説明

無線通信装置および通信方法

【課題】アレイアンテナの指向性を適応的に変化させることができるビームフォーミング機能を有する無線通信装置において、高速移動ユーザに対する追従性を向上させること。
【解決手段】N(Nは2以上の整数)個のアンテナ素子18にて構成された無線通信装置において、ウェイト制御部23では、全てのアンテナ素子を対象とする通常ウェイトと、全てのアンテナ素子の中から選択された一部所定のアンテナ素子を対象とする補助ウェイトとが生成出力される。受信品質判定部25では、ウェイト制御部23から出力された通常ウェイトが各アンテナ素子18の受信信号に乗算され、乗算された各受信信号の加算出力である通常ウェイト出力と、ウェイト制御部23から出力された補助ウェイトが一部所定のアンテナ素子の受信信号に乗算され、乗算された各受信信号の加算出力である補助ウェイト出力と、に基づいて受信信号の品質が判定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置および通信方法に関するものであり、特に、アダプティブアレイアンテナ技術を適用した無線通信装置および通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アダプティブアレイアンテナは、複数のアンテナ素子を利用してアンテナの指向性を適応的に変化させることができる技術であり、干渉波やフェージングなどが問題となる移動通信環境に好適なシステムとして考えられている。近年、このアダプティブアレイアンテナの特性に着目し、移動通信システムのアンテナ系に適用しようとする研究が活発化している。
【0003】
例えば、下記非特許文献1には、アダプティブアレイアンテナを移動通信に適用する場合の、効果や課題などについての詳細な内容が紹介されている。
【0004】
【非特許文献1】“アダプティブ・アレイと移動通信(I) 移動通信伝送路への適用 “電子情報通信学会誌 Vol.81 No.12 pp.1254−1260 1998年12月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術にかかるアダプティブアレイアンテナによれば、例えばアレイアンテナの出力信号と所望波の持つ既知の参照信号との平均2乗誤差を最小にするようにウェイト制御を行うことで、最終的には所望波の到来方向にメインビームを向けるとともに、干渉波の到来方向にはヌルを向けて最適なビーム形成を実現することが理論的に明らかにされている。
【0006】
しかしながら、アダプティブアレイアンテナの処理技術を用いて実際のシステムを構築する場合、ウェイトの制御がフィードバック制御のために、ウェイトが反映されるまでの高速性と安定性に欠けると云った問題点があった。また、アンテナ素子数が増すと演算の複雑さが指数的に増すといった問題点があった。つまり、アダプティブアレイアンテナは、高速に移動するユーザに対しては、その時点での最適なウェイト(指向性)がある時間を過ぎた後では必ずしも最適なウェイト(指向性)になっているとはいえず高速に移動するユーザに対して最適なウェイトで完全に追従することは困難であった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高速移動ユーザに対する追従性を向上させた無線通信装置および通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる無線通信装置は、N(Nは2以上の整数)個のアンテナ素子にて構成されたアレイアンテナの指向性を適応的に変化させることができるビームフォーミング機能を有する無線通信装置において、前記アレイアンテナを構成する全てのアンテナ素子のそれぞれに対する重みづけ情報である通常ウェイトと、該アレイアンテナを構成する全てのアンテナ素子の中から選択された一部所定のアンテナ素子のそれぞれに対する重みづけ情報である補助ウェイトと、を生成出力するウェイト制御部と、前記ウェイト制御部から出力された通常ウェイトが各アンテナ素子で受信された受信信号に乗算され、該乗算された各受信信号の加算出力である通常ウェイト出力と、該ウェイト制御部から出力された補助ウェイトが前記一部所定のアンテナ素子で受信された受信信号に乗算され、該乗算された各受信信号の加算出力である補助ウェイト出力と、に基づいて受信信号の品質を判定する受信品質判定部と、を備え、前記受信品質判定部は、前記通常ウェイト出力および前記補助ウェイト出力のうち、受信品質の優れている方の出力を出力信号として選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる無線通信装置によれば、アレイアンテナを構成する全てのアンテナ素子を対象とした通常ウェイトと、全てのアンテナ素子から選択された一部所定のアンテナ素子対象とした補助ウェイトと、が生成され、通常ウェイトに基づく通常ウェイト出力と、補助ウェイトに基づく補助ウェイト出力と、に基づいて受信信号の品質が判定され、通常ウェイト出力および補助ウェイト出力の中で受信品質の優れている方の出力が選択されるので、誤差信号が収束しているにもかかわらず受信品質が劣化するといった状態を判定することができ、高速移動ユーザに対する追従性を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる無線通信装置および通信方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明するが、以下に詳述する実施の形態により本発明が限定されるものではない。なお、本発明の実施の形態を説明する前に、本発明のベースとなるアダプティブアレイアンテナの技術について説明する。
【0011】
(アダプティブアレイアンテナの処理概念)
まず、本発明の無線通信装置および通信方法に適用されるアダプティブアレイアンテナの処理概念について説明する。アダプティブアレイアンテナは、受信においては、所望波方向にメインビームを向けて所望波信号を十分取り込みつつ、ヌルを干渉波方向に向けるようにして干渉波信号を可能な限り除去する。一方、送信においては、所望ユーザ方向にメインビームを向けて十分なアレイ利得が得られるように利得制御するとともに、所望ユーザ以外の他ユーザにヌルを向けることで他ユーザへの干渉を防ぐように制御する。このように、アダプティブアレイアンテナは、複数のアレイアンテナを用いて指向性を適応的に変化させることができ、所望波にビームを向け、干渉波にヌルを向けることで信号対干渉雑音比(SINR:Signal to Interference plus Noise Ratio)を向上させるものである。
【0012】
(アダプティブアレイアンテナの基本的な動作原理)
つぎに、アダプティブアレイアンテナの基本的な動作原理について詳述する。図6は、アダプティブアレイアンテナの基本的な動作原理を説明するための図である。アダプティブアレイアンテナは空間的に分散された複数のアンテナ、すなわち、アレイアンテナを必要とする。ここでは、同図に示すような、N個のアンテナ素子が配置されたアレイアンテナにおいて、出力信号と参照信号との平均2乗誤差(MSE:Mean Square Error)信号を最小にするようなウェイト(最適ウェイト)を決定する、MMSE(Minimum MSE)と呼ばれる手法を一例として示し、その原理について説明する。
【0013】
図6において、i(i=1,2,・・・,N)番目のアンテナで受信される信号xi(m)を要素とするとベクトルをX(m)とし、その信号に対するウェイトwiを要素とするベクトルをW(m)とするとき、これらのX(m)およびW(m)は、それぞれ次式で表すことができる。
【0014】
【数1】

【数2】

なお、右肩の添字“T”は、転置を意味している。
【0015】
このとき、図6に示したアダプティブアレイアンテナの出力y(m)は次式で表される。
【0016】
【数3】

なお、右肩の添字“H”は、共役転置を意味している。
【0017】
一方、各アンテナ素子で受信された受信信号列である受信信号ベクトルX(m)には、所望信号、干渉信号および雑音信号が含まれているので、式(1)や式(3)に含まれるX(m)を、これらの各信号成分に分離して記述すると、次式のように表現できる。
【0018】
【数4】

なお、式(4)におけるXs(m),Xik(m),Xn(m)は、それぞれ、所望信号ベクトル、干渉信号ベクトルおよび雑音信号ベクトルを示している。
【0019】
また、所望信号Xs(m)が各アンテナ素子で受信された際の、振幅および位相情報を要素にしたベクトルhSを用いれば、所望信号ベクトルXs(m)は、所望信号s(m)を用いて次式のように表すことができる。
【数5】

【0020】
同様に、干渉信号ベクトルXik(m)も、振幅および位相情報を要素にしたベクトルhiを用いて、次式のように表すことができる。
【数6】

上式において、Kは干渉波数であり、ik(m)は、k番目の干渉信号を示している。
【0021】
なお、所望信号と干渉信号とは一般的に相関がないので、次式が成立する。
【数7】

上式において、E[・]はアンサンブル平均を表している。また、“s”の文字の右肩にある添字“*”は、s(m)の共役複素数を意味している。
【0022】
また、雑音信号ベクトルは、各アンテナで発生した雑音を要素にしたベクトルとして、次式のように表すことができる。
【数8】

なお、この雑音信号ベクトルは、一般的に、所望信号や干渉信号に加え、他のアンテナ素子の雑音とも相関がないのが特徴の一つである。
【0023】
ところで、アダプティブ・アレイの目的は、上述したように、所望波に対する所定の利得を確保しつつ、不要波を除去することにある。したがって、アレイ出力においてSINRが最大になるようにウェイトを決定するアルゴリズムが最も特性の良いアルゴリズムであると言っても過言ではない。
【0024】
図6に示すアダプティブ・アレイでは、所望信号の性質を有する、あるいは所望信号と等価な参照信号に基づいて干渉信号や雑音信号を低減するように構成されており、アレイ出力y(m)を可能な限り参照信号d(m)に近づけるような最適ウェイトを決定することで、干渉信号や雑音信号を低減させたアレイ出力を生成することができるはずである。
【0025】
いま、アレイ出力y(m)が参照信号d(m)にどの程度近いかを評価する関数として、アレイ出力y(m)と参照信号d(m)との平均2乗誤差(MSE)をとった、次式で示される評価関数を定義する。
【0026】
【数9】

上式が、上述したMSE基準であり、このMSE基準を最小にする手法が上述したMMSEアルゴリズムである。
【0027】
また、式(9)は、次式のように書き換えることができる。
【数10】

なお、上式におけるRxxは、入力信号の相関行列を示している。また、上式におけるrxdは入力信号と参照信号との相関ベクトルであり、次式で示される。
【0028】
【数11】

【0029】
いま、式(9)に示される評価関数Jを最小にする最適ウェイトを求めるものとすれば、式(9)において、複素ウェイトwに関する傾きが0となる点が最適ウェイトとなる。
【0030】
したがって、式(9)を複素ウェイトwについて偏微分すれば、
【数12】

となるので、最適ウェイトWoptは、式(12)の右辺=0となるウェイトとなり、次式で表される。
【0031】
【数13】

【0032】
なお、式(10)において、相関行列Rxxの構成要素である所望信号、干渉信号および雑音信号の相関行列が負値行列となることはないので、相関行列Rxxは正値エルミート行列となって、相関行列Rxxの逆行列が必ず存在し、式(13)によって最適ウェイトWoptが算出される。
【0033】
ここで、式(13)におけるrxdについて考察する。いま、このrxdを展開すると、
【数14】

となる。式(14)において、参照信号d(m)は所望波の送信信号と同一であり、干渉波や雑音と無相関であると仮定すれば、
【数15】

として簡単化できる。
【0034】
さらに、式(15)におけるrxdは、所望信号Xs(m)にかかる式(5)に示したベクトルhSを用いて、
【数16】

と表すことができるので、rxdがベクトルhSの定数倍になっていることが分かる。なお、式(16)におけるcは、所望波の送信信号s(m)と参照信号d(m)との相互相関であり、s(m)=r(m)とすれば、c=1となるので、MSE基準による最適ウェイトは出力SINRを最大にすることと等価であることが分かる。
【0035】
このように、MMSE基準に基づくアダプティブアレイアンテナでは、参照信号に基づいて出力SINRを最大にする最適ウェイトを求めることができる。
【0036】
なお、上述のようなMMSE基準に基づくアダプティブアレイアンテナをディジタル制御にて実現する具体的な処理手法、すなわち最適化アルゴリズムとしては、例えば最急降下法に基づくLMS(Least Mean Square)アルゴリズムや、サンプル値を用いた直接解法であるSMI(Sample Matrix Inversion)アルゴリズム、さらには再帰的最小2乗法を用いるRLS(Recursive Least−Squares)アルゴリズム)などがある。最急降下法はもっとも一般的であり、確実に評価関数の最小点に到達することができ、計算負荷も小さいという特長を有している。
【0037】
一方、最急降下法は入射波の到来方向が接近している場合や、各波の電力比が大きい場合に収束が極端に遅くなるという固有値分散問題に起因する欠点がある。他方、この問題を克服する手法の一つに、上述のSMIアルゴリズムがある。SMIアルゴリズムは、計算負荷が大きいことから敬遠されがちであったが、近年のコンピュータの発達に伴って注目されている。また、SMI方式と同様な固有値分散問題を克服する他のアルゴリズムが上述のRLSアルゴリズムである。このRLSアルゴリズムは、LMSアルゴリズムとSMIアルゴリズムの両者の特徴を有している。
【0038】
ここまでは、アダプティブアレイアンテナの処理概念およびアダプティブアレイアンテナの基本的な動作原理について説明した。つぎに、本発明の各実施の形態について説明する。
【0039】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる無線通信装置の構成を示すブロック図である。同図に示す無線通信装置は、複数のアンテナ素子18(181,182,・・・,18N)と、アンテナ素子18にそれぞれ接続され、アンテナ素子18が受信した受信信号をアナログ・ディジタル変換(以下「A/D変換」という)するA/D変換器19(191,192,・・・,19N)と、A/D変換器19ごとにそれぞれ具備される(接続される)一対の乗算器のうち、A/D変換器19から出力された一方のディジタル信号と自身に入力される所定の複素ウェイト(通常ウェイト)とを乗算する第1の乗算器20(201,202,・・・,20N)と、A/D変換器19から出力された他方のディジタル信号と自身に入力される所定の複素ウェイト(補助ウェイト)とを乗算する第2の乗算器21(211,212,・・・,21N)と、第1の乗算器20の乗算出力をそれぞれ加算する第1の加算器22aと、第2の乗算器21の乗算出力をそれぞれ加算する第2の加算器22bと、第1の加算器22aの加算出力信号と参照信号と呼ばれる所定の基準信号との差分出力(誤差信号)を出力する加算器(あるいは減算器)24と、加算器24から出力された誤差信号に基づいて第1の乗算器20および第2の乗算器21に上記所定の複素ウェイトをそれぞれ出力するウェイト制御部23と、第1の加算器22aの加算出力(以下「通常ウェイト出力」と呼称)および第2の加算器22bの加算出力(以下「補助ウェイト出力」と呼称)に基づいて本装置で受信した受信信号の品質を判定する受信品質判定部25とを備えている。
【0040】
つぎに、図1に示した無線通信装置の動作について説明する。同図において、複数のアンテナ素子18(181,182,・・・,18N)にて受信され、複数のアンテナ素子18のそれぞれに接続されたA/D変換器19(191,192,・・・,19N)にてディジタル信号に変換された受信ディジタル信号が、第1の乗算器20(201,202,・・・,20N)および第2の乗算器21(211,212,・・・,21N)にそれぞれ出力される。第1の乗算器20では、入力された受信ディジタル信号とウェイト制御部23から出力された第1の複素ウェイトである通常ウェイト(初期値は任意)とが乗算され、乗算された各乗算出力が第1の加算器22aで合成される。同様に、第2の乗算器21では、入力された受信ディジタル信号とウェイト制御部23から出力された第2の複素ウェイトである補助ウェイト(初期値は任意)とが乗算され、第2の加算器22aで合成される。これらの合成信号は、受信品質判定部25に、それぞれ出力される。
【0041】
ここで、加算器24では、第1の加算器22の出力である通常ウェイト出力と参照信号とに基づいて、これらの信号間の差分信号である誤差信号が生成されてウェイト制御部23に出力される。ウェイト制御部23では、後述するフローに基づいて第1の乗算器20に出力する通常ウェイトと第2の乗算器21に出力する補助ウェイトとが生成され、それぞれ第1の乗算器20および第2の乗算器21に出力される。これらの第1の乗算器20、第1の加算器22およびウェイト制御部23で行われる処理(フィードバック処理)が繰り返され、所望の指向性が受信信号に基づいて適応的に制御される。なお、ウェイト制御部23で生成される各ウェイト自身は、上述した従来のMMSE基準にかかるアルゴリズムに基づいて生成される。
【0042】
一方、受信品質判定部25では、定期的に観測される所望波の受信品質情報(例えばSINR)と所定の品質水準とが比較され、その比較結果が品質劣化情報としてウェイト制御部23に対して通知される。品質劣化情報が通知されたウェイト制御部23では、例えばウェイト更新の収束度合(その他、誤差信号の優劣などを用いてもよい)が判定される。もし、ウェイトが収束していると判定された場合には、所望ユーザが高速移動ユーザであると判断され、通常のアンテナ素子(N素子)を用いたウェイト演算(通常ウェイト演算)に加えて、例えば素子数を減じたN−M個(Mはアンテナ素子の削減数でありN−1以下の自然数)のアンテナ素子によるウェイト演算(補助ウェイト演算)が行われ、通常ウェイトとは異なる補助ウェイトが演算される。なお、通常ウェイトと補助ウェイトとの切替制御にかかる処理の詳細については後述する。
【0043】
このようにして、受信品質判定部25で判定されるSINR情報と、ウェイト制御部23で判定されるウェイト更新の収束度合(誤差信号でもよい)に基づいて、補助ウェイトを用いた処理を行うか否かが判定され、通常ウェイトのみが第1の乗算器20に対して出力され、あるいは通常ウェイトおよび補助ウェイトの両者がそれぞれ第1の乗算器20および第2の乗算器21に対して出力される。なお、補助ウェイトを算出する際の処理対象となるアンテナ素子の素子数(逆の意味にとればアンテナ素子の削減数:M)は、所定の処理時間内において同時に処理対象となる高速移動ユーザ数、干渉波による干渉の程度、所望波の受信信号品質、現在適用されているウェイト(通常ウェイト、補助ウェイト)の収束度、ウェイト制御部の処理能力などに基づいて、所定あるいは任意の削減数が決定される。
【0044】
つぎに、通常ウェイトと補助ウェイトとの切替制御にかかる処理について図2を用いて説明する。ここで、図2は、実施の形態1における通常ウェイトと補助ウェイトとの切替制御にかかる処理フローを示すフローチャートである。なお、同図に示す処理フローでは、図1に示した無線通信装置の構成におけるアンテナ素子18〜第1の加算器22aおよび第2の加算器22bまでを含んだアンテナ系にかかる構成部をアレイアンテナとして定義し、以下、この用語を用いて説明する。
【0045】
ここで、図2の処理フローを概括すると、この処理フローは以下の処理に分解される。
(1) 通常ウェイトの演算処理(ステップS101〜S103)
(2) 受信信号品質の劣化判定処理(ステップS104、S105)
(3) 適用されているウェイト(通常ウェイトまたは補助ウェイト)の収束判定処理(ステップS106〜S108)
(4) 補助ウェイト制御処理(ステップS109〜S117)
【0046】
また、上記(4)の補助ウェイト制御処理(ステップS109〜S117)は、以下の処理に分解される。
(a) 削減されたアンテナ素子に基づく補助ウェイト演算処理(ステップS110)
(b) 通常ウェイトと補助ウェイトとの安定度比較処理(ステップS111〜S114)
(c) 補助ウェイト機能の継続判定処理(ステップS115〜S117)
【0047】
つぎに、図2の処理フローの細部について説明する。同図において、まず、アレイアンテナにて信号が受信され(ステップS101)、加算器24ではアレイアンテナの出力信号と所定の参照信号とに基づいて誤差信号が生成される(ステップS102)。この誤差信号がウェイト制御部23に出力され、ウェイト制御部23では、例えば誤差信号を最小にするアルゴリズムに基づいて所定のウェイト(通常ウェイト)が演算される(ステップS103)。ウェイト制御部23にて決定されたウェイト(通常ウェイト)が適用されたアレイアンテナの出力信号が受信品質判定部25に出力され、受信品質判定部25にて受信品質が観測され(ステップS104)、観測された受信品質が、例えば断続的に劣化しているか否かが判定される(ステップS105)。受信品質が断続的に劣化していない(ステップS105、No)と判定された場合には、アレイアンテナの出力が図1の構成においては図示を省略した復調器に出力され、復調・復号処理が施された後、この処理フローを抜け出る。すなわち、アレイアンテナ出力信号の受信品質が良好な状態が継続している場合には、通常ウェイトの処理が継続して実行されることになる。
【0048】
一方、受信品質が断続的に劣化している(ステップS105、Yes)と判定された場合には、現在適用されているウェイトの収束度が確認された後(ステップS107)、ウェイトが収束しているか否かが判定される(ステップS108)。ウェイトが収束している(ステップS108、Yes)と判定された場合には、補助ウェイトの制御処理フロー(ステップS109〜ステップS117までの処理)に移行する。一方、ウェイトが収束していない(ステップS108、No)と判定された場合には、補助ウェイトの制御処理フローに移行する段階ではないと判断されて前述のステップS106の処理に移行する。
【0049】
さて、ウェイトが収束していると判定された場合には、補助ウェイト制御が開始され(ステップS109)、削減されたアンテナ素子に基づいてウェイト演算(補助ウェイト)が行われる(ステップS110)。受信品質判定部25では、通常ウェイトを適用した場合と補助ウェイトとを適用した場合とによる受信信号品質が比較され(ステップS111)、通常ウェイトを適用した場合の安定度が評価される。通常ウェイトを適用した方が安定化しない(すなわち補助ウェイトを適用した方が安定化する)(ステップS112、No)と判断された場合には、補助ウェイトの適用が決定され、前述のステップS106の処理に移行する。
【0050】
一方、通常ウェイトを適用した方が安定化する(ステップS112、Yes)と判定された場合には通常ウェイトが適用され(ステップS114)、さらに通常ウェイトが例えばL回(Lは所定の自然数)選択されているか否かが判定され(ステップS115)、通常ウェイトがL回選択されている場合には(ステップS115、No)、補助ウェイト機能を続行し(ステップS116)、逆に通常ウェイトがL回選択されている場合には(ステップS115、Yes)、補助ウェイト機能を終了し(ステップS116)、いずれの場合もステップS106の処理を実行した後、本処理フローを抜け出る。なお、通常ウェイトが選択されているか否かの判定回数(L)については、移動通信環境下における種々の条件(例えば、適用場所、電波環境等)に基づいて、柔軟に決定することができる。
【0051】
このように、この実施の形態の無線通信装置および通信方法は、SINRなどの受信品質を定期的に観測することにより、誤差信号が収束しているにもかかわらず受信品質が劣化するといった状態を判定することによって、所望ユーザの高速移動によってウェイト追従性能の限界を判断し、ウェイト演算(通常ウェイト)の処理対象となるアンテナ素子数を削減したアンテナ素子数に基づいてウェイト演算(補助ウェイト)を行うようにしている。補助ウェイトに基づく指向性ビーム幅は、通常ウェイトに基づく指向性ビーム幅よりも広げられているので、高速移動ユーザに対する追従性能を向上させ、受信品質の安定度を向上させることができる。
【0052】
また、補助ウェイトに要する演算量は、アンテナ素子数を減少させることで指数関数的に減少していくので、アンテナ素子数を限定することで補助ウェイト演算による処理量増加の影響を抑制することができる。
【0053】
さらに、通常ウェイトおよび補助ウェイトの両者が演算されている状態において、通常ウェイトと補助ウェイト適用による受信品質判定を行うようにしているので、切り替えによる品質劣化が起こることもなく、高速ユーザに対して好適なウェイトを瞬時に反映させることができ受信品質を改善することができる。
【0054】
以上説明したように、この実施の形態によれば、全てのアンテナ素子を対象とした通常ウェイトと、全てのアンテナ素子から選択された一部所定のアンテナ素子対象とした補助ウェイトと、が生成され、通常ウェイトに基づく通常ウェイト出力と、補助ウェイトに基づく補助ウェイト出力と、に基づいて受信信号の品質が判定され、通常ウェイト出力および補助ウェイト出力の中で受信品質の優れている方の出力が選択されるので、誤差信号が収束しているにもかかわらず受信品質が劣化するといった状態を判定することができ、高速移動ユーザに対する追従性を向上させることができる。
【0055】
なお、この実施の形態では、受信品質判定部25において、ウェイト追従限界を判定するための受信品質情報として、受信品質判定部25に入力されるアレイアンテナ出力信号の信号対干渉雑音比(SINR)を用いるようにしているが、このSINRの他にも、受信信号を復調した復調信号のビット単位の誤り率情報である受信BER(Bit Error Rate)情報や、受信信号を復調した復調信号のフレーム単位の誤り率情報である受信FER(Frame Error Rate)情報に基づいて判定するようにしてもよい。
【0056】
また、この実施の形態では、アダプティブアレイアンテナの処理基準として、MMSE基準を用いた場合の処理を一例として説明したが、このMMSE基準の他にも、到来方向が既知の所望波と到来方向が未知の干渉波などに基づいてアンテナの指向性を適応的に制御するような手法である、例えば最大SNR(Maximum Signal−to−Noise ratio:MSN)法や、拘束付出力電力最小化(Constrained Minimization of Power:CMP)法などを用いてもよい。なお、これらの手法では、所望波の到来方向情報が必要とされるが、例えばMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法などの到来方向推定手法を併用して所望波の到来方向情報を入手するようにすれば、これらのMSN法やCMP法を用いたシステム構成に、上述の図2に示したフローに基づくアルゴリズムを用いた無線通信装置を移動通信システムとして適用することもできる。
【0057】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2にかかる無線通信装置の構成を示すブロック図である。同図に示す無線通信装置は、ウェイト制御部から通知された通常ウェイトに基づいて第2の乗算器に出力する補助ウェイトを演算する補助ウェイト制御部をさらに備えるようにしている。なお、その他の基本的な構成については、実施の形態1の構成と同一あるいは同等である。
【0058】
すなわち、図3に示す無線通信装置は、複数のアンテナ素子28(281,282,・・・,28N)と、アンテナ素子28にそれぞれ接続され、アンテナ素子28が受信した受信信号をアナログ・ディジタル変換(以下「A/D変換」という)するA/D変換器29(291,292,・・・,29N)と、A/D変換器29ごとにそれぞれ具備される(接続される)一対の乗算器のうち、A/D変換器29から出力された一方のディジタル信号と自身に入力される所定の複素ウェイト(通常ウェイト)とを乗算する第1の乗算器31(311,312,・・・,31N)と、A/D変換器29から出力された他方のディジタル信号と自身に入力される所定の複素ウェイト(補助ウェイト)とを乗算する第2の乗算器32(321,322,・・・,32N)と、第1の乗算器31の乗算出力をそれぞれ加算する第1の加算器33aと、第2の乗算器32の乗算出力をそれぞれ加算する第2の加算器33bと、第1の加算器33aの加算出力信号と参照信号との差分出力(誤差信号)を出力する加算器(あるいは減算器)35と、加算器35から出力された誤差信号に基づいて第1の乗算器31に上記通常ウェイトを出力するウェイト制御部34aと、ウェイト制御部34aからの通常ウェイトが通知され、通知された通常ウェイトに基づいて第2の乗算器32に上記補助ウェイトを出力するウェイト制御部34aと、第1の加算器33aの通常ウェイト出力および第2の加算器33bの補助ウェイト出力に基づいて本装置で受信した受信信号の品質を判定する受信品質判定部36とを備えている。
【0059】
つぎに、図3に示した無線通信装置の動作について説明する。なお、通常ウェイトの演算処理等については実施の形態1と同等であり、ここでは実施の形態1とは異なる処理を中心に説明し、同等な処理についての説明は省略する。
【0060】
図3において、ウェイト制御部34aには、加算器35から誤差信号が入力される。ウェイト制御部34aでは、入力された誤差信号に基づいて生成された通常ウェイトが第1の乗算器31に出力される。また、生成された通常ウェイトは、補助ウェイト制御部34bに通知しておく。
【0061】
一方、受信品質判定部36では、所望波の受信品質(SINR)が定期的に観測され、観測された受信品質情報がウェイト制御部34aに通知される。ウェイト制御部34aでは、例えばウェイト更新の収束度合(その他、誤差信号の優劣などでもよい)が判定される。もし、ウェイトが収束していると判定された場合には、所望ユーザが高速移動ユーザであると判断され、その情報が補助ウェイト制御部34bに通知される。通知を受けた補助ウェイト制御部34bでは、現在適用されているウェイトから所望波の到来方向を推定し、その到来方向に最も近い方向にビームを向けることができる補助ウェイトを予めメモリなどに記録されている補助ウェイト情報から検索して決定する。決定された補助ウェイトは、第1の乗算器31とは異なる第2の乗算器32に出力され、補助ウェイトが適用された受信信号が受信品質判定部36に出力される。なお、通常ウェイトと補助ウェイトとの切替制御にかかる処理の詳細については後述する。
【0062】
このようにして、受信品質判定部36で判定されるSINR情報と、ウェイト制御部34aで判定されるウェイト更新の収束度合(誤差信号でもよい)に基づいて、補助ウェイトを用いた処理を行うか否かが判定され、通常ウェイトがウェイト制御部34aから第1の乗算器20に対して出力され、状況に応じて補助ウェイトが補助ウェイト制御部34bから第2の乗算器32に対して出力される。
【0063】
つぎに、通常ウェイトと補助ウェイトとの切替制御にかかる処理について図4を用いて説明する。ここで、図4は、実施の形態2における通常ウェイトと補助ウェイトとの切替制御にかかる処理フローを示すフローチャートである。なお、同図において、実施の形態1と同一あるいは同等な部分の処理については同一符号を付して示しており、その説明は省略する。
【0064】
図4に示す処理フローは、図2の処理フローにおける「削減されたアンテナ素子に基づく補助ウェイト演算処理(ステップS110)」の処理に代えて、ステップS201,S202の処理に置換されている。すなわち、通常ウェイトが収束していると判定された場合(ステップS108、Yes)に、補助ウェイト制御が開始され(ステップS109)る。補助ウェイト制御部34bでは、現在適用されているウェイト(通常ウェイト)から所望ビーム方向(すなわち所望波の到来方向)が推定され(ステップS201)、メモリに記憶されている補助ウェイト情報から所望ビーム方向の補助ウェイトが選択され(ステップS202)、以下、受信品質判定部36にて、通常ウェイトと補助ウェイトとの安定度比較処理(ステップS111〜S114)および補助ウェイト機能の継続判定処理(ステップS115〜S117)が行われる。
【0065】
このように、図4に示す処理フローが適用された無線通信装置あるいは通信方法によれば、定期的に観測されたSINRなどの受信品質情報に基づいて、誤差信号が収束しているにもかかわらず受信品質が劣化するといった状態を判定することによって、所望ユーザの高速移動に起因するウェイト追従性能の限界を判断し、予め記録されている複数の補助ウェイト情報から到来推定方向にビームを向けたビーム幅の広い補助ウェイトを適用するようにしているので、高速移動ユーザに対する追従性能を向上させ、受信品質の安定度を向上させることができる。
【0066】
なお、図4に示す処理フローに代えて、図5に示す処理フローを適用することもできる。ここに、図5は、実施の形態2における通常ウェイトと補助ウェイトとの切替制御にかかる図4とは異なる他の処理フローを示すフローチャートである。
【0067】
図5に示す処理フローは、図4の処理フローにおける「メモリに記憶されている補助ウェイト情報から所望ビーム方向の補助ウェイトを選択する処理(ステップS202)」の処理がステップS301の処理に置換されている。すなわち、現在適用されている通常ウェイトに基づいて補助ウェイトを選択する際に、図4の処理フローでは所望ビーム方向の補助ウェイトを選択するようにしていたが、図5の処理フローでは所望ビーム方向付近(近傍)の補助ウェイトを選択するようにしている。
【0068】
より具体的に説明すると、図4の処理フローは、補助ウェイトが“通常ウェイトよりもビーム幅の広いビーム”を360°全周の所定方向へ向けるウェイト”であり、またその適用手法が、現在適用されているウェイトから所望のビーム方向を推定し、その到来推定方向に“最も近いビーム方向”の補助ウェイトを予めメモリに記録しておいた補助ウェイト情報から検索して決定する手法であった。一方、図5の処理フローは、補助ウェイト情報が“図4の処理フローにかかる補助ウェイトよりもビーム幅の鋭いビーム”を360°全周の所定方向へ向けるウェイトであり、またその適用方法も、現在適用されているウェイトから所望のビーム方向を推定し、その到来推定方向の“前後±a°(aは推定精度に基づいて決定される任意の実数)のビーム方向”の補助ウェイトを予めメモリに記録しておいた複数の補助ウェイト情報から検索して決定する手法である。なお、このときに到来推定方向に向けられるビームは、±a°の範囲で変更されることにより、受信品質判定部36にて通常ウェイトと比較される補助ウェイトとして、最終的には受信品質の高い補助ウェイトが採択されるようになり、その結果、受信利得が向上して装置全体の受信品質が向上するとともに、受信品質の安定度も向上する。
【0069】
このように、図5に示す処理フローが適用された無線通信装置あるいは通信方法によれば、メモリに記録されている複数の補助ウェイト情報から到来推定方向の前後±a°のビーム方向に向けられる1以上の補助ウェイトを検索して決定する際に、到来推定方向の精度が高い場合にはビーム幅の鋭いビームを用いることができ、また到来推定方向の精度が低い場合あるいは低下した場合には、ビーム幅の鋭いビームを用いつつ到来方向からビームが外れないような複数のビームを所望波に向けることができるので、到来推定方向の推定精度に依存せず、受信品質を向上させることができる。また、ビーム幅の鋭いビームを用いることで受信利得を向上させることができるので、受信品質の安定度を向上させることができる。
【0070】
なお、図4および図5に示す処理フローともに、補助ウェイト情報をあらかじめメモリに記憶させているだけなので、補助ウェイト追加による処理量増加の影響はない。また、通常ウェイトおよび補助ウェイトの両者が演算されている状態において、通常ウェイトと補助ウェイト適用による受信品質判定を行うようにしているので、切り替えによる品質劣化が起こることもなく、高速ユーザに対して好適なウェイトを瞬時に反映させることができ受信品質を改善することができる。
【0071】
なお、この実施の形態においても、実施の形態1と同様に、ウェイト追従限界を判定するための受信品質情報として、アレイアンテナ出力信号の信号対干渉雑音比(SINR)に加えて、受信BER情報や受信FER情報を用いるようにしてもよい。
【0072】
また、この実施の形態においても、実施の形態1と同様に、最大SNR法や拘束付出力電力最小化法などの指向性ビーム制御技術と、MUSIC法などの到来方向推定技術と、この実施の形態の処理手法とを組み合わせることにより、移動通信システムに適用可能な無線通信装置として構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上のように、本発明にかかる無線通信装置および通信方法は、アダプティブアレイアンテナ技術が適用された無線通信装置および通信方法移として有用であり、特に、高速移動ユーザに対する追従性能が問題となる場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1における通常ウェイトと補助ウェイトとの切替制御にかかる処理フローを示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態2における通常ウェイトと補助ウェイトとの切替制御にかかる処理フローを示すフローチャートである。
【図5】実施の形態2における通常ウェイトと補助ウェイトとの切替制御にかかる図4とは異なる他の処理フローを示すフローチャートである。
【図6】アダプティブアレイアンテナの基本的な動作原理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0075】
18,28 アンテナ素子
19,29 A/D変換器
20,21,31,32 乗算器
22a,22b,24,33a,33b,35 加算器
23,34a ウェイト制御部
25,36 受信品質判定部
34b 補助ウェイト制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N(Nは2以上の整数)個のアンテナ素子にて構成されたアレイアンテナの指向性を適応的に変化させることができるビームフォーミング機能を有する無線通信装置において、
前記アレイアンテナを構成する全てのアンテナ素子のそれぞれに対する重みづけ情報である通常ウェイトと、該アレイアンテナを構成する全てのアンテナ素子の中から選択された一部所定のアンテナ素子のそれぞれに対する重みづけ情報である補助ウェイトと、を生成出力するウェイト制御部と、
前記ウェイト制御部から出力された通常ウェイトが各アンテナ素子で受信された受信信号に乗算され、該乗算された各受信信号の加算出力である通常ウェイト出力と、該ウェイト制御部から出力された補助ウェイトが前記一部所定のアンテナ素子で受信された受信信号に乗算され、該乗算された各受信信号の加算出力である補助ウェイト出力と、に基づいて受信信号の品質を判定する受信品質判定部と、
を備え、
前記受信品質判定部は、前記通常ウェイト出力および前記補助ウェイト出力のうち、受信品質の優れている方の出力を出力信号として選択することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記受信品質判定部は、観測された受信信号の受信品質情報と所定の品質水準とに基づいて該受信信号の品質劣化情報を生成し、
前記ウェイト制御部は、前記受信品質判定部から出力された品質劣化情報と、該品質劣化情報が通知された際に適用されている通常ウェイトまたは補助ウェイトの収束度の情報と、に基づいてウェイト追従限界を判定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記ウェイト制御部は、前記N個のアンテナ素子から素子数を減じたN−M個(MはN−1以下の自然数)のアンテナ素子を対象として前記補助ウェイト情報を生成することを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記ウェイト制御部は、所望波の到来方向を前記通常ウェイトに基づいて推定し、該推定された所望波の到来推定方向に基づいて前記補助ウェイトを生成することを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記ウェイト制御部は、所望波の到来方向を前記通常ウェイトに基づいて推定し、予め定められている補助ウェイトの中から前記所望波の到来推定方向に最も近い方向のビームを有する補助ウェイトを選択して出力することを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記補助ウェイトにて形成されるビーム幅は、前記通常ウェイトにて形成されるビーム幅よりも広いことを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記ウェイト制御部は、所望波の到来方向を前記通常ウェイトに基づいて推定し、予め定められている補助ウェイトの中から前記所望波の到来推定方向の近傍方向のビームを有する補助ウェイトを選択変更して出力し、
前記受信品質判定部は、前記選択変更された補助ウェイトに基づいて受信信号の品質を判定することを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記受信品質判定部が観測する受信信号の受信品質情報が、受信SINR情報であることを特徴とする請求項2〜7のいずれか一つに記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記受信品質判定部が観測する受信信号の受信品質情報が、受信BER情報であることを特徴とする請求項2〜7のいずれか一つに記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記受信品質判定部が観測する受信信号の受信品質情報が、受信FER情報であることを特徴とする請求項2〜7のいずれか一つに記載の無線通信装置。
【請求項11】
複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナの指向性を適応的に変化させることができるビームフォーミング機能を有する無線通信装置に適用される通信方法において、
前記アレイアンテナの出力信号と所定の参照信号との差分信号である誤差信号に基づいて該アレイアンテナを構成する全てのアンテナ素子のそれぞれに対する重みづけ情報である通常ウェイトを算出する通常ウェイト算出処理ステップと、
前記アレイアンテナを構成する全てのアンテナ素子の中から選択された一部所定のアンテナ素子のそれぞれに対する重みづけ情報である補助ウェイトを算出する補助ウェイト算出処理ステップと、
前記通常ウェイト算出処理ステップにて生成された通常ウェイトに基づく通常ウェイト出力と、前記補助ウェイト算出処理ステップにて生成された補助ウェイトに基づく補助ウェイト出力と、に基づいて受信信号の品質を判定する受信信号品質判定処理ステップと、
適用されている通常ウェイトまたは補助ウェイトの収束度を判定する収束判定処理ステップと、
を含むことを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−295736(P2006−295736A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116216(P2005−116216)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】