
(1)のシャドウイングと(2)の電波雑音は、第1の実施の形態でも説明したため、詳細な説明を割愛する。
【0051】
(3)のマルチパスフェージングとは、直接波の他に、壁等による反射波が遅延して届く状態を指す。図9はマルチパスフェージングが発生している状態を示す図である。マルチパスフェージングが生じると、無線基地局Aが送信する直接波と、遅延して届く反射波の間で符号間干渉が発生する。また、マルチパスフェージングには、統計情報の具体例で示した再送割合が増加するほか、DATAフレームおよびACKフレームの双方が損失するため、重複フレーム受信割合が増加するという特徴がある。
【0052】
図9では、無線基地局Aから送信したDATAフレームが無線端末Bに届く前に損失してしまい、無線端末BからACKフレームが返って来ないために、無線基地局AがDATAフレームを再送する場合と、無線端末Bが送信したACKフレームが無線基地局Aに届く前に損失してしまい、無線基地局AがDATAフレームを再送する場合とを示している。
【0053】
(4)の混雑とは、あるチャネルに属する無線端末Bの数が多く、チャネルに属する全ての基地局および無線端末Bの間においてCSMA/CAによる衝突回避が頻発する状態を指す。図10は無線基地局Aに無線端末B1および無線端末B2が接続し混雑が発生している状態を示す図である。混雑が生じると、CSMA/CAによる衝突回避が失敗し、同時送信によるフレーム衝突が発生する確率が高まる。また、混雑には、統計情報の具体例で示したチャネル負荷が増加するほか、DATAフレームのみが衝突により損失するため、重複フレーム受信割合が増加しないという特徴がある。
【0054】
(5)の隠れ端末とは、無線端末B間に遮蔽物等が存在し、互いにキャリアセンスが機能しない状態を指す。図11は無線端末B1と無線端末B2'がお互いに隠れ端末となる状態を示す図である。無線端末B1と無線端末B2が隠れ端末となる場合には、無線端末B1が無線基地局Aに対してフレームを送信中であるにもかかわらず無線端末B2が無線基地局Aに対してフレームの送信を開始し、フレーム衝突が発生する確率が高まる。また、隠れ端末には、統計情報の具体例で示した再送割合が増加するほか、DATAフレームのみが衝突により損失するため、重複フレーム受信割合が増加しないという特徴がある。
【0055】
第2の実施の形態に係る統計情報取得部11は、図5のフローチャートと同様の処理手順で処理を行う。
【0056】
図12は第2の実施の形態に係る障害原因検出部13および対策実行部14の処理手順の一例を示すフローチャートである。ステップS31〜S35は図6のステップS21〜S25と同様である。
【0057】
ステップS34でノイズレベルが閾値を上回らないと判定された場合、すなわち、障害原因検出部13が、電波雑音が発生していないと判定した場合には、統計情報記憶部12から統計情報の具体例で示した重複フレーム受信割合を取得し、マルチパスフェージングが発生しているかどうかを判定する(ステップS36)。判定基準は、例えば、重複フレーム受信割合が予め設定した閾値(例えば50%)を上回るか否かであり、上回る場合にマルチパスフェージングが発生しているものと判定する。
【0058】
ここで、障害原因検出部13が、マルチパスフェージングが発生していると判定した場合には、対策実行部14はマルチパスフェージングを解消するための予め設定された対策処理を実行する(ステップ37)。ここで、対策処理はマルチパス伝搬路で生じる符号間干渉を軽減する手段であればよく、例えば、変調方式を符号間干渉に対して耐性のあるOFDM変調方式へと変更する手法、さらに、OFDM変調方式で規定する誤り訂正符号化率の高い伝送レートへと変更する手法、もしくは、マルチパス伝搬路を生じない他の基地局が存在する場合には該基地局へとローミングする手法等がある。また、マルチパスフェージングの対策処理としては、マルチパス伝搬路を生じない物理位置へと無線端末Bを移動する、反射波を生じる壁等に電波吸収材を配備する、という人手を介する手法が有効である。従って、例えば、無線端末Bの本体に表示装置を設置し、表示装置に対策処理を表示することでユーザにその対策の実行を促す手法を採用してもよい。
【0059】
対策実行部14が対策を実行すれば、障害原因検出部13によりマルチパスフェージングの有無の再判定を行う。対策実行部14は、障害原因検出部13によりマルチパスフェージングが発生していないと判定されるまで繰り返し対策を行うことを特徴とする。また、繰り返し行う対策処理は、繰り返しに応じて他の対策処理に切り替えても構わないし、同一の対策処理であっても対策効果の度合を変更して再実行しても構わない。例えば、前者には、OFDM変調方式へと変更する対策を実行し、次に、ユーザに無線端末Bの物理位置の変更を指示する手法が挙げられる。また、後者には、ユーザに指示する無線端末Bの物理的な変更位置を段階的に変更する手法が挙げられる。
【0060】
障害原因検出部13が、マルチパスフェージングが発生していないと判定した場合には、統計情報記憶部12から統計情報の具体例で示したチャネル負荷を取得し、混雑が発生しているかどうかを判定する(ステップS38)。判定基準は、例えば、チャネル負荷が予め設定した閾値(例えば50%)を上回るか否かであり、上回る場合に混雑が発生しているものと判定する。
【0061】
ここで、障害原因検出部13が、混雑が発生していると判定した場合には、対策実行部14は混雑を解消するための予め設定された対策処理を実行する(ステップ39)。対策処理は混雑で生じる同時送信を抑制する手段であればよく、例えば、同時送信を生じる原因となっているDCF(Distributed Coordination Function)での媒体アクセスの競合そのものを解消できるPCF(Point Coordination Function)へとアクセス方式を切り替える手法、無線基地局Aに接続する無線端末Bの数を制限し混雑の発生を未然に防止するアドミッション制御を導入する手法等がある。
【0062】
対策実行部14が対策を実行すれば、障害原因検出部13により混雑の有無の再判定を行う。対策実行部14は、障害原因検出部13により混雑が発生していないと判定されるまで繰り返し対策を行うことを特徴とする。また、繰り返し行う対策処理は、繰り返しに応じて他の対策処理に切り替えても構わないし、同一の対策処理であっても対策効果の度合を変更して再実行しても構わない。例えば、前者には、PCFへのアクセス方式の変更を実行し、次に、無線端末Bの接続数制限を実行する手法が挙げられる。また、後者には、接続制限する無線端末Bの数を段階的に変更する手法が挙げられる。
【0063】
障害原因検出部13が、混雑が発生していないと判定した場合には、統計情報記憶部12から統計情報の具体例で示した再送割合を取得し、隠れ端末が発生しているかどうかを判定する(ステップS40)。判定基準は、例えば、再送割合が予め設定した閾値(例えば50%)を上回るか否かであり、上回る場合に隠れ端末が発生しているものと判定する。
【0064】
ここで、障害原因検出部13が、隠れ端末が発生していると判定した場合には、対策実行部14は隠れ端末を解消するための予め設定された対策処理を実行する(ステップ41)。ここで、対策処理は隠れ端末で生じるフレーム衝突を抑制する手段であればよく、例えば、IEEE802.11規格で規定されたRTS/CTS機能を有効にする手法等がある。また、隠れ端末の対策処理としては、隠れ端末の関係にある無線端末Bを互いにキャリアセンスが可能となる物理位置へ移動するという人手を介する手法が有効である。従って、例えば、無線端末Bの本体に表示装置を設置し、表示装置に対策処理を表示することでユーザにその対策の実行を促す手法を採用してもよい。
【0065】
対策実行部14が対策を実行すれば、障害原因検出部13により隠れ端末の有無の再判定を行う。対策実行部14は、障害原因検出部13により隠れ端末が発生していないと判定されるまで繰り返し対策を行うことを特徴とする。また、繰り返し行う対策処理は、繰り返しに応じて他の対策処理に切り替えても構わないし、同一の対策処理であっても対策効果の度合を変更して再実行しても構わない。例えば、前者には、RTS/CTS機能を有効化した後に、次に、ユーザに無線端末Bの物理位置の変更を指示する手法が挙げられる。また、後者には、ユーザに指示する無線端末Bの物理的な変更位置を段階的に変更する手法が挙げられる。
【0066】
ここで、図12のフローチャートで示した障害原因の推定と対策の処理手順に関して、統計情報と障害原因の関係を基に、具体例を説明する。図13Aおよび図13Bは、統計情報と障害原因の関係、および、障害原因の推定と対策の処理手順の具体例を示す図である。図13Aおよび図13Bでは、障害原因ごとに、統計情報の特性値がどのように変化するかを示している。例えば、受信信号強度については「減」か「−]で、ノイズレベル、重複フレーム受信割合、チャネル負荷および再送割合については「増」か「−」で表している。
【0067】
図13Aおよび図13Bからわかるように、障害原因と統計情報の特性値とは一対一に対応しているが、同じ障害原因に対して、複数種類の統計情報の特性値が対応している場合がある。このため、統計情報の種類だけでは、障害原因を特定することはできない。
【0068】
そこで、本実施の形態では、図12のフローチャートに従って、障害原因を特定できるように複数種類の統計情報に優先順位をつけて、一つずつ統計情報の特性値を判別して、障害原因の対策を行う。
【0069】
図13A(a)に示す段階1では、図12のステップS32およびS33に該当する処理手順を行う。図13A(a)からわかるように、受信信号強度は複数種類の障害原因の中でシャドウイングのみと相関のある統計情報である。したがって、受信信号強度が所定の閾値を下回らないように対策を行うことは、シャドウイングの対策を行うことと等価である。そこで、シャドウイングの対策を行うことで、受信信号強度が所定の閾値を上回ることになり、シャドウイングの問題が解消する。
【0070】
次に、図13A(b)に示す段階2では、図12のステップS34およびS35に該当する処理手順を行う。図13A(b)からわかるように、ノイズレベルは複数種類の障害原因の中で電波雑音のみと相関のある統計情報である。したがって、ノイズレベルが所定の閾値を上回らないように対策を行うことは、電波雑音の対策を行うことと等価である。そこで、電波雑音の対策を行うことで、ノイズレベルは所定の閾値を下回ることになり、電波雑音の問題が解消する。
【0071】
次に、図13A(c)に示す段階3では、図12のステップS36およびS37に該当する処理手順を行う。図13A(c)からわかるように、重複フレーム受信割合は複数種類の障害原因の中でマルチパスフェージングのみと相関のある統計情報である。したがって、重複フレーム受信割合が所定の閾値を上回らないように対策を行うことは、マルチパスフェージングの対策を行うことと等価である。そこで、マルチパスフェージングの対策を行うことで、重複フレーム受信割合は所定の閾値を下回ることになり、マルチパスフェージングの問題が解消する。
【0072】
次に、図13B(d)に示す段階4では、図12のステップS38およびS39に該当する処理手順を行う。図13B(d)からわかるように、チャネル負荷は複数種類の障害原因の中で混雑のみと相関のある統計情報である。したがって、チャネル負荷が所定の閾値を上回らないように対策を行うことは、混雑の対策を行うことと等価である。そこで、混雑の対策を行うことで、チャネル負荷は所定の閾値を下回ることになり、混雑の問題が解消する。
【0073】
次に、図13B(e)に示す段階5では、図12のステップS40およびS41に該当する処理手順を行う。図13B(e)からわかるように、再送割合は複数種類の障害原因の中で隠れ端末のみと相関のある統計情報である。したがって、再送割合が所定の閾値を上回らないよう対策を行うことは、隠れ端末の対策を行うことと等価である。そこで、隠れ端末の対策を行うことで、再送割合が所定の閾値を下回ることになり、再送割合の問題が解消する。段階5を経ることで、図13B(f)に示す段階6のように、すべての障害原因が解消する。
【0074】
このように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態よりも種類の多い障害原因が多重に発生している状況でも、一つの障害原因と一対一の関係にある統計情報の特性値を判別して、個々の障害原因に対する対策を一つずつ実行することで、最短ステップ数ですべての障害原因を解消することができる。
【0075】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態は、無線装置Mから他の無線局に対して、障害原因を検出するのに利用可能なトラフィック要求を送信するものである。
【0076】
障害原因の推定には、無線トラフィックの送受信に伴って変動する統計情報が利用される。トラフィックが少ない場合には、統計情報の変動も少なく、推定精度が低下したり、閾値に達するまでの時間が増大したりすることがある。
【0077】
また、無線トラフィックには、送信電力、ペイロード長および伝送レートなどのパラメータがあり、統計情報の変動量に影響を及ぼす場合があるため、考慮の必要がある。以下に説明する第3の実施の形態では、まず、第1の実施の形態で触れた各統計情報に関し、障害原因推定に適した無線トラフィックのパラメータについて説明する。
【0078】
受信信号強度は、受信に成功した無線フレームの信号強度を反映する統計情報であるため、受信に成功しやすい無線フレームを通信相手に送信させることによって、統計サンプルを効率よく収集することができる。受信に成功しやすい無線フレームとは、例えば、伝送レートが低く(ビットエラーレートが小さい)、フレーム長が小さく(フレームエラーレートが小さい)、送信電力が大きい(SN比が大きい)フレームである。
【0079】
重複フレーム受信割合は、(1)データフレームの受信に成功し、(2)それに対するACKフレームが欠損し、(3)データフレームが再送されることによって増大する統計情報であるため、受信に成功しやすい無線フレームを通信相手に送信させることによって、ACKフレームの欠損を効率よく計測することができる。この場合の受信に成功しやすい無線フレームは、受信信号強度の場合と同様である。
【0080】
再送割合は、(1)データフレームを送信し、(2)それに対するACKが得られず、(3)データフレームを再送することによって送信側で増大する統計情報であるため、送信した無線フレームのパラメータを加味して再送割合の判定閾値を調整すれば良い。
【0081】
ノイズレベルおよびチャネル負荷は、周辺の電波状況が計測される統計情報であるため、障害原因推定を実施する無線端末Bでは無線フレームの送受信を控えるか、送受する無線フレームのパラメータを把握してその影響を加味しても良い。
【0082】
以上のとおり、統計情報を利用した障害原因推定に適した無線トラフィックのパラメータについて説明したが、以降では、無線端末Bが無線基地局Aに対し障害原因推定に適したトラフィックを要求する例を示す。
【0083】
図14は第3の実施の形態に係る無線装置Mの内部構成の一例を示すブロック図である。図14の無線装置Mは、図2と同様に統計情報取得部101、統計情報記憶部102、障害原因検出部103および対策実行部104を備えており、これに加えて、通信相手にトラフィック要求を送信するトラフィック要求部100を備えている。
【0084】
図14の無線装置Mは、第1および第2の実施の形態と同様に、無線基地局Aと無線端末Bのいずれかに実装される。
【0085】
トラフィック要求部100は、定期的に、あるいは、無線端末Bにおける再送割合が既定の閾値を超過するなど統計情報が特定の条件を満たした場合に、あるいは、ユーザの指示があった場合、あるいは、これらの2以上の場合に、トラフィック要求を他の無線局(無線基地局Aまたは無線端末B)に送信する。
【0086】
図15はトラフィック要求に含まれるトラフィックパラメータの具体例を示す図である。トラフィック要求には、図15に示すパラメータのうち少なくとも一つが含まれる。個々のパラメータは、具体的な数値でも良いし、「最大」や「最小」等の程度を表す指標値でもよい。
【0087】
トラフィック要求を受信した無線局(以下では、無線基地局Aとする)は、トラフィック要求に含まれるパラメータを指定の値に設定し、無線装置M(以下では、無線端末Bとする)宛のトラフィックを生成する。例えば、図15のパラメータ全てを含むトラフィック要求を受信した無線基地局Aは、1秒間待機し、図16に示すパラメータの無線フレームを100fpsの送信頻度で10秒間、総計100フレーム送信する。
【0088】
トラフィック要求部100と統計情報部101は非同期で動作してもよいし、トラフィック開始時およびトラフィック終了時にトラフィック要求部100が統計情報部101に通知し、トラフィック発生期間中は統計情報の取得間隔を通常より短くするなどの同期した処理を行っても良い。トラフィック終了のタイミングは、トラフィック要求のパラメータとして指定した時間もしくはトラフィック量の超過を検出した時間でもよいし、無線基地局Aにトラフィック停止要求を送信して、トラフィック終了を通知してもよい。
【0089】
上記の説明では、トラフィック要求の中に、障害原因推定に適したトラフィックパラメータを含めて送信する例を示したが、無線端末Bが無線基地局Aに予めトラフィックパラメータを通知してある場合など、無線基地局Aが適切なパラメータを予め把握している場合にはトラフィック要求にトラフィックパラメータを含めなくてもよい。
【0090】
このように、第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態に加えて、無線端末Bから無線基地局Aに対して、障害原因推定に適したトラフィック要求を送信するため、第1の実施形態よりもさらに障害原因の推定精度を向上でき、かつ推定にかかる時間の短縮も可能となる。
上述した実施の形態で説明した無線装置および無線通信システムの少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、無線装置および無線通信システムの少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0091】
また、無線装置および無線通信システムの少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0092】
なお、本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい
【符号の説明】
【0093】
11、101 統計情報取得部
12、102 統計情報記憶部
13、103 障害原因検出部
14、104 対策実行部
100 トラフィック要求部
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、他の無線局と無線通信を行う無線装置、通信障害対策方法および通信障害対策プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信障害と相関関係を持つ統計情報を組み合わせて観測し、その変動パターンから、発生した通信障害の種別を推定する技術が知られている。
【0003】
しかしながら、通信障害と統計情報は必ずしも一対一に対応しているとは限らないため、単一の通信障害が単独で発生した場合には精度の高い推定が可能であるが、複数種類の通信障害が多重に発生した場合には、推定精度が悪くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−117954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、障害原因を精度よく推定して有効な対策を少ない処理量で実行可能な無線装置、通信障害対策方法および通信障害対策プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態によれば、他の無線局との間の無線リンクの障害原因を特定して対策を実行する無線装置であって、前記無線リンクの状態を表す統計情報の特性値を取得する統計情報取得部と、前記特性値に基づいて、前記統計情報に予め関連づけられた複数の障害原因を所定の順序で検出する障害原因検出部と、前記障害原因検出部で検出された障害原因に予め関連づけられた対策を実行する対策実行部と、を備える。前記複数の障害原因は、シャドウイングの存在と電波雑音の存在とを含んでおり、前記所定の順序で検出とは、前記シャドウイングの存在を検出した後に、前記電波雑音の存在を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施の形態に係る無線装置を有する無線通信システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】無線装置Mの内部構成の一例を示すブロック図。
【図3】シャドウイングが発生している状態を示す図。
【図4】電波雑音による干渉が発生している状態を示す図。
【図5】第1の実施の形態に係る統計情報取得部11の処理手順の一例を示すフローチャート。
【図6】第1の実施の形態に係る障害原因検出部13および対策実行部14の処理手順の一例を示すフローチャート。
【図7】(a)は障害原因の発生パターンを示し、(b)は障害原因の発生パターンと統計情報の特性値との関係を示す図。
【図8】重複フレームが増加する状態を示す図。
【図9】マルチパスフェージングが発生している状態を示す図。
【図10】無線基地局Aに無線端末B1および無線端末B2が接続し混雑が発生している状態を示す図。
【図11】無線端末B1と無線端末B2'がお互いに隠れ端末となる状態を示す図。
【図12】第2の実施の形態に係る障害原因検出部13および対策実行部14の処理手順の一例を示すフローチャート。
【図13A】統計情報と障害原因の関係、および、障害原因の推定と対策の処理手順の具体例を示す図。
【図13B】図13Aに続く具体例を示す図。
【図14】第3の実施の形態に係る無線装置Mの内部構成の一例を示すブロック図。
【図15】トラフィック要求に含まれるトラフィックパラメータの具体例を示す図。
【図16】無線基地局が送信する無線フレームのパラメータを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0009】
図1は一実施の形態に係る無線装置を有する無線通信システムの概略構成を示すブロック図である。図1において、1はネットワークであり、Aはネットワーク1に接続した無線基地局である。2は無線リンクであり、Bは無線リンク2に接続した無線端末である。なお、図1では、無線基地局Aに接続する無線端末Bを1台だけ示しているが、複数台の無線端末を接続しても構わない。無線リンクは例えば無線LANであるが、必ずしも無線LANに限定されるものではなく、例えば、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)に基づく無線通信方式でよい。
【0010】
図1において、無線基地局Aと無線端末Bのいずれか一方が一実施の形態に係る無線装置Mであり、他方が他の無線局である。
【0011】
図2は無線装置Mの内部構成の一例を示すブロック図である。図2の無線装置Mは、統計情報取得部11と、統計情報記憶部12と、障害原因検出部13と、対策実行部14とを有する。
【0012】
統計情報取得部11は、無線リンクの状態を表す統計情報の特性値を取得する。統計情報記憶部12は、統計情報取得部11で取得した統計情報の特性値を時間情報と共に記憶する。障害原因検出部13は、統計情報記憶部12に記憶した統計情報の特性値に基づいて、前記統計情報に予め関連づけられた複数の障害原因(フォールト)を所定の順序で検出する。対策実行部14は、障害原因検出部13で検出された障害原因に予め関連づけられた対策を実行する。
【0013】
以下では、無線装置Mが無線端末Bに実装される例を説明するが、上述したように無線装置Mは無線基地局Aに実装されることも可能である。
【0014】
まず、本実施の形態で使用する統計情報の具体例と障害原因の具体例について述べる。
【0015】
<統計情報の具体例>
(1) 受信信号強度
(2) ノイズレベル、もしくはチャネル負荷
【0016】
(1)の受信信号強度は受信信号の品質を示す指標であり、例えば、RSSI(Received Signal Strength Identifier)がその一例として利用されている。無線基地局Aと無線端末Bの間に壁等の障害物がある場合には、直接波が減衰し回折波や反射波で通信する状態となり、受信信号強度は低下するという特徴がある。
【0017】
(2)のノイズレベルとは、電波伝搬路上で生じる干渉信号や無線装置の信号受信回路で生じる熱雑音等の強度を示す指標であり、例えば、IEEE802.11k規格にて規定されたNoise Histogramが該当する。ノイズレベルは、電子レンジやBluetooth等の他規格の信号電力により増加するほか、IEEE802.11規格の無線信号であってもキャリアセンスの検出閾値に満たない低受信レベルで受信した無線信号により増加するという特徴がある。
【0018】
また、ノイズレベルの代わりに利用可能な統計情報としてチャネル負荷がある。チャネル負荷は、無線装置がキャリアセンスによりビジー状態と判断している時間の割合を示す指標であり、例えば、IEEE802.11k規格にて規定されたChannel Loadが該当する。チャネル負荷は、他の無線装置が送信する無線信号を検知した場合に増加するほか、電子レンジやBluetooth等の他規格の電波を検知した場合等にも増加する。
【0019】
<障害原因の具体例>
(1) シャドウイング
(2) 電波雑音
【0020】
(1)のシャドウイングとは、無線基地局Aと無線端末Bとが物理的に離れていて、無線信号の減衰が大きい状態、あるいは、無線基地局Aと無線端末Bとの間に壁等の遮蔽物が存在し、直接波が遮られて反射波や回折波で通信する状態を指す。
【0021】
図3はシャドウイングが発生している状態を示す図である。シャドウイングが生じると、無線端末Bで受信するフレームの受信信号電力が弱まって、フレーム復調処理が失敗する確率が高まる。また、シャドウイングには、統計情報の具体例で示した受信信号強度の低下や、無線信号が低受信レベルで受信されることによるノイズレベルの増加、フレーム再送が頻発することによるチャネル負荷の増加等を引き起こすという特徴がある。
【0022】
(2)の電波雑音とは、電子レンジやBluetooth[TM]等のIEEE802.11とは規格の異なる同一周波数帯の電波と干渉を生じる状態を指す。
【0023】
図4は電波雑音(電子レンジC)による干渉が発生している状態を示す図である。電波雑音が生じると、無線基地局Aが無線端末B宛に送信したフレームと電波雑音との間で干渉が発生する。また、電波雑音には、統計情報の具体例で示したノイズレベルおよびチャネル負荷が増加するという特徴がある。
【0024】
図5は第1の実施の形態に係る統計情報取得部11の処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、予め定められた統計情報を取得する処理を実行する(ステップS11)。次に、統計情報取得部11で取得した統計情報を統計情報記憶部12に時間情報と共に記憶する(ステップS12)。統計情報の取得を周期的に実行するために、一定時間待機して(ステップS13)、ステップS11に戻る。
【0025】
ここで、周期間隔は、例えば、インターネット上の統計取得ツールでは5分間隔で行うのが一般的である。また、同一周期で統計情報の具体例に示した全ての統計情報を取得しても構わないし、統計情報ごとに個別の周期間隔を設定して取得しても構わない。また、短時間で変動する統計情報については、平均値、最大値、最小値、標準偏差等を算出した上で、これらを統計情報記憶部12に記憶しても構わない。
【0026】
図6は第1の実施の形態に係る障害原因検出部13および対策実行部14の処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、障害原因検出部13は処理の開始入力を検知する(ステップS21)。開始入力は、例えば、周期タイマ等から定期的にトリガ信号を入力してもよいし、あるいは例えば、無線端末Bの本体にハードウェアスイッチ(ボタン)を設置し、ユーザが希望に応じて該ボタンを押した場合に、該ボタンが押されたことを開始入力として検知してもよい。前者のように、定期的に障害原因検出部13に開始入力を与えれば障害の発生状況を定期的に監視することが可能となり、後者のように、ユーザからの指示を開始入力として与えれば、ユーザがオンデマンドでかつリアルタイムに障害原因の検出を行うことが可能となる。
【0027】
次に、障害原因検出部13は、開始入力を検知した後に、統計情報記憶部12から統計情報の具体例で示した受信信号強度を取得し、シャドウイングが発生しているかどうかを判定する(ステップS22)。判定基準は、例えば、受信信号強度が予め設定した閾値(例えば-80dBm)を下回るか否かであり、下回る場合にはシャドウイングが発生しているものと判定する。
【0028】
ここで、障害原因検出部13が、シャドウイングが発生していると判定した場合には、対策実行部14はシャドウイングを解消するための予め設定された対策処理を実行する(ステップ23)。対策処理は、受信信号強度を回復する処理であればよく、例えば、IEEE802.11規格で定められる送信電力制御機能(Transmit Power Control)を用いて互いの送信電力を増強する手法でもよい。また、シャドウイングの対策処理としては、無線基地局Aと無線端末Bを物理的に近づける、あるいは、壁等の遮蔽物の無い位置へ移動することで受信信号強度を回復するという人手を介する手法でも効果が得られる。従って、例えば、無線端末Bの本体に表示装置を設置し、表示装置に具体的な対策処理を表示して、ユーザにその対策の実行を促す手法を採用してもよい。
【0029】
対策実行部14が対策を実行した後に、障害原因検出部13はシャドウイングの有無の再判定を行う。対策実行部14は、障害原因検出部13によりシャドウイングが発生していないと判定されるまで、繰り返し対策を行う。
【0030】
繰り返し対策として、繰り返しに応じて他の対策処理に切り替えても構わない。この場合、例えば、最初に送信電力制御機能による送信電力の増強を実行し、次に、ユーザに無線端末Bの物理位置の変更を指示する手法が挙げられる。
【0031】
あるいは、繰り返し対策として、同一の対策処理であっても対策効果の度合を変更して再実行しても構わない。この場合、例えば、送信電力制御機能による送信電力の増強を段階的に行う手法、あるいは、ユーザに指示する無線端末Bの物理的な変更位置を段階的に変更する手法が挙げられる。
【0032】
障害原因検出部13が、シャドウイングが発生していないと判定した場合には、統計情報記憶部12から統計情報の具体例で示したノイズレベルを取得し、電波雑音が発生しているかどうかを判定する(ステップS24)。判定基準は、例えば、ノイズレベルが予め設定した閾値(例えば-70dBm)を上回るか否かであり、上回る場合に電波雑音が発生しているものと判定する。また、ここでの判定基準にはノイズレベルではなく統計情報の具体例で示したチャネル負荷を採用しても構わない。例えば、判定基準はチャネル負荷が予め設定した閾値(例えば50%)を上回るか否かであり、上回る場合に電波雑音が発生しているものと判定する。
【0033】
ここで、障害原因検出部13が、電波雑音が発生していると判定した場合には、対策実行部14は電波雑音を解消するための予め設定された対策処理を実行する(ステップS25)。電波雑音の対策処理としては、無線基地局Aと無線端末Bを物理的に近づける、無線端末Bを電波雑音の届かない位置へ移動する、電波雑音の発信源を撤去する、という人手を介する手法が有効である。従って、例えば、無線端末Bの本体に表示装置を設置し、表示装置に対策処理を表示することでユーザにその対策の実行を促す手法を採用してもよい。
【0034】
対策実行部14が上述した対策を実行した後、障害原因検出部13は電波雑音の有無の再判定を行う。対策実行部14は、障害原因検出部13により電波雑音が発生していないと判定されるまで繰り返し対策を行う。また、繰り返し行う対策処理は、繰り返しに応じて他の対策処理に切り替えても構わない。この場合、電波雑音の発信源を撤去する指示を行った後に、次に、ユーザに無線端末Bの物理位置の変更を指示する手法が挙げられる。あるいは、繰り返しを行う対策処理は、同一の対策処理であっても対策効果の度合を変更して再実行しても構わない。この場合、ユーザに指示する無線端末Bの物理的な変更位置を段階的に変更する手法が挙げられる。
【0035】
図7は統計情報と障害原因の関係を示す図であり、図7(a)は障害原因の発生パターンを示し、図7(b)は障害原因の発生パターンと統計情報の特性値との関係を示している。図7(a)では、障害原因としてシャドウイングと電波障害の2種類のみを例示しており、図7(b)では、統計情報として受信信号強度とノイズレベルの2種類のみを例示している。また、図7(b)では、統計情報の特性値として、受信信号強度に関しては、受信信号強度が弱いことを示す「弱」と、受信信号強度に変化がないことを示す「−」の2種類を例示し、ノイズレベルに関しては、ノイズレベルが増大したことを示す「増」と、ノイズレベルに変化がないことを示す「−」の2種類を例示している。
【0036】
図7(a)において、パターン1は障害原因が発生していない状態であり、パターン2と3はいずれか一方の障害原因が発生している状態、パターン4は両方の障害原因が発生している状態を示している。
【0037】
図7(b)からわかるように、受信信号強度はシャドウイングが発生する際(パターン3と4)で低下する。また、ノイズレベルはシャドウイングまたは電波雑音が発生する際(パターン2〜4)で増加する。
【0038】
特許文献1が示す従来技術に従えば、ノイズレベルのみが増加するパターン2の場合には電波雑音が発生しているものと推定できる。しかし、受信信号強度の低下とノイズレベルの増加が同時に起こる場合(パターン3とパターン4)は、シャドウイングと電波雑音のどちらが発生したのか区別できないことから、発生している障害原因の種別を推定できない。従って、障害対策を行う上では、シャドウイングと電波雑音の両方の対策を実行するか、あるいは、効果測定を行いながら試行錯誤的に対策を実行する必要が生じる。ところが、前者では、もしシャドウイングのみが発生しているパターン3の場合には不要な電波雑音対策を実行していることになり、無駄な対策コストがかかるという問題が生じる。また、後者では、試行錯誤する上での作業ステップ数が増大し、作業が長期化するという問題が生じる。
【0039】
本実施の形態で示した障害原因の推定方式には、パターン1〜4の全てのパターンで障害原因の推定が可能であり、かつ、必要最低限の対策を最短ステップ数で実行できるという利点がある。また、本実施の形態で示した障害原因の推定方式は、汎用の無線装置Mで取得して活用できる統計情報は限定的であるという制約下において、特に効果を発揮しうる。一般的に、取り扱える統計情報が乏しければ推定可能となる障害原因も乏しくなる。その制約下において、ある特定の順序で障害原因の判定および対策を実行する工夫を行うことで、障害原因を推定可能な範囲を広げることができる。
【0040】
より具体的には、第1の実施の形態では、受信信号強度はシャドウイングと一対一に対応することに着目して、まずは、シャドウイング対策を実行する。次に、シャドウイングの問題が解消すると、今度はノイズレベルが電波雑音と一体一に対応することに着目して、電波雑音対策を実行する。これにより、シャドウイングと電波雑音が多重発生した場合でも、両者の対策を最短ステップ数で確実に実行できる。
【0041】
また、本実施の形態では、受信信号強度とノイズレベルの検出を行うだけで、シャドウイングと電波雑音の対策を実行できるため、高価な測定機器などは不要であり、ハードウェアコストを抑制できる。特に、受信信号強度とノイズレベルの検出は、汎用の無線装置が標準装備している機能で実現できるため、無線装置のハードウェア上の改良も不要であり、シャドウイングと電波雑音の対策を手軽に行うことができる。
【0042】
なお、障害原因の発生パターンは図7(a)に示した4種類に限定されないし、障害原因も図7(a)に示した2種類に限定されない。また、統計情報も図7(b)に示した2種類に限定されないし、統計情報の特性値も図7(b)に示した値に限定されない。以下に説明する第2の実施の形態では、統計情報の数と障害原因の数を第1の実施の形態よりも増やした例について説明する。
【0043】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る無線通信システムは図1と同様の構成を備え、無線基地局Aか無線端末Bのいずれか一方である無線装置Mの内部構成も図2と同様である。以下では、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0044】
まず、第2の実施の形態で使用する統計情報の具体例および障害原因の具体例について述べる。
【0045】
<統計情報の具体例>
(1) 受信信号強度
(2) ノイズレベル
(3) 重複フレーム受信割合
(4) チャネル負荷
(5) 再送割合
【0046】
(1)の受信信号強度、(2)ノイズレベル、(4)のチャネル負荷は、第1の実施の形態でも説明したため、詳細な説明を割愛する。
【0047】
(3)の重複フレーム受信割合とは、既に受信したデータフレームを再び受信する割合のことであり、例えば、IEEE802.11規格にて規定されたFrame Duplicate Countを基に計算される。重複フレームが増加する状態を図8に示す。重複フレームとして判定されるフレームは、既に受信したことがあるフレームである。つまり、DATAフレームが損失した場合の再送フレームは重複フレームとしては判定されず、ACKフレームが損失した場合の再送フレームは重複フレームとして判定される。このように、重複フレーム受信を観測することで、DATAフレームは正常に届くがACKフレームは損失するという状態の判定が可能となる。また、フレームの再送と組み合わせて観測することで、ACKフレームは正常に届くがDATAフレームは損失するという状態の判定も可能となる。
【0048】
(5)の再送割合とは、無線装置がフレームを送信したにもかかわらず、送信先からのACKフレームが得られない割合のことであり、例えば、IEEE802.11規格にて規定されたRetry Countを基に計算される。再送割合は、DATAフレームが損失した場合に増加し、また、DATAフレームが正常に届いた場合でもACKフレームが損失すれば増加する特徴がある。
【0049】
<障害原因の具体例>
(1) シャドウイング
(2) 電波雑音
(3) マルチパスフェージング
(4) 混雑
(5) 隠れ端末
【0050】
(1)のシャドウイングと(2)の電波雑音は、第1の実施の形態でも説明したため、詳細な説明を割愛する。
【0051】
(3)のマルチパスフェージングとは、直接波の他に、壁等による反射波が遅延して届く状態を指す。図9はマルチパスフェージングが発生している状態を示す図である。マルチパスフェージングが生じると、無線基地局Aが送信する直接波と、遅延して届く反射波の間で符号間干渉が発生する。また、マルチパスフェージングには、統計情報の具体例で示した再送割合が増加するほか、DATAフレームおよびACKフレームの双方が損失するため、重複フレーム受信割合が増加するという特徴がある。
【0052】
図9では、無線基地局Aから送信したDATAフレームが無線端末Bに届く前に損失してしまい、無線端末BからACKフレームが返って来ないために、無線基地局AがDATAフレームを再送する場合と、無線端末Bが送信したACKフレームが無線基地局Aに届く前に損失してしまい、無線基地局AがDATAフレームを再送する場合とを示している。
【0053】
(4)の混雑とは、あるチャネルに属する無線端末Bの数が多く、チャネルに属する全ての基地局および無線端末Bの間においてCSMA/CAによる衝突回避が頻発する状態を指す。図10は無線基地局Aに無線端末B1および無線端末B2が接続し混雑が発生している状態を示す図である。混雑が生じると、CSMA/CAによる衝突回避が失敗し、同時送信によるフレーム衝突が発生する確率が高まる。また、混雑には、統計情報の具体例で示したチャネル負荷が増加するほか、DATAフレームのみが衝突により損失するため、重複フレーム受信割合が増加しないという特徴がある。
【0054】
(5)の隠れ端末とは、無線端末B間に遮蔽物等が存在し、互いにキャリアセンスが機能しない状態を指す。図11は無線端末B1と無線端末B2'がお互いに隠れ端末となる状態を示す図である。無線端末B1と無線端末B2が隠れ端末となる場合には、無線端末B1が無線基地局Aに対してフレームを送信中であるにもかかわらず無線端末B2が無線基地局Aに対してフレームの送信を開始し、フレーム衝突が発生する確率が高まる。また、隠れ端末には、統計情報の具体例で示した再送割合が増加するほか、DATAフレームのみが衝突により損失するため、重複フレーム受信割合が増加しないという特徴がある。
【0055】
第2の実施の形態に係る統計情報取得部11は、図5のフローチャートと同様の処理手順で処理を行う。
【0056】
図12は第2の実施の形態に係る障害原因検出部13および対策実行部14の処理手順の一例を示すフローチャートである。ステップS31〜S35は図6のステップS21〜S25と同様である。
【0057】
ステップS34でノイズレベルが閾値を上回らないと判定された場合、すなわち、障害原因検出部13が、電波雑音が発生していないと判定した場合には、統計情報記憶部12から統計情報の具体例で示した重複フレーム受信割合を取得し、マルチパスフェージングが発生しているかどうかを判定する(ステップS36)。判定基準は、例えば、重複フレーム受信割合が予め設定した閾値(例えば50%)を上回るか否かであり、上回る場合にマルチパスフェージングが発生しているものと判定する。
【0058】
ここで、障害原因検出部13が、マルチパスフェージングが発生していると判定した場合には、対策実行部14はマルチパスフェージングを解消するための予め設定された対策処理を実行する(ステップ37)。ここで、対策処理はマルチパス伝搬路で生じる符号間干渉を軽減する手段であればよく、例えば、変調方式を符号間干渉に対して耐性のあるOFDM変調方式へと変更する手法、さらに、OFDM変調方式で規定する誤り訂正符号化率の高い伝送レートへと変更する手法、もしくは、マルチパス伝搬路を生じない他の基地局が存在する場合には該基地局へとローミングする手法等がある。また、マルチパスフェージングの対策処理としては、マルチパス伝搬路を生じない物理位置へと無線端末Bを移動する、反射波を生じる壁等に電波吸収材を配備する、という人手を介する手法が有効である。従って、例えば、無線端末Bの本体に表示装置を設置し、表示装置に対策処理を表示することでユーザにその対策の実行を促す手法を採用してもよい。
【0059】
対策実行部14が対策を実行すれば、障害原因検出部13によりマルチパスフェージングの有無の再判定を行う。対策実行部14は、障害原因検出部13によりマルチパスフェージングが発生していないと判定されるまで繰り返し対策を行うことを特徴とする。また、繰り返し行う対策処理は、繰り返しに応じて他の対策処理に切り替えても構わないし、同一の対策処理であっても対策効果の度合を変更して再実行しても構わない。例えば、前者には、OFDM変調方式へと変更する対策を実行し、次に、ユーザに無線端末Bの物理位置の変更を指示する手法が挙げられる。また、後者には、ユーザに指示する無線端末Bの物理的な変更位置を段階的に変更する手法が挙げられる。
【0060】
障害原因検出部13が、マルチパスフェージングが発生していないと判定した場合には、統計情報記憶部12から統計情報の具体例で示したチャネル負荷を取得し、混雑が発生しているかどうかを判定する(ステップS38)。判定基準は、例えば、チャネル負荷が予め設定した閾値(例えば50%)を上回るか否かであり、上回る場合に混雑が発生しているものと判定する。
【0061】
ここで、障害原因検出部13が、混雑が発生していると判定した場合には、対策実行部14は混雑を解消するための予め設定された対策処理を実行する(ステップ39)。対策処理は混雑で生じる同時送信を抑制する手段であればよく、例えば、同時送信を生じる原因となっているDCF(Distributed Coordination Function)での媒体アクセスの競合そのものを解消できるPCF(Point Coordination Function)へとアクセス方式を切り替える手法、無線基地局Aに接続する無線端末Bの数を制限し混雑の発生を未然に防止するアドミッション制御を導入する手法等がある。
【0062】
対策実行部14が対策を実行すれば、障害原因検出部13により混雑の有無の再判定を行う。対策実行部14は、障害原因検出部13により混雑が発生していないと判定されるまで繰り返し対策を行うことを特徴とする。また、繰り返し行う対策処理は、繰り返しに応じて他の対策処理に切り替えても構わないし、同一の対策処理であっても対策効果の度合を変更して再実行しても構わない。例えば、前者には、PCFへのアクセス方式の変更を実行し、次に、無線端末Bの接続数制限を実行する手法が挙げられる。また、後者には、接続制限する無線端末Bの数を段階的に変更する手法が挙げられる。
【0063】
障害原因検出部13が、混雑が発生していないと判定した場合には、統計情報記憶部12から統計情報の具体例で示した再送割合を取得し、隠れ端末が発生しているかどうかを判定する(ステップS40)。判定基準は、例えば、再送割合が予め設定した閾値(例えば50%)を上回るか否かであり、上回る場合に隠れ端末が発生しているものと判定する。
【0064】
ここで、障害原因検出部13が、隠れ端末が発生していると判定した場合には、対策実行部14は隠れ端末を解消するための予め設定された対策処理を実行する(ステップ41)。ここで、対策処理は隠れ端末で生じるフレーム衝突を抑制する手段であればよく、例えば、IEEE802.11規格で規定されたRTS/CTS機能を有効にする手法等がある。また、隠れ端末の対策処理としては、隠れ端末の関係にある無線端末Bを互いにキャリアセンスが可能となる物理位置へ移動するという人手を介する手法が有効である。従って、例えば、無線端末Bの本体に表示装置を設置し、表示装置に対策処理を表示することでユーザにその対策の実行を促す手法を採用してもよい。
【0065】
対策実行部14が対策を実行すれば、障害原因検出部13により隠れ端末の有無の再判定を行う。対策実行部14は、障害原因検出部13により隠れ端末が発生していないと判定されるまで繰り返し対策を行うことを特徴とする。また、繰り返し行う対策処理は、繰り返しに応じて他の対策処理に切り替えても構わないし、同一の対策処理であっても対策効果の度合を変更して再実行しても構わない。例えば、前者には、RTS/CTS機能を有効化した後に、次に、ユーザに無線端末Bの物理位置の変更を指示する手法が挙げられる。また、後者には、ユーザに指示する無線端末Bの物理的な変更位置を段階的に変更する手法が挙げられる。
【0066】
ここで、図12のフローチャートで示した障害原因の推定と対策の処理手順に関して、統計情報と障害原因の関係を基に、具体例を説明する。図13Aおよび図13Bは、統計情報と障害原因の関係、および、障害原因の推定と対策の処理手順の具体例を示す図である。図13Aおよび図13Bでは、障害原因ごとに、統計情報の特性値がどのように変化するかを示している。例えば、受信信号強度については「減」か「−]で、ノイズレベル、重複フレーム受信割合、チャネル負荷および再送割合については「増」か「−」で表している。
【0067】
図13Aおよび図13Bからわかるように、障害原因と統計情報の特性値とは一対一に対応しているが、同じ障害原因に対して、複数種類の統計情報の特性値が対応している場合がある。このため、統計情報の種類だけでは、障害原因を特定することはできない。
【0068】
そこで、本実施の形態では、図12のフローチャートに従って、障害原因を特定できるように複数種類の統計情報に優先順位をつけて、一つずつ統計情報の特性値を判別して、障害原因の対策を行う。
【0069】
図13A(a)に示す段階1では、図12のステップS32およびS33に該当する処理手順を行う。図13A(a)からわかるように、受信信号強度は複数種類の障害原因の中でシャドウイングのみと相関のある統計情報である。したがって、受信信号強度が所定の閾値を下回らないように対策を行うことは、シャドウイングの対策を行うことと等価である。そこで、シャドウイングの対策を行うことで、受信信号強度が所定の閾値を上回ることになり、シャドウイングの問題が解消する。
【0070】
次に、図13A(b)に示す段階2では、図12のステップS34およびS35に該当する処理手順を行う。図13A(b)からわかるように、ノイズレベルは複数種類の障害原因の中で電波雑音のみと相関のある統計情報である。したがって、ノイズレベルが所定の閾値を上回らないように対策を行うことは、電波雑音の対策を行うことと等価である。そこで、電波雑音の対策を行うことで、ノイズレベルは所定の閾値を下回ることになり、電波雑音の問題が解消する。
【0071】
次に、図13A(c)に示す段階3では、図12のステップS36およびS37に該当する処理手順を行う。図13A(c)からわかるように、重複フレーム受信割合は複数種類の障害原因の中でマルチパスフェージングのみと相関のある統計情報である。したがって、重複フレーム受信割合が所定の閾値を上回らないように対策を行うことは、マルチパスフェージングの対策を行うことと等価である。そこで、マルチパスフェージングの対策を行うことで、重複フレーム受信割合は所定の閾値を下回ることになり、マルチパスフェージングの問題が解消する。
【0072】
次に、図13B(d)に示す段階4では、図12のステップS38およびS39に該当する処理手順を行う。図13B(d)からわかるように、チャネル負荷は複数種類の障害原因の中で混雑のみと相関のある統計情報である。したがって、チャネル負荷が所定の閾値を上回らないように対策を行うことは、混雑の対策を行うことと等価である。そこで、混雑の対策を行うことで、チャネル負荷は所定の閾値を下回ることになり、混雑の問題が解消する。
【0073】
次に、図13B(e)に示す段階5では、図12のステップS40およびS41に該当する処理手順を行う。図13B(e)からわかるように、再送割合は複数種類の障害原因の中で隠れ端末のみと相関のある統計情報である。したがって、再送割合が所定の閾値を上回らないよう対策を行うことは、隠れ端末の対策を行うことと等価である。そこで、隠れ端末の対策を行うことで、再送割合が所定の閾値を下回ることになり、再送割合の問題が解消する。段階5を経ることで、図13B(f)に示す段階6のように、すべての障害原因が解消する。
【0074】
このように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態よりも種類の多い障害原因が多重に発生している状況でも、一つの障害原因と一対一の関係にある統計情報の特性値を判別して、個々の障害原因に対する対策を一つずつ実行することで、最短ステップ数ですべての障害原因を解消することができる。
【0075】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態は、無線装置Mから他の無線局に対して、障害原因を検出するのに利用可能なトラフィック要求を送信するものである。
【0076】
障害原因の推定には、無線トラフィックの送受信に伴って変動する統計情報が利用される。トラフィックが少ない場合には、統計情報の変動も少なく、推定精度が低下したり、閾値に達するまでの時間が増大したりすることがある。
【0077】
また、無線トラフィックには、送信電力、ペイロード長および伝送レートなどのパラメータがあり、統計情報の変動量に影響を及ぼす場合があるため、考慮の必要がある。以下に説明する第3の実施の形態では、まず、第1の実施の形態で触れた各統計情報に関し、障害原因推定に適した無線トラフィックのパラメータについて説明する。
【0078】
受信信号強度は、受信に成功した無線フレームの信号強度を反映する統計情報であるため、受信に成功しやすい無線フレームを通信相手に送信させることによって、統計サンプルを効率よく収集することができる。受信に成功しやすい無線フレームとは、例えば、伝送レートが低く(ビットエラーレートが小さい)、フレーム長が小さく(フレームエラーレートが小さい)、送信電力が大きい(SN比が大きい)フレームである。
【0079】
重複フレーム受信割合は、(1)データフレームの受信に成功し、(2)それに対するACKフレームが欠損し、(3)データフレームが再送されることによって増大する統計情報であるため、受信に成功しやすい無線フレームを通信相手に送信させることによって、ACKフレームの欠損を効率よく計測することができる。この場合の受信に成功しやすい無線フレームは、受信信号強度の場合と同様である。
【0080】
再送割合は、(1)データフレームを送信し、(2)それに対するACKが得られず、(3)データフレームを再送することによって送信側で増大する統計情報であるため、送信した無線フレームのパラメータを加味して再送割合の判定閾値を調整すれば良い。
【0081】
ノイズレベルおよびチャネル負荷は、周辺の電波状況が計測される統計情報であるため、障害原因推定を実施する無線端末Bでは無線フレームの送受信を控えるか、送受する無線フレームのパラメータを把握してその影響を加味しても良い。
【0082】
以上のとおり、統計情報を利用した障害原因推定に適した無線トラフィックのパラメータについて説明したが、以降では、無線端末Bが無線基地局Aに対し障害原因推定に適したトラフィックを要求する例を示す。
【0083】
図14は第3の実施の形態に係る無線装置Mの内部構成の一例を示すブロック図である。図14の無線装置Mは、図2と同様に統計情報取得部101、統計情報記憶部102、障害原因検出部103および対策実行部104を備えており、これに加えて、通信相手にトラフィック要求を送信するトラフィック要求部100を備えている。
【0084】
図14の無線装置Mは、第1および第2の実施の形態と同様に、無線基地局Aと無線端末Bのいずれかに実装される。
【0085】
トラフィック要求部100は、定期的に、あるいは、無線端末Bにおける再送割合が既定の閾値を超過するなど統計情報が特定の条件を満たした場合に、あるいは、ユーザの指示があった場合、あるいは、これらの2以上の場合に、トラフィック要求を他の無線局(無線基地局Aまたは無線端末B)に送信する。
【0086】
図15はトラフィック要求に含まれるトラフィックパラメータの具体例を示す図である。トラフィック要求には、図15に示すパラメータのうち少なくとも一つが含まれる。個々のパラメータは、具体的な数値でも良いし、「最大」や「最小」等の程度を表す指標値でもよい。
【0087】
トラフィック要求を受信した無線局(以下では、無線基地局Aとする)は、トラフィック要求に含まれるパラメータを指定の値に設定し、無線装置M(以下では、無線端末Bとする)宛のトラフィックを生成する。例えば、図15のパラメータ全てを含むトラフィック要求を受信した無線基地局Aは、1秒間待機し、図16に示すパラメータの無線フレームを100fpsの送信頻度で10秒間、総計100フレーム送信する。
【0088】
トラフィック要求部100と統計情報部101は非同期で動作してもよいし、トラフィック開始時およびトラフィック終了時にトラフィック要求部100が統計情報部101に通知し、トラフィック発生期間中は統計情報の取得間隔を通常より短くするなどの同期した処理を行っても良い。トラフィック終了のタイミングは、トラフィック要求のパラメータとして指定した時間もしくはトラフィック量の超過を検出した時間でもよいし、無線基地局Aにトラフィック停止要求を送信して、トラフィック終了を通知してもよい。
【0089】
上記の説明では、トラフィック要求の中に、障害原因推定に適したトラフィックパラメータを含めて送信する例を示したが、無線端末Bが無線基地局Aに予めトラフィックパラメータを通知してある場合など、無線基地局Aが適切なパラメータを予め把握している場合にはトラフィック要求にトラフィックパラメータを含めなくてもよい。
【0090】
このように、第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態に加えて、無線端末Bから無線基地局Aに対して、障害原因推定に適したトラフィック要求を送信するため、第1の実施形態よりもさらに障害原因の推定精度を向上でき、かつ推定にかかる時間の短縮も可能となる。
上述した実施の形態で説明した無線装置および無線通信システムの少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、無線装置および無線通信システムの少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0091】
また、無線装置および無線通信システムの少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0092】
なお、本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい
【符号の説明】
【0093】
11、101 統計情報取得部
12、102 統計情報記憶部
13、103 障害原因検出部
14、104 対策実行部
100 トラフィック要求部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の無線局との間の無線リンクの障害原因を特定して対策を実行する無線装置であって、
前記無線リンクの状態を表す統計情報の特性値を取得する統計情報取得部と、
前記特性値に基づいて、前記統計情報に予め関連づけられた複数の障害原因を所定の順序で検出する障害原因検出部と、
前記障害原因検出部で検出された障害原因に予め関連づけられた対策を実行する対策実行部と、を備え、
前記複数の障害原因は、シャドウイングの存在と電波雑音の存在とを含んでおり、
前記所定の順序で検出とは、前記シャドウイングの存在を検出した後に、前記電波雑音の存在を検出することであることを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記統計情報は、受信信号強度に関する情報を含んでおり、
前記障害原因検出部は、前記受信信号強度が所定の第1閾値を上回るか否かを検出し、
前記対策実行部は、前記受信信号強度が前記第1閾値を上回るまで、前記シャドウイングを低減するための対策を実行することを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記統計情報は、ノイズレベルに関する情報を含んでおり、
前記障害原因検出部は、前記受信信号強度が前記第1閾値を上回った後に、前記ノイズレベルが所定の第2閾値を下回るか否かを検出し、
前記対策実行部は、前記ノイズレベルが前記第2閾値を下回るまで、前記電波雑音を低減するための対策を実行することを特徴とする請求項2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記障害原因検出部は、前記ノイズレベルが前記第2閾値を下回った後に、前記受信信号強度および前記ノイズレベル以外の所定の統計情報の特性値が予め定めた範囲内か否かを検出し、
前記対策実行部は、前記所定の統計情報の特性値が予め定めた範囲内になるまで、前記所定の順序に従って、前記シャドウイングおよび前記電波雑音以外の所定の障害原因を解消するための対策を実行することを特徴とする請求項3に記載の無線装置。
【請求項5】
前記複数の障害原因は、マルチパスフェージングの存在と、混雑の存在と、隠れ端末の存在とを含んでおり、
前記所定の順序で検出とは、前記シャドウイングの存在および前記電波雑音の存在の順に検出した後、前記マルチパスフェージングの存在、前記混雑の存在および前記隠れ端末の存在を予め定めた順序で検出することであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の無線装置。
【請求項6】
前記統計情報は、重複フレームの受信割合に関する情報を含んでおり、
前記複数の障害原因は、マルチパスフェージングの存在を含んでおり、
前記障害原因検出部は、前記ノイズレベルが前記第2閾値を下回った後に、前記重複フレームの受信割合が所定の第3閾値を下回るか否かを検出し、
前記対策実行部は、前記重複フレームの受信割合が前記第3閾値を下回るまで、前記マルチパスフェージングを低減するための対策を実行することを特徴とする請求項3または4に記載の無線装置。
【請求項7】
前記統計情報は、チャネル負荷に関する情報を含んでおり、
前記複数の障害原因は、混雑の存在を含んでおり、
前記障害原因検出部は、前記ノイズレベルが前記第2閾値を上回った後に、前記チャネル負荷が所定の第4閾値を下回るか否かを検出し、
前記対策実行部は、前記チャネル負荷が前記第4閾値を下回るまで、前記混雑を低減するための対策を実行することを特徴とする請求項3または4に記載の無線装置。
【請求項8】
前記統計情報は、再送割合に関する情報を含んでおり、
前記複数の障害原因は、隠れ端末の存在を含んでおり、
前記障害原因検出部は、前記ノイズレベルが前記第2閾値を上回った後に、前記再送割合が所定の第5閾値を下回るか否かを検出し、
前記対策実行部は、前記再送割合が前記第5閾値を下回るまで、前記隠れ端末に対する対策を実行することを特徴とする請求項3または4に記載の無線装置。
【請求項9】
前記他の無線局に対して、前記複数の障害原因を検出するために利用されるトラフィック要求を送信するトラフィック要求部を備え、
前記トラフィック要求は、伝送レート、ペイロード長および送信電力の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の無線装置。
【請求項10】
前記トラフィック要求は、伝送レート、ペイロード長および送信電力の少なくとも一つの最小値および最大値を含むことを特徴とする請求項9に記載の無線装置。
【請求項11】
無線装置と他の無線局との間の無線リンクの障害原因を特定して対策を実行する通信障害対策方法であって、
前記無線リンクの状態を表す統計情報の特性値を取得し、
前記特性値に基づいて、前記統計情報に予め関連づけられた複数の障害原因を所定の順序で検出し、
前記検出された障害原因に予め関連づけられた対策を実行し、
前記複数の障害原因は、シャドウイングの存在と電波雑音の存在とを含んでおり、
前記所定の順序で検出とは、前記シャドウイングの存在を検出した後に、前記電波雑音の存在を検出することであることを特徴とする通信障害対策方法。
【請求項12】
無線装置と他の無線局との間の無線リンクの障害原因を特定して対策を実行するコンピュータ読み取り可能な通信障害対策プログラムであって、
前記無線リンクの状態を表す統計情報の特性値を取得するステップと、
前記特性値に基づいて、前記統計情報に予め関連づけられた複数の障害原因を所定の順序で検出するステップと、
前記検出された障害原因に予め関連づけられた対策を実行するステップと、をコンピュータに実行させ
前記複数の障害原因は、シャドウイングの存在と電波雑音の存在とを含んでおり、
前記所定の順序で検出とは、前記シャドウイングの存在を検出した後に、前記電波雑音の存在を検出することであることを特徴とする通信障害対策プログラム。
【請求項1】
他の無線局との間の無線リンクの障害原因を特定して対策を実行する無線装置であって、
前記無線リンクの状態を表す統計情報の特性値を取得する統計情報取得部と、
前記特性値に基づいて、前記統計情報に予め関連づけられた複数の障害原因を所定の順序で検出する障害原因検出部と、
前記障害原因検出部で検出された障害原因に予め関連づけられた対策を実行する対策実行部と、を備え、
前記複数の障害原因は、シャドウイングの存在と電波雑音の存在とを含んでおり、
前記所定の順序で検出とは、前記シャドウイングの存在を検出した後に、前記電波雑音の存在を検出することであることを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記統計情報は、受信信号強度に関する情報を含んでおり、
前記障害原因検出部は、前記受信信号強度が所定の第1閾値を上回るか否かを検出し、
前記対策実行部は、前記受信信号強度が前記第1閾値を上回るまで、前記シャドウイングを低減するための対策を実行することを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記統計情報は、ノイズレベルに関する情報を含んでおり、
前記障害原因検出部は、前記受信信号強度が前記第1閾値を上回った後に、前記ノイズレベルが所定の第2閾値を下回るか否かを検出し、
前記対策実行部は、前記ノイズレベルが前記第2閾値を下回るまで、前記電波雑音を低減するための対策を実行することを特徴とする請求項2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記障害原因検出部は、前記ノイズレベルが前記第2閾値を下回った後に、前記受信信号強度および前記ノイズレベル以外の所定の統計情報の特性値が予め定めた範囲内か否かを検出し、
前記対策実行部は、前記所定の統計情報の特性値が予め定めた範囲内になるまで、前記所定の順序に従って、前記シャドウイングおよび前記電波雑音以外の所定の障害原因を解消するための対策を実行することを特徴とする請求項3に記載の無線装置。
【請求項5】
前記複数の障害原因は、マルチパスフェージングの存在と、混雑の存在と、隠れ端末の存在とを含んでおり、
前記所定の順序で検出とは、前記シャドウイングの存在および前記電波雑音の存在の順に検出した後、前記マルチパスフェージングの存在、前記混雑の存在および前記隠れ端末の存在を予め定めた順序で検出することであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の無線装置。
【請求項6】
前記統計情報は、重複フレームの受信割合に関する情報を含んでおり、
前記複数の障害原因は、マルチパスフェージングの存在を含んでおり、
前記障害原因検出部は、前記ノイズレベルが前記第2閾値を下回った後に、前記重複フレームの受信割合が所定の第3閾値を下回るか否かを検出し、
前記対策実行部は、前記重複フレームの受信割合が前記第3閾値を下回るまで、前記マルチパスフェージングを低減するための対策を実行することを特徴とする請求項3または4に記載の無線装置。
【請求項7】
前記統計情報は、チャネル負荷に関する情報を含んでおり、
前記複数の障害原因は、混雑の存在を含んでおり、
前記障害原因検出部は、前記ノイズレベルが前記第2閾値を上回った後に、前記チャネル負荷が所定の第4閾値を下回るか否かを検出し、
前記対策実行部は、前記チャネル負荷が前記第4閾値を下回るまで、前記混雑を低減するための対策を実行することを特徴とする請求項3または4に記載の無線装置。
【請求項8】
前記統計情報は、再送割合に関する情報を含んでおり、
前記複数の障害原因は、隠れ端末の存在を含んでおり、
前記障害原因検出部は、前記ノイズレベルが前記第2閾値を上回った後に、前記再送割合が所定の第5閾値を下回るか否かを検出し、
前記対策実行部は、前記再送割合が前記第5閾値を下回るまで、前記隠れ端末に対する対策を実行することを特徴とする請求項3または4に記載の無線装置。
【請求項9】
前記他の無線局に対して、前記複数の障害原因を検出するために利用されるトラフィック要求を送信するトラフィック要求部を備え、
前記トラフィック要求は、伝送レート、ペイロード長および送信電力の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の無線装置。
【請求項10】
前記トラフィック要求は、伝送レート、ペイロード長および送信電力の少なくとも一つの最小値および最大値を含むことを特徴とする請求項9に記載の無線装置。
【請求項11】
無線装置と他の無線局との間の無線リンクの障害原因を特定して対策を実行する通信障害対策方法であって、
前記無線リンクの状態を表す統計情報の特性値を取得し、
前記特性値に基づいて、前記統計情報に予め関連づけられた複数の障害原因を所定の順序で検出し、
前記検出された障害原因に予め関連づけられた対策を実行し、
前記複数の障害原因は、シャドウイングの存在と電波雑音の存在とを含んでおり、
前記所定の順序で検出とは、前記シャドウイングの存在を検出した後に、前記電波雑音の存在を検出することであることを特徴とする通信障害対策方法。
【請求項12】
無線装置と他の無線局との間の無線リンクの障害原因を特定して対策を実行するコンピュータ読み取り可能な通信障害対策プログラムであって、
前記無線リンクの状態を表す統計情報の特性値を取得するステップと、
前記特性値に基づいて、前記統計情報に予め関連づけられた複数の障害原因を所定の順序で検出するステップと、
前記検出された障害原因に予め関連づけられた対策を実行するステップと、をコンピュータに実行させ
前記複数の障害原因は、シャドウイングの存在と電波雑音の存在とを含んでおり、
前記所定の順序で検出とは、前記シャドウイングの存在を検出した後に、前記電波雑音の存在を検出することであることを特徴とする通信障害対策プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
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【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−74765(P2012−74765A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215913(P2010−215913)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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