説明

無線通信路中継方法、無線基地局装置及び通信端末

【課題】無線通信路中継方法、無線基地局装置及び通信端末に関し、上位装置との回線接続が切断された無線基地局の配下の無線端末がデータ通信サービスを受けられるよう、無線通信路を確立する。
【解決手段】上位装置RNC1との回線接続が切断された無線基地局BTS1から、上位装置との回線切断状態を示す報知情報を、配下の無線エリアに在圏する無線端末MS1,UE2に送信し、無線基地局BTS1及び該隣接する無線基地局BTS2の双方の無線エリアに在圏する無線端末UE2を中継用端末として設定する。無線端末MS1と無線基地局BTS1のとの間で送受される送受データを、無線基地局BTS1と中継用端末UE2との間、中継用端末UE2と無線基地局BTS2との間で、中継用フラグを付与してそれぞれ送受する。無線基地局BTS2から中継フラグを除去した送受データを、無線基地局BTS2の上位装置RNC2との間で送受する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動無線通信システムにおける無線通信路中継方法、無線基地局装置及び無線端末に関する。本発明は、例えば、上位装置と通信が遮断された無線基地局の配下に在圏する無線端末の無線通信路を中継して確立する技術に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
図16に一般的な移動無線通信システムにおける無線基地局の通信障害時のサービス態様の一例を示す。図16に示すように、無線基地局(BTS1)の無線エリアに在圏する携帯電話等の無線端末(MS1,MS2)は、無線基地局(BTS1)と無線リンクにより接続され、上位装置である無線ネットワーク制御装置(RNC1)を介してモバイル通信網に接続される。
【0003】
無線基地局(BTS1)とその上位装置(RNC1)との間の回線接続(例えばIubインタフェース)が、災害の発生等により切断された場合、該無線基地局(BTS1)の配下に在圏するとともに、隣接する正常な無線基地局(BTS2)の配下にも在圏する無線端末(MS2)は、該無線基地局(BTS2)への収容替え(ハンドオーバー)が行われる。その結果、無線端末(MS2)は、無線基地局(BTS2)の上位の無線ネットワーク制御装置(RNC2)を介してモバイル通信網と接続される。
【0004】
しかし、無線基地局(BTS1)の配下の無線端末(MS1)は、他の無線基地局(BTS2)の圏外であるため、無線基地局(BTS2)への収容替え(ハンドオーバー)は行われず、圏外の無線端末となり、通信サービスを受けられなくなる。
【0005】
無線基地局の障害発生時に、無線端末が通信サービスを受けられるよう、無線通信を中継する手法は幾つか提案されている。例えば、無線基地局(BTS1)の障害時にその配下の無線端末(MS1)は、周辺の他の無線端末(MS2)と端末−端末間通信の同期確立を行い、無線端末(MS2)へ通信データを送信し、無線端末(MS2)が該通信データを中継し、正常な無線基地局(BTS2)を介してモバイル通信網に送信する手法などが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
また、圏外となった無線端末(MS1)が、周辺の他の無線端末(MS2)に対して、緊急通報等の通信データを直接送信し、他の無線端末(MS2)の中継モードを利用して、モバイル通信網にアクセスする手法などが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/035424号
【特許文献2】特開2010−10875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
無線基地局の通信障害時における従来提案されている無線通信の中継手法は、障害の発生した無線基地局の配下の無線端末が、他の正常な無線基地局の配下に在圏する他の無線端末との間で通信データを直接送受し、該他の無線端末の中継機能を利用して、無線通信を中継するものである。
【0009】
そのため、従来の中継手法による無線端末は、無線基地局とデータを送受する通信機能のほかに、他の無線端末とデータを直接送受する通信機能(ハードウェア及びソフトウェア)を備えていため、その分、多くのコストを要するものとなっていた。本発明は、無線端末間でデータを直接送受する通信機能を備えることなく、上位装置との回線接続が切断された無線基地局の配下の無線端末がデータ通信サービスを受けられるよう、無線通信路を確立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する一形態としての無線通信路中継方法は、上位装置との回線接続が切断された第1の無線基地局から、上位装置との回線切断状態を示す共通制御信号を、配下の無線エリアに在圏する無線端末に送信し、前記第1の無線基地局及び該第1の無線基地局に隣接する第2の無線基地局の双方の無線エリアに在圏する無線端末を中継用端末として設定する第1のステップと、前記第1の無線基地局の無線エリアに在圏する無線端末と前記第1の無線基地局との間で送受される送受データを、前記第1の無線基地局と前記中継用端末との間、及び前記中継用端末と前記第2の無線基地局との間で、中継用フラグを付与してそれぞれ送受する第2のステップと、前記第2の無線基地局から、前記中継フラグを除去した前記送受データを、該第2の無線基地局の上位装置との間で送受する第3のステップと、を含むものである。
【0011】
また、他の形態としての無線基地局装置は、上位装置との回線切断状態を共通制御信号により配下の無線エリアに在圏する無線端末に通知する回線断通知手段と、前記無線端末から送信され、中継可能な無線端末か否かを示す中継モード情報を受信し、中継可能な無線端末であることを示す中継モード情報を送信した無線端末の中から中継用端末を選択し、該中継用端末との間に無線リンクを確立する中継用端末設定手段と、前記配下の無線エリアに在圏する無線端末との間で送受される送受データを、中継用フラグを付与して前記中継用端末との間で送受し、前記中継用フラグを付与したデータから、中継用フラグを除去した送受データを、上位装置との間で送受する送受データ中継手段と、を備えたものである。
【0012】
また、他の形態としての無線端末は、第1の無線基地局から送信され、上位装置との回線切断状態を示す共通制御信号を受信し、前記第1の無線基地局に隣接する第2の無線基地局から受信される共通制御信号を基に、前記第1及び第2の無線基地局に、中継可能な無線端末であることを示す中継モード情報を通知する中継モード通知手段と、前記第1の無線基地局配下の無線エリアに在圏する無線端末により送受される送受データであって、前記第1の無線基地局から中継用フラグを付与して送信されるデータを、前記第2の無線基地局へ中継し、前記第2の無線基地局から中継用フラグを付与して送信されるデータを、前記第1の無線基地局へ中継する送受データ中継手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
上位装置との回線が切断された無線基地局と近隣の無線基地局の双方の無線エリアに在圏する一般無線端末を中継用端末として使用し、上位装置との回線が切断された無線基地局配下の無線端末のデータ通信を、無線端末間でデータを直接送受することなく、他の無線基地局へ中継する通信路を確立することができ、上位装置との回線接続が切断された無線基地局配下の無線端末がデータ通信サービスを受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】開示の無線通信路中継の一形態を示す図である。
【図2】中継用端末が複数存在する場合の形態を示す図である。
【図3】中継用端末と中継用基地局とを多段接続した形態を示す図である。
【図4】中継用端末の設定手順の例を示す図である。
【図5】上位装置と通信断の無線基地局配下の無線端末の中継パスの確立手順の例を示す図である。
【図6】アタッチ信号又は発信信号並びに着信信号の形態例を示す図である。
【図7】上位装置と通信断の無線基地局配下の無線端末からの発信手順の例を示す図である。
【図8】上位装置と通信断の無線基地局配下の無線端末の発信動作シーケンスの例を示す図である。
【図9】上位装置と通信断の無線基地局配下の無線端末への着信手順の例を示す図である。
【図10】中継用端末の設定情報の更新手順の例を示す図である。
【図11】無線基地局の障害復旧時の動作手順の例を示す図である。
【図12】中継用端末として動作する無線端末の機能ブロックの構成例を示す図である。
【図13】中継用基地局として動作する無線基地局の機能ブロックの構成例を示す図である。
【図14】無線端末からの発信時の無線リンクの確立の手順例を示す図である。
【図15】無線端末への着信時の無線リンクの確立の手順例を示す図である。
【図16】一般的な移動無線通信システムにおける無線基地局の通信障害時のサービス態様の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
開示の無線通信路中継の手法について図1を参照して説明する。無線基地局(BTS1)が災害等により上位装置(RNC1)との回線接続が切断された場合に、当該無線基地局(BTS1)配下に在圏し、かつ隣接した他の無線基地局(BTS2)と通信可能な一般の無線端末(UE2)を中継用端末として設定する。
【0016】
そして、障害状態にある無線基地局(BTS1)配下の無線端末(MS1)の送受データを、当該無線基地局(BTS1)と中継用端末(UE2)とを介して、正常な無線基地局(BTS2)に中継する。こうすることにより、障害状態にある無線基地局(BTS1)配下の無線端末(MS1)は、正常な無線基地局(BTS2)とその上位装置(RNC2)を介して通信サービスをうけることができる。
【0017】
また、障害状態にある無線基地局(BTS1)に隣接する無線基地局(BTS2)が、同様に上位装置(RNC2)との回線接続が切断されている場合に、該無線基地局(BTS2)が隣接する正常な無線基地局と中継用端末とを多段接続し、無線通信路を確保するものである。
【0018】
上述の無線通信路中継を実現するために、無線基地局及び無線端末に以下の機能を具備する。
(1)無線基地局装置(BTS1)は、上位装置(RNC1)との回線接続(Iubインタフェース)が切断した場合に、自律的に配下の無線端末(MS1,UE2)に対して、共通制御信号により故障状態を通知する機能を具備する。以下の実施形態の説明において、無線基地局装置から無線端末に共通制御信号により通知する情報を報知情報と称する。
【0019】
(2)上記報知情報を受信した無線端末(UE2)は、上記無線基地局(BTS1)配下の無線端末(MS1)の送受データを中継する機能を具備する。具体的には、無線端末(MS1)から送信された信号を、無線基地局装置(BTS1)が中継用フラグを付与して中継用端末(UE2)に送信する。該中継用端末(UE2)は、無線端末(MS1)からの信号を、無線基地局装置(BTS1)を介して受信し、該信号に中継用フラグを付与して中継用の無線基地局(BTS2)へ送信する中継機能を備える。
【0020】
また、無線基地局(BTS1)の配下の無線端末(MS1)に対して、中継用の無線基地局(BTS2)から中継用フラグを付与して送信した呼び出し信号を、中継用端末(UE2)で受信する。そして、該中継用端末(UE2)は、該呼び出し信号を無線基地局(BTS1)へ中継用フラグを付与して送信する中継機能を具備する。
【0021】
(3)中継用端末(UE2)は、上位装置(RNC1)と回線接続が切断した無線基地局(BTS1)からの故障通知の報知情報を受信したとき、他の無線基地局(BTS2)との無線通信状況を、該無線基地局(BTS1)に通知する機能を具備する。
(4)中継用端末(UE2)は、周期的に無線基地局(BTS2)との無線通信状況を監視し、中継可否を中継先の無線基地局(BTS1)へ通知する機能を具備する。
【0022】
(5)無線基地局装置(BTS1)は、中継用端末(UE2)から中継用のアタッチ(ATTACH)信号を受信し、中継用端末(UE)候補リストの作成機能及び中継用端末(UE)の優先順位を決定する機能を具備する。なお、アタッチ(ATTACH)信号は、無線端末から無線基地局へ、無線通信サービスの利用のために送信される位置登録要求等を含む信号である。
(6)無線基地局装置(BTS1,BTS2)は、中継用端末(UE2)に無線リソース(回線断モード用コード)を割り当て、上位装置(RNC1)と回線接続が切断した無線基地局(BTS1)配下の無線端末(MS1)の信号を中継する機能を具備する。
【0023】
(7)中継用端末(UE2)は、無線基地局(BTS1)から送信される故障状態の報知情報を監視し、故障状態の変化により中継モードを変更する機能を具備する。
(8)上位装置との回線接続の故障状態を示す回線断モードを判断し、中継用無線基地局と中継用端末とを多段に接続し、中継する機能を具備する。
【0024】
ここで、上述の中継用端末(UE)候補リスト等、無線基地局で作成するリストについて説明する。表1に中継用端末(UE)候補リストを示す。
【表1】

【0025】
中継用端末(UE)候補リストは、上位装置(RNC1)との回線が切断した無線基地局(BTS1)が、配下の無線端末から中継用のアタッチ(ATTACH)信号を受信し、該中継用のアタッチ(ATTACH)信号を基に、中継用端末となり得る無線端末の番号(UE−ID)を格納する。
【0026】
図2に示すように、中継用端末となり得る無線端末(UE2,UE3)が複数存在する場合、無線基地局(BTS1)は、中継用端末(UE)候補リストの無線端末の番号(UE−ID)の中から、ラウンドロビン等による優先順位に基づき、1つの中継用端末(UE)を選択する。
【0027】
中継用端末(UE)候補リストには、中継用端末となり得る無線端末の番号(UE−ID)のほかに、該無線端末の番号(UE−ID)毎に中継モード及び無線品質の情報を格納する構成とすることができる。ここで、中継モードは、無線基地局と上位装置との回線接続の障害状態による中継形態の種別を示し、中継用アタッチ(ATTACH)信号に載せて各中継用端末(UE)から無線基地局(BTS1)へ通知される。
【0028】
中継モード0は、図1又は図2に示すように、上位装置(RNC1)との回線接続が切断された無線基地局(BTS1)配下に在圏し、隣接する正常な無線基地局(BTS2)の配下に在圏しない無線端末(MS1)から無線基地局(BTS1)へ通知され、中継不可であることを示す。
【0029】
中継モード1は、図1又は図2に示すように、上位装置(RNC1)との回線接続が切断された無線基地局(BTS1)配下に在圏し、隣接する他の正常な無線基地局(BTS2)の配下にも在圏する無線端末(UE2,UE3)から無線基地局(BTS1)へ通知され、正常な無線基地局(BTS2)は、その上位装置(RNC2)との回線接続が確立されている場合、該無線基地局(BTS2)を介して直接中継可能であることを示す。
【0030】
中継モード2は、図3に示すように、無線基地局(BTS1)の上位装置(RNC1)の回線が切断され、その隣接無線基地局(BTS2)の上位装置(RNC2)の回線も切断され、その隣接無線基地局(BTS3)の上位装置(RNC3)の回線が正常に接続されている場合、中継用の無線端末(UE2)から無線基地局(BTS1)へ通知される。
【0031】
中継用の無線端末(UE2)は、上位装置(RNC1)との回線接続が切断された無線基地局(BTS1)配下に在圏すると共に、その隣接無線基地局(BTS2)の配下にも在圏している。しかし、該隣接無線基地局(BTS2)は、上位装置との回線が切断されているため、該隣接無線基地局(BTS2)を介して中継することはできない。
【0032】
但し、無線端末(UE2)は、無線基地局(BTS2)、中継用の無線端末(UE4)及び無線基地局(BTS3)を介して、無線通信路を確立することが可能である。そこで、無線端末(UE2)は、無線基地局(BTS2)及び無線基地局(BTS3)を介する間接接続により中継可能であることを、中継モード2として無線基地局(BTS1)へ通知する。
【0033】
表1の中継用端末(UE)候補リストの無線品質指標は、各中継用端末(UE)における無線基地局(BTS1,BTS2)からの信号の受信電力と閾値Pとの比較結果を示す。該無線品質指標は、中継用アタッチ(ATTACH)信号に載せ、各中継用端末(UE)から無線基地局(BTS1)に通知される。
【0034】
表2に無線品質指標の一例を示す。
【表2】

【0035】
無線品質指標Xは、無線基地局(BTS1)の受信電力が閾値P以上で、無線基地局(BTS2)の受信電力が閾値P以上であることを示すものとする。
無線品質指標Yは、無線基地局(BTS1)の受信電力が閾値P以上で、無線基地局(BTS2)の受信電力が閾値P以下であることを示すものとする。
無線品質指標Zは、無線基地局(BTS1)の受信電力が閾値P以下で、無線基地局(BTS2)の受信電力が閾値P以下であることを示すものとする。
即ち、無線品質はX,Y,Zの順で高く、中継用端末(UE)の選択に際して、この無線品質指標を基に優先順位を決定する構成とすることができる。
【0036】
一方、中継用の無線端末(UE)は、中継用の無線基地局(BTS2)に対して、中継対象の無線基地局(BTS1)の識別番号(BTS−ID)及び自端末の番号(UE−ID)を通知する。中継用の無線基地局(BTS2)では、それらの情報を元に、中継対象基地局(BTS)リストを作成する。
【0037】
表3に中継対象基地局(BTS)リストの一例を示す。
【表3】

【0038】
中継対象基地局(BTS)リストには、中継対象の無線基地局(BTS)の識別番号(BTS−ID)番号対応に、該無線基地局(BTS)の中継に使用することができる中継用端末(UE)の識別番号(UE−ID)を保持する。中継対象の無線基地局(BTS)へ信号を送信する際に、該無線基地局(BTS)の中継に使用可能な中継用端末(UE)が複数ある場合、ラウンドロビング等により1つの中継用端末(UE)を選択する構成とすることができる。なお、一定期間使用されていない中継用端末(UE)の識別番号(UE−ID)は破棄する。
【0039】
更に、中継用の無線基地局(BTS2)は、中継対象の無線基地局(BTS)の識別番号(BTS−ID)毎に、その配下の中継対象の無線端末(MS)の識別番号(MS−ID)を格納した中継対象端末(MS)リストを備える。中継対象の無線基地局(BTS1)配下の無線端末(MS1)は、該無線端末(MS1)から送信されるアタッチ(ATTACH)信号が、無線基地局(BTS1)及び中継端末(UE2)を介して中継信号として中継用の無線基地局(BTS2)で受信されるので、その受信信号を基に認識される。なお、一定期間使用されていない無線端末(MS)の識別番号(MS−ID)は破棄する。
【0040】
表4に中継対象端末(MS)リストの一例を示す。
【表4】

【0041】
次に、中継用端末(UE2)の設定手順について図4を参照して説明する。中継用端末(UE2)の設定は以下の手順により行われる。まず、無線基地局(BTS1)では、上位装置との回線接続(Iubインタフェース)の切断を検出する(4−1)。無線基地局(BTS1)では、回線接続状態時の報知情報に回線断モード0の情報を追加し、無線基地局(BTS1)配下の無線端末(MS)へ発信する(4−2)。
【0042】
ここで、回線断モード0は、中継不可であることを示す。回線断モード1は、直接中継可能であることを示す。回線断モード2は、間接中継可能であること、即ち、他の隣接する正常な無線基地局を介して間接的に中継可能であることを示す。回線断モード1の無線基地局は、その上位装置と中継データを送受し、回線断モード2の無線基地局は、中継データを更に他の中継用端末と送受することとなる。
【0043】
無線基地局(BTS1)から回線断モード0の情報を受信した無線端末(UE2)は、無線基地局(BTS1)以外で受信電力の高い無線基地局(BTS2)からの報知情報を受信する(4−3)。無線端末(UE2)は、近隣の無線基地局(BTS2)の報知情報をチェックする(4−4)。
【0044】
該報知情報が「近隣に他の無線基地局(BTS)が存在しない」ことを示す場合、無線端末(UE2)は、無線基地局(BTS1)に対して中継用アタッチ(ATTACH)信号を中継モード0(中継不可)として発信する(4−5)。無線基地局(BTS1)は、無線端末(UE2)からの中継用アタッチ(ATTACH)信号を受信し、無線端末(UE2)は、中継用端末となれないことを認識する(4−6)。
【0045】
上述の報知情報が「近隣に正常の無線基地局(BTS)が存在する」ことを示す場合、無線端末(UE2)は、無線基地局(BTS1)に対して中継用アタッチ(ATTACH)信号を中継モード1(直接中継可)として発信し、また、無線基地局(BTS2)に、無線基地局(BTS1)の中継用端末となったことを通知する(4−7)。
【0046】
無線基地局(BTS1)は、中継用端末(UE2)からの中継用アタッチ(ATTACH)信号を受信した後、中継用端末(UE)リストに中継用端末(UE2)を中継モード1として追加し、中継用端末(UE2)に対して回線断モード用コードの無線リソースを割り当てる。
【0047】
また、中継用の無線基地局(BTS2)は、中継対象の無線基地局(BTS1)を格納した中継対象基地局(BTS)リストを作成する(4−8)。中継対象の無線基地局(BTS1)は、回線断モード0を回線断モード1へ変更した報知情報を、無線基地局(BTS1)配下の無線端末(MS)へ発信する(4−9)。
【0048】
上述の無線基地局(BTS2)からの報知情報が、回線断モード1又は回線断モード2を示している場合、無線端末(UE2)は、中継対象の無線基地局(BTS1)に対して、中継用アタッチ(ATTACH)信号を中継モード2(間接中継可能)として発信し、また、無線基地局(BTS2)に対して無線基地局(BTS1)の中継用端末となったことを通知する(4−10)。
【0049】
中継対象の無線基地局(BTS1)は、中継用端末(UE2)からの中継用アタッチ(ATTACH)信号を受信した後、中継用端末(UE)リストに、中継用端末(UE2)を中継モード2として追加し、中継用端末(UE2)に対して回線断モード用コードの無線リソースを割り当てる。
【0050】
また、中継用の無線基地局(BTS2)は、中継対象の無線基地局(BTS1)を格納した中継対象基地局(BTS)リストを作成する(4−11)。中継対象の無線基地局(BTS1)は、回線断モード0を回線断モード2へ変更した報知情報を、無線基地局(BTS1)配下の無線端末(MS)へ発信する(4−12)。以上の処理手順により中継用端末の設定が完了する。
【0051】
次に、上位装置との回線が切断された無線基地局の配下の無線端末(MS1)の中継パスの確立手順について図5を参照して説明する。無線端末(MS1)の中継パスの確立は、以下の処理手順により実施される。無線端末(MS1)が無線基地局(BTS1)から、回線断モード1又は回線断モード12の報知情報を受信する(5−1)。
【0052】
無線端末(MS1)は、無線基地局(BTS1)に対して、通常のアタッチ(ATTACH)信号を発信する(5−2)。無線基地局(BTS1)は、無線端末(MS1)からのアタッチ(ATTACH)信号を受信すると、先に作成した中継用端末(UE)候補リストの中継用端末の順位付けを行い、中継用端末として決定した中継用端末(UE2)に対してパスの設定を行う(5−3)。
【0053】
無線基地局(BTS1)は、無線端末(MS1)からのアタッチ(ATTACH)信号に中継用フラグを付与した後、該アタッチ(ATTACH)信号を個別チャネル信号により、中継用端末(UE2)へ送信する(5−4)。中継用端末(UE2)は、無線基地局(BTS1)から中継された、無線端末(MS1)からのアタッチ(ATTACH)信号を含む個別チャネル信号を受信した後、中継用フラグをチェックする。
【0054】
中継用端末(UE2)は、受信した個別チャネル信号に中継用フラグが付与されていた場合、無線基地局(BTS2)に対して、該アタッチ(ATTACH)信号が含まれている個別チャネル信号に中継用フラグを付与し、無線基地局(BTS2)へ送信する(5−5)。
【0055】
無線基地局(BTS2)は、中継用端末(UE2)から受信した、中継アタッチ(ATTACH)信号を含む個別チャネル信号から、中継用フラグを除去した中継アタッチ(ATTACH)信号を、通常のアタッチ(ATTACH)信号として上位装置(RNC2)へ通知する(5−6)。上位装置(RNC2)は、無線基地局(BTS2)からのアタッチ(ATTACH)信号により、無線端末(MS1)のアタッチを認識する(5−7)。以上の処理手順により、無線端末(MS1)の中継パスの確立が完了する。
【0056】
上位装置(RNC1)と切断された無線基地局(BTS1)配下の無線端末(MS1)は、無線基地局(BTS1)−中継用端末(UE2)−無線基地局(BTS2)−上位装置(RNC2)の経路で、上位装置(RNC2)に対してアタッチを行うこととなる。従って、無線端末(MS1)は、あたかも上位装置(RNC2)に接続された無線基地局(BTS2)の配下に在圏しているように扱われる。
【0057】
図6にアタッチ信号又は発信信号並びに着信信号の形態を示す。図6の(a)は無線端末(MS1)からのアタッチ信号又は発信信号の形態を示している。
(a1)は無線端末(MS1)から無線基地局(BTS1)へのアタッチ信号又は発信信号を示している。
(a2)は無線基地局(BTS1)から中継用端末(UE2)への中継用フラグ並びにアタッチ信号又は発信信号を示している。この信号は、個別チャネル信号により送信される。
【0058】
(a3)は中継用端末(UE2)から無線基地局(BTS2)への中継用フラグ並びにアタッチ信号又は発信信号を示している。この信号は、個別チャネル信号により送信される。
(a4)は無線基地局(BTS2)から上位装置(RNC2)へのアタッチ信号又は発信信号を示している。
【0059】
図6の(b)は無線端末(MS1)への着信信号の形態を示している。
(b1)は上位装置(RNC2)から無線基地局(BTS2)への着信信号を示している。
(b2)は無線基地局(BTS2)から中継用端末(UE2)への中継用フラグ及び着信信号を示している。この信号は個別チャネル信号により送信される。
【0060】
(b3)は中継用端末(UE2)から無線基地局(BTS1)への中継用フラグ及び着信信号を示している。この信号は個別チャネル信号により送信される。
(b4)は無線基地局(BTS1)から無線端末(MS1)への着信信号を示している。
【0061】
上位装置との回線が切断された無線基地局(BTS1)の配下の無線端末(MS1)からの発信動作について図7を参照して説明する。無線端末(MS1)からの発信は、以下の手順で処理される。無線基地局(BTS1)の配下に在圏する無線端末(MS1)から発信イベントが発生し(7−1)、無線端末(MS1)は、無線基地局(BTS1)に発信要求を送信する(7−2)。
【0062】
無線基地局(BTS1)は、中継用端末(UE)候補リストから優先順位の高い中継用端末(UE2)を選択し、該中継用端末(UE2)に対してパス設定を行う(7−3)。無線基地局(BTS1)は、無線端末(MS1)からの発信信号に、中継用フラグを付与し、該信号を個別チャネル信号により中継用端末(UE2)へ送信する(7−4)。
【0063】
中継用端末(UE2)は、無線基地局(BTS1)から送信された上記の信号を受信し、中継用の無線基地局(BTS2)に対して、無線端末(MS1)からの信号であることを示す中継用フラグを付与し、無線端末(MS1)から受信した発信信号を無線基地局(BTS2)へ送信する(7−5)。
【0064】
無線基地局(BTS2)は、中継用端末(UE2)から上記の信号を受信し、該信号が中継用端末(UE2)自身からの信号か、中継用端末(UE2)により中継された信号かを、付加された中継用フラグにより判断する。中継された信号の場合は、中継対象端末(MS)リストを更新し、上位装置(RNC2)へ通知する(7−6)。
【0065】
以上の処理手順により、無線端末(MS1)からの発信動作が完了する。これにより、上位装置(RNC1)との通信が遮断された無線基地局(BTS1)配下の無線端末(MS1)は、中継用端末(UE2)を経由し、あたかも上位装置(RNC2)に接続された無線基地局(BTS2)の配下に無線端末(MS1)が在圏しているように扱われる。
【0066】
上位装置と回線が切断された無線基地局(BTS1)配下の無線端末(MS1)の発信の動作シーケンスについて図8を参照して説明する。無線端末(MS1)から発信イベントが発生すると(8−1)、無線端末(MS1)は、無線基地局(BTS1)との間に無線リンクを確立し(8−2)、無線基地局(BTS1)に発信信号のデータを送信する(8−3)。
【0067】
無線基地局(BTS1)は、無線端末(MS1)から送信されたデータが中継対象の信号か否かを判断し(8−4)、中継対象の信号の場合、中継用端末(UE)を選択する(8−5)。その後、無線基地局(BTS1)は、中継用端末(UE2)との間に無線リンクを確立する(8−6)。そして、無線端末(MS1)から発信データに中継用フラグを付与し(8−7)、中継用端末(UE2)にそれらのデータを送信する(8−8)。
【0068】
中継用端末(UE2)は、受信したデータが中継信号か否かを判断し(8−9)、中継信号である場合、受信したデータを保持し(8−10)、無線基地局(BTS1)との無線リンクを一旦切断する(8−11)。その後、中継用端末(UE2)は、該データに中継用フラグを付与し(8−12)、中継用の無線基地局(BTS2)との間に無線リンクを確立し(8−13)、該無線基地局(BTS2)に該データを送信する(8−14)。該無線基地局(BTS2)は、受信したデータが中継信号か否かを判断し(8−15)、中継信号の場合、中継用フラグを除去した受信データを上位装置(RNC2)へ送信する(8−16)。
【0069】
上位装置と通信が遮断された無線基地局配下の無線端末への着信手順について図9を参照して説明する。上位装置(RNC1)と回線が切断された無線基地局(BTS1)の配下の無線端末(MS1)への着信動作は以下の手順で実施される。
【0070】
上位のモバイル通信網では、無線端末(MS1)が無線ネットワーク制御装置(RNC2)に接続された無線基地局(BTS2)の配下に在圏していると判断しているため、無線端末(MS1)への着信時の呼び出しを、無線ネットワーク制御装置(RNC2)に対して実施する(9−1)。
【0071】
無線ネットワーク制御装置(RNC2)は、配下の無線基地局(BTS2)に対して無線端末(MS1)の呼び出し信号を送信する(9−2)。無線基地局(BTS2)は、中継対象端末(MS)リストを参照して、呼び出し対象の無線端末(MS)が登録されているか否かを判断する。
【0072】
呼び出し対象の無線端末(MS)が中継対象端末(MS)リストに登録されている場合、無線基地局(BTS2)は、中継先の無線基地局(BTS1)へ中継可能な中継用端末(UE2)を中継対象基地局(BTS)リストから選択する。そして、無線基地局(BTS2)は、中継用フラグを付与した呼び出し信号を、該中継用端末(UE2)へ個別チャネル信号により送信する。中継対象の無線端末(MS)が登録されていない場合は、無線基地局(BTS2)は、通常の呼出し処理を実施する(9−3)。
【0073】
無線基地局(BTS2)配下の中継用端末(UE2)は、無線基地局(BTS2)からの、中継フラグを付与した呼出し信号を受信し、該中継フラグを付与した呼出し信号を、中継先の無線基地局(BTS1)へ、個別チャネル信号により中継する(9−4)。
【0074】
無線基地局(BTS1)は、中継用端末(UE2)からの、中継フラグを付与した呼び出し信号を受信し、受信信号から中継用フラグを除去して、配下の全エリアに呼び出し信号を送信する(9−5)。無線端末(MS1)は、無線基地局(BTS1)から送信された呼び出し信号を受信し、応答信号を返送することによりパスの確立を行い、着信データを受信する(9−6)。以上の処理手順により無線端末(MS1)への着信動作が完了する。
【0075】
次に、中継用端末(UE)の設定情報の更新手順について図10を参照して説明する。中継用端末(UE)の設定情報の更新動作は、以下の手順により実施される。中継モード1又は中継モード2に設定された中継用端末(UE)は、一定間隔で、受信可能な無線基地局(BTS)の接続品質(受信レベル等)を確認する(10−1)。
【0076】
上述の確認により、中継可能でかつ最も品質の高い無線基地局(BTS)をチェックする(10−2)。その無線基地局(BTS)が現在の中継用の無線基地局(BTS2)である場合、中継用端末(UE2)は、再び無線基地局(BTS1)に対して、現在の中継モード1又は中継モード2の中継用アタッチ(ATTACH)信号を発信する(10−3)。
【0077】
無線基地局(BTS1)は、中継用端末(UE2)からの中継用アタッチ(ATTACH)信号を受信し、中継用端末(UE)候補リストに登録されている中継用端末(UE2)の情報を、該中継用アタッチ(ATTACH)信号に従って更新する(10−4)。
【0078】
前述のチェック(10−2)において、中継可能でかつ一番品質の良い無線基地局(BTS)が、現在の中継用の無線基地局(BTS2)以外の無線基地局(BTS3)である場合、中継用端末(UE2)は、無線基地局(BTS2)から無線基地局(BTS3)に対してハンドオーバーを実施する(10−5)。
【0079】
上位装置(RNC)は、中継用端末(UE2)及び中継対象の無線基地局(BTS1)配下の無線端末(MS1)の管理情報を、無線基地局(BTS2)から無線基地局(BTS3)に移動させる(10−6)。ハンドオーバーの完了後、中継用端末(UE2)は、再び無線基地局(BTS1)に対して、現在の中継モード1又は中継モード2の中継用アタッチ(ATTACH)信号を発信する(10−7)。
【0080】
無線基地局(BTS1)は、中継用端末(UE2)からの中継用アタッチ(ATTACH)信号受信し、中継用端末(UE)リストに登録されている中継用端末(UE2)の情報を、該中継用アタッチ(ATTACH)信号に従って更新する(10−8)。以上の処理手順により、中継用端末(UE)の設定情報の更新動作が完了する。
【0081】
次に、無線基地局(BTS1)の障害復旧時の動作について図11を参照して説明する。無線基地局(BTS1)と上位装置(RNC1)との通信障害の復旧時の設定は、以下の手順により実施される。無線基地局(BTS1)は、上位装置(RNC1)との回線(Iubインタフェース)の障害復旧を検出し(11−1)、上位装置(RNC1)との回線(Iubインタフェース)を介し、上位装置(RNC1)から再開処理の指示を受信することにより、再開処理を実施する(11−2)。
【0082】
無線基地局(BTS1)は、再開処理の実施後、上位装置(RNC1)からの設定情報により再設定され、無線端末(MS)に対して正常な報知情報の送信を開始する(11−3)。無線基地局(BTS1)の配下の無線端末(MS)の種別が、非中継用の無線端末(MS)である場合、該無線端末(MS)は、無線基地局(BTS1)から正常な報知情報を受信したことにより、アタッチ(ATTACH)信号を送信し、アタッチ動作をやり直す(11−4)。
【0083】
無線端末(MS)の種別が中継用無線端末(UE)であり、中継モード2の中継用無線端末(UE)である場合、無線基地局(BTS1)から正常な報知情報を受信することにより、障害中の無線基地局(BTS2)に対して中継モード1の中継用無線端末(UE)となったことを通知する(11−5)。
【0084】
無線端末(MS)の種別が中継用無線端末(UE)であり、中継モード0又は中継モード1の中継用端末(UE)である場合、無線基地局(BTS1)から正常な報知情報を受信することにより、中継機能を停止し、通常の無線端末(MS)に遷移する(11−6)。以上の手順により、障害復旧時の設定が完了する。
【0085】
図12に中継用端末として動作する無線端末の機能ブロックの構成例を示す。該無線端末は、分配結合部12−1、無線受信部12−2、逆拡散復調部12−3、CH分離部12−4、呼処理制御部12−5、データ出力部又は蓄積部12−6、データ記憶部12−7、中継信号判定部12−8、中継データ生成部12−9、データ入力部12−10、呼処理制御部12−11、CH多重部12−12、変調拡散部12−13及び無線送信部12−14を備える。
【0086】
分配結合部12−1は、1つの送受信アンテナで送受される受信信号と送信信号とを分配又は結合する機能を有する。無線受信部12−2は、無線基地局から送信された無線信号を受信する機能を有する。逆拡散復調部12−3は、無線基地局で符号拡散された信号を逆拡散し、復調する機能を有する。
【0087】
CH分離部12−4は、共通チャネル信号及び個別チャネル信号等の各チャネル信号を分離する機能を有する。呼処理制御部12−5は、着信信号等を基に呼設定処理を行う機能を有する。データ出力部又は蓄積部12−6は、呼処理制御部12−5から出力される呼処理データを出力し、又は不揮発メモリ等に蓄積する機能を有する。
【0088】
データ記憶部12−7は、呼処理制御部12−5から出力される呼処理データを揮発メモリ等に記憶する機能を有する。中継信号判定部12−8は、データ記憶部12−7に記憶された呼処理データが中継信号であるか否かを判定する機能を有する。中継データ生成部12−9は、中継信号判定部12−8の判定結果を基に、データ記憶部12−7に記憶された呼処理データに中継用フラグを付与した中継データに生成する機能を有する。
【0089】
データ入力部12−10は、当該無線端末のユーザによって入力される信号データを処理する機能を有する。呼処理制御部12−11は、データ入力部12−10又は中継データ生成部12−9から送出されるデータを基に、発信等の呼設定処理を行う機能を有する。CH多重部12−12は、共通チャネル信号及び個別チャネル信号等の各チャネル信号を多重化する機能を有する。変調拡散部12−13は、送信信号を変調し、符号拡散する機能を有する。無線送信部12−14は、無線信号を無線基地局へ送信する機能を有する。
【0090】
図13に中継用基地局として動作する無線基地局の機能ブロックの構成例を示す。該無線基地局は、分配結合部13−1、無線受信部13−2、逆拡散復調部13−3、CH分離部13−4、呼処理制御部13−5、データ記憶部13−7、中継信号判定部13−8、中継データ生成部13−9、呼処理制御部13−11、CH多重部13−12、変調拡散部13−13、無線送信部13−14、無線リソース制御部13−21、中継UEリスト作成部13−22、中継UE選択部13−23、伝送路IF部13−24、伝送路監視部13−25、緊急モード判定部13−26及び報知情報送信部13−27を備える。
【0091】
図13に示す構成要素において、図12に示した構成要素と類似の機能を有するもの(13−1〜13−14)は、説明の簡潔化のため、重複した説明を省略する。中継UEリスト作成部13−22は、無線リソース制御部13−21の情報を基に、中継用端末(UE)候補リストを作成する機能を有する。
【0092】
中継UE選択部13−23は、中継UEリスト作成部13−22で作成された中継用端末(UE)候補リストを基に、中継用端末(UE)を選択する機能を有する。呼処理制御部13−11は、中継データ生成部13−9及び中継UE選択部13−23から送出されるデータを基に発信等の呼設定処理を行う機能を有する。
【0093】
伝送路IF部13−24は、上位装置13−30と接続される回線(伝送路)のインタフェース機能を有する。伝送路監視部13−25は、伝送路IF部13−24を監視し、上位装置13−30との通信障害の発生及びその回復を監視する機能を有する。
【0094】
緊急モード判定部13−26は、伝送路監視部13−25の監視結果を基に、上位装置30との回線が切断された緊急モードの発生を判定する機能を有する。報知情報送信部13−27は、緊急モード判定部13−26の判定結果を基に、緊急モードを示す報知情報を送信する機能を有する。呼処理制御部13−11は、更に、該報知情報を基に呼設定処理を行う機能を有する。
【0095】
図14に無線端末からの発信時の無線リンクの確立の手順例を示す。無線端末(MS1)からの発信時の無線リンクの確立は、以下の手順で実施される。無線基地局(BTS1)は、無線端末(MS1)から物理ランダムアクセスチャネル(PRACH:Physical Random Access Channel)による発信要求を受信する(14−1)。
【0096】
無線基地局(BTS1)は、無線端末(MS1)に対してダウンリンクスクランブリングコード(DL Scrambling Code)、アップリンクスクランブリングコード(UL Scrambling Code)及びダウンリンクチャネライゼイションコード(DL Channelization Code)等の無線リソースを無線リソース制御部13−21から取出し、無線リンクを割当る(14−2)。
【0097】
無線基地局(BTS1)は、無線端末(MS1)から送信された発信データを無線基地局(BTS1)内のデータ記憶部13−7に蓄積する(14−3)。無線基地局(BTS1)は、中継用端末(UE)リストから1つの中継用端末(UE)を決定し、該中継用端末(UE)へ向けて呼出し信号を送信する(14−4)。
【0098】
該中継用端末(UE)は、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)による呼出し応答信号を、無線基地局(BTS1)へ送信する(14−5)。無線基地局(BTS1)は、中継用端末(UE)に対して、ダウンリンクスクランブリングコード(DL Scrambling Code)、アップリンクスクランブリングコード(UL Scrambling Code)及びダウンリンクチャネライゼイションコード(DL Channelization Code)等の無線リソースを無線リソース制御部13−21から取出し、無線リンクを割当る(14−6)。
【0099】
無線基地局(BTS1)は、無線基地局(BTS1)内のデータ記憶部13−7に蓄積したデータに中継用フラグを付与し、中継用端末(UE)へ送信する(14−7)。以上の手順により、無線端末(MS1)から発信時の無線リンクの確立を完了する。
【0100】
図15に無線端末への着信時の無線リンクの確立の手順例を示す。無線端末(MS1)へのMSへの着信時の無線リンクの確立は、以下の手順により実施される。上位装置と接続されている無線基地局(BTS2)から、配下の無線端末(MS)へ向けて呼出し信号を送信する(15−1)。
【0101】
無線基地局(BTS2)配下の中継用端末(UE)は、上述の呼出し信号を受信後、無線基地局(BTS1)へ向けて物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)による発信要求を送信する(15−2)。無線基地局(BTS1)は、該中継用端末(UE)に対して、ダウンリンクスクランブリングコード(DL Scrambling Code)、アップリンクスクランブリングコード(UL Scrambling Code)及びダウンリンクチャネライゼイションコード(DL Channelization Code)等の無線リソースを無線リソース制御部13−21から取出し、無線リンクを割当る割当る(15−3)。
【0102】
無線基地局(BTS1)は、中継用端末(UE)からの着信データの受信後、該着信データを無線基地局(BTS1)内のデータ記憶部13−7に蓄積する(15−4)。無線基地局(BTS1)は、蓄積したデータから呼出し信号を認識し、呼出し信号を無線端末(MS1)へ送信する(15−5)。
【0103】
無線端末(MS1)は、上述の呼び出し信号が自身宛の呼出し信号であることを認識し、呼出し応答信号を無線基地局(BTS1)へ送信する(15−6)。無線基地局(BTS1)は、無線端末(MS)からの呼出し応答信号の受信により、無線端末(MS1)に対して、ダウンリンクスクランブリングコード(DL Scrambling Code)、アップリンクスクランブリングコード(UL Scrambling Code)及びダウンリンクチャネライゼイションコード(DL Channelization Code)等の無線リソースを無線リソース制御部13−21から取出し、無線リンクを割当る(15−7)。
【0104】
無線基地局(BTS1)は、無線端末(MS1)からの呼出し応答信号を、既に設定されている中継用端末(UE)の無線リンクを使用して、中継用端末(UE)へ送信する(15−8)。中継用端末(UE)は、無線基地局(BTS1)からの呼出し応答信号を受信後、該呼出し応答信号を物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)により無線基地局(BTS2)へ送信する(15−9)。
【0105】
無線基地局(BTS2)は、中継用端末(UE)からの呼出し応答信号により無線リンクを確立する(15−10)。以上の手順により、無線端末(MS1)への着信時の無線リンクの確立を完了する。
【符号の説明】
【0106】
MS1,MS2 無線端末
BTS1,BTS2,BTS3 無線基地局
RNC1,RNC2,RNC3 上位装置(無線ネットワーク制御装置)
UE2,UE3,UE4 中継用端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置との回線接続が切断された第1の無線基地局から、上位装置との回線切断状態を示す共通制御信号を、配下の無線エリアに在圏する無線端末に送信し、前記第1の無線基地局及び該第1の無線基地局に隣接する第2の無線基地局の双方の無線エリアに在圏する無線端末を中継用端末として設定する第1のステップと、
前記第1の無線基地局の無線エリアに在圏する無線端末と前記第1の無線基地局との間で送受される送受データを、前記第1の無線基地局と前記中継用端末との間、及び前記中継用端末と前記第2の無線基地局との間で、中継用フラグを付与してそれぞれ送受する第2のステップと、
前記第2の無線基地局から、前記中継フラグを除去した前記送受データを、該第2の無線基地局の上位装置との間で送受する第3のステップと、
を含むことを特徴とする無線通信路中継方法。
【請求項2】
上位装置との回線接続が切断された第1の無線基地局から、上位装置との回線切断状態を示す共通制御信号を、配下の無線エリアに在圏する無線端末に送信し、前記第1の無線基地局及び該第1の無線基地局に隣接する第2の無線基地局の双方の無線エリアに在圏する無線端末を第1の中継用端末として設定する第1のステップと、
前記第1の無線基地局の無線エリアに在圏する無線端末と前記第1の無線基地局との間で送受される送受データを、前記第1の無線基地局と前記第1の中継用端末とを含む多段に接続した中継用端末と無線基地局との間で、中継用フラグを付与してそれぞれ送受する第2のステップと、
前記多段に接続した中継用端末と無線基地局の無線通信路の最後部の無線基地局で前記中継フラグを除去し、該中継フラグを除去した前記送受信データを、該最後部の無線基地局と上位装置との間で送受する第3のステップと、
を含むことを特徴とする無線通信路中継方法。
【請求項3】
上位装置との回線切断状態を共通制御信号により配下の無線エリアに在圏する無線端末に通知する回線断通知手段と、
前記無線端末から送信され、中継可能な無線端末か否かを示す中継モード情報を受信し、中継可能な無線端末であることを示す中継モード情報を送信した無線端末の中から中継用端末を選択し、該中継用端末との間に無線リンクを確立する中継用端末設定手段と、
前記配下の無線エリアに在圏する無線端末との間で送受される送受データを、中継用フラグを付与して前記中継用端末との間で送受し、前記中継用フラグを付与したデータから、中継用フラグを除去した送受データを、上位装置との間で送受する送受データ中継手段と、
を備えたことを特徴とする無線基地局装置。
【請求項4】
前記回線断通知手段は、中継不可、当該無線基地局の上位装置を介して直接中継可能、又は他の隣接する無線基地局の上位装置を介して間接的に中継可能の何れであるかを示す回線断モードの情報を通知し、
前記無線端末から通知される中継モード情報は、中継不可、当該無線端末が在圏する無線基地局の上位装置を介して直接中継可能、又は他の中継用端末を介して間接的に中継可能の何れであるかの情報を示し、
前記無線端末から通知される中継モード情報を基に、前記回線断モードの情報を更新する中継モード設定手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の無線基地局装置。
【請求項5】
第1の無線基地局から送信され、上位装置との回線切断状態を示す共通制御信号を受信し、前記第1の無線基地局に隣接する第2の無線基地局から受信される共通制御信号を基に、前記第1及び第2の無線基地局に、中継可能な無線端末であることを示す中継モード情報を通知する中継モード通知手段と、
前記第1の無線基地局配下の無線エリアに在圏する無線端末により送受される送受データであって、前記第1の無線基地局から中継用フラグを付与して送信されるデータを、前記第2の無線基地局へ中継し、前記第2の無線基地局から中継用フラグを付与して送信されるデータを、前記第1の無線基地局へ中継する送受データ中継手段と、
を備えたことを特徴とする無線端末。
【請求項6】
前記第2の無線基地局から受信される共通制御信号は、中継不可、該無線基地局の上位装置を介して直接中継可能、又は他の隣接する無線基地局の上位装置を介して間接的に中継可能の何れであるかを示す回線断モードの情報を含み、
中継モード通知手段は、前記回線断モードを基に、中継不可、当該無線端末が在圏する無線基地局の上位装置を介して直接中継可能、又は他の中継用端末を介して間接的に中継可能の何れであるかの情報を示す中継モード情報を通知することを特徴とする請求項5に記載の無線端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−100059(P2012−100059A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245773(P2010−245773)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】