説明

焼き付き補正装置、表示装置、画像処理装置及びプログラム

【課題】固定表示部分の焼き付き現象を解消する。
【解決手段】焼き付き補正装置を、(a)画像を複数の部分領域に分割する領域分割部と、(b)部分領域を構成する全ピクセルの発光量をある期間について累積し、部分領域別の累積発光量とする累積処理部と、(c)各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する補正値決定部と、(d)隣接する部分領域間で補正値が連続的に変化するように、部分領域内の位置に応じて対応する補正値を修正する補正値修正部と、(e)補正期間中、補正値修正部から与えられる補正値により対応する部分領域内の画像データを補正し、部分領域間の累積発光量のバラツキを解消する補正処理部とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1つの発明は、自発光型の表示装置の焼き付き補正装置に関する。
なお、この発明は、焼き付き補正装置を搭載した表示装置及び画像処理装置としても実現される。また、この発明は、焼き付き補正機能を提供するプログラムとしても実現される。
【背景技術】
【0002】
自発光型の表示装置を構成する発光体は、その発光量と時間に比例して劣化する特性がある。このため、発光体の性能向上が期待されている。
一方で、表示装置に表示される画像の内容は一様ではない。このため、発光体の劣化が部分的に進行し易い。例えば、時刻表示領域の発光体は、他の表示領域の発光体に比べて劣化の進行が速い。
劣化の進行した発光体の輝度は、他の表示領域の輝度に比して相対的に低下する。一般に、この現象は“焼きつき”と呼ばれる。以下、部分的な発光体の劣化を“焼きつき”と表記する。
【0003】
現在、“焼き付き”の改善策として様々な手法が検討されている。以下、そのうちの幾つかを列記する。
例えば、特許文献1には、発光素子の駆動電圧の変化量を検知し、その変化量に応じて定電流駆動信号を制御する手法が開示されている。
また例えば、特許文献2には、エレクトロルミネセンス素子(以下“EL素子”という。)が発光しない間、EL素子が劣化しないように逆バイアスを印加する手法が開示されている。
また例えば、特許文献3には、画素(ピクセル)の保持容量を積極的に放電し、不要な発光時間を抑制する手法が開示されている。
また例えば、特許文献4には、表示装置の使用時間から劣化量を計算して、全ての表示素子の輝度を落とし、表示素子の劣化速度を遅くする手法が開示されている。
また例えば、特許文献5には、画面に一定期間、変化のない映像が入力された場合、全ての表示素子の輝度を落とす手法が開示されている。
【特許文献1】特開平7−36410号公報
【特許文献2】特開2003-150110号公報
【特許文献3】特開2002-169509号公報
【特許文献4】特開2000−356981号公報
【特許文献5】特開平5−61426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる技術は、“焼き付き”の出現の遅延又は、出現した輝度差の拡大防止に効果的である。
しかし依然として、時間が経過すれば“焼き付き”が出現し又は、輝度差が拡大するのを避け得ない問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、以上の技術的課題に着目し、以下の技術を提案する。
すなわち、自発光型の表示装置の焼き付き補正装置として、
(a)画像を複数の部分領域に分割する領域分割部と、
(b)部分領域を構成する全ピクセルの発光量をある期間について累積し、部分領域別の累積発光量とする累積処理部と、
(c)各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する補正値決定部と、
(d)隣接する部分領域間で補正値が連続的に変化するように、部分領域内の位置に応じて対応する補正値を修正する補正値修正部と、
(e)補正期間中、補正値修正部から与えられる補正値により対応する部分領域内の画像データを補正し、部分領域間の累積発光量のバラツキを解消する補正処理部と
を有するものを提案する。
【0006】
なお、補正値による補正処理は、焼き付き現象の発生し易い静止画領域についてのみ行うのが好ましい。
この場合、焼き付き補正装置には、各部分領域が静止画領域と動画領域のいずれに対応するかフレーム単位で判定する動き判定部と、動画領域と判定された部分領域の発光量をゼロに変換する一方、静止画領域と判定された部分領域の発光量をそのままとするデータ変換部とを搭載するのが好ましい。
また、焼き付き補正装置では、部分領域の境界付近に修正範囲を設定し、当該修正範囲に位置する各ピクセルについてのみ、各ピクセルに対する画像データに作用させる補正値を修正するのが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
かかる補正技術の採用により、部分領域間における累積発光量のバラツキを積極的に解消できる。すなわち、発光体の劣化度を表示画面の全体について均一化できる。結果として、表示画面から焼き付き現象そのものを無くすことができる。
また、隣接する部分領域間で補正値が連続的に変化するように、部分領域内の位置に応じて対応する補正値を修正することにより、境界部分の補正効果をぼかすことができる。すなわち、補正単位である部分領域の境界を知覚され難くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、自発光型の表示装置の焼き付きを補正する補正装置と、当該補正装置を搭載した電子機器の実施形態例を説明する。
なお、本明細書で特に図示又は記載されない部分には、当該技術分野の周知又は公知技術を適用する。
また以下に説明する実施形態は、発明の一つの実施形態であって、これらに限定されるものではない。
【0009】
(A)用語
以下の説明では、表示パネルを構成する最小表示単位のサブピクセルがマトリクス状に配置されているものとして説明する。
各サブピクセルは、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応する。
1つの画素(ピクセル)は、これら各色に対応する3つのサブピクセルにより構成されている。各画素(ピクセル)の表示色は、これらの各色の組み合わせにより表現される。
この明細書では、サブピクセルの輝度を与えるデータをサブピクセルデータと呼ぶ。
なお、R(赤)に対応するサブピクセルデータは、Rサブピクセルデータ、G(緑)に対応するサブピクセルデータは、Gサブピクセルデータ、B(青)に対応するサブピクセルデータは、Bサブピクセルデータと呼ぶ。
また、各画素(ピクセル)に対応する単位での輝度を与えるデータをピクセルデータと呼ぶ。
累積発光量の演算は、これらサブピクセルデータの累積加算により行う。例えば、3つのサブピクセルデータを加算した画素(ピクセル)単位の輝度値(階調データ)の累積加算により行う。
【0010】
後述する各実施形態は、ピクセル単位で累積発光量を揃える場合にも、サブピクセル単位で累積発光量を揃える場合にも同様に適用できる。
なお、ピクセル単位で累積発光量を揃える場合は、対応する発光量をピクセル単位で考えるものとする。
一方、サブピクセル単位で累積発光量を揃える場合は、対応する発光量を各色に対応するサブピクセル単位で考えるものとする。
以下では、重複説明を回避するため、ピクセル単位(画素単位)で累積発光量を揃える場合について説明する。
しかし、前述の通り、各実施形態は、サブピクセル単位(色単位)で累積発光量を揃える場合についても同様に適用できる。
【0011】
(B)焼き付き補正装置の概念構成
ここでは、焼き付き補正装置として採用する2つの構成例を説明する。なお、焼き付き補正装置は、半導体集積回路の一部、画像処理ボードの一部に搭載される。もっとも、焼き付き補正装置の機能は、プログラム処理によっても実現される。
(a)構成例1
図1に、焼き付き補正装置1の構成例を示す。焼き付き補正装置1は、部分領域化部3、累積加算部5、補正値決定部7、補正値修正部9、補正処理部11を構成要素に有する補正装置である。
部分領域化部3は、画像データを複数の部分領域に分割する処理デバイスである。部分領域化部3は、1つのフレーム画像を複数の部分領域に分割し、部分領域毎の発光量を求める処理を実行する。ここで、各部分領域の発光量は、部分領域内に位置する全てのピクセルデータの加算値として与えられる。
なお、部分領域の大きさ(ピクセル数)は、入力画像の解像度に応じたものを使用する。
累積加算部5は、各フレームについて求められた部分領域毎の発光量をある期間について累積加算し、部分領域別の累積加算値を求める処理デバイスである。累積加算値は、部分領域別に保存される。
【0012】
補正値決定部7は、各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する処理デバイスである。基準値の決め方は、各部分領域間で累積加算値の差分の解消方法に応じて選択する。
例えば、劣化の進んだ部分領域の劣化スピードを低下させることで、画面全体の劣化度を揃える場合であれば、基準値は劣化の最も遅れた部分領域の累積発光量(累積加算値の最小値)に設定する。
また例えば、劣化の遅れた部分領域の劣化スピードを上げることで画面全体の劣化度を揃える場合であれば、基準値は劣化の最も進んだ部分領域の累積発光量(累積加算値の最大値)に設定する。
また例えば、劣化の進行度を目標とする劣化度に収束させる場合であれば、基準値は累積発光量の最大値と最小値の中間値に設定する。
補正値修正部9は、隣接する部分領域間で補正値が連続的に変化するように、部分領域内の位置に応じて対応する補正値を修正する処理デバイスである。この処理デバイスは、隣接する部分領域間で補正値の差が大きい場合、境界部分の輝度差が知覚され難くする目的で配置される。具体的な処理方法を後述する。
補正処理部11は、各部分領域のピクセルデータを対応する補正値で補正する処理デバイスである。補正処理により、部分領域間における累積発光量の差は縮小する。すなわち、画面全体で発光性能が均一化する。なお、ここでの補正値は、補正値修正部9による修正を加えたものである。
【0013】
(b)構成例2
図2に、焼き付き補正装置21の構成例を示す。焼き付き補正装置21は、構成例1に静止画領域判定部23を追加した構成の補正装置である。静止画領域判定部23は、部分領域化部3と累積加算部5の中間に配置する。
静止画領域判定部23は、各フレームの静止画領域を判定する処理デバイスである。静止画領域判定部23は、現フレームと前フレームを比較することで、静止画領域か動画像領域かを判断する。因みに、現フレームと前フレームとで発光量が同じ部分領域を静止画領域と判断する。一方、現フレームと前フレームとで発光量が異なる部分領域を動画領域と判断する。
静止画領域判定部23は、動画像領域と判断した部分領域の発光量をゼロに変換する。なお、静止画領域判定部23は、静止画領域と判断した部分領域の発光量はそのまま出力する。
静止画領域判定部23は、補正値の決定に静止画領域の情報だけを反映させる目的で使用される。これは、発光体の劣化は静止画領域で進行するためである。
なお、図1と同じ符号を付した処理デバイスには、構成例1と同じものを使用する。
【0014】
(C)補正値修正部の修正処理
ここでは、補正値修正部9で採用する補正値の修正処理を説明する。この修正処理は、部分領域の境界部分の補正効果をぼかす効果がある。
図3に、修正概念を示す。図3は、4つの部分領域31、33、35、37について表したものである。
このうち、図3(A)は、各部分領域と補正値との対応関係を表している。図3(A)の場合、“A”は、左上隅の部分領域31に対応し、“B”は、右上隅の部分領域33に対応し、“D”は、左下隅の部分領域35に対応し、“E”は、右下隅の部分領域37に対応する。
図3(B)に、修正処理の概念を示す。図3(B)では、部分領域31に対応する補正値Aが、部分領域33に対応する補正値Bに比べて大きい場合の修正概念を表している。ここで、補正値の横幅は、部分領域の横幅に対応する。
図3(B)は、部分領域の周辺部に設定した修正範囲39に対する修正処理例を表している。すなわち、修正範囲39の外縁を起点に補正値を直線的に変化させる場合について表している。修正処理の結果、部分領域31の周辺部の補正値はより小さい値A’に修正され、部分領域33の周辺部の補正値はより大きい値B’に修正されている。図3(B)には、この修正方向を矢印で示す。
ところで、修正処理は、隣接する1つの部分領域との間に限らず、隣接する複数の部分領域との間にも発生する。図3(A)は、かかる隣接関係を矢印で示している。
例えば、部分領域31の場合、修正範囲内の位置に応じて次の3つの隣接関係が認められる。すなわち、部分領域33との隣接関係、部分領域35との隣接関係、他の3つの部分領域33、35、37との間の隣接関係が認められる。
【0015】
図4に、これら隣接関係に応じて修正された補正値の割り当て関係を示す。
ここで、修正領域A0、B0、D0、E0は、各部分領域に対応する補正値がそのまま使用される領域部分(修正値がゼロの領域部分)を示す。
また、修正領域Abは、補正値Aに対応する領域部分のうち補正値Bとの連続性を確保する領域部分を示す。
また、修正領域Adは、補正値Aに対応する部分領域のうち補正値Dとの連続性を確保する領域部分を示す。
また、修正領域Abde(図中、○印で示す。)は、補正値Aに対応する部分領域のうち補正値B、D、Eとの連続性を確保する領域部分を示す。
同様に、修正領域Baは、補正値Bに対応する領域部分のうち補正値Aとの連続性を確保する領域部分を示す。
また、修正領域Beは、補正値Bに対応する部分領域のうち補正値Eとの連続性を確保する領域部分を示す。
また、修正領域Bade(図中、△印で示す。)は、補正値Bに対応する部分領域のうち補正値A、D、Eとの連続性を確保する領域部分を示す。
同様に、修正領域Daは、補正値Dに対応する領域部分のうち補正値Aとの連続性を確保する領域部分を示す。
また、修正領域Deは、補正値Dに対応する部分領域のうち補正値Eとの連続性を確保する領域部分を示す。
また、修正領域Dabe(図中、□印で示す。)は、補正値Dに対応する部分領域のうち補正値A、B、Eとの連続性を確保する領域部分を示す。
同様に、修正領域Ebは、補正値Eに対応する領域部分のうち補正値Bとの連続性を確保する領域部分を示す。
また、修正領域Edは、補正値Eに対応する部分領域のうち補正値Dとの連続性を確保する領域部分を示す。
また、修正領域Eabd(図中、×印で示す。)は、補正値Eに対応する部分領域のうち補正値A、B、Dとの連続性を確保する領域部分を示す。
このように、4つの部分領域に対する修正処理では、これら16個の修正領域(修正値がゼロの領域を含む。)に対応する補正値の修正が実現される。
【0016】
図5に、修正後の補正値と、各補正値を与える計算式との関係を示す。なお、図5は、1つの部分領域が5ピクセル×5ピクセルで与えられる場合について表している。また、各部分領域に対応する修正範囲は、境界付近の1ピクセルとする。
図5の場合、修正領域Abに対応する修正補正値をα、修正領域Adに対応する修正補正値をβ、修正領域Abdeに対応する修正補正値をχとする。
また、修正領域Baに対応する修正補正値をδ、修正領域Beに対応する修正補正値をσ、修正領域Badeに対応する修正補正値をφとする。
また、修正領域Daに対応する修正補正値をε、修正領域Deに対応する修正補正値をη、修正領域Dabeに対応する修正補正値をρとする。
また、修正領域Ebに対応する修正補正値をμ、修正領域Edに対応する修正補正値をζ、修正領域Eabdに対応する修正補正値をθとする。
ここで、隣接する2つの部分領域間の修正補正値は、水平方向又は垂直方向への内分比に応じて定義する。例えば、修正補正値α、β、δ、σ、ε、η、μ、ζを、2つの補正値XとYに対する内分比に応じて次式のように定義する。なお、X>Yとする。
X側の修正補正値=(2X+Y)/3
Y側の修正補正値=(X+2Y)/3
一方、隣接する3つの部分領域間の修正補正値は、例えば周囲の修正補正値の平均値として定義する。例えば、修正補正値χ、φ、ρ、θを、同じ部分領域内にある2つの修正補正値の平均値として次式のように定義する。
例えば、χ=(α+β)/2、φ=(δ+σ)/2、ρ=(ε+η)/2、θ=(μ+ζ)/2と定義する。
【0017】
図6に具体例を示す。図6(A)に部分領域毎に算出された補正値の例を、図6(B)にその修正補正値を示す。
例えば、左上隅の部分領域とその右隣の部分領域について補正値“24”と“0”が与えられた場合、補正値が大きい方の修正補正値として“16”(=(2・24+0)/3)を算出する。また、補正値が小さい方の修正補正値として“8”(=(24+2・0)/3)を算出する。
また例えば、左上隅の部分領域とその下隣の部分領域について補正値“24”と“21”が与えられた場合、補正値が大きい方の修正補正値として“23”(=(2・24+21)/3)を算出する。また、補正値が小さい方の修正補正値として“22”(=(24+2・21)/3)を算出する。
また、左上隅の部分領域のうち、他の3つの部分領域と隣接する角部の修正補正値として“19”(=(16+23)/2)を算出する。他の修正補正値も同様に算出する。
以上が、修正処理の考え方である。因みに、以上の説明では、修正補正値を各部分領域の外周に位置する1ピクセルについて設定したが、修正範囲は複数ピクセルでも良い。
修正範囲が広いほど、部分領域間における補正値の変化を滑らかにできる。このため、部分領域の境界部分の輝度差が強調され、知覚される事態を回避できる。
図7に、修正範囲の最大例を示す。図7は、部分領域の中心点以外を修正範囲に設定する例である。
【0018】
(D)実施例
以下、前述した2種類の構成例のうち構成例2の実施例を説明する。具体的に、部分領域間で累積発光量の差分を解消する方法の違いに応じて2種類の実施例を説明する。
(a)実施例1
(1)使用する補正の処理概念
この実施例では、劣化の進んだ部分領域の劣化スピードを低下させることで、画面全体の劣化度を揃える手法を適用する。
すなわち、全ての部分領域の中で累積発光量が最も小さいものを基準値に設定し、基準値に対する累積発光量の乖離度が大きい部分領域ほど、対応する本来のピクセルデータから大きな補正値を減算する場合について説明する。
図8に、当該補正処理のイメージを示す。図8は、自発光型の表示装置を、ある期間に亘って点灯させた場合における、部分領域別の累積発光量の推移例を示す。
図8の横軸は、点灯時間を表す。この例の場合、点灯時間は200フレームである。
図8の縦軸は、部分領域別の累積発光量に対応する。
図8の場合、累積発光量を、各部分領域に対応するピクセルデータの累積加算値として与える。因みに、200フレーム点灯後の部分領域2の累積加算値(カウント値)は2500であり、部分領域1の累積加算値(カウント値)は50である。
【0019】
ここでは、部分領域1が、累積発光量の基準値を与える。すなわち、部分領域1が、累積加算値の最小値を与える部分領域となる。更に換言すると、部分領域1は、劣化が最も少ない部分領域に対応する。
これに対し、部分領域2は、基準値以外の部分領域に対応する。すなわち、部分領域2は、部分領域1よりも累積加算値が多く、劣化がより進んでいる部分領域に対応する。
図8の場合、累積加算値の差は、2450である。この差を、200フレーム期間で解消するものとすると、1フレーム当たりの補正値は12.25 (=2450÷200)となる。
従って、この補正処理では、かかる補正値が部分領域2のピクセルデータからそれぞれ減算される。因みに、部分領域1に対するピクセルデータの補正値はゼロである。
図9に、補正開始後の入出力特性を示す。ここで、部分領域1に対応する入出力特性を細線で示す。また、部分領域2に対応する補正前の入出力特性を破線で示す。また、部分領域2に対応する補正開始後の入出力特性を太線で示す。
図9に示すように、部分領域1に対する入出力特性は補正の開始前後で変化しない。しかし、部分領域2に対する入出力特性は、補正の開始前後で下方にシフトする。
これは、各ピクセルデータの値が補正値だけ小さい値に変換されるためである。例えば、補正開始前のピクセルデータの平均階調値が255の場合、補正開始後の平均階調値は242.75(=255−12.25)となる。
【0020】
そもそも部分領域2は、仮に部分領域1と同じ値のピクセルデータが与えられたとしても、発光素子の劣化のために部分領域1と同じ輝度を発生することはできない。すなわち、破線と細線で示す発光能力の違いが認められる。加えて、補正の開始後は、部分領域2の出力輝度が更に低下する。このことは、コントラスト差が大きくなることを意味する。
しかし、かかる補正処理の結果、部分領域2における劣化の進行速度は、部分領域1よりも確実に遅くなる。このため、補正処理の継続により、部分領域2の劣化度(残存寿命)を部分領域1の劣化度(残存寿命)と同じ又はほぼ同程度に近づけることができる。
図10に、その様子を示す。補正開始時点t1において、部分領域1と部分領域2の寿命差が認められる。
しかし、補正終了時点t2において、部分領域1と部分領域2の寿命差は理想的には解消する。すなわち、補正期間の間に、全ての部分領域の劣化度が、最も劣化の進んでいなかった部分領域1の劣化度と一致する。
このことは、図11に示すように、部分領域1の入出力特性と部分領域2の入出力特性がほぼ一致することを意味する。
従って、ピクセルデータとして同じ階調値が与えられた場合、同じ出力輝度が得られる状態になる。出力輝度が同じであれば、焼き付き現象は知覚されない。これが補正の原理である。
【0021】
因みに、焼き付き現象を1回の補正期間で解消するのであれば、補正期間中における新たな寿命差の発生を除くため、全ての部分領域に同じ階調値のピクセルデータ(例えば、ブルーバック)を与えるのが望ましい。
一方、通常画面を使用して補正を行う場合には、補正期間中に新たな寿命差が発生するのを避け得ないため、補正処理を繰り返し実行する必要がある。なお、補正処理を繰り返し実行することにより、寿命差をほぼ同じ範囲に収束させることができる。焼き付き現象は、寿命差がほぼ同じ(入出力特性が同じ)になることで知覚されなくなる。
以上のように、この補正処理は、画像の表示に実際に用いたピクセルデータの情報を基に部分領域別の補正値を決定するため、累積発光量の差分を正確に測定できる。
また、この補正処理の場合、補正期間を短くすれば、補正処理をリアルタイムで実行することもできる。リアルタイムで焼き付きを補正することにより、長時間に亘って寿命差(入出力特性の差)が発生しないようにできる。
また、補正期間は、自由に設定できる。すなわち、適用する表示装置の画面の大きさやシステム構成に応じて最適化できる。
【0022】
(2)装置構成
図12に、この補正処理に対応した焼き付き補正装置の構成例を示す。
この焼き付き補正装置41は、部分領域化部43と、静止画領域判定回路45と、累積加算回路47と、差分値算出回路49と、補正値算出回路51と、補正値修正回路53と、補正処理回路55とで構成される。
まず、部分領域化部43において、部分領域毎に各フレームの発光量が算出される。
図13に、部分領域化部43の構成例を示す。部分領域化部43は、領域分割回路43Aと部分領域内加算回路43Bで構成される。
【0023】
領域分割回路43Aは、フレームメモリに取り込んだピクセルデータを、図14(A)に示すように部分領域別に分割して出力する機能を実現する。また、部分領域内加算回路43Bは、部分領域別に出力されたピクセルデータを加算して部分領域単位の発光量を生成する機能を実現する。
図14は、表示素子の部分拡大図である。格子で囲まれた個々の領域がピクセルの1つ1つに対応する。この実施例では、3行×3列で与えられる9個のピクセルを1つの部分領域として扱う。
従って、部分領域化部43は、図14(B)に示すように、部分領域内の9個のピクセルデータの加算値を、部分領域に対応する発光量として扱う。
図15に、具体例を示す。例えば図15(A)の場合、左上隅の部分領域に対応する9個のピクセルデータは、“ 1”、“ 226”、“ 36”、“28”、“68”、“ 191”、“87”、“49”、“28”を階調値とする。
この場合、部分領域化部43は、図15(B)に示すように、9個の階調値の加算値 714(= 1+ 226+36+28+68+ 191+87+49+28)を部分領域に対応する発光量として出力する。
【0024】
静止画領域判定回路45は、部分領域単位で静止画部分を認識し、これを累積加算回路47に与える処理回路である。
図16に、静止画領域判定回路45の一例を示す。図16に示す静止画領域判定回路45は、フレームメモリ45A、45Bと、動き判定回路45Cと、データ変換回路45Dとで構成される。フレームメモリ45Aは、現フレームの発光量を保存する記憶装置である。フレームメモリ45Bは、1フレーム前の発光量を保存する記憶装置である。
動き判定回路45Cは、フレームメモリ45Bに保存されている前フレームと、フレームメモリ45Aに保存される現フレームとを比較して静止画領域と動画領域を区分する処理回路である。具体的には、図17(A)に示すように、動き判定回路45Cが、前フレームと現フレームを比較し、対応するサブピクセルの入力サブピクセルデータが同じか否か判断する。
動き判定回路45Cは、前後のフレームで対応する部分領域の発光量が同じか否かを判定する。2つの発光量が同じ場合、動き判定回路45Cは静止画領域と判定する。一方、2つの発光量が異なる場合、動き判定回路45Cは動画領域と判定する。判定結果はデータ変換回路45Dに与えられる。
データ変換回路45Dは、動画領域の発光量をゼロに書き換える一方、静止画領域の発光量をそのまま出力する。
【0025】
累積加算回路47には、データ変換回路45Dから各フレームの発光量が入力される。累積加算回路47は、現フレームの発光量が入力されるたび、前フレームまでの累積加算値に現フレームの発光量を加算し、累積加算値を更新する。かかる演算は、内部メモリと加算器を用いて実現できる。
差分値算出回路49では、簡易的な差分値の算出処理が実行される。図18に、差分値の算出処理例を示す。
差分値算出回路49は、隣接する部分領域どうしで累積発光量を比較し、その差分値の最大値を算出する。例えば、図18(A)の場合、左上隅の部分領域と周囲の3つの部分領域との差分値は、“3120”、“420”、“2122”である。
従って、差分値算出回路49は、左上隅の部分領域に、図18(B)に示すように、その最大値である“3120”を対応付ける。なお、周囲のうちで累積発光量が最も小さい部分領域には、差分値としてゼロを設定する。
もっとも、より正確な値を求める上では、全ての部分領域を対象として累積発光量の最小値を求め、各部分領域の累積発光量との差分を算出すれば良い。
【0026】
補正値算出回路51は、補正期間内に与える補正値を算出する処理回路である。補正値算出回路51は、各部分領域に対応する差分値を補正期間のフレーム数で割り算し、その値を各部分領域に対する補正値とする。
図19に、補正期間のフレーム数を131とした場合の1フレーム当たりの補正値を示す。なお、図19(A)は、差分値算出回路49で算出された差分値の一覧であり、図19(B)は、補正値算出回路51で算出された補正値の一覧である。図19(B)では、除算演算の結果を四捨五入して整数値で表している。
補正値修正回路53は、部分領域毎に算出された補正値を前述した手法により修正する処理デバイスである。補正値修正回路53は、部分領域毎に算出された補正値が与えられると、部分領域間の補正値の大小関係を確認する。補正値修正回路53は、確認された大小関係に応じた内分比に従い、各修正領域内のピクセルに対応付ける修正補正値を算出する。
補正処理回路55は、現フレームのピクセルデータから対応する部分領域の補正値を減算する処理回路である。この減算処理は、補正期間(図19の場合、131フレーム)について実行される。
なお、補正期間の終了後は、新たな補正期間が開始されるまでの間、ピクセルデータがそのまま出力される。
以上のように、焼き付き補正装置に必要な演算自体は非常に簡単である。従って、従来装置のような複雑な演算やメモリを必要としない。また、従来装置のように高性能のCPU(central processing unit )や大規模ロジック回路も必要としない。
因みに、回路構成が簡単に済む結果、この焼き付き補正装置を既存の基板上に実装する場合にも、タイミングジェネレータ等の半導体集積回路の一部分に実装することができる。すなわち、特別な周辺回路を必要とすることなく実装できる。
【0027】
(b)実施例2
(1)使用する補正の処理概念
この実施例では、劣化の遅れた部分領域の劣化スピードを上げることで、画面全体の劣化度を揃える手法を適用する。
すなわち、全ての部分領域の中で累積発光量が最も大きいものを基準値に設定し、基準値に対する累積発光量の乖離度が大きい部分領域ほど、対応する本来のピクセルデータに大きな補正値を加算する場合について説明する。
図20に、当該補正処理のイメージを示す。図20は、自発光型の表示装置を、ある期間に亘って点灯させた場合における、部分領域別の累積発光量の推移例を示す。
図20の横軸は、点灯時間を表す。この例の場合、点灯時間は200フレームである。
図20の縦軸は、部分領域別の累積発光量に対応する。
図20の場合、累積発光量を、各部分領域に対応するピクセルデータの累積加算値として与える。因みに、200フレーム点灯後の部分領域2の累積加算値(カウント値)は2500であり、部分領域1の累積加算値(カウント値)は50である。
【0028】
ここでは、部分領域2が、累積発光量の基準値を与える。すなわち、部分領域2が、累積加算値の最大値を与える部分領域となる。更に換言すると、部分領域2は、劣化が最も進んだ部分領域に対応する。
これに対し、部分領域1は、基準値以外の部分領域に対応する。すなわち、部分領域1は、部分領域2よりも累積加算値が小さく、劣化が遅れている部分領域に対応する。
図20の場合、累積加算値の差は、2450である。この差を、200フレーム期間で解消するものとすると、1フレーム当たりの補正値は12.25 (=2450÷200)となる。
従って、この補正処理では、かかる補正値が部分領域1のピクセルデータにそれぞれ加算される。因みに、部分領域2に対するピクセルデータの補正値はゼロである。
図21に、補正開始後の入出力特性を示す。ここで、部分領域2に対応する入出力特性を細線で示す。また、部分領域1に対応する補正前の入出力特性を破線で示す。また、部分領域1に対応する補正開始後の入出力特性を太線で示す。
図21に示すように、部分領域2に対する入出力特性は補正の開始前後で変化しない。しかし、部分領域1に対する入出力特性は、補正の開始前後で上方にシフトする。
これは、各ピクセルデータの値が補正値だけ大きい値に変換されるためである。例えば、補正開始前のピクセルデータの平均階調値が255の場合、補正開始後の平均階調値は267.25(=255+12.25)となる。
【0029】
そもそも部分領域1は、仮に部分領域2と同じ値のピクセルデータが与えられたとしても、発光素子の劣化が少ないため部分領域2よりも高輝度で発光する。
すなわち、破線と細線で示す発光能力の違いが認められる。加えて、補正の開始後は、部分領域1の出力輝度が更に上げられる。このことは、コントラスト差が大きくなることを意味する。
しかし、かかる補正処理の結果、部分領域1における劣化の進行速度は、部分領域2よりも確実に早くなる。
このため、補正処理の継続により、部分領域1の劣化度(残存寿命)を部分領域2の劣化度(残存寿命)と同じ又はほぼ同程度に近づけることができる。
図22に、その様子を示す。補正開始時点t1において、部分領域1と部分領域2の寿命差が認められる。
しかし、補正終了時点t2において、部分領域1と部分領域2の寿命差は理想的には解消する。すなわち、補正期間の間に、全ての部分領域の劣化度が、最も劣化が進んでいた部分領域2の劣化度と一致する。
このことは、図23に示すように、部分領域1の入出力特性と部分領域2の入出力特性がほぼ一致することを意味する。
従って、ピクセルデータとして同じ階調値が与えられた場合、同じ出力輝度が得られる状態になる。出力輝度が同じであれば、焼き付き現象は知覚されない。これが補正の原理である。
【0030】
因みに、焼き付き現象を1回の補正期間で解消するのであれば、補正期間中における新たな寿命差の発生を除くため、全ての部分領域に同じ階調値のピクセルデータ(例えば、ブルーバック)を与えるのが望ましい。
一方、通常画面を使用して補正を行う場合には、補正期間中に新たな寿命差が発生するのを避け得ないため、補正処理を繰り返し実行する必要がある。なお、補正処理を繰り返し実行することにより、寿命差をほぼ同じ範囲に収束させることができる。焼き付き現象は、寿命差がほぼ同じ(入出力特性が同じ)になることで知覚されなくなる。
以上のように、この補正処理は、画像の表示に実際に用いたピクセルデータの情報を基に部分領域別の補正値を決定するため、累積発光量の差分を正確に測定できる。
また、この補正処理の場合、補正期間を短くすれば、補正処理をリアルタイムで実行することもできる。リアルタイムで焼き付きを補正することにより、長時間に亘って寿命差(入出力特性の差)が発生しないようにできる。
また、補正期間は、自由に設定できる。すなわち、適用する表示装置の画面の大きさやシステム構成に応じて最適化できる。
(2)装置構成
図24に、この補正処理に対応した焼き付き補正装置の構成例を示す。
この焼き付き補正装置61の基本的な構成は、実施例1(図12)と同じである。違いは、差分値算出回路49において基準値を累積加算値の最大値とする点と、補正処理回路63として現フレームのピクセルデータに対応する部分領域の補正値を加算する処理回路を用いる点のみである。その他は、実施例1と同じであるので説明は省略する。
【0031】
(E)システム例
続いて、前述した焼き付き補正装置や焼き付き補正プログラムの実装例を説明する。
ここでは、自発光型の表示装置と、画像信号を発生する画像処理装置とが別筐体である場合について説明する。
勿論、自発光型の表示装置と画像処理装置を1つの筐体内に搭載する電子機器にも実装できる。
(a)表示装置搭載型
図25に、焼き付き補正装置71を表示装置73に搭載するシステム例を示す。自発光型の表示装置73と画像処理装置75は、有線通信路又は無線通信路経由で接続する。その接続形態は直接接続でも、LAN接続でも良い。
図26に、自発光型の表示装置73の機能ブロック構成を示す。この種の表示装置73には、例えばCRT(cathode lay tube)、PDP(plasma display panel)、EL(electroluminescence display )、FED(field
emission display)がある。
表示装置73は、これら各種の表示方式に対応した表示デバイス73Aと、その駆動回路73Bと、焼き付き補正装置71を有してなる。
駆動回路73Bは、駆動対象である表示デバイス73Aに応じたものが用いられる。また、画像処理装置75は周知の回路構成で良い。
このシステム例の場合、画像処理装置75が、接続先の表示装置に応じた画像信号を出力する。画像信号はアナログ形式でも、デジタル形式でも良い。
表示装置73は、画像処理装置75から画像信号を入力すると、各サブピクセルに対応する入力サブピクセルデータについて、前述した焼き付き補正処理を実行する。
この補正処理後のピクセルデータが駆動回路73Bに与えられ、表示デバイス73Aが駆動される。かくして、画像が表示される。
【0032】
(b)画像処理装置搭載型
図27に、焼き付き補正装置81を画像処理装置83に搭載するシステム例を示す。この場合も、画像処理装置81と自発光型の表示装置85の接続は、有線接続でも無線接続でも良い。勿論、その接続形態は直接接続でも、LAN接続でも良い。
図28に、自発光型の表示装置85に接続される画像処理装置83の機能ブロック構成を示す。通常、画像処理装置83は、非自発光型の表示装置(例えば、液晶ディスプレイ装置)にも接続可能である。
従って、図28の機能ブロック構成は、画像信号の出力装置として自発光型の表示装置85が接続されている場合の構成である。
この画像処理装置83は、画像処理回路83Aと、焼き付き補正装置81を有してなる。なお、図28においては、周知の回路構成を省略して示している。画像処理回路83Aは、搭載される電子機器(画像処理装置83)の形態に応じた画像処理を実行する。例えば、画像の撮像、再生、編集その他の処理を実行する。
このシステム例の場合、画像処理装置83の筐体内で焼き付き補正処理が実行される。すなわち、画像処理回路83Aから出力された画像信号は、出力インターフェースとの間に配置された焼き付き補正回路81に入力される。
焼き付き補正回路81は、当該画像信号の各ピクセルデータについて、前述した焼き付き補正処理を実行する。このシステム例の場合、表示装置85は、入力された画像信号を周知の信号処理を経て表示デバイスに表示する。
この種の画像処理装置83には、例えば、ビデオカメラ、デジタルカメラその他の撮像装置(カメラユニットだけでなく、記録装置と一体に構成されているものを含む。)、コンピュータ(サーバーを含む。)、各種の情報処理端末(携帯型のコンピュータ、携帯電話機、携帯型のゲーム機、電子手帳等)、各種画像の再生装置(ホームサーバーを含む。)、画像編集装置、ゲーム機の適用が可能である。
【0033】
(F)実施形態の効果
以上の実施形態のように、各部分領域の累積発光量を静止画信号について算出したことにより、部分的な輝度劣化の原因となる静止画信号を積極的に補正できる。すなわち、かなり正確に輝度劣化を補正できる。
また、ピクセルデータを部分領域単位で補正することにより、フレームメモリを大幅に削減できる。
また、複数の部分領域の境界部分に修正範囲に設定し、その範囲内で補正値が連続的に変化するように各部分領域に割り当てられた補正値を部分的に修正することにより、補正時のブロックノイズや補正後のブロックノイズを軽減することができる。
また、補正期間を短くして、リアルタイムで焼き付きを補正することにより、長期間補正しても、ずれのない補正を行うことができる。
また、補正期間を自由に変えることにより、システムの規模を常に最適化できる。これにより、補正期間を変えても、焼き付き補正に支障が出ないようにできる。
また、従来技術のように、劣化したピクセルの輝度を上げる(寿命の劣化を促進させる)焼き付き補正を行わないので、発光体の寿命を縮めずにする。
また、どのような用途に使用しても、固定表示部分の輝度劣化を目立たなくできる。
また、フレームメモリを2枚用意するだけで、部分領域毎に輝度劣化のばらつきを抑制できるため実用的である。
【0034】
(G)他の実施形態
(a)前述の実施形態では、部分領域の補正方法として、劣化度の最も進んだもの又は劣化度の最も遅れたものを基準として、部分領域のピクセルデータを補正する場合について説明した。
しかし、全ての部分領域の累積発光量が等しくなるように補正する方法は、これらに限らない。例えば、累積発光量の最大値と最小値の中間値を基準値に定め、基準値よりも劣化の進んだ部分領域に対しては、劣化スピードが低下するように補正し、基準値よりも劣化の遅れた部分領域に対しては劣化スピードが上がるように補正しても良い。
このようにしても、焼き付き現象を原理的に解消することができる。
(b)前述の実施形態では、焼き付き補正装置をハードウェア的に実現する場合について説明したが、コンピュータプログラムとして実現する場合にも適用し得る。この場合、焼き付き補正装置の各機能をプログラムにより実現すれば良い。
(c)前述の実施形態では、修正補正値を逐次算出する場合について説明したが、補正値の差分と修正範囲に応じた修正値を記憶テーブルを用いる手法を採用しても良い。この場合、修正範囲内の修正補正値は、対応する部分領域の補正値と記憶テーブルから読み出した修正値との加減算により求めることができる。
(d)前述の実施形態には、発明の趣旨の範囲内で様々な変形例が考えられる。また、本明細書の記載に基づいて創作される各種の変形例及び応用例も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】焼き付き補正装置の1つの構成例を示す図である。
【図2】焼き付き補正装置の1つの構成例を示す図である。
【図3】修正処理の概念を示す図である。
【図4】修正領域の位置関係を示す図である。
【図5】修正補正値と修正領域との対応関係を示す図である。
【図6】修正処理の具体例を示す図である。
【図7】修正処理の変形例を示す図である。
【図8】部分領域における累積発光量の遷移を示す図である。
【図9】補正前後での入出力特性の変化を示す図である。
【図10】補正による発光体の寿命の遷移関係を示す図である。
【図11】補正終了後の入出力特性を示す図である。
【図12】焼き付き補正装置の実施例を示す図である。
【図13】部分領域化部の構成例を示す図である。
【図14】部分領域別の発光量の生成原理を示す図である。
【図15】部分領域別の発光量の算出例を示す図である。
【図16】静止領域判定回路の構成例を示す図である。
【図17】静止領域判定回路の処理例を示す図である。
【図18】差分値算出回路の処理例を示す図である。
【図19】補正値算出回路の処理例を示す図である。
【図20】部分領域における累積発光量の遷移を示す図である。
【図21】補正前後での入出力特性の変化を示す図である。
【図22】補正による発光体の寿命の遷移関係を示す図である。
【図23】補正終了後の入出力特性を示す図である。
【図24】焼き付き補正装置の実施例を示す図である。
【図25】表示装置搭載型のシステム例を示す図である。
【図26】自発光型の表示装置の機能ブロック構成を示す図である。
【図27】画像処理装置搭載型のシステム例を示す図である。。
【図28】画像処理装置の機能ブロック構成を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
3 部分領域化部
5 累積加算部
7 補正値決定部
9 補正値修正部
11 補正処理部
23 静止画領域判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を複数の部分領域に分割する領域分割部と、
前記部分領域を構成する全ピクセルの発光量をある期間について累積し、部分領域別の累積発光量とする累積処理部と、
各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する補正値決定部と、
隣接する部分領域間で補正値が連続的に変化するように、部分領域内の位置に応じて対応する前記補正値を修正する補正値修正部と、
補正期間中、前記補正値修正部から与えられる補正値により対応する部分領域内の画像データを補正し、部分領域間の累積発光量のバラツキを解消する補正処理部と
を有することを特徴とする自発光型の表示装置の焼き付き補正装置。
【請求項2】
請求項1に記載の焼き付き補正装置は、
各部分領域が静止画領域と動画領域のいずれに対応するかフレーム単位で判定する動き判定部と、
動画領域と判定された部分領域の発光量をゼロに変換する一方、静止画領域と判定された部分領域の発光量をそのままとするデータ変換部と
を更に有することを特徴とする焼き付き補正装置。
【請求項3】
請求項1に記載の焼き付き補正装置は、
色別に各部分領域の補正値を決定し、画像データを補正する
ことを特徴とする焼き付き補正装置。
【請求項4】
請求項1に記載の焼き付き補正装置において、
前記補正値修正部は、部分領域の境界付近に修正範囲を設定し、当該修正範囲に位置する各ピクセルについてのみ、各ピクセルに対応する補正値を修正する
ことを特徴とする焼き付き補正装置。
【請求項5】
画像を複数の部分領域に分割する領域分割部と、
前記部分領域を構成する全ピクセルの発光量をある期間について累積し、部分領域別の累積発光量とする累積処理部と、
各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する補正値決定部と、
隣接する部分領域間で補正値が連続的に変化するように、部分領域内の位置に応じて対応する前記補正値を修正する補正値修正部と、
補正期間中、前記補正値修正部から与えられる補正値により対応する部分領域内の画像データを補正し、部分領域間の累積発光量のバラツキを解消する補正処理部と、
前記補正処理部で補正された画像データを入力し、対応する画像を画面上に表示する表示デバイスと
を有することを特徴とする自発光型の表示装置。
【請求項6】
画像を複数の部分領域に分割する領域分割部と、
前記部分領域を構成する全ピクセルの発光量をある期間について累積し、部分領域別の累積発光量とする累積処理部と、
各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する補正値決定部と、
隣接する部分領域間で補正値が連続的に変化するように、部分領域内の位置に応じて対応する前記補正値を修正する補正値修正部と、
補正期間中、前記補正値修正部から与えられる補正値により対応する部分領域内の画像データを補正し、部分領域間の累積発光量のバラツキを解消する補正処理部と、
前記補正処理部で補正された画像データを、自発光型の表示デバイスに出力する出力部と
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
自発光型の表示デバイスを駆動する画像データを処理対象とするコンピュータに、
画像を複数の部分領域に分割する処理と、
前記部分領域を構成する全ピクセルの発光量をある期間について累積し、部分領域別の累積発光量とする処理と、
各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する処理と、
隣接する部分領域間で補正値が連続的に変化するように、部分領域内の位置に応じて対応する前記補正値を修正する処理と、
補正期間中、前記補正値修正部から与えられる補正値により対応する部分領域内の画像データを補正し、部分領域間の累積発光量のバラツキを解消する処理と
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2006−18130(P2006−18130A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197589(P2004−197589)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】