説明

無線通信端末、これを用いた上りリンク情報予測方法および上りリンク情報予測プログラム

【課題】基地局への接続なしに上り方向の通信品質を推定可能にし、品質推定に要する基地局および端末への負荷を低減できる無線通信端末、これを用いた上りリンク情報予測方法および上りリンク情報予測プログラムを提供する。
【解決手段】複数の無線通信方式を利用できる無線通信端末100であって、他端末200における情報を含め、過去の周辺環境情報および過去の周辺環境情報に対する上りリンク情報を蓄積する履歴データベース110と、蓄積された周辺環境情報を参照し、各無線通信方式に対する自機における現在の上りリンク情報を予測する上りリンク情報予測部150とを備える。これにより、無線アクセスインフラ300と接続を確立することなく上りリンク情報を予測できる。その結果、上り方向の品質推定に要する無線アクセスインフラ300および無線通信端末100への負荷の増大を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線通信方式を利用できる無線通信端末、これを用いた上りリンク情報予測方法および上りリンク情報予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の無線通信方式を利用できるマルチモード端末が開発されている。このようなマルチモード端末は、あらかじめ利用可能な無線方式の通信品質を測定または推定し、有利な無線方式を選択する。すなわち、あらかじめ各方式での上り方向(マルチモードセンサ端末→無線基地局方向)での性能を把握することで、無線通信方式を適切に選択する。
【0003】
例えば、特許文献1記載の無線通信装置は、時々刻々と変化する通信リンクの品質を評価し、最適な通信方式および伝送モードを選択して伝送容量と通信信頼性の向上を両立させようとしている。そして、通信品質情報として受信CNR(搬送波電力対雑音電力比)の推定値を用いている。受信CNRの推定は、受信結果として得られた信号点ベクトルの平均信号点ベクトルの電力値と平均信号点ベクトルを基準とした各ベクトルの分散値との比により算出している。あるいは、最尤系列推定や最尤復号が行われる方式で、その際のメトリック値から等価的な受信CNR値を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−147956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的に、受信CNRより推定可能な通信品質は下り方向の通信品質にすぎず、端末側から送信する上り方向の通信品質とは一致しない。また、端末側で上り方向の通信品質を把握するために、複数の無線方式についてマルチモードセンサ端末が実際に基地局に接続すれば、基地局への負荷およびマルチモードセンサ端末への負荷が膨大になりうる。特にマルチモードセンサ端末が多数配置された場合や利用可能な無線方式数が増大した場合に、その影響が著しい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、基地局への接続なしに上り方向の通信品質を推定可能にし、品質推定に要する基地局および端末への負荷を低減できる無線通信端末、これを用いた上りリンク情報予測方法および上りリンク情報予測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の無線通信端末は、複数の無線通信方式を利用できる無線通信端末であって、他端末における情報を含め、過去の周辺環境情報および前記過去の周辺環境情報に対する上りリンク情報を蓄積する履歴データベースと、前記蓄積された周辺環境情報を参照し、各無線通信方式に対する自機における現在の上りリンク情報を予測する上りリンク情報予測部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
このように、蓄積された周辺環境情報を参照して上りリンク情報を予測するため、無線アクセスインフラと接続を確立することなく上りリンク情報を予測できる。その結果、上り方向の品質推定に要する無線アクセスインフラおよび無線通信端末への負荷の増大を防止できる。
【0009】
(2)また、本発明の無線通信端末は、前記上りリンク情報予測部が、前記蓄積された周辺環境情報と自機における現在の周辺環境情報とを比較し、比較結果に基づいて各無線通信方式に対する上りリンク情報を予測することを特徴としている。これにより、周辺環境情報が類似する情報を用いて、上りリンク情報を予測でき、予測の精度を高めることができる。
【0010】
(3)また、本発明の無線通信端末は、前記履歴データベースが、前記周辺環境情報として少なくとも下りリンク情報を蓄積し、前記上りリンク情報予測部は、前記蓄積された下りリンク情報と自機における現在の下りリンク情報とを比較することを特徴としている。これにより、無線アクセスインフラと接続を確立することなく、下りリンク情報に基づいて上りリンク情報を予測できる。
【0011】
(4)また、本発明の無線通信端末は、マルチホップネットワークを用いて他端末から前記履歴データベースに蓄積する周辺環境情報を収集する情報収集部を更に備えることを特徴としている。これにより、無線アクセスインフラと接続することなく、マルチホップネットワークを利用して上りリンク情報を予測することができる。
【0012】
(5)また、本発明の無線通信端末は、前記上りリンク情報予測部が、前記周辺環境情報として時刻情報または位置情報を比較することを特徴としている。たとえば、周辺環境情報を取得した時刻が近いときには、その周辺環境情報は現在の自機と似た状況の情報と予測できる。また、曜日が同じか否か、時間帯が同じか否かでも状況が近いか否かを判断することができる。また、過去の周辺環境情報の位置情報を比較し、現在の自機の近い位置の情報か否かを判断することもできる。
【0013】
(6)また、本発明の無線通信端末は、前記情報収集部が、前記蓄積された周辺環境情報が質または量において所定の基準を満たすか否かを判定し、前記所定の基準を満たさないと判定されたときには、新たに周辺環境情報を収集することを特徴としている。これにより、十分な情報に基づいて各無線通信方式の上りリンク情報を正確に予測できる。
【0014】
(7)また、本発明の無線通信端末は、前記予測された上りリンク情報に基づいて無線通信方式を選択する無線通信方式選択部を更に備えることを特徴としている。これにより、予測された上りリンク情報に基づいて、自機に最適な無線通信方式を選択することができる。
【0015】
(8)また、本発明の上りリンク情報予測方法は、複数の無線通信方式を利用できる無線通信端末を用いた上りリンク情報予測方法であって、他端末における情報を含め、過去の周辺環境情報および前記過去の周辺環境情報に対する上りリンク情報を蓄積するステップと、前記蓄積された周辺環境情報を参照し、各無線通信方式に対する自機における現在の上りリンク情報を予測するステップと、を含むことを特徴としている。
【0016】
これにより、無線通信端末と無線アクセスインフラと接続を確立せずに上り方向の通信品質を推定できる。その結果、品質推定に要する無線アクセスインフラおよび無線通信端末への負荷の増大を防止できる。
【0017】
(9)また、本発明の上りリンク情報予測プログラムは、複数の無線通信方式を利用できる無線通信端末に実行させる上りリンク情報予測プログラムであって、他端末における情報を含め、過去の周辺環境情報および前記過去の周辺環境情報に対する上りリンク情報を蓄積する処理と、前記蓄積された周辺環境情報を参照し、各無線通信方式に対する自機における現在の上りリンク情報を予測する処理と、を含むことを特徴としている。
【0018】
これにより、無線通信端末と無線アクセスインフラと接続を確立せずに上り方向の通信品質を推定できる。その結果、品質推定に要する無線アクセスインフラおよび無線通信端末への負荷の増大を防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、無線アクセスインフラに接続すること無しに上り方向の通信品質を推定することが可能となり、品質推定にあたって無線アクセスインフラおよび端末への負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】マルチモードセンサネットワークを構成する無線通信システムの一例を示す図である。
【図2】無線通信システムの概念図である。
【図3】無線通信端末の機能ブロック図である。
【図4】無線通信端末の動作を示すフローチャートである。
【図5】履歴データベースに記録されているデータの例を示すテーブルである。
【図6】状況類似性確認の処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】周辺環境情報の例を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
(無線通信システム)
図1は、マルチモードセンサネットワークを構成する無線通信システム10の一例を示す図、図2は、無線通信システム10の概念図である。無線通信システム10は、無線通信端末100、その他のマルチモードセンサ端末200、無線アクセスインフラ300およびセンシングデータ管理サーバ群400を含んでいる。無線通信端末100は、マルチモードセンサ端末である。
【0023】
無線通信端末100は、フィールドに展開されたCDMA2000 1xEV-DO,W-CDMA,WiMAX,LTE等の方式による複数種類の無線アクセスインフラ300を利用でき、WiFi,ZigBee等の方式によりマルチモードセンサ端末200との間で通信できる。無線通信端末100によりセンシングされたデータは、他のマルチモードセンサネットワークのいずれかの回線を用いてセンシングデータ管理サーバ群400に伝送される。センシングデータには周辺環境情報が含まれる。また、無線通信端末100はバッテリ駆動であり、設置の柔軟性を確保できる。センシングデータ管理サーバ群400は、マルチモードセンサ端末200から周辺環境情報を収集し、管理する。
【0024】
(無線通信端末)
図3は、無線通信端末100の機能ブロック図である。無線通信端末100は、マルチホップ通信可能で、複数の無線通信方式を利用できる。無線通信方式とは、CDMA2000 1xEV-DO,W-CDMA,WiMAX,LTE等の無線アクセスインフラまたは他端末との間で用いられる通信方式である。無線通信端末100は、履歴データベース110、情報収集部120、自機情報監視部140、上りリンク情報予測部150、無線通信方式選択部160および無線通信部170を備えている。
【0025】
履歴データベース110は、複数の無線通信方式それぞれについて周辺環境情報を蓄積する。具体的には、マルチホップ通信可能な他のマルチモードセンサ端末との通信により得られた周辺環境情報の履歴を蓄積している。周辺環境情報とは、各無線通信方式についての下りリンク情報、時刻情報、位置情報、移動速度等である。下りリンク情報とは、下り方向の通信品質情報、減衰量等、下り方向通信の受信し易さを示す情報である。なお、時刻情報をもとに取得時から一定期間経過した情報は消去する設定としてもよい。
【0026】
情報収集部120は、履歴データベース110に蓄積するための周辺環境情報を外部から収集する。マルチホップネットワークにより他のマルチモードセンサ端末200から周辺環境情報を収集することが好ましいが、センシングデータ管理サーバ群400から情報を収集してもよい。このようにして、基地局等の無線アクセスインフラ300と接続することなく、必要な情報を収集できる。
【0027】
情報収集部120は、履歴データベース110を確認し、蓄積された周辺環境情報が質または量において所定の基準を満たすか否かを判定する。たとえば、蓄積された情報の取得日時が所定期間以前であるか否か(情報の質)や、各状況で取得した情報の数が所定数以上であるか否かや無線通信方式数分のデータがあるか否か(情報の量)を判定する。上記の所定の判断基準は、類似する状況の周辺環境情報を参照できる期間または数として設定しておくことが好ましい。
【0028】
情報収集部120は、蓄積された周辺環境情報が質または量において所定の基準を満たさないと判定したときに、マルチホップネットワークを用いて新たに周辺環境情報を収集する。そのような場合には、無線通信端末100は、その周囲に存在するマルチモードセンサ端末200から周辺環境情報を収集する。センシングデータ管理サーバ群400から周辺環境情報を収集してもよい。
【0029】
自機情報監視部140は、自機の周辺環境情報を監視する。自機の周辺環境情報には、バッテリ情報、MIMOアンテナの構成の情報等のハードウェア情報や現在の下り方向の信号の減衰量の情報、現在の時刻情報、自機位置情報等が含まれる。
【0030】
上りリンク情報予測部150は、蓄積された周辺環境情報を参照し、複数の無線通信方式それぞれについて上りリンク情報を予測する。上りリンク情報とは、上り方向の伝送レートや送信電力等の上り方向の通信に特有の情報である。上りリンク情報予測部150は、履歴データベース110に蓄積された周辺環境情報と自機の周辺環境情報とを比較し、比較結果に基づいて複数の無線通信方式それぞれについて上りリンク情報を予測する。その際には、自機の周辺環境情報に近い周辺環境情報を用いる。特に下りリンク情報の比較が重要である。
【0031】
下りリンク情報を検知した時刻を比較することも有効である。たとえば、周辺環境情報を取得した時刻が近いときには、似たような状況と予測できる。また、曜日が同じか否か、時間帯が同じか否かでも状況が近いか否かを判断することができる。なお、周辺環境情報の各項目について重み付けして比較することが好ましい。これにより、上りリンク情報への影響が大きい重要な項目に重み付けして状況の類似性を比較することができ、予測精度を高めることができる。比較の際には、例えば基準値から所定範囲内に入っているかにより類似性を判断することができる。
【0032】
このようにして、上りリンク情報予測部150は、複数の無線通信方式の周辺環境情報を比較して、各無線通信方式の上りリンク情報を予測する。その際には、類似する周辺環境情報が得られたときの上りリンク情報が、自機がそのときの無線通信方式で接続したときの上りリンク情報に近いと予測できる。上りリンク情報は、上り方向の伝送レートおよび送信電力の少なくとも一方を指す。上りリンク情報は、他端末で得られた情報をそのまま用いてもよいし、自機の状況に合わせて他端末で得られた情報を補正して用いてもよい。なお、予測の際には平均化処理等の統計処理をした値を伝送レートの期待値とみなして採用することもできる。統計処理には、加算平均、中央値等の利用が含まれる。
【0033】
このように、蓄積された周辺環境情報を参照して上りリンク情報を予測するため、無線アクセスインフラと接続を確立することなく上りリンク情報を予測できる。その結果、品質推定にあたり無線アクセスインフラ300および無線通信端末100への負荷の増大を防止できる。
【0034】
無線通信方式選択部160は、予測された上りリンク情報に基づいて無線通信方式を選択する。たとえば、無線通信方式毎の伝送レートおよび送信電力を参照して、自機の残電力に応じて伝送レートの大きい無線通信方式や送信電力が小さい無線通信方式を選択することができる。自機の残電力が小さい場合には、送信電力が小さいことを重視して無線通信方式を選べるし、自機の残電力が十分に大きい場合には、伝送レートを重視して無線通信方式を選べる。このように、無線通信方式選択部160は、適切な無線方式を適宜選択する。
【0035】
無線通信部170は、CDMA2000 1xEV-DO,W-CDMA,WiMAX,LTE等の複数の無線通信方式による無線通信接続を可能にする。無線通信部170により、他のマルチモード端末200または無線アクセスインフラ300との通信が可能になる。以上のように、無線通信端末100は、周辺のマルチモードセンサ端末等のこれまでの履歴を利用し、似通った環境下で得られた伝送速度をこれから得られる上り方向の伝送品質の情報として利用する。
【0036】
(無線通信端末の動作)
図4は、無線通信端末の動作を示すフローチャートである。無線通信端末100は、センシングデータの送信要求が発生すると(ステップS1)、全通信方式について上りリンク情報の推定を開始する(ステップS2)。
【0037】
無線通信端末100は、上りリンク情報の推定のため、まず履歴データベース110の検索を行う(ステップS3)。履歴データベース110には各無線通信方式に関して過去に得られた上り方向の伝送速度が、そのときの周辺環境情報と共に記録されている。履歴データベース110は、あらかじめ周辺のマルチモードセンサ端末200またはセンシングデータ管理サーバ群400との情報交換により形成される。なお、自機の過去の周辺環境情報を記録しておいてもよい。
【0038】
無線通信端末100は、まず履歴データベース110に記録されているデータの質および量が所定の基準を満たしているか否かを確認する(ステップS4)。履歴データベース110に記録されているデータの質または量が所定の基準を満たしていないと判断した場合には改めて周辺のマルチモードセンサ端末200に要求パケットをブロードキャストし、情報収集を行う(ステップS5)。そして、ステップS6に進む。
【0039】
一方、履歴データベース110に記録されているデータの質または量が所定の基準を満たしていると判断した場合には、そのままステップS6に進む。そして、履歴データベース110に記録されているデータに基づいて上りリンク情報(上り方向について得られる伝送レート等)を予測する(ステップS7)。このようにして、無線通信端末100は履歴データベース110を検索し、現在の状況と最も類似した環境において得られた上りリンク情報を算出し、記録する。これを全通信方式について繰り返し(ステップS8)、方式間で比較し、最終的に利用する無線通信方式を選択する(ステップS9)。そして、センシングデータを送信して(ステップS10)、終了する。なお、以上の動作は、無線通信端末にプログラムを実行させることで行なわれる。
【0040】
(実施例)
次に、実施例を挙げて無線通信端末100の具体的な動作を説明する。
【実施例1】
【0041】
現在の状況と履歴データベースに記載の状況の類似性を確認するためのパラメータとして無線基地局から送信される信号の減衰量がある。基地局からの減衰量の類似は基地局と移動機との間の環境の類似を意味するため、減衰量の最も近い結果を評価値として用いることができる。
【0042】
図5は、履歴データベースに記録されているデータの例を示すテーブルである。図5に示す例では、基地局からの減衰量を検索キーとしている。したがって、無線通信端末100での減衰量が150[dB]と測定された場合、テーブル中145[dB]の減衰量であったケースが最も類似していると判断する。そして、当該システムにアクセスした場合には、過去の履歴である2,600[kbps]の伝送レートが得られるものとみなす。同じ減衰量のデータが複数存在した場合には平均化処理などした値を伝送レートの期待値とみなして採用する。ここでの統計処理には加算平均、中央値の採用などが考えられるが、適宜最適な統計処理を採用すればよい。なお、検索キーとした減衰量の算出についても同様であり、時間方向での平均値や最大値、最小値、中央値などの様々な統計処理を施した値を用いることが可能である。
【実施例2】
【0043】
現在の状況と履歴データベースに記載の状況の類似性を確認するためのパラメータとして履歴データベースに登録された時刻情報がある。上り伝送レートは同時接続ユーザ数などにも大きく依存するため、より近い時間帯のデータであれば、同時接続ユーザ数も類似している可能性が高く、より近い状況である可能性が高い。その他、一般的にトラヒック量は曜日や時刻などへの依存性があることが多いため、同じ曜日および時刻におけるデータを類似した状況として認識することも可能である。
【0044】
図6は、状況類似性確認の処理の一例を示すフローチャートである。図6に示すように、まず、時刻による検索、類似性確認を行う(ステップT1)。次に、減衰量による検索、類似性確認を行う(ステップT2)。これらの処理により得られた類似性をもとに類似性の高いデータを決定し、得られる伝送レートを決定する。
【0045】
図7は、周辺環境情報の例を示すテーブルである。図7に示す例を用いて上記の類似性確認および伝送レート決定処理を行った場合の一例を説明する。まず、現在時刻から閾値Tだけ遡ったデータ以降を最新データとして参照する。時刻が2010-12-28 20:25:10、Tが1[h]とすると、履歴データベース内では「2010-12-28 19:45:10」のデータおよび「2010-12-28 19:12:30」のデータを最新のデータとして参照する。
【0046】
次に減衰量が138[dB]であったとし、本値と閾値L[dB]以内の範囲にある減衰量を類似していると見なす。この場合Lを5[dB]とすると、上記の2つの参照データの双方が類似するデータの候補となる。
【0047】
そして、例えば伝送レートから、当該方式を用いた場合に期待できる伝送レートを予測する。ここで得られた伝送レートの加算平均を採用しても良く、最大値または最小値、中央値を採用してもよい。
【0048】
さらに、同じ曜日のデータも参照対象とした場合には上記の伝送レートの予測処理において同じ曜日のデータの内、閾値T以内のデータを参照する。なお、実施例に記した項目以外にも、MIMOの利用可否なども状況の類似性判定には重要であり、これらの項目を図7に示したように履歴データベース110に登録し、条件が一致する場合を類似した環境と見なすことも可能である。
【0049】
このようにして、本発明は、無線アクセスインフラ300への負荷や消費電力を削減しつつも最適な無線通信方式を選択することが可能となる。その結果、多様な無線方式から最適な方式を選択可能な無線通信端末を実現できる。
【符号の説明】
【0050】
10 無線通信システム
100 無線通信端末
110 履歴データベース
120 情報収集部
140 自機情報監視部
150 上りリンク情報予測部
160 無線通信方式選択部
170 無線通信部
200 マルチモードセンサ端末
300 無線アクセスインフラ
400 センシングデータ管理サーバ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信方式を利用できる無線通信端末であって、
他端末における情報を含め、過去の周辺環境情報および前記過去の周辺環境情報に対する上りリンク情報を蓄積する履歴データベースと、
前記蓄積された周辺環境情報を参照し、各無線通信方式に対する自機における現在の上りリンク情報を予測する上りリンク情報予測部と、を備えることを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
前記上りリンク情報予測部は、前記蓄積された周辺環境情報と自機における現在の周辺環境情報とを比較し、比較結果に基づいて各無線通信方式に対する上りリンク情報を予測することを特徴とする請求項1記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記履歴データベースは、前記周辺環境情報として少なくとも下りリンク情報を蓄積し、
前記上りリンク情報予測部は、前記蓄積された下りリンク情報と自機における現在の下りリンク情報とを比較することを特徴とする請求項2記載の無線通信端末。
【請求項4】
マルチホップネットワークを用いて他端末から前記履歴データベースに蓄積する周辺環境情報を収集する情報収集部を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記上りリンク情報予測部は、前記周辺環境情報として時刻情報または位置情報を比較することを特徴とする請求項2記載の無線通信端末。
【請求項6】
前記情報収集部は、前記蓄積された周辺環境情報が質または量において所定の基準を満たすか否かを判定し、前記所定の基準を満たさないと判定されたときには、新たに周辺環境情報を収集することを特徴とする請求項4記載の無線通信端末。
【請求項7】
前記予測された上りリンク情報に基づいて無線通信方式を選択する無線通信方式選択部を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の無線通信端末。
【請求項8】
複数の無線通信方式を利用できる無線通信端末を用いた上りリンク情報予測方法であって、
他端末における情報を含め、過去の周辺環境情報および前記過去の周辺環境情報に対する上りリンク情報を蓄積するステップと、
前記蓄積された周辺環境情報を参照し、各無線通信方式に対する自機における現在の上りリンク情報を予測するステップと、を含むことを特徴とする上りリンク情報予測方法。
【請求項9】
複数の無線通信方式を利用できる無線通信端末に実行させる上りリンク情報予測プログラムであって、
他端末における情報を含め、過去の周辺環境情報および前記過去の周辺環境情報に対する上りリンク情報を蓄積する処理と、
前記蓄積された周辺環境情報を参照し、各無線通信方式に対する自機における現在の上りリンク情報を予測する処理と、を含むことを特徴とする上りリンク情報予測プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−160900(P2012−160900A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19086(P2011−19086)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】