無線送受信方法および無線送受信装置
【課題】 本発明は、ユビキタスシステムに適応される無線送受信装置で、高速データ転送と低消費電力動作を両立することができる無線送受信方法を提供する。
【解決手段】 異なる周波数帯域に属する2種以上の搬送波を用いて無線送受信を行う無線送受信方法を用いて、低域側の周波数帯域(400MHz帯)に属する搬送波を用いて無線送受信装置の送受信動作を制御するための制御信号を送受信し、高域側の周波数帯域(2.4GHz帯)に属する搬送波を用いてデータ転送を行う。
【解決手段】 異なる周波数帯域に属する2種以上の搬送波を用いて無線送受信を行う無線送受信方法を用いて、低域側の周波数帯域(400MHz帯)に属する搬送波を用いて無線送受信装置の送受信動作を制御するための制御信号を送受信し、高域側の周波数帯域(2.4GHz帯)に属する搬送波を用いてデータ転送を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信相手の無線送受信装置との間で無線送受信を行うことによりデータのやり取りを行う無線送受信装置に関し、特に、この無線送受信装置間で行われる無線送受信を制御するための無線送受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体微細加工技術の発展に伴い、無線通信用デバイス・装置が安価かつ多量に安定して供給され、日々の生活に深く浸透しつつある。今後、あらゆるものに無線通信デバイスが搭載されたユビキタス時代が到来する事が予想されている。ユビキタス時代の無線通信デバイスは、電池での長時間動作を要求され、このために低消費電力化が必須の技術となっている。
【0003】
このような無線通信デバイスの一例として、非特許文献1に示すような無線デバイス仕様が提案されている。この非特許文献1の図1では、無線通信デバイス間でネットワークを構成し、それぞれのデバイスが取得したデータをサーバ(PAN Coordinator)に送る構成が示されている。また、特許文献1には、室温センサ、エアコン、給湯器に設置された無線通信デバイスからそれぞれの状態・動作を外部通信手段部に送信し、それぞれの動作状態を外部通信手段部より外部通信回線に転送するシステムが示されている。さらに特許文献2では、無線通信デバイスにおいて、送信時と受信時とで、異なる周波数を用いる事が示されている。
【0004】
しかしながら、上記、特許文献1、特許文献2、非特許文献1に開示された無線通信システムでは、高速なデータ通信と低消費電力動作の両立が出来ないという問題点を有している。その理由は、使用する搬送周波数帯域により最大送受信レートが決定されてしまうが、無線通信デバイスの消費電力は搬送波周波数に強く依存するからである。
【0005】
つまり、映像伝送などの高速データ通信を行う際には、5GHz帯、若しくは2.4GHz帯等の高い周波数帯域を用いる必要があるが、これらの帯域で通信されたデータの搬送波からの取り出しや、通信データを搬送波に乗せるためには、無線通信デバイス内で5GHz、若しくは、2.4GHzという高速に動作する回路が必要であり、高速動作回路部は無線通信デバイスの大部分の電力を消費するからである。
【0006】
一般的に無線通信システムでは、図1に示すように、電波法等の法規制により割り当てられた1つの周波数帯の搬送波を使用してデータの送受信や動作制御が行われる。そのため、割り当てられる周波数帯域により最大送受信データレートは決まってしまう。
【0007】
特許文献2に記載された従来技術では、無線通信デバイスの送信時と受信時に別個の搬送周波数を用いているが、同一周波数帯域内のチャネルの違いに留まるため、搬送周波数の違いはきわめて小さく、チャネル選択の仕方の違いによる搬送周波数の違いが、動作電力に与える影響はほとんど無い。
【0008】
また、非特許文献1では、低電力動作を実現するため、間歇動作などの機構が提示されているが、ひとつの周波数帯域を利用するこのシステムでは、間歇的動作により電力を低減した分に比例して、トータルのデータ通信量が低減する。
【0009】
近年、端末間の通信のみで実現されるアドホックネットワークシステムが注目されている。このアドホックネットワークシステムは、図2に示されるように、複数の端末91により構成され、この端末91間で無線送受信号92を介して相互に転送データを交換することにより他の端末との間で情報通信を行うシステムであり、利用エリアに縛られない、高価な設備が不要であるといった特徴を有している。
【0010】
アドホックメッシュネットワークを利用した無線通信ネットワークシステムは、監視カメラネットワークを用いた安全確保システム、入退場検査システムや物流管理、医療現場での患者管理など、広範囲に使用される。
【0011】
次に、このようなアドホックネットワークシステムの端末として、図1に示したような1つの周波数帯域のみを使用する無線送受信装置を用いた場合の問題点について説明する。
【0012】
先ず、アドホック無線システムにおける隠れ端末問題を図3を参照して説明する。図3では、端末Bと端末Cが通信中であり、端末Aには端末Bと端末Cが通信中である事が分からない場合、端末Aは通信中の端末Bに通信要求を出すことになる。しかしながら端末Aは端末Bからの返信を受け取れないため、端末Aの通信要求動作は無駄な動作となり端末Aは無為な電力を消費する。この動作を説明するためのフローチャートを図4に示す。
【0013】
この図4では、端末Aが端末Bに対して通信要求を行った場合(ステップ111)、端末Bと端末Cとの間では交信中であるため、端末Aでは端末Bからの返答を受け取ることができない(ステップ112)。そのため、端末Aでは一定時間待機(ステップ113)した後、再度端末Bへ通信要求を行い(ステップ114)、ステップ115、116の処理が繰り返される。この繰り返し処理は、端末B、端末Cの間の交信が終了するまで繰り返される。そして、端末B、端末Cの間の交信が終了した場合(ステップ117、118)、端末Aが端末Bへ通信要求を行うと(ステップ119)、端末Aは端末Bから返答を受信して(ステップ120)、交信が開始される。
【0014】
図5は、アドホック無線システムにおけるさらされ端末問題を示す図である。図5では、端末Cは端末Dと交信中であり、端末Bは端末Aに送信しようとしているが、端末Bは端末Cの通信が傍受できてしまうため、送信動作に入れず端末Aへの送信が行えない状況を示す。この動作を説明するためのフローチャートを図6に示す。
【0015】
端末Bが端末Aに対する通信を希望した場合(ステップ131)、端末Bが端末Cの通信キャリアを感知してしまう(ステップ132)。すると、端末Bは一定時間待機した後(ステップ133)、再度通信キャリアの有無を判定すると、端末Cの通信キャリアを感知し(ステップ134)、待機動作を行ってしまう(ステップ135)。そして、この繰り返し処理は、端末Cと端末Dとの間の交信が終了するまで繰り返される。そして、端末C、端末Dの間の交信が終了した場合(ステップ136、137)、端末Bは通信キャリアが無いことを確認して(ステップ138)、端末Aに対して通信要求を行うことができるようになる(ステップ139)。
【0016】
このように、従来の無線送受信装置を用いてアドホックネットワークシステムを構成した場合、無駄な通信処理が繰り返されることにより送信電力が無駄に使用されることになる。
【0017】
さらに、一般的な無線通信システムでは、各端末は受信待ち受け動作を行っている時間が最も長くなるが、送受信転送レートを上げて高速動作を実現しようとして、高い周波数の搬送周波数帯域を使用すると、待ち受け動作についても高い搬送周波数を受信するための回路を動作させる必要があり消費電力が大きくなってしまうという問題的を有している。
【特許文献1】特開2000−101578号公報
【特許文献2】特開平10−13958号公報
【非特許文献1】IEEE Computer Society, 804.15.4, Part 15.4: Wireless Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications for Low-Rate Wireless Personal Area Networks (LR-WPANs)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記で説明した従来の無線送受信装置では、高速なデータ通信と低消費電力動作を両立することができないという問題点があった。
【0019】
本発明の目的は、高速なデータ通信と低消費電力動作の両立ができる無線送受信装置および無線送受信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明の無線送受信方法は、異なる周波数帯域に属する2種以上の搬送波を用いて無線送受信を行う無線送受信方法であって、
低域側の周波数帯域に属する搬送波を用いて無線送受信装置の送受信動作を制御するための制御信号を送受信するステップと、
高域側の周波数帯域に属する搬送波を用いてデータ転送を行うステップとを備えている。
【0021】
また、前記制御信号には、通信相手の認証処理を行うための信号を含むようにしてもよい。
【0022】
さらに、本発明の無線送受信方法は、低域側の周波数帯を用いた通信の送信電力を減少させる電力調整を行い、低域側の周波数帯の通信が通信不能となった場合には、高域側の周波数帯の通信により低域側の周波数帯を用いた通信の送信電力を増加させることにより、低域側の周波数帯を用いた通信の送信電力調整を行うステップと、
高域側の周波数帯を用いた通信の送信電力を減少させる電力調整を行い、高域側の周波数帯の通信が通信不能となった場合には、低域側の周波数帯の通信により高域側の周波数帯を用いた通信の送信電力を増加させることにより、高域側の周波数帯を用いた通信の送信電力調整を行うステップとをさらに有するようにしてもよい。
【0023】
本発明によれば、消費電力が少なくて済む低域側の周波数帯域に属する搬送波を用いて認証処理を行うための信号等の制御信号の送受信を行い、通信相手が確定した後に、最大送受信レートを高く設定することが可能な高域側の周波数帯域に属する搬送波を用いてデータ転送を行うことにより、高速なデータ通信と低消費電力動作の両立が可能になる。
【0024】
このことにより、ユビキタス無線システムにおいて、動作の大半を占める信号待ち受け期間では低域側の周波数帯を用いた通信を行うことで消費電力を低減し、能動的通信を行う際には高域側の周波数帯を用いた通信を行うことで高速なデータ通信を可能とする。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、消費電力が少なくて済む低域側の周波数帯域に属する搬送波を用いて制御信号の送受信を行い、最大送受信レートを高く設定することが可能な高域側の周波数帯域に属する搬送波を用いてデータ転送を行うことにより、高速なデータ通信と低消費電力動作の両立が可能になるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の無線送受信方法でのネットワーク接続プロトコル例を示すである。
【図2】アドホックネットワーク接続を示す概念図である。
【図3】アドホックネットワークでの隠れ端末問題を説明する概念図である。
【図4】アドホックネットワークでの隠れ端末環境での従来動作を説明するフローチャートである。
【図5】アドホックネットワークでのさらされ端末問題を説明する概念図である。
【図6】アドホックネットワークでのさらされ端末環境での従来動作を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態の無線送受信方法を用いたひとつの無線装置間の通信形態を示す概念図である。
【図8】本発明の一実施形態の無線送受信方法を実現する無線送受信装置の具体例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態の無線送受信方法を用いたネットワーク接続プロトコルの一例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態の無線送受信方法において、400MHz帯での認証が行われなかった場合の処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の一実施形態の無線送受信方法において、400MHz帯での認証が行われ2.4GHz帯通信が確立した状態で400MHz帯の電力調整を行う場合の処理を示すフローチャートである。
【図12】アドホックネットワークでの隠れ端末環境での本発明による動作を説明するフローチャートである。
【図13】アドホックネットワークでのさらされ端末環境での本発明による動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、ここでは説明を簡略化するために、もっとも単純な周波数帯域が2つの場合について説明する。ここで言う「周波数帯域」とは、電波法などに代表される、無線利用に関する法規定、標準化規定に基づき個々に定義された周波数レンジを意味するものとする。
【0028】
図7は、本実施形態による無線通信用デバイス間での通信の様子を示す図である。ネットワークを構成するノードA、ノードBとの間において、低域側の周波数帯域(ここでは400MHz帯)と高域側の周波数帯域(ここでは2.4GHz帯)の両方を用いた通信が行われている。
【0029】
次に、図7に示したような無線送受信装置の具体的な構成例を図8に示す。この無線送受信装置は、フィルタ1、4と、2.4GHz帯送受信部2と、400MHz帯送受信部5と、認証制御部3とを備えている。
【0030】
2.4GHz帯送受信部2は、高域側の周波数帯域である2.4GHz帯に属する搬送波の送受信を行う。
【0031】
400MHz帯送受信部5と、低域側の周波数帯域である400MHz帯の搬送波の送受信を行う。
【0032】
認証制御部3は、400MHz帯送受信部5を用いて通信相手との間の認証処理等の送受信動作を制御する制御信号をやり取りし、通信相手が確定された場合に、2.4GHz帯送受信部2を動作させて通信相手との間でデータの送受信を行う。
【0033】
本実施形態における無線送受信装置では、図8に示すように、同一装置内に複数の搬送周波数に対応する送受信部2、5を搭載する。より多くの電力を消費する高周波側の回路(ここでは2.4GHz帯送受信部2)は、低周波側(400MHz帯)の受信が正常であった場合のみ動作するようにする。図8の例では、400MHz帯送受信部5にて受信された信号6は認証制御部3にて解析され、正規の相手より送信された信号であると判断できた場合、認証制御部3は、通信相手への返答信号7を400MHz帯送受信部5に出力する。そして、認証制御部3は、2.4GHz帯送受信部2の電源・クロック信号発生を活性化するための2.4GHz帯トランシーバ部動作制御信号8を出力し、2.4GHz帯の送受信を可能とする。このため、高周波帯回路である2.4GHz帯送受信部2は間歇的にしか動作せず、2.4GHz帯信号を直接受信する場合に必要な2.4GHz帯送受信部2の常時動作をする必要が無くなり、消費電力を抑制することができる。そして、本実施形態の無線送受信装置では、能動的に高速通信を行う場合は、400MHz帯送受信部5より相手ノードへ認証信号を発信し、認証完了後に2.4GHz帯送受信部2を動作させることで、高速なデータ通信が実現できる。
【0034】
上記に説明した実施形態において、400MHz帯送受信電力、2.4GHz帯送受信電力を適応的に最適化設定するようにしてもよい。
【0035】
例えば、認証制御部3は、400MHz帯を用いた通信の送信電力を減少させる電力調整を行い、400MHz帯の通信が通信不能となった場合には、2.4GHz帯の通信により400MHz帯を用いた通信の送信電力を増加させることにより、400MHz帯を用いた通信の送信電力調整を行う。
【0036】
また、認証制御部3は、2.4GHz帯を用いた通信の送信電力を減少させる電力調整を行い、2.4GHz帯の通信が通信不能となった場合には、400MHz帯の通信により2.4GHz帯を用いた通信の送信電力を増加させることにより、2.4GHz帯を用いた通信の送信電力調整を行う。
【0037】
このようにして、400MHz帯送受信電力、2.4GHz帯送受信電力を適応的に最適化設定するための手順を、図9に示す。図7に示したノード間のネットワーク接続を、まずは400MHz帯から開始する。初めの400MHz帯の送受信では、プリアンブル、キャリアセンス、同期、認証などの初期化処理を行った後にデータ送受信が行われる。ここで、400MHz帯での認証処理が正規に行える通信相手とのみ2.4GHz帯での交信を行うようにすれば、2.4GHz帯通信での安全性を確保することが出来る。また、400MHz帯で認証を行うことで、許可された交信相手以外からの通信に2.4GHz帯を用いる必要がなくなるため、電力消費の多い高域通信動作頻度を低減できる。また、400MHz帯、2.4GHz帯と、それぞれ独立した送受信装置を具備した送受信デバイスを用いることで、400MHz帯と2.4GHz帯の送受信を平行して行うことができる。
【0038】
図9に示すように、2.4GHz帯の送受信を行いながら、平行して400MHz帯送受信器の電力調整を行う事が出来る。400MHz帯での認証が行われなかった場合の処理を図10に、400MHz帯での認証が行われ2.4GHz帯通信が確立した状態で400MHz帯の電力調整を行う場合の処理を図11に示す。
【0039】
先ず、図10を参照して、認証が行われなかった場合の動作について説明する。この場合、端末Aは、400MHz帯の周波数を用いて最大電力で端末Bに対して交信要求を行う(ステップ41)。この端末Aからの交信要求を受信した端末Bは、400MHz帯の周波数を用いて最大電力で端末Aに対して返信を行う(ステップ42)。その後、端末Aと、端末Bとの間で、400M帯の周波数を用いて相互認証が行われる(ステップ43)。しかし、ここでは、認証結果はNGとなるため(ステップ44)、端末A、Bは交信を遮断して通信を終了する(ステップ45、46)。
【0040】
次に、図11を参照して、400MHz帯での認証が行われ2.4GHz帯通信が確立した状態で400MHz帯の電力調整を行う場合の動作について説明する。この場合、端末Aは、400MHz帯の周波数を用いて最大電力で端末Bに対して交信要求を行う(ステップ51)。この端末Aからの交信要求を受信した端末Bは、400MHz帯の周波数を用いて最大電力で端末Aに対して返信を行う(ステップ52)。その後、端末Aと、端末Bとの間で、400M帯の周波数を用いて相互認証が行われる(ステップ53)。ここまでの処理は、図10に示したフローチャートと同様である。
【0041】
しかし、ここでは、認証結果はOKとなるため(ステップ54)、端末Aは2.4GHz帯の周波数を用いて最大電力で端末Bに交信要求を行う(ステップ55)。そして、この端末Aからの交信要求を受信した端末Bは、2.4GHz帯の周波数を用いて最大電力で端末Aに対して返信を行う(ステップ56)。
【0042】
このようにして2.4GHz帯での通信が確立した状態で端末A、Bは、400MHz帯の周波数の電力調整を行う(ステップ57〜59)。この電力調整により端末A、B間の400MHz帯の周波数の通信が遮断された場合(ステップ60)、端末Aは2.4GHz帯の周波数により端末Bに対して400MHz帯の周波数の電力増を要求する(ステップ61)。同様に、端末Bは2.4GHz帯の周波数により端末Aに対して400MHz帯の周波数の電力増を要求する(ステップ62)。このようにして端末A、B間の400MHz帯の周波数の電力は通信が可能な最小電力となるように調整される(ステップ63)。
【0043】
この図11では400MHz帯、2.4GHz帯ともに初期接続は最大電力にて行い、徐々に400MHz帯の電力を低減する調整を行うことが示されている。電力低減に伴い通信可能距離が低減しS/N比が劣化するため、あるところで400MHz帯の通信が遮断される。このとき、交信中の2.4GHz帯を用いて電力増加処理を行うことで、必要にして十分な電力での400MHz帯通信が確立される。本実施形態による無線送受信方法では、送受信器の電力を低減しすぎて400MHz帯通信が途絶えた場合でも、2.4GHz帯を用いた通信を継続でき各ノードの状態を互いに確認できるため、無線通信デバイス間の同期、認証処理などが不要となる。結果、再度400MHz帯での通信を確立する際には、上記の初期化処理は極めて単純化、短時間化できる。よって、図1に示した従来例に比べ非常に高速に400MHz帯の電力調整が完了できる。
【0044】
同様に、400MHz帯の電力調整完了後、2.4GHz帯の電力調整を行うことで、それぞれの周波数帯域での最低電力での通信が可能となる。
【0045】
また、図10に示すように、400MHz帯での認証処理が行えなかった際には電力をより消費する2.4GHz帯の無線送受信機は動作しないため、無為な電力消費を回避できる。
【0046】
さらに、ユビキタスシステムの動作期間の大半の時間を占める信号待ち受け動作時間において低電力動作を実現し、自発的能動的動作時には高速データ転送が行える無線送受信方法を実現することができる。
【0047】
次に、このような無線送受信装置を、図2に示すアドホックネットワークシステムに対して適用した場合の動作について説明する。
【0048】
1つの周波数帯のみを用いる従来の無線送受信装置により構成されたアドホックネットワークシステムでは、上記で説明したように、図3、図5に示した隠れ端末問題や、さらされ端末問題が発生した。しかし、本実施形態の無線送受信装置のように2つの周波数帯を使用する無線送受信装置を用いることによりこれらの問題を解消して消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0049】
本実施形態の無線送受信装置では、図3に示すように端末Bと端末Cが2.4GHz帯の周波数を用いて通信中であるような隠れ端末環境であっても端末Bは端末Aとの間で400MHz帯の周波数を使った通信要求を受ける事ができるため、端末Bは端末Aに返答信号を返す事ができる。このときの端末A、B、Cの動作を図12に示す。
【0050】
先ず、端末Aが端末Bに対して400MHz帯の周波数を使用して通信要求を行う(ステップ71)。ここで、端末Bと端末Cとの間では、2.4GHz帯の周波数を使用して交信中であったとしても、端末Bは返答信号を端末Aに送信することができる。そのため、端末Aは、端末Bが端末Cとの間で交信中であることを知ることができ待機状態に入ることができる(ステップ72)。そして、端末Bと、端末Cとの間の交信が終了すると(ステップ73、74)、端末Aは端末Bへ通信要求を行い、端末Bからの返答信号を受信して、2.4GHz帯の周波数を使用して端末Bとの間の交信を開始する(ステップ76)。
【0051】
このように端末Bは端末Aに現在通信中であることや現在行っている通信の通信時間等を通知することができるため、端末Aは無意味な通信要求を出すことがなくなる。この結果、端末Aの無為な動作による電力増加という問題が解消される。
【0052】
また、本実施形態の無線送受信装置では、図5に示したような端末Cと端末Dが2.4GHzで通信中であるようなさらされ端末環境の場合でも、端末Bは端末Aに400MHz帯を用いた通信要求を出す事ができ、端末Bと端末Aとの間の通信を確立する事ができる。このときの端末A、B、C、Dの動作を図13に示す。
【0053】
先ず、端末Bが端末Aに対する通信を希望した場合(ステップ81)、端末Bは受信可能な通信キャリアの確認を行うことにより、端末Cの2.4GHzの通信キャリアを感知するが(ステップ82)、400MHzの通信キャリアは無いことを確認する(ステップ83)。そのため、端末Bは、400MHz帯の周波数を使用して端末Aに対する通信要求を行う(ステップ84)。そして、端末Bは、端末Aから400MHz帯の周波数を使用した返答信号を受信して、交信を行う。
【0054】
そして、端末Cと端末Dとの間の2.4GHz帯の周波数を使用した交信が終了すると(ステップ85、86)、端末Aと端末Bとは、2.4GHz帯の周波数を使用した交信を開始する。
【0055】
本実施形態による無線送受信方法により、従来の無線送受信装置により構成されたアドホックネットワークで問題となっていた、隠れ端末問題、さらされ端末問題が解消されている。その結果、無為な送受信動作を行う場合が減少し、低消費電力特性、および、ネットワーク全体の通信データレートが改善する。
【0056】
つまり、本実施形態の無線送受信方法によれば、2つの搬送周波数を用いて、それぞれの搬送周波数ごとに送受信電力を高速に最適制御することで、隠れ端末問題、さらされ端末問題などのユビキタスアドホックネットワークに特有な問題に対応し、かつ、動作時消費電力の最小化を実現することができる。
【0057】
さらに、高域側の周波数帯域と低域側の周波数帯域という2つの周波数帯域の搬送波を使用することにより送受信時の電力を最小化しているので、図3、図5で示したような、本来通信すべきでない相手まで電波が届くことによる問題を回避できるという相乗的な効果を奏する。
【0058】
本実施形態では、説明を単純化するために、400MHz帯、2.4GHz帯という2つの周波数帯を用いた場合について述べたが、本発明はこのような場合に限定されるわけではなく、3種類以上の周波数帯を用いた場合でも同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 フィルタ
2 2.4GHz帯送受信部
3 認証・制御部
4 フィルタ
5 400MHz帯送受信部
6 受信制御信号
7 送信制御信号
8 2.4GHz帯トランシーバ部動作制御信号
41〜46 ステップ
51〜63 ステップ
71〜76 ステップ
81〜86 ステップ
91 端末
92 無線送受信信号
111〜120 ステップ
131〜139 ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信相手の無線送受信装置との間で無線送受信を行うことによりデータのやり取りを行う無線送受信装置に関し、特に、この無線送受信装置間で行われる無線送受信を制御するための無線送受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体微細加工技術の発展に伴い、無線通信用デバイス・装置が安価かつ多量に安定して供給され、日々の生活に深く浸透しつつある。今後、あらゆるものに無線通信デバイスが搭載されたユビキタス時代が到来する事が予想されている。ユビキタス時代の無線通信デバイスは、電池での長時間動作を要求され、このために低消費電力化が必須の技術となっている。
【0003】
このような無線通信デバイスの一例として、非特許文献1に示すような無線デバイス仕様が提案されている。この非特許文献1の図1では、無線通信デバイス間でネットワークを構成し、それぞれのデバイスが取得したデータをサーバ(PAN Coordinator)に送る構成が示されている。また、特許文献1には、室温センサ、エアコン、給湯器に設置された無線通信デバイスからそれぞれの状態・動作を外部通信手段部に送信し、それぞれの動作状態を外部通信手段部より外部通信回線に転送するシステムが示されている。さらに特許文献2では、無線通信デバイスにおいて、送信時と受信時とで、異なる周波数を用いる事が示されている。
【0004】
しかしながら、上記、特許文献1、特許文献2、非特許文献1に開示された無線通信システムでは、高速なデータ通信と低消費電力動作の両立が出来ないという問題点を有している。その理由は、使用する搬送周波数帯域により最大送受信レートが決定されてしまうが、無線通信デバイスの消費電力は搬送波周波数に強く依存するからである。
【0005】
つまり、映像伝送などの高速データ通信を行う際には、5GHz帯、若しくは2.4GHz帯等の高い周波数帯域を用いる必要があるが、これらの帯域で通信されたデータの搬送波からの取り出しや、通信データを搬送波に乗せるためには、無線通信デバイス内で5GHz、若しくは、2.4GHzという高速に動作する回路が必要であり、高速動作回路部は無線通信デバイスの大部分の電力を消費するからである。
【0006】
一般的に無線通信システムでは、図1に示すように、電波法等の法規制により割り当てられた1つの周波数帯の搬送波を使用してデータの送受信や動作制御が行われる。そのため、割り当てられる周波数帯域により最大送受信データレートは決まってしまう。
【0007】
特許文献2に記載された従来技術では、無線通信デバイスの送信時と受信時に別個の搬送周波数を用いているが、同一周波数帯域内のチャネルの違いに留まるため、搬送周波数の違いはきわめて小さく、チャネル選択の仕方の違いによる搬送周波数の違いが、動作電力に与える影響はほとんど無い。
【0008】
また、非特許文献1では、低電力動作を実現するため、間歇動作などの機構が提示されているが、ひとつの周波数帯域を利用するこのシステムでは、間歇的動作により電力を低減した分に比例して、トータルのデータ通信量が低減する。
【0009】
近年、端末間の通信のみで実現されるアドホックネットワークシステムが注目されている。このアドホックネットワークシステムは、図2に示されるように、複数の端末91により構成され、この端末91間で無線送受信号92を介して相互に転送データを交換することにより他の端末との間で情報通信を行うシステムであり、利用エリアに縛られない、高価な設備が不要であるといった特徴を有している。
【0010】
アドホックメッシュネットワークを利用した無線通信ネットワークシステムは、監視カメラネットワークを用いた安全確保システム、入退場検査システムや物流管理、医療現場での患者管理など、広範囲に使用される。
【0011】
次に、このようなアドホックネットワークシステムの端末として、図1に示したような1つの周波数帯域のみを使用する無線送受信装置を用いた場合の問題点について説明する。
【0012】
先ず、アドホック無線システムにおける隠れ端末問題を図3を参照して説明する。図3では、端末Bと端末Cが通信中であり、端末Aには端末Bと端末Cが通信中である事が分からない場合、端末Aは通信中の端末Bに通信要求を出すことになる。しかしながら端末Aは端末Bからの返信を受け取れないため、端末Aの通信要求動作は無駄な動作となり端末Aは無為な電力を消費する。この動作を説明するためのフローチャートを図4に示す。
【0013】
この図4では、端末Aが端末Bに対して通信要求を行った場合(ステップ111)、端末Bと端末Cとの間では交信中であるため、端末Aでは端末Bからの返答を受け取ることができない(ステップ112)。そのため、端末Aでは一定時間待機(ステップ113)した後、再度端末Bへ通信要求を行い(ステップ114)、ステップ115、116の処理が繰り返される。この繰り返し処理は、端末B、端末Cの間の交信が終了するまで繰り返される。そして、端末B、端末Cの間の交信が終了した場合(ステップ117、118)、端末Aが端末Bへ通信要求を行うと(ステップ119)、端末Aは端末Bから返答を受信して(ステップ120)、交信が開始される。
【0014】
図5は、アドホック無線システムにおけるさらされ端末問題を示す図である。図5では、端末Cは端末Dと交信中であり、端末Bは端末Aに送信しようとしているが、端末Bは端末Cの通信が傍受できてしまうため、送信動作に入れず端末Aへの送信が行えない状況を示す。この動作を説明するためのフローチャートを図6に示す。
【0015】
端末Bが端末Aに対する通信を希望した場合(ステップ131)、端末Bが端末Cの通信キャリアを感知してしまう(ステップ132)。すると、端末Bは一定時間待機した後(ステップ133)、再度通信キャリアの有無を判定すると、端末Cの通信キャリアを感知し(ステップ134)、待機動作を行ってしまう(ステップ135)。そして、この繰り返し処理は、端末Cと端末Dとの間の交信が終了するまで繰り返される。そして、端末C、端末Dの間の交信が終了した場合(ステップ136、137)、端末Bは通信キャリアが無いことを確認して(ステップ138)、端末Aに対して通信要求を行うことができるようになる(ステップ139)。
【0016】
このように、従来の無線送受信装置を用いてアドホックネットワークシステムを構成した場合、無駄な通信処理が繰り返されることにより送信電力が無駄に使用されることになる。
【0017】
さらに、一般的な無線通信システムでは、各端末は受信待ち受け動作を行っている時間が最も長くなるが、送受信転送レートを上げて高速動作を実現しようとして、高い周波数の搬送周波数帯域を使用すると、待ち受け動作についても高い搬送周波数を受信するための回路を動作させる必要があり消費電力が大きくなってしまうという問題的を有している。
【特許文献1】特開2000−101578号公報
【特許文献2】特開平10−13958号公報
【非特許文献1】IEEE Computer Society, 804.15.4, Part 15.4: Wireless Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications for Low-Rate Wireless Personal Area Networks (LR-WPANs)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記で説明した従来の無線送受信装置では、高速なデータ通信と低消費電力動作を両立することができないという問題点があった。
【0019】
本発明の目的は、高速なデータ通信と低消費電力動作の両立ができる無線送受信装置および無線送受信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明の無線送受信方法は、異なる周波数帯域に属する2種以上の搬送波を用いて無線送受信を行う無線送受信方法であって、
低域側の周波数帯域に属する搬送波を用いて無線送受信装置の送受信動作を制御するための制御信号を送受信するステップと、
高域側の周波数帯域に属する搬送波を用いてデータ転送を行うステップとを備えている。
【0021】
また、前記制御信号には、通信相手の認証処理を行うための信号を含むようにしてもよい。
【0022】
さらに、本発明の無線送受信方法は、低域側の周波数帯を用いた通信の送信電力を減少させる電力調整を行い、低域側の周波数帯の通信が通信不能となった場合には、高域側の周波数帯の通信により低域側の周波数帯を用いた通信の送信電力を増加させることにより、低域側の周波数帯を用いた通信の送信電力調整を行うステップと、
高域側の周波数帯を用いた通信の送信電力を減少させる電力調整を行い、高域側の周波数帯の通信が通信不能となった場合には、低域側の周波数帯の通信により高域側の周波数帯を用いた通信の送信電力を増加させることにより、高域側の周波数帯を用いた通信の送信電力調整を行うステップとをさらに有するようにしてもよい。
【0023】
本発明によれば、消費電力が少なくて済む低域側の周波数帯域に属する搬送波を用いて認証処理を行うための信号等の制御信号の送受信を行い、通信相手が確定した後に、最大送受信レートを高く設定することが可能な高域側の周波数帯域に属する搬送波を用いてデータ転送を行うことにより、高速なデータ通信と低消費電力動作の両立が可能になる。
【0024】
このことにより、ユビキタス無線システムにおいて、動作の大半を占める信号待ち受け期間では低域側の周波数帯を用いた通信を行うことで消費電力を低減し、能動的通信を行う際には高域側の周波数帯を用いた通信を行うことで高速なデータ通信を可能とする。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、消費電力が少なくて済む低域側の周波数帯域に属する搬送波を用いて制御信号の送受信を行い、最大送受信レートを高く設定することが可能な高域側の周波数帯域に属する搬送波を用いてデータ転送を行うことにより、高速なデータ通信と低消費電力動作の両立が可能になるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の無線送受信方法でのネットワーク接続プロトコル例を示すである。
【図2】アドホックネットワーク接続を示す概念図である。
【図3】アドホックネットワークでの隠れ端末問題を説明する概念図である。
【図4】アドホックネットワークでの隠れ端末環境での従来動作を説明するフローチャートである。
【図5】アドホックネットワークでのさらされ端末問題を説明する概念図である。
【図6】アドホックネットワークでのさらされ端末環境での従来動作を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態の無線送受信方法を用いたひとつの無線装置間の通信形態を示す概念図である。
【図8】本発明の一実施形態の無線送受信方法を実現する無線送受信装置の具体例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態の無線送受信方法を用いたネットワーク接続プロトコルの一例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態の無線送受信方法において、400MHz帯での認証が行われなかった場合の処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の一実施形態の無線送受信方法において、400MHz帯での認証が行われ2.4GHz帯通信が確立した状態で400MHz帯の電力調整を行う場合の処理を示すフローチャートである。
【図12】アドホックネットワークでの隠れ端末環境での本発明による動作を説明するフローチャートである。
【図13】アドホックネットワークでのさらされ端末環境での本発明による動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、ここでは説明を簡略化するために、もっとも単純な周波数帯域が2つの場合について説明する。ここで言う「周波数帯域」とは、電波法などに代表される、無線利用に関する法規定、標準化規定に基づき個々に定義された周波数レンジを意味するものとする。
【0028】
図7は、本実施形態による無線通信用デバイス間での通信の様子を示す図である。ネットワークを構成するノードA、ノードBとの間において、低域側の周波数帯域(ここでは400MHz帯)と高域側の周波数帯域(ここでは2.4GHz帯)の両方を用いた通信が行われている。
【0029】
次に、図7に示したような無線送受信装置の具体的な構成例を図8に示す。この無線送受信装置は、フィルタ1、4と、2.4GHz帯送受信部2と、400MHz帯送受信部5と、認証制御部3とを備えている。
【0030】
2.4GHz帯送受信部2は、高域側の周波数帯域である2.4GHz帯に属する搬送波の送受信を行う。
【0031】
400MHz帯送受信部5と、低域側の周波数帯域である400MHz帯の搬送波の送受信を行う。
【0032】
認証制御部3は、400MHz帯送受信部5を用いて通信相手との間の認証処理等の送受信動作を制御する制御信号をやり取りし、通信相手が確定された場合に、2.4GHz帯送受信部2を動作させて通信相手との間でデータの送受信を行う。
【0033】
本実施形態における無線送受信装置では、図8に示すように、同一装置内に複数の搬送周波数に対応する送受信部2、5を搭載する。より多くの電力を消費する高周波側の回路(ここでは2.4GHz帯送受信部2)は、低周波側(400MHz帯)の受信が正常であった場合のみ動作するようにする。図8の例では、400MHz帯送受信部5にて受信された信号6は認証制御部3にて解析され、正規の相手より送信された信号であると判断できた場合、認証制御部3は、通信相手への返答信号7を400MHz帯送受信部5に出力する。そして、認証制御部3は、2.4GHz帯送受信部2の電源・クロック信号発生を活性化するための2.4GHz帯トランシーバ部動作制御信号8を出力し、2.4GHz帯の送受信を可能とする。このため、高周波帯回路である2.4GHz帯送受信部2は間歇的にしか動作せず、2.4GHz帯信号を直接受信する場合に必要な2.4GHz帯送受信部2の常時動作をする必要が無くなり、消費電力を抑制することができる。そして、本実施形態の無線送受信装置では、能動的に高速通信を行う場合は、400MHz帯送受信部5より相手ノードへ認証信号を発信し、認証完了後に2.4GHz帯送受信部2を動作させることで、高速なデータ通信が実現できる。
【0034】
上記に説明した実施形態において、400MHz帯送受信電力、2.4GHz帯送受信電力を適応的に最適化設定するようにしてもよい。
【0035】
例えば、認証制御部3は、400MHz帯を用いた通信の送信電力を減少させる電力調整を行い、400MHz帯の通信が通信不能となった場合には、2.4GHz帯の通信により400MHz帯を用いた通信の送信電力を増加させることにより、400MHz帯を用いた通信の送信電力調整を行う。
【0036】
また、認証制御部3は、2.4GHz帯を用いた通信の送信電力を減少させる電力調整を行い、2.4GHz帯の通信が通信不能となった場合には、400MHz帯の通信により2.4GHz帯を用いた通信の送信電力を増加させることにより、2.4GHz帯を用いた通信の送信電力調整を行う。
【0037】
このようにして、400MHz帯送受信電力、2.4GHz帯送受信電力を適応的に最適化設定するための手順を、図9に示す。図7に示したノード間のネットワーク接続を、まずは400MHz帯から開始する。初めの400MHz帯の送受信では、プリアンブル、キャリアセンス、同期、認証などの初期化処理を行った後にデータ送受信が行われる。ここで、400MHz帯での認証処理が正規に行える通信相手とのみ2.4GHz帯での交信を行うようにすれば、2.4GHz帯通信での安全性を確保することが出来る。また、400MHz帯で認証を行うことで、許可された交信相手以外からの通信に2.4GHz帯を用いる必要がなくなるため、電力消費の多い高域通信動作頻度を低減できる。また、400MHz帯、2.4GHz帯と、それぞれ独立した送受信装置を具備した送受信デバイスを用いることで、400MHz帯と2.4GHz帯の送受信を平行して行うことができる。
【0038】
図9に示すように、2.4GHz帯の送受信を行いながら、平行して400MHz帯送受信器の電力調整を行う事が出来る。400MHz帯での認証が行われなかった場合の処理を図10に、400MHz帯での認証が行われ2.4GHz帯通信が確立した状態で400MHz帯の電力調整を行う場合の処理を図11に示す。
【0039】
先ず、図10を参照して、認証が行われなかった場合の動作について説明する。この場合、端末Aは、400MHz帯の周波数を用いて最大電力で端末Bに対して交信要求を行う(ステップ41)。この端末Aからの交信要求を受信した端末Bは、400MHz帯の周波数を用いて最大電力で端末Aに対して返信を行う(ステップ42)。その後、端末Aと、端末Bとの間で、400M帯の周波数を用いて相互認証が行われる(ステップ43)。しかし、ここでは、認証結果はNGとなるため(ステップ44)、端末A、Bは交信を遮断して通信を終了する(ステップ45、46)。
【0040】
次に、図11を参照して、400MHz帯での認証が行われ2.4GHz帯通信が確立した状態で400MHz帯の電力調整を行う場合の動作について説明する。この場合、端末Aは、400MHz帯の周波数を用いて最大電力で端末Bに対して交信要求を行う(ステップ51)。この端末Aからの交信要求を受信した端末Bは、400MHz帯の周波数を用いて最大電力で端末Aに対して返信を行う(ステップ52)。その後、端末Aと、端末Bとの間で、400M帯の周波数を用いて相互認証が行われる(ステップ53)。ここまでの処理は、図10に示したフローチャートと同様である。
【0041】
しかし、ここでは、認証結果はOKとなるため(ステップ54)、端末Aは2.4GHz帯の周波数を用いて最大電力で端末Bに交信要求を行う(ステップ55)。そして、この端末Aからの交信要求を受信した端末Bは、2.4GHz帯の周波数を用いて最大電力で端末Aに対して返信を行う(ステップ56)。
【0042】
このようにして2.4GHz帯での通信が確立した状態で端末A、Bは、400MHz帯の周波数の電力調整を行う(ステップ57〜59)。この電力調整により端末A、B間の400MHz帯の周波数の通信が遮断された場合(ステップ60)、端末Aは2.4GHz帯の周波数により端末Bに対して400MHz帯の周波数の電力増を要求する(ステップ61)。同様に、端末Bは2.4GHz帯の周波数により端末Aに対して400MHz帯の周波数の電力増を要求する(ステップ62)。このようにして端末A、B間の400MHz帯の周波数の電力は通信が可能な最小電力となるように調整される(ステップ63)。
【0043】
この図11では400MHz帯、2.4GHz帯ともに初期接続は最大電力にて行い、徐々に400MHz帯の電力を低減する調整を行うことが示されている。電力低減に伴い通信可能距離が低減しS/N比が劣化するため、あるところで400MHz帯の通信が遮断される。このとき、交信中の2.4GHz帯を用いて電力増加処理を行うことで、必要にして十分な電力での400MHz帯通信が確立される。本実施形態による無線送受信方法では、送受信器の電力を低減しすぎて400MHz帯通信が途絶えた場合でも、2.4GHz帯を用いた通信を継続でき各ノードの状態を互いに確認できるため、無線通信デバイス間の同期、認証処理などが不要となる。結果、再度400MHz帯での通信を確立する際には、上記の初期化処理は極めて単純化、短時間化できる。よって、図1に示した従来例に比べ非常に高速に400MHz帯の電力調整が完了できる。
【0044】
同様に、400MHz帯の電力調整完了後、2.4GHz帯の電力調整を行うことで、それぞれの周波数帯域での最低電力での通信が可能となる。
【0045】
また、図10に示すように、400MHz帯での認証処理が行えなかった際には電力をより消費する2.4GHz帯の無線送受信機は動作しないため、無為な電力消費を回避できる。
【0046】
さらに、ユビキタスシステムの動作期間の大半の時間を占める信号待ち受け動作時間において低電力動作を実現し、自発的能動的動作時には高速データ転送が行える無線送受信方法を実現することができる。
【0047】
次に、このような無線送受信装置を、図2に示すアドホックネットワークシステムに対して適用した場合の動作について説明する。
【0048】
1つの周波数帯のみを用いる従来の無線送受信装置により構成されたアドホックネットワークシステムでは、上記で説明したように、図3、図5に示した隠れ端末問題や、さらされ端末問題が発生した。しかし、本実施形態の無線送受信装置のように2つの周波数帯を使用する無線送受信装置を用いることによりこれらの問題を解消して消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0049】
本実施形態の無線送受信装置では、図3に示すように端末Bと端末Cが2.4GHz帯の周波数を用いて通信中であるような隠れ端末環境であっても端末Bは端末Aとの間で400MHz帯の周波数を使った通信要求を受ける事ができるため、端末Bは端末Aに返答信号を返す事ができる。このときの端末A、B、Cの動作を図12に示す。
【0050】
先ず、端末Aが端末Bに対して400MHz帯の周波数を使用して通信要求を行う(ステップ71)。ここで、端末Bと端末Cとの間では、2.4GHz帯の周波数を使用して交信中であったとしても、端末Bは返答信号を端末Aに送信することができる。そのため、端末Aは、端末Bが端末Cとの間で交信中であることを知ることができ待機状態に入ることができる(ステップ72)。そして、端末Bと、端末Cとの間の交信が終了すると(ステップ73、74)、端末Aは端末Bへ通信要求を行い、端末Bからの返答信号を受信して、2.4GHz帯の周波数を使用して端末Bとの間の交信を開始する(ステップ76)。
【0051】
このように端末Bは端末Aに現在通信中であることや現在行っている通信の通信時間等を通知することができるため、端末Aは無意味な通信要求を出すことがなくなる。この結果、端末Aの無為な動作による電力増加という問題が解消される。
【0052】
また、本実施形態の無線送受信装置では、図5に示したような端末Cと端末Dが2.4GHzで通信中であるようなさらされ端末環境の場合でも、端末Bは端末Aに400MHz帯を用いた通信要求を出す事ができ、端末Bと端末Aとの間の通信を確立する事ができる。このときの端末A、B、C、Dの動作を図13に示す。
【0053】
先ず、端末Bが端末Aに対する通信を希望した場合(ステップ81)、端末Bは受信可能な通信キャリアの確認を行うことにより、端末Cの2.4GHzの通信キャリアを感知するが(ステップ82)、400MHzの通信キャリアは無いことを確認する(ステップ83)。そのため、端末Bは、400MHz帯の周波数を使用して端末Aに対する通信要求を行う(ステップ84)。そして、端末Bは、端末Aから400MHz帯の周波数を使用した返答信号を受信して、交信を行う。
【0054】
そして、端末Cと端末Dとの間の2.4GHz帯の周波数を使用した交信が終了すると(ステップ85、86)、端末Aと端末Bとは、2.4GHz帯の周波数を使用した交信を開始する。
【0055】
本実施形態による無線送受信方法により、従来の無線送受信装置により構成されたアドホックネットワークで問題となっていた、隠れ端末問題、さらされ端末問題が解消されている。その結果、無為な送受信動作を行う場合が減少し、低消費電力特性、および、ネットワーク全体の通信データレートが改善する。
【0056】
つまり、本実施形態の無線送受信方法によれば、2つの搬送周波数を用いて、それぞれの搬送周波数ごとに送受信電力を高速に最適制御することで、隠れ端末問題、さらされ端末問題などのユビキタスアドホックネットワークに特有な問題に対応し、かつ、動作時消費電力の最小化を実現することができる。
【0057】
さらに、高域側の周波数帯域と低域側の周波数帯域という2つの周波数帯域の搬送波を使用することにより送受信時の電力を最小化しているので、図3、図5で示したような、本来通信すべきでない相手まで電波が届くことによる問題を回避できるという相乗的な効果を奏する。
【0058】
本実施形態では、説明を単純化するために、400MHz帯、2.4GHz帯という2つの周波数帯を用いた場合について述べたが、本発明はこのような場合に限定されるわけではなく、3種類以上の周波数帯を用いた場合でも同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 フィルタ
2 2.4GHz帯送受信部
3 認証・制御部
4 フィルタ
5 400MHz帯送受信部
6 受信制御信号
7 送信制御信号
8 2.4GHz帯トランシーバ部動作制御信号
41〜46 ステップ
51〜63 ステップ
71〜76 ステップ
81〜86 ステップ
91 端末
92 無線送受信信号
111〜120 ステップ
131〜139 ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる周波数帯域に属する2種以上の搬送波を用いて無線送受信を行う無線送受信方法であって、
低域側の周波数帯域に属する搬送波を用いて無線送受信装置の送受信動作を制御するための制御信号を送受信するステップと、
高域側の周波数帯域に属する搬送波を用いてデータ転送を行うステップとを備えた無線送受信方法。
【請求項2】
前記制御信号は、通信相手の認証処理を行うための信号を含む請求項1記載の無線送受信方法。
【請求項3】
低域側の周波数帯を用いた通信の送信電力を減少させる電力調整を行い、低域側の周波数帯の通信が通信不能となった場合には、高域側の周波数帯の通信により低域側の周波数帯を用いた通信の送信電力を増加させることにより、低域側の周波数帯を用いた通信の送信電力調整を行うステップと、
高域側の周波数帯を用いた通信の送信電力を減少させる電力調整を行い、高域側の周波数帯の通信が通信不能となった場合には、低域側の周波数帯の通信により高域側の周波数帯を用いた通信の送信電力を増加させることにより、高域側の周波数帯を用いた通信の送信電力調整を行うステップと、をさらに有する請求項1または2記載の無線送受信方法。
【請求項4】
第1の周波数帯域に属する搬送波の送受信を行うための第1の送受信部と、
前記第1の周波数帯域よりも周波数が高い第2の周波数帯域に属する搬送波の送受信を行うための第2の送受信部と、
前記第1の送受信部を制御することにより第1の周波数帯域に属する搬送波を用いて送受信動作を制御するための制御信号を通信相手とやり取りし、通信相手が確定された場合に、前記第2の送受信部を動作させて通信相手との間のデータ送受信を行う認証制御部と、を備えた無線送受信装置。
【請求項5】
前記制御信号は、通信相手の認証処理を行うための信号を含む請求項4記載の無線送受信装置。
【請求項6】
前記認証制御部は、
前記第1の周波数帯を用いた通信の送信電力を減少させる電力調整を行い、前記第1の周波数帯の通信が通信不能となった場合には、前記第2の周波数帯の通信により前記第1の周波数帯を用いた通信の送信電力を増加させることにより、前記第1の周波数帯を用いた通信の送信電力調整を行い、
前記第2の周波数帯を用いた通信の送信電力を減少させる電力調整を行い、前記第2の周波数帯の通信が通信不能となった場合には、前記第1の周波数帯の通信により前記第2の周波数帯を用いた通信の送信電力を増加させることにより、前記第2の周波数帯を用いた通信の送信電力調整を行う請求項4または5記載の無線送受信装置。
【請求項1】
異なる周波数帯域に属する2種以上の搬送波を用いて無線送受信を行う無線送受信方法であって、
低域側の周波数帯域に属する搬送波を用いて無線送受信装置の送受信動作を制御するための制御信号を送受信するステップと、
高域側の周波数帯域に属する搬送波を用いてデータ転送を行うステップとを備えた無線送受信方法。
【請求項2】
前記制御信号は、通信相手の認証処理を行うための信号を含む請求項1記載の無線送受信方法。
【請求項3】
低域側の周波数帯を用いた通信の送信電力を減少させる電力調整を行い、低域側の周波数帯の通信が通信不能となった場合には、高域側の周波数帯の通信により低域側の周波数帯を用いた通信の送信電力を増加させることにより、低域側の周波数帯を用いた通信の送信電力調整を行うステップと、
高域側の周波数帯を用いた通信の送信電力を減少させる電力調整を行い、高域側の周波数帯の通信が通信不能となった場合には、低域側の周波数帯の通信により高域側の周波数帯を用いた通信の送信電力を増加させることにより、高域側の周波数帯を用いた通信の送信電力調整を行うステップと、をさらに有する請求項1または2記載の無線送受信方法。
【請求項4】
第1の周波数帯域に属する搬送波の送受信を行うための第1の送受信部と、
前記第1の周波数帯域よりも周波数が高い第2の周波数帯域に属する搬送波の送受信を行うための第2の送受信部と、
前記第1の送受信部を制御することにより第1の周波数帯域に属する搬送波を用いて送受信動作を制御するための制御信号を通信相手とやり取りし、通信相手が確定された場合に、前記第2の送受信部を動作させて通信相手との間のデータ送受信を行う認証制御部と、を備えた無線送受信装置。
【請求項5】
前記制御信号は、通信相手の認証処理を行うための信号を含む請求項4記載の無線送受信装置。
【請求項6】
前記認証制御部は、
前記第1の周波数帯を用いた通信の送信電力を減少させる電力調整を行い、前記第1の周波数帯の通信が通信不能となった場合には、前記第2の周波数帯の通信により前記第1の周波数帯を用いた通信の送信電力を増加させることにより、前記第1の周波数帯を用いた通信の送信電力調整を行い、
前記第2の周波数帯を用いた通信の送信電力を減少させる電力調整を行い、前記第2の周波数帯の通信が通信不能となった場合には、前記第1の周波数帯の通信により前記第2の周波数帯を用いた通信の送信電力を増加させることにより、前記第2の周波数帯を用いた通信の送信電力調整を行う請求項4または5記載の無線送受信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−257320(P2012−257320A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−188728(P2012−188728)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【分割の表示】特願2007−537555(P2007−537555)の分割
【原出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【分割の表示】特願2007−537555(P2007−537555)の分割
【原出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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