説明

無線電話ネットワークの移動局のジオロケーション

移動局が動作する無線電話セルラネットワークによってカバーされる所定エリア内の移動局を位置決めする方法に関する。当該方法は、ネットワークの少なくとも7個の異なる通信チャネルに関する受信電力(PLx)を測定するために移動局を使用する工程(ステップ200)と、当該測定と、チャネルに関する受信電力レベルとカバーエリア内の位置との間の対応の関連所定情報と、に従って当該移動局を位置決めする(ステップ210)工程とを備える。当該所定情報は、異なる位置(L)でチャネルに関して前もって測定され、データベース(BD1)に格納された電力レベル(PLiMj)を含み得、その場合移動局は、測定(PLx)と、データベース(BD1)のコンテンツとを比較することによって位置決めされる。当該方法によれば建物内であってもより良好な精度での位置決めが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオロケーションの分野に関し、特に、少なくとも1つの無線電話ネットワークで動作する移動局のジオロケーションの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外または中において、人間またはオブジェクトを正確に位置決めできることが望ましいかもしれない。
【0003】
セルラネットワークにおいて無線信号から移動局を位置決めするシステムが既に提案されている。これらの移動局位置決めシステムは、特に屋外環境での位置決めのために実施される。しかしながら、これらのシステムは、そのアタッチメントセルの届く範囲で移動局を位置決めする。それ故、これらのシステムは比較的不正確である。
【0004】
しかしながら、最も近くの複数の基地局信号を比較することにより、これらのシステムのより良好な精度を得ることが可能である(“フィンガープリント(fingerprint)”法)。だが百メートルのオーダーなので、そのようにして得られる精度は低いままである。もちろんそのような不正確性は、移動局が建物の何れの部屋に位置しているかを判定することを目的とする、建物内での局在性とは相いれない。従って、そのようなシステムの建物内での局在性への適応は、十分満足のいくものではない。
【0005】
さらに、全地球測位システム(GPS)と関連付けられている全地球測位受信機を備えた移動局が知られている。このGPS受信機は、衛星拡散された無線電気同期信号を受信するように構成される。この信号により、気象条件に関わらず、受信機がその位置(経度、緯度、および高度)を判定することが可能になる。
【0006】
自動車のGPS受信機もまた一般に、いわゆる“デッドレコニング(dead reckoning)”法を実施するように構成される。その方法によれば、衛星による信号ブロードキャストの受信のみを使用して乗り物を位置決めするには衛星の数が不十分な、トンネルまたは都市環境にあるときでさえも、その乗り物を位置決めすることが可能になる。デッドレコニング法は、衛星から前もって受信した位置データから自動車の位置を推定するものである。
【0007】
“歩行者” モードが、GPS受信機に一般に利用可能である。この“歩行者”モードは、GPSサービスを人間の位置まで拡張するものである。しかしながら、この“歩行者”モードの精度は明らかに満足いくようなものではない。実際、歩行者は乗り物よりもはるかにゆっくりと移動する。さらに歩行者は、衛星により送信された信号の良好な受信が不可能なエリアで長い間−場合によっては永続的に−留まる可能性がある。このことは建物内で特に当てはまる。そのような場合、衛星とのGPS受信機の同期は、即座に失われる。位置の精度は、GPS衛星に十分カバーされているエリアで得られる精度と比較してはるかに低下する。
【0008】
さらに、GPSシステムは、建物内の人間の位置に関する情報を提供しない。
【0009】
システムは、(IEEE802.11標準によって定義される)Wi−Fiネットワークで実施される電波を使用する、閉鎖環境における位置決めのためにも存在する。“フィンガープリント”法は、このタイプのシステムでも実施される。Wi−Fiアクセスポイントは、実際セルラ基地局の役割を果たす。いくつかのWi−Fiアクセスポイントを具備する大規模商業ビルの廊下(hallway)での位置決めのために、文献では約2メートルの精度が挙げられている。
【0010】
しかしながら、Wi−Fiは、家庭環境、貯蔵庫などに好適ではない。実際に配置される際、Wi−Fiネットワークは、あまり一般的ではなく、あまり密集していない。これらのWi−Fiネットワークは、アクセスポイントの位置決めの観点からすると相当変化し得る。さらに、Wi−Fiで使用される周波数帯域の信号は、建物に見られるパーティションによって相当弱まるので、その周波数(事例に応じて2.4GHzまたは5GHz)は良好な位置決めに好適ではない。Wi−Fiネットワークで実施されるシステムは、位置決めされるべき人間またはオブジェクトがWi−Fi互換装置を有することも暗示している。しかしこれはめったにないケースである。
【0011】
それ故、あらゆる位置で、特に1つ以上の建物内において効果的かつ正確である一方、実施容易な位置決め方法の必要性がある。
【発明の概要】
【0012】
これを受けて、第1の側面によれば、本発明は、移動局が動作する少なくとも1つの無線電話セルラネットワークによってカバーされる所定エリア内の前記移動局を位置決めするために使用される情報を供給する方法であって、前記方法は、
−前記所定エリア内の1つ以上の所定位置について、前記所定位置のそれぞれに対して、前記少なくとも1つの無線電話セルラネットワークのN(7以上の固定整数)個の異なる所定通信チャネルの各チャネルに関して測定された受信電力レベルにそれぞれ対応している、N個の値の少なくとも1つのセットを提供する工程と、
−N個の値の各セットと、前記対応する所定測定位置とを関連付ける第1のデータベースを作成する工程と、
を備えることを特徴とする方法を提案する。
【0013】
第1の好適な実施形態によれば、前記方法は、
−前記所定エリア内の前記1つ以上の所定位置の各位置について、前記第1のデータベースにおいて前記対応する所定位置に対して提供されたN個の値の各セットと関連付けられている所定値であって、前記所定位置に特有のR(1以上の整数)個の所定値のセットを定義する工程と、
−N個の値の各セットから、N個の値の前記セットと関連付けられたR個の所定値の前記セットの近似であるR個の値のセットを提供可能なR個の関数のセットを、前記第1のデータベースからの統計学習によって決定する工程と、
をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
第2の好適な実施形態によれば、前記方法は、
−Q(1以上Nより小さい整数)個の異なる関数を提供する工程と、
−N個の値の各セットに、Q個の値の対応するセットを提供するための前記Q個の関数を適用することによって、前記第1のデータベースから第2のデータベースを作成する工程と、を備え、Q個の値の前記セットは、前記対応する所定測定位置と、前記第2のデータベースにおいて関連付けられており、
前記Q個の関数は、データベースのN個の異なる値の任意ペアのセットについて、N個の値の前記ペアのセットに前記Q個の関数を適用することによって取得されるQ個の値の前記2つのセットが相互に異なるように選択される。主成分の解析を通じてまたは独立成分の解析を通じてQ個の関数が提供されること、あるいは、Q個の関数が、N個の値の前記セットの平均値、標準偏差、および他の高次モーメントをそれぞれ提供すること、は有効である。
【0015】
さらに、前記方法が、
−前記所定エリア内の1つ以上の所定位置の各位置について、前記第2のデータベースにおいて前記対応する所定位置に対して提供されるQ個の値の各セットと関連付けられている所定値であって、前記所定位置に特有のR(1以上の整数)個の所定値のセットを定義する工程と、
−Q個の値の各セットから、Q個の値の前記セットと関連付けられたR個の所定値の前記セットの近似であるR個の値のセットを提供可能なR個の関数のセットを、前記第2のデータベースからの統計学習によって決定する工程と、
を備えることは有効である。
【0016】
第3の好適な実施形態によれば、前記方法は、各所定位置について、前記Q個の関数をN個の値の前記セットに適用することによって取得されるN個の値の前記セットまたはQ個の値の前記セットからそれぞれ前記所定位置で測定が行われた確率の推定値を提供可能な関数を、前記第1のデータベースまたは前記第2のデータベースの何れかからの統計学習によって、決定する工程を備える。
【0017】
第2の側面によれば、本発明は、移動局が動作する少なくとも1つの無線電話セルラネットワークによってカバーされる所定エリア内の前記移動局を位置決めする方法であって、前記方法は、
a)前記少なくとも1つの無線電話セルラネットワークのN(7以上の整数)個の異なる所定通信チャネルの各チャネルに関する受信電力レベルを前記移動局により測定する工程と、
b)工程a)で測定された前記レベルと、N個のチャネルのそれぞれに関する受信電力レベルと前記所定エリア内の位置との間の対応に関連する所定情報と、に基づいて前記移動局を位置決めする工程と、
を備えることを特徴とする方法を提案する。
【0018】
好適な一実施形態によれば、前記所定エリア内の1つ以上の所定位置について、前記所定情報は、各所定位置について、前記対応する所定位置において前記N個のチャネルのそれぞれに関する受信電力レベルと関連する少なくとも1つの関連付けられたW(1以上の整数)個の所定値のセットを有し、工程b)は、W個の所定値の前記セットと関連して、工程a)で測定された前記レベルを解析することによって前記移動局を位置決めする工程を備えることが提供される。
【0019】
WはNと等しく、前記W個の所定値の各セットは、前記N個のチャネルの各チャネルに関する受信電力レベルを各々表しており、工程b)における前記解析は、工程a)で測定された前記レベルの、W個の所定値の前記セットとの比較工程を備えることが提供され得る。この場合、W個の所定値の前記セットは、上で定義した本発明の第1の側面に従った前記情報供給方法を使用して作成された前記第1のデータベースから得られるN個の値の前記セットであり得る。
【0020】
あるいは、WはNより小さく提供されてもよく、その場合工程b)での前記解析は、
(i)W個の所定値の前記セットと共に、工程a)で測定された前記レベルと関連する、W個の値のセットを提供するために、W個の異なる所定関数を、工程a)で測定された前記レベルに適用する工程と、
(ii)前記提供されたW個の値の前記セットと、W個の所定値の前記セットとを比較する工程と、
を備える。
【0021】
この場合、W個の値の前記セットと前記W個の所定関数とは、本発明の第1の側面に従った情報供給方法の第2実施形態に従って、それぞれ、提供され、作成され得る。
【0022】
別の好適な実施形態によれば、前記所定情報は、前記所定エリア内の1つ以上の所定位置の各位置について、前記所定位置に特有な関連するR(1以上の整数)個の所定値のセットと、N個のチャネルに関する任意の所定位置で測定された受信電力レベルから、それらの測定されたレベルの任意の前処理の後に、その所定位置に対応するR個の所定値の前記セットの近似であるR個の値のセットを供給するために提供されるR個の所定関数のセットと、を備えている。さらに、工程b)は、(i)工程a)で測定されて適用可能なら前処理された前記レベルからR個の所定関数の前記セットを使用してR個の値のセットを提供する工程と、(ii)R個の供給された値の前記セットと、R個の所定値の前記セットとを比較することによって前記移動局を位置決めする工程と、を備える。
【0023】
さらに別の好適な実施形態によれば、前記所定情報は、前記所定エリア内の任意の位置で測定された、前記N個のチャネルに関する、受信電力レベルから、それらの測定レベルの任意の前処理の後に、前記測定位置の座標の近似であるR個の値のセットを供給するために提供されたR個の所定関数のセットを備えており、工程b)は、(i)工程a)で測定されて適用可能なら前処理された前記レベルからR個の所定関数の前記セットを使用してR個の値のセットを提供する工程と、(ii)提供されたR個の値の前記セットによって表現された前記座標で前記移動局を位置決めする工程と、を備えている。
【0024】
さらに別の好適な実施形態によれば、前記所定情報は、前記N個のチャネルに関して前記所定エリア内の任意の位置で測定された、前記受信電力レベルから、且つ前記測定されたレベルの任意処理の後に、前記所定エリア内の位置参照システムにおける前記測定位置の基準の近似であるR個の値のセットを供給するために提供されるR個の所定関数のセットを備えており、工程b)は、(i)工程a)で測定されて適用可能なら前処理された前記レベルからR個の所定関数の前記セットを使用してR個の値のセットを供給する工程と、(ii)前記供給されたR個の値のセットによって近似された位置の基準で前記移動局を位置決めする工程と、を備える。
【0025】
前記所定情報がR個の所定関数のセットを備えるこれらの種々の実施形態では、R個の所定関数のこのセットは、本発明の第1の側面に従った第1実施形態の情報供給方法を実施することによって決定され得る。
【0026】
さらに別の好適な実施形態によれば、前記所定情報は、1以上の所定位置の各位置について、前記N個のチャネルに関して測定された前記受信電力レベルから、それらの測定されたレベルの任意の前処理の後に、前記測定が前記所定位置で実行された確率の推定値を供給するために提供される関連した関数を備えており、工程b)は、工程a)で測定されて適用可能なら前処理された、前記関数の全てまたは一部によって提供される前記確率推定値に基づいて前記移動局を位置決めする工程を備える。その場合、前記関数は、本発明の第1の側面に従った第3実施形態の情報供給方法によって供給され得る。
【0027】
前記所定情報が1つ以上の関数を備えるこれらの種々の実施形態では、工程a)で測定された前記レベルは、W個の異なる所定関数を適用することによって前処理され、Wは1以上Nより小さい整数であることを、工程i)において、提供することが可能である。特に、W個の関数は前記Q個の供給された関数であり、本発明の第1の側面に従った第2実施形態の情報供給方法に従って、それぞれ前記R個の所定関数が決定されることが提供されてもよい。
【0028】
より一般的には、1つ以上の建物内で前記移動局を位置決めするために前記位置決め方法が実施されることは有効である。位置決めされるべき同一の移動局を伴う前記所定エリア内の異なる位置で前記N個のチャネルに関して行われた受信電力測定に基づいて前記所定情報が確立されることも有効である。
【0029】
最後に、情報供給方法および位置決め方法の文脈の両方で、Nは20以上であり、好ましくは50以上であり、より効果的には200以上であることも有効である。
【0030】
第3の側面によれば、本発明は、少なくとも1つの無線電話セルラネットワークで移動局が動作するように提供されるソフトウェアを提案し、前記ソフトウェアは、本発明に従った前記位置決め方法を前記移動局に実行させるように提供される。
【0031】
第4の側面によれば、本発明は、コンピュータに、
(a)少なくとも1つの無線電話セルラネットワークのN(7以上の整数)個の異なる所定通信チャネルの各チャネルに関して受信電力レベルの移動局によって行われる測定の前記コンピュータによる受信と、
(b)本発明に従った前記位置決め方法の工程b)を実行することによって前記移動局を位置決めすることと、
を実施させるために提供されるコンピュータソフトウェアを提案する。
【0032】
第5の側面によれば、本発明は、本発明に従った位置決め方法を実行するために提供される、無線電話セルラネットワークにおいて動作可能である移動局を提案する。
【0033】
他の特徴および有効な点は、1つの例として図面を参照して、以下の本発明の実施形態の詳細な説明を読めば明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】、
【図2】、
【図3】−図1乃至図3は第1実施形態を説明
【図4】、
【図5】、
【図6】−図4乃至図6は第2実施形態を説明
【図7】、
【図8】、
【図9】、
【図10】−図7乃至図10は第3実施形態を説明
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、移動局が動作する少なくとも1つの無線電話セルラネットワークによってカバーされる所定エリア−以下、位置エリア(location area)と称する−内の移動局、例えば携帯電話、を位置決めする方法を提案する。当該方法によれば、移動局は、少なくとも1つの無線電話セルラネットワークのN個の異なる所定通信チャネルの各チャネルに関して受信電力レベルを測定し、Nは7以上の整数である。その方法は、N個のチャネルのそれぞれに関する受信電力レベルと位置エリア内の位置との対応に関連する所定情報だけでなく、N個のチャネルに関して予め測定された電力レベルに基づいて移動局を位置決めする。
【0036】
移動局は、携帯電話だけでなく、そのセルラタイプの無線電話セルラネットワークと通信可能な任意の他の要素であり得る。特に、ネットワークは、GSM(グローバルシステム・フォー・モバイル・コミュニケーション)ネットワークであり得る。ネットワークは、CDMA(符号分割多元接続)ネットワークまたはWCDMA(広帯域符号分割多元接続)ネットワークでもあり得、特にUMITS(ユニバーサル・モバイル・テレコミュニケーション・システム)ネットワークまたはCDMA2000ネットワークでもあり得る。ネットワークは、PMR(プロフェッショナル・モバイル・ラジオ、プライベート・モバイル・ラジオとも呼ばれる)ネットワーク、LMR(ランド(Land)・モバイル・ラジオ)ネットワーク、またはPAMR(パブリック・アクセス・モバイル・ラジオ)ネットワークでもあり得る。ネットワークの電波は建物内に届き、建物内での位置決めを可能にするので、無線電話セルラネットワークを使用することは有効である。
【0037】
“通信チャネル”は、無線電話セルラネットワークによって使用される周波数帯に含まれる種々のキャリヤに及ぶ。このタイプの測定を標準機能として実行するように既に提供されているので、受信チャネルの電磁力は、移動局によって容易に測定されるという利点がある。さらにその上、測定は、ネットワーク所有者からの許可を得る義務無しに行われ得る。さらにその上、移動局とネットワークの基地局との間の通信、すなわち音声送信や、音、画像、コンピュータデータ、信号データおよびネットワーク制御データ等の任意のタイプのデータ送信、において任意の通信チャネルがその機能に関わらず使用され得る。
【0038】
位置エリア内で、移動局による受信のために使用される同一のキャリヤが、ネットワークのいくつかの基地局によって共有されるなら、関係キャリヤだけでなく、測定が行われた関連する基地局まで測定を拡大することは有効である。その場合、本発明の意義の範囲内でチャネルは、関係キャリヤと、移動局により行われた受信電力測定に関係する基地局と、の両方に及ぶ。言い換えると、同一のキャリヤは、実際、その位置エリアでそのキャリヤに関して送信する基地局の数と同数の通信チャネルを定義すると考えられ得る。
【0039】
GSMネットワークの場合、種々のチャネルの受信電力レベルは、一般に所定のBSICに対するGSMネットワークの関係キャリヤのRSSIである。リマインダとして、RSSI(受信信号強度インジケータ)はキャリヤの電界振幅値であり、BSIC(基地局識別コード)は基地局の識別子である。
【0040】
UMTS(ユニバーサル・モバイル・テレコミュニケーション・システム)ネットワークの場合、種々のチャネルの受信電力レベルは、所定数のパイロットチャネル(CIPCH、共通パイロットチャネル)のRSCP(受信信号コード電力、希望波受信電力)であり得る。
【0041】
以下説明される例は、特にGSMネットワークに関し、任意のタイプの無線電話セルラネットワーク、とりわけUMTSネットワークまたはCDMAネットワークに適用可能である。
【0042】
少なくとも7個のチャネルに関する電力測定の使用は、位置の精度を改良することを可能にするので、思いのほか有効であることを立証している。実際、種々のチャネルの受信電力によって得られる過剰な情報の存在、そのためのチャネル数の飽和効果の存在といった、技術的な先入観が今日まで広がっていた。結果として、受信電力測定に基づくジオロケーションの適用において、多数の異なるチャネルに渡って測定を増やすことは役に立たないと考えられていた。しかし、本発明は、この先入観が誤りであることを確証することを可能にしている。
【0043】
それどころか、測定が行われるチャネル数Nが多ければ多い程、より位置の精度および信頼度が増す。結果として、チャネル数Nは7以上で選択される。より好ましくは、チャネル数Nは10より多く、より有利には20より多く、さらにより有利には50より多く、そしてはるかに有利には200より多く、選択される。チャネル数Nは、ネットワーク上で利用可能な全チャネル数に一致してもよい。GSMネットワークは、一般に500個を超えるチャネルを備え得る。
【0044】
チャネル数Nが制限される場合、良好な位置識別を得るN個のチャネルを、それらN個のチャネルに関して測定される電力レベルに応じて選択するために、位置エリアにおけるネットワークの全てのチャネルに関して受信電力の前調査を実行することが有効である。必要ではないけれども、この手順は、ネットワークの全チャネル数よりも少なくチャネル数Nが選択される任意の状況で使用されてもよいが、チャネル数Nが100より少ない場合に、このことは特に有利になり、20より少ないならなおさらそうである。一例として非限定的に、この選択を行う1つの方法は、位置エリア全体に渡って分布しているいくつかの位置において、平均して、最高受信電力を有する、ネットワークのN個のチャネルを選択することである。
【0045】
移動局を位置決めするために使用される−N個のチャネルに関する受信電力レベル測定が、実質的に同じ場所で移動局によって行われるので、位置精度はよりいっそう信頼できる。実際には、N個のチャネルに関する受信電力レベル測定は同時には行われず、移動局は測定されるべきチャネルに関して各時間に調整をしなければならないので、連続的に時間と共に行われる。結果として、移動局が移動中に測定が行われるなら、位置の信頼度は減少するかもしれない。しかし、このことは、移動局がゆっくり移動する場合、または、移動局が非常に長時間1つの場所に滞在することが留意される場合、多くの適用において煩わしいことではない。実際、チャネルに関する受信電力レベルを測定する測定時間は短く、一般に1秒よりもはるかに短い。結果として、N個のチャネルに関して受信電力レベル測定を実行するのに必要とされる時間は、たとえNが大きくても、例えば200以上でも、限定されたままである。一例として、約500個のチャネルに関する標準GSM電話による受信電力レベル測定は1分以下である。あるいは、測定を実行するのに必要とされる時間を低減するために、より少ない、例えば20より少ない数であるN個のチャネルを使用することが可能である。たとえ移動局が測定時に移動中であっても、移動速度は限定されているので、このことは十分な位置信頼度を保証にすることを可能にする。さらにその上、例えばWCDMAネットワークおよびGSMネットワークについて、Ascom Network Testing Inc., Reston, VA, USAという会社によってTEMS(商標) POCKETという名称で販売された製品など、市場にはより高速な測定を可能にする製品も存在する。それは、移動局が比較的高速で移動している場合、例えば歩行者が素早く歩いているまたは走っている場合でさえも、信頼できる位置を得る、1秒以内に500個のチャネルに関する測定を実行することを可能にする。
【0046】
上述したように、移動局によるN個のチャネル局に関する受信電力レベルの測定後、N個のチャネルに関して予め測定された電力レベルと、N個のチャネルのそれぞれに関する受信電力レベルと位置エリア内の位置との間の対応に関連する所定情報と、に基づいて移動局は位置決めされる。
【0047】
所定情報は、N個のチャネルのそれぞれに関する受信電力レベルと、位置エリア内での位置との対応に関連するので、N個のチャネルに関して移動局によって測定される電力レベルに照らしてみると、当該所定情報により、位置エリア内で移動局が存在する位置に関して推論することが可能になる。
【0048】
この所定情報は、そうした推論を可能にする性質を有してもよい。一例として、所定情報は、位置エリア内の異なる所定位置でのN個のチャネルに関する受信電力レベルのマップを得るデータベースを含む。移動局によるN個のチャネルに関する受信電力レベルの、データベースに含まれる種々の位置の電力レベルとの比較に基づいて、推論が行われる。言い換えると、それはパターンマッチングを使用した位置決め技術を含む。位置のメッシュピッチ−一定である必要はない−は、位置について満足いく精度を提供するように選択され、実際位置の性質、すなわち建物の内外、通信ネットワークの密度などに依存する。移動局によりこれらの種々の位置において受信電力レベルを測定することによって、このマップが確立されるのは有効であり、ジオロケーションを実行するために使用されるだろう。これにより、種々のデバイスにより供給される測定のばらつきのせいで、位置の信頼度が低下しないことを保証することが可能になる。
【0049】
別の例によれば、所定情報は、N個のチャネルに関する受信電力レベルと、対応する位置との関係を得る1つ以上の数学関数を備える。従って、この関数またはこれらの関数は、移動局により測定されたN個のチャネルに関する受信電力レベルから、直接移動局の位置、あるいは、位置が推論される1つ以上のデータ、の何れかを供給する。この関数またはこれらの関数は、前述したデータベースを学習することによって、特に人為的な学習または統計学習を通じて、定義され得る。この解は、パターンマッチング技術よりも一般により精度の高い位置を得る。
【0050】
本発明に照らして、位置は、任意の座標系で定義される周期的な場所の形式で方法により供給され得る。座標系は、緯度および経度等の二次元、または緯度、経度および高度等の三次元を有し得る。あるいは、位置は、所定の地理的容積(volume)、例えば建物内の部屋、または、表面性の所定の地理的エリア(area)、例えば建物の外側、から構成される位置の形式で提供され得る。
【0051】
携帯電話ネットワークの受信可能範囲にあり、ほとんどの人々が今日携帯電話または携帯電話ネットワークと通信する他のデバイスを有するなら、位置決め方法は、任意の位置エリアで実施され得るという事実を前提とすると、展開容易であり、準世界共通である。当該位置決め方法は、建物内またはGPS信号によりカバーされていない他の位置でも動作するため、より一層有効である。
【0052】
さらにその上、当該方法は、アンテナまたは基地局の位置等の、無線電話セルラネットワークのアーキテクチャに関する情報を使用しない。特に、一般に自由にアクセス可能ではない、同期インタラクションプロシージャ、ネットワークとのフレーム交換は使用されない。これにより、当該方法を実施するためにオペレータに依存することを回避することが可能になる。
【0053】
当該位置決め方法は、容易に実施され得る。実際、標準的な移動局−例えば携帯電話−に関して、携帯電話への重大な修正なしに実施されてもよい。それに関して位置決め方法の各工程を実行させるためのソフトウェアを移動局にロードすることのみが必要である。そのようなソフトウェアは、CD−ROMや、コンピュータネットワーク−例えばインターネット−上のサーバのハードディスク等の、コンピュータ記憶媒体上に提供されることができ、インターネットからコンピュータを介して直接または間接の何れかで移動局へダウンロードされてもよい。
【0054】
移動局は、ネットワークのN個のチャネルに関する電力レベル測定工程を実行し、無線通信ネットワークを介して、コンピュータまたはサーバへ測定されたレベルを送信することが提供されることができる。これらの測定および所定情報に基づいて移動局を位置決めする工程は、このコンピュータまたはサーバによって実行される。この場合、所定情報は、コンピュータまたはサーバまたはそれがアクセスする任意の記憶手段に格納される。サーバは一般に移動局よりも高性能な計算手段および所定情報を記憶する大規模な記憶手段を有するので、このことは有効である。別の実施形態において、位置決め方法の測定工程および位置決め工程は、移動局それ自体によって実行され得る。その場合、移動局は、コンピュータ、またはサーバ、または携帯電話ネットワークで動作する別の移動局等の任意の他のデバイスへ、位置決め結果を、例えば携帯電話ネットワークを介して送信するように提供され得る。
【0055】
位置エリア内における種々の位置でN個のチャネルに関する受信電力レベルのマップを含むデータベースを使用して所定情報を作成するために使用される測定は、移動局によって行われてもよく、好ましくは、位置決め方法で使用される移動局によって行われてもよい。
【0056】
このデータベースが、位置決め方法で使用される所定情報を構成するなら、位置決め方法全体を実施する移動局である場合には、それは移動局に格納される。実施は容易であり、本発明に従った所定情報を供給する方法および位置決め方法の両方を実行させるソフトウェアを移動局にロードすることのみが必要となる。一方、位置決め方法がコンピュータまたはサーバによって実行されるなら、このマップを形成するための測定は例えばネットワークを介してサーバへ送信される。移動局は、例えば、1つの位置でN個のチャネルに関するN個のレベルを測定するごとにそれらを送信し得、あるいは、種々の位置での全ての測定が行われた後にそれらを一度に全て送信するためにそれらを格納し得る。
【0057】
位置決め方法で使用される所定情報が、データベースを学習することによって、特にサイズ低減および/または人工的または統計的な学習を通じて、取得されるなら、このことは当てはまるかもしれない。その場合、より高性能な計算手段を有するコンピュータまたはサーバを使用して学習が行われることが実際好ましい。そのようにして取得された所定情報は、無線電気通信ネットワークを介して、それが位置決め方法全体を実施する移動局であるなら、当該移動局へ送信される。あるいは、移動局は位置決め方法を実行させるソフトウェアをロードされると共に、所定情報が移動局へロードされ得る。
【0058】
位置決め方法の実施中にせよ、あるいは、位置エリア内の種々の所定位置においてN個のチャネルに関する受信電力レベルのマップを含むデータベースを確立している間にせよ、移動局がスタンバイモードのときにN個のチャネルに関して受信電力レベル測定を実行することは有効である。移動局がスタンバイモードでN個のチャネルに関して電力測定を実行するという事実は、通信を確立する必要がなく、エネルギー消費の観点で有効である。平均的なユーザは電話通信に自身の時間の3.3%を費やすので、移動局は、通信時間外に電力測定を、必要な時間ずっと実行しなければならない。これは、それらの測定が進行中の通信の間に実行されたなら、進行中の通信について関係基地局と同期したままである間に、移動局がそれらの測定を実行しなければならないことも防ぐ。
【0059】
あらゆる場合において、位置決め方法は、オブジェクトまたは人々の監視との関連で実施されることに良く適している。これは特に、一人暮らしの高齢者または薬を処方されている患者−例えばアルツハイマー患者−、注目されていない子供達、または、健康的な理由または安全上の理由で日々の行動の非常に緊密な監視を必要とする任意の人間に関する。
【0060】
位置決め結果は、場合に応じて、例えば第三者に特有の移動局、例えば第三者の携帯電話に関して、当該第三者へ、移動局またはサーバによって送信され得る。第三者は従って移動局の位置に応じて常に更新され得る。位置決め結果は、専用サーバへも送信され得る。そうしたサーバは、連続した位置情報を記録し、従って監視される人間の移動を監視することを可能にする。サーバは必要に応じて警告を発し得る。
【0061】
位置決めが移動局それ自体によって行われるなら、位置決め結果が親戚、隣人または警備機関であってもよい第三者へ送信されるように提供され得る。送信は、SMSまたはMMSによって、またはモバイルサーバの機能性を使用してオンラインで閲覧され得るサーバ上のftpを介して行われてもよい。位置更新は、所定のプログラム可能な時間間隔で自動的に行われ得る。移動局で実行されるソフトウェアアプリケーションは、そのような更新を実行し得る。ウォッチャーまたは第三者は、遠隔インターネットアプリケーションを介して監視されている人物またはオブジェクトの移動を常に閲覧できる。
【0062】
特定期間より長い一定時間、位置が同じ状態のままである場合に、移動局は警告メッセージを第三者へ送信するように提供されてもよい。これにより、異常に長時間に渡る、監視される人物またはオブジェクトの明らかな不動に気づくことが可能になる。その人物が救助される必要がある場合に、介入までの時間は短縮され、その人物の安全性を向上することができる。
【0063】
しかしながら、他のタイプの警告が考えられる。例えば、警告は手動で引き起こされ、または、Bluetooth(登録商標)または別の低電力/短範囲の通信プロトコルによって送信される埋め込みシステム(除細動器、ペースメーカー、動作検知器など)から生じる信号の移動局による受信に応じて引き起こされ得る。そのような警告は、監視される人物またはオブジェクトの移動局から送信されるSMSまたは電話によって監督機関または監視機関へ伝達され得る。
【0064】
位置決め方法は、機械同士の(M2M)通信の分野にも適用可能である。M2Mは、高頻度または低頻度で移動され得る任意のデバイス間の通信を可能にし、その移動は遠隔で監視されなければならない。このことは、機械、乗り物、測定器、医療器具、または様々な製品の販売者(distributor)に特に関係する。そのような場合、当該方法は、好ましくは標準M2MのGSMまたはUMTSチップで使用される。しかしながら他のプロトコルが考慮されてもよい。
【0065】
では図1乃至図3を参照して、位置決め方法がパターンマッチングを用いる第1実施形態を説明する。
【0066】
図1は、N個のチャネルのそれぞれに関する受信電力レベルと、位置エリア内の位置との対応に関連する所定情報を提供するように用いられる方法を説明するフローチャートであり、この情報はこの第1実施形態に従った位置決め方法によって使用される。
【0067】
当該方法は、複数の所定位置の各位置において、ネットワークのN個の所定チャネルのそれぞれに関する受信電力レベルを測定する第1のステップ100を備える。これらの測定は、当該位置決め方法で後に使用される使用される移動局により行われる。
【0068】
これらの位置はそれぞれ、任意の二次元座標系または三次元座標系において定義される周期的な場所に対応する。あるいはそれらは、所定の地理的容積、例えば建物内の部屋またはその部屋内の所定位置、または、表面性の所定の地理的エリア、例えば建物の外側に対応する。
【0069】
N個のチャネルに関する測定動作は、いくつかのセットの測定を供給するために、同一の位置内で、異なる時間に、何回か繰り返され得る。これにより、局所的且つ一次的に電磁界に影響する測定ノイズおよび乱れの影響を低減することが可能になる。
【0070】
所定位置が予め定められた容積または表面エリアに一致する場合、N個のチャネルに関する測定動作は、いくつかのセットの測定を供給するために、所定位置内で異なる場所で何回か繰り返され得る。これにより、その位置内でのN個の異なるチャネルに関する受信電力レベルの変化量について報告することが可能になる。
【0071】
以降、以下のように指定する。
【0072】
:各所定位置、iは1からTまでの値を取り得る整数であり、Tは1以上の整数である。
【0073】
:1つのセットの測定を供給する一連の測定の各々、jは1から、考慮される位置Lで行われる一連の測定の数である整数までの値を取り得る整数である。
【0074】
:N個の通信チャネルの各々、kは1からNまでの値を取り得る整数である。
【0075】
LiMjCk :位置Lで、一連の測定Mの間に、チャネルCに関して測定された受信電力レベル。
【0076】
LiMj:Lの代わりに、一連の測定Mの間にN個のチャネルに関してそれぞれ測定されたN個の電力レベルから構成されるセットであり、換言すれば、PLiMjC1、…PLiMjCk、PLiMjCNから構成されるセット。
【0077】
各セットPLiMjは、点の座標またはベクトルの成分になぞらえることができる。
【0078】
当該方法は、セットPLiMjの各々を対応する位置Lと関連付けるデータベースBD1を作成する第2のステップ110を備える。
【0079】
データベースBD1において、位置Lは任意の特定システムを使用して参照される。これは、位置Lが周期的な場所に一致する場合には、位置Lの座標を含んでもよい。位置Lが所定の容積または表面エリアに一致する場合には、位置Lは、例えばオーダー番号、コードまたは関係する部屋またはエリアの名称を使用して参照されてもよい。
【0080】
データベースBD1はそれ故以下のタイプのテーブル形式を想定する。
【0081】
【表1】

【0082】
ステップ100および110は連続的である必要はなく、同時に生じ得ることが理解されよう。
【0083】
ステップ100の間、データベースを作成するためにステップ110で使用される移動局において、関係する位置Lの基準(reference)を入力することが提供され得る。これにより実施容易になる利点がある。
【0084】
データベースの作成は従って、PLiMjのセットが取得されるとすぐ、移動局が音声合成装置を使用してユーザに例えば建物の名称または部屋番号等の現在位置を求める間に、1つのセットの形式を想定することができる。ユーザはこれを移動局のキーパッドで、または音声認識によって供給する。音声合成認識システムは携帯電話で既に共通である。
【0085】
図2は、この第1実施形態に関連する位置決め方法を説明するフローチャートである。
【0086】
当該位置決め方法は、移動局により、チャネルCの各々に関する受信電力レベルを測定する第1のステップ200を備える。これらの測定は、移動局を位置決めしたいとき、すなわち移動局が位置する位置を判定したいときに行われ、それは以降Lで表される。N個の受信電力レベルが供給され、各々は各チャネルCと対応しており、以降PLxC1、…PLxCk、…PLxCNで表される。
【0087】
これらN個の受信電力レベルはPLxで表される1つのセットを定義する。このセットPLxは、セットPLiMjと同じ座標系での点の座標または同じ基底(base)でのベクトル成分を定義すると考えられ得る。
【0088】
当該位置決め方法は、PLxをデータベースBD1におけるセットPLiMjと比較する第2のステップ220を備える。
【0089】
当該比較は、PLxによって定義される点を、計算を通じて判定された点PLiMjの各々から分離する距離に基づいて行われる。
【0090】
距離は、好ましくはユークリッド距離であり、それ故以下の式を使用して計算される。
【0091】
【数1】

【0092】
それでもやはり、距離L1または距離L等の任意の他のタイプの距離が使用され得る。
【0093】
位置Lxは、点PLxと最も小さい距離を有する点PLiMjに一致する位置Lとして特定されることができる。
【0094】
データベースBD1の全てのセットPLiMjについて比較を実行しないことが考えられ得る。例えば、1つのセットPLiMjが所定の閾値より小さな距離を供給したなら、比較は停止されてもよく、その場合、位置LxがそのセットPLiMjの位置Liに一致すると考えられる。
【0095】
あるいは、いくつかの位置Liのサブセットの重心において位置Lxを位置決めするように提供されてもよい。そのサブセットの位置Lは所定の閾値より小さな距離を有する位置Liであってもよい。あるいは、位置Liのサブセットは、最も小さい距離を有する位置Lの数Bによって判定されてもよい。数Bは、予め定められることも、異なるPLiMjについて計算される距離に依存することもできる。
【0096】
重心の計算において、使用される各位置Lは同じ重みによって影響される。あるいは、使用される各位置Liは、その位置Lの異なるPLiMjの距離に従って重みづけされる。これは、特に1/d重みづけすることを含んでもよい。
【0097】
重心計算の使用により、位置精度を向上することが可能になる。位置が、座標によってデータベースBD1において参照される周期的な場所と一致する場合に、このソリューションが好ましくは適用される。
【0098】
図3は、第1実施形態の適用例を示す、単純化するために、この例での位置エリアは、それぞれL、L、およびLで参照される3つの位置に限定される。換言すれば、‘i’は値1、2、および3を想定する。チャネル数Nはこの場合10である。
【0099】
方法は、図1と関連して説明されるようなデータベースBD1の形式で所定情報を供給するために最初に実施される。
【0100】
各位置L、L、およびLにおいて、方法のステップ100に従って考慮された10個のチャネルに関する受信電力レベルの、4つの別個の一連の測定が実行される:図1参照。各位置Lについての測定シリーズは、M、M、MおよびMで参照され、換言すれば、‘j’は値1、2、3、および4を想定する。各セットPLiMjを、対応する位置Lと関連付けることにより、方法のステップ110に従って、データベースBD1が作成される。
【0101】
電力レベルPLiMjCkは、対応するボックス内の垂直バーによって図3に示される。
【0102】
位置決め方法はその場合図2に関連して記載された方法で、形成されたデータベースBD1を使用して実施される。
【0103】
特に、移動局を位置決めすることを望むとき、移動局は、ステップ200に従ってセットPLxを供給するために、10個のチャネルに関する受信電力測定を実行する。Lxはその場合、そのセットPLxを方法のステップ210に従ってデータベースBD1におけるセットPLiMjと比較することによって判定される。
【0104】
手近なケースでは、セットPL3M3は、セットPLxと最も小さいユークリッド距離を有するセットPLiMjのグループのセットであるので、位置Lxは位置Lであると考えられる。
【0105】
図4乃至図6を参照して、データの前処理も使用する、第1実施形態に基づく第2実施形態を説明する。
【0106】
図4は、N個のチャネルの各々に関する受信電力レベルと、所定エリア内の位置との間の対応に関連する所定情報を供給するために使用される方法を説明するフローチャートであり、この情報は第1実施形態に従った位置決め方法によって使用される。
【0107】
フローチャートから明らかなように、方法は、図1を参照して説明した第1実施形態に従った方法と同じステップ100および110を備える。第1実施形態に照らしたこれら2つのステップの全体説明は第2実施形態にも同様に適用可能であり、それ故ここでは繰り返さない。
【0108】
この第2実施形態に従った方法は、しかしながら、追加のステップ120、130、および140を備える。これらの追加ステップの目的は、ステップ110で取得される第1のデータベースBD1の前処理から第2のデータベースBD2を供給することである。
【0109】
この前処理の機能は、第1のデータベースBD1よりもサイズの小さな第2のデータベースBD2を供給することである。
【0110】
従って、ステップ120はQ個の関数を供給する工程から成り−各々‘f’で表され− ‘f’ で表される変換をともに定義する。Qは、1以上Nより小さな整数であり、pは1からQまでの値を想定する整数である。
【0111】
ステップ130において、この‘f’変換は、値VLiMjの新しい対応するセットを供給するために、第1のデータベースBD1の各セットPLiMjに適用される。換言すれば、各関数‘f’が、値VLiMjのセットの−VLiMj,pで表される−各々の値を供給するために、セットPLiMjに適用され、それは以下のように要約され得る。
【0112】
【数2】

【0113】
方法は、VLiMjのセットの各々を、対応する位置Lと関連付ける第2のデータベースBD2を作成するステップ140を備える。
【0114】
当該方法のステップ120からステップ140は、連続的である必要はなく、重複することができることが理解されよう。
【0115】
データベースBD2において、位置Lは好ましくは、第1のデータベースBD1と同様の方法で参照される。
【0116】
データベースBD2はそれ故以下のタイプのテーブルの形式を想定する。
【0117】
【表2】

【0118】
セットPLiMjと同様に、各セットVLiMjは、点の座標またはベクトルの成分になぞらえることができる。
【0119】
位置Lと関連付けられた値VLiMjのセットが、他の位置と関連付けられている‘f’によって取得される値のセットに対して、対応する位置Lを識別するように、‘f’変換は好適に選択される。換言すれば、データベースBD1の異なるセットPLiMjの任意のペアについて、それら2つのセットPLiMjの‘f’による変換が、相互に異なっており好適には実現し得る最高の識別を提供するためにできる限り異なっている2つのセットVLiMjを与えるように、関数‘f’が選択される。
【0120】
これを受けて、関数‘f’を定義するために、それ自体既知の統計的方法が使用され、データベースBD1に適用され得る。これは例えば主成分分析(PCA)または独立成分分析であってもよい。これらの両方のケースにおいて、値PLiMjのセット全体について識別している第1の成分が、使用され得る。
【0121】
‘f’変換は、主成分分析の場合ように、測定された受信電力レベルPLiMjCkの線形結合(linear combination)であり得、または独立成分分析の場合ように、非線形結合であってもよい。
【0122】
別の可能性は、平均、標準偏差、他の可能性のある高次のモーメント等の、1つのセットPLiMjを構成するPLiMjCkの分布の所定モーメントを供給する工程として、各関数‘f’を定義する工程から成る。この場合、値PLiMjの全てのセットについて識別する最も低次のモーメントを使用することができる。
【0123】
前処理変換は、前述の技術を使用して取得されるいくつかの変換から構成される関数であってもよい。
【0124】
図5は、第2実施形態に照らした位置決め方法を説明するフローチャートである。
【0125】
当該方法の第1のステップ200は、第1実施形態のステップ200と同一である。それは、移動局を介して、第1実施形態で説明したように、N個の電力レベルPLxC1、…PLxCk、…PLxCNのセットPLxを供給するために、チャネルCkの各々に関して受信電力レベルを測定する工程を含む。
【0126】
第1実施形態とは違って、セットPLxは、第2のデータベースBD2におけるセットVLiMjと同じ種類(homogenous)にするために、−ステップ220において−前処理される。これを受けて、値VLxのセットの−VLx,p で表される−各値を供給するために、‘f’変換がセットPLxに適用され、それは以下のように要約され得る。
【0127】
【数3】

【0128】
このセットVLxは、セットVLiMjと同じ座標系の点の座標または同じデータベースにおけるベクトル成分を定義すると考えられ得る。
【0129】
位置決め方法は、位置Lxを特定するために、セットVLxを、データベースBD2におけるセットVLiMjと比較するステップ230を備える。この比較ステップは、それがVLxおよびセットVLiMjに基づいて行われることを除いて、第1実施形態に照らしたステップ210と同様に実行される。従って、最小距離を判定することによって、または、重心を計算することによって、特定が行われ得る。第1実施形態のステップ210に関して提供される説明全体は、必要な変更を加えて、第2実施形態の前術のステップ230に適用し、それ故ここでは繰り返さない。
【0130】
第2実施形態に従った位置決め方法では、第1のデータベースは使用されず、第2のデータベースBD2のみ使用される。第2のデータベースBD2に、第1のデータベースBD1よりも小さなサイズを供給するための前処理の使用は、格納スペースの観点での節約およびステップ230での比較動作の単純化の両方のために有効である。このことは、位置決め方法が移動局自身により実施されるなら特に当てはまる。
【0131】
図6は、第2実施形態の適用例を説明する。それは図3を参照して説明された例に基づいている。データベースBD1の作成は、例えば第1実施形態に照らして図3に説明されるように、当該方法のステップ100および110を適用することによって行われる。第1のデータベースBD1は、図3に示されるデータベースなので、図6には示されなかった。
【0132】
この例では、ステップ120において、‘f’変換はデータベースBD1の主成分分析によって選択され取得された。その場合、2つの第1の成分に対応する関数‘f’および‘fp2’が、それらは値VLiMjの異なるセットの間での所望の識別を供給するので、使用された。Qはそれ故2に等しく、‘p’は値1および2を想定する。
【0133】
ステップ130および140に従って、セットVLiMjが計算され、データベースBD2内の対応する位置Lと関連付けられる。‘i’は1、2、および3を想定し、‘j’は1、2、3、および4を想定する。セットVLiMjは、関数‘f’および‘fp2’による各セットPLiMjの変換であり、それ故各々は2つの値VLiMj,1、VLiMj,2を備える。換言すれば、
【0134】
【数4】

【0135】
各セットVLiMjの値VLiMj,1、VLiMj,2は、図6において、対応するボックス内の垂直バーによって示される。
【0136】
位置決め方法は、図5に照らして説明されたように、そのように形成された第2のデータベースBD2を使用して実施される。
【0137】
特に、移動局を位置決めしたいときに、移動局は、ステップ200に従ったセットPを供給するために10個のチャネルに関して受信電力測定を実行する。セットVLxが次に計算され、それは‘f’によるPLxの変換である。換言すれば、
【0138】
【数5】

【0139】
セットVLxの値VLx,1およびVLx,2が図6に示される。
【0140】
次に位置Lが、セットVLxを、当該方法のステップ230に従って第2のデータベースBD2におけるセットVLiMjと比較することによって判定される。
【0141】
この場合、セットVL3M3が、セットVLxと最小のユークリッド距離を有するセットVLiMjのグループのセットであるため、位置Lは位置Lであると再び考えられる。
【0142】
図7乃至図10を参照して、統計的学習または人工的学習を使用する第3実施携帯を説明する。第1および第2実施形態よりも良好な位置精度を得るので、この第3実施形態が好まれる。
【0143】
図7は、N個のチャネルの各々に関する受信電力レベルと、位置エリア内の位置との間の対応に関連する所定情報を供給するために使用される方法を説明するフローチャートであり、この情報はこの第3実施形態に従った位置決め方法によって使用される。
【0144】
この第3実施形態に従った方法は、第1実施形態の図1を参照して説明した方法、または、第2実施形態の図4を参照して説明した方法の何れかと組み合わせて適用されるステップ150および160を備える。
【0145】
第1実施形態の図1を参照して説明した方法と組み合わせた適用に関して、これは当該方法が図1を参照して説明した第1実施形態に従った方法と同じステップ100および110を備えることを意味する。第1実施形態に照らしたこれら2つのステップの説明全体は、この第3実施形態に同様に適用可能であり、それ故ここでは繰り返さない。
【0146】
ステップ150は、各位置Lについて、その位置に特有のR個の所定値のセットを定義する工程から成り、Rは、全ての位置Lについて同一であるように設定された1以上の整数である。値のこのセットは以降YLiで表される。セットYLiを構成する値の各々は、YLi,aで表される。‘a’は1からRまでの値を想定する整数である。ここで再び、各セットYLiは、点の座標またはベクトルになぞらえることができる。
【0147】
好適には、これらのセットYLiは、データベースBD1において異なる位置Lを特定するのに役立つ。換言すれば、セットPLiMjは、データベースBD1における対応するセットYLiとそれぞれ関連付けられる。ステップ150は、それ故ステップ1500および110と連続的である必要はなく、後者に重複し得る。
【0148】
データベースBD1はそれ故、以下のタイプのテーブルの形式を想定する。
【0149】
【表3】

【0150】
例として、YLiのセットは、位置Lに割り当てられた番号、例えば建物内の対応する部屋の番号に対応する単一の値のみ−すなわちRは1に等しい−を備えている。別の例によれば、セットYLiは、それぞれ2次元座標系、3次元座標系において位置Lの座標に対応する、それぞれ2つの値、3つの値−すなわちRはそれぞれ2、3に等しい−を備え得る。これらの例はもちろん限定的ではない。
【0151】
ステップ160は、データベースBD1からの統計的学習または人工的学習を通じて、データベースBD1におけるセットPLiMjと関連付けられたセットYLiの近似であるR個の値の−ZLiMjで表される−セットを、各セットPLiMjから提供することができる−各々‘g’で表される−R個の関数のセットを判定する工程から成る。
【0152】
この第3実施形態では、この‘g’変換は、N個のチャネルの各々に関する受信電力レベルと、位置エリア内の位置との間の対応に関連する所定情報を構成し、それは当該位置決め方法に照らして使用されるだろう。
【0153】
第2実施形態の図4を参照して説明した方法と組み合わせたステップ150および160の適用に関して、これは、当該方法が図4を参照して説明した第2実施形態に従った方法と同じステップ100乃至140を備えることを意味する。結果として、第2実施形態に照らしたステップ100乃至140の説明全体が、この第3実施形態にも同様に適用可能であり、それ故ここでは繰り返さない。
【0154】
ステップ150は、第1実施形態の図1を参照して説明した方法と組み合わせた先行代替実施形態と同一である。結果として、ステップ150において提供される説明は、好適には、セットYLiが第2のデータベースBD2における異なる位置Lについての特定としての機能を果たすことを除いて、先行代替実施形態についてここでも適用可能である。換言すれば、セットVLiMjは、第2のデータベースBD2において対応するセットVLiと各々関連付けられている。結果として、ステップ150もまた、ステップ100乃至140と連続的である必要はないが、後者と重複し得る。
【0155】
第2のデータベースBD2はそれ故、以下のタイプのテーブルの形式を想定する。
【0156】
【表4】

【0157】
選択的に、ステップ160は、(第1のデータベースBD1の代わりに)第2のデータベースBD2から統計的学習または人工的学習を通じて、(第1のデータベースBD1の代わりに)第2のデータベースBD2におけるセットVLiMjと関連付けられたセットYLiの近似であるR個の値の−ZLiMjで表される−セットを、(PLiMjの代わりに)各セットVLiMjから提供することができる−各々‘g’でも表される−R個の関数のセットを判定する工程から成る。先行代替実施形態のように、R個の関数‘g’のこのセットは以降‘g’で表される変換を定義し、N個のチャネルの各々に関する各受信電力レベルと、位置エリア内の位置との間の対応に関連する所定情報を構成し、それは当該位置決め方法に照らして使用されるだろう。
【0158】
一般に、人工的学習または統計的学習がそれ自体知られている。それは、演繹的知識または過程というよりもむしろ、データ自身からパラメータが
判定される暫定モデルを確立する工程から成る。システムの学習による解析の従来のステップは、非限定的に、
−最も可能性のあるそれらのベースの代表を保証する学習ベースおよび検証ベースを確立する工程
−選択的に、これには限定されないが特に第2実施形態に照らして説明したような主成分分析または独立成分分析を通じて、未加工(raw)データから最適特性を抽出する工程
−これには限定されないが特にプローブ変数法を使用して、最重要特性を選択する工程
−特に、いわゆるK最近傍法を使用して、ニューロンネットワークまたはサポートベクターマシンSVMまたはTSVM等のコア分類器を使用して、これらの特徴によって供給される分類アーキテクチャまたは回帰アーキテクチャを構築する工程
−クロス検証技術を介して最良モデルを選ぶ工程
を備える。
【0159】
人工的学習または統計的学習は、例えば「Neural Networks: Methodology and Applications by Gerard Dreyfus, Springer, 2004」でより全体的に説明されており、それはこの説明に参照によって組み込まれる。
【0160】
この第3実施形態では、位置決め方法は、図8に照らして説明した方法で前もって取得される‘g’変換を使用して実施される。
【0161】
当該方法の第1のステップ200は第1実施形態のそれと同一である。それは、第1実施形態で説明したように、N個の電力レベルPLxC1、…PLxCk、…PLxCNのセットPLxを供給するために、移動局による、チャネルCkの各々に関する受信電力レベルの測定を含む。
【0162】
‘g’変換を確立するために、第2実施形態の図4を参照して説明した方法と組み合わされてステップ150および160を適用する工程から成る第3実施形態の代替を選択したなら、前処理ステップ220が適用され、すなわちそれは、セットVLxを供給するための、‘f’変換のセットPLxへの適用である。このステップ220は、第2実施形態に照らして既に説明されたステップである。
【0163】
ステップ240において、セットZLxを取得するために‘g’変換がセットVLxへ適用される。
【0164】
換言すれば、
【0165】
【数6】

【0166】
‘g’変換を確立するために、第1実施形態の図1を参照して説明した方法と組み合わせてステップ150および160を適用する工程から成る代替を選択したなら、前処理ステップ220は省略される。その場合、ステップ240において、セットZLxを取得するために‘g’変換がセットPLxへ適用される。
【0167】
換言すれば、
【0168】
【数7】

【0169】
両方の代替において、方法はセットZLxに基づいて移動局を位置決めするステップ250を備える。
【0170】
位置Lを特定するためにセットZLxを、セットYLi(あるいは、セットZLi)と比較することによってこの位置決めを実行することができる。この比較ステップは、ZLxと最も小さい距離を有するセットYLi(各々、ZLi)を探索する工程から成ることができる。この比較は、セットPLxおよびセットPLiMjの代わりに、セットZLxおよびセットYLiに基づいて行われることを除いて、第1実施形態に照らしたステップ210で説明したのと類似の方法で実行されることができる。
【0171】
しかし1つの有利な実施形態によれば、位置は、セットZLxだけに基づいて、すなわちセットYLiとの比較またはセットZLiとの比較を使用することなく、得られる。位置決め方法を実施するために利用可能なセットYLiおよびZLiを有する必要はない。例えば、これは、セットYLiを構成する値が、任意の座標系における位置Lの座標である場合である。その場合、セットZLxは、その同一の座標系において位置Lの近似を供給する。結果として、セットZLxは、その座標系で与えられるLの位置であると考えられる。
【0172】
あるいは、所定位置Lが各々所定の容積または表面エリアに対応する場合、セットYLiとの比較動作なしに、セットXLiに基づいて位置Lが特定され得るように、セットYLiによる位置Lの参照システムが選択され得る。例えば、セットYLiを構成する各値が整数の形式で選択されるなら、位置決めされるべき位置Lを取得するために、セットZLxの各値を最も近い整数にすれば十分である。セットYLiが単一の値のみ含む場合、すなわちRが1に等しい場合に、この方法は特に信頼できる。
【0173】
図9は、第1実施形態と代替的に組み合わされた適用において、第3実施形態の適用例を説明する。それは、図3を参照して説明した例に基づいている。データベースBD1の作成が、第1実施形態に照らして図3で説明したように、当該方法のステップ100および110を適用することによって行われる。データベースBD1は図9に再び示される。
【0174】
ステップ150を適用するとき、以下のセットYLiが定義されている。
【0175】
−Lについて、(1,0,0)によって定義されるセットYL1
−Lについて、(0,1,0)によって定義されるセットYL2
−Lについて、(0,0,1)によって定義されるセットYL3
換言すれば、この例ではRは3に等しい。
【0176】
ステップ160を適用することによって、データベースBD1から統計的学習または人工的学習を通じて、‘g’変換が取得される。
【0177】
本例では、‘g’変換は、位置L、L、およびLにおける移動局の位置確率(可能性)の推定をそれぞれ提供する3つの関数g、g、およびgの形式で探索され得、この確率(可能性)は0と1との間で表現される。その場合、ZLxは、以下の形式で表現され得る。
【0178】
【数8】

【0179】
ここで、
− ZLx,1、ZLx,2およびZLx,3:ZLxを構成する値
− b1,k、b2,kおよびb3,k:第1のデータベースBD1からの統計学習によって決定される係数であって、L の代わりに異なるチャネルCkに関して測定される電力レベルPLxCk の乗算係数である。総和は、1からNまでの値を想定する全インデックスkについて行われる。
【0180】
− σ(x)= 1/(1 +e−x
− g(PLx):測定PLxが位置L で行われた確率(可能性)の推定
である。
【0181】
位置決め方法は、図8に照らして説明した方法で、そのように取得された‘g’変換を使用して実施される。特に、移動局を位置決めしたいときには、ステップ200に従ったセットPLxを供給するために、移動局は10個のチャネルに関して受信電力測定を実行する。ステップ240を適用すると、‘g’によるPLxの変換であるセットZLxが計算される。セットZLxを構成する値は、図9において垂直バーによって示される。
【0182】
ステップ250を適用すると、位置Lが、セットZLxを、セットYLiと比較することによって判定される。この場合、それは、セットZLxと最も小さい距離−例えばユークリッド距離−を有するセットYL3である。結果として、移動局は位置Lに位置するものと考えられる。
【0183】
この例に照らして、位置Lの判定は、比較ステップ250を使用すること以外によっても行われ得る。手近な場合では、位置Lの判定は、セットZLxを構成する値セットZLx,1、ZLx,2、およびZLx,3の各々を、最も近い整数にすることによって行われる。そのように取得されるグループは、位置Lに対応するセットYLiである。この場合、グループ(0,0,1)、すなわちセットYL3を取得することが、図9においてZLxを構成する値のグラフィック説明から現れる。別の有利な可能性によれば、位置Lは、−セットPLxに適用される−対応する関数gが最も高い確率(可能性)、換言すれば図9に示される本例ではL、を供給する位置Lに、位置Lが対応することを考慮することによって判定され得る。もちろん、図9のこの例は、任意の数の位置L、すなわち任意の整数Tについて一般化され得る。
【0184】
図10は、第2実施形態と組み合わされた代替適用における、第3実施形態の適用例を説明する。それは、図6を参照して説明した例に基づいている。第1のデータベースBD1、次に第2のデータベースBD2の作成が、第2実施形態の図6で説明したように行われる。第2のデータベースBD2のみが図10に示される。
【0185】
ステップ150を適用するとき、図9の例に照らしたセットと同一のセットYLiが定義された。すなわち、
−Lについて、(1,0,0)によって定義されるセットYL1
−Lについて、(0,1,0)によって定義されるセットYL2
−Lについて、(0,0,1)によって定義されるセットYL3
ステップ160を適用するとき、今回は、第2のデータベースBD2から統計的学習または人工的学習によって‘g’変換が取得される。
【0186】
ここで再び、‘g’変換は、位置L、L、およびLにおいて移動局を位置決めする確率(可能性)の推定をそれぞれ提供する3つの関数g、g、およびgの形式で探索され得、この確率(可能性)は0と1との間で表現される。この場合、ZLxは、以下の形式で表現され得る。
【0187】
【数9】

【0188】
ここで、
− ZLx,1、ZLx,2およびZLx,3:ZLxを構成する値
− b1,p、b2,pおよびb3,p:第2のデータベースBD2からの統計学習によって決定される係数であって、値VLx,p の乗算係数である。総和は、1からNまでの値を想定する全p個のインデックスについて行われる。
【0189】
− σ(x)= 1/(1 +e−x
− g(VLx):測定PLxが位置L で行われた確率(可能性)の推定
である。
【0190】
位置決め方法は、図8に照らして説明した方法で、そのように取得される‘g’変換を使用して実施される。特に、移動局を位置決めしたいとき、移動局は、ステップ200に従ってセットPLxを供給するために、10個のチャネルに関して受信電力測定を実行し、ステップ220を適用するとき、セットVLxが‘f’変換を適用することによって計算される。
【0191】
ステップ240を適用するとき、セットZLxが計算され、それは‘g’によるVLxの変換である。セットZLxを構成する値は、図10において垂直バーによって表される。
【0192】
ステップ250を適用するとき、位置Lは、図9の場合と同様の方法でセットZLxを、セットYLiと比較することによって、判定される。この場合、それは、セットZLxと最も小さい距離を有するセットYL3である。結果として、移動局は位置Lに位置するものと考えられる。前のケースのように、位置Lの判定は、セットZLxを構成する値の各々を、最も近い整数にすることによって行われ得、それは位置Lに対応するセットYLiを提供する。あるいは、位置Lは、−セットPLxに適用される−対応する関数gが最も高い確率(可能性)、換言すれば図10に示されるように本例ではL、を供給する位置Lであるとも考えられ得る。もちろん、この例は、任意の数の位置L、すなわち任意の整数Tについて一般化され得る。
【0193】
もちろん、本発明は、説明され且つ示された例および実施形態に限定されず、当業者にアクセス可能な多くの代替案が利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局が動作する少なくとも1つの無線電話セルラネットワークによってカバーされる所定エリア内の前記移動局を位置決めするために使用され得る情報を供給する方法であって、前記方法は、
−前記所定エリア内の1つ以上の所定位置(L)について、前記所定位置(L)のそれぞれに対して、前記少なくとも1つの無線電話セルラネットワークのN(7以上の固定整数)個の異なる所定通信チャネルの各チャネルに関して測定された受信電力レベルにそれぞれ対応している、N個の値(PLiMj)の少なくとも1つのセットを提供する工程と、
−N個の値の各セットと、前記対応する所定測定位置とを関連付ける第1のデータベース(BD1)を作成する工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
−前記所定エリア内の前記1つ以上の所定位置(L)の各位置について、前記第1のデータベースにおいて前記対応する所定位置に対して提供されたN個の値の各セットと関連付けられている所定値であって、前記所定位置(L)に特有のR(1以上の整数)個の所定値(YLi)のセットを定義する工程と、
−N個の値(PLiMj)の各セットから、N個の値の前記セットと関連付けられたR個の所定値(YLi)の前記セットの近似であるR個の値(ZLi)のセットを提供可能なR個の関数(‘g’)のセットを、前記第1のデータベースからの統計学習によって決定する工程と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
−Q(1以上でありNより小さい整数)個の異なる関数(‘f’)を提供する工程と、
−N個の値(PLiMj)の各セットに、Q個の値(VLiMj)の対応するセットを提供するための前記Q個の関数を適用することによって、前記第1のデータベース(BD1)から第2のデータベース(BD2)を作成する工程と、を備え、Q個の値の前記セットは、前記対応する所定測定位置(L)と、前記第2のデータベースにおいて関連付けられており、
前記Q個の関数は、データベース(BD1)のN個の異なる値(PLiMj)のセットの任意ペアについて、N個の値(PLiMj)のセットの前記ペアに、前記Q個の関数を適用することによって取得されるQ個の値(VLiMj)の前記2つのセットが相互に異なるように選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記Q個の関数(‘f’)は、主成分の解析または独立成分の解析を通じて提供され、
前記Q個の関数(‘f’)は、N個の値の前記セットの平均値、標準偏差、および他の高次モーメントをそれぞれ提供することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
−前記所定エリア内の1つ以上の所定位置(L)の各位置について、前記第2のデータベース(BD2)において前記対応する所定位置に対して提供されるQ個の値(VLiMj)の各セットと関連付けられている所定値であって、前記所定位置(L)に特有のR(1以上の整数)個の所定値(YLi)のセットを定義する工程と、
−Q個の値(VLiMj)の各セットから、Q個の値の前記セットと関連付けられたR個の所定値(YLi)のセットの近似であるR個の値(ZLi)のセットを提供可能なR個の関数(‘g’)のセットを、前記第2のデータベース(BD2)からの統計学習によって決定する工程と、
を備えることを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
各所定位置(L)について、前記Q個の関数をN個の値の前記セットに適用することによって取得されるN個の値(PLiMj)の前記セットまたはQ個の値(VLiMj)の前記セットからそれぞれ前記所定位置(L)で測定が行われた確率の推定値を提供可能な関数を、前記第1のデータベース(BD1)または前記第2のデータベース(BD2)の何れかからの統計学習によって、決定する工程を備えることを特徴とする請求項1、3または4の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
移動局が動作する少なくとも1つの無線電話セルラネットワークによってカバーされる所定エリア内の前記移動局を位置決めする方法であって、前記方法は、
a)前記少なくとも1つの無線電話セルラネットワークのN(7以上の整数)個の異なる所定通信チャネル(C)の各チャネルに関する受信電力レベル(PLxCk)を前記移動局により測定する工程と、
b)工程a)で測定された前記レベルと、N個のチャネルのそれぞれに関する受信電力レベルと前記所定エリア内の位置との間の対応に関連する所定情報(BD1、BD2、‘g’)と、に基づいて前記移動局を位置決めする工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項8】
−前記所定エリア内の1つ以上の所定位置(L)について、前記所定情報は、各所定位置について、前記対応する所定位置において前記N個のチャネルのそれぞれに関する受信電力レベルと関連するW(1以上の整数)個の所定値(PLiMj、VLiMj)の少なくとも1つの関連付けられたセットを有し、
−工程b)は、W個の所定値の前記セットと関連して、工程a)で測定された前記レベルを解析することによって前記移動局を位置決めする工程を備えることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
−WはNと等しく、各セット(PLiMj)の前記W個の所定値は、前記N個のチャネルの各チャネル(C)に関する受信電力レベルを各々表しており、
−工程b)における前記解析は、工程a)で測定された前記レベルと、W個の所定値の前記セットとを比較する工程を備えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
W個の所定値の前記セットは、請求項1に記載の方法を使用して作成された前記第1のデータベース(BD1)から得られるN個の値の前記セットであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
WはNより小さく、
工程b)での前記解析は、
(i)W個の所定値の前記セットと共に、工程a)で測定された前記レベルと関連する、W個の値(VLiMj)のセットを提供するために、W個の異なる所定関数(‘f’)を、工程a)で測定された前記レベルに適用する工程と、
(ii)前記提供されたW個の値の前記セットと、W個の所定値の前記セットとを比較する工程と、
を備えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
W個の値(VLiMj)の前記セットと前記W個の所定関数とは、請求項3または4に記載の方法に従って、それぞれ、提供され、作成されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
−前記所定情報は、
−前記所定エリア内の1つ以上の所定位置(L)の各位置について、前記所定位置(L)に特有な関連するR(1以上の整数)個の所定値(YLi)のセットと、
−N個のチャネルに関する任意の所定位置(L)で測定された受信電力レベルから、当該測定されたレベルの任意の前処理の後に、前記所定位置に対応するR個の所定値(YLi)の前記セットの近似であるR個の値(ZLi)のセットを供給するために提供されるR個の所定関数(‘g’)のセットと、を備えており、
−工程b)は、
(i)工程a)で測定されて適用可能なら前処理された前記レベル(PLx、VLx)からR個の所定関数(‘g’)の前記セットを使用してR個の値(ZLx)のセットを提供する工程と、
(ii)R個の供給された値(ZLx)の前記セットと、R個の所定値(YLi)の前記セットとを比較することによって前記移動局を位置決めする工程と、を備えることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項14】
−前記所定情報は、
−前記所定エリア内の任意の位置で測定された、前記N個のチャネルに関する受信電力レベルから、当該測定されたレベルの任意の前処理の後に、前記測定位置の座標の近似であるR個の値のセットを供給するために提供されるR個の所定関数のセットを備えており、
−工程b)は、
(i)工程a)で測定されて適用可能なら前処理された前記レベルからR個の所定関数(‘g’)の前記セットを使用してR個の値(ZLx)のセットを提供する工程と、
(ii)提供されたR個の値(ZLx)の前記セットによって表現された前記座標で前記移動局を位置決めする工程と、を備えることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項15】
−前記所定情報は、
−前記N個のチャネルに関して前記所定エリア内の任意の位置で測定された前記受信電力レベルから、当該測定されたレベルの任意の前処理の後に、前記所定エリア内の位置参照システムにおける前記測定位置の基準の近似であるR個の値のセットを供給するために提供されるR個の所定関数のセットを備えており、
−工程b)は、
(i)工程a)で測定されて適用可能なら前処理された前記レベルからR個の所定関数(‘g’)の前記セットを使用してR個の値(ZLx)のセットを供給する工程と、
(ii)前記供給されたR個の値(ZLx)のセットによって近似された位置の基準で前記移動局を位置決めする工程と、を備えることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項16】
R個の所定関数(‘g’)の前記セットは、請求項2に記載の方法を実施することによって決定されることを特徴とする請求項13乃至15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
−前記所定情報は、
−1以上の所定位置(L)の各位置について、前記N個のチャネルに関して測定された前記受信電力レベルから、当該測定されたレベルの任意の前処理の後に、前記測定が前記所定位置で実行された確率の推定値を供給するために提供される関連した関数(‘g’)を備えており、
−工程b)は、工程a)で測定されて適用可能なら前処理された、前記関数の全てまたは一部によって提供される前記確率の推定値に基づいて前記移動局を位置決めする工程を備えることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項18】
前記関数(‘g’)は、請求項6に記載の方法を使用して供給されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程i)では、工程a)で測定された前記レベルは、W(1以上でありNより小さい整数)個の異なる所定関数(‘f’)を適用することによって前処理されることを特徴とする請求項13乃至18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記W個の関数(‘f’)は、請求項3または4に記載の方法を使用して供給された前記Q個の関数であり、
前記R個の所定関数は、請求項5に記載の方法を使用して決定されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
1つ以上の建物内で前記移動局を位置決めするために前記方法が実施されることを特徴とする請求項7乃至20の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記所定情報は、位置決めされるべき同一の移動局を伴う前記所定エリア内の異なる位置で前記N個のチャネルに関して行われた受信電力測定に基づいて確立されることを特徴とする請求項7乃至21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
Nは20以上であり、好ましくは50以上であり、より効果的には200以上であることを特徴とする請求項1乃至22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つの無線電話セルラネットワークで動作するように提供される移動局のためのプログラムであって、前記プログラムは、請求項7乃至23の何れか1項に記載の位置決め方法を前記移動局に実行させるために提供されることを特徴とするプログラム。
【請求項25】
コンピュータに、
(a)少なくとも1つの無線電話セルラーネットワークのN(7以上の整数)個の異なる所定通信チャネル(C)の各チャネルに関して受信電力レベル(PLxCk)の移動局によって行われる測定の前記コンピュータによる受信と、
(b)請求項7乃至23の何れか1項に記載の位置決め方法の工程b)を実行することによって前記移動局を位置決めすることと、
を実施させるために提供されるコンピュータプログラム。
【請求項26】
請求項7乃至23の何れか1項に記載の位置決め方法を実行するために提供される、少なくとも1つの無線電話セルラーネットワークにおいて動作可能である移動局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−529635(P2012−529635A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514430(P2012−514430)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057859
【国際公開番号】WO2010/142615
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(511301061)ユニベルシテ ピエール エ マリー キュリー(パリ6) (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PIERRE ET MARIE CURIE(PARIS 6)
【住所又は居所原語表記】Tour Centrale, 4 Place de Jussieu, F−75005 Paris FRANCE
【Fターム(参考)】