説明

無線通信方法

【課題】通信開始時のPINコード入力等の操作の手間を必要とすることなく、不特定多数の通信モジュールが存在する可能性のある通信環境の中で、誤接続を防止して、2者間での1対1の通信を他から邪魔されることなく行う。
【解決手段】小型で持ち運び可能な2つの外部メモリA14、B15に、予めブルートゥースアドレス、リンクキー、暗号キーを含んで構成されたセキュリティパラメータを格納しておく。そして、この2つの外部メモリA14、B15のそれぞれを1対1の通信を行いたいブルートゥースモジュール21、22に接続する。ブルートゥースモジュール21、22は、接続された外部メモリ内のセキュリティパラメータを使用して2者間での通信を行うことができる。その際、ブルートゥースモジュール21、22の一方がマスタモジュールとなって通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信方法に係り、特に、相互に通信を行うブルートゥース(Bluetooth)モジュール等の通信モジュールの一方をマスタモジュールとし、他方のブルートゥースモジュールをスレーブモジュールとして、他のモジュールからの干渉を受けることなく、1対1の相互間でデータ通信を行うことを可能にした無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブルートゥースモジュールは、一般に、RFトランシーバIC、ベースバンドIC、デジタルデータ等の処理を行うと共に、モジュール全体の制御を行うDSP、無線リンクを管理するプロトコルへの通信インタフェースであるHCI、音声等のリアルタイム性が要求されるアプリケーションに使用されるSCOと呼ばれる同期チャンネル等を備えて構成されている。そして、ブルートゥースモジュールは、他の1または複数のブルートゥースモジュールとの間で、音声信号の通信、デジタルデータの通信、これらを混在させた通信を行うことができる。
【0003】
そして、一般に、ブルートゥースモジュールは、電波の届く範囲にある他のブルートゥースモジュールのどれとでも通信を行うことができる。このため、1対1の通信を他のモジュールから盗聴等がなされないように行いたい場合、通信の都度、相手側との間でセキュリティパラメータを設定しなければならない。このセキュリティパラメータは、通常、48ビットのブルートゥースアドレスと、128ビットのリンクキーと、8〜128ビットで8ビット単位で可変長の暗号キーとにより構成される。リンクキーは、通信時の相手側の認証に利用されるものであり、通信の開始時にPINコードと呼ばれるコードが入力されて作成される。この場合、接続するモジュール同士で、それらを利用するユーザの了解の下に同一のPINコードの入力が必要になる。
【0004】
ブルートゥースモジュールは、前述したようなセキュリティパラメータを用いることにより、不特定多数のブルートゥースモジュールが存在する可能性のある通信環境の中で、誤接続を防止して、2者間での1対1の通信を他から邪魔されることなく行うことができる。
【0005】
なお、前述したようなブルートゥースモジュールにおけるセキュリティパラメータを用いる機能に関する従来技術として、非特許文献1等に記載された技術が知られている。
【非特許文献1】宮津 和弘著「Bluetoothガイドブック」(日刊工業新聞社 2000年9月20日発行、第75頁〜第76頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来技術によるセキュリティパラメータを用いる2者間での1対1の通信は、通信の都度、通信の開始時に、通信を行おうとする両者がPINコードを入力して、リンクキーを作成して、お互いに相手を認証しなければならず、通信開始時にブルートゥースモジュールを持つ端末の操作の手間が多くかかってしまうという問題点を有している。
【0007】
本発明の目的は、前述した従来技術の問題点を解決し、通信開始時のPINコード入力等の操作の手間を必要とすることなく、不特定多数の通信モジュールが存在する可能性のある通信環境の中で、誤接続を防止して、2者間での1対1の通信を他から邪魔されることなく行うことを可能にした無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば前記目的は、マスタモジュールとスレーブモジュールとの間で無線ネットワークを介して1対1の通信を行う無線通信方法において、前記各モジュールが、1対1の通信を行うために必要なセキュリティパラメータが格納されたメモリを備え、前記マスタモジュールとスレーブモジュールとが、前記セキュリティパラメータを使用して1対1の通信を行うことにより達成される。
【0009】
また、前記目的は、前記セキュリティパラメータが、アドレス、リンクキー、暗号キーを含んで構成されていることにより達成される。
【0010】
また、前記目的は、前記メモリが、書き替え可能な外付けのROMであることにより達成される。
【0011】
さらに、前記目的は、前記マスタモジュールとスレーブモジュールとがブルートゥースモジュールであり、前記無線ネットワークがブルートゥースネットワークであることにより達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通信開始時のPINコード入力等の操作の手間を必要とすることなく、不特定多数のブルートゥースモジュール等の通信モジュールが存在する可能性のある通信環境の中で、誤接続を防止して、任意の通信モジュール相互間での1対1の通信を他から邪魔されることなく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明による無線通信方法の実施形態を図面により詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態による無線通信方法を実施するために使用する外部メモリの作成について説明する図、図2は本発明の一実施形態による無線通信方法を説明する図である。図1、図2において、11、12、21、22はブルートゥースモジュール、13、23、24はPC、14、15は外部メモリである。
【0015】
本発明の実施形態は、書き替え可能で、持ち運び可能に小型に作成されているフラッシュメモリ、EPROM等のROMを、通信モジュールとしてのブルートゥースモジュールに接続可能として構成した外部メモリを使用し、この外部メモリを1対としてこれらの外部メモリに同一のリンクキーを持つセキュリティパラメータを予め格納し、この1対の外部メモリのそれぞれを任意のブルートゥースモジュールに接続し、外部メモリのそれぞれが接続されたブルートゥースモジュールの一方をマスタモジュールとし、他方をスレーブモジュールとして1対1の通信を行うようにしたものである。
【0016】
まず、図1を参照して、外部メモリへのセキュリティパラメータを格納する方法について説明する。外部メモリへのセキュリティパラメータを格納する処理は、例えば、生産工場等で行われる。
【0017】
外部メモリへのセキュリティパラメータを格納する処理は、図1に示しているように、用意した外部メモリA14、外部メモリB15をPC13に接続し、また、外部メモリA14、B15へのセキュリティパラメータを格納するために使用する2つのブルートゥースモジュール11、12をPC13に接続してPC13から行われる。2つのブルートゥースモジュール11、12は、セキュリティパラメータが外部に漏れるようなことを防止するため、シールドが施される。
【0018】
前述において、PC13は、まず、2つのブルートゥースモジュール11、12にブルートゥースアドレスを割り付ける。そして、このブルートゥースアドレスにより2つのブルートゥースモジュール11、12を接続する。このとき、ユニークなコードを有するPINコードを使用する。この結果、ブルートゥースモジュール11、12相互間の接続により、従来技術の欄で説明したようなリンクキー、暗号キーが生成されるので、PC13は、生成されたリンクキー、暗号キー並びに割り付けたブルートゥースアドレスをセキュリティパラメータとして、外部メモリA14、外部メモリB15に格納する。その際、PC13は、ブルートゥースアドレス及びPINコードを生成するだけであり、その他の情報の保存は行わない。
【0019】
前述したようにして作成された外部メモリA14、外部メモリB15は、任意のブルートゥースモジュールに接続されたとき、それらのブルートゥースモジュールが、外部メモリA14、B15に格納されたセキュリティパラメータのリンクキーとブルートゥースアドレスとに従って、1対1の通信を行うことが可能となる。その場合に、通信の開始に先立って、PINコードの入力が不要となり、相互間で暗号化され、かつ、他のブルートゥースモジュールから邪魔のされない独立した通信を行うことができる。
【0020】
図2に前述したように作成された外部メモリA14、外部メモリB15を接続した2つのブルートゥースモジュールによる通信の状況を示しており、PC23をホストとして接続しているブルートゥースモジュールA21に前述で作成した外部メモリA14を接続し、PC24をホストとして接続しているブルートゥースモジュールB22に前述で作成した外部メモリB15を接続して、2つのブルートゥースモジュールA14、B15とが通信を行う状況を示している。
【0021】
すでに説明したように、2つのブルートゥースモジュール21、22は、外部メモリA、Bに格納されたセキュリティパラメータに従って、1対1での通信を他のブルートゥースモジュールから邪魔されることなく行うことができる。しかも、外部メモリA14、B15を持ち運んで、任意のブルートゥースモジュールに接続することにより、それらのブルートゥースモジュールに、セキュリティを持った1対1の通信を行わせることができる。
【0022】
図2に示した例は、ブルートゥースモジュールのそれぞれに、ホストとしてのPCを接続したものであるが、他の使用例として、FAシステムにおける監視用のPCに接続されている一方のブルートゥースモジュールに外部メモリA14を接続し、生産ライン上のセンサに接続されている他方のブルートゥースモジュールに外部メモリB15を接続して使用することができる。本発明の実施形態は、このような使用形態として使用する場合、生産設ライン上の任意の場所にあるセンサ等に接続されているブルートゥースモジュールに外部メモリB15を接続し、その近くにある監視用のPCに接続されているブルートゥースモジュールに外部メモリA14を接続することにより、ユーザが希望するセンサからの情報を確実にPCに取り込むことができる。
【0023】
前述した本発明の実施形態によれば、小型で持ち運び可能な2つの外部メモリに、予めブルートゥースアドレス、リンクキー、暗号キーを含んで構成されたセキュリティパラメータを格納しておき、この2つの外部メモリのそれぞれを1対1の通信を行いたいブルートゥースモジュールに接続するだけで、通信開始時のPINコード入力等の操作の手間を必要とすることなく、不特定多数のブルートゥースモジュールが存在する可能性のある通信環境の中で、誤接続を防止して、2者間での1対1の通信を他から邪魔されることなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態による無線通信方法を実施するために使用する外部メモリの作成について説明する図である。
【図2】本発明の一実施形態による無線通信方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0025】
11、12、21、22 ブルートゥースモジュール
13、23、24 PC
14、15 外部メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタモジュールとスレーブモジュールとの間で無線ネットワークを介して1対1の通信を行う無線通信方法において、前記各モジュールは、1対1の通信を行うために必要なセキュリティパラメータが格納されたメモリを備え、前記マスタモジュールとスレーブモジュールとは、前記セキュリティパラメータを使用して1対1の通信を行うことを特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
前記セキュリティパラメータは、アドレス、リンクキー、暗号キーを含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載の無線通信方法。
【請求項3】
前記メモリは、書き替え可能な外付けのROMであることを特徴とする請求項1または2記載の無線通信方法。
【請求項4】
前記マスタモジュールとスレーブモジュールとがブルートゥースモジュールであり、前記無線ネットワークがブルートゥースネットワークであることを特徴とする請求項1、2または3記載の無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−245769(P2006−245769A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55862(P2005−55862)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】