説明

無線通信ネットワークにおけるアクセスチャネルでの出力送信電力を決定するための方法および装置

【課題】アクセスチャネルでの送信をより効率的に行う技術を提供する。
【解決手段】無線装置は、前のアクセス試行についての履歴情報を格納し、アクセスチャネルでの現在のアクセス試行のための出力送信電力を下げるためにこの情報を使用する。履歴情報は、前のアクセス試行のRF状態、前のアクセス試行の性能、および前のアクセス試行に使用された電力値を含み得る。電力値は、電力調整または初期電力レベルとすることができる。現在のアクセス試行では、無線装置は、履歴情報を取得し、現在のRF状態を決定し、現在のRF状態および履歴情報に基づいて、このアクセス試行についての電力値を決定する。無線装置は、電力値および他の適用可能なパラメータに基づいて、各アクセスプローブの出力電力を決定し、決定された出力電力で、各アクセスプローブを送る。無線装置は、アクセス試行を完了すると、履歴情報を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に通信に関し、より詳細には、無線通信ネットワークにおけるアクセスチャネルでの送信のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線多元接続通信ネットワークは、音声、パケットデータ、画像、同報通信、メッセージング(messaging)など様々な通信サービスを提供するために、広範にわたって配置されている。これらのネットワークは、使用可能なシステムリソースを共有することによって、マルチプルの(multiple)無線装置(例えば、セルラー電話など)の通信をサポートすることができる。こうした多元接続ネットワークの例には、符号分割多元接続(CDMA)ネットワーク、時分割多元接続(TDMA)ネットワーク、および周波数分割多元接続(FDMA)ネットワークが含まれる。
【0003】
一般に、無線装置は、多元接続ネットワークにアクセスするため、および他の目的のために、アクセスチャネルでの送信を行う。例えば、無線装置は、装置の電源がオンになるとネットワークに登録するために、ネットワークで音声またはデータの呼を発するために、必要に応じてネットワークが装置を呼び出すことができるように装置の所在をネットワークに知らせるためになど、アクセスチャネルでの送信を行うことができる。無線装置がアクセスチャネルでの送信を行うことができる方法は、一般に、ネットワークによって指定され、かつ/または制御される。例えば、ネットワークは、無線装置がアクセスチャネルでの送信をどのぐらいの頻度で行うことができるか、アクセスチャネルでの送信時に使用する出力電力レベルはどれだけかなどを指定することができる。
【0004】
アクセスチャネルは、すべての無線装置によって共有される共通チャネルである。一般に、ネットワークは、すべての無線装置が所望の成功率でネットワークにアクセスできるように、アクセスチャネルでの動作を制御する。したがって、ネットワークによって課される、または示唆される制御は、一般に、保守的である。無線装置は、多くの場合、ネットワークにわたって分散されており、異なるチャネル条件に従う。ネットワークによって課されるまたは示唆される保守的な制御に基づいて、無線装置のすべてにアクセスチャネルでの送信を行わせると、結果として高価なシステムリソースが無駄になることが多い。
【0005】
したがって、当技術分野では、アクセスチャネルでの送信をより効率的に行う技術が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本明細書には、多元接続通信ネットワークにおけるアクセスチャネルでの送信を、平均してより低い出力電力で行うための技術が記載されている。無線装置は、前のアクセス試行についての履歴情報を格納し、可能ならば、新しいアクセス試行のための出力電力を下げるために、この情報を使用する。履歴情報は、前のアクセス試行について観察された無線周波数(RF)状態、前のアクセス試行についての性能、前のアクセス試行に使用された電力値などを含み得る。
【0007】
現在のアクセス試行のために、無線装置は、前のアクセス試行についての履歴情報を取得し、現在のRF状態を決定する。無線装置は、現在のRF状態および履歴情報に基づいて、現在のアクセス試行の電力値を決定する。電力値は、電力調整値、初期電力レベル、またはアクセスチャネルの出力電力の算出に使用される他の何らかの値とすることができる。電力値は、様々な方法で決定することができ、下記に示されるように、よい性能を達成するために、閉ループ方法で調整することができる。無線装置は、電力値および他の適用可能なパラメータに基づいて、現在のアクセス試行のために送られる各アクセスプローブの出力電力を決定する。無線装置は、決定された出力電力で、各アクセスプローブを送信する。現在のアクセス試行を完了すると、無線装置は、このアクセス試行についての情報を含めるように、履歴情報を更新する。
【0008】
以下で、本発明の様々な態様および実施形態についてさらに詳しく説明する。
【0009】
本発明の特徴および性質は、以下に記載されている詳細な説明を、同じ参照文字が全体を通して対応的に付されている図面と併せ読めば、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】無線多元接続通信ネットワークを示す図。
【図2】cdma2000における逆方向アクセスチャネル(R−ACH)または逆方向エンハンスドアクセスチャネル(R−EACH)での送信を示す図。
【図3】R−ACHまたはR−EACHについての出力電力の算出を示す図。
【図4】無線装置による電力調整を伴う、R−ACHまたはR−EACHについての出力電力の算出の一実施形態を示す図。
【図5】電力調整装置を示す図。
【図6】無線装置による電力調整を伴う、R−ACHまたはR−EACHについての出力電力の算出の別の一実施形態を示す図。
【図7】アクセスチャネルでの送信のプロセスを示す図。
【図8】無線装置のブロック図。
【図9】電力調整が行われる、および電力調整が行われない性能を示す図。
【発明の詳細な説明】
【0011】
「例」という用語は、本明細書では、「例、具体例、または実例としての役割を果たす」ことを意味するために使用される。「例」として本明細書に記載された任意の実施形態または設計は、必ずしも他の実施形態または設計より好ましいまたは有利であると解釈されるものではない。
【0012】
本明細書に記載されている技術は、CDMAネットワーク、TDMAネットワーク、FDMAネットワーク、直交周波数分割多元接続(OFDMA)ネットワーク、シングルキャリア周波数分割多元接続(single-carrier frequency division multiple access:SC−FDMA)ネットワークなど、様々な無線多元接続通信ネットワークに使用することができる。CDMAネットワークは、cdma2000、広帯域CDMA(W−CDMA)など、1つまたはそれより多くの1つまたはそれより多くの無線アクセス技術(RAT)を実装し得る。cdma2000は、IS−95、IS−2000、およびIS−856標準をカバーする。TDMAネットワークは、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)、D−AMPS(Digital Advanced Mobile Phone System)、または他の何らかのRATを実装し得る。GSMおよびW−CDMAは、「3GPP(3rd Generation Partnership Project)」と呼ばれる機構の文書に記載されている。cdma2000は、「3GPP2(3rd Generation Partnership Project 2)」と呼ばれる機構の文書に記載されている。3GPPおよび3GPP2の文書は、公に入手可能である。
【0013】
一般に、本明細書に記載されている技術は、無線装置が全出力未満で共通チャネル(例えばアクセスチャネル)での送信を行う任意の通信ネットワークに使用され得る。例えば、これらの技術は、IS−2000および/またはIS−95を実装するCDMA2000 1Xネットワーク、IS−856を実装する1xEV−DOネットワーク、W−CDMAを実装する汎用移動通信システム(Universal Mobile Telecommunication Systems:UMTS)ネットワークに使用され得る。cdma2000ネットワークは、CDMA2000 1Xネットワークまたは1xEV−DOネットワークとすることができる。明確にするために、以下の説明のほとんどは、CDMA2000 1Xネットワークについてのものである。
【0014】
図1は、CDMA2000 1Xネットワーク、1xEV−DOネットワーク、またはUMTSネットワークでもよい、無線多元接続通信ネットワーク100を示している。ネットワーク100は、マルチプルの基地局110を含み、各基地局は、特定の地理的領域の通信カバレージを提供する。基地局は、一般に、無線装置と通信する固定局である。基地局(CDMA2000 1X用語)は、アクセスポイント(1xEV−DO用語)、NodeB(UMTS用語)、基地トランシーバ局(base transceiver station:BTS)、または他の何らかの用語で呼ばれることもある。
【0015】
無線装置120は、一般に、ネットワークにわたって分散されており、各無線装置は、固定されているか、移動可能とすることができる。無線装置は、移動局(CDMA2000 1X用語)、アクセス端末(1xEV−DO用語)、ユーザ機器(UMTS用語)、加入者装置、または他の何らかの用語で呼ばれることもできる。無線装置は、セルラー電話、パーソナルデジタルアシスタント(personal digital assistant)(PDA)、無線モデムカードなどとすることができる。各無線装置は、ゼロ、1つ、または場合によってはマルチプルの基地局と、任意の与えられた瞬間に順方向および逆方向のリンクで通信することができる。順方向リンク(またはダウンリンク)は、基地局から無線装置への通信リンクを指し、逆方向リンク(またはアップリンク)は、無線装置から基地局への通信リンクを指す。
【0016】
図1では、両端に矢印の付いた実線は、無線装置と基地局との間の通信を示す。両端に矢印の付いた点線は、基地局から無線装置への順方向リンクでのパイロットおよび/またはシグナリング(signaling)の送信、および場合によっては無線装置から基地局への逆方向リンクでのアクセスチャネルにおける送信を示す。
【0017】
cdma2000では、基地局との通信を開始するため(例えばネットワークに登録するため、発呼するためなど)、およびページングチャネルで受信されたメッセージに応答するために、無線装置によって逆方向アクセスチャネル(R−ACH)が使用される。逆方向エンハンスドアクセスチャネル(Reverse Enhanced Access Channel:R−EACH)は、基地局との通信を開始するため、または特にその無線装置に送られたメッセージに応答するために、無線装置によって使用される。R−ACHおよびR−EACHは、すべての無線装置によって共有される共通チャネルである。無線装置は、公に入手可能な、3GPP2 C.S0003−D、タイトル「Medium Access Control(MAC) Standard for cdma2000 Spread Spectrum Systems」Revision D、2004年2月13日に記載されているランダムアクセス手順に従ってR−ACHまたはR−EACHでの送信を行う。
【0018】
図2は、cdma2000におけるR−ACHまたはR−EACHでの送信の時系列を示している。アクセス試行は、プロトコルデータユニット(PDU)を送り、PDUについての肯定応答を受信する、または受信しないプロセス全体である。1つのアクセス試行は、1つまたはそれより多くのサブ試行を含む。各アクセスサブ試行は、異なる基地局のものであり、1つまたはそれより多くのアクセスプローブシーケンス(access probe sequence)を含む。各アクセスプローブシーケンスは、1つまたはそれより多くのアクセスプローブを含む。各アクセスプローブは、R−ACHまたはR−EACHでの送信である。
【0019】
アクセスプローブシーケンスごとに、無線装置は、初期出力電力で、第1のアクセスプローブを基地局に送信する。次いで、無線装置は、基地局からの肯定応答を聞く。肯定応答が受信されない場合、無線装置は、プローブバックオフ(probe backoff)と呼ばれる疑似ランダム期間待ち、次いで、次のアクセスプローブをより高い出力電力で送信する。無線装置は、その後の各アクセスプローブを同じように送信する。無線装置は、(1)肯定応答(acknowledgment)が基地局から受信される、または(2)最大数(N)のアクセスプローブが送られるまで、アクセスプローブを、一度に1つ送信し続ける。
【0020】
無線装置が、1つのアクセスプローブシーケンスについてのN個の全アクセスプローブを送信し、肯定応答を受信しない場合、無線装置は、シーケンスバックオフ(sequence backoff)と呼ばれる疑似ランダム期間待ち、次いで別のアクセスプローブシーケンスを開始する。無線装置は、前のアクセスプローブシーケンスと同じように、この新しいアクセスプローブシーケンスを送信する。
【0021】
無線装置は、一般に、以下のように定義された平均出力電力で、R−ACHで各アクセスプローブを送信する:
【数1】

【0022】
ここで、平均入力電力は、無線装置での受信された電力であり、
オフセット電力は、帯域クラスに依存する値であり、
干渉補正=min{max(−7−ECIO,0),7}であり、
NOM_PWRs−16×NOM_PWR_EXTsは、補正値であり、
INIT_PWRsは、基地局によって提供される初期電力オフセットであり、
PWR_LVLは、負ではない電力レベル調整ステップであり、
PWR_STEPsは、出力電力における上方(upward)調整の数である。
【0023】
平均出力電力は、R−ACHでの送信に使用される電力である。式(1)で、入力電力および出力電力は、dBmの単位であり、他のすべての項は、デシベル(dB)の単位である。平均入力電力は、受信された電力とも呼ばれ、平均出力電力は、送信電力とも呼ばれる。
【0024】
式(1)において、ECIOは、最強の受信された基地局についての合計の受信された電力スペクトル密度に対するチップ当たりの受信されたパイロットエネルギー(Ec/Io)である。NOM_PWRs、NOM_PWR_EXTs、INIT_PWRs、およびPWR_LVLは、システムアクセスパラメータメッセージで各基地局によって同報通信される静的値である。無線装置は、基地局から現在の静的値を取得し、R−ACHでの送信のために、これらの静的値を使用する。NOM_PWRs、NOM_PWR_EXTs、およびINIT_PWRsは、基地局によって提供される初期電力レベル、Pinit_bsを定義し、これは、以下のように与えられる。
【数2】

【0025】
基地局は、INIT_PWRs、NOM_PWRs、およびNOM_PWR_EXITsを個別に指定することができる。しかし、基地局は、一般に、NOM_PWRs=0、およびNOM_PWR_EXTs=0を設定し、この場合、Pinit_bs=INIT_PWRsである。PWR_STEPsは、第1のアクセスプローブではゼロに等しく、第2のアクセスプローブでは1に等しく、以下同様である。項(PWR_LVL×PWR_STEPs)は、第1のアクセスプローブについての初期出力電力からの出力電力の増加に等しい。
【0026】
R−EACHでの出力電力の式は、R−ACHでの式(1)に似ている。「オフセット電力」は、R−EACHでは異なる値である。R−ACHおよびR−EACHについての平均出力電力の式は、公に入手可能な、3GPP2 C.S0002−D、タイトル「Physical Layer Standard for cdma2000 Spread Spectrum Systems」Revision D、2004年2月13日に記載されている。
【0027】
図3は、R−ACHまたはR−EACHで送られる各アクセスプローブの出力電力を算出するためのモデル/装置300を示している。式(1)におけるパラメータは、開ループ電力制御、RF状態、および基地局が定義した静的値についての3つのカテゴリに分類することができる。
【0028】
装置300では、ユニット310は、無線装置によって測定された受信された電力、および適用可能なオフセット電力値を取得し、開ループ電力制御部分についての第1の中間値P1を算出する。第1の中間値は、式(1)で「−」記号によって示されているように、受信された電力に関して逆に変動する。したがって、より高い受信された電力は、より低いP1値、およびしたがってより低い出力電力に対応し、逆も同様である。オフセット電力は、チャネルタイプ(例えばR−ACHまたはR−EACH)および帯域クラス(例えばセルラーまたはPCS帯域)によって決定される固定値である。
【0029】
ユニット312は、無線装置によって測定されたEc/Io(またはECIO)を受信し、干渉補正である第2の中間値P2を算出する。R−ACHの場合、干渉補正は、min{max(−7−ECIO,0),7}に等しく、これは、干渉補正は−7−ECIOに等しいが、0dBから7dBの範囲以内になるように制約されることを意味する。R−EACHの場合、干渉補正は、min{max(IC_THRESH−ECIO,0),IC_MAX}に等しく、この場合、IC_THRESHおよびIC_MAXは、基地局によって提供される。
【0030】
ユニット314は、基地局によって提供された静的値NOM_PWRs、NOM_PWR_EXTs、INIT_PWRs、およびPWR_LVLを受信し、第3の第2の中間値、P3を算出する。INIT_PWRsは、−16dBから+15dBの範囲および0dBの公称値を有する。PWR_STEPsは、0dBから7dBの範囲を有する。静的値は、基地局によって同報通信される。
【0031】
加算器320は、ユニット310、312、および314からのそれぞれの第1、第2、および第3の中間値を合計し、出力電力を提供し、これはPout=P1+P2+P3である。第1の中間値は、受信された電力の変化により、アクセスプローブごとに異なり得る。また、第2の中間値は、測定されたEc/Ioの変化により、アクセスプローブごとに異なり得る。第3の中間値は、アクセスプローブシーケンスにおける第1のアクセスプローブについてのPinit_bsに等しく、そのシーケンスにおけるその後のアクセスプローブごとに、PWR_LVLだけ増加する。PWR_LVLずつの上方調整は、失敗したアクセスプローブの後の成功の可能性を改善させるためのものである。
【0032】
各基地局は、その基地局に送られるアクセスプローブに使用するために静的値を同報通信する。一般に、静的値は、その基地局のカバレージ内のすべての無線装置について、よいアクセス性能を達成できるように、基地局ごとに定義される。初期電力レベルPinit_bsは、それが無線装置によって送られた各アクセスプローブの出力電力を決定するため、特に重要である。低い初期電力レベルの結果、より低い出力電力がアクセスプローブに使用されることになり、その結果、いくつかの無線装置でのアクセスプローブの失敗率がより高くなることがある。より高い失敗率の結果、より多くのアクセスプローブが送られることになり、この結果、無線装置でバッテリ電力が消費され、さらに、ネットワークにおける他の無線装置へのより多くの干渉が発生する。より高い失敗率は、登録の遅延または失敗、呼設定の遅延または失敗、ユーザの不満、および場合によっては他の悪影響を生じさせることもある。したがって、すべての無線装置についてよい性能を達成できるように、一般に、保守的な初期電力レベルが選択される。
【0033】
基地局ごとに、初期電力レベルPinit_bsは、例えば、システムの処理量および/または他の問題に基づいて、時間が経つと変わり得る。一般に、有限の組の初期電力レベルの中から、1つの初期電力レベルが使用に選択される。選択された初期電力レベルは、無線装置に同報通信される。各無線装置は、基地局によって同報通信された現在の初期電力レベルを使用する。
【0034】
基地局によって使用に選択された初期電力レベルは、一般に、保守的な値であり、多くの具体例において必要なものより高い。例えば、商業展開されたCDMA2000 1Xネットワークの研究は、一般に0dBから7dBの初期電力レベルが使用に選択されることを明らかにした。この研究の実験では、無線装置が、登録の遅延/失敗、および呼設定の遅延/失敗に関して、性能の任意の顕著な低下を経験することなく、より低い初期電力レベル(例えば、基地局が選択した初期電力レベルより約10dB低い)を使用することができることが示された。
【0035】
一態様では、無線装置は、一般に、基地局が選択した初期電力レベル、Pinit_bsより低いが、依然としてよい性能を提供する初期電力レベル、Pinit_wdを選択する。無線装置は、例えば、現在のRF状態、無線装置による前のアクセス試行についての履歴情報など、様々なパラメータに基づいて、初期電力レベル、Pinit_wdを選択することができる。初期電力レベル、Pinit_wdは、以下に記載したように、様々な方法で選択することもできる。
【0036】
図4は、無線装置による電力調整が行われる、R−ACHまたはR−EACHで送られる各アクセスプローブの出力電力を算出するための装置400の一実施形態を示す。装置400は、図3のユニット310、312、および314とそれぞれ同様に動作するユニット410、412、および414を含む。電力調整ユニット416は、無線装置による出力電力の調整に使用される1つまたはそれより多くのパラメータを受信し、第4の中間値、Padjを算出し、それは出力電力を低減するよう試行する電力調整である。加算器420は、それぞれユニット410、412、414、および416からの第1、第2、第3、および第4の中間値を合計し、出力電力を提供し、これは、Pout=P1+P2+P3+Padjである。
【0037】
電力調整ユニット416は、例えば、現在のRF状態、1つまたはそれより多くの前のアクセス試行で観察されたRF状態、(複数の)前のアクセス試行についての性能など、様々なパラメータに基づいて、電力調整、Padjを算出することができる。RF状態は、合計の受信された電力、受信されたパイロット電力、パイロットEc/Io、受信信号の品質など、様々な測定基準(metrics)によって量子化され得る。(複数の)前のアクセス試行についての性能は、例えば、最新のアクセス試行のために送られたアクセスプローブの数、いくつかの前のアクセス試行のために送られたアクセスプローブの平均数など、様々な測定基準によって量子化することができる。また、電力調整は、様々なアルゴリズムおよび関数に基づいて算出することができる。
【0038】
電力調整を導出する際に、以下の目標を考慮する必要がある。
【0039】
1.収束−電力調整は、任意のRF状態においてよい性能を提供することができる最適値に近づく必要がある。
【0040】
2.適応性−電力調整は、RF状態の変化に適応しなければならないが、高速フェージングに敏感であってはならない。
【0041】
3.省力化−電力調整は、Padj≦0となるように、電力調整が適用されなかった場合より出力電力が高くなってはならない。
【0042】
よい性能は、例えば1つのアクセス試行について必要なアクセスプローブを1つまたは2つのみとすることによって量子化され得る。
【0043】
図5は、図4の電力調整ユニット416の一実施形態を示す。この実施形態では、電力調整は、現在のRF状態、前のRF状態、アクセスプローブの前の数、および前の電力調整に基づいて導出される。前のRF状態は、前のアクセス試行についてのRF状態である。アクセスプローブの前の数は、前のアクセス試行についてのアクセス試行の数である。前の電力調整は、前のアクセス試行についての電力調整である。この実施形態では、前のRF状態、アクセスプローブの前の数、および前の電力調整は、メモリ530に格納されている履歴情報である。算出ユニット532は、現在および前のRF状態およびアクセスプローブの前の数を受信し、入力パラメータに基づいて、電力デルタ、Pdeltaを導出する。以下に示すように、ユニット532には、ルックアップテーブルが実装されてもよい。加算器534は、前の電力調整、Padj_priorを受信し、電力デルタと合計する。リミタ(limiter)540は、加算器534の出力を受信し、ゼロ以下に制限し、現在のアクセス試行についての電力調整、Padjを提供する。
【0044】
図5に示されている実施形態では、無線装置によって選択された初期電力レベルは、基地局によって提供された初期電力レベル+電力調整に等しく、すなわち以下の通りである:
【数3】

【0045】
リミタ540によりPadj≦0となるため、Pinit_wd≦Pinit_bsとなり、上記の目標3が満たされる。加算器420によってP1、P2、およびP3が電力調整に追加される。図5に示されている実施形態では、電力調整は、明示的に算出され、無線装置によって選択された初期電力レベル、Pinit_wdは、暗黙的に算出される。
【0046】
図5に示されている実施形態では、メモリ530、算出ユニット532、加算器534、およびリミタ540は、よい性能を達成するために現在の情報および履歴情報に基づいて、電力調整、Padjを変える閉ループを形成する。
【0047】
図6は、無線装置による電力調整が行われる、R−ACHまたはR−EACHで送られる各アクセスプローブの出力電力の算出にも使用され得る装置600の一実施形態を示している。装置600は、図3のユニット310および312と同様にそれぞれ動作するユニット610および612を含む。電力調整ユニット616は、無線装置によって選択された初期電力レベル、Pinit_wdを導出し、算出ユニット614は、初期電力レベルPinit_wdにより、第3の中間値P3を算出する。
【0048】
図6に示されている実施形態では、初期電力レベル、Pinit_wdは、現在および前のRF状態、アクセスプローブの前の数、および前の初期電力レベルに基づいて導出される。前の初期電力レベルは、前のアクセス試行についての初期電力レベルである。この実施形態では、前のRF状態、アクセスプローブの前の数、および前の初期電力レベルは、メモリ630に格納されている履歴情報である。電力調整ユニット616内で、算出ユニット632は、現在および前のRF状態およびアクセスプローブの前の数を受信し、入力パラメータに基づいて、電力デルタ、Pdeltaを導出する。以下に示すように、ユニット632は、ルックアップテーブルが実装されてもよい。加算器634は、前の初期電力レベル、Pinit_priorを受信し、電力デルタと合計し、現在のアクセス試行についての初期電力レベル、Pinit_wdを提供する。図6に示されている実施形態では、初期電力レベル、Pinit_wdは、明示的に算出される。メモリ630、算出ユニット632、および加算器634は、よい性能を達成するために、現在の情報および履歴情報に基づいて、初期電力レベル、Pinit_wdを変える閉ループを形成する。
【0049】
算出ユニット614内で、算出ユニット640は、静的値、INIT_PWRs、NOM_PWRs、およびNOM_PWR_EXTsを受信し、基地局によって提供された初期電力レベル、Pinit_bsを導出する。セレクタ642は、基地局によって提供された初期電力レベル、Pinit_bs、および無線装置によって選択された初期電力レベル、Pinit_wdを受信し、2つの値の低い方を、現在のアクセス試行に使用する初期電力レベル、Pinitとして提供する。算出ユニット644は、電力レベル調整ステップ、PWR_LVLを受信し、現在のアクセスプローブ数、PWR_STEPsとの乗算を行い、現在のアクセスプローブについての電力増加値、Pincを提供する。加算器646は、初期電力レベルPinitおよび電力増加値を合計し、第3の中間値、P3’を提供する。
【0050】
加算器620は、ユニット610、612、および614からのそれぞれの中間値P1、P2、およびP3’を合計し、出力電力、Poutを提供し、これは、以下のように表すことができる:
【数4】

【0051】
式(4)を式(1)と比較すると、静的値INIT_PWRs、NOM_PWRs、およびNOM_PWR_EXTsは、現在のアクセス試行についての初期電力レベル、Pinitと置き換えられている。図6に示されている実施形態では、電力調整は、暗黙的に算出され、無線装置によって選択された初期電力レベルは、明示的に算出される。
【0052】
図5および図6に示されている実施形態では、電力デルタ、Pdeltaは、現在および前のRF状態、およびアクセスプローブの前の数に基づいて導出される。現在のRF状態と前のRF状態との間の差は、最初に、以下のように決定することができる:
【数5】

【0053】
RF状態は、パイロットEc/Io、受信されたパイロット電力、合計の受信された電力などによって与えられ得る。
【0054】
一般に、電力調整、Padj、およびしたがって出力電力は、前のアクセス試行についての性能がよかった(例えば、より少ないアクセスプローブが送られた)場合、低減され、性能が劣っていた(例えば、多すぎるアクセスプローブが送られた)場合、増加され得る。さらに、電力調整は、最後のアクセス試行以降に現在のRF状態が改善した場合、低減され、最後のアクセス試行以降の現在のRF状態が低下した場合、増加され得る。RF状態の差、およびアクセスプローブの前の数は、ルックアップテーブルに提供され、これは次いで、電力デルタ、Pdeltaを戻し得る。電力デルタは、電力調整を変えるか維持するか、そして変える場合は、電力調整をどの方向におよびどのくらい変えるかを示す。
【0055】
表1は、電力デルタ(Pdelta)対RF状態の差(x)およびアクセスプローブの前の数についてのルックアップテーブル例を示しており、ここでPdeltaおよびxは、dBの単位で提供される。表1では、RF状態の差についての正の値は、現在のRF状態が前のRF状態より改善したことを示す。表1の例では、前のアクセス試行の性能がよく、必要なアクセスプローブが1つのみであった場合、電力デルタは、負であり、RF状態が改善しているか、または2dBより多く低下していない場合に電力調整を低減させ、RF状態の改善が大きいほど、より大きい電力デルタが使用される。性能が並であり、必要なアクセスプローブが2つであった場合、電力デルタは、正であり、RF状態が3dBより多く改善していない場合、電力調整を増加させ、RF状態のより大きい低下についてより大きい電力デルタが使用される。性能が劣っており、必要なアクセスプローブが3つであった場合、電力デルタは、正であり、RF状態が4dBより多く改善していない場合、電力調整を増加させ、RF状態のより大きい低下についてより大きい電力デルタが使用される。(1)性能が非常に劣っており、3つより多くのアクセスプローブが必要とされる場合、または(2)最後のアクセス試行について、RF状態が、よい性能の場合は5dBより多く低下し、または並または劣っている性能の場合は3dBより多く低下した場合、電力デルタが再設定され、基地局によって提供された初期電力レベル、Pinit_bsが使用される。
【表1】

【0056】
表1は、2つの入力パラメータのそれぞれについてマルチプルのしきい値がある特定の設計を示している。一般に、各入力パラメータの任意の数のしきい値を使用して、任意の数の入力パラメータを電力デルタにマッピングすることができる。しきい値は、静的または動的な値とすることができる。入力パラメータを、他の方法で、および/または他のルックアップテーブルに基づいて、電力デルタにマッピングすることもできる。例えば、電力デルタは、入力パラメータの一次関数に基づいて導出され、指定された制限内に制約され得る。入力パラメータは、例えば、表1に示されるように、一緒に電力デルタにマッピングされてもよい。あるいは、各入力パラメータは、独立して調整値にマッピングすることができ、電力デルタを得るために、すべての入力パラメータの調整値が結合され(例えば、合計され)てもよい。
【0057】
前のアクセス試行についての性能は、前のアクセス試行(Padj_priorやPinit_priorなど)および前のRF状態のために導出された電力値を使用して達成された。前の電力値は電力デルタだけ変えられ、それは、現在のアクセス試行についてよい性能が達成され得るように、RF状態の変化および前のアクセス性能に基づいて決定される。表1に示されている電力デルタ値は、前のアクセス試行についての性能の異なるレベルについて、およびRF状態の変化の異なる量に関して、前の電力値をどの程度変えるかの推定である。電力デルタ値は、コンピュータシミュレーション、実験的測定、実地試験などを介して得ることができる。
【0058】
上述したように、INIT_PWRs、NOM_PWRs、およびNOM_PWR_EXTsの異なる値は、使用のために選択され、選択されたINIT_PWRs、NOM_PWRs、およびNOM_PWR_EXTsの値は、無線装置に同報通信される。異なるPinit_bs値は、異なるINIT_PWRs、NOM_PWRs、およびNOM_PWR_EXTs値で得られ、異なるチャネル条件、異なるシステム処理量などを示し得る。一実施形態では、無線装置は、基地局によって提供されたPinit_bs値ごとに別々に履歴情報を維持する。
【0059】
表2は、nが任意の整数値である場合、異なるn個のPinit_bs値についての履歴情報の表の例を示す。表2は、図6に示されている実施形態についてのものであり、初期電力レベルPinit、アクセスプローブの数、およびPinit_bs値ごとの最後のアクセス試行についてのRF状態を格納する。無線装置は、基地局によって提供される新しいPinit_bs値ごとに表2を増加させることができる。無線装置は、各アクセス試行の後、表2の適切な入力(または列)を更新することができる。
【表2】

【0060】
アクセス試行を行う前に、無線装置は、アクセス試行が行われるべき基地局の現在のPinit_bs値を決定する。次いで無線装置は、このPinit_bs値の履歴情報を使用して、電力値(PadjやPinitなど)を導出する。例えば、現在のPinit_bs値がB2に等しい場合、無線装置は、Y2、Z2、およびR2を使用して、電力値を導出する。
【0061】
本明細書に記載した技術は、1xEV−DOネットワークに使用することもできる。無線装置は、1xEVDOアクセス状態に入り、1xEV−DOネットワークにアクセスするために、アクセス手順を行う。このアクセス手順では、NおよびNが構成可能なパラメータである場合、無線装置は、最高N個までのアクセスプローブシーケンスを1xEV−DOネットワークに送信し、アクセスプローブシーケンスごとに最高N個までのアクセスプローブを送信することができる。
【0062】
第1のアクセスプローブシーケンスを送る前に、無線装置は、持続性テスト(persistence test)を行い、これは、アクセスチャネルへの輻輳を制御するために使用される。持続性テストが合格すると、無線装置は、アクセスチャネルで第1のアクセスプローブを送信し、1xEV−DOネットワークからのアクセスチャネル肯定応答(ACAck)メッセージを聞く。ACAckメッセージが受信されない場合、無線装置は、疑似ランダム期間待ち、次いで第2のアクセスプローブを送信する。無線装置は、その後の各アクセスプローブを同じように送信する。無線装置は、第1のアクセスプローブシーケンスについてのN個のすべてのアクセスプローブを送信し、ACAckメッセージを受信していない場合、疑似ランダム期間待ち、第2のアクセスプローブシーケンスを開始する。無線装置は、このアクセス手順について、最高N個までのアクセスプローブシーケンスを送信することができる。1xEV−DOのアクセス手順は、公に入手可能な、3GPP2 C.S0024−A、タイトル「cdma2000 High Rate Packet Data Air Interface Specification」Version 1.0、2004年3月に記載されている。
【0063】
無線装置は、アクセスプローブシーケンスごとに、増加する出力電力でアクセスプローブを送信する。i番目のアクセスプローブの出力電力は、以下のように表すことができる:
【数6】

【数7】

【0064】
ここで、平均Rx電力は、無線装置によって測定された合計の受信された電力であり、
は、第1のアクセスプローブの出力電力であり、
開ループ調整は、開ループ電力推定に使用される公称電力であり、
プローブ初期調整は、開ループ電力推定の補正係数であり、
電力ステップは、各アクセスプローブの出力電力の増加である。
【0065】
式(6)および(7)で、開ループ調整、プローブ初期調整、および電力ステップは、1xEV−DOネットワークにおける基地局によって同報通信される静的値である。
【0066】
無線装置は、例えば図4および図5に関して上述したように、現在の情報および履歴情報に基づいて、電力調整、Padjを導出することができる。次いで、無線装置は、以下のように、この電力調整を使用して、出力電力を決定することができる:
【数8】

【0067】
あるいは、無線装置は、例えば図6に関して上述したように、X、または電力調整を組み込む他の何らかの中間値を導出することができる。また、無線装置は、電力調整を組み込む他の方法で、アクセスプローブの出力電力を調整することもできる。
【0068】
本明細書に記載した技術は、UMTSネットワークに使用することもできる。無線装置は、ネットワークへの最初のアクセス(例えば登録、発呼、ページング応答のためなど)に、また(ショートメッセージサービス(Short Messaging Service:SMS)メッセージなどの)短いデータバースト(short data burst)の送信に、ランダムアクセスチャネル(RACH)を使用することができる。RACHは、トランスポートチャネルであり、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)で運ばれる。
【0069】
無線装置は、PRACHでのランダムアクセス送信のための物理ランダムアクセス手順を行う。この手順では、無線装置は、メッセージにより後続される1つまたはそれより多くのプリアンブルを送信する。プリアンブルは、肯定応答(ACK)がネットワークから受信されるまで、一度に1つ、増加した電力で送信される。ACKが受信されると、無線装置は、メッセージを送信する。UMTSでの物理ランダムアクセス手順は、公に入手可能な3GPP TS 25.211および3GPP TS 25.214に記載されている。
【0070】
ランダムアクセス送信では、無線装置は、各プリアンブルを増加する電力で送信する。i番目のプリアンブルの出力電力は、以下のように表すことができる:
【数9】

【数10】

【0071】
ここで、1次CPICH TX電力は、CPICHで送られるパイロットの送信電力であり、
CPICH_RSCPは、無線装置によって測定された受信されたパイロット電力であり、
UL干渉は、補正係数であり、
定数値は、オフセットであり、
Preamble_Initial_Powerは、第1のプリアンブルの出力電力であり、
電力ランプステップ(Power Ramp Step)は、各プリアンブルの出力電力の増加である。
【0072】
式(9)および(10)で、1次CPICH TX電力、UL干渉、定数値、および電力ランプステップは、UMTSネットワークにおける基地局によって同報通信される静的値である。
【0073】
無線装置は、例えば図4および図5に関して上述したように、現在の情報および履歴情報に基づいて、電力調整、Padjを導出することができる。次いで、無線装置は、以下のように、この電力調整を使用して、出力電力を決定することができる:
【数11】

【0074】
あるいは、無線装置は、例えば図6に関して上述したように、Preamble_Initial_Power、または電力調整を組み込む他の何らかの中間値を導出することができる。また、無線装置は、電力調整を組み込む他の方法で、ランダムアクセス送信の出力電力を調整することもできる。
【0075】
図7は、通信ネットワークにおけるアクセスチャネルでの送信のために、無線装置によって実行されるプロセス700の一実施形態を示す。プロセス700は、アクセス試行ごとに行うことができる。
【0076】
アクセス試行の開始時に、前のアクセス試行についての履歴情報が取得される(ブロック712)。この履歴情報は、前のアクセス試行のRF状態、前のアクセス試行のために送られたアクセスプローブの数、前のアクセス試行に使用された電力値などを含み得る。電力値は、図5に示されている電力調整、図6に示されている初期電力レベル、またはアクセスチャネルの出力電力の算出に使用される他の何らかの値とすることができる。履歴情報は、例えば表2に関して上述したように、現在のアクセス試行に適用可能な初期電力レベルに依存し得る。
【0077】
現在のRF状態が決定される(ブロック714)。RF状態は、上述したように、合計の受信された電力、パイロットEc/Io、受信されたパイロット電力、受信信号の品質など、様々なパラメータによって量子化され得る。次いで、現在のアクセス試行のために送られるべき新しいアクセスプローブの電力値が、現在のRF状態および履歴情報に基づいて決定される(ブロック716)。電力値は、例えば図5および図6に関して上述したように、様々な方法で決定され得る。電力値は、よい性能を達成するために、閉ループ方法で調整することができる。電力値への調整の量は、前の性能(例えば前のアクセス試行のために送られたアクセスプローブの数)、現在のアクセス試行と前のアクセス試行との間のRF状態の変化などに依存し得る。
【0078】
電力値および他の適用可能なパラメータを使用して、新しいアクセスプローブの出力電力が決定される(ブロック718)。通信ネットワークは、アクセスプローブの出力電力を算出するための特定の式を定義することができ、静的値を提供することもできる。電力値は、式(8)および(11)に示されている電力調整、Padjなど、追加のパラメータとして扱われ得る。電力値は、例えば式(4)に示されている初期電力レベル、Pinitのような、式におけるパラメータを置き換えることもできる。どんな場合でも、新しいアクセスプローブの出力電力は、現在の情報および履歴情報に基づいて決定され、調整される。
【0079】
新しいアクセスプローブ(またはプリアンブル)は、このアクセスプローブのために決定された出力電力で送信される(ブロック720)。次いで、システムアクセスが成功したか、現在のアクセス試行のために最大数のアクセスプローブが送られたかの決定が行われる(ブロック722)。ブロック722のいずれの状態も真ではない場合、プロセス700は、ブロック714に戻って別のアクセスプローブを送る。そうでない場合、ブロック722における状態のいずれか一方が真である場合、現在のアクセス試行は終了する。現在のアクセス試行を完了すると、履歴情報は、このアクセス試行についての情報を含むように更新される(ブロック724)。例えば、電力値、RF状態、および現在のアクセス試行のために送られたアクセスプローブの数は、前のアクセス試行の対応する入力に上書きする場合がある。
【0080】
上述した実施形態では、履歴情報は、最新のアクセス試行のために維持される。一般に、履歴情報は、任意の数のアクセス試行のために維持され得る。さらに、履歴情報は、任意のタイプの情報を含み得る。例えば、履歴情報は、アクセス試行が行われた時の無線装置の位置および/または時間などを含み得る。次いで、現在のアクセス試行の電力値が、追加の情報に基づいて決定され得る。
【0081】
図8は、本明細書に記載された技術を実施することができる無線装置120の一実施形態を示す。送信パスでは、無線装置120によって送られるデータおよびシグナリングは、符号器822によって処理(フォーマット、符号化、インターリーブなど)され、変調器(Mod)824によってさらに処理(変調、拡散、チャネライズ、スクランブルなど)されて、データチップの流れを生成する。送信機(TMTR)832は、データチップの流れを調整(アナログへの変換、フィルタ処理、増幅、周波数のアップコンバートなど)して、アンテナ836を介して送信される逆リンク信号を生成する。受信パスでは、ネットワークにおける基地局によって送信される順方向リンク信号がアンテナ836によって受信され、受信機(RCVR)838に提供される。受信機838は、受信信号を調整(フィルタ処理、増幅、周波数のダウンコンバート、デジタル化など)して、データサンプルを生成する。復調器(Demod)826は、データサンプルを処理(逆スクランブル、逆拡散、チャネライズ、復調など)して、シンボル推定を取得する。復号器828は、シンボル推定をさらに処理(デインターリーブ、復号など)して、復号されたデータを取得する。符号器822、変調器824、復調器826、および復号器828は、モデムプロセッサ820によって実装されることができる。これらの装置は、ネットワークによって指定された処理を行う。
【0082】
コントローラ/プロセッサ840は、無線装置120内の様々な装置の動作を指示する。メモリ842は、コントローラ/プロセッサ840および他の装置によって使用されるプログラムコードおよびデータを格納する。コントローラ/プロセッサ840は、アクセスチャネルでの送信のための出力電力を制御するために、図5の装置400、図6の装置600、および/または図7のプロセス700を実施することができる。
【0083】
図9は、本明細書に記載されている電力調整が行われない、および電力調整が行われる、CDMA2000 1Xネットワークにおけるアクセスチャネルでの送信のための実地試験の結果を示す。各アクセス試行における第1のアクセスプローブに使用される出力電力は、図9の上半分の縦線として描かれている。無線装置での受信された電力は、図9の下半分に示されている。図9の左半分は、電力調整を行わないテストの部分の結果を示す。このテスト部分では、32のアクセス試行が行われ、アクセス試行当たりのアクセスプローブの平均数は、1.3であり、アクセスプローブの平均出力電力は、23dBmであった。図9の右半分は、電力調整を行うテストの部分の結果を示す。このテスト部分では、34のアクセス試行が行われ、アクセス試行当たりのアクセスプローブの平均数は、1.2であり、アクセスプローブの平均出力電力は、11.7dBmであった。平均電力調整は、12.5dBであった。2つのテスト部分の間の性能のわずかな差は、受信された電力の無作為の変動によるものであった。テストは、無線装置が、アクセスチャネルのその出力電力を相対的に大量に(このテストでは約12dB)低減し、依然としてよいアクセス性能を達成することができることを示していた。
【0084】
例えば登録および他の目的のために、無線装置がネットワークとの呼設定状態にない場合でさえ、無線装置は、アクセスプローブを定期的に送信することができる。アクセスチャネルのより低い出力電力は、様々な利益を提供することができる。まず、無線装置は、その消費電力を低減し、アクセスチャネルでの送信に、より少ない出力電力を使用することによって、場合によってはバッテリ寿命を延ばすことができる。第2に、アクセスチャネルのより低い出力電力は、逆方向リンクでの干渉を低減することができ、このことは、システム容量を改善させ得る。
【0085】
本明細書に記載されている技術は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの技術は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはその組み合わせに実装されてもよい。ハードウェア実装の場合、こうした技術に使用される処理装置は、1つまたはそれより多くの特定用途向け集積回路(ASICs)、デジタル信号プロセッサ(DSPs)、デジタル信号処理装置(DSPDs)、プログラム可能論理装置(PLDs)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGAs)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子機器、本明細書に記載された機能を実行するように設計されている他の電子装置、またはその組み合わせ内に実装され得る。
【0086】
ファームウェアおよび/またはソフトウェア実装の場合、こうした技術は、本明細書に記載された機能を実行するモジュール(手順、関数など)により実装され得る。ソフトウェアコードは、メモリ(図8のメモリ842など)に格納され、プロセッサ(プロセッサ840など)によって実行され得る。メモリは、プロセッサ内に実装されてもよく、またはプロセッサの外部に実装されてもよい。
【0087】
開示された実施形態の上記の説明は、当業者であれば誰でも本発明を作成し、または使用できるように提供されている。これらの実施形態への様々な変更は、当業者には容易に明らかであり、本明細書に定義された一般原則は、本発明の意図または範囲から逸脱することなく、他の実施形態に適用され得る。したがって、本発明は、本明細書に示された実施形態に限定されるものではなく、本明細書に開示された原理および新規の特徴と合致する最も広い範囲が与えられるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークとの前のアクセス試行についての履歴情報を格納するように構成されているメモリと、
前記メモリに結合されており、前記前のアクセス試行についての前記履歴情報に基づいて電力値を決定し、現在のアクセス試行のために、前記電力値をアクセスチャネルでの送信に使用するように構成されているプロセッサとを備える装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記アクセスチャネルで送られる各アクセスプローブの出力電力を決定し、前記アクセスプローブについて決定された前記出力電力で各アクセスプローブを送るために、前記電力値を使用するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記電力値に基づいて、前記現在のアクセス試行における第1のアクセスプローブの出力電力を算出し、前記第1のアクセスプローブの前記出力電力および電力ステップに基づいて、その後の各アクセスプローブの出力電力を算出するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記電力値は、電力調整のためのものである、ここにおいて各アクセスプローブの前記出力電力は、第1および第2の部分を備える、ここにおいて前記第1の部分は、前記履歴情報を考慮に入れない前記アクセスプローブの出力電力に対応する、ここにおいて前記第2の部分は、前記電力調整に対応する、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記電力値は、各アクセスプローブの前記出力電力を算出するために使用される初期電力レベルのためのものである、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、各アクセスプローブの前記出力電力を、前記履歴情報を考慮に入れない前記アクセスプローブの出力電力以下に制限するように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記履歴情報は、前記前のアクセス試行についての無線周波数状態、前記前のアクセス試行に使用される電力値、前記前のアクセス試行のために送られたアクセスプローブの数、またはその組み合わせを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記メモリは、前記前のアクセス試行のために送られたアクセスプローブの数を格納するように構成されている、ここにおいて前記プロセッサは、前記前のアクセス試行のために送られたアクセスプローブの数に基づいて、前記現在のアクセス試行についての前記電力値を決定するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記メモリは、前記前のアクセス試行のために使用された電力値を格納するように構成されている、ここにおいて前記プロセッサは、前記前のアクセス試行のために使用された前記電力値に基づいて、前記現在のアクセス試行についての前記電力値を決定するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記前のアクセス試行のために使用された前記電力値を、前記前のアクセス試行のために送られたアクセスプローブの数によって決定された量だけ調整し、前記調整された電力値を前記現在のアクセス試行についての前記電力値として使用するように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記メモリは、前記前のアクセス試行についての無線周波数状態を格納するように構成されている、ここにおいて前記プロセッサは、前記前のアクセス試行についての前記無線周波数状態、および前記現在のアクセス試行についての無線周波数状態に基づいて、前記現在のアクセス試行についての前記電力値を決定するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記現在のアクセス試行についての無線周波数状態と前記前のアクセス試行についての無線周波数状態との間の差を決定し、前記無線周波数状態の間の前記差に基づいて、前記現在のアクセス試行についての前記電力値を決定するように構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記前のアクセス試行のために使用された電力値を、前記無線周波数状態の間の前記差によって決定された量だけ調整し、前記調整された電力値を前記現在のアクセス試行についての前記電力値として使用するように構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記プロセッサは、前記無線周波数状態の間の前記差、および前記前のアクセス試行のために送られたアクセスプローブの数に基づいて、電力デルタを決定し、前記電力デルタおよび前記前のアクセス試行についての電力値に基づいて、前記現在のアクセス試行についての前記電力値を決定するように構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記通信ネットワークは、cdma2000ネットワークである、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記通信ネットワークは、汎用移動通信システムネットワークである、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
通信ネットワークとの前のアクセス試行についての履歴情報を取得すること、
前記前のアクセス試行についての前記履歴情報に基づいて、電力値を決定すること、および
現在のアクセス試行のために、前記電力値をアクセスチャネルでの送信に使用することを備える方法。
【請求項18】
前記電力値を決定することは、
前記現在のアクセス試行についての無線周波数状態、前記前のアクセス試行についての無線周波数状態、前記前のアクセス試行に使用された電力値、前記前のアクセス試行についての性能、またはその組み合わせに基づいて、前記電力値を決定することを備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記電力値を前記アクセスチャネルでの送信に使用することは、
前記電力値に基づいて、前記アクセスチャネルで送られる各アクセスプローブの出力電力を決定すること、および
前記アクセスプローブのために決定された前記出力電力で、各アクセスプローブを送ることを備える、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
各アクセスプローブの前記出力電力を決定することは、
各アクセスプローブの前記出力電力を、前記履歴情報を考慮に入れない前記アクセスプローブの出力電力以下に制限することを備える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
通信ネットワークとの前のアクセス試行についての履歴情報を取得するための手段と、
前記前のアクセス試行についての前記履歴情報に基づいて、電力値を決定するための手段と、
現在のアクセス試行のために、前記電力値をアクセスチャネルでの送信に使用するための手段とを備える装置。
【請求項22】
前記電力値を決定するための前記手段は、
前記現在のアクセス試行についての無線周波数状態、前記前のアクセス試行についての無線周波数状態、前記前のアクセス試行に使用された電力値、前記前のアクセス試行についての性能、またはその組み合わせに基づいて、前記電力値を決定するための手段を備える、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記電力値を前記アクセスチャネルでの送信に使用するための前記手段は、
前記電力値に基づいて、前記アクセスチャネルで送られる各アクセスプローブの出力電力を決定するための手段と、
前記アクセスプローブのために決定された前記出力電力で、各アクセスプローブを送るための手段とを備える、請求項21に記載の装置。
【請求項24】
各アクセスプローブの前記出力電力を決定するための前記手段は、
各アクセスプローブの前記出力電力を、前記履歴情報を考慮に入れない前記アクセスプローブの出力電力以下に制限するための手段を備える、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
下記を行うように無線装置において動作可能な命令を格納するためのプロセッサ可読媒体:
通信ネットワークとの前のアクセス試行についての履歴情報を取得すること、
前記前のアクセス試行についての前記履歴情報に基づいて、電力値を決定すること、および
現在のアクセス試行のために、前記電力値をアクセスチャネルでの送信に使用すること。
【請求項26】
下記を行うように動作可能な命令をさらに格納するための、請求項25に記載のプロセッサ可読媒体:
前記現在のアクセス試行についての無線周波数状態、前記前のアクセス試行についての無線周波数状態、前記前のアクセス試行に使用された電力値、前記前のアクセス試行についての性能、またはその組み合わせに基づいて、前記電力値を決定すること。
【請求項27】
下記を行うように動作可能な命令をさらに格納するための、請求項25に記載のプロセッサ可読媒体:
前記電力値に基づいて、前記アクセスチャネルで送られる各アクセスプローブの出力電力を決定すること、および
前記アクセスプローブのために決定された前記出力電力で、各アクセスプローブを送ること。
【請求項28】
下記を行うように動作可能な命令をさらに格納するための、請求項27に記載のプロセッサ可読媒体:
各アクセスプローブの前記出力電力を、前記履歴情報を考慮に入れない前記アクセスプローブの出力電力以下に制限すること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−134995(P2012−134995A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−15115(P2012−15115)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【分割の表示】特願2008−547698(P2008−547698)の分割
【原出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】