説明

無電解めっき膜形成方法、及び、触媒パターン形成装置

【課題】セラミックグリーンシート上に電極パターンを薄く形成することができるとともに、生産性が高く、高品質の積層電子部品を得ることができる無電解めっき膜形成方法、及び、無電解めっきのための触媒パターン形成装置を提供する。
【解決手段】触媒溶液32、42を含浸させた転写材31、41をセラミックグリーンシート1に接触させて、同シート1上に、触媒溶液32、42による触媒パターン320、420を形成する。その後、触媒パターン320、420に無電解めっきを施す。転写装置3、4は、支持体30、40と、転写材31、41とを含み、支持体30、40は転写材31、41を支持し、転写材31、41は触媒溶液32、42に対する保液性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解めっき膜形成方法、及び、そのための触媒パターン形成装置に関し、更に詳しくは、積層セラミックコンデンサ等の積層電子部品の内部電極膜を、無電解めっきにて形成する方法、及び、その方法の実施に適用される触媒パターン形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層セラミックコンデンサ等の積層電子部品は、次のような工程によって製造される。まず、セラミックグリーンシート上に、導体ペーストでなる電極パターンをスクリーン印刷法により形成する。次に、セラミックグリーンシートを複数枚積層し、シート積層体を作る。そして、シート積層体を圧着した後、複数のチップ(個品)に切断して積層グリーンチップを得る。更に、その積層グリーンチップに対して、脱バインダ、焼成、及び、端子電極形成などの周知の処理を施し、複数の内部電極膜を有する積層電子部品を得る。
【0003】
ところで、近年、電子機器の小型化、高機能化の進展に追従すべく、積層電子部品の小型化、及び、高容量化に対する市場の要請はきわめて大きい。この要請に対応するため、例えば、内部電極膜について、予め製造工程において、電極パターンを薄く形成しておくことが望まれる。
【0004】
また、電極パターンは、その厚みが増すにしたがって、厚み段差による積層ズレや、ノンラミネーション等の危険性が高まるから、電極パターンの薄膜化は、最終製品である積層電子部品の品質保証の観点からも望まれている。
【0005】
ところが、従来のスクリーン印刷法では、電極パターンを、導体ペーストに含まれるNi粒子の粒径より薄く形成することはできないから、電極パターンの薄膜化には限界がある。
【0006】
そこで、電極パターンを薄膜化する方法として、無電解めっきが検討されている。無電解めっきでは、予め、シート上に触媒を付与しておくことにより、Niを原子の状態で、触媒付与部分の表面に付着させることができるから、内部電極膜となる電極パターンを薄く形成することができる。
【0007】
このような無電解めっきを実行するにあたり、シート上に触媒を付与する従来技術としては、特許文献1乃至3がある。特許文献1、及び、2は、転写用シートを触媒溶液に浸漬して触媒を付与した後、スクリーン印刷にてレジストを塗布し、触媒パターンを設定する。さらに、この触媒パターン上に無電解めっきにて電極パターンとして用いられるめっき膜を形成する。その後、転写用シート上に形成されためっき膜を、セラミックグリーンシートに熱転写する。
【0008】
しかし、特許文献1、及び、2の開示内容によると、触媒パターンの形成までの工程数が多い分、生産性が悪いという問題がある。また、転写用フィルム上に形成された電極パターンを、セラミックグリーンシートへ熱転写する工程を含むから、セラミックグリーンシートと、電極パターンとの密着性が損なわれやすく、剥がれ事故が発生しやすい。
【0009】
特許文献3は、マスキング処理したセラミックグリーンシートを触媒溶液に浸漬し、セラミックグリーンシート上に直接、触媒パターンを形成し、そのあと触媒パターン上に無電解めっきにて電極パターンとして用いられるめっき膜を形成する。
【0010】
特許文献3によっても、触媒パターンの形成までの工程数が多い分、生産性が悪いという問題がある。さらに、触媒溶液は、通常、塩化スズ、塩化パラジウム等でなる酸性溶液であるから、この酸性溶液にセラミックグリーンシートを浸漬すると、同シートにダメージが生じ、ひいては最終製品である積層電子部品の信頼性が損なわれる問題がある。
【特許文献1】特開平10−125556号公報
【特許文献2】特開平10−208980号公報
【特許文献3】特開2002−231574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、セラミックグリーンシート上に電極パターンを薄く形成することができる無電解めっき膜形成方法、及び、この方法の実施に適用される触媒パターン形成装置を提供することである。
【0012】
本発明のもう1つの課題は、生産性の高い無電解めっき膜形成方法、及び、この方法の実施に適用される触媒パターン形成装置を提供することである。
【0013】
本発明の更にもう一つの課題は、高品質の積層電子部品を得ることができる無電解めっき膜形成方法、及び、この方法の実施に適用される触媒パターン形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するため、本発明に係る無電解めっき膜形成方法は、触媒溶液を含浸させた転写材をセラミックグリーンシートに接触させて、セラミックグリーンシート上に、この触媒溶液による触媒パターンを形成し、そのあと、触媒パターンに無電解めっきを施す。
【0015】
上述したように、本発明に係る無電解めっき膜形成方法は、触媒溶液を含浸させた転写材をセラミックグリーンシートに接触させて、セラミックグリーンシート上に、触媒溶液による触媒パターンを直接形成するから、作業効率が向上する。例えば、シートを触媒溶液に浸漬する工程や、触媒パターンを設定するためのレジスト塗布工程、又は、マスキング処理工程などは不要である。従って、工程数を大幅に削減し、生産性の高い無電解めっき膜形成方法を提供することができる。
【0016】
また、触媒溶液を含浸させた転写材をセラミックグリーンシートに接触させて、セラミックグリーンシート上に、触媒溶液による触媒パターンを形成するから、転写材の転写面構造(転写パターン)により多様な触媒パターンを効率的に形成することができる。
【0017】
さらに、触媒パターンは、転写材がセラミックグリーンシートに接触する部分にのみ形成されるから、触媒溶液によりセラミックグリーンシートが受けるダメージを最小限に低減することができる。従って、本発明に係る無電解めっき膜形成方法によると、高品質の積層電子部品を得ることができる。
【0018】
本発明に係る無電解めっき膜形成方法は、触媒パターンに無電解めっきを施すから、電極パターンとして用いられるめっき膜を、薄く形成することができる。
【0019】
また、触媒パターンは、セラミックグリーンシート上に形成されており、めっき膜がセラミックグリーンシート上に直接形成されるから、作業効率が向上する。例えば、転写用シートからセラミックグリーンシートにめっき膜を転写する工程を削減することができる。従って、工程数を大幅に削減し、生産性の高い無電解めっき膜形成方法を提供することができる。
【0020】
さらに、セラミックグリーンシートと、電極パターンとの密着性を確保し、高品質の積層電子部品を得ることができる。加えて、めっき膜は、セラミックグリーンシート上における触媒パターンの付与領域にのみ形成されるから、精度よく電極パターンを形成することができる。
【0021】
本発明に係る無電解めっき膜形成方法の好ましい態様において、上述した触媒パターンの形成は、回転ローラを用いて行われる。この構成によると、迅速、且、安価で、セラミックグリーンシート上に、触媒パターンを形成することができる。
【0022】
本発明に係る無電解めっきのための触媒パターン形成装置は、転写装置を含む。転写装置は、支持体と、転写材とを含む。支持体は、転写材を支持し、転写材は、触媒溶液に対する保液性を有する。この触媒パターン形成装置によれば、上述した無電解めっき膜形成方法を、効率よく、確実に実行することができる。
【0023】
本発明の他の目的、構成、及び、利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【発明の効果】
【0024】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)セラミックグリーンシート上に電極パターンを薄く形成することができる無電解めっき膜形成方法、及び、この方法の実施に適用される触媒パターン形成装置を提供することができる。
(2)生産性の高い無電解めっき膜形成方法、及び、この方法の実施に適用される触媒パターン形成装置を提供することができる。
(3)高品質の積層電子部品を得ることができる無電解めっき膜形成方法、及び、この方法の実施に適用される触媒パターン形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明に係る無電解めっき膜形成方法に用いられる触媒パターン形成装置を示す図である。図2〜図5は、図1に示した触媒パターン形成装置を用いた触媒パターン形成方法を示す図、図6、図7は無電解めっき法を説明する図、図8は、図2乃至図7に示した工程を経て得られた積層電子部品の断面図である。
【0026】
まず、図1を参照すると、触媒パターン形成装置は、第1の転写装置3と、第2の転写装置4とを含む。これらは、セラミックグリーンシート1が搬送されるシート搬送路2に沿って配置されている。
【0027】
セラミックグリーンシート1は、セラミック粉末、溶剤、及び、バインダなどを混合したセラミックペーストを塗布し、乾燥させて得られたもので、一定の厚さとなっている。セラミックグリーンシート1は、可撓性プラスチックフィルムなどの支持体(図示しない)の表面に付着されている。セラミックグリーンシート1は、触媒付与面10を上にしてシート搬送路2に載置され、矢印m1で示す方向に搬送される。
【0028】
第1の転写装置3は、センシタイザとして用いられる触媒パターンの転写装置であって、第1の支持体30と、第1の転写材31とを有する。図1に示す第1の支持体30は、所謂、回転ローラであって、ローラ外周面に第1の転写材31が複数備えられている。以下、説明の都合上、第1の支持体30は、回転ローラ30として説明する。
【0029】
第1の転写材31のそれぞれは、触媒溶液に対する保液性、又は、吸液性を有し、回転ローラ30のローラ外周面に、突設されている。より詳細に説明すると、第1の転写材31は、好ましくは、耐酸性を有する合成樹脂材料を用いたスポンジ状の多孔質体であって、凸片状に成形されたものが、回転ローラ30の外周面に、所定のピッチ間隔で配置されている。第1の転写材31の設置数、ピッチ間隔は、生産性を考慮して設定される設計的事項である。また、第1の転写材31の具体的な表面形状は、所望の触媒パターンのパターン形状により設定される設計的事項である。
【0030】
第1の転写装置3は、第1の転写材31の表面が、シート搬送路2上であって、セラミックグリーンシート1の触媒付与面10に相対向する位置に備えられている。
【0031】
第1の転写材31には、図示しない供給装置等により供給された第1の触媒溶液32が含浸されている。第1の触媒溶液32は、センシタイザとして用いられる触媒剤の溶液であって、好ましくは塩化スズ水溶液である。
【0032】
第1の転写装置3について、図2及び図3を参照して、第1の触媒溶剤32の転写工程を説明する。まず、セラミックグリーンシート1は、予め、イオン交換水槽(図示しない)に通して触媒付与面10を水洗し、乾燥したあと、シート搬送路2を、矢印m1で示す方向に送られる。
【0033】
図2を参照すると、第1の転写装置3は、第1の触媒溶液32を含浸させた第1の転写材31が、回転ローラ30の回転R30にしたがって、m1方向に搬送されるセラミックグリーンシート1の触媒付与面10に接触し、触媒付与面10に、所定のピッチ間隔で、第1の触媒溶液32を転写する。
【0034】
図2の工程により得られたセラミックグリーンシート1は、触媒付与面10に、第1の触媒溶液32による膜状の第1の触媒パターン320が形成される(図3参照)。第1の触媒パターン320の膜厚d320は、0.02μm程度である。
【0035】
再び、図1を参照して、第2の転写装置4の説明をする。第2の転写装置4は、アクチベータとして用いられる触媒パターンの転写装置であって、第2の支持体40と、第2の転写材41とを含む。第2の支持体40は、所謂、回転ローラであって、ローラ外周面に第2の転写材41を備えている。以下、説明の都合上、第2の支持体40は、回転ローラ40として説明する。
【0036】
第2の転写材41は、触媒溶液に対する保液性、又は、吸液性を有し、回転ローラ40のローラ外周面に備えられている。より詳細に説明すると、第2の転写材41は、好ましくは、耐酸性を有する合成樹脂材料を用いたスポンジ状の多孔質成形体であって、ローラ外周面の全周に渡って巻装されている。第2の転写材41には、第1の転写材31と同じものを用いることもできる。
【0037】
第2の転写装置4は、第2の転写材41の表面が、シート搬送路2上であって、セラミックグリーンシート1の触媒付与面10に相対向する位置に備えられている。
【0038】
第2の転写材41には、図示しない供給装置等により第2の触媒溶液42が供給され、含浸されている。第2の触媒溶液42は、アクチベータ(活性化剤)として用いられる触媒活性剤の溶液であって、好ましくは塩化パラジウム水溶液である。
【0039】
図1において、第2の転写装置4は、セラミックグリーンシート1の搬送方向m1でみて、第1の転写装置3の後に備えられており、第1の転写装置3により形成された、第1の触媒パターン320に対して、第2の触媒溶液42を転写する。
【0040】
第2の転写装置4における第2の触媒溶剤42の転写工程について、図4及び図5を参照してより具体的に説明する。まず、セラミックグリーンシート1は、予め、イオン交換水槽(図示しない)に通し触媒付与面10、及び、第1の触媒パターン320の表面を水洗し、乾燥したあと、シート搬送路2を、矢印m1で示す方向に送られる。
【0041】
図4を参照すると、第2の転写装置4は、第2の触媒溶液42を付着させた第2の転写材41が、回転ローラ40の回転R40にしたがって、m1方向に搬送されるセラミックグリーンシート1の触媒付与面10に接触する。ここで、塩化パラジウムを含む第2の触媒溶液42は、性質上、塩化スズを含む第1の触媒パターン320の表面にしか定着せず、第1の触媒パターン320の形成されていない触媒付与面10上に転写された分は、はじかれることとなる。従って、第1の触媒パターン320の表面にのみ、第2の触媒溶液42が転写される。
【0042】
図4の工程により得られたセラミックグリーンシート1は、好ましくは転写された第2の触媒溶液42の乾燥処理を経ることにより、第1の触媒パターン320の表面に、第2の触媒溶液42による膜状の第2の触媒パターン420が形成される(図5参照)。第2の触媒パターン420の膜厚d420は、0.02μm程度である。
【0043】
図4に示す工程の後、第1及び第2の触媒パターン320、420が積層して形成されたセラミックグリーンシート1を、イオン交換水槽(図示しない)に通して水洗し、乾燥する。
【0044】
上述のようにして、触媒パターンを形成した後、次に、無電解めっき処理が実行される。図6を参照すると、図2乃至図5に示した工程の後、第1及び第2の触媒パターン320、420に無電解めっきを施す。具体的に、セラミックグリーンシート1を、矢印m2で示す方向に下降させ、第1及び第2の触媒パターン320、420をホウ素系無電解Niめっき浴5に浸漬する。例えば、膜厚(0.1μm)のNi膜50を形成する場合における、電解Niめっき浴5への浸漬時間は6秒程度である。めっき浴5への浸漬により、第2の触媒パターン420の表面にNi膜50が形成される。
【0045】
めっき浴5の組成の一例は以下のとおりである。
1.めっき浴組成
硫酸ニッケル6水和物 26g/リットル
ジメチルアミンボラン 1.8g/リットル
酢酸アンモニウム 16g/リットル
pH 6
浴温 60℃
【0046】
図6の無電解めっき工程を経ることにより、図7に示すように、第1及び第2の触媒パターン320、420の表面に、無電解めっきによるNi膜50を形成したセラミックグリーンシート1が得られる。Ni膜50の膜厚d50は、0.1μm程度である。従って、第1の触媒パターン320の膜厚d320と、第2の触媒パターン420の膜厚d420、及び、Ni膜50の膜厚d50の合計は0.1〜0.2μm程度である。
【0047】
図1乃至図6に示した工程の後、セラミックグリーンシート1を、矢印m3で示す方向に上昇させ、さらに、イオン交換水槽(図示しない)に通し、触媒付与面10、及び、めっき膜6を水洗し、乾燥する。さらに、Ni膜50が印刷されたセラミックグリーンシート1を積層してシート積層体を作製する工程、シート積層体を所定のサイズに切断して積層グリーンチップを作成する工程、及び、積層グリーンチップを、例えば、1200℃で2時間、N2、H2およびH20からなるガス中にて雰囲気焼成する工程、更に端子電極形成等の工程を行うと、図7に示した積層チップ部品が得られる。上述工程を経て得られる最終的な内部電極膜の膜厚は、0.1〜0.2μm程度となる。
【0048】
上述したように、図1を参照して説明した触媒パターン形成装置では、第1の触媒溶液32を含浸させた第1の転写材31を、セラミックグリーンシート1に接触させて、触媒付与面10に、第1の触媒溶液32による第1の触媒パターン320を形成し、第1の触媒パターン320の上に、第2の触媒溶液42を含浸させた第2の転写材41を用いて、活性化剤たる第2の触媒溶液42による第2の触媒パターン420を形成するから、第1の触媒パターン320を活性化することができる。
【0049】
しかも、工程数が少ない分、処理時間が短時間ですみ、作業効率が向上する。例えば、セラミックグリーンシート1を第1及び第2の触媒溶液32、42にそれぞれ浸漬する工程や、第1及び第2の触媒パターン320、420を形成するためのレジスト塗布工程、又は、マスキング処理工程などの工程数を削減することができる。従って、安価で生産性の高い無電解めっき膜形成方法、及び、触媒パターン形成装置を提供することができる。
【0050】
また、第1及び第2の転写材31、41を用いて第1及び第2の触媒パターン320、420を形成するから、第1及び第2の転写材31、41の転写パターンにより、多様な第1及び第2の触媒パターン320、420を形成することができる。
【0051】
さらに、第1及び第2の触媒パターン320、420は、第1及び第2の転写材31、41がセラミックグリーンシート1に接触する部分にのみ形成されるから、第1及び第2の触媒溶液32、42によりセラミックグリーンシート1が受けるダメージを最小限に抑えることができる。従って、高品質の積層電子部品を得ることができる。
【0052】
本発明では、更に、上述のようにして形成された第1及び第2の触媒パターン320、420に無電解めっきを施す。これにより、電極パターンとして用いられるNi膜50を薄く形成することができる。
【0053】
また、第1及び第2の触媒パターン320、420は、セラミックグリーンシート1上に形成されており、Ni膜50がセラミックグリーンシート1上に直接形成されるから、作業効率が向上する。例えば、他の被めっきシートからセラミックグリーンシート1にNi膜50を転写する工程を削減することができる。従って、工程数を削減し、生産性の高い無電解めっき膜形成方法、及び、触媒パターン形成装置を提供することができる。
【0054】
さらに、Ni膜50がセラミックグリーンシート1上に直接形成されるから、Ni膜50と、セラミックグリーンシート1との密着性を確保し、高品質の積層電子部品を得ることができる。
【0055】
図6を参照して説明した無電解めっき浴5の組成によると、めっき浴5は、還元剤となるDMAB(ジメチルアミンボラン)が添加されており、セラミックグリーンシート1上にNi−B系化合物が析出されるので、焼成によりホウ素がガラス化し、Ni膜50を焼成して得られる内部電極と、セラミックグリーンシート1の密着性が向上する。
【0056】
加えて、Ni膜50は、セラミックグリーンシート1上における第1及び第2の触媒パターン320、420の付与領域にのみ形成されるから、Ni膜50を精度よく形成することができる。
【0057】
本発明に係る無電解めっき膜形成方法の好ましい態様において、第1及び第2の触媒パターン320、420は、回転ローラ30、40を用いて行われる。この構成によると、生産性の高い無電解めっき膜形成方法、及び、触媒パターン形成装置を実現することができる。
【0058】
スクリーン印刷法では、ペースト自身に含まれるNi粒子の大きさがあるため内部電極の薄膜化に限界があった。これに対し、本発明の一実施形態に係る無電解めっきでは、シート上にNiを原子の状態から形成するため、従来技術より25〜90%も薄く形成することができた。無電解めっきにより形成される電極パターン(Ni膜50)は、ペースト印刷法よりも薄膜化に適しており、実験値で0.1μm程度の膜厚にも対応できる。
【0059】
また、図7に示した積層電子部品の電気特性、及び、構造欠陥を調べたところ、従来法に比較し、電極の被覆率が良く、容量が多くとれるため電気特性がよく、クラック、ノンラミネーション、デラミネーションなどの構造欠陥も少ないチップ部品を得ることができた。
【0060】
図9及び図10は、本発明に係る触媒パターン形成装置のもう一つの実施形態を示す図である。図9及び図10において、図1乃至図8に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0061】
図9及び図10に示す無電解めっきのための触媒パターン形成装置は、所謂、グラビア印刷法を想定した回転ローラ30、40を示している。
【0062】
図1乃至図8を参照して説明したように、本発明の特徴的部分の1つは、作業の効率化、生産性の向上、及び、最終製品の品質保持の観点から、セラミックグリーンシート1に対する第1及び第2の触媒パターン320、420の形成処理を、第1及び第2の転写材31、41を用いた転写により行う点にある。従って、セラミックグリーンシート1に、第1及び第2の触媒溶剤32、42を転写し、第1及び第2の触媒溶剤32、42による第1及び第2の触媒パターン320、420を形成できれば、第1及び第2の転写材31、41の具体的形状や、第1及び第2の転写材31、41が備えられる第1及び第2の支持体30、40の具体的構造などは、自由に設定することができる。例えば、第1及び第2の支持体30、40は、回転ローラ30、40を用いたローラ形式に限らず、上下動するスタンプ形式などであってよい。
【0063】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想、及び、教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る触媒パターン形成装置の一実施形態を示す図である。
【図2】図1に示した触媒パターン形成装置を用いた触媒パターン形成方法を示す図である。
【図3】図2の工程により得られたセラミックグリーンシートの一部を拡大して示す断面図である。
【図4】図2に示した工程の後の工程を示す図である。
【図5】図4の工程により得られたセラミックグリーンシートの一部を拡大して示す断面図である。
【図6】図5に示した工程の後の無電解めっき工程を示す図である。
【図7】図6の工程により得られたセラミックグリーンシートの一部を拡大して示す断面図である。
【図8】図2乃至図7に示した工程を経て得られた積層電子部品の断面図である。
【図9】本発明の係る触媒パターン形成装置のもう一つの実施の形態を示す図である。
【図10】本発明に係る触媒パターン形成装置のさらにもう一つの実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 セラミックグリーンシート
3 第1の転写装置
30 第1の支持体
31 第1の転写材
32 第1の触媒溶液
320 第1の触媒パターン
4 第2の転写装置
40 第2の支持体
41 第2の転写材
42 第2の触媒溶液
420 第2の触媒パターン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解めっき膜形成方法であって、
触媒溶液を含浸させた転写材をセラミックグリーンシートに接触させて、前記セラミックグリーンシート上に、前記触媒溶液による触媒パターンを形成し、
そのあと、前記触媒パターンに無電解めっき処理を施す、
工程を含む無電解めっき膜形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載された無電解めっき膜形成方法であって、
前記触媒パターンの形成は、回転ローラを用いて行われる、
無電解めっき膜形成方法。
【請求項3】
無電解めっきのための触媒パターンを形成する装置であって、
転写装置を含み、前記転写装置は、支持体と、転写材とを含み、
前記支持体は、前記転写材を支持し、
前記転写材は、触媒溶液に対する保液性を有する、
触媒パターン形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載された触媒パターン形成装置であって、
前記支持体は、回転ローラであって、ローラ外周面に前記転写材を備えている、
触媒パターン形成装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載された触媒パターン形成装置であって、
前記転写材は、凸片状である、
触媒パターン形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−100139(P2007−100139A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288907(P2005−288907)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】