説明

無線通信装置、無線通信方法およびプログラム

【課題】無線通信装置、無線通信方法およびプログラムを提供すること。
【解決手段】段階的に送信電力を高めて無線信号を送信する送信部と、前記送信部から送信された無線信号に対する応答信号が第1の無線通信装置から受信されるようになると、当該無線信号の到達範囲と前回の無線信号の到達範囲との差分である自装置を中心とする中空円型の第1の範囲に前記第1の無線通信装置が存在すると推定する推定部と、を備える、無線通信装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近日、無線通信装置の位置推定が広く普及している。例えば、無線通信装置は、基地局から定期的に送信されるビーコンの受信強度、およびビーコンに含まれる基地局の位置情報を利用し、三角測位に基づいて自装置の位置を推定する方法が知られている。なお、当該方法では、無線通信装置が少なくとも3つ以上の基地局からビーコンを受信する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の位置推定方法では、基地局の位置情報を基地局自身が把握しており、基地局が当該位置情報を含むビーコンを送信する必要があった。
【0004】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、位置情報を含まない無線信号を利用して位置推定を行なうことが可能な、新規かつ改良された無線通信装置、無線通信方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、段階的に送信電力を高めて無線信号を送信する送信部と、前記送信部から送信された無線信号に対する応答信号が第1の無線通信装置から受信されるようになると、当該無線信号の到達範囲と前回の無線信号の到達範囲との差分である自装置を中心とする中空円型の第1の範囲に前記第1の無線通信装置が存在すると推定する推定部と、を備える無線通信装置が提供される。
【0006】
前記送信部は、前記推定部により推定された第1の範囲を示す範囲情報と前記第1の無線通信装置を示す識別情報を対応付けて送信してもよい。
【0007】
前記送信部は、前記推定部により推定された範囲情報および識別情報に加え、他の無線通信装置から受信済みの範囲情報および識別情報を前記他の無線通信装置と対応付けて送信してもよい。
【0008】
前記推定部は、前記第1の無線通信装置の識別情報と対応付けられている第2の範囲情報が第2の無線通信装置から受信される、第3の範囲情報が第3の無線通信装置から受信されると、前記第3の範囲情報の示す中空円型の第3の範囲、前記第2の範囲情報の示す中空円型の第2の範囲、および前記第1の範囲が重複するように各々を配置した場合の各範囲の中心に、対応する無線通信装置が存在すると推定してもよい。
【0009】
前記推定部は、自装置、前記第2の無線通信装置、および前記第3の無線通信装置のうちで少なくとも2以上の装置の絶対的な位置情報が既知である場合、前記2以上の装置の絶対的な位置情報に基づいて前記2以上の装置以外の無線通信装置の絶対的な存在位置を推定してもよい。
【0010】
前記推定部は、第1の無線通信装置の絶対的な位置情報が既知である場合、当該位置情報の示す位置付近の地図と、推定した自装置、前記第2の無線通信装置、および前記第3の無線通信装置の位置関係をマッチングすることにより、自装置、前記第2の無線通信装置、および前記第3の無線通信装置の絶対的な存在位置を推定してもよい。
【0011】
前記推定部は、周波数と距離減衰の関係式に前記応答信号の周波数を代入することにより前記第1の範囲を推定してもよい。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、段階的に送信電力を高めて無線信号を送信するステップと、送信した無線信号に対する応答信号が第1の無線通信装置から受信されるようになると、当該無線信号の到達範囲と前回の無線信号の到達範囲との差分である自装置を中心とする中空円型の第1の範囲に前記第1の無線通信装置が存在すると推定するステップと、を含む無線通信方法が提供される。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、段階的に送信電力を高めて無線信号を送信する送信部と、前記送信部から送信された無線信号に対する応答信号が第1の無線通信装置から受信されるようになると、当該無線信号の到達範囲と前回の無線信号の到達範囲との差分である自装置を中心とする中空円型の第1の範囲に前記第1の無線通信装置が存在すると推定する推定部と、として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明にかかる無線通信装置、無線通信方法およびプログラムによれば、位置情報を含まない無線信号を利用して位置推定を行なうことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
また、以下に示す項目順序に従って当該「発明を実施するための最良の形態」を説明する。
1.本実施形態の無線通信システム1の構成
2.無線通信装置の基本機能
3.応用例
4.まとめ、および補足
【0017】
<1.本実施形態の全体構成>
まず、図1を参照し、本実施形態にかかる無線通信システム1の構成を説明する。
【0018】
図1は、本実施形態にかかる無線通信システム1の構成を示した説明図である。図1に示したように、本実施形態にかかる無線通信システム1は、複数の無線通信装置20A〜20Dを含む。また、図1においては、無線通信装置20Aの電波到達範囲22A、無線通信装置20Bの電波到達範囲22B、および無線通信装置20Cの電波到達範囲22Cの重複範囲に無線通信装置20Dが存在している。
【0019】
なお、本明細書においては、実質的に同一機能を有する複数の構成の各々は、同一符号の後に異なるアルファベットを付することで区別する。しかし、同一機能を有する複数の構成の各々を特に区別する必要が無い場合、同一符号のみを付する。例えば、無線通信装置20Aおよび20Bを特に区別する必要が無い場合、単に無線通信装置20と総称する。
【0020】
各無線通信装置20は、電波到達範囲22内に存在する無線通信装置20と無線通信を行うことができる。このような無線通信装置20は、例えば、PC(Personal Computer)、家庭用映像処理装置(DVDレコーダ、ビデオデッキなど)、PDA(Personal Digital Assistants)、家庭用ゲーム機器、家電機器などの情報処理装置であってもよい。また、無線通信装置20は、携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)、携帯用音楽再生装置、携帯用映像処理装置、携帯用ゲーム機器などの情報処理装置であってもよい。さらに、無線通信装置20は、無線LAN(Local Area Network)などの基地局であってもよい。
【0021】
また、無線通信装置20は任意の通信プロトコルに従って無線通信を行う。任意の通信プロトコルとしては、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.11a、b、g、n、sなどに規定される通信プロトコルがあげられる。また、任意の通信プロトコルとしては、IEEE802.16に規定されるWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)やIEEE802.22に規定される通信プロトコルがあげられる。
【0022】
以下、このような本実施形態の説明に先立ち、本実施形態に関連する位置推定方法について図2を参照して説明する。
【0023】
図2は、本実施形態に関連する無線通信システムの構成を示した説明図である。図2に示したように、本実施形態に関連する無線通信システムは、複数の無線通信装置20’A〜20’Cを含む。また、各無線通信装置20’は、自装置の位置情報を把握しており、定期的に当該位置情報を含むビーコンを送信する。
【0024】
また、図2では、無線通信装置20’Aの電波到達範囲22’A、無線通信装置20’Bの電波到達範囲22’B、および無線通信装置20’Cの電波到達範囲22’Cの重複範囲を斜線で示している。この重複範囲内に存在する無線通信装置20は、3の無線通信装置20’A〜20’Cからビーコンを受信し、当該ビーコンに含まれる位置情報、およびビーコンの受信強度を利用し、三角測位に基づいて自装置の位置を推定することができる。
【0025】
しかし、本実施形態に関連する位置推定方法では、無線通信装置20’が自装置の位置情報を把握しており、かつ自装置の位置情報を含むビーコンを送信する必要があった。
【0026】
そこで、上記事情を一着眼点にして本実施形態にかかる無線通信装置20を創作するに至った。本実施形態にかかる無線通信装置20は、送信電力を段階的に増加させてビーコン(無線信号)を送信することにより、周囲の無線通信装置との位置関係を推定することができる。以下、このような無線通信装置20について図3〜図10を参照して詳細に説明する。
【0027】
<2.無線通信装置の基本機能>
図3は、無線通信装置20のハードウェア構成を示したブロック図である。無線通信装置20は、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203と、ホストバス204と、を備える。また、無線通信装置20は、ブリッジ205と、外部バス206と、インタフェース207と、入力装置208と、出力装置210と、ストレージ装置(HDD)211と、ドライブ212と、通信装置215とを備える。
【0028】
CPU201は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って無線通信装置20内の動作全般を制御する。また、CPU201は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM202は、CPU201が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM203は、CPU201の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。これらはCPUバスなどから構成されるホストバス204により相互に接続されている。
【0029】
ホストバス204は、ブリッジ205を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス206に接続されている。なお、必ずしもホストバス204、ブリッジ205および外部バス206を分離構成する必要はなく、一のバスにこれらの機能を実装してもよい。
【0030】
入力装置208は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイク、スイッチおよびレバーなどユーザが情報を入力するための入力手段と、ユーザによる入力に基づいて入力信号を生成し、CPU201に出力する入力制御回路などから構成されている。無線通信装置20のユーザは、該入力装置208を操作することにより、無線通信装置20に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0031】
出力装置210は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置およびランプなどの表示装置を含む。さらに、出力装置210は、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置を含む。出力装置210は、例えば、再生されたコンテンツを出力する。具体的には、表示装置は再生された映像データ等の各種情報をテキストまたはイメージで表示する。一方、音声出力装置は、再生された音声データ等を音声に変換して出力する。
【0032】
ストレージ装置211は、本実施形態にかかる無線通信装置20の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置211は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置などを含んでもよい。このストレージ装置211は、ハードディスクを駆動し、CPU201が実行するプログラムや各種データを格納する。
【0033】
ドライブ212は、記憶媒体用リーダライタであり、無線通信装置20に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ212は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体24に記録されている情報を読み出して、RAM203に出力する。
【0034】
通信装置215は、例えば、他の無線通信装置20と無線通信するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。この通信装置215は、他の無線通信装置20との間で、ビーコンやビーコンに対する応答信号などを送受信する。
【0035】
図4は、本実施形態にかかる無線通信装置20の構成を示した機能ブロック図である。図4に示したように、本実施形態にかかる無線通信装置20は、通信部216と、送信電力制御部220と、推定部224と、ビーコン生成部228と、ビーコン解析部232と、を備える。
【0036】
通信部216は、他の無線通信装置20D(図4においては一例として無線通信装置20Dを示しているに過ぎない。)とのインタフェースである。例えば、通信部216は、ビーコンなどの無線信号を送信する送信部、およびビーコンに対する応答信号を受信する受信部としての機能を有する。
【0037】
送信電力制御部220は、通信部216によるビーコンの送信電力を制御する。以下、図5を参照し、送信電力制御部220による送信電力の制御例を説明する。
【0038】
図5は、送信電力制御部220による送信電力の制御例を示した説明図である。図5に示したように、送信電力制御部220は、ビーコンの送信のたびに、ビーコンの送信電力を増加させる。そして、送信電力が最大電力になると、送信電力を最低電力に設定する。
【0039】
より詳細には、図5に示した例では、ビーコンがレベル1、レベル2、レベル3、レベル1・・・という順序の送信電力で送信される。
【0040】
推定部224は、通信部216から送信されたビーコンに対する応答信号(例えば、ACK)に基づいて、当該応答信号の送信元装置の存在位置を推定する。例えば、推定部224は、ビーコンに対する応答信号が無線通信装置20Dから受信されるようになると、当該ビーコンの到達範囲と前回のビーコンの到達範囲との差分である自装置を中心とする中空円型の範囲に無線通信装置20Dが存在すると推定する。以下、図6を参照してより具体的に説明する。
【0041】
図6は、無線通信装置20Aと無線通信装置20Dの位置関係を示した説明図である。また、図6においては、ビーコンの送信電力レベル1での到達範囲A−1および送信電力レベル2での到達範囲A−2を各々円形で示している。
【0042】
ここで、無線通信装置20Dは、送信電力レベル1で送信されたビーコンを受信できないため、送信電力レベル1で送信されたビーコンに対する応答信号を送信しない。このため、無線通信装置10Aは、送信電力レベル1で送信したビーコンに対する無線通信装置20Dからの応答信号を受信できない。
【0043】
一方、ビーコンが送信電力レベル2で送信されるようになると、無線通信装置20Dが当該ビーコンを受信できるため、当該ビーコンに対する応答信号を送信する。このため、無線通信装置10Aは、送信電力レベル2で送信したビーコンに対する無線通信装置20Dからの応答信号を受信できる。
【0044】
したがって、推定部224は、ビーコンの送信電力レベル1での到達範囲A−1より外側であり、かつ、送信電力レベル2での到達範囲A−2より内側である中空円型の範囲24Aに無線通信装置20Dが存在すると推定することができる。なお、範囲24Aは、ビーコンの送信電力レベル1での到達範囲A−1および送信電力レベル2での到達範囲A−2の差分に該当する。
【0045】
なお、ビーコンの到達範囲A−1およびA−2などは、ビーコンの受信強度が所定値を上回ることが想定される範囲であってもよい。当該範囲は、例えば、以下に示す周波数と距離減衰の関係式により特定可能である。
[参考]協立出版、パーソナルインテリジェンス、服部武他
【0046】
【数1】

【0047】
ビーコン生成部228は、推定部224により推定された範囲24Aを示す範囲情報、および無線通信装置20Dの識別情報を含むビーコンを生成し、通信部216が当該ビーコンを送信する。
【0048】
なお、範囲情報は、中空円型の範囲24Aの外側半径および内側半径を示す情報を含んでも、中心半径および範囲幅を示す情報を含んでもよい。または、範囲情報は、応答信号を受信できなかった送信電力および応答信号を受信できるようになった送信電力を含んでもよい。また、識別情報としては、例えば、装置IDやネットワークアドレスがあげられる。
【0049】
また、推定部224により推定された範囲情報は、不揮発性メモリ、磁気ディスク、光ディスク、およびMO(Magneto Optical)ディスクなどの記憶媒体に記録されてもよい。不揮発性メモリとしては、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)があげられる。また、磁気ディスクとしては、ハードディスクおよび円盤型磁性体ディスクなどがあげられる。また、光ディスクとしては、CD(Compact Disc、DVD−R(Digital Versatile Disc Recordable)およびBD(Blu−Ray Disc(登録商標))などがあげられる。
【0050】
続いて、図7を参照し、本実施形態にかかる無線通信装置20の動作の流れをまとめる。
【0051】
図7は、本実施形態にかかる無線通信装置20の動作の流れを示したフローチャートである。まず、図7に示したように、無線通信装置20の通信部216は、所定期間にわたって受信動作を行なうことにより、周囲で送信されているビーコンを観測する(S304)。
【0052】
そして、送信電力制御部220は、自装置が利用可能なビーコン送信スロットがある場合(S308)、ビーコンの送信電力を例えば最低電力に設定する(S312)。
【0053】
続いて、自装置の位置情報が既知である場合(S316)、ビーコン生成部228が自装置の位置情報を含むビーコンを生成し、通信部216が当該ビーコンを送信する(S324)。一方、自装置の位置情報が既知でない場合(S316)、通信部216が自装置の位置情報を含まないビーコンを送信する(S320)。
【0054】
その後、前回のビーコン(今回より送信電力が低い)に対する応答信号が受信されなかった無線通信装置20から応答信号が受信された場合、推定部224は、ビーコンの送信電力に基づいて当該無線通信装置20の存在する範囲を推定する(S328、S332)。
【0055】
そして、応答信号の受信待ち時間が終了すると(S336)、送信電力制御部220がビーコンの送信電力を増加させる(S340)。なお、送信電力制御部220は、送信電力が既に最大電力であった場合、送信電力を最低電力に設定してもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態にかかる無線通信装置20は、ビーコンの送信電力を段階的に増加させることにより、他の無線通信装置20の存在する範囲を推定することができる。以下、当該機能の応用例を図8〜図10を参照して説明する。
【0057】
<3.応用例>
各無線通信装置20のビーコン生成部228は、推定部224により推定された自装置の周辺装置のリスト(識別情報および範囲情報)に加え、他の無線通信装置20から受信済みのリストを含むビーコンを生成し、通信部216から送信させる。すなわち、各無線通信装置20は、自装置の周辺装置のリストに、他の無線通信装置20の周辺装置のリストをマージして送信する。なお、各リストには、当該リストがいずれの無線通信装置20の周辺装置のリストであるかを示す情報も記載される。
【0058】
そして、無線通信装置20は、他の無線通信装置20の周辺装置のリストを受信すると、当該リストおよび自装置の周辺装置のリストの双方に含まれる識別情報を抽出し、抽出された識別情報を有する無線通信装置20の位置を推定する。
【0059】
例えば、無線通信装置20Aのビーコン解析部232が、図6に示した状態において、無線通信装置20Bの周辺装置のリストに、自装置のリストと共通する無線通信装置20Dの識別情報が含まれていることを把握した場合を考える。
【0060】
図8は、推定部224により推定される複数の無線通信装置20の位置関係を示した説明図である。図8に示したように、無線通信装置20Bは無線通信装置20Aの通信範囲外であるので、無線通信装置20Aの推定部224は、自身が推定した範囲24Aおよび無線通信装置20Bから取得された無線通信装置20Dの範囲情報の示す範囲24Bを重ね合わせる。
【0061】
ここで、範囲24Aの外側半径をr1、範囲24Aの幅をΔ1、範囲24Bの外側半径をr2、とすると、推定部224は、無線通信装置20Bが無線通信装置20Aを中心とする半径(r1+r2―Δ1)の円周上付近に存在すると推定する。
【0062】
さらに、無線通信装置20Aのビーコン解析部232が、無線通信装置20Cからも無線通信装置20Dの範囲情報を含むビーコンが送信されていることを把握した場合を考える。
【0063】
この場合、無線通信装置20Aは、無線通信装置20Cから取得された範囲情報、無線通信装置20Bから取得された範囲情報、および自身が推定した範囲情報に基づき、無線通信装置20A〜無線通信装置20Cの位置関係を図9に示すように推定する。
【0064】
図9は、推定部224により推定される複数の無線通信装置20の位置関係を示した説明図である。図9に示したように、推定部224は、無線通信装置20Cから取得された範囲情報の示す中空円型の範囲24C、範囲24B、および範囲24Aが重複するように配置した場合の各範囲24A〜Cの中心に、無線通信装置20A〜20Cが存在すると推定する。
【0065】
また、推定部224は、範囲24C、範囲24B、および範囲24Aの重複範囲に無線通信装置20Dが存在すると推定する。
【0066】
このように、複数の無線通信装置20により送信される範囲情報を利用することにより、複数の無線通信装置20の相対的な位置関係を推定することが可能となる。さらに、多くの無線通信装置20により送信される範囲情報を利用することにより、推定精度の向上を図ることができる。
【0067】
また、各無線通信装置20は、ビーコンを送信する際、自らがGPS機能などにより位置情報を把握できる場合には、自装置の位置情報についてもビーコンに記載し、他の端末に送信してもよい。このGPSなどにより得られた位置情報については、基準の位置情報として利用することができる。また、周辺装置のリストは、予め決められたフォーマットで構成され、各無線通信装置20を基準にした、周辺装置との位置関係が記載される。
【0068】
このように任意の無線通信装置20が位置情報または方位を含むビーコンを送信していれば、例えばビーコンに含まれる任意の無線通信装置20の位置情報を基準にして、複数の無線通信装置20の絶対的な位置を推定することも可能である。
【0069】
また、1の無線通信装置の位置情報が既知である場合にも、地図情報を活用することにより、複数の無線通信装置20の絶対的な位置を推定することも可能である。以下、図10を参照して説明する。
【0070】
図10は、地図情報の活用例を示した説明図である。より詳細には、図10の左図が地図情報に基づいて展開される地図を示しており、当該地図上には三角形のビル、複数の住居、および三角形のビルを囲う道路が含まれている。
【0071】
ここで、無線通信装置20Dが三角形のビルの中に存在し、無線通信装置20Dが自装置の位置情報を把握しており、当該位置情報を送信している場合を考える。また、無線通信装置20A〜無線通信装置20Cが、図9に示した位置関係にあると推定されているとする。
【0072】
この場合、無線通信装置20Aの推定部224は、無線通信装置20A〜無線通信装置20Cを携帯するユーザが道路上に存在するという仮定に基づき、無線通信装置20A〜無線通信装置20Cが道路上に配置されるようなマッチングを行なう。
【0073】
その結果、図10の右図に示したように、無線通信装置20A〜無線通信装置20Cが推定された位置関係を維持したまま道路上に配置されると、推定部224は、無線通信装置20A〜無線通信装置20Cの絶対的な位置を推定することが可能である。
【0074】
<4.まとめ、および補足>
以上説明したように、本実施形態にかかる無線通信装置20は、ビーコンの送信電力を段階的に増加させることにより、他の無線通信装置20の存在する範囲を推定することができる。
【0075】
また、本実施形態にかかる無線通信装置20は、ある送信電力で送信されたビーコンの到達範囲を、ビーコンの送信周波数を考慮した関係式に基づいて推定することができる。したがって、無線通信装置20が利用する周波数を動的に変更した場合であっても精度を維持することが可能である。
【0076】
また、本実施形態にかかる無線通信装置20は、1または2以上の他の無線通信装置20から送信される任意の無線通信装置20の範囲情報に基づき、各無線通信装置20の相対的な位置関係(ネットワークトボロジー)を推定することができる。かかる位置関係は、例えばルーティングや利用する通信プロトコルの選択に活用することが可能である。
【0077】
また、本実施形態にかかる無線通信装置20は、各無線通信装置20の位置関係と地図情報を組み合わせて利用することにより、各無線通信装置20の絶対的な位置を推定することも可能である。また、本実施形態にかかる無線通信装置20は、少なくとも2の無線通信装置20の位置情報が既知である場合にも、各無線通信装置20の絶対的な位置を推定することが可能である。
【0078】
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0079】
例えば、図5には送信電力制御部220による送信電力の制御の一例を示したに過ぎず、本発明はかかる例に限定されない。変形例として、送信電力制御部220は、レベル1、レベル1、レベル2、レベル2、レベル3、レベル3、レベル1、レベル1・・・というように、複数のビーコンに同一の送信電力を設定してもよい。
【0080】
また、図5では、送信電力制御部220が送信電力を3段階で切替える例を説明したが。本発明はかかる例に限定されない。例えば、送信電力制御部220は、2段階、または4段階以上の多数の段階で送信電力を切替えてもよい。
【0081】
また、送信制御部220は、送信電力の最大値を、無線通信装置20の残電力に応じて設定してもよい。例えば、送信制御部220は、無線通信装置20の残電力が少ないほど、送信電力の最大値を小さな値に設定してもよい。
【0082】
同様に、送信制御部220は、送信電力の最小値を、無線通信装置20の残電力に応じて設定してもよい。例えば、無線通信装置20の残電力が多いほど、送信電力の最小値を大きな値に設定してもよい。
【0083】
また、本明細書の無線通信装置20の処理における各ステップは、必ずしもシーケンス図またはフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、無線通信装置20の処理における各ステップは、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)を含んでもよい。
【0084】
また、無線通信装置20に内蔵されるCPU201、ROM202およびRAM203などのハードウェアを、上述した無線通信装置20の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。
【0085】
また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。また、図4の機能ブロック図で示したそれぞれの機能ブロックをハードウェアで構成することで、一連の処理をハードウェアで実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本実施形態にかかる無線通信システムの構成を示した説明図である。
【図2】本実施形態に関連する無線通信システムの構成を示した説明図である。
【図3】無線通信装置のハードウェア構成を示したブロック図である。
【図4】本実施形態にかかる無線通信装置の構成を示した機能ブロック図である。
【図5】送信電力制御部による送信電力の制御例を示した説明図である。
【図6】複数の無線通信装置の位置関係を示した説明図である。
【図7】本実施形態にかかる無線通信装置の動作の流れを示したフローチャートである。
【図8】推定部により推定される複数の無線通信装置の位置関係を示した説明図である。
【図9】推定部により推定される複数の無線通信装置の位置関係を示した説明図である。
【図10】地図情報の活用例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0087】
20 無線通信装置
216 通信部
220 送信電力制御部
224 推定部
228 ビーコン生成部
232 ビーコン解析部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
段階的に送信電力を高めて無線信号を送信する送信部と;
前記送信部から送信された無線信号に対する応答信号が第1の無線通信装置から受信されるようになると、当該無線信号の到達範囲と前回の無線信号の到達範囲との差分である自装置を中心とする中空円型の第1の範囲に前記第1の無線通信装置が存在すると推定する推定部と;
を備える、無線通信装置。
【請求項2】
前記送信部は、前記推定部により推定された第1の範囲を示す範囲情報と前記第1の無線通信装置を示す識別情報を対応付けて送信する、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記送信部は、前記推定部により推定された範囲情報および識別情報に加え、他の無線通信装置から受信済みの範囲情報および識別情報を前記他の無線通信装置と対応付けて送信する、請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記推定部は、
前記第1の無線通信装置の識別情報と対応付けられている第2の範囲情報が第2の無線通信装置から受信され、第3の範囲情報が第3の無線通信装置から受信されると、
前記第3の範囲情報の示す中空円型の第3の範囲、前記第2の範囲情報の示す中空円型の第2の範囲、および前記第1の範囲が重複するように各々を配置した場合の各範囲の中心に、対応する無線通信装置が存在すると推定する、請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記推定部は、自装置、前記第2の無線通信装置、および前記第3の無線通信装置のうちで少なくとも2以上の装置の絶対的な位置情報が既知である場合、前記2以上の装置の絶対的な位置情報に基づいて前記2以上の装置以外の無線通信装置の絶対的な存在位置を推定する、請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記推定部は、第1の無線通信装置の絶対的な位置情報が既知である場合、当該位置情報の示す位置付近の地図と、推定した自装置、前記第2の無線通信装置、および前記第3の無線通信装置の位置関係をマッチングすることにより、自装置、前記第2の無線通信装置、および前記第3の無線通信装置の絶対的な存在位置を推定する、請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記推定部は、周波数と距離減衰の関係式に前記応答信号の周波数を代入することにより前記第1の範囲を推定する、請求項6に記載の無線通信装置。
【請求項8】
段階的に送信電力を高めて無線信号を送信するステップと;
送信した無線信号に対する応答信号が第1の無線通信装置から受信されるようになると、当該無線信号の到達範囲と前回の無線信号の到達範囲との差分である自装置を中心とする中空円型の第1の範囲に前記第1の無線通信装置が存在すると推定するステップと;
を含む、無線通信方法。
【請求項9】
コンピュータを、
段階的に送信電力を高めて無線信号を送信する送信部と;
前記送信部から送信された無線信号に対する応答信号が第1の無線通信装置から受信されるようになると、当該無線信号の到達範囲と前回の無線信号の到達範囲との差分である自装置を中心とする中空円型の第1の範囲に前記第1の無線通信装置が存在すると推定する推定部と;
として機能させるための、プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−93742(P2010−93742A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264565(P2008−264565)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】