説明

焼入れ可能な鋼のプラズマ・タップホール溶接

材料厚(3)を有する焼入れ可能な鋼(2)に二次加熱なしで溶接継手(1)を作るための方法であって、少なくとも次の工程
a)溶接電極(4)の溶接線(5)に対する位置決め
b)電圧の印加
c)プラズマガス(6)の供給
d)アーク(7)の形成
e)溶接線(5)近傍の鋼(2)の全材料厚(3)にわたる融解
を含む方法が開示される。この方法は、乗り物におけるトルク伝達のための構成要素を結合する際に有利に使用される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あらかじめ与えられた材料厚を持った焼入れ可能な鋼に二次加熱なしで溶接継手を作るための方法に関する。また特に、乗り物のトルク伝達のための焼入れ可能な鋼からなる構成要素の溶接継手形成による継ぎ合わせ技術的に結合するための方法も開示される。また本発明の対象は、結合及び焼入れ可能な鋼からなるトルク伝達のための構成要素の連結を含む乗り物である。本発明の好ましい使用領域は、自動車分野における駆動部構成要素の溶接継手である。
【0002】
少なくとも0.25%の炭素含有量のいわゆる炭素鋼や0.2%より多い炭素含有量の低合金鋼は、通常条件付きでしか溶接できない(以下一般的に「(直接、特に表面硬化によってのみでない)焼入れ可能な鋼」ともいう)。その原因は、炭素によって生じ、異なる合金元素によって強化される溶接継手及び熱干渉区域における溶接硬化にあり、この溶接硬化が割れに導く。溶接硬化及び続く割れ形成は、ごく僅かの変形性の、自己焼戻しされないか又は僅か焼戻されるマルテンサイト又はベイナイトの形成によって実現するものであり、それらは冷却中に生じる高い応力を可塑的に緩和することはできない。冷却速度が大きく、炭素や合金元素の含有量が上昇すると、これらの溶接硬化及び焼入硬化層深さを促進する。
【0003】
これまで、通常の溶接法ないしガス溶接法はその比較的低い出力密度に基づいて比較的小さい加熱速度、大面積の熱導入及びかさばった溶接継手に導くという見解が支持された。それ故、レーザ又は電子線溶接のようなビーム溶接法の使用は比較的高い出力密度のために焼入れ可能な鋼の継ぎ合わせ技術的結合の形成のためのみに利用し得るところから始められた。そのようなビーム溶接法は例えば欧州特許第0925140 B1号明細書から明らかである。
【0004】
しかしながら、焼入れ可能な鋼のビーム溶接に関するすべての知られた試みは、構成要素ないし部材を400℃及びそれ以上の範囲で徹底的な予熱が行われることが共通している。こうして、急速冷却に起因する焼入れ可能な鋼の一種の自己焼入れ及び従って割れ形成に至ることは防がれる。しかしながらこの予熱を伴う方法は技術的にはかなり費用を要し、例えば部材の誘導加熱のための装置が加工ステーションに組み込まれ、溶接プロセスが新たに調整されなければならない。
【0005】
まさに自動車組み立てにおける焼入れ可能な鋼からなる駆動部構成要素と関連して、質量に関連して価値の高い、使用し得る、そして強靭な溶接継手が得られるような溶接入力エネルギーを使用し得る溶接法を準備するという問題がくりかえし生じる。それは特に、軸又は類似の構成要素のトルクに強い継ぎ合わせが実現されるべきであり、その際この継ぎ合わせプロセスが流れ作業生産に組み入れるのに適しているべきであることを意味する。さらに、溶接法はできるだけコストが安く、操作に関して複雑でないものであるべきである。さらに、部材の色々な幾何学的形状ないし溶接継手の異なる形態に関してフレキシブルであると有利である。本発明の方法によって作られた結合は、特に自動車組み立てにおける要求に適合するものである。
【0006】
本発明の課題は、従来技術に関して記述された問題を少なくとも部分的に軽減すること、ないし前述の目標設定を少なくとも部分的に実現することにある。特に、焼入れ可能な鋼からなる構成要素の割れのない継ぎ合わせを保証するガス溶接法が示されるべきである。とりわけ、そのガス溶接法は乗り物の駆動部の構成要素の、乗り物組み立てにおける要求を満たす結合を提供すべきものである。
【0007】
この課題は、請求項1ないし請求項2の特徴を持った溶接継手を作るための方法によって解決される。方法の好ましい実施形態及びその方法によって供給されるトルク伝達及び乗り物のための少なくとも2つの構成要素の結合は従属請求項に記載されている。各請求項に記載された特徴は、任意の、技術的に意味を持つような方法で互いに組み合わせ得るものである。さらに、各請求項に記載された特徴は明細書に詳細に説明されている。
【0008】
材料厚を有する焼入れ可能な鋼に二次加熱なしで溶接継手を作るための本発明による方法は少なくとも次の工程を含む。
a)溶接電極の溶接線に対する位置決め
b)電圧の印加
c)プラズマガスの供給
d)アークの形成
e)溶接線近傍の鋼の全材料厚にわたる融解
【0009】
「溶接継手」とは、焼入れ可能な鋼の再凝固範囲をいい、この範囲はアークによる温度作用の結果で前もって融解状態にもたらされたものである。溶接継手は、特に溶接継手を作るために補助材料が使用される場合には別の構成要素を有することができる。溶接継手はほぼ所望の溶接線に導かれる。「溶接線」とは言いかえれば溶接継手の最終的な延び方向を意味する。
【0010】
工程a)に従って溶接電極は溶接線に関し位置決めないし調整される。その際溶接電極が部材に向けて設定されるか部材が電極に向けて設定されるかは重要なことではない。溶接電極としてはタングステン電極が有利である。この溶接電極は点火装置ないし溶接エネルギー源と結ばれている。工程b)に応じて電圧が印加される。原理的には、溶接トーチそのものの部分間に電圧を形成することが可能であり、その結果いわゆる「伝達しない」アークが形成される。しかしながらこの場合には「伝達する」アークの形成が有利であり、その際溶接電極と焼入れ可能な鋼からなる部材との間に電圧が加えられる。所望の溶接電圧を供給するため変圧器、整流器セット、パルス発生器等が使用され得る。工程c)に従いプラズマガスが供給される。プラズマガスの供給は好ましくは同様に溶接トーチによって行われ、その際プラズマガスが中心にかつ溶接電極のすぐ近くに注がれるのが有利である。そしてアークが形成される(工程d))。プラズマガスとアークとが相互作用する結果、焼入れ可能な鋼からなる部材への集中した高性能の熱導入が保証される。工程e)に従いこの熱導入の結果、焼入れ可能な鋼は溶接線近傍で全材料厚にわたって融解される。この際特にいわゆる「タップホール効果」が有効に利用される。その際プラズマビームは材料をその全深さにおいて溶かし、その結果溶接穴ないしタップホールが形成される。溶接の際には、プラズマビームは溶接穴により継目縁部に沿って移動する。プラズマビームの後方で、融解した金属は溶接穴における溶融池の表面張力及び蒸気圧によって再び穴に流れ込み溶接継手を形成する。
【0011】
ここで提案されたプラズマ・タップホール溶接においては、材料の自己クエンチングないし望ましくない溶接硬化が行われないようなエネルギー導入が行われる。これは、一方では二次加熱なしに集中した高エネルギーの熱導入が実現し、同時に大面積の熱導入の結果の大きな部材ひずみを防止する電気―ガス放電による溶接法(プラズマ溶接)を初めて提案するものである。集中的な高性能の熱導入にもかかわらず、例えばレーザ又は電子ビーム溶接の際に生じるような冷却勾配が臨界的な範囲に来ないように、熱分布及び熱接触を調節することができる。それによって溶接過程前、溶接過程中、及び溶接過程後の二次加熱を省略することができ、その際割れのない溶接継手が得られる。
【0012】
溶接継手の「割れのない」形に仕上げられることに関して、この結合はいわゆるマクロ状割れ、即ち肉眼で認め得る大きさを持った割れを有しないという注釈を加えることができる。より小さい、いわゆるミクロ状割れ(この割れの長さは非常に多く材料の粒子径の範囲内にのみあり、顕微鏡的(金属組織学的)方法によってのみ認め得る)はその際許容可能な範囲にのみ生じる。この意味での「割れ」は特に、主として二次元の広がりを有する限られた材料分離であり、溶接物内、熱干渉区域内、及び原材料内又はそのいずれか一方内に、特に内部応力に基づいて生じ得る。「割れ」と区別されるものに、例えば空隙、ガス包有、細孔、空洞、固体包有や溶接継手の他の欠陥がある。当然溶接継手の割れとは異なる欠陥ができるだけ避けられるべき場合にも、ここでは明らかに(マクロ)割れのないことが目標とされる。何故なら、割れは最も恐れられ最も広く分布する種類の欠陥であり、それは事後になってからの修理を不可避とするからである。このことは多年にわたって、例えば使用時かなりの負荷を受ける高炭素含有鋼が二次加熱によってのみ溶接された理由でもあった。
【0013】
本発明の他の観点に従えば、乗り物のトルク伝達のための焼入れ可能で材料厚を有する構成要素を二次加熱なしに溶接継手の形成により、継ぎ合わせ技術的に結合するための方法が提案され、少なくとも次の工程を含む。
a)溶接電極の溶接線に対する位置決め
b)電圧の印加
c)プラズマガスの供給
d)アークの形成
e)溶接線近傍の鋼の全材料厚にわたる融解
【0014】
ここで提案された方法は、上述の溶接法の特殊適用に関する。これと関連して、この溶接法が乗り物のトルク伝達のための構成要素の継ぎ合わせ技術的結合のために使用される。使用中の構成要素の高い負荷に基づいて、ここでは溶接継手の品質、形状精度等に関する特別のあらかじめ与えられた基準値が保証されなければならない。その際特に溶接継手はいわゆるI形継手として実現され、その継手においては継ぎ合わせるべき部材ないし構成要素は鈍く互いに突き合される。溶接継手そのものは、放射形継手や軸形継手として仕上げることができる。とりわけ放射環状継手は根部保護なしに溶接される。溶接継手は割れ及び極端な縁部ぎざぎざがなく、継ぎ合わせるべき部分の元の表面をそれぞれ突き抜ける溶接継手の部分範囲が意味される継手及び根部の突出に関する通常の観念に適合する。溶接継手の根部はその際溶接継手の側面上に形成され、その側面は構成要素の溶接電極と反対側にある。とりわけその際角度欠陥(例えば凝固の際の部分的な時間のずれた収縮による)は大量生産の枠内においても0.5°より小さい範囲に保持される。同時に、継ぎ合わせプロセス中構成要素が互いにずれることが簡単に防がれ、その結果ずれは0.2mmより小さく保証される。この溶接法は、乗り物の駆動部の溶接される構成要素の単価を低く保持することを可能にする。何故なら、長い溶接準備や部材の後加工を省略し得るからである。
【0015】
本方法の発展させたものに従えば、焼入れ可能な鋼は2.0mm〜10.0mmの範囲の材料厚を有する。2.0mm〜8.0mの範囲が好ましく、また4.0mm〜6.0mmの範囲が特に好ましい。これらの材料厚の焼入れ可能な鋼においては、「タップホール効果」がプロセス的に信頼性をもって実現され、その結果所望のエネルギー導入と溶接継手の所望の形成が確保される。まさにここで挙げられた材料厚においては、この溶接法により取り入れられた単位長当たりの入力エネルギーは234J/mm〜3360J/mm[Joule/mm]の範囲にあることが提案される。従って取り入れられる単位長当たりの入力エネルギーは例えばCO2レーザのようなビーム溶接の場合より明らかに高い。単位長あたりに入力エネルギーはその際好ましくはプラズマ・タップホール溶接の場合、同じ溶接速度においてCO2レーザの場合より少なくとも係数4だけ大きい範囲にある。
【0016】
さらに、溶接継手は一層に形成されることが提案される。その際、焼入れ可能な継ぎ合わせるべき構成要素はあらかじめ局部的にも固定されない、特に仮付けされないことが好ましい。一層の溶接の実施は、結果として溶接継手の極めて一様な形成を伴い、その結果例えば多層溶接の際に生じる継手の非対称性の幾何学的形状やそれから生じる角度ひずみを防止することができる。一層の貫通溶接は、その継手深さ、継手幅及び継手形状に基づいて過度的な引張り応力が、材料の十分な延性と関連して割れに至らない程度に生ずる。、その継手深さ、継手幅及び継手形状及びそれにより局部的に限定される熱導入に基づき過度的な引張り応力が周辺に生ずる一層の貫通溶接を作ることは、極めて僅かな部材ひずみを生じるにすぎないという利点を有する。
【0017】
本方法の発展に相応して、溶接継手は突合せ継手又はすみ肉溶接として形成される。突合せ継手として形成されることに関して、この継手は特にトルク伝達のための構成要素に使用されることが指摘し得る。提案された溶接法によって、焼入れ可能な鋼は大きな技術的コストや特に二次加熱なしに溶接し得るという事実に基づいて、例えばすみ肉溶接のような近づくのが困難な継手の幾何学的形状に関して特別の利点を有する。さらに、構成要素の均一でない材料分布における溶接に際しては、適切な二次加熱を実行することは困難である。この困難は本発明の溶接法においては回避される。
【0018】
プラズマビームが溶接過程中溶接方向に少なくとも0.2m/min[メートル/分]の速度で動かされるのが特に好ましい。溶接速度はそのうえさらに0.5m/minより上にあるのが好ましい。その際特に、溶接速度は5.0m/minの値を越えないのが好ましい。
【0019】
特にここで提案された溶接速度の場合、溶接電流は少なくとも170A[アンペア]の大きさである。溶接電流は400Aの限界を上回らないのが好ましい。特に、プラズマビームが溶接過程中溶接方向に、溶接継手の強度が接続構成要素を越えるように上限を調整した単位長当たりの溶接入力エネルギーが作用する方法が好ましい。下限は好ましくは、高々650HVの溶接継手の硬さによって制限される溶接継手の十分な延性が保障され得るように調整される。
【0020】
溶接継手が放射環状溶接によって作られるように方法を発展させると特に好ましい。このことは特に乗り物のトルク伝達のための焼入れ可能な鋼からなる構成要素の継ぎ合わせを顧慮すると重要である。それは特に中空プロフィールにおいて周辺にわたって閉じられた溶接継手が作られる溶接法の変形をいう。その際アークは放射方向に部材の周囲にぐるりと相対的に動かされる。そのような方法は、例えば中空軸又は類似の部材の前面結合の際に推奨される。
【0021】
本発明に従って、トルク伝達のための焼入れ可能な鋼からなる少なくとも2つの構成要素の結合も提案され、その際この結合は上述の本発明による方法により作られた少なくとも1つの溶接継手を含む。この2つの構成要素の結合は、例えば自動車の駆動系におけるトルク伝達に使用することができる。それによって、焼入れプロセスで支配する、特に静的な負荷に耐え得るために、構成要素を強化して(従って継ぎ合わせ状態で)焼入れプロセスにも導き得る可能性が得られる。高性能の溶接継手を同時に得る際に二次加熱、補助材料その他これに類する材料を不要とすることによって、大量生産においても簡単にかつ安いコストでまさにこのような結合を製造し得る。
【0022】
本発明に従い説明された方法、特にプラズマ・タップホール溶接により作られた結合は、例えば疑問の余地なく以下のようであることが認められる。即ち溶接継手は一層であり、それに従って溶接継手の幅に対する深さの通例縦横比(VA)が約1.0:1.5〜約1.0:2.0で(特にVA=1.0:1.2〜1.0:1.8の範囲で)実施される。溶接継手中心に関する熱干渉区域の幅は、ビーム溶接のそれより大きい(レーザによればVAは約2.5:1.0の大きさである)が、しかし電極手溶接又はガス溶接のそれより明らかに小さい(MIG(ミグ)溶接法の場合VAは約1.0:3.0の大きさである)。
【0023】
そのような結合は、構成要素の少なくとも1つが2.0mm〜10.0mmの範囲の壁厚を持った中空軸である場合には特に有利であることが証明された。極めて特に、中空軸は2.0mm〜8.0mmの範囲、特に4.0mm〜6.0mmの範囲の壁厚を有するのが好ましい。この中空軸は自動車の長手軸又は側軸が特に関係する。
【0024】
さらに、構成要素の結合及び隣接する部分範囲が割れなしに仕上げられることが提案される。「割れなし」というここで適用する概念内包に関しては、これについての前記の注釈が参照される。それによって結合の特に高い動的な長時間の交番荷重応力及び静的ねじれ負荷が可能となる。そうしてそのような結合は例えば+/−1100Nm及び1650Nm[ニュートンメータ]のトルクにおいて300000振動サイクルの動的で長時間の交番荷重応力に耐える。その際静的ねじれ負荷に関して破壊トルクは少なくとも3200Nmの大きさである。
【0025】
結合の有利な構成に従えば、この結合は250HV〜650HVの範囲の延性を有する。それは結合ないし溶接継手がビッカース硬さ試験法により上述の結果となることを意味する。この関係で有利にも、溶接継手及び構成要素の上方の熱干渉区域における延性は基底状態にある。その際延性は約500HVの範囲にあるのが好ましい。
【0026】
結合が溶接継手及び熱干渉区域の範囲においてたかだか30%のマルテンサイトの構造部分を有することも可能である。このことは特にそれぞれ溶接すべき焼入れ可能な鋼に対する適当な単位長当たりの入力エネルギーの尺度として考慮に入れることができる。マルテンサイトの構造部分のここで提案された限界は、(マクロ)割れが生じないほどに継ぎ合わせ内の内部応力が僅かであることを保障することができる。
【0027】
既に何度も示唆されたように、本方法ないし結合の有利な使用は自動車分野にある。この理由から、駆動系を有するエンジンを含む乗り物も提案され、その際駆動系はトルク伝達のための構成要素を有し、少なくとも2つの構成要素が本発明に従う方法により溶接されたものであり、又は乗り物が本発明に従う結合を有する。
【0028】
適当な継ぎ合わせ技術的結合の例:
【表1】

【0029】
本発明及び技術的周辺分野を以下に図面について詳細に説明する。図は本発明の特に好ましい実施例であるが、本発明はそれに限定されるものではないことが指摘されるべきである。図における表現は概略的であり、通常事例においては寸法を具体的に説明するには適するものではない。
【0030】
図における表現は概略的であり、実際の大きさの割合を具体的に説明するためには限定的にのみ引用し得るものである。
【0031】
図1は、本発明に従う方法を実施するための溶接トーチ33を概略的に断面で示す。溶接トーチ33は、溶接トーチに対し中心に配置された溶接電極4で構成される。タングステンからなる溶接電極4は、水冷部34を有するプラズマノズル22によって囲まれる。溶接過程中、プラズマノズル22を介してプラズマガス6が導かれる。プラズマノズル22に同心的に保護ガスノズル21(好ましくは銅からなる)が設けられている。プラズマノズル22のまわりに形成されたリング状間隙を通して、溶接作業中保護ガス8が流出し、この保護ガスはその熱伝導性に基づいて結果としてアーク7ないしプラズマビーム9の締め付けを伴う。それによって、比較的小さい直径10のプラズマビーム9が大きな長さ11にわたっても保証され得る。
【0032】
2.0〜10mmの範囲の材料厚み3を有する焼入れ可能な鋼2内に溶接継手1を作るための方法を実施するために、まず溶接電極4が溶接線5(図示せず)に対し位置を定められる。本発明の方法の一つの変形であるプラズマアーク溶接を実施するため、タングステン電極(負極)と焼入れ可能な鋼(正極)との間に電圧が加えられる。今や保護ガス8とプラズマガス6とがノズルを通して溶接個所に運ばれ、溶接電極4と焼入れ可能な鋼2との間にアーク7が形成される。高い温度の結果として鋼2は溶接線5の近傍で全材料厚3にわたって溶かされる。その際図示の実施変形例ではいわゆる「タップホール効果」が示され、その際プラズマビーム9は焼入れ可能な鋼2を全材料厚3にわたって貫通し、その結果タップホール24ないし溶接穴が形成される。タップホール24は幅32を有し、この幅は例えば送り速度に関連する。
【0033】
溶接の際にはプラズマビーム9はタップホール24と共に溶接方向20に移動する。プラズマビーム9の後方では、融解した金属が溶融池の表面張力及びタップホール24内の蒸気圧によって再び合流し、そのようにして溶接継手1を形成する。
【0034】
溶接継手の形成を具体的に説明するために、図2及び図3は、図1において対応して示されているように、異なる面における溶接継手の断面を示す。図2は、比較的幅の広い溶接継手1及び比較的大きい溶融池23を平面図で示す。これに対し図3は焼入れ可能な鋼2の表面から離れた範囲、例えばタップホール24の最小の幅32の範囲におけるものを示す。溶接継手1はその際それぞれ所望の溶接線5に従う。
【0035】
図4は、上述の方法により作られた溶接技術による結合12の概略を断面で示す。結合12は、2つの隣接して相対して配置された構成要素13に関し連続した溶接継手1として作り上げられている。両構成要素13は回転対称の中空プロフィールを有し、左側に示される構成要素13は中空軸14として作り上げられている。右側の構成要素13はさらに中実の別の構成要素13に固定され、この構成要素は結果として溶接継手1の溶接すべき部分領域16における熱排出への著しい影響を伴う。少なくとも両中空プロフィール状の構成要素13は焼入れ可能な鋼を含む。
【0036】
溶接継手1の形成のため、構成要素13は部分領域16においてプラズマビーム9ないしアーク7(共に図示されていない)によって加熱され、鋼が少なくとも部分的に融解状態に移行するようにする。溶接継手1の範囲と並んで、いわゆる熱干渉領域35も認め得る。溶接継手1は放射状周囲溶接として作り上げられ、その際この溶接継手は構成要素13の全壁厚15にわたって2.0mm〜5.0mmの範囲の幅25でもって延びる。
【0037】
図5から、四輪駆動の乗り物10に対する駆動系19が認められる。この場合には、エンジン18によって4つのすべての車輪26が駆動される。前車軸の範囲で図示されたエンジン18の下方にエンジン動力伝動装置28が認められる。後車軸の範囲にいわゆるシャフト動力伝動装置29が設けられている。車輪26を駆動するため側軸27が用いられる。エンジン動力伝動装置28とシャフト動力伝動装置29との間の結合はカルダン式動力伝達装置によって行われ、この装置は2つの中空軸14を含む。この装置はほぼ中央に配置された中間軸受31によって付加的に乗り物17の底部に置かれている。カルダン式動力伝達装置は、第1のカルダン軸部分においてエンジン動力伝動装置28の近傍に配置された同速回転固定リンクの形の第1のリンク30を有する。両リンク軸部分ないし中空軸14を結合するため、第2のリンク30が中心に同速回転固定リンクの形で設けられている。第2のリンク軸部分ないし右側に示される中空軸14の端部には、第3のリンク30が同速回転固定リンクの形で配置されており、このリンクは結合手段を介してシャフト動力伝動装置29と結合されている。中空軸19ないしはリンク軸部分は、大抵の使用例において変速機又はオートマチックギヤにエンジン18によって導入される回転速度を越える回転速度で回転する。減速はシャフト動力伝動装置29の範囲で行われる。例えば中空軸14及び所属のリンク30が毎分10,000回転までの回転速度を行わなければならないのに対し、車輪26を駆動するための側軸27は毎分2,500回転までの大きさのオーダにある。
【0038】
本発明に従う結合は次の部品に有利に使用される。
継ぎ合わされるリンク軸系構成要素。例えば次のようなものがある。
・中空軸/中実軸
・中空軸/リンク外側部分
・中空軸/ジャーナル
・中空軸/リンク内側部分(例えばハブ)
・リンク外側部分/ハウジングふた
・リンク外側部分/フランジ、例えばギヤフランジ
・シャフト板/リンク底部
・スライディングソケット/ジャーナル
差動/駆動系
・歯車/歯車
・中空軸/歯車
・ハウジング/ハウジングふた
・ジャーナル/ハウジングふた
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】溶接過程中の溶接トーチの構成の概略図である。
【図2】溶接継手の溶接継手表面近傍の平面図である。
【図3】溶接継手の溶接継手根部近傍の平面図である。
【図4】継ぎ合わされた構成要素の断面における結合の一変形実施例の概略図である。
【図5】乗り物の駆動系の概略図である。
【符号の説明】
【0040】
1 溶接継手
2 鋼
3 材料厚
4 溶接電極
5 溶接線
6 プラズマガス
7 アーク
8 保護ガス
9 プラズマビーム
10 直径
11 長さ
12 結合
13 構成要素
14 中空軸
15 壁厚
16 部分範囲
17 乗り物
18 エンジン
19 駆動系
20 溶接方向
21 保護ガスノズル
22 プラズマノズル
23 溶融部
24 タップホール
25 幅
26 車輪
27 側軸
28 エンジン動力伝動装置
29 シャフト動力伝動装置
30 リンク
31 中間軸受
32 幅
33 溶接トーチ
34 水冷
35 熱干渉領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料厚(3)を有する焼入れ可能な鋼(2)に二次加熱なしで溶接継手(1)を作るための方法において、少なくとも次の工程
a)溶接電極(4)の溶接線(5)に対する位置決め
b)電圧の印加
c)プラズマガス(6)の供給
d)アーク(7)の形成
e)溶接線(5)近傍の鋼(2)の全材料厚(3)にわたる融解
を含む溶接継手の形成方法。
【請求項2】
材料厚(3)を有する焼入れ可能な鋼(2)からなる乗り物(17)のトルク伝達のための構成要素(13)を二次加熱なしで溶接継手(1)の生成により継ぎ合わせ技術的に結合するための方法において、少なくとも次の工程
a)溶接電極(4)の溶接線(5)に対する位置決め
b)電圧の印加
c)プラズマガス(6)の供給
d)アーク(7)の形成
e)溶接線(5)近傍の鋼(2)の全材料厚(3)にわたる融解
を含む構成要素の結合方法。
【請求項3】
焼入れ可能な鋼(2)が2.0mm〜10.0mmの範囲の材料厚(3)を有する請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
溶接継手(1)が単層に作り上げられる請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
溶接継手(1)が突合せ継手又はすみ肉溶接として形成される請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
プラズマビーム(9)が溶接過程中溶接方向(20)に少なくとも0.2m/minの溶接速度で動かされる請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
溶接継手(1)が放射環状溶接によって作られる請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
焼入れ可能な鋼(2)からなるトルク伝達のための少なくとも2つの構成要素(13)の結合(12)であって、結合(12)が請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法により作られた少なくとも1つの溶接継手(1)を含むことを特徴とする構成要素の結合。
【請求項9】
少なくとも1つの構成要素(13)が2.0mm〜10.0mmの範囲の壁厚(15)を有する中空軸(14)であることを特徴とする請求項8記載の結合(12)。
【請求項10】
構成要素(13)の結合(12)及び隣接する部分領域(16)が割れなしに作り上げられていることを特徴とする請求項8又は9記載の結合。
【請求項11】
結合(2)が250HV〜650HVの範囲の延性を有することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1つに記載の結合。
【請求項12】
駆動系(19)を有するエンジン(18)を含む乗り物(17)であって、駆動系(19)がトルク伝達のための構成要素(13)を有し、少なくとも2つの構成要素(13)が請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法により互いに溶接されたものであるか、又は乗り物(17)が請求項8〜11のいずれか1つに記載の結合(12)を有することを特徴とする乗り物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−518784(P2008−518784A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538277(P2007−538277)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012518
【国際公開番号】WO2006/048036
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(506000106)ジーケイエヌ ドライヴライン インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (6)
【Fターム(参考)】