説明

無線送信機および反射波電力測定方法

【課題】方向性結合器を用いた電力測定において、測定端子が1つであっても運用中の送信信号から反射波電力を正確に測定すること。
【解決手段】送信機100は、測定する方向性結合器のモニタ端子が切替部によって切り換えられて、進行波モニタ端子で測定される第1パイロット信号を基準信号として、反射波モニタ端子で測定される第2パイロット信号を正規化し、正規化後の測定反射波信号ベクトルを得る。方向性結合器の出力端子を終端して、同様に測定された正規化後の進行波の漏れ信号ベクトルとのベクトル差分から真の反射波信号ベクトルを求める。これらをもとに測定反射波電力に対する電力補正係数を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信機における送信信号の反射波電力を測定する方法と回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯電話の基地局や放送設備で使われる無線送信機は、電力効率の面で効率良く信号を送信しているか否かを監視するために、送信アンテナ端で発生する反射波の電力を測定し、電圧定在波比(Voltage Standing Wave Ratio:VSWR)を指標として監視される。しかし、伝送信号からモニタ信号を取り出す方向性結合器(Directional Coupler)において方向性が不十分なために反射波モニタ端子に進行波が漏れ込んでくる。それ故、反射波電力を精度良く測定できず、結果としてVSWRを正確に算出することができない。
【0003】
(反射波電力の測定)
反射波電力を正しく測定するためには、方向性結合器の反射波モニタ端子で測定される信号に含まれる「進行波の漏れ信号」を取り除く必要がある。図19(a)、(b)は、方向性結合器を用いた反射波の測定原理を説明するための図である。方向性結合器を用いた反射波の測定原理について、図19(a)、(b)を用いて説明する。なお、測定にあたっては試験信号として無変調信号を用い、無変調波信号の振幅と位相の基準を入力端子Aとする。
【0004】
図19(a)に示すように、方向性結合器1の出力端子Bの反射波を測定する場合、方向性結合器1に設けられた反射波モニタ端子Cでは、出力端子Bの反射波信号Vrevと、進行波の漏れ信号Vleakとの合成信号が測定される。それぞれの信号は、振幅と位相とを有するベクトルで、合成信号をVrevmと表記する。図19(b)に示すように、測定される合成信号Vrevmは、出力端子Bの反射波信号Vrevと、進行波の漏れ信号Vleakとのベクトル和で、次式(1)のように表現される。
Vrevm=Vrev + Vleak …式(1)
【0005】
このように、方向性結合器1の方向性が十分でない場合、進行波の漏れ信号Vleakの影響により、測定したい真の反射波を正しく測定できない。したがって、正しく反射波を測定するためには、誤差成分として寄与する進行波の漏れ信号Vleakを反射波モニタ端子で測定される合成信号Vrevmから取り除く必要がある。反射波信号Vrevは、式(1)を変形した次式(2)で表現される。以下の説明では、この測定される合成信号Vrevmを、求めたい真の反射波信号Vrevと区別して、測定反射波信号、または、単に測定反射波と呼ぶこととする。
Vrev=Vrevm − Vleak …式(2)
【0006】
したがって、反射波を正しく測定するために以下のような手順で測定する。(1)方向性結合器1の出力端子Bを終端して進行波の漏れ信号Vleakを測定する。(2)出力端子Bに負荷(アンテナなど)を接続して反射波モニタ端子Cで測定される合成信号Vrevmを測定する。(3)合成信号Vrevmから進行波の漏れ信号Vleakのベクトル差を算出し、出力端子Bからの反射波Vrevを求める。
【0007】
従来技術として、特許文献1に開示されている技術では、高周波信号送信装置の出力端で発生する反射波をモニタする際に方向性結合器から反射波検出回路に漏れる進行波の成分(漏れ信号)を検波し、ベクトル調整器で逆位相にして測定信号から漏れ信号を除去することで反射波成分のみを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−286632号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】IEEE Std 802.11a−1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1では、制御を伴う複数の位相器や複数のA/D変換器を使った複数の測定端子を用いて進行波の漏れ信号を除去しているが、これでは装置が複雑になり、製造コストも増大してしまう。
【0011】
本発明の目的は、電力を測定するための測定回路の構成として、制御を伴う位相器を用いず、また、測定端子が1つという簡易な構成であっても、運用中の送信信号から反射波電力を正確に測定できる方法と回路および、これを用いた送信機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の反射波電力測定回路は、方向性結合器を用いて、送信信号の反射波電力を測定する回路であって、切換制御信号に基づいて、前記方向性結合器の進行波モニタ端子と前記方向性結合器の反射波モニタ端子とのいずれかに切り替えて接続されて、進行波または測定反射波を出力する切替部と、パイロット区間タイミング信号に基づいて、前記切換制御信号と、前記送信信号の第1パイロット区間の保持タイミングを制御する第1パイロット区間保持制御信号と、前記送信信号の第2パイロット区間の保持タイミングを制御する第2パイロット区間保持制御信号とを生成する制御信号生成部と、前記切替部に接続されて前記進行波または前記測定反射波をA/D変換するA/D変換器と、前記切替部が前記進行波モニタ端子の側に切り替え接続されると、前記第1パイロット区間保持制御信号に基づき前記進行波の第1パイロット区間を保持する第1パイロット保持部と、前記切替部が前記反射波モニタ端子の側に切り替え接続されると、前記第2パイロット区間保持制御信号に基づき前記測定反射波の前記第1パイロットから所定時間長だけ離れた第2パイロット区間を保持する第2パイロット保持部と、前記第1パイロット保持部に保持された第1パイロット信号で、前記第2パイロット保持部に保持された第2パイロット信号を正規化し、正規化測定反射波信号ベクトルを算出する信号ベクトル正規化部と、前記進行波の正規化漏れ信号ベクトルを予め保持する漏れ信号ベクトル記憶部と、前記正規化測定反射波信号ベクトルと前記正規化進行波漏れ信号ベクトルとの差分から反射波信号ベクトルを算出するベクトル差分算出部と、前記正規化測定反射波信号ベクトルと前記反射波信号ベクトルとの電力比から電力補正係数を算出する補正係数算出部と、前記電力補正係数を用いて測定反射波電力を補正して反射波電力を算出する反射波電力算出部とを備え、前記第1パイロット信号を基準として前記第2パイロット信号を正規化して正規化測定反射波信号ベクトルを算出し、前記正規化測定反射波信号ベクトルと前記正規化漏れ信号ベクトルとを用いて算出された前記電力補正係数を前記測定反射波電力に乗算して反射波電力を算出することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のVSWR測定回路は、上記反射波電力測定回路と、進行波電力算出部と、を備え、前記反射波電力測定回路が算出する反射波電力と、前記進行波電力算出部が算出する進行波電力とを用いて、VSWRを算出することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の送信機は、上記反射波電力測定回路を備え、前記反射波電力測定回路を用いて反射波電力算出することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の反射波電力測定方法は、方向性結合器を用いて、送信信号の反射波電力を測定する反射波電力測定方法であって、切替部により、切換制御信号に基づいて、前記方向性結合器の進行波モニタ端子と前記方向性結合器の反射波モニタ端子とのいずれかに切り替えて接続されて、進行波または測定反射波を出力するステップと、制御信号生成部により、パイロット区間タイミング信号に基づいて、前記切換制御信号と、前記送信信号の第1パイロット区間の保持タイミングを制御する第1パイロット区間保持制御信号と、前記送信信号の第2パイロット区間の保持タイミングを制御する第2パイロット区間保持制御信号と、を生成するステップと、A/D変換器により、前記切替部に接続されて前記進行波または前記測定反射波をA/D変換するステップと、第1パイロット保持部により、前記切替部が前記進行波モニタ端子の側に切り替え接続されると、前記第1パイロット区間保持制御信号に基づき前記進行波の第1パイロット区間を保持するステップと、第2パイロット保持部により、前記切替部が前記反射波モニタ端子の側に切り替え接続されると、前記第2パイロット区間保持制御信号に基づき前記測定反射波の前記第1パイロットから所定時間長だけ離れた第2パイロット区間を保持するステップと、信号ベクトル正規化部により、前記第1パイロット保持部に保持された第1パイロット信号で、前記第2パイロット保持部に保持された第2パイロット信号を正規化し、正規化測定反射波信号ベクトルを算出するステップと、漏れ信号ベクトル記憶部により、前記進行波の正規化漏れ信号ベクトルを予め保持する記憶ステップと、ベクトル差分算出部により、前記正規化測定反射波信号ベクトルと前記正規化進行波漏れ信号ベクトルとの差分から反射波信号ベクトルを算出するステップと、補正係数算出部により、前記正規化測定反射波信号ベクトルと前記反射波信号ベクトルとの電力比から電力補正係数を算出するステップと、反射波電力算出部により、前記電力補正係数を用いて測定反射波電力を補正して反射波電力を算出するステップと、前記第1パイロット信号を基準として前記第2パイロット信号を正規化して正規化測定反射波信号ベクトルを算出するステップと、前記正規化測定反射波信号ベクトルと前記正規化漏れ信号ベクトルとを用いて算出された前記電力補正係数を前記測定反射波電力に乗算して反射波電力を算出するステップとを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る反射波電力測定回路によれば、電力を測定するために機能する測定端子が1つという簡易な構成であっても、運用中の送信信号から反射波電力を精度良く測定でき、VSWRを正確に算出することができる。また、電力補正値を正しく求め、これに基づいて反射波電力を測定するので、測定に用いる方向性結合器の方向性が十分でなくとも、精度よく反射波電力を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1に係る送信機100におけるVSWR測定の概略を示すブロック図
【図2】OFDMシンボルの構造を模式的に示した図
【図3】切替部103の切替操作によってA/D変換器105から出力される信号を模式的に示す図
【図4】送信機100に備えられるVSWR測定回路の構成を示すブロック図
【図5】制御信号生成部119が生成する各制御信号のタイミングチャートを模式的に示した図
【図6】測定信号を保持する様子を説明する模式図
【図7】実施の形態1に係る信号ベクトル正規化部125のブロック図
【図8】出力端子B1が終端時の反射波モニタ端子C1からの進行波漏れ信号を保持する様子を説明する模式図
【図9】反射波電力測定回路として機能する、実施の形態1に係る第1の変形例のブロック図
【図10】反射波電力測定回路として機能する第1の実施の形態の第2の変形例のブロック図
【図11】11a信号のLTSの部分を模式的に示した図
【図12】実施の形態2に係る反射波電力測定回路の構成を示すブロック図
【図13】制御信号生成部119が生成する制御信号のタイミングチャートを示す図
【図14】第2の実施形態に係る反射波電力補正係数算出部が第1パイロットと第2パイロットとを保持する様子を説明する模式図
【図15】第2の実施の形態における周波数誤差を説明するための図
【図16】第3の実施形態に係る反射波電力測定回路の構成を示すブロック図
【図17】第3の実施形態に係る第1パイロット信号および第2パイロット信号を示す模式図
【図18】第3の実施形態に係る反射波電力測定回路が有する信号ベクトル正規化部125Cの構成を示すブロック図
【図19】(a)〜(b)は、方向性結合器を用いた反射波の測定原理を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る送信機100におけるVSWR測定の概略を示すブロック図である。なお、図1では、便宜上、反射波電力算出部150Aと進行波電力算出部150Bとを一つのブロック進行波/反射波電力算出部150として示している。
【0020】
運用中の送信信号が入力端子A1から方向性結合器101を介して、出力端子B1に接続されたアンテナ102から出力される。一例として、送信機100の送信信号はOFDM信号とする。
【0021】
方向性結合器101は、送信信号の進行波をモニタする進行波モニタ端子D1と、送信信号の反射波をモニタする反射波モニタ端子C1とを備えている。進行波モニタ端子D1と、反射波モニタ端子C1とはそれぞれ切替部103に接続されている。
【0022】
切替部103は、A/D変換器105へ送信信号の進行波および送信信号の反射波を出力するための測定経路の切り替えを行う。切替部103が端子a側に切り替わると、送信信号の進行波が進行波モニタ端子D1と切替部103とを介してA/D変換器105に入力される。一方、切替部103が端子b側に切り替わると、送信信号の測定反射波が反射波モニタ端子C1と切替部103とを介してA/D変換器105に入力される。なお、切替部103は機械式、電磁式いずれの方式でも良い。このように、本実施の形態に係る送信機100では、方向性結合器101を用いて信号をモニタする際、切替部103が測定経路を切り替えることで、測定端子として機能するA/D変換器105を複数個用いずに1個で測定している。
【0023】
ところで、無変調波を試験信号とする場合は、測定反射波信号から進行波の漏れ信号を除去するための式(2)で示すベクトル演算を行うにあたり、測定反射波信号Vrevmと進行波の漏れ信号Vleakとは、それぞれの振幅と位相の基準が同じであることが前提である。すなわち、測定反射波信号Vrevmと進行波の漏れ信号Vleakとは、ある一つの端子を基準とした振幅と位相の応答特性である必要がある。そのため、試験信号としての無変調波ではなく、運用中のデータ系列に依存して時間変動する変調波を用いて測定する場合は、測定反射波信号Srevmと進行波の漏れ信号Sleakのそれぞれついて、ある一つの基準端子における信号と反射波モニタ端子C1の信号とを測定し、基準端子における信号で正規化することで、ある一つの端子を基準とした振幅と位相の応答特性を得ることができる。ここでは、基準とするモニタ端子を進行波モニタ端子D1とする。
【0024】
さらに、正規化処理にあたっては、基準信号と正規化対象の信号とは、もとの信号が同じでなければ応答特性を得ることができない。基準端子とモニタ端子との信号を2つの測定端子を用いて同時に(同じ時刻で)測定すれば容易に応答特性を得ることができるが、本実施の形態では測定端子として機能するA/D変換器105は1つであるため、同じ時刻に測定できるモニタ端子は1つに限られる。
【0025】
そこで、OFDM信号のシンボルの構造に着目する。図2は、OFDMシンボルの構造を模式的に示した図である。一般に、OFDMシンボルには、遅延波を吸収するために有効シンボル期間の一部をコピーしたガード区間が設けられる。ここでは、ガード区間と同じ有効シンボル期間内の信号を、有効シンボル内ガード区間A’と呼ぶこととする。また、図2に示すように、有効シンボル長をFFTSize、ガード区間長をGuardSizeとする。
【0026】
本実施の形態では、このガード区間Aと有効シンボル内ガード区間A’とが同じ信号であることに着目する。このことに着目した測定方法について図3を参照して説明する。図3は、切替部103の切替操作によってA/D変換器105から出力される信号を模式的に示す図である。
【0027】
図3に示すように、A/D変換器105で取得する信号が進行波モニタ端子D1と反射波モニタ端子C1とで、1つのOFDMシンボルのガード区間と有効シンボル内ガード区間との同じ信号で取得されるように、切替部103によって、切替時刻T1で被測定のモニタ端子を進行波モニタ端子D1から反射波モニタ端子C1に切り替える。切替時刻T1は、OFDMシンボルの有効シンボル長FFTSizeの時間経過の間に切り替えればよい。入力端子A1から、進行波モニタ端子D1と反射波モニタ端子C1とのそれぞれを経由する経路長差から生じる時間遅れα(図3参照)については、ガード区間の時間長に対して十分に小さいのでほとんど無視できる。そして、反射波モニタ端子C1で測定される信号は、進行波モニタ端子D1(基準端子)で測定される信号に対して周波数応答特性H(f)を有する。ここでfnは、ある特定の周波数成分を示す。このような測定方法によれば、正規化のための進行波モニタ端子D1における基準信号と反射波モニタ端子における測定信号とについて、同じ信号でそれぞれを測定することができる。
【0028】
A/D変換器105は、切替部103を介して入力される進行波または測定反射波をアナログ信号からデジタル信号に変換する。デジタル信号に変換された進行波または測定反射波は、反射波電力補正係数算出部110および進行波/反射波電力算出部150へ出力される。反射波電力補正係数算出部110及び進行波/反射波電力算出部150の詳細な動作については後述する。
【0029】
次に、送信機100のVSWR測定に関して説明するにあたり、VSWRを測定する回路について詳細に説明する。図4は送信機100に備えられるVSWR測定回路310の構成を示すブロック図である。図4に示すVSWR測定回路310は、切替部103と、A/D変換器105と、反射波電力補正係数算出部110と、反射波電力算出部150Aと、進行波電力算出部150Bと、VSWR算出部151とを備える。なお、VSWR測定回路310の入力は、方向性結合器101の進行波モニタ端子D1の出力と反射波モニタ端子C1の出力である。
【0030】
反射波電力補正係数算出部110は、直交復調部111と、ガード区間検出部117と、制御信号生成部119と、ガード区間保持部113と、有効シンボル内ガード区間保持部115と、信号ベクトル正規化部125と、漏れ信号ベクトル記憶部126と、ベクトル差分算出部127と、電力補正係数算出部128とを備える。
【0031】
直交復調部111は、信号を直交復調して複素ベースバンド信号に変換し、ガード区間検出部117と、ガード区間保持部113と、有効シンボル内ガード区間保持部115とに出力する。
【0032】
ガード区間検出部117は、直交復調部111から出力された送信信号の測定反射波または進行波のガード区間を検出し、ガード区間検出信号を制御信号生成部119へ出力する。ガード区間の検出方法は、時間相関演算を用いれば実現できるが、ここではその検出方法は問わない。
【0033】
制御信号生成部119は、ガード区間検出部117で検出したガード区間検出信号を基に、切替部103の切替タイミングを制御する切替制御信号と、ガード区間保持部113の保持を制御するガード区間保持制御信号と、有効シンボル内ガード区間保持部115を制御する有効シンボル内ガード区間保持制御信号とを生成する。
【0034】
図5は、制御信号生成部119が生成する各制御信号のタイミングチャートを模式的に示した図である。図5に示すように、制御信号生成部119の入力であるガード区間検出信号は、ガード区間が検出されるとHiになるので、OFDMシンボルの周期でHiになる。切替制御信号は、ガード区間検出信号の立ち上がりから、(FFTSize+GuardSize)/2の周期で、HiとLoを繰り返す。
【0035】
図5では、切替部103への切り替えを指示する切替制御信号が、Loの時は進行波モニタ端子側D1に切り替わり、Hiの時は反射波モニタ端子側C1に切り替わるように動作し、その切替タイミングT1は、OFDMシンボル中のガード区間と有効シンボル内ガード区間との間である。
【0036】
また、ガード区間検出信号の立ち上がりから、GuardSizeの長さだけHiにしたガード区間保持制御信号を生成し、ガード区間保持部113へ保持を指示する。
【0037】
さらに、ガード区間検出信号の立ち上がりから、FFTSizeのサンプルだけ離れたサンプルを開始サンプル点としてGuardSizeの長さだけHiにした有効シンボル内ガード区間保持制御信号を生成し、有効シンボル内ガード区間保持部115へ保持を指示する。
【0038】
ガード区間保持部113は、制御信号生成部119が生成するガード区間保持制御信号に基づき、直交復調部111から入力される進行波のガード区間を周期的に複数保持し、信号ベクトル正規化部125へ出力する。第N番目のOFDMシンボルで測定された測定反射波信号をSfwd(t,n)とする。ここで、tはサンプル番号で、t=0,…,GuardSize−1のGuardSizeのサンプル数分だけある。
【0039】
有効シンボル内ガード区間保持部115は、制御信号生成部119が生成する有効シンボル内ガード区間保持制御信号に基づき、直交復調部111から入力される測定反射波の有効シンボル内ガード区間を周期的に複数保持し、信号ベクトル正規化部125へ出力する。第N番目のOFDMシンボルで測定された測定反射波信号をSrevm(t,n)とする。ここで、tはサンプル番号で、t=0,…,GuardSize−1のGuardSizeのサンプル数分だけある。
【0040】
測定信号の保持について詳細に説明する。図6は、測定信号を保持する様子を説明する模式図である。一例として、OFDMシンボルの有効シンボル長は8192サンプル、ガード区間長は有効シンボル長に対して8分の1の1024サンプルする。
【0041】
図6では、サンプル数をspと表記する。ガード区間保持部113は、進行波モニタ端子D1で測定される信号のうちガード区間A内の信号を保持する。ガード区間Aのうちすべての1024サンプルを保持しても良いが、ガード検出信号のタイミング誤差がある場合は、異なる信号同士で正規化処理を行わないように、前後の数サンプル(図6では12サンプル)をゼロ値に置き換えたものを保持しても良い。
【0042】
また、有効シンボル内ガード区間保持部115は、反射波モニタ端子C1で測定される信号のうち、ガード区間Aの保持時点から送信信号(OFDM信号)の有効シンボル長FFTSizeだけ離れた時点から有効シンボル内ガード区間A’分の信号を保持する。同様に、有効シンボル内ガード区間Aのうちすべてのサンプル1024を保持しても良いが、ガード検出信号のタイミング誤差を考慮して、前後の数サンプル(図6では12サンプル)をゼロ値に置き換えたものを保持しても良い。
【0043】
信号ベクトル正規化部125は、ガード区間保持部113で保持したガード区間の信号を基準信号として、有効シンボル内ガード区間保持部115で保持した有効シンボル内ガード区間の信号を正規化する。
【0044】
図7は、第1の実施形態に係る信号ベクトル正規化部125のブロック図である。信号ベクトル正規化部125は、ガード区間の信号と有効シンボル内ガード区間の信号とをそれぞれ周波数領域変換部701で周波数領域に変換し、信号ベクトル除算部702で除算により正規化を行う。これを、OFDM信号のシンボル周期で取得する数だけ複数回処理する。
周波数領域変換部701で処理する時間領域信号から周波数領域信号への変換にはFFT(Fast Fourier Transform)演算が好適である。具体的には、次式(3)に示すように、第N番目のOFDMシンボルで測定された第tサンプル目の進行波信号Sfwd(t,n)が周波数領域信号に変換されて、第fサンプル目のSfwdf(f, n)に変換されるものとする。
Sfwd(t,n)→ FFT → Sfwdf(f,n) …式(3)
【0045】
同様に、次式(4)に示すように、第N番目のOFDMシンボルで測定された第tサンプル目の測定反射波信号Srevm(t,n)が周波数領域信号に変換されて、Srevmf(f, n)に変換されるものとする。
Srevm(t,n)→ FFT → Srevmf(f,n) …式(4)
【0046】
そして、進行波モニタ端子D1を基準とした反射波モニタ端子C1の振幅と位相の応答特性(すなわち、図3における応答特性H(f)に相当する)を得るために、次式(5)に示すように、進行波信号であるガード区間の信号を基準信号として、測定反射波信号である有効シンボル内ガード区間の信号を除算により正規化する。ここで、正規化後の信号をVrevmn(f,n)とする。
Vrevmn(f,n)=Srevmf(f,n)/Sfwdf(f,n) …式(5)
【0047】
そして、周波数領域で正規化された上記信号Vrevmn(f,n)に対して、周波数領域平均化部703で、有効な周波数成分とみなせる分だけの周波数方向の平均化と、時間平均化部704で、取得したOFDMシンボルの数の分だけの時間方向の平均化を行い、正規化測定反射波信号ベクトルVrevmnを出力する。この周波数方向と時間方向の平均化により、より精度が高い信号ベクトルを算出することができる。平均化にあたり、有効な周波数成分とみなす周波数成分fの範囲は、OFDM信号のチャネル帯域幅に応じて適切に選択される。
【0048】
漏れ信号ベクトル記憶部126は、出荷時や保守点検時などにおいて、方向性結合器101の出力端子B1(図1参照)を終端して測定された正規化後の進行波の漏れ信号Vleaknを予め保持している。なお、方向性結合器101の入出力に関する位相振幅特性の経年変化はほとんどないので、出荷時や保守点検時に測定したものを運用時に用いることができる。
【0049】
図8は、出力端子B1が終端時の反射波モニタ端子C1からの進行波漏れ信号を保持する様子を説明する模式図である。図8に示すように、出力端子B1を終端して、先に説明した測定反射波信号を取得した場合と同じように行う。出力端子B1を終端した時の測定反射波信号が、進行波漏れ信号に相当する。
【0050】
図8に示すように、例えば出荷時に、出力端子B1を終端した状態で、進行波モニタ端子D1で測定される信号のうちガード区間A(1000sp)分の信号Sfwd’をガード区間保持部113に、また、反射波モニタ端子C1で測定される信号のうちガード区間Aの保持時点から有効シンボル長FFTSizeだけ離れた時点から有効シンボル内ガード区間A’(1000sp)の信号Srevm’とを取得保持する。
【0051】
そして、信号ベクトル正規化部125で、ガード区間保持部113で保持したガード区間Aの信号を基準信号として、有効シンボル内ガード区間保持部115で保持した有効シンボル内ガード区間信号A’の信号を正規化する。
【0052】
具体的には、出力端子B1を終端した状態で、次式(6)に示すように、進行波信号であるガード区間の信号Sfwdf’(f,n)を基準信号として、測定反射波信号である有効シンボル内ガード区間の信号Srevmf’(f,n)を除算により正規化する。ここで、正規化後の信号をVleakn(f,n)とする。
Vleakn(f,n)=Srevmf’(f,n)/Sfwdf’(f,n)…式(6)
【0053】
そして、周波数領域で正規化された上記信号Vleakn(f,n)に対しても同様に、周波数領域平均化部703で、有効な周波数成分とみなせる分だけの周波数方向の平均化と、時間平均化部704で、取得したOFDMシンボルの数の分だけの時間方向の平均化を行い、正規化漏れ信号ベクトルVleaknを出力する。この周波数方向と時間方向の平均化により、より精度が高い信号ベクトルを算出することができる。平均化にあたり、有効な周波数成分とみなす周波数成分fの範囲は、OFDM信号のチャネル帯域幅に応じて適切に選択される。
【0054】
ベクトル差分算出部127は、次式(7)に示すように、信号ベクトル正規化部125で正規化された測定反射波信号ベクトルVrevmnと漏れ信号ベクトル記憶部126に予め保持されている正規化された進行波の漏れ信号ベクトルVleaknとのベクトル差分を算出し、反射波信号ベクトルVrevを算出する。
Vrevmn−Vleakn=Vrev …式(7)
【0055】
電力補正係数算出部128は、次式(8)で示すように、正規化された測定反射波信号ベクトルVrevmnと、ベクトル差分算出部127で算出された反射波Vrevとの電力比から、電力補正係数Aを求め、反射波電力算出部150Aへ出力する。式(8)において、Power(X)は、複素数のベクトル値Xの電力値を求めることを示す演算子である。
電力補正係数 A=Power(Vrev)/Power(Vrevmn) …式(8)
【0056】
このように、本実施の形態では、測定端子として機能するA/D変換器が1つであるが故に、進行波電力と反射波電力とを測定するためにモニタ端子を切り替えることはさることながら、加えて、測定信号の振幅と位相の基準をとる(正規化処理)ためにモニタ端子を切り換えることを特徴としている。正規化後の進行波の漏れ信号ベクトルVleaknと測定反射波信号ベクトルVrevmnとのそれぞれの位相振幅基準は、ともに進行波モニタ端子D1が基準となるので、ベクトル演算から電力補正係数を算出することができる。
【0057】
反射波電力算出部150Aは、A/D変換器105から出力された測定反射波信号Srevmから測定反射波信号の電力Prevmを算出する。さらに、反射波電力算出部150Aは、算出した測定反射波信号の電力Prevmに、電力補正係数算出部128で算出した電力補正係数Aを乗算して、反射波電力Prev(=Prevm*A)を算出する。算出された反射波電力Prevは、VSWR算出部151に出力される。
【0058】
進行波電力算出部150Bは、A/D変換器105から出力された進行波信号Sfwdから進行波信号の電力Pfwdを算出し、VSWR算出部151に出力する。
【0059】
VSWR算出部151は、反射波電力算出部150Aが算出した反射波電力Prevと、進行波電力算出部150Bが算出した進行波信号の電力Pfwdとから振幅比R(=sqrt(Prev/Pfwd))を算出し、これをもとにVSWR(=(1+R)/(1−R))を算出する。ここで、sqrt( )は、かっこ内のルート演算を示す。
【0060】
VSWR表示部153は、VSWR算出部151の算出結果をディスプレイなどに表示する。
【0061】
以上のように、本実施の形態に係る送信機100では、真の反射波電力を求めるために、正規化処理を行った上で測定反射波信号の電力を補正するための電力補正係数を算出する。電力補正係数の算出にあたっては、運用中の送信信号(OFDM信号)を用いている。テスト信号を使うことがないため、運用中に電力を測定し、VSWRを算出することができる。
【0062】
また、本実施の形態に係る送信機100では、切替部103が測定経路を切り替えるので、測定端子として機能するA/D変換器105を1つで実現している。そして、電力補正値を正しく求めてこれに基づいて反射波電力を測定するので、測定に用いる方向性結合器101の方向性が十分でなくとも、精度よく反射電力が測定できる。信号の取得後は、VSWRを算出するまでの一連の処理をすべてデジタル信号処理で実施できるので、RF部品を削減することができる。
【0063】
本実施の形態に係る送信機100において、VSWRを算出するための一連のブロックは、図4の本発明第1の実施形態におけるVSWR測定回路310のブロック図で示すように、方向性結合器101を用いた伝送信号のVSWR測定回路として単体で機能する。
【0064】
本実施の形態において、ガード区間保持部113ではガード区間を、シンボル区間内ガード保持部115ではシンボル内ガード区間を用いたが、このような区分に限らず、同じ信号のパイロット信号であったり、受信側で既知のパイロット信号に置き換えて考えることができる。すなわち、時間方向に離れていないパイロット信号同士ならば、ガード区間の信号を第1パイロット信号に、シンボル内ガード区間の信号を第2パイロット信号に置き換えても良い。また、送信機100において、反射波電力を測定するための一連のブロックは、方向性結合器101を用いた伝送信号の反射波電力測定回路として単体で機能する。
【0065】
図9は、反射波電力測定回路として機能する第1の実施の形態の第1の変形例のブロック図である。図9に示す第1の変形例が、図4に示すVSWR測定回路310と異なる点は、ガード区間保持部113を第1パイロット保持部113Aに、有効シンボル内ガード区間保持部115を第2パイロット保持部115Aに置き換えた点と、VSWRを算出するためのVSWR算出部151及び進行波電力算出部150Bを除いた点である。
【0066】
なお、第1パイロット保持部113Aは、ガード区間保持部113でガード区間の信号を第1パイロット信号に置き換えただけで、その機能はガード区間保持部113と同じである。また、第2パイロット保持部115Aは、有効シンボル内ガード区間保持部115のシンボル内ガード区間の信号を、第2パイロット信号に置き換えただけで、その機能は第2パイロット保持部115Aと同じである。
【0067】
また、本実施の形態において、デジタル信号に変換されるアナログ信号の形態は、ダイレクトコンバージョンによって複素ベースバンド信号に変換され、アナログの同相信号と直交信号であってもよい。図10は、反射波電力測定回路1000として機能する第1の実施の形態の第2の変形例のブロック図である。図10に示すように、A/D変換器105の前段にダイレクトコンバージョン部1001があり、アナログの同相信号と直交信号とがA/D変換される。そのため、図9に示す第1の変形例と異なる点は、直交復調部111と、パイロット区間検出部117Aとがない点である。同相信号と直交信号とを同時にA/D変換するが、この場合でも一度に測定できる信号は1つに限られるので、切替部103で測定対象の信号を切り換える。なお、図10に示すように、信号中の第1パイロット区間および第2パイロット区間を示すパイロット区間タイミング信号は、伝送信号とともに外部から入力されるものあっても良い。
【0068】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、測定反射波電力に対する電力補正係数を算出するために用いるパイロット信号として、OFDM信号のパイロット信号を用いる場合について説明する。また、測定信号を直交復調する際に生じる周波数誤差の補正方法についても述べる。
【0069】
本実施の形態2では、非特許文献1に示されるIEEE 802.11aのOFDM信号に対して反射波電力を算出する場合について説明する。以下、当該信号を単に11a信号と呼ぶ。
【0070】
図11は、11a信号フレームのLong Training Symbolの部分を模式的に示した図である。以下、Long Training Symbolを単にLTSと略す。11a信号フレームのプリアンブル部に、図11に示すようなLTSがあり、ガードインターバルの[GI2]と[LTS1]と[LTS2]で構成される、GI2は、LTSの後半部分と同じ信号(コピー)で、LTS1とLTS2とは同じ信号である。
【0071】
LTSは11a信号のパケットの先頭付近に設けられるので、パケットを複数伝送すると、複数のLTSを取得することが可能である。そして、本実施の形態2では、第1パイロット信号として64spのGI2を含むLTS1を、第2パイロット信号として64spのLTS1を含むLTS2を用いる。
【0072】
図12は、実施の形態2に係る反射波電力測定回路の構成を示すブロック図である。図12に示す反射波電力測定回路1200が、図9に示す反射波電力測定回路900と異なる点は、反射波電力補正係数算出部110が反射波電力補正係数算出部1201に代わっている点である。そのため、同じブロックには同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。以下では、反射波電力補正係数算出部1201を中心に、実施の形態2に係る反射波電力測定回路1200の構成と動作とを説明する。
【0073】
反射波電力補正係数算出部1201は、直交復調部111と、パイロット区間検出部117Aと、制御信号生成部119Aと、第1パイロット保持部113Aと、第2パイロット保持部115Aと、周波数誤差算出部331と、周波数誤差補正部333と、信号ベクトル正規化部125と、漏れ信号ベクトル記憶部126と、ベクトル差分算出部127と、電力補正係数算出部128とを備える。
【0074】
直交復調部111は、信号を直交復調して複素ベースバンド信号に変換して、パイロット区間検出部117Aと、第1パイロット保持部113Aと、第2パイロット保持部115Aとに出力する。
【0075】
パイロット区間検出部117Aは、直交復調部111から出力された信号に対してパイロット信号の時間位置を検出し、パイロット区間検出信号を制御信号生成部119Aへ出力する。パイロット区間の検出方法は、第1パイロット信号と第2パイロット信号との時間差で相関演算を行い、その出力波形のピーク位置から検出できるが、その方法はこれに限定されない。また、外部からパイロット区間のタイミングを指示される場合もあり得る。
【0076】
制御信号生成部119Aは、パイロット区間検出部117Aで検出したパイロット区間検出信号を基に、切替部103の切替タイミングを制御する切替制御信号と、第1パイロット保持部113Aの保持を制御する第1パイロット保持制御信号と、第2パイロット保持部115Aを制御する第2パイロット保持制御信号とを生成する。
【0077】
図13は、制御信号生成部119Aが生成する制御信号のタイミングチャートを示す図である。図13に示すように、制御信号生成部119Aの入力であるパイロット区間検出信号は、LTSの先頭のタイミングでHiになる。切替制御信号は、パイロット区間検出信号の立ち上がりから、[32+64−(4/2)]sp後の切替タイミングT3までの間はLoで、その後、Hiに切り替わる。図13では、切替部103の入力がLoの時は進行波モニタ端子D1側に切り替わり、Hiの時は反射波モニタ端子C1側に切り換えるように動作する。
【0078】
また、図13では、パイロット区間検出信号の立ち上がりから、[GI2]の長さの半分の16sp後から、60spの長さだけHiにした第1パイロット保持制御信号を生成し、第1パイロット保持部113Aへ保持を指示する。さらに、パイロット区間検出信号の立ち上がりから、(32+64)spだけ離れたサンプルを開始サンプル点として60spの長さだけHiにした第2パイロット保持制御信号を生成し、第2パイロット保持部115Aへ保持を指示する。
【0079】
第1パイロット保持部113Aは、制御信号生成部119Aが生成する第1パイロット保持制御信号に基づき、直交復調部111から入力される進行波の第1パイロット信号を保持し、信号ベクトル正規化部125へ出力する。第n番目のLTSにおける第1パイロットの進行波信号をSfwd(t,n)とする。ここで、tはサンプル番号で、t=0,…,59の60サンプル数だけある。
【0080】
第2パイロット保持部115Aは、制御信号生成部119Aが生成する第2パイロット保持制御信号に基づき、直交復調部111から入力される測定反射波の第2パイロットを保持し、信号ベクトル正規化部125へ出力する。第n番目のLTSにおける第2パイロットの測定反射波信号をSrevm(t,n)とする。ここで、tはサンプル番号で、t=0,…,59の60のサンプル数分だけある。
【0081】
図14は、本発明の第2の実施形態に係る反射波電力補正係数算出部1201が第1パイロットと第2パイロットとを保持する様子を説明する模式図である。図14に示すように、第1パイロット保持制御信号に基づいて、進行波モニタ端子D1で測定される信号が60spだけ第1パイロット保持部113Aに保持され、第2パイロット保持制御信号に基づいて、反射波モニタ端子C1で測定される信号が60spだけ第2パイロット保持部115Aに保持される。第1パイロット信号として、FFTSizeの64sp分を保持しても良いが、切替部103における信号の切替にかかる時間を考慮して、4サンプル短い60spを保持する。また、同様に、第2パイロット保持部115Aは、反射波モニタ端子C1で測定される信号のうち、第1パイロットの保持開始時点からOFDM信号(11a信号)のFFTSize(64sp)だけ離れた時点から第2パイロットの信号を、保持した第1パイロットと同じ長さの60spだけ保持する。このような測定方法によれば、正規化のための進行波モニタ端子D1における基準信号と反射波モニタ端子における測定信号とについて、同じ信号でそれぞれを測定することができる。
【0082】
信号ベクトル正規化部125は、第1の実施形態に係る信号ベクトル正規化部125と同じ構成で、第1パイロット保持部113Aで保持した第1パイロット信号を基準信号として、第2パイロット保持部115Aで保持した第2パイロット信号を正規化する。時間領域信号がFFTSize(ここでは64)に満たない場合は、足りないサンプルをゼロで埋めてからFFT演算を行う。
【0083】
本実施の形態において、測定反射波電力に対する電力補正係数を算出するために、測定信号を直交復調する。ここで、RF(Radio Freqency)帯の信号から直交復調後の信号(実際には複素ベースバンド信号)に変換する際に、変換に用いるローカル信号の周波数に誤差があると変換誤差が生じてしまい、直交復調後の信号に周波数誤差が生じる。この周波数誤差によって時間方向に位相回転が生じ、第1パイロット区間の信号と所定時間長離れた第2パイロット区間の信号との間に位相差が生じてしまう。
【0084】
ここで、周波数誤差をΔf、位相差をΔΦとすると、次式(9)、(10)で示されるように、周波数誤差に起因して、第2パイロット信号が第1パイロット信号に対して位相差ΔΦが生じる。ここで、S1fwdとS2fwdは、それぞれ、進行波モニタ端子D1で測定される第1パイロット信号と第2パイロット信号で、Tuは11a信号における1つのOFDMシンボルの時間長、iはサンプル番号(i=0,…,FFTSize−1)である。
ΔΦ=2π・Δf・(1/Tu) …式(9)
S2fwd(i+FFTSize,n+1)=S1fwd(i,n+1)*exp(j・ΔΦ)…式(10)
【0085】
図15は、第2の実施の形態における周波数誤差を説明するための図である。図15に示すように、周波数誤差の影響によって、進行波モニタ端子D1で測定される信号の第1パイロット信号S1fwdと第2パイロット信号S2fwdとの間に、位相回転ΔΦが生じる。
【0086】
周波数誤差算出部331は、制御信号生成部119Aに指示して、切替部103に対する切替制御を行わない場合の第1パイロット保持信号と第2パイロット保持信号と得て、式(10)をもとに、次式(11)により、ΔΦを算出し、周波数誤差補正部333へ出力する。
ΔΦ=Angle( S2fwd(i+FFTSize,n+1)/ S1fwd(i,n+1) )…式(11)
【0087】
ここで、Angle( )は、ベクトルの角度を求める演算を示す。このように、周波数誤差を算出することを目的とする場合は、パイロット信号の測定にあたり、切替部103でモニタ端子を切り換えずに、第1パイロット信号と第2パイロット信号ともに同じモニタ端子で測定する。ここでは進行波モニタ端子D1の測定信号で算出したが、反射波モニタ端子C1の測定信号に基づいて算出してもよく、どちらのモニタ端子の場合でも、算出される周波数誤差は同じである。
【0088】
周波数誤差補正部333は、周波数誤差算出部331で算出した位相回転ΔΦに基づき、第2パイロット保持信号S2fwdを、次式(12)で示す演算によって補正し、補正後の第2パイロット保持信号S2fwd’をベクトル正規化部125へ出力する。
S2fwd’(i,n+1)=S2fwd(i,n+1)*exp(−j・ΔΦ)
…式(12)
【0089】
信号ベクトル正規化部125は、第1パイロット保持部113Aで保持した第1パイロット信号S1fwd(i,n+1)を基準信号として、上記周波数補正後の第2パイロット信号S2fwd’(i,n+1)を正規化し、正規化された測定反射波信号ベクトルVrevmnを出力する。具体的には、第1パイロット信号と第2パイロットとをそれぞれ周波数領域変換部701で周波数領域に変換し、信号ベクトル除算部702で除算により正規化を行う。周波数領域変換部701で処理する時間領域信号から周波数領域信号への変換にはFFT(Fast Furei Transform)演算が好適である。
【0090】
同様に、進行波の漏れ信号ベクトルについても、出力端子B1を終端させて、上記測定反射波信号ベクトルに対する周波数誤差補正と同様に周波数誤差補正を行い、周波数誤差の補正と正規化処理を施した漏れ信号ベクトルVleaknを漏れ信号ベクトル記憶部126に記憶しておく。
【0091】
ベクトル差分算出部127は、信号ベクトル正規部125で正規化された測定反射波信号ベクトルVleaknと漏れ信号ベクトル記憶部126に予め保持されている正規化された進行波の漏れ信号ベクトルVleaknとのベクトル差を算出し、反射波信号ベクトルVrevを算出する。
【0092】
電力補正係数算出部128は、式(8)で示したように、正規化された測定反射波信号ベクトルVrevmnとベクトル差分算出部127で算出された反射波Vrevとの電力比から電力補正係数Aを求め、これを反射波電力算出部150Aへ出力する。
【0093】
以上、本実施の形態では、11a信号のプリアンブルに含まれるトレーニングシンボルのうち、同じ信号が繰り返されるLong Training Symbol(LTS)を用いて、測定反射波信号電力に対する電力補正係数を算出した。また、周波数誤差を算出し、周波数誤差が補正された信号ベクトルを用いて電力補正係数を算出するので、精度良く電力補正係数を算出することができる。
【0094】
本実施の形態に係る反射波電力測定回路1200では、切替部103が測定経路を切り替えて、測定端子として機能するA/D変換器105を1個で実現している。また、運用中の送信信号を用いて測定反射波に対する電力補正係数を算出しているため、テスト信号を使うことなく、測定した反射波電力からVSWRを正確に算出することができる。
【0095】
(実施の形態3)
本発明の第1と第2の実施形態は、伝送信号の信号系列に同じ信号が繰り返される場合で、その繰り返される部分をパイロット信号と見なし、これを用いて測定反射波電力を補正する電力補正係数を算出した。これに対して、本発明の第3の実施形態は、伝送信号が既知のパイロット信号を複数含む場合に、これを用いて電力補正係数を算出することを説明する。ここで、既知のパイロット信号とは、伝送する情報データに依存しないデータパターンであることを意味する。また、伝送信号はOFDM信号などのマルチキャリア信号ではなく、シングルキャリア信号の場合で説明する。このパイロット信号としては、フレームの先頭に設けられて、周波数同期やシンボル同期、伝送路推定などに用いられるプリアンブルや、フレーム同期に用いられるユニークワードなどが適用できる。また、これらプリアンブルやユニークワードは、フレームの途中に挿入されたりもする。
【0096】
図16は、本発明の第3の実施形態に係る反射波電力測定回路の構成を示すブロック図である。図16に示す反射波電力測定回路1600は、図9で示した反射波電力測定回路として機能する第1の実施の形態に係る第1の変形例を示すブロック図と比較して、反射波電力補正係数算出部1601以外の構成および動作は同じで、同一の参照番号を付して、説明を省略する。また、反射波電力補正係数算出部1601は、第1パイロット記憶部341、第2パイロット記憶部342と、第1パイロット正規化部351第2パイロット正規化部352とをさらに備えること、測定反射波に対する電力補正係数がすべて時間領域で算出されること、これに伴い、信号ベクトル正規化部125Cが周波数領域変換部701と周波数領域平均化部703とを備えず、信号ベクトル除算部1802と時間平均化部1804のみで構成する。これら以外は、図9の反射波電力測定回路900と同じ機能を有するブロックで構成される。したがって、反射波電力補正係数算出部1601についてのみ説明する。
【0097】
第3の実施形態における伝送信号は、第1パイロット信号および第2パイロット信号が既知の信号系列であるとする。ここでは、変調マッピング後の信号点が既知のパイロットシンボル系列である。図17は、第3の実施形態に係る第1パイロット信号および第2パイロット信号を示す模式図である。例えば、図17に示すように、パイロットシンボル列について、あらかじめ、進行波信号で測定する第1パイロット信号と測定反射波信号で測定する第2パイロット信号とを定めておく。パイロットシンボルは、一例としてBPSK変調方式で変調された信号で、図17に示すように、信号点の極性については、(+1)、(−1)のいずれかである。
【0098】
図16において、パイロット区間検出部117Aは、第1パイロット信号および第2パイロット信号のシンボル位置を示すタイミングを検出指示し、制御信号生成部119Aは、パイロット区間検出信号に基づいて、切替部103に対するモニタ端子の切替制御と、第1パイロット保持部113A、および第2パイロット保持部115Aへ、保持を指示する。
【0099】
第1パイロット記憶部341は、第1パイロット信号を記憶し、第2パイロット記憶部342は、第2パイロット信号を記憶している。第1パイロット正規化部351は、第mシンボルの第1パイロット保持信号S1(m)を、あらかじめ記憶している第mシンボルの第1パイロット信号P1(m)で正規化し、第1パイロット正規化信号H1(m)を信号ベクトル正規化部125Cへ出力する。ここでの正規化処理はベクトル除算である。同様に第mシンボルの第2パイロット保持信号S2(m)に対しても、第2パイロット正規化信号H2(m)を算出し、信号ベクトル正規化部125Cへ出力する。次式(13)は、第1パイロット正規化部351および第2パイロット正規化部352の処理を示す式である。
S1(m)/P1(m)=H1(m)、 S2(m)/P2(m)=H2(m)
…式(13)
【0100】
図18は、第3の実施形態に係る反射波電力測定回路が有する信号ベクトル正規化部125Cの構成を示すブロック図である。図18において、信号ベクトル正規化部125Cの入力は、算出した第1パイロット正規化信号H1(m)と第2パイロット正規化信号H2(m)で、第1パイロット正規化信号H1(m)で第2パイロット正規化信号H2(m)を除算し、正規化後の信号ベクトルVn(m)を出力する信号ベクトル除算部1802と、正規化信号ベクトルVn(m)をMシンボル分平均化する時間平均部1804とを備える。方向性結合器101の出力端子B1に負荷を接続した場合に測定する正規化後の測定反射波信号ベクトルVrevmnは、次式(14)のように示される。そして、図17において第1パイロット信号と第2パイロット信号とは、それぞれ4シンボル存在するので、M=4の平均化を行う。
Vrevmn(m)=H2(m)/H1(m) …式(14)
【0101】
このように、パイロット信号が既知信号として測定される場合は、あらかじめ記憶しているパイロット信号で、測定されるパイロット信号を正規化し、パイロットの正規化信号を算出してから、進行波モニタ端子D1の第1パイロット正規化信号で反射波モニタ端子C1の第2パイロット正規化信号を正規化すれば、進行波モニタ端子D1の信号で正規化された正規化測定反射波信号ベクトルを得ることができる。
【0102】
同様に、出力端子B1を終端させて、上記の測定と演算を行えば、進行波漏れ信号ベクトルVleaknを得ることができ、これをあらかじめ漏れ信号ベクトル記憶部126に記憶しておく。
【0103】
そして、ベクトル差分算出部127で、正規化測定反射波信号ベクトルと正規化漏れ信号ベクトルとのベクトル差分求め、電力補正係数算出部128で、測定反射波電力に対する電力補正係数を算出する。
【0104】
上記各実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的にはプログラムすることが可能なFPGA(Field Programable Gate Array)や、集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。LSIについては、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよいし、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用してもよい。
【0105】
また、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明に係る反射波電力測定回路は、電力測定のための測定端子が1つという簡易な構成でありながら、主にはデジタル信号処理によって運用中の伝送信号から反射波電力を正確に測定できるといった効果を有し、システムの伝送形態は有線/無線を問わないが、特に無線送信機に有用である。
【符号の説明】
【0107】
100 送信機
101 方向性結合器
103 切替部
105 A/D変換器
110、1201、1601 反射波電力補正係数算出部
111 直交復調部
113 ガード区間保持部
113A 第1パイロット保持部
115 有効シンボル内ガード区間保持部
115A 第2パイロット保持部
117 ガード区間検出部
117A パイロット区間検出部
119、119A 制御信号生成部
125、125C 信号ベクトル正規化部
126 漏れ信号ベクトル記憶部
127 ベクトル差分算出部
128 電力補正係数算出部
150A 反射波電力算出部
150B 進行波電力算出部
151 VSWR算出部
153 VSWR表示部
331 周波数誤差算出部
333 周波数誤差補正部
701 周波数領域変換部
702 信号ベクトル除算部
703 周波数領域平均化部
704 時間平均化部
1001 ダイレクトコンバージョン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方向性結合器を用いて、送信信号の反射波電力を測定する反射波電力測定回路であって、
切換制御信号に基づいて、前記方向性結合器の進行波モニタ端子と前記方向性結合器の反射波モニタ端子とのいずれかに切り替えて接続されて、進行波または測定反射波を出力する切替部と、
パイロット区間タイミング信号に基づいて、前記切換制御信号と、前記送信信号の第1パイロット区間の保持タイミングを制御する第1パイロット区間保持制御信号と、前記送信信号の第2パイロット区間の保持タイミングを制御する第2パイロット区間保持制御信号とを生成する制御信号生成部と、
前記切替部に接続されて前記進行波または前記測定反射波をA/D変換するA/D変換器と、
前記切替部が前記進行波モニタ端子の側に切り替え接続されると、前記第1パイロット区間保持制御信号に基づき前記進行波の第1パイロット区間を保持する第1パイロット保持部と、
前記切替部が前記反射波モニタ端子の側に切り替え接続されると、前記第2パイロット区間保持制御信号に基づき前記測定反射波の前記第1パイロットから所定時間長だけ離れた第2パイロット区間を保持する第2パイロット保持部と、
前記第1パイロット保持部に保持された第1パイロット信号で、前記第2パイロット保持部に保持された第2パイロット信号を正規化し、正規化測定反射波信号ベクトルを算出する信号ベクトル正規化部と、
前記進行波の正規化漏れ信号ベクトルを予め保持する漏れ信号ベクトル記憶部と、
前記正規化測定反射波信号ベクトルと前記正規化進行波漏れ信号ベクトルとの差分から反射波信号ベクトルを算出するベクトル差分算出部と、
前記正規化測定反射波信号ベクトルと前記反射波信号ベクトルとの電力比から電力補正係数を算出する補正係数算出部と、
前記電力補正係数を用いて測定反射波電力を補正して反射波電力を算出する反射波電力算出部とを備え、
前記第1パイロット信号を基準として前記第2パイロット信号を正規化して正規化測定反射波信号ベクトルを算出し、
前記正規化測定反射波信号ベクトルと前記正規化漏れ信号ベクトルとを用いて算出された前記電力補正係数を前記測定反射波電力に乗算して反射波電力を算出することを特徴とする反射波電力測定回路。
【請求項2】
前記漏れ信号ベクトル記憶部は、
前記方向性結合器の出力端子を終端させた場合の進行波の漏れ信号に対して、前記第1パイロット信号を基準として前記第2パイロット信号を正規化して正規化漏れ信号ベクトルを算出し、予め保持することを特徴とする請求項1に記載の反射波電力測定回路。
【請求項3】
前記送信信号の前記第1パイロット信号と前記第2パイロット信号とは、繰り返し送信される同じ信号であることを特徴とする請求項1に記載の反射波電力測定回路。
【請求項4】
前記送信信号はOFDM信号であって、
前記第1パイロット区間はガード区間及び有効シンボル内ガード区間のいずれか一方の区間であり、
前記第2パイロット区間はガード区間及び有効シンボル内ガード区間のいずれか他方の区間である請求項3に記載の反射波電力測定回路。
【請求項5】
前記第1パイロット信号と前記第2パイロット信号とは互いに異なる既知信号であって、
前記反射波電力測定回路は、第1パイロット信号を記憶する第1パイロット記憶部と、
第2パイロット信号を記憶する第2パイロット記憶部と、
前記第1パイロット保持信号を前記第1パイロット信号で正規化して、第1パイロット正規化信号を算出する第1パイロット正規化部と、
前記第2パイロット保持信号を前記第2パイロット信号で正規化して、第2パイロット正規化信号を算出する第2パイロット正規化部とをさらに備え、
前記信号ベクトル正規化部は、前記第1パイロット正規化信号で前記第2パイロット正規化信号を正規化することを特徴とする請求項1に記載の反射波電力測定回路。
【請求項6】
前記反射波電力測定回路は、
前記進行波モニタ端子または前記反射波モニタ端子のいずれかの測定信号について、前記第1パイロット保持部と前記第2パイロット保持部とに保持された2つのパイロット信号間の周波数誤差を算出する周波数誤差算出部と、
前記周波数誤差を補正する周波数誤差補正部とを備え、
前記信号ベクトル正規化部の入力は、前記周波数誤差補正部で補正されたパイロット信号を含むことを特徴とする請求項1に記載の反射波電力測定回路。
【請求項7】
前記反射波電力測定回路は、さらに直交復調部を備え、
RF帯の前記送信信号を直交ベースバンド信号に変換することを特徴とする請求項1に記載の反射波電力測定回路。
【請求項8】
前記反射波電力測定回路は、
前記前記A/D変換器に接続される前記進行波モニタ端子又は前記反射波モニタ端子から出力される送信信号のパイロット区間を検出するパイロット区間検出部を更に備え、
前記パイロット区間タイミング信号は、前記パイロット区間検出部が出力するタイミング信号であることを特徴とする請求項1に記載の反射波電力測定回路。
【請求項9】
前記信号ベクトル正規化部は、
時間領域信号を周波数領域信号に変換する周波数領域変換部と、
周波数領域の第1パイロット信号で、周波数領域の第2パイロット信号を各周波数成分毎に正規化する正規化部と、
当該正規化した各周波数成分を、周波数方向に平均化する周波数平均化部と、
複数のパイロット信号について平均化する時間平均化部とを備え、
周波数領域の測定反射波信号ベクトルと漏れ信号ベクトルとを算出することを特徴とする請求項1に記載の反射波電力測定回路。
【請求項10】
請求項1に記載の反射波電力測定回路と、
進行波電力算出部と、を備え、
前記反射波電力測定回路が算出する反射波電力と、前記進行波電力算出部が算出する進行波電力とを用いてVSWRを算出することを特徴とするVSWR測定回路。
【請求項11】
前記進行波電力は、
前記切替部の接続先を前記進行波モニタ端子に切り換えて前記進行波を測定して算出されることを特徴とする請求項10記載のVSWR測定回路。
【請求項12】
請求項1に記載の反射波電力測定回路を備え、
前記反射波電力測定回路を用いて反射波電力算出することを特徴とする送信機。
【請求項13】
請求項10に記載のVSWR測定回路を備え、
前記VSWR測定回路を用いてVSWR値を算出することを特徴とする送信機。
【請求項14】
方向性結合器を用いて、送信信号の反射波電力を測定する反射波電力測定方法であって、
切替部により、切換制御信号に基づいて、前記方向性結合器の進行波モニタ端子と前記方向性結合器の反射波モニタ端子とのいずれかに切り替えて接続されて、進行波または測定反射波を出力するステップと、
制御信号生成部により、パイロット区間タイミング信号に基づいて、前記切換制御信号と、前記送信信号の第1パイロット区間の保持タイミングを制御する第1パイロット区間保持制御信号と、前記送信信号の第2パイロット区間の保持タイミングを制御する第2パイロット区間保持制御信号とを生成するステップと、
A/D変換器により、前記切替部に接続されて前記進行波または前記測定反射波をA/D変換するステップと、
第1パイロット保持部により、前記切替部が前記進行波モニタ端子の側に切り替え接続されると、前記第1パイロット区間保持制御信号に基づき前記進行波の第1パイロット区間を保持するステップと、
第2パイロット保持部により、前記切替部が前記反射波モニタ端子の側に切り替え接続されると、前記第2パイロット区間保持制御信号に基づき前記測定反射波の前記第1パイロットから所定時間長だけ離れた第2パイロット区間を保持するステップと、
信号ベクトル正規化部により、前記第1パイロット保持部に保持された第1パイロット信号で、前記第2パイロット保持部に保持された第2パイロット信号を正規化し、正規化測定反射波信号ベクトルを算出するステップと、
漏れ信号ベクトル記憶部により、前記進行波の正規化漏れ信号ベクトルを予め保持する記憶ステップと、
ベクトル差分算出部により、前記正規化測定反射波信号ベクトルと前記正規化進行波漏れ信号ベクトルとの差分から反射波信号ベクトルを算出するステップと、
補正係数算出部により、前記正規化測定反射波信号ベクトルと前記反射波信号ベクトルとの電力比から電力補正係数を算出するステップと、
反射波電力算出部により、前記電力補正係数を用いて測定反射波電力を補正して反射波電力を算出するステップと、
前記第1パイロット信号を基準として前記第2パイロット信号を正規化して正規化測定反射波信号ベクトルを算出するステップと、
前記正規化測定反射波信号ベクトルと前記正規化漏れ信号ベクトルとを用いて算出された前記電力補正係数を前記測定反射波電力に乗算して反射波電力を算出するステップとを備える反射波電力測定方法。
【請求項15】
前記記憶ステップでは、
前記漏れ信号ベクトル記憶部により、前記方向性結合器の出力端子を終端させた場合の進行波の漏れ信号に対して、前記第1パイロット信号を基準として前記第2パイロット信号を正規化して正規化漏れ信号ベクトルを算出し、予め保持する請求項14に記載の反射波電力測定方法。
【請求項16】
前記送信信号の前記第1パイロット信号と前記第2パイロット信号とは、繰り返し送信される同じ信号であることを特徴とする請求項14に記載の反射波電力測定方法。
【請求項17】
前記送信信号はOFDM信号であって、
前記第1パイロット区間はガード区間及び有効シンボル内ガード区間のいずれか一方の区間であり、
前記第2パイロット区間はガード区間及び有効シンボル内ガード区間のいずれか他方の区間である請求項16に記載の反射波電力測定方法。
【請求項18】
第1パイロット記憶部により、前記第2パイロット信号とは異なる既知信号である前記第1パイロット信号を記憶するステップと、
第2パイロット記憶部により、前記第1パイロットとは異なる信号第2パイロット信号を記憶するステップと、
第1パイロット正規化部により、前記第1パイロット保持信号を前記第1パイロット信号で正規化して、第1パイロット正規化信号を算出するステップと、
第2パイロット正規化部により、前記第2パイロット保持信号を前記第2パイロット信号で正規化して、第2パイロット正規化信号を算出するステップと、
前記信号ベクトル正規化部により、前記第1パイロット正規化信号で前記第2パイロット正規化信号を正規化するステップとを含むことを特徴とする請求項14に記載の反射波電力測定方法。
【請求項19】
周波数誤差算出部により、前記進行波モニタ端子または前記反射波モニタ端子のいずれかの測定信号について、前記第1パイロット保持部と前記第2パイロット保持部とに保持された2つのパイロット信号間の周波数誤差を算出して、当該周波数誤差を補正するステップ、を備え、
前記信号ベクトル正規化部の入力は、前記周波数誤差補正部で補正されたパイロット信号を含むことを特徴とする請求項14に記載の反射波電力測定方法。
【請求項20】
直交復調部により、RF帯の前記送信信号を直交ベースバンド信号に変換するステップを更に備えることを特徴とする請求項14に記載の反射波電力測定方法。
【請求項21】
パイロット区間検出部により、前記前記A/D変換器に接続される前記進行波モニタ端子又は前記反射波モニタ端子から出力される送信信号のパイロット区間を検出するステップを備え、
前記パイロット区間タイミング信号は、前記パイロット区間検出部が出力するタイミング信号であることを特徴とする請求項14に記載の反射波電力測定方法。
【請求項22】
周波数領域変換部により、時間領域信号を周波数領域信号に変換するステップと、
正規化部により、周波数領域の第1パイロット信号で、周波数領域の第2パイロット信号を各周波数成分毎に正規化するステップと、
周波数平均化部により、当該正規化した各周波数成分を、周波数方向に平均化するステップと、
時間平均化部により、複数のパイロット信号について平均化するステップとを備え、
周波数領域の測定反射波信号ベクトルと漏れ信号ベクトルとを算出するステップとを備えることを特徴とする請求項14に記載の反射波電力測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−191341(P2012−191341A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51892(P2011−51892)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】