説明

無線通信ネットワークシステム

【課題】ユーザ移動体端末から報告される情報に基づいてユーザ移動体端末が存在する場合のみ無線基地局を再起動させる無線通信ネットワークシステムを提供する。
【解決手段】各無線基地局が、無線基地局から端末に周辺の無線基地局の受信レベルを測定させ自局の受信レベル最低時の受信レベルの最高値の隣接基地局の受信レベルを該隣接基地局のエリア判定閾値としエリア推定情報として記憶手段に更新しながら登録する個別周辺基地局レベル測定収集手段と、記憶手段に登録されている周辺の各隣接基地局のエリア推定情報をまとめて隣接基地局に送り記憶させる個別エリア推定情報送信手段と、サスペンド状態の基地局の隣接基地局の場合に測定収集手段の情報測定収集時にサスペンド状態の基地局の各隣接基地局の受信レベルが記憶手段のエリア判定閾値以下の時にサスペンド状態の基地局にリジューム通知を行いリジュームさせる個別動作再開制御手段を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線基地局の電源制御方法に関し、特に、マクロ基地局間において無線通信エリアを相互に補間することにより無線基地局の消費電力削減を可能とする無線通信ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話の普及や市場拡大、そしてサービスの多様化が進んでおり、3GPP(3rd Generation Partnership Project)においても高速大容量通信を実現する第4世代移動帯通信技術に向けた発展型の無線アクセス技術の1つとしてLong-Term Evolution(LTE)およびLTE-Advancedの標準化が行われている。その一方で、セルの小型化が進むことにより設置される基地局数が増加することが予測されている。
【0003】
しかしながら、基地局の増加に伴い、無線通信ネットワークシステムにおける消費電力も増加する問題がある。そのため、3GPPを代表とする各標準化団体ではネットワークの消費電力を削減することを目的に基地局の電源制御などを実現するEnergy Savings Management(省エネ管理)機能の標準化が実施されている(例えば下記非特許文献1参照)。Energy Savings(省エネ)により実現される機能としては、利用周波数の制限、送信電力の削減・停波、セルや基地局の電源制御などが考えられているが、特に、セルや基地局の電源制御を行う場合は、基地局間のエリア補間の実現と基地局の再起動(リジューム)条件が大きな課題となる。
【0004】
従来技術として、例えば下記特許文献1に記載の方法は、マスタ基地局内にスレーブ基地局のリソース使用状態や稼動状態を管理する状態管理テーブルを保有し、曜日ごとに集計して基地局使用状態管理データベースに格納する。この使用状態の集計データに基づいてスレーブ基地局の運行制御を行い、スレーブ基地局の電源制御を実現する特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−178039号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】”3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects; Telecommunication management; Study on Energy Savings Management (ESM) (Release 10)”、3GPP TR 32.826, Vol. 10.0.0, March 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記従来技術では、長時間にわたり集計した使用状態に基づいた電源制御を行うため、基地局エリア内にユーザが存在しない場合においても稼動状態となる可能性があるため不必要な電力を消費する問題があった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ユーザ移動体端末から報告される情報に基づいて、ユーザ移動体端末がサスペンド中の無線基地局のエリア内に存在することを推定することで、利用するユーザすなわちユーザ移動体端末が存在する場合にのみ無線基地局を再起動させる無線通信ネットワークシステムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、システム制御管理部により制御されそれぞれの無線エリアを有する複数の無線基地局を備えたユーザ移動体端末のための無線通信ネットワークシステムであって、前記各無線基地局が、自局のための情報を格納する個別記憶手段と、無線基地局からユーザ移動体端末に周辺の無線基地局の受信レベルを測定させ、自局の受信レベルの最も低い時の無線エリアのセル境界を示す測定結果における、受信レベルの最も高い隣接無線基地局の受信レベルを該隣接無線基地局のエリア判定閾値とし前記隣接無線基地局とそのエリア判定閾値からなるエリア推定情報として前記記憶手段に更新しながら登録する個別周辺基地局レベル測定収集手段と、前記個別記憶手段に登録されている周辺の各隣接無線基地局のエリア推定情報をまとめて隣接無線基地局に送りそれぞれの前記個別記憶手段に記憶させる個別エリア推定情報送信手段と、サスペンド状態の無線基地局の隣接無線基地局である場合に、前記個別周辺基地局レベル測定収集手段の情報測定収集時にサスペンド状態の無線基地局の各隣接無線基地局の受信レベルが前記個別記憶手段のエリア判定閾値以下の時にサスペンド状態の無線基地局にリジューム通知を行ってリジュームさせ動作を再開させる個別動作再開制御手段と、を備えたことを特徴とする無線通信ネットワークシステム等にある。
【発明の効果】
【0010】
この発明では、ユーザ移動体端末から報告される情報に基づいて、ユーザ移動体端末がサスペンド中の無線基地局のエリア内に存在することを推定することで、利用するユーザ移動体端末が存在する場合にのみ無線基地局を再起動させる無線通信ネットワークシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明による無線通信ネットワークシステムの構成の一例を示す図である。
【図2】図1のマクロ基地局の隣接する無線エリアの関係を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1における各マクロ基地局の概略的な内部構成を示す図である。
【図4】マクロ基地局の無線エリアにユーザ移動体端末が在圏している状態を示す図である。
【図5】この発明におけるマクロ基地局の無線エリアに在圏するユーザ移動体端末から無線エリアのエリア情報を収集するシーケンスを示す図である。
【図6】この発明における基地局DBへのエリア判定閾値の登録・更新処理を説明するための図である。
【図7】この発明におけるマクロ基地局の基地局DBに登録される情報の一例を示す図である。
【図8】この発明におけるマクロ基地局のサスペンド状態に移行するシーケンスを示す図である。
【図9】マクロ基地局のサスペンド状態における隣接マクロ基地局の無線エリアの関係を示す図である。
【図10】この発明における隣接マクロ基地局の無線エリアに在圏するユーザ移動体端末がサスペンド中のマクロ基地局の無線エリアの範囲に在圏した場合のシーケンスを示す図である。
【図11】この発明における図10のSTEP2のリジューム判定の際のエリア判定処理を説明するための図である。
【図12】この発明の実施の形態2における周辺マクロ基地局とそれらのエリア判定閾からなるエリア推定情報の通知シーケンスを示す図である。
【図13】この発明の実施の形態3における各マクロ基地局とエリア設計運用装置との構成を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態3におけるエリア設計運用装置の概略的な内部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明による無線通信ネットワークシステムを各実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、各実施の形態において、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
【0013】
実施の形態1.
この実施の形態では、標準化団体の1つである3GPPで規定されるLTEの無線通信ネットワークシステムに適用した形態について説明する。図1はこの発明による無線通信ネットワークシステムの構成の一例を示す図である。LTEネットワークは、無線基地局のうちの例えば屋外に設置されるマクロ基地局10a、10b、10cから構成されるE−UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network:無線基地局ネットワーク)1と、LTE無線アクセス通信方式を利用してE−UTRAN1と接続されるUser Equipment(ユーザ移動体端末:以下UE)20a,20bから構成されるUser Equipment(ユーザ移動体端末群)2と、UE20a,20bの移動管理を行うMME(Mobility Management Entity)30、IP通信のゲートウェイ機能を提供するS−GW(Serving Gateway)31、P−GW(Packet Data Network Gateway)32の3装置から構成されるEPC(Evolved Packet Core:システム制御管理部)3、そしてマクロ基地局10a,10b,10cの無線パラメータを管理・変更するエリア設計運用装置4を備える。なお、エリア設計運用装置4は実施の形態3に係るものである。
【0014】
図2は、マクロ基地局10a,10b,10cの隣接する無線エリアの関係を示している。(a)は全てのマクロ基地局が稼動状態にある場合を示しており、マクロ基地局10aの無線(通信)エリア40aとマクロ基地局10bの無線エリア40bの境界はセル境界41となり、マクロ基地局10aの無線エリア40aとマクロ基地局10cの無線エリア40cの境界はセル境界42となる。一方、(b)はマクロ基地局10aを停波させた場合(サスペンド状態)を示しており、セル境界は、電波伝搬特性に基づいて、マクロ基地局10bの無線エリア40bとマクロ基地局10cの無線エリア40cにより補間されるため、セル境界43となる。
【0015】
このように、マクロ基地局10aが停波した場合、マクロ基地局10aから隣接するマクロ基地局に与える干渉が無くなるため、マクロ基地局10b、10cの無線エリア40b,40cが拡大することで無線エリア40aを補間することが可能である。
【0016】
この発明はマクロ基地局の稼動、休止制御を各マクロ基地局で分散制御するシステムと、エリア設計運用装置4で集中制御するシステムを含む。この実施の形態では各マクロ基地局で分散制御するシステムについて説明する。
【0017】
図3にこの実施の形態における各マクロ基地局の概略的な内部構成を示す。各マクロ基地局10は、EPC3,エリア設計運用装置4,無線エリア内のUE(2)との間で通信を行う無線通信部101A,およびマクロ基地局間(1)および後述するエリア設定運用装置4との間で通信を行う有線通信部101Bから構成される通信部101、電源部102と、通信部101を使用して得られる情報に基づきマクロ基地局の稼動、休止、すなわち電源部102の稼動、待機状態の切り替え制御を行う個別稼動制御部103、個別稼動制御部103で使用する情報を登録しておく個別記憶手段を構成する基地局データベース(以下、基地局DB)104を備える。個別稼動制御部103は、個別周辺基地局レベル測定収集手段103A、個別エリア推定情報送信手段103B、個別休止制御手段103C、個別ハンドオーバ制御手段103D、個別動作再開制御手段103Eで構成される。
【0018】
次に動作について説明する。図4は、マクロ基地局10aの無線エリア40aにUE20a、20bが在圏している状態を示している。マクロ基地局10aは、無線エリア40aに在圏するUEからの受信電力の測定結果(周辺のマクロ基地局の送信電波の該UEでの受信レベルの測定結果)をエリア情報として管理する基地局DB104aに格納する。
【0019】
図5に、マクロ基地局10aの無線エリア40aに在圏するUE20a,20bから無線エリアのエリア情報を収集するシーケンスを示す。これは個別周辺基地局レベル測定収集手段103Aにより行われる。UE20a,20bがマクロ基地局10aと通信している状態において、マクロ基地局10aはエリア情報の収集を開始する。マクロ基地局10aは、UE20aに対してエリア情報の収集のために、マクロ基地局10a(自セル)および周辺の(ここでは説明の便宜上例えば隣接マクロ基地局のみを示す)マクロ基地局10b、10cの送信電波のUE20aでの受信レベルの測定をUE20aに指示する。UE20aは、マクロ基地局10aからの測定指示に基づきマクロ基地局10a,10b,10cの受信レベル測定を行い、マクロ基地局10aに測定結果を報告する。マクロ基地局10aは、受信した測定結果からエリア判定閾値を決定し、基地局DB104aに登録する(STEP1)。
【0020】
また、より多くのエリア情報を収集するため、同様の測定指示をUE20bに対して実行する。マクロ基地局10aは、UE20bから受信した測定結果から既に登録済みのエリア判定閾値と比較を行い、基地局DB104aの内容の更新を行う(STEP2)。
【0021】
図6を用いて、基地局DBへのエリア判定閾値の登録・更新処理について説明する。マクロ基地局10aの無線エリア40aとマクロ基地局10bの無線エリア10bのセル境界41におけるマクロ基地局10aの送信電波の受信レベル値をRSSI#1とする。無線エリア40aに在圏するUE20a,20bからの測定情報は、UE20a,20bの位置によりRSSI#1以上の測定結果が報告される。そのため、UE20a,20bがセル境界に在圏している場合には、最も低い受信レベル値が報告されるため、自局受信レベルが最も低い測定結果を無線エリア40aのセル境界と判断し、基地局DB(104)への登録・更新を行う。エリア判定閾値と関連付けを行う隣接マクロ基地局は、UE20a,20bから報告される測定結果に含まれる最も受信レベルの高い隣接マクロ基地局とする。すなわち、自局の受信レベルの最も低い時の無線エリアのセル境界を示す測定結果における、受信レベルの最も高い隣接するマクロ基地局の受信レベルを該隣接マクロ基地局のエリア判定閾値として更新しながら登録する。これは隣接する全てのマクロ基地局に対しそれぞれにエリア判定閾値を求めて登録する。隣接マクロ基地局とそのエリア判定閾値の組をエリア推定情報とする。
【0022】
図7に、後述するマクロ基地局10aのサスペンドやハンドオーバ時にマクロ基地局10aからマクロ基地局10bに送られ、マクロ基地局10bの基地局DB104bに登録されるマクロ基地局10aに関するエリア推定情報の一例の一部を示す。この情報は、エリア推定の対象はマクロ基地局10aであり、マクロ基地局10aは現在、後述するサスペンド状態にあり、マクロ基地局10aのUEでの受信レベルの最も低い時の受信レベルの最も高い隣接マクロ基地局がマクロ基地局10bであり、その時のマクロ基地局10bのUEでの受信レベルが−90dBm(エリア判定閾値)であることを示す。また、周辺基地局であるマクロ基地局10cのUEでの受信レベルは−94dBmである。これはマクロ基地局10bのためのエリア推定情報であり、マクロ基地局10aはマクロ基地局10aの全ての隣接マクロ基地局に対する同様なエリア推定情報を格納しており、全隣接マクロ基地局のエリア推定情報として、全ての隣接マクロ基地局に送信し基地局DBに登録させる。なお、各マクロ基地局はそれぞれの周辺のマクロ基地局の隣接セルリストを基地局DB等に予め格納しているため、送信元のマクロ基地局を判断可能である。
【0023】
図8に、マクロ基地局10aのサスペンド状態に移行するシーケンスを示す。これは個別休止制御手段103Cと個別エリア推定情報送信手段103Bにより行われる。例えばUEとの通信状況に基づき、マクロ基地局10aの自エリアに全てのUEが存在しないことを検知すると、一定の監視時間の間、新規UEの在圏を監視する。監視時間の間に新規UEが在圏しなければ、マクロ基地局10aは、隣接するマクロ基地局10b,10cに対してサスペンド状態に移行することをeNB Configuration Updateを介して通知し、肯定確認応答(Acknowledgment)を受けた後、サスペンド状態に入る(個別休止制御手段103C)。この際、サスペンド通知に、マクロ基地局10aをリジュームする際の判定基準となる、基地局DB104aに登録されている周辺の各(全ての)隣接マクロ基地局(マクロ基地局10aは除く)とそれぞれのエリア判定閾値(エリア推定情報)を含めて送り、この説明ではマクロ基地局10b、10cの基地局DB104b,基地局DB104cそれぞれに、各隣接マクロ基地局10b,10cとそれぞれのエリア判定閾値を記憶させる(個別エリア推定情報送信手段103B)。なお、例えば図4、図9等に示すようにさらなる隣接マクロ基地局10dがある場合には、マクロ基地局10b,10c,10dの基地局DB(104)それぞれに、各隣接マクロ基地局10b,10c,10dとそれぞれのエリア判定閾値からなる(エリア推定情報)が設定される。ここでは、マクロ基地局を識別する情報としてPhysical Cell IDを使用しているが、E-UTRAN Cell Global IDなど基地局を一意に識別可能なIDを利用してもよい。
【0024】
図9は、マクロ基地局10aのサスペンド状態におけるマクロ基地局10bの無線エリア40bとマクロ基地局10cの無線エリア40cの関係を示す。マクロ基地局10aがサスペンド状態に移行すると、図6に示すように、マクロ基地局10bのセル境界は隣接マクロ基地局であるマクロ基地局10b、10c間のセル境界43に変化する。マクロ基地局10aがサスペンド中におけるマクロ基地局10bの無線エリア40bとマクロ基地局10cの無線エリア40cのセル境界43の受信レベル値はRSSI#2となる。そのため、無線エリア40bに在圏するUE20aからの測定情報はUE20aの位置によりRSSI#2以上の測定結果が報告される。
【0025】
図10は、マクロ基地局10bの無線エリア40bに在圏するUE20aが、図9のサスペンド中のマクロ基地局10aの無線エリア40aである無線エリア60の範囲に在圏した場合のシーケンスを示している。図10のSTEP1,4は個別周辺基地局レベル測定収集手段103Aにより行われ、STEP2,3は個別動作再開制御手段103E、STEP5は個別ハンドオーバ制御手段103Dにより行われる。UE20aがマクロ基地局10bと通信している状態において、マクロ基地局10bの無線エリア40bに在圏するUE20aからマクロ基地局10aがサスペンド中における無線エリアのエリア情報を収集する。マクロ基地局10bは、UE20aに対してエリア情報の収集のためにマクロ基地局10b(自セル)および周辺(隣接)のマクロ基地局10c等の送信電波のUE20aでの受信レベルの測定をUE20aに指示する。UE20aは、マクロ基地局10bからの測定指示に基づきマクロ基地局10b,10cの受信レベル測定を行い、マクロ基地局10bに測定結果を報告する(STEP1)。
【0026】
次に、マクロ基地局10bは、UE20aから報告された測定結果と基地局DB104bに格納された隣接マクロ基地局とそのエリア判定閾値を用いたリジューム判定を行い(STEP2)、リジューム条件に一致した場合にマクロ基地局10aに対してリジューム通知を行いリジューム処理を指示し応答(Cell Activation Response)を受ける(STEP3)。ここでリジューム条件とは、サスペンド状態のマクロ基地局10aの全てまたは測定可能な全ての隣接マクロ基地局10b,10cの受信レベルがそれぞれのエリア判定閾値以下の場合であり、これはUE20aがサスペンド状態のマクロ基地局10aの無線エリア40aにあることを示す。
【0027】
マクロ基地局10bは、マクロ基地局10aのリジューム処理を実行後、マクロ基地局10aを含むマクロ基地局10a,10b,10cの測定をUE20aに指示する(STEP4)。UE20aから報告された測定結果にマクロ基地局10aの測定結果(受信レベル)が含まれる場合は、UE20aのハンドオーバ判定を行いマクロ基地局10aへUE20aのハンドオーバ処理を行う。ハンドオーバ判定では、UE20aからの測定結果でマクロ基地局10aの受信レベルがマクロ基地局10bの受信レベルを超えた場合に、マクロ基地局10aにUE20aのハンドオーバを行う(STEP5)。
【0028】
マクロ基地局10bからマクロ基地局10aへのハンドオーバ処理では、マクロ基地局10bからマクロ基地局10aへハンドオーバ通知を行いマクロ基地局10aから肯定確認応答(Acknowledgment)を受けた後、UE20aに接続変更(RRC Connection Reconfiguration)、マクロ基地局10aに通信状態通知(SN Status Transfer)を送信する。これによりUE20aからの接続変更完了(RRC Connection Reconfiguration Complete)通知はマクロ基地局10aに送られる。
【0029】
また、図11を用いて図10のSTEP2のリジューム判定の際のエリア判定処理について説明する。UE20aから報告された周辺のマクロ基地局レベルの測定結果から、マクロ基地局10aの無線エリア40aを推定するためにマクロ基地局10bにおいて、例えば、サスペンドする際にマクロ基地局10aから送られ基地局DB104bに設定されたマクロ基地局10bに対するエリア判定閾値とマクロ基地局10bの自局受信レベルを比較し、自局受信レベルがエリア判定閾値以下であり、同様に基地局DB104bに設定された隣接マクロ基地局10cに対するエリア判定閾値とマクロ基地局10cの隣接受信レベルを比較し、隣接受信レベルがエリア判定閾値以下である場合、UE20aはマクロ基地局10aの無線エリア40aに在圏していることを判定する。
【0030】
上記記載の実施の形態に基づく制御を行うことにより、利用するユーザが存在する場合にのみ該当するマクロ基地局の電源制御を実現する無線通信ネットワークシステムを構築することが可能となる。
【0031】
実施の形態2.
実施の形態1では、マクロ基地局の上述の周辺マクロ基地局とそのエリア判定閾値からなるエリア推定情報を基地局のサスペンド手順の拡張により隣接マクロ基地局に通知することでマクロ基地局の電源制御を実現していたが、実施の形態2では、マクロ基地局間のハンドオーバ手順を拡張することにより上記エリア推定情報を通知することで、サスペンド中のマクロ基地局の無線エリアを推定する形態とした。
【0032】
実施の形態2において、無線通信ネットワークシステムおよび各マクロ基地局の構成はそれぞれ図1、図3に示すものと基本的に同じであるが、図3の個別稼動制御部103の特に個別エリア推定情報送信手段103Bの処理が異なる。
【0033】
図12は、実施の形態2における周辺マクロ基地局とそれらのエリア判定閾値からなるエリア推定情報の通知シーケンスを示している。図12のSTEP1は個別周辺基地局レベル測定収集手段103Aにより行われ、STEP2,3は個別ハンドオーバ制御手段103Dと個別エリア推定情報送信手段103Bにより行われる。UE20aがマクロ基地局10aと通信している状態において、マクロ基地局10aはエリア情報の収集を開始する。マクロ基地局10aは、UE20aに対してエリア情報の収集のためにマクロ基地局10a(自セル)および周辺の(ここでは説明の便宜上例えば隣接マクロ基地局のみを示す)マクロ基地局10b、10cの送信電波の受信レベルの測定をUE20aに指示する。UE20aはマクロ基地局10aからの測定指示に基づきマクロ基地局10a、10b、10cの受信レベル測定を行い、マクロ基地局10aに測定結果を報告する(STEP1)。
【0034】
マクロ基地局10aは、受信した測定結果に基づきUE20aのハンドオーバ判定を行う。マクロ基地局10aがマクロ基地局10bに対するハンドオーバ判定を決定すると、マクロ基地局10aはハンドオーバ要求メッセージ(ハンドオーバ通知)を送信し、ハンドオーバ処理を開始する(個別ハンドオーバ制御手段103D)。この際、ハンドオーバ要求メッセージにエリア推定情報を含めて送信する(個別エリア推定情報送信手段103B)(STEP2)。
すなわち、マクロ基地局10aは受信した測定結果から、自局の受信レベルを超えた隣接マクロ基地局(例えばマクロ基地局10b、自局の受信レベルを超えた隣接マクロ基地局が複数ある場合には最も高い受信レベルの隣接マクロ基地局)に対するハンドオーバを決定し、基地局DB104aに登録されている、UE20aのハンドオーバ先のマクロ基地局(ここではマクロ基地局10b)の周辺の例えば各隣接マクロ基地局とそれぞれのエリア判定閾値(但しマクロ基地局10aは除く)からなるエリア推定情報が含まれたハンドオーバ要求メッセージを送信する。
【0035】
マクロ基地局10aからマクロ基地局10bへのハンドオーバ処理では、マクロ基地局10aからマクロ基地局10bへ上記ハンドオーバ要求メッセージの通知を行いマクロ基地局10bから肯定確認応答(Acknowledgment)を受けた後、UE20aに接続変更(RRC Connection Reconfiguration)、マクロ基地局10bに通信状態通知(SN Status Transfer)を送信する。これによりUE20aからの接続変更完了(RRC Connection Reconfiguration complete)通知はマクロ基地局10bに送られる。
ハンドオーバ処理が正常に完了後、マクロ基地局10bは基地局DB104bのエリア推定情報(エリア判定閾値)を更新する(STEP3)。
【0036】
マクロ基地局10aがサスペンド状態において、マクロ基地局10bが前記ハンドオーバ処理にて取得し基地局DB104bに登録した自局に関するエリア推定情報のエリア判定閾値を利用することで図11に示すエリア判定処理を実施することが可能となる。
【0037】
上記記載の実施の形態に基づく制御を行うことにより、利用するユーザが存在する場合にのみ該当するマクロ基地局の電源制御を実現する無線通信ネットワークシステムを構築することが可能となる。
【0038】
なお、上記各実施の形態では、個別エリア推定情報送信手段103Bは、サスペンド通知、ハンドオーバ通知に含めてエリア推定情報を送信していたが、例えば所定の周期でエリア推定情報を周辺の隣接マクロ基地局へ送信するようにしてもよい。
【0039】
実施の形態3.
実施の形態1,2では、マクロ基地局の電源制御を行う機能は各マクロ基地局に実装する形態であったが、本実施の形態3では図1および図13に示すようにこれらの機能をエリア設計運用装置4に集中して実装し、各マクロ基地局の電源制御を集中管理する。
【0040】
図14にはエリア設計運用装置4の概略的な内部構成を示す。エリア設計運用装置4は、各マクロ基地局の通信部との間で通信を行う通信部(例えば有線通信部)401と、通信部401を使用して得られる情報に基づき各マクロ基地局の稼動、休止、すなわちマクロ基地局の電源部(図3の102)の稼動、待機状態の切り替え制御を行う稼動制御部403、稼動制御部403で使用する情報を登録しておく記憶手段を構成するデータベース(以下、DB)404を備える。稼動制御部403は、図3の個別稼動制御部103の各手段に対応する、周辺基地局レベル測定収集手段403A、休止制御手段403C、動作再開制御手段403Eで構成される。但し、DB404で全てのマクロ基地局の周辺マクロ基地局とそのエリア判定閾値からなるエリア推定情報等を登録、更新するため個別エリア推定情報送信手段103Bに相当する手段はない。
【0041】
なお、この実施の形態の場合の各マクロ基地局の構成は、例えば図3の通信部101、電源部102、およびエリア設計運用装置4からの通知による電源部102の稼動、待機状態の切り替え制御、上述のハンドオーバ制御(個別ハンドオーバ制御手段)、を行う制御部(図示省略)を少なくとも備える。
【0042】
周辺基地局レベル測定収集手段403Aは、各マクロ基地局からUEに周辺のマクロ基地局の受信レベルを測定させ、自局の受信レベルの最も低い時の無線エリアのセル境界を示す測定結果における、受信レベルの最も高い隣接マクロ基地局の受信レベルを該隣接マクロ基地局のエリア判定閾値とし前記隣接マクロ基地局とそのエリア判定閾値からなるエリア推定情報としてDB404に更新しながら登録する。
【0043】
動作再開制御手段403Eは、周辺基地局レベル測定収集手段403Aの情報測定収集時にサスペンド状態のマクロ基地局の隣接マクロ基地局において受信レベルがDB404のそれぞれのエリア判定閾値以下の時にサスペンド状態のマクロ基地局をリジュームさせ動作を再開させる。
【0044】
休止制御手段403Cは自局の無線エリアにUEが存在しないマクロ基地局のサスペンド処理を行う。ハンドオーバ処理は、周辺基地局レベル測定収集手段403Aにおいて、隣接マクロ基地局の受信レベルの測定を開始し、UEからの測定結果を受信したマクロ基地局はハンドオーバ判定を行い自局の受信レベルを超えたマクロ基地局に、該隣マクロ基地局にハンドオーバ通知を行って受信レベルを測定したUEを該隣接マクロ基地局にハンドオーバする。
【0045】
上記記載の実施の形態では、UEからの測定結果をマクロ基地局経由でエリア設計運用装置4に通知することにより、実施の形態1と同様に利用するユーザが存在する場合にのみ該当するマクロ基地局の電源制御を実現する無線通信ネットワークシステムを構築することが可能となる。
【0046】
なお、上記各実施の形態では無線基地局として例えばマクロ基地局について説明したがこの発明はマクロ基地局に限定されるものではない。
またこの発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、これらの実施の形態の特徴の可能な組み合わせを全て含むことは云うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1 E−UTRAN(無線基地局ネットワーク)、2 User Equipment(ユーザ移動体端末群)、3 EPC(Evolved Packet Core:システム制御管理部)、4 エリア設計運用装置、10a−10d マクロ基地局、40a−40c,60 無線(通信)エリア、41−43 セル境界、101 通信部、101A 無線通信部、101B 有線通信部、102 電源部、103 個別稼動制御部、103A 個別周辺基地局レベル測定収集手段、103B 個別エリア推定情報送信手段、103C 個別休止制御手段、103D 個別ハンドオーバ制御手段、103E 個別動作再開制御手段、104,104a−104c 基地局DB、401 通信部、403 稼動制御部、403A 周辺基地局レベル測定収集手段、403C 休止制御手段、403E 動作再開制御手段、404 DB。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム制御管理部により制御されそれぞれの無線エリアを有する複数の無線基地局を備えたユーザ移動体端末のための無線通信ネットワークシステムであって、
前記各無線基地局が、
自局のための情報を格納する個別記憶手段と、
無線基地局からユーザ移動体端末に周辺の無線基地局の受信レベルを測定させ、自局の受信レベルの最も低い時の無線エリアのセル境界を示す測定結果における、受信レベルの最も高い隣接無線基地局の受信レベルを該隣接無線基地局のエリア判定閾値とし前記隣接無線基地局とそのエリア判定閾値からなるエリア推定情報として前記記憶手段に更新しながら登録する個別周辺基地局レベル測定収集手段と、
前記個別記憶手段に登録されている周辺の各隣接無線基地局のエリア推定情報をまとめて隣接無線基地局に送りそれぞれの前記個別記憶手段に記憶させる個別エリア推定情報送信手段と、
サスペンド状態の無線基地局の隣接無線基地局である場合に、前記個別周辺基地局レベル測定収集手段の情報測定収集時にサスペンド状態の無線基地局の各隣接無線基地局の受信レベルが前記個別記憶手段のエリア判定閾値以下の時にサスペンド状態の無線基地局にリジューム通知を行ってリジュームさせ動作を再開させる個別動作再開制御手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信ネットワークシステム。
【請求項2】
自局の無線エリアにユーザ移動体端末が存在しない場合に周辺の各隣接無線基地局にサスペンド通知を行って自局をサスペンド状態にする個別休止制御手段と、前記個別周辺基地局レベル測定収集手段において、隣接無線基地局の受信レベルが自局の受信レベルを超えた場合に該隣接無線基地局にハンドオーバ通知を行って受信レベルを測定したユーザ移動体端末を該隣接無線基地局にハンドオーバする個別ハンドオーバ制御手段と、の少なくとも一方を備え、
前記個別エリア推定情報送信手段が、前記サスペンド通知またはハンドオーバ通知、またはサスペンド通知とハンドオーバ通知に前記個別記憶手段に登録されている周辺の各隣接無線基地局のエリア推定情報をまとめて含めて送ることを特徴とする請求項1に記載の無線通信ネットワークシステム。
【請求項3】
前記個別ハンドオーバ制御手段を備えている場合に、前記個別動作再開制御手段のリジューム処理の後に個別ハンドオーバ制御手段によるハンドオーバを行うことを特徴とする請求項2に記載の無線通信ネットワークシステム。
【請求項4】
システム制御管理部により制御されそれぞれの無線エリアを有する複数の無線基地局を備えたユーザ移動体端末のための無線通信ネットワークシステムであって、各無線基地局の稼動制御を統括して行うエリア設計運用装置が、
情報を格納する記憶手段と、
各無線基地局からユーザ移動体端末に周辺の無線基地局の受信レベルを測定させ、自局の受信レベルの最も低い時の無線エリアのセル境界を示す測定結果における、受信レベルの最も高い隣接無線基地局の受信レベルを該隣接無線基地局のエリア判定閾値とし前記隣接無線基地局とそのエリア判定閾値からなるエリア推定情報として前記記憶手段に更新しながら登録する周辺基地局レベル測定収集手段と、
前記周辺基地局レベル測定収集手段の情報測定収集時にサスペンド状態の無線基地局の隣接無線基地局において受信レベルが前記記憶手段のそれぞれのエリア判定閾値以下の時にサスペンド状態の無線基地局をリジュームさせ動作を再開させる動作再開制御手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信ネットワークシステム。
【請求項5】
自局の無線エリアにユーザ移動体端末が存在しない無線基地局をサスペンド状態にする休止制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の無線通信ネットワークシステム。
【請求項6】
前記各無線基地局が、前記周辺基地局レベル測定収集手段による周辺基地局レベル測定収集において、隣接無線基地局の受信レベルが自局の受信レベルを超えた時に、該隣接無線基地局にハンドオーバ通知を行って受信レベルを測定したユーザ移動体端末を該隣接無線基地局にハンドオーバするハンドオーバ制御手段を備えたことを特徴とする請求項4または5に記載の無線通信ネットワークシステム。
【請求項7】
前記動作再開制御手段のリジューム処理の後に前記ハンドオーバ制御手段がハンドオーバを行うことを特徴とする請求項6に記載の無線通信ネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−195752(P2012−195752A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57918(P2011−57918)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省、「自律的エリア設計運用技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】