説明

無線通信装置、送信電力制御方法およびプログラム

【課題】通信を行う無線通信装置の台数に応じた無線通信の効率化を図る。
【解決手段】無線通信部110が受信した無線信号の受信品質を品質測定部120が測定し、測定した受信品質を示す受信品質情報を品質情報送信部130が送信し、無線通信装置100−2,100−3から送信されてきた受信品質情報が示す受信品質と、品質測定部120が測定した受信品質とに基づいて、通信が可能な無線通信装置の数を装置数算出部150が算出し、装置数算出部150が算出した無線通信装置の数と、所定の装置数との比較の結果に基づいて、無線信号を送信するための送信電力値を電力値決定部160が決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号の送信電力を制御する無線通信装置、送信電力制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線による通信を効率化させるための技術として、複数チャネルを使用した周波数ホッピングによる空きチャネルの動的取得が、多くの無線通信システムにおいて実施されている。
【0003】
また、IEEE802.11等の規格を適用した無線LAN(Local Area Network)通信機能を具備した無線通信装置には、外部からパラメータを設定することにより、当該無線通信装置から無線信号を送信するための送信電力の値を変更することが可能な装置が存在する。このような無線通信装置では、複数の無線通信装置間における電波干渉の軽減や、電波の漏れによる盗聴の防止を目的として、規格として決められている値を上限値として送信電力の値を調整する場合がある。
【0004】
また、無線による通信形態として、送信側ノードと受信側ノードとが直接通信を行うシングルホップ方式、および送信側ノードと受信側ノードとの間に中継ノードが介在するマルチホップ方式の形態が知られている。
【0005】
マルチホップ方式では、MANET(Mobile Ad−hoc Network)−WG(Working Group)にて議論されているAODV(Ad−hoc On Demand Distance Vector)プロトコルや、OLSR(Optimized Link State Routing)等、様々な方式がある。いずれの方式も複数の周辺ノード間でルーティング制御情報を交換し、通信経路を構築する。
【0006】
しかし、このような技術においては、以下のような問題点がある。
【0007】
第1の問題点は、無線による通信では、利用可能なチャネル数が制限されるため、複数の用途の無線ネットワークが同一エリアに混在する。このため、多くの無線通信装置が同一エリア内に存在し、これらの無線通信装置の通信量の増加によって、輻輳が生じたり、遅延時間の増大が生じたりしてしまう。
【0008】
その理由は、無線による通信では、無線伝送の距離や、無線伝送路上に存在する障害物による影響を避けるため、規格で規定された最大送信電力により通信を行う。これにより、通信に不要な範囲にまで電波が広がる可能性が高い。通信に不要な範囲にまで電波が広がってしまった場合、伝送路上での信号同士の衝突や、この衝突による信号の再送、伝送路上でキャリア検出することによる送信待ち合わせ時間等が増加し、ネットワーク全体のスループットを低下させることになるからである。
【0009】
また、第2の問題点は、送信信号を到達させる必要がある範囲外でも、当該信号の受信が可能となるため、盗聴等セキュリティの低下が生じてしまう。
【0010】
その理由は、送信電力値として適切な値をあらかじめ把握することができないため、安定した通信を行うためには、規格で規定された最大送信電力を設定せざるを得ないためである。
【0011】
そこで、受信した無線信号の電波強度やノイズレベルに基づいて、無線信号を送信するための送信電力を制御する技術が考えられている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−200164号公報
【特許文献2】特開2010−016561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載された技術においては、2つの無線方式を用いなければならないという問題点がある。
【0014】
また、特許文献1および2に記載された技術においては、無線信号を送信する無線通信装置が通信を行う無線通信装置の台数については考慮していないため、通信すべき無線通信装置の台数が変化しても、同じ送信電力値が算出されてしまう。そのため、例えば、算出された送信電力値が、1台の無線通信装置に対しての送信に最適な値である場合、複数の無線通信装置との間で通信を行おうとしても、電波が届かないおそれがある。また、算出された送信電力値が、複数台の無線通信装置に対しての送信に最適な値である場合、1台の無線通信装置のみとの間で通信を行おうと信号を送信すると、上述したような問題(スループットの低下等)が生じてしまうおそれがある。
【0015】
本発明の目的は、上述した課題を解決する無線通信装置、送信電力制御方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の無線通信装置は、
無線ネットワーク通信機能を用いて、他の無線通信装置との間で無線通信を行う無線通信装置であって、
前記他の無線通信装置から送信されてきた無線信号を送受信する無線通信部と、
前記無線通信部が受信した無線信号の受信品質を測定する品質測定部と、
前記品質測定部が測定した受信品質を示す受信品質情報を前記他の無線通信装置へ、前記無線通信部を介して送信する品質情報送信部と、
前記他の無線通信装置から送信されてきた受信品質情報が示す受信品質と、前記品質測定部が測定した受信品質とに基づいて、前記他の無線通信装置のうち、当該無線通信装置との間で通信が可能な無線通信装置の数を算出する装置数算出部と、
前記装置数算出部が算出した無線通信装置の数と、所定の装置数とを比較し、該比較の結果に基づいて、前記無線通信部が前記無線信号を送信するための送信電力値を決定する電力値決定部とを有し、
前記無線通信部は、前記電力値決定部が決定した送信電力値の送信電力を用いて、前記無線信号を送信する。
【0017】
また、本発明の送信電力制御方法は、
無線ネットワーク通信機能を用いて、他の無線通信装置との間で無線通信を行う無線通信装置が、無線信号を送信するための送信電力を制御する送信電力制御方法であって、
前記他の無線通信装置から送信されてきた無線信号の受信品質を測定する処理と、
前記測定した受信品質を示す受信品質情報を前記他の無線通信装置へ送信する処理と、
前記他の無線通信装置から送信されてきた受信品質情報が示す受信品質と、前記測定した受信品質とに基づいて、前記他の無線通信装置のうち、当該無線通信装置との間で通信が可能な無線通信装置の数を算出する処理と、
前記算出した無線通信装置の数と、所定の装置数とを比較する処理と、
該比較の結果に基づいて、前記無線信号を送信するための送信電力値を決定する処理と、
前記決定した送信電力値の送信電力を用いて、前記無線信号を送信する処理とを行う。
【0018】
また、本発明のプログラムは、
無線ネットワーク通信機能を用いて、他の無線通信装置との間で無線通信を行う無線通信装置に実行させるためのプログラムであって、
前記他の無線通信装置から送信されてきた無線信号の受信品質を測定する手順と、
前記測定した受信品質を示す受信品質情報を前記他の無線通信装置へ送信する手順と、
前記他の無線通信装置から送信されてきた受信品質情報が示す受信品質と、前記測定した受信品質とに基づいて、前記他の無線通信装置のうち、当該無線通信装置との間で通信が可能な無線通信装置の数を算出する手順と、
前記算出した無線通信装置の数と、所定の装置数とを比較する手順と、
該比較の結果に基づいて、前記無線信号を送信するための送信電力値を決定する手順と、
前記決定した送信電力値の送信電力を用いて、前記無線信号を送信する手順とを実行させる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明においては、通信を行う無線通信装置の台数に応じた無線通信の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の無線通信装置の接続の一形態を示す図である。
【図2】図1に示した無線通信装置の内部構成の一例を示す図である。
【図3】本形態における送信電力制御方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】送信側ノードと受信側ノードとが直接通信を行うシングルホップ方式による通信の一構成例を示す図である。
【図5】送信側ノードと受信側ノードとが中継ノードを介して通信を行うマルチホップ方式による通信の一構成例を示す図である。
【図6】図5に示した構成において、無線通信装置が移動した場合の送信電力の制御方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の無線通信装置の接続の一形態を示す図である。
【0023】
本形態は図1に示すように、複数の無線通信装置100−1〜100−3が、互いに無線通信可能に配置されている。
【0024】
無線通信装置100−1〜100−3は、無線ネットワーク通信機能を用いて、互いに無線通信を行う装置である。なお、図1には、無線通信装置が3台である形態を例に挙げて示しているが、4台以上であっても良いことは、言うまでもない。ここで、無線ネットワーク通信機能とは、IEEE802.11等の規格を適用した無線LAN通信機能、IEEE802.15.4d,802.15.4g/e等の規格を適用したPan(Personal Area Network)通信機能、SUN(Smart Utility Networks)通信機能、HAN(Home Area Networks)通信機能等のアドホック通信を行うための無線通信機能である。
【0025】
図2は、図1に示した無線通信装置100−1の内部構成の一例を示す図である。なお、図1に示した無線通信装置100−2〜100−3の内部構成は、無線通信装置100−1の内部構成と同じである。
【0026】
図1に示した無線通信装置100−1には図2に示すように、無線通信部110と、品質測定部120と、品質情報送信部130と、記憶部140と、装置数算出部150と、電力値決定部160と、消去要求部170と、情報消去部180とが設けられている。
【0027】
無線通信部110は、他の無線通信装置である無線通信装置100−2〜100−3から送信されてきた無線信号を受信する。また、無線通信部110は、電力値決定部160から出力されてきた送信電力値の送信電力を用いて、無線信号を無線通信装置100−2〜100−3へ送信する。
【0028】
品質測定部120は、無線通信部110が受信した無線信号の受信品質を測定する。ここで、測定する品質情報は、無線通信部110が受信した無線信号の受信電界強度であっても良いし、無線通信部110が受信した無線信号についてのエラー発生率であっても良く、受信した無線信号の品質を判定できる情報であれば良い。この受信電界強度やエラー発生率の測定方法は、一般的に用いられているもので良い。例えば、信号の再送率をエラー発生率として用いるものや、受信した信号に含まれるエラー検出用のフィールドを用いるものであっても良い。また、品質測定部120は、測定した受信品質を示す受信品質情報を品質情報送信部130へ出力する。
【0029】
品質情報送信部130は、品質測定部120から出力されてきた受信品質情報を無線通信装置100−2〜100−3へ、無線通信部110を介して送信する。このとき、品質情報送信部130は、無線通信部110を介して送信する無線信号の所定の位置に、受信品質情報を埋め込んで(挿入して)送信する。
【0030】
記憶部140は、品質測定部120が測定した受信品質を示す受信品質情報を記憶する。また、記憶部140は、無線通信装置100−2〜100−3から送信されてきた受信品質情報を記憶する。
【0031】
装置数算出部150は、無線通信装置100−2〜100−3から送信されてきた受信品質情報が示す受信品質と、品質測定部120が測定した受信品質とに基づいて、無線通信装置100−2〜100−3のうち、無線通信装置100−1との間で通信が可能な無線通信装置の数を算出する。なお、記憶部140にこれらの情報が記憶されている場合は、記憶部140に記憶されている受信品質情報を用いる。この算出方法は、受信品質があらかじめ設定されている閾値をクリアした無線通信装置を、無線通信装置100−1との間で通信が可能な無線通信装置としてカウントするものであっても良い。また、装置数算出部150は、算出した数を電力値決定部160へ出力する。
【0032】
電力値決定部160は、装置数算出部150から出力されてきた無線通信装置の数と、所定の装置数とを比較する。そして、電力値決定部160は、その比較の結果に基づいて、無線通信部110が無線信号を送信するための送信電力値を決定する。ここで、所定の装置数とは、無線通信装置100−1と接続された上位サーバ等の外部装置から指定された数である。この数は、指定された後、記憶部140に記憶しておいても良い。
【0033】
具体的には、電力値決定部160は、装置数算出部150から出力されてきた無線通信装置の数が所定の装置数未満である場合、送信電力値を現在の値から増加させた値に決定する。また、電力値決定部160は、装置数算出部150から出力されてきた無線通信装置の数が所定の装置数を超える場合、送信電力値を現在の値から減少させた値に決定する。また、電力値決定部160は、装置数算出部150から出力されてきた無線通信装置の数と所定の装置数とが等しい場合、送信電力値を維持した値に決定する。なお、送信電力値の増加幅および減少幅については、ここでは特に規定しない。
【0034】
また、電力値決定部160は、品質測定部120が受信品質を測定できない場合、または無線通信装置100−2〜100−3から受信品質情報が送信されてこない場合は、あらかじめ設定されている初期値を送信電力値として決定する。
【0035】
また、電力値決定部160は、決定した送信電力値を無線通信部110へ出力する。
【0036】
消去要求部170は、電力値決定部160が、送信電力値を現在の値から他の値へ変更する際、無線通信装置100−2〜100−3に具備された記憶部に記憶されている受信品質情報の消去を、無線通信部110を介して無線通信装置100−2〜100−3へ要求する。
【0037】
情報消去部180は、無線通信装置100−2〜100−3から無線通信部110を介して、受信品質情報の消去を要求された場合、記憶部140に記憶されている受信品質情報を消去(クリア)する。
【0038】
以下に、本形態における送信電力制御方法について説明する。ここでは、図1に示した無線通信装置100−1における送信電力制御方法について例を挙げて説明する。
【0039】
図3は、本形態における送信電力制御方法を説明するためのフローチャートである。
【0040】
まず、無線通信部110にて無線信号が受信されると(ステップS1)、受信された無線信号の受信品質が品質測定部120にて測定される(ステップS2)。
【0041】
品質測定部120にて測定された受信品質を示す受信品質情報は、品質情報送信部130から無線通信部110を介して無線通信装置100−2〜100−3へ送信される。
【0042】
続いて、品質測定部120にて測定された受信品質を示す受信品質情報が、記憶部140に書き込まれる。
【0043】
また、無線通信装置100−2〜100−3から送信されてきた受信品質情報が記憶部140に書き込まれる。
【0044】
その後、記憶部140に書き込まれた受信品質情報が示す受信品質、つまり、品質測定部120にて測定された受信品質と無線通信装置100−2〜100−3から送信されてきた受信品質情報が示す受信品質とに基づいて、装置数算出部150にて、無線通信装置100−2〜100−3のうち、無線通信装置100−1との間で通信が可能な無線通信装置の数が算出される(ステップS3)。算出された装置数は、装置数算出部150から電力値決定部160へ出力される。
【0045】
すると、電力値決定部160にて、装置数算出部150から出力されてきた無線通信装置の数と、所定の装置数とが比較される(ステップS4)。
【0046】
ステップS4における比較の結果、装置数算出部150から出力されてきた無線通信装置の数が所定の装置数未満である場合、電力値決定部160にて、送信電力値として現在の送信電力値を増加させた値が決定される(ステップS5)。
【0047】
ステップS4における比較の結果、装置数算出部150から出力されてきた無線通信装置の数と所定の装置数とが等しい場合、電力値決定部160にて、送信電力値として現在の送信電力値を維持した値が決定される(ステップS6)。
【0048】
ステップS4における比較の結果、装置数算出部150から出力されてきた無線通信装置の数が所定の装置数を超える場合、電力値決定部160にて、送信電力値として現在の送信電力値を減少させた値が決定される(ステップS7)。
【0049】
そして、決定された送信電力値が、電力値決定部160から無線通信部110へ出力され、無線通信部110から無線信号を送信する際、当該送信電力値が示す送信電力で無線信号が送信される(ステップS8)。
【0050】
以下に、複数の無線通信端末間の互いの位置構成について、いくつかの例を挙げて、その構成における送信電力制御について説明する。なお、以下の説明においては、無線通信の基本概念や、マルチホップ通信の基本概念や、基本動作および、基本構成については当業者には既知であるため、詳しい説明を省略する。また、無線信号を送信する無線通信装置を「送信側ノード」と称し、送信ノードから送信されてきた無線信号を受信する無線通信装置を「受信側ノード」と称する。
【0051】
図4は、送信側ノードと受信側ノードとが直接通信を行うシングルホップ方式による通信の一構成例を示す図である。
【0052】
図4に示すように、送信側ノードである無線通信装置100−1の位置を中心とした、無線通信装置100−1から送信される電波の最低到達範囲200、最適到達範囲210および最大到達範囲220が存在する。つまり、無線通信装置100−1からの送信電力が小さな場合、電波が届く範囲が最低到達範囲200に近くなり、一方、無線通信装置100−1からの送信電力が大きな場合、電波が届く範囲が最大到達範囲220に近くなる。また、最適到達範囲210は、無線通信装置100−1が、受信側ノードである無線通信装置100−2との間で通信を行う際に、最適な送信電力を用いて送信を行った場合の送信電波が届く範囲である。また、無線通信装置100−2は、無線通信装置100−1との間で通信を行う受信側ノードである。また、無線通信装置100−3は、無線通信装置100−1との間で通信を行わないノードである。
【0053】
なお、図4において、最低到達範囲200、最適到達範囲210および最大到達範囲220を、説明の便宜上、同心円で示しているが、実際は、障害物の存在等、電波の到達範囲は周囲の環境に影響されるため、同心円になるとは限らない。
【0054】
また、無線通信装置100−2および無線通信装置100−3も同様の送信電力制御を行うことから、自ノードからの送信電波の到達範囲と周辺ノードからの送信電波の到達範囲とが異なる場合も考えられるが、説明を簡単にするため送受信が可能な範囲は同じ距離として説明する。
【0055】
無線通信装置100−1を設置する際、無線通信装置100−1の設置場所が、通信の対象とならない他のノードが周辺に多数設置されているような場所(例えば、都市部等)においては、電波の到達範囲が最低到達範囲200または最適到達範囲210となるように送信電力を制御して、通信の対象とならない他のノードに対して不要な電波を送信しないようにする。一方、無線通信装置100−1の設置場所が、通信の対象とならない他のノードが周辺に設置されていないような場所(例えば、地方部等)においては、電波の到達範囲が最大到達範囲220となるように送信電力を制御する。
【0056】
図5は、送信側ノードと受信側ノードとが中継ノードを介して通信を行うマルチホップ方式による通信の一構成例を示す図である。ここで、中継ノードとは、送信側ノードと受信側ノードとの間で通信を行う際に、無線信号を中継する無線通信装置である。
【0057】
図5に示すように、送信側ノードである無線通信装置101−1と、受信側ノードである無線通信装置101−3と、中継ノードである無線通信装置101−2,101−4とが配置されている。また、無線通信装置101−1と無線通信装置101−3との間の通信に利用することができないノードである無線通信装置101−5〜101−7が存在する。
【0058】
また、図4に示した最低到達範囲200、最適到達範囲210および最大到達範囲220と同様に、無線通信装置101−1から送信される送信電波の到達範囲を送信電力に応じて、最低到達範囲201、最適到達範囲211および最大到達範囲221とする。
【0059】
図5において、無線通信装置101−2または無線通信装置101−4を介したマルチポップ通信を利用することで、無線通信装置101−1と無線通信装置101−3との間で通信が可能となる。そのため、無線通信装置101−1が無線通信装置101−3への無線信号の送信に用いる送信電力は、電波の到達範囲が最大到達範囲221ではなく、最適到達範囲211となるように制御すれば良い。
【0060】
また、無線通信装置101−1は、周辺のノードの通信品質をモニタして収集し、統計情報として蓄積する。このモニタ方法は、周辺のノードから送信され、自ノードにて受信された電波の受信電界強度を測定したり、エラー発生率を算出したり、また、自ノードから周辺のノードへ送信した電波の周辺のノードにおける受信電界強度がどの程度であるかを取得したりする方法が考えられる。
【0061】
例えば、無線通信装置101−1から送信される電波の到達範囲が最低到達範囲201となるように送信電力を制御している場合、モニタできる統計情報は、無線通信装置101−4との間の通信品質および無線通信装置101−5との間の通信品質となる。また、無線通信装置101−1から送信される電波の到達範囲が最適到達範囲211となるように送信電力を制御している場合、モニタできる統計情報は、無線通信装置101−4との間の通信品質および無線通信装置101−5との間の通信品質に加え、無線通信装置101−2との間の通信品質および無線通信装置101−6との間の通信品質となる。
【0062】
ここで、無線通信装置101−1から送信される電波の到達範囲が最低到達範囲201となるように送信電力を制御している状態で、無線通信装置101−1が無線通信装置101−3と通信を行おうとした場合、AODV等のルーティングプロトコルを利用して経路探索を行う。そのとき、無線通信装置101−3に到達(中継)可能な無線通信装置101−2は、電波の到達範囲外のため、経路探索の結果が無線通信装置101−2からは返らない。また、無線通信装置101−3に到達(中継)可能な無線通信装置101−4は、電波の到達範囲内のため、経路探索の結果が無線通信装置101−4からは返る。無線通信装置101−3までの経路が確立できているため、無線通信装置101−1と無線通信装置101−3との間の通信は可能である。
【0063】
この状態で、無線通信装置101−1の内部で保持する通信に必要な周辺ノード数(所定の装置数)と、通信可能なノード数とを比較する。
【0064】
無線通信を行う場合、ノードの移動、無線伝送路の品質悪化のリスクがあるため、安定した通信に必要な周辺ノード数は2以上になると考えられる。ここで、安定した通信に必要な周辺ノード数を2とした場合を例に挙げると、電波の到達範囲が最低到達範囲201である状態では、通信可能な周辺ノードは無線通信装置101−4のみの1台となり、安定した通信に必要な周囲ノード数である2未満となる。このため、通信可能な周辺ノード数を増やすために無線通信装置101−1は、電波の到達範囲が最適到達範囲211となるよう送信電力の制御を行う。
【0065】
無線通信装置101−1は、送信電力制御を行うため、まず、現在の送信電力にて周辺ノードに対し、統計情報のクリア(消去)要求をブロードキャスト送信する。
【0066】
その後、上述したような送信電力制御を行う。
【0067】
無線通信装置101−1は、定期的、または、何らかのトリガにより周辺ノードに対して統計情報の読み出し要求を行う。その要求に対して、周辺ノードから送信されてきた応答メッセージに含まれる統計情報を参照することで、自ノードが蓄積する周辺ノードからの受信信号の統計情報と、周辺ノードが持つ自ノードからの送信信号の統計情報とを合わせることで、双方向の統計情報に基づいた送信電力制御が可能となる。
【0068】
図6は、図5に示した構成において、無線通信装置101−7が移動した場合の送信電力の制御方法を説明するための図である。
【0069】
図5に示した構成では、無線通信装置101−1と無線通信装置101−3との間の通信に必要な中継ノードは、無線通信装置101−2および無線通信装置101−4であった。そこに、図6に示すように、無線通信装置101−7が移動することにより、無線通信装置101−7も中継ノードとして追加される。
【0070】
このような状態で、無線通信装置101−1が通信可能な周辺ノード数が、安定した通信に必要な周辺ノード数として設定されている2以上となるようにするために、送信電力の制御を行う。この場合、無線通信装置101−1から送信される電波の到達範囲が最適到達範囲211となるよう送信電力の制御を行うことにより、無線通信装置101−1が通信可能な周辺ノード数が3となり、安定した通信に必要な周辺ノード数として設定されている2以上となる。
【0071】
無線通信装置101−1は、送信電力制御を行うため、まず、現在の送信電力にて周辺ノードに対し、統計情報のクリア(消去)要求をブロードキャスト送信する。
【0072】
その後、上述したような送信電力制御を行う。
【0073】
このように、無線通信装置101−7が移動したことによる送信電力制御が発生したが、タイマー等による周期的な送信電力制御を行うことが望ましい。
【0074】
上述したように、無線方式による通信では、少ないチャネルを多数のノード間および多数の通信方式でシェアすることが一般的である。そこで、本発明において、電波の到達範囲を制御することで不要な干渉を必要最低限に抑える。このように、無線方式による通信において、送信電力制御を行うことで、周辺ノードとの不要な電波干渉を低減させ、電波到達範囲外での同一チャネルの同時使用を可能とし、電波の利用効率を向上させると共に、信号の不要な衝突による再送等が原因での伝送遅延の低減を図ることができる。
【0075】
上述した無線通信装置100−1に設けられた各構成要素が行う処理は、目的に応じてそれぞれ作製された論理回路で行うようにしても良い。また、処理内容を手順として記述したコンピュータプログラム(以下、プログラムと称する)を無線通信装置100−1にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを無線通信装置100−1に読み込ませ、実行するものであっても良い。無線通信装置100−1にて読取可能な記録媒体とは、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、DVD、CDなどの移設可能な記録媒体の他、無線通信装置100−1に内蔵されたROM、RAM等のメモリやHDD等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、無線通信装置100−1に設けられたCPU(不図示)にて読み込まれ、CPUの制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。ここで、CPUは、プログラムが記録された記録媒体から読み込まれたプログラムを実行するコンピュータとして動作するものである。
【符号の説明】
【0076】
100−1〜100−3,101−1〜101−7 無線通信装置
110 無線通信部
120 品質測定部
130 品質情報送信部
140 記憶部
150 装置数算出部
160 電力値決定部
170 消去要求部
180 情報消去部
200,201 最低到達範囲
210,211 最適到達範囲
220,221 最大到達範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ネットワーク通信機能を用いて、他の無線通信装置との間で無線通信を行う無線通信装置であって、
前記他の無線通信装置から送信されてきた無線信号を送受信する無線通信部と、
前記無線通信部が受信した無線信号の受信品質を測定する品質測定部と、
前記品質測定部が測定した受信品質を示す受信品質情報を前記他の無線通信装置へ、前記無線通信部を介して送信する品質情報送信部と、
前記他の無線通信装置から送信されてきた受信品質情報が示す受信品質と、前記品質測定部が測定した受信品質とに基づいて、前記他の無線通信装置のうち、当該無線通信装置との間で通信が可能な無線通信装置の数を算出する装置数算出部と、
前記装置数算出部が算出した無線通信装置の数と、所定の装置数とを比較し、該比較の結果に基づいて、前記無線通信部が前記無線信号を送信するための送信電力値を決定する電力値決定部とを有し、
前記無線通信部は、前記電力値決定部が決定した送信電力値の送信電力を用いて、前記無線信号を送信する無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記電力値決定部は、当該無線通信装置を接続された外部装置から前記所定の装置数が指定された場合、該指定された装置数と前記装置数算出部が算出した無線通信装置の数とを比較することを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記品質測定部は、前記受信品質として、前記無線通信部が受信した無線信号の受信電界強度を測定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記品質測定部は、前記受信品質として、前記無線通信部が受信した無線信号についてのエラー発生率を測定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記電力値決定部は、前記装置数算出部が算出した無線通信装置の数が前記所定の装置数未満である場合、前記送信電力値を増加させ、前記装置数算出部が算出した無線通信装置の数が前記所定の装置数を超える場合、前記送信電力値を減少させ、前記装置数算出部が算出した無線通信装置の数と前記所定の装置数とが等しい場合、前記送信電力値を維持することを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記電力値決定部は、前記品質測定部が前記受信品質を測定できない場合、または前記他の無線通信装置から前記受信品質情報が送信されてこない場合、あらかじめ設定されている初期値を前記送信電力値として決定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記他の無線通信装置から送信されてきた受信品質情報と、前記品質測定部が測定した受信品質を示す受信品質情報とを記憶する記憶部を有し、
前記装置数算出部は、前記記憶部に記憶された受信品質情報が示す受信品質に基づいて、当該無線通信装置との間で通信が可能な無線通信装置の数を算出することを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
請求項7に記載の無線通信装置において、
前記電力値決定部が、前記送信電力値を変更する際、前記他の無線通信装置に記憶されている受信品質情報の消去を、前記他の無線通信装置へ要求する消去要求部と、
前記他の無線通信装置から、前記受信品質情報の消去を要求された場合、前記記憶部に記憶されている受信品質情報を消去する情報消去部とを有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項9】
無線ネットワーク通信機能を用いて、他の無線通信装置との間で無線通信を行う無線通信装置が、無線信号を送信するための送信電力を制御する送信電力制御方法であって、
前記他の無線通信装置から送信されてきた無線信号の受信品質を測定する処理と、
前記測定した受信品質を示す受信品質情報を前記他の無線通信装置へ送信する処理と、
前記他の無線通信装置から送信されてきた受信品質情報が示す受信品質と、前記測定した受信品質とに基づいて、前記他の無線通信装置のうち、当該無線通信装置との間で通信が可能な無線通信装置の数を算出する処理と、
前記算出した無線通信装置の数と、所定の装置数とを比較する処理と、
該比較の結果に基づいて、前記無線信号を送信するための送信電力値を決定する処理と、
前記決定した送信電力値の送信電力を用いて、前記無線信号を送信する処理とを行う送信電力制御方法。
【請求項10】
無線ネットワーク通信機能を用いて、他の無線通信装置との間で無線通信を行う無線通信装置に、
前記他の無線通信装置から送信されてきた無線信号の受信品質を測定する手順と、
前記測定した受信品質を示す受信品質情報を前記他の無線通信装置へ送信する手順と、
前記他の無線通信装置から送信されてきた受信品質情報が示す受信品質と、前記測定した受信品質とに基づいて、前記他の無線通信装置のうち、当該無線通信装置との間で通信が可能な無線通信装置の数を算出する手順と、
前記算出した無線通信装置の数と、所定の装置数とを比較する手順と、
該比較の結果に基づいて、前記無線信号を送信するための送信電力値を決定する手順と、
前記決定した送信電力値の送信電力を用いて、前記無線信号を送信する手順とを実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−90168(P2012−90168A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236541(P2010−236541)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000232254)日本電気通信システム株式会社 (586)
【Fターム(参考)】