説明

焦点検出装置および撮像装置

【課題】光学系の焦点検出を適切に行なうことができる焦点検出装置を提供する。
【解決手段】光学系31,32,33による像面のずれ量に対応する像ずれ信号を取得し、複数のフィルタのうち、像ずれ信号に適した周波数帯域を検出可能なフィルタを選択し、像ずれ信号をフィルタ処理することにより得られたフィルタ処理信号に基づいて、ずれ量を検出する位相差検出部と、光学系31,32,33による像のコントラストから光学系31,32,33の焦点状態を検出するコントラスト検出部と、選択されたフィルタの検出可能な周波数帯域が、撮影シーンに対応する特定周波数帯域と異なる周波数帯域であるか否かの判定を行ない、選択されたフィルタの周波数帯域が、特定周波数帯域と異なる周波数帯域である場合には、焦点調節光学系32を所定の方向に駆動させながら、位相差検出部およびコントラスト検出部にスキャン駆動を実行する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点検出装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光学系の焦点調節を行なう際に、焦点調節精度を高めるために、まず、位相差検出方式により光学系の焦点状態の検出を行い、位相差検出方式による検出結果に基づいて、焦点調節レンズを合焦位置近傍まで駆動し、次いで、合焦位置近傍において、コントラスト検出方式によって光学系の焦点状態の検出を行い、該コントラスト検出方式による検出結果に基づいて、焦点調節レンズを合焦位置まで駆動する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−84545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、まず、位相差検出方式による焦点検出を行い、これに続いて、コントラスト検出方式による焦点検出を行うものであるため、焦点検出に時間が掛かってしまうという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、光学系の焦点検出を適切に行なうことができる焦点検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の解決手段によって上記課題を解決する。なお、以下においては、本発明の実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、この符号は本発明の理解を容易にするためだけのものであって発明を限定する趣旨ではない。
【0007】
[1]本発明の第一の観点に係る焦点検出装置は、焦点調節光学系を有する光学系(31,32,33)による像を撮像し、撮像した像に対応する画像信号を出力する撮像部(22)と、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出部(222a,222b)と、前記撮像部により出力された前記画像信号に基づいて、前記光学系による像のコントラストに関する評価値を算出することで、前記光学系の焦点状態を検出するコントラスト検出部(221)と、前記位相差検出部による焦点状態の検出に用いられ、検出可能な周波数帯域の異なる複数のフィルタを記憶する記憶部(21)と、撮影シーンを判定するシーン判定部(21)と、前記光学系の光軸方向に、前記焦点調節光学系(32)を駆動させる駆動部(36)と、前記駆動部を制御することで、前記焦点調節光学系の駆動を制御する制御部(21)と、を備え、前記位相差検出部は、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量に対応する像ずれ信号を取得し、前記記憶部に記憶された前記複数のフィルタを用いて、前記取得した像ずれ信号をフィルタ処理し、前記複数のフィルタで処理された複数のフィルタ処理信号を算出した後、前記複数のフィルタ処理信号の算出に用いた複数のフィルタのうち、前記取得した像ずれ信号に適した周波数帯域を検出可能なフィルタを選択し、前記複数のフィルタ処理信号のうち、前記選択されたフィルタを用いて得られたフィルタ処理信号に基づいて、前記ずれ量を検出し、前記制御部は、前記位相差検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせた結果、前記位相差検出部により選択されたフィルタの検出可能な周波数帯域が、前記シーン判定部により判定された撮影シーンに対応する特定周波数帯域と異なる周波数帯域であるか否かの判定を行ない、前記選択されたフィルタの周波数帯域が、前記特定周波数帯域と異なる周波数帯域である場合には、前記駆動部に、前記焦点調節光学系を所定の方向に駆動させながら、前記位相差検出部および前記コントラスト検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせるスキャン駆動を実行することを特徴とする。
【0008】
[2]本発明の第二の観点に係る焦点検出装置は、焦点調節光学系を有する光学系(31,32,33)による像を撮像し、撮像した像に対応する画像信号を出力する撮像部(22)と、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出部(222a,222b)と、前記撮像部により出力された前記画像信号に基づいて、前記光学系による像のコントラストに関する評価値を算出することで、前記光学系の焦点状態を検出するコントラスト検出部(221)と、前記位相差検出部による焦点状態の検出に用いられ、検出可能な周波数帯域の異なる複数のフィルタを記憶する記憶部(21)と、撮影シーンを判定するシーン判定部(21)と、前記光学系の光軸方向に、前記焦点調節光学系(32)を駆動させる駆動部(36)と、前記駆動部を制御することで、前記焦点調節光学系の駆動を制御する制御部(21)と、を備え、前記位相差検出部は、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量に対応する像ずれ信号を取得し、前記複数のフィルタのうち、前記像ずれ信号に適した周波数帯域を検出可能なフィルタを選択し、前記選択されたフィルタにより前記取得した像ずれ信号をフィルタ処理することにより得られたフィルタ処理信号に基づいて、前記ずれ量を検出し、前記制御部は、前記位相差検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせた結果、前記位相差検出部により選択されたフィルタの検出可能な周波数帯域が、前記シーン判定部により判定された撮影シーンに対応する特定周波数帯域と異なる周波数帯域であるか否かの判定を行ない、前記選択されたフィルタの周波数帯域が、前記特定周波数帯域と異なる周波数帯域である場合には、前記駆動部に、前記焦点調節光学系を所定の方向に駆動させながら、前記位相差検出部および前記コントラスト検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせるスキャン駆動を実行することを特徴とする。
【0009】
[3]本発明の第三の観点に係る焦点検出装置は、焦点調節光学系を有する光学系(31,32,33)による像を撮像し、撮像した像に対応する画像信号を出力する撮像部(22)と、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出部(222a,222b)と、前記位相差検出部による焦点状態の検出に用いられ、検出可能な周波数帯域の異なる複数のフィルタを記憶する記憶部(21)と、撮影シーンを判定するシーン判定部(21)と、前記光学系の光軸方向に、前記焦点調節光学系(32)を駆動させる駆動部(36)と、前記駆動部を制御することで、前記焦点調節光学系の駆動を制御する制御部(21)と、を備え、前記位相差検出部は、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量に対応する像ずれ信号を取得し、前記記憶部に記憶された前記複数のフィルタを用いて、前記取得した像ずれ信号をフィルタ処理し、前記複数のフィルタで処理された複数のフィルタ処理信号を算出した後、前記複数のフィルタ処理信号の算出に用いた複数のフィルタのうち、前記取得した像ずれ信号に適した周波数帯域を検出可能なフィルタを選択し、前記複数のフィルタ処理信号のうち、前記選択されたフィルタを用いて得られたフィルタ処理信号に基づいて、前記ずれ量を検出し、前記制御部は、前記位相差検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせた結果、前記位相差検出部により選択されたフィルタの検出可能な周波数帯域が、前記シーン判定部により判定された撮影シーンに対応する特定周波数帯域と異なる周波数帯域であるか否かの判定を行ない、前記選択されたフィルタの周波数帯域が、前記特定周波数帯域と異なる周波数帯域である場合には、前記位相差検出部により検出された前記ずれ量に基づく制御を禁止することを特徴とする。
【0010】
[4]本発明の第四の観点に係る焦点検出装置は、焦点調節光学系を有する光学系(31,32,33)による像を撮像し、撮像した像に対応する画像信号を出力する撮像部(22)と、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出部(222a,222b)と、前記位相差検出部による焦点状態の検出に用いられ、検出可能な周波数帯域の異なる複数のフィルタを記憶する記憶部(21)と、撮影シーンを判定するシーン判定部(21)と、前記光学系の光軸方向に、前記焦点調節光学系(32)を駆動させる駆動部(36)と、前記駆動部を制御することで、前記焦点調節光学系の駆動を制御する制御部(21)と、を備え、前記位相差検出部は、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量に対応する像ずれ信号を取得し、前記複数のフィルタのうち、前記像ずれ信号に適した周波数帯域を検出可能なフィルタを選択し、前記選択されたフィルタにより前記取得した像ずれ信号をフィルタ処理することにより得られたフィルタ処理信号に基づいて、前記ずれ量を検出し、前記制御部は、前記位相差検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせた結果、前記位相差検出部により選択されたフィルタの検出可能な周波数帯域が、前記シーン判定部により判定された撮影シーンに対応する特定周波数帯域と異なる周波数帯域であるか否かの判定を行ない、前記選択されたフィルタの周波数帯域が、前記特定周波数帯域と異なる周波数帯域である場合には、前記位相差検出部により検出された前記ずれ量に基づく制御を禁止することを特徴とする焦点検出装置。
【0011】
[5]本発明の第一〜第四の観点に係る焦点検出装置において、前記制御部(21)が、前記位相差検出部(222a,222b)により選択されたフィルタの周波数帯域が、前記特定周波数帯域内にある場合には、前記駆動部(36)に、前記位相差検出部により検出されたずれ量に基づいて、前記焦点調節光学系(32)の駆動を行なわせるように構成することができる。
【0012】
[6]本発明の第一〜第四の観点に係る焦点検出装置において、前記シーン判定部(21)が、操作部材を介してユーザにより設定されたシーン、または、前記撮像部により撮像された撮像画像に基づいて、撮影シーンの判定を行なうように構成することができる。
【0013】
[7]本発明の第一〜第四の観点に係る焦点検出装置において、前記制御部(21)が、前記シーン判定部(21)により撮影シーンが人物の顔を撮影するシーンであると判定された場合には、前記特定周波数帯域を、所定の第1閾値以上の周波数帯域に設定するように構成することができる。
【0014】
[8]本発明の第一〜第四の観点に係る焦点検出装置において、前記制御部(21)が、前記シーン判定部(21)により撮影シーンが、人物の顔を撮影するシーンであると判定された場合には、前記特定周波数帯域を、所定の第1閾値以上の周波数帯域に設定し、前記シーン判定部により撮影シーンが、マクロ撮影するシーンまたは風景を撮影するシーンであると判定された場合には、前記特定周波数帯域を、前記第1閾値よりも高い所定の第2閾値以上の周波数帯域に設定するように構成することができる。
【0015】
[9]本発明の第一〜第四の観点に係る焦点検出装置において、前記位相差検出部(222a,222b)が、撮影画面内に設定された複数の焦点検出位置のそれぞれについて、前記ずれ量の検出を行い、前記制御部(21)は、前記複数の検出位置のそれぞれについて検出された複数の前記ずれ量のうち、前記特定周波数帯域と異なる周波数帯域を検出可能なフィルタを用いて検出されたずれ量を除外して、前記位相差検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせるように構成することができる。
【0016】
[10]本発明の第五の観点に係る焦点検出装置は、焦点調節光学系を有する光学系(31,32,33)による像を撮像し、撮像した像に対応する画像信号を出力する撮像部(22)と、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出部(222a,222b)と、前記撮像部により出力された前記画像信号に基づいて、前記光学系による像のコントラストに関する評価値を算出することで、前記光学系の焦点状態を検出するコントラスト検出部(221)と、前記位相差検出部による焦点状態の検出に用いられ、検出可能な周波数帯域の異なる複数のフィルタを記憶する記憶部(21)と、前記光学系の光軸方向に、前記焦点調節光学系(32)を駆動させる駆動部(326)と、前記駆動部を制御することで、前記焦点調節光学系の駆動を制御する制御部と(21)、を備え、前記位相差検出部は、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量に対応する像ずれ信号を取得し、前記記憶部に記憶された前記複数のフィルタを用いて、前記取得した像ずれ信号をフィルタ処理し、前記複数のフィルタで処理された複数のフィルタ処理信号を算出した後、前記複数のフィルタ処理信号の算出に用いた複数のフィルタのうち、前記取得した像ずれ信号に適した周波数帯域を検出可能なフィルタを選択し、前記複数のフィルタ処理信号のうち、前記選択されたフィルタを用いて得られたフィルタ処理信号に基づいて、前記ずれ量を検出し、前記制御部は、前記位相差検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせた結果、前記位相差検出部により検出されたずれ量が、所定値以上であり、かつ、前記位相差検出部により選択されたフィルタの検出可能な周波数帯域が、所定の特定周波数帯域よりも高い周波数帯域であるか否かの判定を行ない、前記ずれ量が前記所定値以上であり、かつ、前記選択されたフィルタの検出可能な周波数帯域が、前記特定周波数帯域よりも高い周波数帯域である場合には、前記駆動部に、前記焦点調節光学系を所定の方向に駆動させながら、前記位相差検出部および前記コントラスト検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせるスキャン駆動を実行することを特徴とする。
【0017】
[11]本発明の第六の観点に係る焦点検出装置は、焦点調節光学系を有する光学系(31,32,33)による像を撮像し、撮像した像に対応する画像信号を出力する撮像部(22)と、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出部(222a,222b)と、前記撮像部により出力された前記画像信号に基づいて、前記光学系による像のコントラストに関する評価値を算出することで、前記光学系の焦点状態を検出するコントラスト検出部(221)と、前記位相差検出部による焦点状態の検出に用いられ、検出可能な周波数帯域の異なる複数のフィルタを記憶する記憶部(21)と、前記光学系の光軸方向に、前記焦点調節光学系(32)を駆動させる駆動部(326)と、前記駆動部を制御することで、前記焦点調節光学系の駆動を制御する制御部と(21)、を備え、前記位相差検出部は、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量に対応する像ずれ信号を取得し、検出可能な周波数帯域の異なる複数のフィルタのうち、前記像ずれ信号に適した周波数帯域を検出可能なフィルタを選択し、前記選択されたフィルタにより前記取得した像ずれ信号をフィルタ処理することにより得られたフィルタ処理信号に基づいて、前記ずれ量を検出し、前記制御部は、前記位相差検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせた結果、前記位相差検出部により検出されたずれ量が、所定値以上であり、かつ、前記位相差検出部により選択されたフィルタの検出可能な周波数帯域が、所定の特定周波数帯域よりも高い周波数帯域であるか否かの判定を行ない、前記ずれ量が前記所定値以上であり、かつ、前記選択されたフィルタの検出可能な周波数帯域が、前記特定周波数帯域よりも高い周波数帯域である場合には、前記駆動部に、前記焦点調節光学系を所定の方向に駆動させながら、前記位相差検出部および前記コントラスト検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせるスキャン駆動を実行することを特徴とする。
【0018】
[12]本発明の第六の観点に係る焦点検出装置において、前記制御部(21)が、前記所定値を、前記光学系の絞り値に応じて設定するように構成することができる。
【0019】
[13]本発明の第一〜第六の観点に係る焦点検出装置において、前記位相差検出部(222a,222b)が、前記撮像部(22)の受光面に備えられているように構成することができる。
【0020】
[14]本発明に係る撮像装置は、上記焦点検出装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光学系の焦点検出を適切に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本実施形態に係るカメラを示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す撮像素子の撮像面を示す正面図である。
【図3】図3は、図2の焦点検出画素列22a付近を拡大して焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す正面図である。
【図4】図4は、撮像画素221の一つを拡大して示す正面図である。
【図5】図5(A)は、焦点検出画素222aの一つを拡大して示す正面図、図5(B)は、焦点検出画素222bの一つを拡大して示す正面図である。
【図6】図6は、撮像画素221の一つを拡大して示す断面図である。
【図7】図7(A)は、焦点検出画素222aの一つを拡大して示す断面図、図7(B)は、焦点検出画素222bの一つを拡大して示す断面図である。
【図8】図8は、焦点検出画素222a,222bの大きさを説明するための図である。
【図9】図9は、従来の位相差検出モジュールに備えられているラインセンサを構成する各画素の大きさを説明するための図である。
【図10】図10は、図3のX-X線に沿う断面図である。
【図11】図11は、本実施形態に係るカメラの動作を示すフローチャートある。
【図12】図12は、本実施形態に係るサーチ動作における、フォーカスレンズ位置と焦点評価値との関係、およびフォーカスレンズ位置と時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るデジタルカメラ1を示す要部構成図である。本実施形態のデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラ本体2とレンズ鏡筒3から構成され、これらカメラ本体2とレンズ鏡筒3はマウント部4により着脱可能に結合されている。
【0025】
レンズ鏡筒3は、カメラ本体2に着脱可能な交換レンズである。図1に示すように、レンズ鏡筒3には、レンズ31,32,33、および絞り34を含む撮影光学系が内蔵されている。
【0026】
レンズ32は、フォーカスレンズであり、光軸L1方向に移動することで、撮影光学系の焦点距離を調節可能となっている。フォーカスレンズ32は、レンズ鏡筒3の光軸L1に沿って移動可能に設けられ、エンコーダ35によってその位置が検出されつつフォーカスレンズ駆動モータ36によってその位置が調節される。
【0027】
このフォーカスレンズ32の光軸L1に沿う移動機構の具体的構成は特に限定されない。一例を挙げれば、レンズ鏡筒3に固定された固定筒に回転可能に回転筒を挿入し、この回転筒の内周面にヘリコイド溝(螺旋溝)を形成するとともに、フォーカスレンズ32を固定するレンズ枠の端部をヘリコイド溝に嵌合させる。そして、フォーカスレンズ駆動モータ36によって回転筒を回転させることで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1に沿って直進移動することになる。
【0028】
上述したようにレンズ鏡筒3に対して回転筒を回転させることによりレンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32は光軸L1方向に直進移動するが、その駆動源としてのフォーカスレンズ駆動モータ36がレンズ鏡筒3に設けられている。フォーカスレンズ駆動モータ36と回転筒とは、たとえば複数の歯車からなる変速機で連結され、フォーカスレンズ駆動モータ36の駆動軸を何れか一方向へ回転駆動すると所定のギヤ比で回転筒に伝達され、そして、回転筒が何れか一方向へ回転することで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1の何れかの方向へ直進移動することになる。なお、フォーカスレンズ駆動モータ36の駆動軸が逆方向に回転駆動すると、変速機を構成する複数の歯車も逆方向に回転し、フォーカスレンズ32は光軸L1の逆方向へ直進移動することになる。
【0029】
フォーカスレンズ32の位置はエンコーダ35によって検出される。既述したとおり、フォーカスレンズ32の光軸L1方向の位置は回転筒の回転角に相関するので、たとえばレンズ鏡筒3に対する回転筒の相対的な回転角を検出すれば求めることができる。
【0030】
本実施形態のエンコーダ35としては、回転筒の回転駆動に連結された回転円板の回転をフォトインタラプタなどの光センサで検出して、回転数に応じたパルス信号を出力するものや、固定筒と回転筒の何れか一方に設けられたフレキシブルプリント配線板の表面のエンコーダパターンに、何れか他方に設けられたブラシ接点を接触させ、回転筒の移動量(回転方向でも光軸方向の何れでもよい)に応じた接触位置の変化を検出回路で検出するものなどを用いることができる。
【0031】
フォーカスレンズ32は、上述した回転筒の回転によってカメラボディ側の端部(至近端ともいう)から被写体側の端部(無限端ともいう)までの間を光軸L1方向に移動することができる。ちなみに、エンコーダ35で検出されたフォーカスレンズ32の現在位置情報は、レンズ制御部37を介して後述するカメラ制御部21へ送出され、フォーカスレンズ駆動モータ36は、この情報に基づいて演算されたフォーカスレンズ32の駆動位置が、カメラ制御部21からレンズ制御部37を介して送出されることにより駆動する。
【0032】
絞り34は、上記撮影光学系を通過して撮像素子22に至る光束の光量を制限するとともにボケ量を調整するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能に構成されている。絞り34による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された適切な開口径が、カメラ制御部21からレンズ制御部37を介して送出されることにより行われる。また、カメラ本体2に設けられた操作部28によるマニュアル操作により、設定された開口径がカメラ制御部21からレンズ制御部37に入力される。絞り34の開口径は図示しない絞り開口センサにより検出され、レンズ制御部37で現在の開口径が認識される。
【0033】
レンズ制御部37は、カメラ制御部21とマウント部4に設けられた電気信号接点部41により電気的に接続され、カメラ制御部21からの指令に基づき、フォーカスレンズ32の駆動、絞り34による開口径の調節などを行なうとともに、フォーカスレンズ32の位置、絞り34の開口径などのレンズ情報をカメラ制御部21に送信する。
【0034】
一方、カメラ本体2には、上記撮影光学系からの光束L1を受光する撮像素子22が、撮影光学系の予定焦点面に設けられ、その前面にシャッター23が設けられている。撮像素子22はCCDやCMOSなどのデバイスから構成され、受光した光信号を電気信号に変換してカメラ制御部21に送出する。カメラ制御部21に送出された撮影画像情報は、逐次、液晶駆動回路25に送出されて観察光学系の電子ビューファインダ(EVF)26に表示されるとともに、操作部28に備えられたレリーズボタン(不図示)が全押しされた場合には、その撮影画像情報が、記録媒体であるカメラメモリ24に記録される。なお、カメラメモリ24は着脱可能なカード型メモリや内蔵型メモリの何れをも用いることができる。撮像素子22の構造の詳細は後述する。
【0035】
カメラ本体2には、撮像素子22で撮像される像を観察するための観察光学系が設けられている。本実施形態の観察光学系は、液晶表示素子からなる電子ビューファインダ(EVF)26と、これを駆動する液晶駆動回路25と、接眼レンズ27とを備えている。液晶駆動回路25は、撮像素子22で撮像され、カメラ制御部21へ送出された撮影画像情報を読み込み、これに基づいて電子ビューファインダ26を駆動する。これにより、ユーザは、接眼レンズ27を通して現在の撮影画像を観察することができる。なお、光軸L2による上記観察光学系に代えて、または、これに加えて、液晶ディスプレイをカメラ本体2の背面等に設け、この液晶ディスプレイに撮影画像を表示させることもできる。
【0036】
カメラ本体2にはカメラ制御部21が設けられている。カメラ制御部21は、マウント部4に設けられた電気信号接点部41によりレンズ制御部37と電気的に接続され、このレンズ制御部37からレンズ情報を受信するとともに、レンズ制御部37へデフォーカス量や絞り開口径などの情報を送信する。また、カメラ制御部21は、上述したように撮像素子22から画素出力を読み出すとともに、読み出した画素出力について、必要に応じて所定の情報処理を施すことにより画像情報を生成し、生成した画像情報を、電子ビューファインダ26の液晶駆動回路25やカメラメモリ24に出力する。また、カメラ制御部21は、撮像素子22からの画像情報の補正やレンズ鏡筒3の焦点調節状態、絞り調節状態などを検出するなど、カメラ1全体の制御を司る。
【0037】
また、カメラ制御部21は、上記に加えて、撮像素子22から読み出した画素データに基づき、位相検出方式による撮影光学系の焦点状態の検出、およびコントラスト検出方式による撮影光学系の焦点状態の検出を行う。なお、具体的な焦点状態の検出方法については、後述する。
【0038】
操作部28は、シャッターレリーズボタンや、動画撮影開始スイッチなどの撮影者がカメラ1の各種動作モードを設定するための入力スイッチであり、オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモードの切換や、オードフォーカスモードの中でも、ワンショットモード/コンティニュアスモードの切換が行えるようになっている。また、これに加えて、操作部28は、撮影モードの選択も可能となっており、具体的には、人物の顔を撮影するための人物撮影モードや、マクロ撮影するためのマクロ撮影モード、あるいは風景を撮影するための風景撮影モードなどの選択が可能となっている。この操作部28により設定された各種モードはカメラ制御部21へ送出され、当該カメラ制御部21によりカメラ1全体の動作が制御される。また、シャッターレリーズボタンは、ボタンの半押しでONとなる第1スイッチSW1と、ボタンの全押しでONとなる第2スイッチSW2とを含む。
【0039】
次に、本実施形態に係る撮像素子22について説明する。
【0040】
図2は、撮像素子22の撮像面を示す正面図、図3は、図2の焦点検出画素列22a付近を拡大して焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す正面図である。
【0041】
本実施形態の撮像素子22は、図3に示すように、複数の撮像画素221が、撮像面の平面上に二次元的に配列され、緑色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する緑画素Gと、赤色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する赤画素Rと、青色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する青画素Bがいわゆるベイヤー配列(Bayer Arrangement)されたものである。すなわち、隣接する4つの画素群223(稠密正方格子配列)において一方の対角線上に2つの緑画素が配列され、他方の対角線上に赤画素と青画素が1つずつ配列されている。このベイヤー配列された画素群223を単位として、当該画素群223を撮像素子22の撮像面に二次元状に繰り返し配列することで撮像素子22が構成されている。
【0042】
なお、単位画素群223の配列は、図示する稠密正方格子以外にも、たとえば稠密六方格子配列にすることもできる。また、カラーフィルタの構成や配列はこれに限定されることはなく、補色フィルタ(緑:G、イエロー:Ye、マゼンタ:Mg,シアン:Cy)の配列を採用することもできる。
【0043】
図4は、撮像画素221の一つを拡大して示す正面図、図6は断面図である。一つの撮像画素221は、マイクロレンズ2211と、光電変換部2212と、図示しないカラーフィルタから構成され、図6の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2212が造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2211が形成されている。光電変換部2212は、マイクロレンズ2211により撮影光学系の射出瞳(たとえばF1.0)を通過する撮像光束を受光する形状とされ、撮像光束を受光する。
【0044】
また、撮像素子22の撮像面には、上述した撮像画素221に代えて焦点検出画素222a,222bが配列された5つの焦点検出画素列22a〜22eが設けられている。そして、図3に示すように、一つの焦点検出画素列は、複数の焦点検出画素222aおよび222bが、互いに隣接して交互に、横一列に配列されて構成されている。本実施形態においては、焦点検出画素222aおよび222bは、ベイヤー配列された撮像画素221の緑画素Gと青画素Bとの位置にギャップを設けることなく密に配列されている。
【0045】
なお、図2に示す焦点検出画素列22a〜22eの位置は図示する位置にのみ限定されず、何れか一箇所、二箇所、三箇所、あるいは四箇所とすることもでき、また、六箇所以上の位置に配置することもできる。また、図3においては、16個の焦点検出画素222a,222bにより、焦点検出画素列を構成する例を示しているが、焦点検出画素列を構成する焦点検出画素の数は、この例に限定されるものではない。
【0046】
図5(A)は、焦点検出画素222aの一つを拡大して示す正面図、図7(A)は、焦点検出画素222aの断面図である。また、図5(B)は、焦点検出画素222bの一つを拡大して示す正面図、図7(B)は、焦点検出画素222bの断面図である。焦点検出画素222aは、図5(A)に示すように、マイクロレンズ2221aと、半円形状の光電変換部2222aとから構成され、図7(A)の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2222aが造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221aが形成されている。また、焦点検出画素222bは、図5(B)に示すように、マイクロレンズ2221bと、光電変換部2222bとから構成され、図7(B)の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2222bが造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221bが形成されている。そして、これら焦点検出画素222aおよび222bは、図3に示すように、互いに隣接して交互に、横一列に配列されることにより、図2に示す焦点検出画素列22a〜22cを構成する。
【0047】
ここで、各焦点検出画素222a,222bは、図8に示すように、その構造上、撮像画素221と略同一のサイズとする必要があるため、撮像画素221と略同一のサイズ、すなわち、縦幅L1および横幅L2がともに、通常、10μm以下程度の大きさに設定される。一方、従来の位相差検出モジュールに備えられるラインセンサ(位相差検出専用のセンサ)においては、図9に示すように、そのサイズに特に制約がないため、ラインセンサ50の各画素50aの大きさは、通常、縦幅L3が数百μm程度、横幅L4が数十μm〜数百μm程度の大きさに設定されている。すなわち、従来のラインセンサ50の各画素50aの大きさは、数百μm×数十μm〜数百μmであるのに対し、焦点検出画素222a,222bは、10μm四方以下のサイズに設定されている。なお、図8は、焦点検出画素222a,222bの画素の大きさを説明するための図であり、図9は、従来の位相差検出モジュールに備えられているラインセンサを構成する各画素の大きさを説明するための図である。
【0048】
なお、焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bは、マイクロレンズ2221a,2221bにより撮影光学系の射出瞳の所定の領域(たとえばF2.8)を通過する光束を受光するような形状とされる。また、焦点検出画素222a,222bにはカラーフィルタは設けられておらず、その分光特性は、光電変換を行うフォトダイオードの分光特性と、図示しない赤外カットフィルタの分光特性を総合したものとなっている。ただし、撮像画素221と同じカラーフィルタのうちの一つ、たとえば緑フィルタを備えるように構成することもできる。
【0049】
また、図5(A)、図5(B)に示す焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bは半円形状としたが、光電変換部2222a,2222bの形状はこれに限定されず、他の形状、たとえば、楕円形状、矩形状、多角形状とすることもできる。
【0050】
ここで、上述した焦点検出画素222a,222bの画素出力に基づいて撮影光学系の焦点状態を検出する、いわゆる位相差検出方式について説明する。
【0051】
図10は、図3のX-X線に沿う断面図であり、撮影光軸L1近傍に配置され、互いに隣接する焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2が、射出瞳350の測距瞳351,352から照射される光束AB1−1,AB2−1,AB1−2,AB2−2をそれぞれ受光していることを示している。なお、図10においては、複数の焦点検出画素222a,222bのうち、撮影光軸L1近傍に位置するもののみを例示して示したが、図10に示す焦点検出画素以外のその他の焦点検出画素についても、同様に、一対の測距瞳351,352から照射される光束をそれぞれ受光するように構成されている。
【0052】
ここで、射出瞳350とは、撮影光学系の予定焦点面に配置された焦点検出画素222a,222bのマイクロレンズ2221a,2221bの前方の距離Dの位置に設定された像である。距離Dは、マイクロレンズの曲率、屈折率、マイクロレンズと光電変換部との距離などに応じて一義的に決まる値であって、この距離Dを測距瞳距離と称する。また、測距瞳351,352とは、焦点検出画素222a,222bのマイクロレンズ2221a,2221bにより、それぞれ投影された光電変換部2222a,2222bの像をいう。
【0053】
なお、図10において焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2の配列方向は一対の測距瞳351,352の並び方向と一致している。
【0054】
また、図10に示すように、焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2のマイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2は、撮影光学系の予定焦点面近傍に配置されている。そして、マイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2の背後に配置された各光電変換部2222a−1,2222b−1,2222a−2,2222b−2の形状が、各マイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2から測距距離Dだけ離れた射出瞳350上に投影され、その投影形状は測距瞳351,352を形成する。
【0055】
すなわち、測距距離Dにある射出瞳350上で、各焦点検出画素の光電変換部の投影形状(測距瞳351,352)が一致するように、各焦点検出画素におけるマイクロレンズと光電変換部の相対的位置関係が定められ、それにより各焦点検出画素における光電変換部の投影方向が決定されている。
【0056】
図10に示すように、焦点検出画素222a−1の光電変換部2222a−1は、測距瞳351を通過し、マイクロレンズ2221a−1に向う光束AB1−1によりマイクロレンズ2221a−1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。同様に、焦点検出画素222a−2の光電変換部2222a−2は測距瞳351を通過し、マイクロレンズ2221a−2に向う光束AB1−2によりマイクロレンズ2221a−2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
【0057】
また、焦点検出画素222b−1の光電変換部2222b−1は測距瞳352を通過し、マイクロレンズ2221b−1に向う光束AB2−1によりマイクロレンズ2221b−1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。同様に、焦点検出画素222b−2の光電変換部2222b−2は測距瞳352を通過し、マイクロレンズ2221b−2に向う光束AB2−2によりマイクロレンズ2221b−2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
【0058】
そして、上述した2種類の焦点検出画素222a,222bを、図3に示すように直線状に複数配置し、各焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bの出力を、測距瞳351と測距瞳352とのそれぞれに対応した出力グループにまとめることにより、測距瞳351と測距瞳352とのそれぞれを通過する焦点検出光束が焦点検出画素列上に形成する一対の像の強度分布に関するデータが得られる。次いで、この一対の像の強度分布データに対し、検波周波数帯域の異なる複数の検波フィルタを用いて、フィルタ処理を行ない、検波フィルタごとに、フィルタ処理後データを算出する。
【0059】
ここで、本実施形態においては、一対の像の強度分布データに対応する被写体の空間周波数に対応するように、検波周波数帯域(すなわち、検出可能な周波数帯域)の異なる複数の検波フィルタをカメラ制御部21に記憶している。すなわち、カメラ制御部21は、低周波被写体から高周波被写体まで、あらゆる被写体の空間周波数に対応できるように、検波周波数帯域の異なる複数の検波フィルタを記憶している。
【0060】
そして、本実施形態では、上記にて得られた一対の像の強度分布データに対し、検波周波数帯域の異なる複数の検波フィルタを用いて、フィルタ処理を行ない、検波フィルタごとに、フィルタ処理後データを算出する。すなわち、カメラ制御部21に記憶されている検波フィルタが10個である場合には、10個のフィルタ処理後データを算出する。そして、得られた検波フィルタごとのフィルタ処理後データ(たとえば、10個のフィルタ処理後データ)に対して、像ズレ検出演算処理(相関演算処理)を施すことにより、いわゆる位相差検出方式によるデフォーカス量を、フィルタ処理後データごとに複数算出する。
【0061】
具体的には、カメラ制御部21は、各焦点検出画素222aから読み出され、次いで、フィルタ処理することにより得られたフィルタ処理後第1像データ列a,a,...,aと、各焦点検出画素222bから読み出され、次いで、フィルタ処理することにより得られたフィルタ処理後第2像データ列b,b,...bとを、一次元状に相対的にシフトさせながら、下記式(1)に示す相関演算を行う。
C(k)=Σ|a(n+k)−b(n)| …(1)
なお、上記式(1)において、Σ演算はnについての累積演算(相和演算)を示し、像ずらし量kに応じてa(n+k)、b(n)のデータが存在する範囲に限定される。また、像ずらし量kは整数であり、各焦点検出画素222a,222bの画素間隔を単位としたシフト量である。なお、上記式(1)の演算結果においては、一対の像データの相関が高いシフト量において、相関量C(k)は極小(小さいほど相関度が高い)になる。
【0062】
次いで、カメラ制御部21は、算出した相関量C(k)に基づいて、相関量の極小値を算出する。本実施形態では、たとえば、以下の下記式(2)〜(5)に示す3点内挿の手法を用いて、連続的な相関量に対する極小値C(x)と、極小値C(x)を与えるシフト量xを算出し、これを像ズレ量とする。なお、下記式に示すC(kj)は、上記式(1)で得られた相関量C(k)のうち、C(k−1)≧C(k)およびC(k+1)>C(k)の条件を満たす値である。
D={C(kj−1)−C(kj+1)}/2 …(2)
C(x)= C(kj)−|D| …(3)
x=kj+D/SLOP …(4)
SLOP=MAX{C(kj+1)−C(kj),C(kj−1)−C(kj)} …(5)
【0063】
そして、カメラ制御部21は、相関量の極小値C(x)が得られるシフト量xに基づいて、下記式(6)に従い、デフォーカス量dfを算出する。なお、上記式(6)において、kは、相関量の極小値C(x)が得られるシフト量xをデフォーカス量に変換するための変換係数(kファクター)である。また、本実施形態では、このような相関演算処理を、複数のフィルタ処理後データの全てに対して行なう。
df=x・k …(6)
【0064】
そして、カメラ制御部21は、相関演算処理における演算結果等から、複数の検波フィルタから、対応する被写体に適した検波周波数帯域を有する検波フィルタを選択し、選択された検波フィルタを用いて得られたデフォーカス量を、最終的なデフォーカス量として決定する。すなわち、対応する被写体に適した検波周波数帯域を有する検波フィルタを選択することで、上記のようにして算出された複数のデフォーカス量から、最終的なデフォーカス量を決定する。
【0065】
ここで、複数の検波フィルタから、対応する被写体に適した検波周波数帯域を有する検波フィルタを選択する方法としては、たとえば、相関演算処理において算出された相関量の極小値C(x)として、最も小さい値が得られたものを、対応する被写体に適した検波周波数帯域を有する検波フィルタを用いて得られたものであると判断し、該判断に基づいて、検波フィルタを選択する方法などが挙げられる。なお、本実施形態においては、対応する被写体に適した検波周波数帯域は、通常、該被写体の空間周波数を含む検波周波数帯域となり、そのため、対応する被写体の空間周波数が低いほど、該被写体に適した検波周波数帯域を有する検波フィルタの検波周波数帯域は低いものとなり、一方、対応する被写体の空間周波数が高いほど、該被写体に適した検波周波数帯域を有する検波フィルタの検波周波数帯域は高いものとなる。
【0066】
なお、これら位相差検出方式による像ズレ量の演算と、これに基づくデフォーカス量の演算は、カメラ制御部21により実行される。
【0067】
また、カメラ制御部21は、撮像素子22の撮像画素221の出力を読み出し、読み出した画素出力に基づき、焦点評価値の演算を行う。この焦点評価値は、たとえば撮像素子22の撮像画素221からの画像出力の高周波成分を、高周波透過フィルタを用いて抽出し、これを積算することで求めることができる。また、遮断周波数が異なる2つの高周波透過フィルタを用いて高周波成分を抽出し、それぞれを積算することでも求めることができる。
【0068】
そして、カメラ制御部21は、レンズ制御部37に制御信号を送出してフォーカスレンズ32を所定のサンプリング間隔(距離)で駆動させ、それぞれの位置における焦点評価値を求め、該焦点評価値が最大となるフォーカスレンズ32の位置を合焦位置として求める、コントラスト検出方式による焦点検出を実行する。なお、この合焦位置は、たとえば、フォーカスレンズ32を駆動させながら焦点評価値を算出した場合に、焦点評価値が、2回上昇した後、さらに、2回下降して推移した場合に、これらの焦点評価値を用いて、内挿法などの演算を行うことで求めることができる。
【0069】
次いで、本実施形態におけるカメラ1の動作例を、図11に示すフローチャートに沿って説明する。以下においては、たとえば、操作部28を介して、人物の顔を撮影するための人物撮影モードが選択されている場合における動作例を説明する。なお、以下における動作は、カメラ1の電源がオンされることにより開始される。
【0070】
まず、ステップS1では、カメラ制御部21によるスルー画像の生成、および観察光学系の電子ビューファインダ26による、スルー画像の表示が開始される。具体的には、撮像素子22により露光動作が行なわれ、カメラ制御部21により、撮像画素221の画素データの読み出しが行なわれる。そして、カメラ制御部21は、読み出したデータに基づきスルー画像を生成し、生成されたスルー画像は液晶駆動回路25に送出され、観察光学系の電子ビューファインダ26に表示される。そして、これにより、接眼レンズ27を介して、ユーザは被写体の動画を視認することが可能となる。なお、スルー画像の生成、およびスルー画像の表示は、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0071】
次いで、ステップS2では、カメラ制御部21により、人物の顔の位置を特定するための顔位置特定処理が開始される。本実施形態では、まず、使用者の手動操作により、あるいは、カメラ制御部21による顔認識処理により指定された人物の顔に対応するテンプレート画像の生成が行なわれる。そして、生成されたテンプレート画像との一致度が所定以上であるエリアの探索を行い、一致度が所定以上であるエリアを逐次抽出し、抽出したエリアを、人物の顔の位置として設定することにより行われる。なお、顔位置特定処理は、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0072】
ステップS3では、カメラ制御部21により、位相差検出方式によるデフォーカス量の検出処理が開始される。本実施形態では、位相差検出方式によるデフォーカス量の検出処理は、次のように行なわれる。すなわち、まず、カメラ制御部21により、撮像素子22の5つの焦点検出画素列22a〜22dを構成する各焦点検出画素222a,222bから一対の像に対応した一対の像データの読み出しが行なわれる。この場合、上述したステップS2において人物の顔の位置が特定されている場合には、特定された人物の顔の位置に対応する焦点検出画素からのデータのみを読み出すような構成とすることができる。
【0073】
そして、カメラ制御部21は、読み出された一対の像データについて、検波周波数帯域の異なる複数の検波フィルタを用いて、フィルタ処理を行ない、検波フィルタごとに、フィルタ処理後データを複数算出し、算出した複数のフィルタ処理後データに基づいて像ズレ検出演算処理(相関演算処理)を実行する。具体的には、カメラ制御部21は、複数のフィルタ処理後データに基づいて、複数の像ズレ量を演算し、さらに像ズレ量をデフォーカス量に変換することで、異なる検波フィルタを用いて得られた複数のデフォーカス量を得る。そして、カメラ制御部21は、相関演算処理における演算結果から、複数の検波フィルタから、対応する被写体に適した検波周波数帯域を有する検波フィルタを選択し、複数のデフォーカス量のうち、選択された検波フィルタを用いて得られたデフォーカス量を、最終的なデフォーカス量として決定する。すなわち、対応する被写体に適した検波周波数帯域を有する検波フィルタを選択することで、上記のようにして算出された複数のデフォーカス量から、最終的なデフォーカス量を決定する。
【0074】
あるいは、本実施形態において、最終的なデフォーカス量を決定するに際し、まず、読み出された一対の像データに基づいて、一対の像データに適した波周波数帯域を有する検波フィルタを予め選択し、選択された検波フィルタのみを用いて、フィルタ処理を行ない、フィルタ処理後データを算出し、選択された検波フィルタを用いて得られたフィルタ処理後データから算出される像ズレ量から、最終的なデフォーカス量を決定するような構成としてもよい。
【0075】
そして、このような位相差検出方式によるデフォーカス量の検出処理は、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0076】
ステップS4では、カメラ制御部21により、焦点評価値の算出処理が開始される。本実施形態では、焦点評価値の算出処理は、撮像素子22の撮像画素221の画素出力を読み出し、読み出した画素出力の高周波成分を、高周波透過フィルタを用いて抽出し、これを積算することにより行われる。この場合、上述したステップS2において人物の顔の位置が特定されている場合には、特定された人物の顔の位置に対応する撮像画素221の画素出力の画素出力のみを読み出すような構成としてもよい。なお、焦点評価値の算出処理は、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0077】
ステップS5では、カメラ制御部21により、操作部28に備えられたシャッターレリーズボタンの半押し(第1スイッチSW1のオン)がされたかどうかの判断が行なわれる。第1スイッチSW1がオンした場合はステップS6に進む。一方、第1スイッチSW1がオンしていない場合は、第1スイッチSW1がオンされるまで、ステップS5を繰り返す。すなわち、第1スイッチSW1がオンされるまで、スルー画像の生成・表示、顔位置特定処理、位相差検出方式によるデフォーカス量の検出処理、および焦点評価値の算出処理が繰り返し実行される。
【0078】
ステップS6では、光学系の焦点状態の検出を行うための焦点検出エリアAFPを決定するための処理が行なわれる。具体的には、上述したステップS2で説明した顔位置特定処理により、人物の顔の位置が特定されている場合には、特定された人物の顔の位置が焦点検出エリアAFPに設定される。あるいは、人物の顔の位置が特定されていない場合には、所定の焦点検出位置(たとえば、最至近被写体に対応する焦点検出位置や、撮影画面の中央領域に位置する焦点検出位置)が、光学系の焦点状態の検出を行うための焦点検出エリアAFPに設定される。
【0079】
ステップS7では、上述したステップS6で決定された光学系の焦点状態の検出を行うための焦点検出エリアAFPにおいて、位相差検出方式により検出されたデフォーカス量について、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、予め定められた所定値f1以上であるか否かの判定が行なわれる。デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、所定値f1以上である場合には、ステップS14に進む。一方、デフォーカス量を検出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、所定値f1未満である場合には、ステップS8に進む。
【0080】
なお、人物の顔を撮影するための人物撮影モードにおいて、デフォーカス量を算出する際に用いる検波フィルタとして検出可能な周波数帯域の低いフィルタが用いられ、そのため、対応する被写体の空間周波数が低いと判断できるような場合には、人物の顔の中でも、肌などの低周波成分が検出されている場合が多い。そして、焦点検出エリアAFPに対応する位置に存在する焦点検出画素222a,222bで捕捉している領域が、人物の顔のうち肌の部分である場合には、肌にピントが合ってしまい、本来ピントを合わせたい目にピントが合わず、そのため、ピント精度が十分に得られない場合が多いという問題や、低周波成分に基づいて、焦点検出を行うものであるため、そもそも焦点検出精度が低いものとなるという問題などが生じてしまう場合がある。
【0081】
これに対して、本実施形態では、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、所定値f1以上であり、人物の顔を撮影するための人物撮影モードにおいて、焦点検出エリアAFPに対応する位置に存在する焦点検出画素222a,222bで捕捉している被写体(人物の顔)の空間周波数が十分に高いものであると判断できる場合には、ステップS14に進み、後述するように、検出されたデフォーカス量に基づいて、位相差検出方式による合焦動作を実行する。一方で、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、所定値f1未満であり、人物の顔を撮影するための人物撮影モードにおいて、焦点検出エリアAFPに対応する位置に存在する焦点検出画素222a,222bで捕捉している被写体(人物の顔)の空間周波数が低いと判断される場合には、ステップS8に進み、後述するスキャン動作を実行する。
【0082】
ここで、所定値f1としては、人物の顔を撮影するための人物撮影モードにおいて、被写体(人物)の空間周波数が十分に高いものと判断できるような値に設定すればよく、特に限定されないが、たとえば、カメラ制御部21に記憶されている検波周波数帯域の異なる複数の検波フィルタの数が10個である場合には、検波周波数帯域が低い方から順に3個目までの検波フィルタを用いてデフォーカス量が検出された場合には、被写体(人物の顔)の空間周波数が低く、後述するスキャン動作に移行するような構成とすることができる。言い換えれば、検波周波数帯域が高い方から順に7個目までの検波フィルタを用いてデフォーカス量が検出された場合には、被写体(人物の顔)の空間周波数が十分に高く、検出されたデフォーカス量に基づいて、位相差検出方式による合焦動作を実行するような構成とすることができる。
【0083】
そして、ステップS7において、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、所定値f1以上であると判断された場合には、ステップS14に進み、位相差検出方式により検出されたデフォーカス量に基づく、合焦動作が行なわれる。すなわち、ステップS14では、位相差検出方式により検出されたデフォーカス量に基づいて、フォーカスレンズ32を、合焦位置まで駆動させる処理が行なわれる。具体的には、カメラ制御部21により、位相差検出方式により検出されたデフォーカス量から、フォーカスレンズ32を合焦位置まで駆動させるのに必要となるレンズ駆動量の算出が行なわれ、算出されたレンズ駆動量が、レンズ制御部37を介して、レンズ駆動モータ36に送出される。そして、レンズ駆動モータ36は、カメラ制御部21により算出されたレンズ駆動量に基づいて、フォーカスレンズ32を合焦位置まで駆動させる。
【0084】
なお、本実施形態においては、レンズ駆動モータ36を駆動させ、フォーカスレンズ32を合焦位置まで駆動させている間においても、カメラ制御部21は、位相差検出方式によるデフォーカス量の検出を繰り返し行い、その結果、新たなデフォーカス量が検出された場合には、カメラ制御部21は、新たなデフォーカス量に基づいて、フォーカスレンズ32を駆動させる。
【0085】
また、ステップS13においては、フォーカスレンズ32を、合焦位置まで駆動させる処理とともに、カメラ制御部21により、スキャン動作禁止処理が行なわれる。具体的には、カメラ制御部21により、スキャン動作禁止指令が、レンズ制御部37に送出され、スキャン動作が禁止状態とされる。なお、スキャン動作については、後述する。
【0086】
そして、フォーカスレンズ32の合焦位置への駆動が完了すると、ステップS16に進み、合焦ロック(フォーカスレンズ32の駆動を禁止する処理)が行なわれる。なお、この際においては、電子ビューファインダ26により、合焦表示を行なうような構成としてもよい。
【0087】
一方、ステップS7において、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、所定値f1未満であると判断された場合には、ステップS8に進み、ステップS8では、カメラ制御部21により、スキャン動作の開始処理が行なわれる。本実施形態のスキャン動作は、フォーカスレンズ駆動モータ36により、フォーカスレンズ32を、所定の駆動速度でスキャン駆動させながら、カメラ制御部21により、位相差検出方式によるデフォーカス量の検出、および焦点評価値の算出を、所定の間隔で同時に行い、これにより、位相差検出方式による合焦位置の検出と、コントラスト検出方式による合焦位置の検出とを、所定の間隔で、同時に実行する動作である。
【0088】
具体的には、カメラ制御部21は、レンズ制御部37にスキャン駆動開始指令を送出し、レンズ制御部37は、カメラ制御部21からの指令に基づき、フォーカスレンズ駆動モータ36を駆動させ、フォーカスレンズ32を光軸L1に沿って、所定の駆動速度でスキャン駆動させる。なお、スキャン動作を行なう際における、フォーカスレンズ32の駆動速度としては、特に限定されないが、たとえば、位相差検出方式によるデフォーカス量の検出に適した速度、具体的には、位相差検出方式によるデフォーカス量の検出が可能な速度のうち最大の速度、あるいは、位相差検出方式によるデフォーカス量の検出が可能な速度のうち最大の速度よりも所定速度遅い速度(たとえば、速度誤差や検出誤差等を考慮した速度のうち、最大の速度)とすることができる。また、フォーカスレンズ32のスキャン駆動は、無限遠端位置から至近端位置に向かって、あるいは、至近端位置から無限遠端位置に向かって行なう。なお、この場合における、無限遠端位置は、レンズ鏡筒3の構造によって決められる機械的なリミット位置よりも、至近側となる所定の位置(無限遠側ソフトリミット位置)に設定される。また、同様に、至近端位置も、レンズ鏡筒3の構造によって決められる機械的なリミット位置よりも、無限遠側となる所定の位置(至近側ソフトリミット位置)に設定される。
【0089】
そして、カメラ制御部21は、フォーカスレンズ32を所定の駆動速度で駆動させながら、所定間隔で、撮像素子22の焦点検出画素222a,222bから一対の像に対応した一対の像データの読み出しを行い、これに基づき、位相差検出方式により、デフォーカス量の検出を行うとともに、フォーカスレンズ32を所定の駆動速度で駆動させながら、所定間隔で、撮像素子22の撮像画素221から画素出力の読み出しを行い、これに基づき、焦点評価値を算出し、これにより、異なるフォーカスレンズ位置における焦点評価値を取得することで、コントラスト検出方式により合焦位置の検出を行う。
【0090】
ステップS9では、カメラ制御部21により、スキャン動作を行なった結果、上述したステップS6で決定した光学系の焦点状態の検出を行うための焦点検出エリアAFPにおいて、位相差検出方式により検出されたデフォーカス量について、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、上述した所定値f1以上であるか否かの判定が行なわれる。デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、所定値f1以上である場合には、ステップS14に進み、一方、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、所定値f1未満である場合には、ステップS10に進む。
【0091】
ステップS10では、カメラ制御部21により、スキャン動作を行なった結果、コントラスト検出方式により、合焦位置の検出ができたか否かの判定が行なわれる。コントラスト検出方式により、合焦位置の検出ができた場合には、ステップS15に進み、一方、合焦位置の検出ができなかった場合には、ステップS11に進む。
【0092】
ステップS11では、カメラ制御部21により、スキャン動作を、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲の全域、すなわち、無限遠端位置から至近端位置の間の全域について行なったか否かの判定が行なわれる。フォーカスレンズ32の駆動可能範囲の全域について、スキャン動作を行なっていない場合には、ステップS9に戻り、ステップS9〜S11を繰り返すことにより、スキャン動作、すなわち、フォーカスレンズ32を、所定の駆動速度で駆動させながら、位相差検出方式によるデフォーカス量の検出、およびコントラスト検出方式による合焦位置の検出を、所定の間隔で同時に実行する動作を継続して行なう。一方、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲の全域について、スキャン動作の実行を完了している場合には、ステップS12に進む。
【0093】
そして、スキャン動作を実行した結果、ステップS9において、検出可能な周波数帯域が所定値f1以上である検波フィルタを用いたデフォーカス量が検出された場合(すなわち、焦点検出エリアAFPに対応する位置に存在する焦点検出画素222a,222bで捕捉している被写体(人物の顔)の空間周波数が十分に高いものと判断できる場合)には、ステップS14に進み、上記と同様にして、位相差検出方式により検出されたデフォーカス量に基づく、合焦動作が行なわれる。そして、フォーカスレンズ32の合焦位置への駆動が完了すると、ステップS16に進み、合焦ロックが行なわれる。
【0094】
また、スキャン動作を実行した結果、ステップS10において、コントラスト検出方式により、合焦位置が検出できたと判定された場合には、スキャン動作を停止し、ステップS15に進み、コントラスト検出方式により検出された合焦位置に基づく、合焦動作が行なわれる。すなわち、ステップS15では、コントラスト検出方式により検出された合焦位置に基づいて、フォーカスレンズ32を、合焦位置まで駆動させる合焦駆動処理が行なわれる。ここで、図12に、スキャン動作の結果、コントラスト検出方式により合焦位置が検出された場合における、フォーカスレンズ位置と焦点評価値との関係、およびフォーカスレンズ位置と時間との関係を表す図を示す。図12に示すように、スキャン動作開始時には、フォーカスレンズ32は、図12に示すP0に位置しており、P0から、無限遠側から至近側に向けてフォーカスレンズ32を所定の駆動速度で駆動させながら、焦点評価値の取得を行う。そして、フォーカスレンズ32を、図12に示すP1の位置に移動させた時点において、焦点評価値のピーク位置(合焦位置)が検出されると(ステップS10=Yes)、スキャン動作を停止し、フォーカスレンズ32を合焦位置(図12中、P2の位置)まで駆動するための合焦駆動(ステップS15)が行なわれる。また、合焦駆動を行う際には、カメラ制御部21により、スキャン動作を停止するとともに、スキャン動作禁止処理が行なわれる。
【0095】
なお、本実施形態においては、ステップS10において、コントラスト検出方式により、合焦位置が検出できたと判定され、コントラスト検出方式による検出結果に基づいて、フォーカスレンズ32を合焦位置への駆動を行なう際には、フォーカスレンズ32の合焦位置への駆動が完了するまでは、位相差検出方式による焦点検出結果に基づく、フォーカスレンズ32の駆動を禁止する。すなわち、コントラスト検出方式により、合焦位置が検出できたと判定された後においては、位相差検出方式によりデフォーカス量が検出できた場合でも、位相差検出方式の結果に基づいたフォーカスレンズ32の駆動を禁止する。これにより、フォーカスレンズ32のハンチング現象を抑制することができる。
【0096】
そして、フォーカスレンズ32の合焦位置への駆動が完了すると、ステップS16に進み、合焦ロックが行なわれる。
【0097】
なお、本実施形態のスキャン動作においては、上述したステップS9〜S11を繰り返し実行することで、フォーカスレンズ32を、所定の駆動速度でスキャン駆動させながら、位相差検出方式によるデフォーカス量の検出、およびコントラスト検出方式による合焦位置の検出を所定の間隔で同時に実行する。そして、上述したステップS9〜S11を繰り返し実行した結果、位相差検出方式およびコントラスト検出方式のうち、先に、検出可能な周波数帯域が所定値f1以上である検波フィルタを用いたデフォーカス量の検出、または合焦位置の検出ができた検出方式による、焦点検出結果を用いて、フォーカスレンズ32を、合焦位置まで駆動させる処理を行なう。また、上述したように、本実施形態のスキャン動作においては、位相差検出方式により、検出可能な周波数帯域が所定値f1以上である検波フィルタを用いたデフォーカス量の検出ができたか否かを判断した(ステップS9)後に、コントラスト検出方式により合焦位置の検出ができたか否かの判断を行う(ステップS10)ことで、位相差検出方式とコントラスト検出方式とで同時期に、位相差検出方式による、検出可能な周波数帯域が所定値f1以上である検波フィルタを用いたデフォーカス量の検出、およびコントラスト検出方式による合焦位置の検出ができた場合に、位相差検出方式による焦点検出結果を、コントラスト検出方式による焦点検出結果よりも優先して、採用するものである。
【0098】
そのため、本実施形態によれば、位相差検出方式により撮影光学系の焦点状態の検出がし難い場合(たとえば、反射率が同じで、異なる色の被写体を撮影する場合や、低輝度被写体を撮影する場合)や、コントラスト検出方式により撮影光学系の焦点状態の検出がし難い場合(たとえば、輝度が低い被写体を撮影する場合)のいずれの場合でも、撮影光学系の焦点検出を適切に行なうことができる。また、本実施形態によれば、位相差検出方式によるデフォーカス量の検出、およびコントラスト検出方式による合焦位置の検出を同時に実行し、先に焦点検出ができた方式により、撮影光学系の焦点調節を行なうため、従来技術(すなわち、位相差検出方式により合焦位置近傍までフォーカスレンズ32を駆動し、次いで、合焦位置近でコントラスト検出方式による合焦位置の検出を行う技術)と比較して、撮影光学系の焦点調節を短い時間で行なうことができる。
【0099】
一方、ステップS11において、所定の駆動範囲について、スキャン動作の実行が完了していると判定された場合には、ステップS12に進む。ステップS12では、スキャン動作を行なった結果、位相差検出方式およびコントラスト検出方式のいずれの方式によっても、焦点検出を行うことができなかったため、スキャン動作の終了処理が行なわれ、次いで、ステップS13に進み、非合焦処理が行なわれる。非合焦処理としては、たとえば、非合焦を示す表示を、電子ビューファインダ26に表示するとともに、フォーカスレンズ32を予め定められた所定の位置に駆動させることにより実行される。
【0100】
以上のように、本実施形態に係るカメラ1は動作する。
【0101】
なお、上述した動作例では、人物の顔を撮影するための人物撮影モードが選択されている場合を例示して説明したが、人物撮影モード以外にも、たとえば、マクロ撮影するためのマクロ撮影モード、または風景を撮影するための風景撮影モードが選択されている場合にも、同様に、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、予め定められた所定値f2(ただし、f2>f1)以上ある場合のみ、検出されたデフォーカス量に基づいて、位相差検出方式により合焦駆動をさせ、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、予め定められた所定値f2未満である場合には、スキャン動作に移行するような構成とすることができる。この場合においては、所定値f2としては、マクロ撮影モードまたは風景撮影モードにおいて、被写体の空間周波数が十分に高いものと判断できるような値に設定すればよく、特に限定されいなが、たとえば、カメラ制御部21に記憶されている検波周波数帯域の異なる複数の検波フィルタの数が10個である場合には、検波周波数帯域が低い方から順に10個目までの検波フィルタを用いてデフォーカス量が検出された場合には、被写体の空間周波数が低く、スキャン動作に移行するような構成とすることができる。言い換えれば、検波周波数帯域が高い方から順に5個目までの検波フィルタを用いてデフォーカス量が検出された場合には、被写体の空間周波数が十分に高く、検出されたデフォーカス量に基づいて、位相差検出方式による合焦動作を実行するような構成とすることができる。また、マクロ撮影モードおよび風景撮影モードのいずれにおいも、所定値f2として同じ値を用いてもよいし、あるいは、異なる値を用いてもよい。
【0102】
また、上述した動作例では、予め、操作部28を介して、人物撮影モードが選択されている場合を例示して説明したが、制御部21により、撮像素子22により取得した撮影画像に基づいて、人物撮影モードやその他の撮影モード(たとえば、マクロ撮影モードや、風景撮影モード)に自動的に設定されるような構成とすることももちろん可能である。
【0103】
本実施形態においては、位相差検出方式により検出されたデフォーカス量について、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、予め定められた所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上である場合には、検出されたデフォーカス量に基づいて、位相差検出方式により合焦駆動を行い、一方、所定値未満である場合には、フォーカスレンズ32を所定の駆動速度でスキャン駆動させながら、位相差検出方式による合焦位置の検出と、コントラスト検出方式による合焦位置の検出とを、所定の間隔で、同時に実行するスキャン動作を実行する。そのため、本実施形態によれば、デフォーカス量が、人物の顔のうち肌の部分などの空間周波数が低い低周波成分に基づくものである場合に、このような低周波成分に基づくデフォーカス量により合焦動作を行なった場合における不具合、たとえば、本来ピントを合わせたい目にピントが合わず、そのため、ピント精度が十分に得られない場合が多いという問題や、低周波成分に基づいて、焦点検出を行うものであるため、そもそも焦点検出精度が低いものとなってしまうという問題の発生を有効に防止することができる。
【0104】
特に、本実施形態によれば、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、予め定められた所定値未満である場合に、上述したスキャン動作を実行するため、このような場合でも、ピント精度を十分に高いものとすることができる。加えて、本実施形態によれば、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、予め定められた所定値以上である場合のみ、すなわち、空間周波数が高い高周波成分(たとえば、人物の顔の目の部分等)に基づくデフォーカス量である場合のみ、デフォーカス量に基づいて、位相差検出方式による合焦駆動を実行するため、位相差検出方式により合焦動作を実行した際における、ピント精度を十分なものとすることができる。
【0105】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0106】
たとえば、上述した本実施形態においては、位相差検出方式により検出されたデフォーカス量について、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、予め定められた所定値未満である場合には、スキャン動作を実行する構成を例示したが、スキャン動作を実行せずに、位相差検出方式により検出されたデフォーカス量に基づく、フォーカスレンズ32の駆動を禁止する処理を行なうような構成としてもよい。そして、このように、フォーカスレンズ32の駆動を禁止する処理を行なった場合には、位相差検出方式によるデフォーカス量の検出を再度行い、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、予め定められた所定値以上となった場合に、位相差検出方式により検出されたデフォーカス量に基づく、フォーカスレンズ32の駆動を許可し、これにより、位相差検出方式による合焦駆動を実行するような構成とすればよい。
【0107】
また、上述した実施形態においては、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、予め定められた所定値未満である場合に、スキャン動作を実行するような構成を例示したが、たとえば、検出されたデフォーカス量の信頼性が所定値未満である場合には、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、予め定められた所定値以上であっても、スキャン動作を実行するような構成としてもよい。あるいは、このような場合に、スキャン動作を実行する代わりに、位相差検出方式により検出されたデフォーカス量に基づく、フォーカスレンズ32の駆動を禁止する処理を行なうような構成としてもよい。なお、デフォーカス量の信頼性が所定値未満である場合としては、たとえば、検出されたデフォーカス量に基づいて、合焦位置が、光軸方向のうち無限遠側に存在するか至近側に存在するかを判断できるに留まるような値に設定することができる。
【0108】
また、上述した実施形態において、光学系の焦点状態の検出を行うための焦点検出エリアAFPを決定する際において、人物の顔の位置に対応する焦点検出位置が複数検出された場合に、複数の焦点検出位置から、光学系の焦点状態の検出を行うための焦点検出エリアAFPを選択する際に、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、予め定められた所定値未満であるような焦点検出位置を除いて、焦点検出エリアAFPを選択するような構成としてもよい。このような構成を採用することにより、人物の顔のうち肌の部分などの空間周波数が低い低周波成分を捕捉している焦点検出位置を予め除外することができ、これにより焦点検出に要する時間の短縮を図ることが可能となる。
【0109】
さらに、上述した実施形態では、デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、予め定められた所定値以上である場合に、検出されたデフォーカス量に基づいて、位相差検出方式により合焦駆動を行い、所定値未満である場合に、スキャン動作を実行するような構成を例示したが、このような構成に代えて、あるいは、このような構成とともに、デフォーカス量の値が予め定められた所定値df1以上であり、かつ、該デフォーカス量を算出する際に用いられた検波フィルタの検出可能な周波数帯域が、予め定められた所定値f3(f3>f2>f1)以上である場合に、スキャン動作を実行するような構成としてもよい。すなわち、デフォーカス量の値が予め定められた所定値df1以上と比較的大きく、そのため、ボケ量が大きいため、該デフォーカス量を算出する際に用いる検波フィルタとしては、比較的低い周波数帯域を検出可能なフィルタが用いられると考えられる一方で、高周波成分を検出可能な高い周波数帯域を検出可能な検波フィルタが用いられた場合には、得られたデフォーカス量は極めて信頼性が低いものと判断することができる。よって、このような場合には、検出されたデフォーカス量に基づく合焦駆動を実行せず、代わりにスキャン駆動を実行することで、儀合焦状態となってしまうことを有効に防止しながら、高いピント精度を得ることができる。なお、所定値df1としては、特に限定されず、ボケ量が十分に大きいと判断できるような値に設定することができ、絞り34の絞り値に応じて、変更可能とすることができる。また、所定値f3としては、特に限定されないが、所定値f3以上の周波数帯域を検出可能な検波フィルタを用いることにより、十分に周波数が高い高周波成分を検出できるような値に設定すればよい。
【符号の説明】
【0110】
1…デジタルカメラ
2…カメラ本体
21…カメラ制御部
22…撮像素子
221…撮像画素
222a,222b…焦点検出画素
3…レンズ鏡筒
32…フォーカスレンズ
36…フォーカスレンズ駆動モータ
37…レンズ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点調節光学系を有する光学系による像を撮像し、撮像した像に対応する画像信号を出力する撮像部と、
位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出部と、
前記撮像部により出力された前記画像信号に基づいて、前記光学系による像のコントラストに関する評価値を算出することで、前記光学系の焦点状態を検出するコントラスト検出部と、
前記位相差検出部による焦点状態の検出に用いられ、検出可能な周波数帯域の異なる複数のフィルタを記憶する記憶部と、
撮影シーンを判定するシーン判定部と、
前記光学系の光軸方向に、前記焦点調節光学系を駆動させる駆動部と、
前記駆動部を制御することで、前記焦点調節光学系の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記位相差検出部は、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量に対応する像ずれ信号を取得し、前記記憶部に記憶された前記複数のフィルタを用いて、前記取得した像ずれ信号をフィルタ処理し、前記複数のフィルタで処理された複数のフィルタ処理信号を算出した後、前記複数のフィルタ処理信号の算出に用いた複数のフィルタのうち、前記取得した像ずれ信号に適した周波数帯域を検出可能なフィルタを選択し、前記複数のフィルタ処理信号のうち、前記選択されたフィルタを用いて得られたフィルタ処理信号に基づいて、前記ずれ量を検出し、
前記制御部は、前記位相差検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせた結果、前記位相差検出部により選択されたフィルタの検出可能な周波数帯域が、前記シーン判定部により判定された撮影シーンに対応する特定周波数帯域と異なる周波数帯域であるか否かの判定を行ない、前記選択されたフィルタの周波数帯域が、前記特定周波数帯域と異なる周波数帯域である場合には、前記駆動部に、前記焦点調節光学系を所定の方向に駆動させながら、前記位相差検出部および前記コントラスト検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせるスキャン駆動を実行することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項2】
焦点調節光学系を有する光学系による像を撮像し、撮像した像に対応する画像信号を出力する撮像部と、
位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出部と、
前記撮像部により出力された前記画像信号に基づいて、前記光学系による像のコントラストに関する評価値を算出することで、前記光学系の焦点状態を検出するコントラスト検出部と、
前記位相差検出部による焦点状態の検出に用いられ、検出可能な周波数帯域の異なる複数のフィルタを記憶する記憶部と、
撮影シーンを判定するシーン判定部と、
前記光学系の光軸方向に、前記焦点調節光学系を駆動させる駆動部と、
前記駆動部を制御することで、前記焦点調節光学系の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記位相差検出部は、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量に対応する像ずれ信号を取得し、前記複数のフィルタのうち、前記像ずれ信号に適した周波数帯域を検出可能なフィルタを選択し、前記選択されたフィルタにより前記取得した像ずれ信号をフィルタ処理することにより得られたフィルタ処理信号に基づいて、前記ずれ量を検出し、
前記制御部は、前記位相差検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせた結果、前記位相差検出部により選択されたフィルタの検出可能な周波数帯域が、前記シーン判定部により判定された撮影シーンに対応する特定周波数帯域と異なる周波数帯域であるか否かの判定を行ない、前記選択されたフィルタの周波数帯域が、前記特定周波数帯域と異なる周波数帯域である場合には、前記駆動部に、前記焦点調節光学系を所定の方向に駆動させながら、前記位相差検出部および前記コントラスト検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせるスキャン駆動を実行することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項3】
焦点調節光学系を有する光学系による像を撮像し、撮像した像に対応する画像信号を出力する撮像部と、
位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出部と、
前記位相差検出部による焦点状態の検出に用いられ、検出可能な周波数帯域の異なる複数のフィルタを記憶する記憶部と、
撮影シーンを判定するシーン判定部と、
前記光学系の光軸方向に、前記焦点調節光学系を駆動させる駆動部と、
前記駆動部を制御することで、前記焦点調節光学系の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記位相差検出部は、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量に対応する像ずれ信号を取得し、前記記憶部に記憶された前記複数のフィルタを用いて、前記取得した像ずれ信号をフィルタ処理し、前記複数のフィルタで処理された複数のフィルタ処理信号を算出した後、前記複数のフィルタ処理信号の算出に用いた複数のフィルタのうち、前記取得した像ずれ信号に適した周波数帯域を検出可能なフィルタを選択し、前記複数のフィルタ処理信号のうち、前記選択されたフィルタを用いて得られたフィルタ処理信号に基づいて、前記ずれ量を検出し、
前記制御部は、前記位相差検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせた結果、前記位相差検出部により選択されたフィルタの検出可能な周波数帯域が、前記シーン判定部により判定された撮影シーンに対応する特定周波数帯域と異なる周波数帯域であるか否かの判定を行ない、前記選択されたフィルタの周波数帯域が、前記特定周波数帯域と異なる周波数帯域である場合には、前記位相差検出部により検出された前記ずれ量に基づく制御を禁止することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項4】
焦点調節光学系を有する光学系による像を撮像し、撮像した像に対応する画像信号を出力する撮像部と、
位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出部と、
前記位相差検出部による焦点状態の検出に用いられ、検出可能な周波数帯域の異なる複数のフィルタを記憶する記憶部と、
撮影シーンを判定するシーン判定部と、
前記光学系の光軸方向に、前記焦点調節光学系を駆動させる駆動部と、
前記駆動部を制御することで、前記焦点調節光学系の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記位相差検出部は、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量に対応する像ずれ信号を取得し、前記複数のフィルタのうち、前記像ずれ信号に適した周波数帯域を検出可能なフィルタを選択し、前記選択されたフィルタにより前記取得した像ずれ信号をフィルタ処理することにより得られたフィルタ処理信号に基づいて、前記ずれ量を検出し、
前記制御部は、前記位相差検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせた結果、前記位相差検出部により選択されたフィルタの検出可能な周波数帯域が、前記シーン判定部により判定された撮影シーンに対応する特定周波数帯域と異なる周波数帯域であるか否かの判定を行ない、前記選択されたフィルタの周波数帯域が、前記特定周波数帯域と異なる周波数帯域である場合には、前記位相差検出部により検出された前記ずれ量に基づく制御を禁止することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の焦点検出装置において、
前記制御部は、前記位相差検出部により選択されたフィルタの周波数帯域が、前記特定周波数帯域内にある場合には、前記駆動部に、前記位相差検出部により検出されたずれ量に基づいて、前記焦点調節光学系の駆動を行なわせることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の焦点検出装置において、
前記シーン判定部は、操作部材を介してユーザにより設定されたシーン、または、前記撮像部により撮像された撮像画像に基づいて、撮影シーンの判定を行なうことを特徴とする焦点検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の焦点検出装置において、
前記制御部は、前記シーン判定部により撮影シーンが人物の顔を撮影するシーンであると判定された場合には、前記特定周波数帯域を、所定の第1閾値以上の周波数帯域に設定することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の焦点検出装置において、
前記制御部は、前記シーン判定部により撮影シーンが、人物の顔を撮影するシーンであると判定された場合には、前記特定周波数帯域を、所定の第1閾値以上の周波数帯域に設定し、前記シーン判定部により撮影シーンが、マクロ撮影するシーンまたは風景を撮影するシーンであると判定された場合には、前記特定周波数帯域を、前記第1閾値よりも高い所定の第2閾値以上の周波数帯域に設定することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の焦点検出装置において、
前記位相差検出部は、撮影画面内に設定された複数の焦点検出位置のそれぞれについて、前記ずれ量の検出を行い、
前記制御部は、前記複数の検出位置のそれぞれについて検出された複数の前記ずれ量のうち、前記特定周波数帯域と異なる周波数帯域を検出可能なフィルタを用いて検出されたずれ量を除外して、前記位相差検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項10】
焦点調節光学系を有する光学系による像を撮像し、撮像した像に対応する画像信号を出力する撮像部と、
位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出部と、
前記撮像部により出力された前記画像信号に基づいて、前記光学系による像のコントラストに関する評価値を算出することで、前記光学系の焦点状態を検出するコントラスト検出部と、
前記位相差検出部による焦点状態の検出に用いられ、検出可能な周波数帯域の異なる複数のフィルタを記憶する記憶部と、
撮影シーンを判定するシーン判定部と、
前記光学系の光軸方向に、前記焦点調節光学系を駆動させる駆動部と、
前記駆動部を制御することで、前記焦点調節光学系の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記位相差検出部は、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量に対応する像ずれ信号を取得し、前記記憶部に記憶された前記複数のフィルタを用いて、前記取得した像ずれ信号をフィルタ処理し、前記複数のフィルタで処理された複数のフィルタ処理信号を算出した後、前記複数のフィルタ処理信号の算出に用いた複数のフィルタのうち、前記取得した像ずれ信号に適した周波数帯域を検出可能なフィルタを選択し、前記複数のフィルタ処理信号のうち、前記選択されたフィルタを用いて得られたフィルタ処理信号に基づいて、前記ずれ量を検出し、
前記制御部は、前記位相差検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせた結果、前記位相差検出部により検出されたずれ量が、所定値以上であり、かつ、前記位相差検出部により選択されたフィルタの検出可能な周波数帯域が、所定の特定周波数帯域よりも高い周波数帯域であるか否かの判定を行ない、前記ずれ量が前記所定値以上であり、かつ、前記選択されたフィルタの検出可能な周波数帯域が、前記特定周波数帯域よりも高い周波数帯域である場合には、前記駆動部に、前記焦点調節光学系を所定の方向に駆動させながら、前記位相差検出部および前記コントラスト検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせるスキャン駆動を実行することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項11】
焦点調節光学系を有する光学系による像を撮像し、撮像した像に対応する画像信号を出力する撮像部と、
位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量を検出することで、前記光学系の焦点状態を検出する位相差検出部と、
前記撮像部により出力された前記画像信号に基づいて、前記光学系による像のコントラストに関する評価値を算出することで、前記光学系の焦点状態を検出するコントラスト検出部と、
前記位相差検出部による焦点状態の検出に用いられ、検出可能な周波数帯域の異なる複数のフィルタを記憶する記憶部と、
前記光学系の光軸方向に、前記焦点調節光学系を駆動させる駆動部と、
前記駆動部を制御することで、前記焦点調節光学系の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記位相差検出部は、位相差を用いて、前記光学系による像面のずれ量に対応する像ずれ信号を取得し、検出可能な周波数帯域の異なる複数のフィルタのうち、前記像ずれ信号に適した周波数帯域を検出可能なフィルタを選択し、前記選択されたフィルタにより前記取得した像ずれ信号をフィルタ処理することにより得られたフィルタ処理信号に基づいて、前記ずれ量を検出し、
前記制御部は、前記位相差検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせた結果、前記位相差検出部により検出されたずれ量が、所定値以上であり、かつ、前記位相差検出部により選択されたフィルタの検出可能な周波数帯域が、所定の特定周波数帯域よりも高い周波数帯域であるか否かの判定を行ない、前記ずれ量が前記所定値以上であり、かつ、前記選択されたフィルタの検出可能な周波数帯域が、前記特定周波数帯域よりも高い周波数帯域である場合には、前記駆動部に、前記焦点調節光学系を所定の方向に駆動させながら、前記位相差検出部および前記コントラスト検出部に前記光学系の焦点状態の検出を行わせるスキャン駆動を実行することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の焦点検出装置において、
前記制御部は、前記所定値を、前記光学系の絞り値に応じて設定することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の焦点検出装置において、
前記位相差検出部が、前記撮像部の受光面に備えられていることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の焦点検出装置を備えた撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−54326(P2013−54326A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200194(P2011−200194)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】