説明

焼却灰の水洗処理方法及びシステム

【課題】洗浄槽内での焼却灰と水の撹拌混合性を高め、塩素除去効率を向上させることができる焼却灰の水洗処理方法及びシステムを提供する。
【解決手段】焼却灰1が供給される洗浄槽20と、該洗浄槽内にて水に浸漬された焼却灰1を撹拌する撹拌手段とを備える焼却灰の水洗処理装置において、洗浄槽底部に堆積した焼却灰1をすくい上げて洗浄槽内上方に搬送するバケットスクレーパ40と、該バケットスクレーパが所定間隔で複数取り付けられたコンベア30とを備え、前記コンベア30は、灰撹拌時には、バケットスクレーパ40の灰載置面が上方に向いた状態で上方に移動させ、所定位置でバケットスクレーパ40を反転させて焼却灰を落下させ、該焼却灰を少なくとも鉛直方向に撹拌し、灰排出時には、バケットスクレーパ40の裏面で処理灰2を押し出し排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰を水洗処理して塩素分を除去する焼却灰の水洗処理方法及びシステムに関し、特に、水洗処理を行う洗浄槽内での焼却灰と水との撹拌混合性を高め、塩素除去効率を向上させることを可能とした焼却灰の水洗処理方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、都市ごみや下水汚泥等の一般廃棄物又は各種工場から排出される産業廃棄物は、減容化及び無害化のために焼却により処理されている。一般に、焼却炉から排出される焼却灰の処理方法としては、埋め立て処理、溶融スラグ化、建築資材への再資源化などが挙げられる。特に近年では、これらの灰をセメント原料、人工骨材、植栽用土、路床材、路盤材、焼成タイルなどの製品に加工して有効利用することが求められている。しかし、焼却灰を再資源化するに際して、焼却灰には塩素分が含まれているため、灰の用途に応じて、塩素濃度を基準値以下まで低減する必要がある。
【0003】
一般的な焼却灰の処理方法としては、金属片等の異物を除去した後、焼却灰を水洗することにより塩素分を低減する方法が用いられている。しかしながら、大部分の塩素分は水洗で除去可能であるが、高品質の再資源化原料として付加価値を与えるためには、単に水洗するのみでは塩素低減は不十分であった。そこで、水洗にて洗浄水のpHを酸性若しくは6〜10に調整したり、粉砕したり、或いは洗浄回数を複数回に増加することにより対応している。
【0004】
例えば、特許文献1(特許第3368372号公報)には、焼却灰を粉砕した後、複数回洗浄を行うようにした焼却灰のセメント原料化方法が開示されている。このとき、洗浄時の液pHが6〜10、好適にはpH8〜10となるようにし、これにより焼却灰の重金属の溶出を抑制しつつ塩素分を溶解除去するようにしている。
特許文献2(特開2005−288328号公報)には、複数設置した洗浄槽で焼却灰を洗浄し、さらに洗浄槽に二酸化炭素ガスを導入して洗浄するとともに、洗浄槽が具備する循環配管路に設けられた湿式破砕機により焼却灰を破砕するようにした構成が開示されている。
【0005】
また、水洗処理は、水を貯留した洗浄槽内に焼却灰を供給し、水と焼却灰を混合して焼却灰に含有される塩素分を水に溶出させるが、撹拌混合性が不十分だと焼却灰が水と十分に接触せず、塩素除去効率が低下してしまう。そこで、特許文献3(特開2002−254041号公報)には、撹拌翼を回転させることにより混合する手段、ジェットポンプにより水を循環させる手段により撹拌力を向上させる方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特許第3368372号公報
【特許文献2】特開2005−288328号公報
【特許文献2】特開2002−254041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、焼却灰中の塩素分を除去する際には水洗処理が一般に多く用いられており、焼却灰に含まれる大部分の塩素分は水洗で除去可能であるが、水洗処理のみでは不十分であったため、特許文献1、2に記載されるように、洗浄槽にてpH調整をしたり、粉砕したり、洗浄回数を複数回に増加するなどして対応していた。
【0008】
しかしながら、このような対策を講じても、水と焼却灰との接触が不十分であると塩素分が水に溶出することを妨げ、塩素除去率を高く維持することは困難である。そこで、特許文献3等に記載されるように、洗浄槽内にプロペラ型の撹拌翼を挿入して撹拌することが一般に広く用いられているが、焼却灰は比重が大きいため十分な混合が難しく、また撹拌動力の増大、若しくは装置が大きくなるなどの欠点がある。また、特許文献3に記載されるように、ジェットポンプによる撹拌混合も提案されているが、焼却灰が混合した水を単にポンプで循環させることは、ポンプ及び循環系統の配管の磨耗が問題となる。
【0009】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、洗浄槽内での焼却灰と水の撹拌混合性を高め、塩素除去効率を向上させることができる焼却灰の水洗処理方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、
洗浄槽に供給された焼却灰を水に浸漬させた状態で撹拌しながら水洗処理し、該焼却灰に含まれる塩素分を除去する焼却灰の水洗処理方法において、
前記焼却灰を機械的手段により洗浄槽内上方に持ち上げた後、重力沈降させて、該焼却灰を少なくとも鉛直方向に撹拌することを特徴とする。
焼却灰は比重が大きく、水平方向のみの撹拌では十分な撹拌混合性が得られないため、本発明のように鉛直方向に撹拌する機械的手段を備えることにより、撹拌混合性を高めることができ、焼却灰と水の接触を多くすることにより塩素除去率を大幅に向上させ、処理時間を短縮化することが可能となる。よって、水洗処理により塩素濃度の低い焼却灰を得ることができ、焼却灰をセメント原料等の再資源化原料として好適に用いることが可能となる。
【0011】
また、前記機械的手段により洗浄槽底部に堆積した焼却灰をすくい上げて洗浄槽内上方まで持ち上げた後、該機械的手段から前記焼却灰を放出して焼却灰を重力沈降させることを特徴とする。
このように、機械的手段により焼却灰をすくい上げて洗浄槽内上方に持ち上げた後、重力により沈降させるようにし、焼却灰を鉛直方向に撹拌することにより、比重が大きい焼却灰であっても、撹拌混合性を高めることができ、焼却灰が水と十分に接触するため塩素除去率が向上するとともに、処理時間の短縮化が可能となる。また、焼却灰を強制的にすくい上げて洗浄槽内上方に持ち上げているため、確実に且つ十分に鉛直方向の撹拌を行うことができる。
【0012】
さらに、前記機械的手段により洗浄槽内に上昇水流を形成し、該上昇水流に搬送させて焼却灰を洗浄槽内上方まで持ち上げた後、重力沈降させることを特徴とする。
このように、洗浄槽内に上昇流を形成し、焼却灰を洗浄槽内上方に持ち上げた後、重力により沈降させるようにして撹拌することにより、比重が大きい焼却灰であっても、撹拌混合性を高めることができ、焼却灰が水と十分に接触するため塩素除去率が向上するとともに、処理時間の短縮化が可能となる。また、上昇水流によって焼却灰を撹拌しているため、簡単な装置構成とすることが可能となる。さらに、循環させる水は、灰の少ない上澄み液としているため、循環配管が焼却灰により閉塞したり、磨耗することを防止できる。
【0013】
また、焼却灰が供給される洗浄槽と、該洗浄槽内にて水に浸漬された焼却灰を撹拌する撹拌手段とを備える焼却灰の水洗処理装置において、
前記撹拌手段が、前記焼却灰を洗浄槽内上方に持ち上げる機械的手段であり、該機械的手段により持ち上げた焼却灰を重力沈降させて、該焼却灰を少なくとも鉛直方向に撹拌することを特徴とする。
【0014】
また、前記機械的手段が、前記洗浄槽底部に堆積した焼却灰をすくい上げて洗浄槽内上方に搬送する灰搬送部と、前記灰搬送部が所定間隔で複数取り付けられた無端環状ガイドとを備え、
前記無端環状ガイドは、前記灰搬送部の灰載置面が上方に向いた状態で該灰搬送部を上方に移動させ、所定位置で前記灰搬送部を反転させて、該灰搬送部上の焼却灰を落下させるように形成されることを特徴とする。
【0015】
また、前記水洗処理した後の焼却灰を排出する灰排出コンベアを備えた焼却灰の水洗処理装置であって、
前記灰排出コンベアを前記無端環状ガイドとして用い、
前記無端環状ガイドは、前記焼却灰の排出時には正回転に駆動されて前記灰搬送部の裏面で前記焼却灰を押し出し排出し、前記焼却灰の水洗時には逆回転に駆動されて前記灰搬送部の灰載置面で前記焼却灰を持ち上げ、該焼却灰を撹拌することを特徴とする。
本構成によれば、灰排出用コンベアが灰撹拌用コンベア(無端環状ガイド)の機能を兼ね備えることにより、装置の高効率化、小型化が可能となる。
【0016】
さらに、前記灰搬送部は、前記焼却灰を載置する平板と、該平板の灰載置面側にツメが具備されたバケット状に形成されてなることを特徴とする。このように、灰搬送部をバケット状に形成することにより、焼却灰の取り込みを容易にし、また載置した焼却灰を取りこぼすことなく確実に上方に搬送することが可能となる。
さらにまた、前記洗浄槽内の死水域に空気又は水を噴出して水流を形成する灰詰まり防止手段を備えることを特徴とする。これにより、焼却灰が死水域に滞留することを防止し、焼却灰の水洗処理を効率的に行うことが可能となる。
【0017】
また、前記機械的手段が、前記洗浄槽上方からポンプにより吸引した水を洗浄槽底部に循環させる循環配管と、該循環させた水を前記洗浄槽底部から噴出させる複数のノズルとから構成され、前記ノズルから噴出させた水により洗浄槽内に上昇水流を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上記載のごとく本発明によれば、焼却灰を鉛直方向に撹拌する機械的手段を備えることにより、撹拌混合性を高めることができ、焼却灰と水の接触を多くすることにより塩素除去率を大幅に向上させ、処理時間を短縮化することが可能となる。よって、水洗処理により塩素濃度の低い焼却灰を得ることができ、焼却灰をセメント原料等の再資源化原料として好適に用いることが可能となる。
また、機械的手段により焼却灰をすくい上げて洗浄槽内上方に持ち上げた後、重力により沈降させるようにし、焼却灰を鉛直方向に撹拌することにより、比重が大きい焼却灰であっても、撹拌混合性を高めることができ、焼却灰が水と十分に接触するため塩素除去率が向上するとともに、処理時間の短縮化が可能となる。さらに、焼却灰を強制的にすくい上げて洗浄槽内上方に持ち上げているため、確実に且つ十分に鉛直方向の撹拌を行うことができる。
【0019】
また、洗浄槽内に上昇流を形成し、焼却灰を洗浄槽内上方に持ち上げた後、重力により沈降させるようにして撹拌することにより、比重が大きい焼却灰であっても、撹拌混合性を高めることができ、焼却灰が水と十分に接触するため塩素除去率が向上するとともに、処理時間の短縮化が可能となる。また、上昇水流によって焼却灰を撹拌しているため、簡単な装置構成とすることが可能となる。さらに、循環させる水は、灰の少ない上澄み液としているため、循環配管が焼却灰により閉塞したり、磨耗することを防止できる。
さらに、灰排出用コンベアが灰撹拌用コンベアの機能を兼ね備えるように構成することにより、装置の高効率化、小型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1〜図3は本発明の実施例1〜実施例3に係る水洗処理装置の概略側面図を夫々示し、図4は図3に示した水洗処理装置のX−X断面図、図5は図3に示した水洗処理装置が備えるバケットスクレーパの側面図、図6は本発明の実施形態が適用される焼却灰処理システムの一例を示すブロック図である。
【0021】
本実施形態に係る焼却灰の水洗処理装置は、水が貯留された洗浄槽を備え、該洗浄槽内に供給された焼却灰を上方に持ち上げる機械的手段が設けられている。洗浄槽内の焼却灰は、前記機械的手段により洗浄槽内上方まで持ち上げられた後、重力により落下沈降し、これを繰り返すことにより鉛直方向に撹拌される。
焼却灰は比重が大きく、水平方向のみの撹拌では十分な撹拌混合性が得られないため、本実施形態のように鉛直方向に撹拌する機械的手段を備えることにより、撹拌混合性を高めることができ、焼却灰と水の接触を多くすることにより塩素除去率を大幅に向上させ、処理時間を短縮化することが可能となる。よって、水洗処理により塩素濃度の低い焼却灰を得ることができ、焼却灰をセメント原料等の再資源化原料として好適に用いることが可能となる。
【0022】
本実施形態が適用される焼却灰処理システムの一例を図6に示す。尚、水洗設備100の構成は、図1に示した構成に限定されるものではない。
この焼却灰処理システムは、焼却炉から排出された焼却灰1が投入される比重差分離装置51と、該比重差分離装置51にて金属片等の異物が除去された焼却灰が供給される水洗処理設備と、を備える。
前記比重差分離装置51は、分離液を介して、比重の大きい金属片や大径焼却灰等の異物と、比重の小さい焼却灰とを分離する周知の装置である。
前記水洗処理設備は、前段側水洗処理設備と後段側水洗処理設備が直列に配設された2構成となっており、夫々洗浄槽52、54、固液分離装置53、55を備える。本実施形態の洗浄槽は、洗浄槽52又は洗浄槽54の何れか一方、又は両方に適用できる。前段側水洗処理設備では焼却灰の10〜40倍量、後段側水洗処理設備では焼却灰の5〜20倍量の水で洗浄する。
【0023】
前段側水洗処理設備において、洗浄槽52には、水3と、硫酸タンク56から供給される硫酸とからなる洗浄水が貯留されており、該洗浄槽52内に、比重差分離装置51にて異物が除去された焼却灰が供給される。洗浄槽52は、焼却灰1を鉛直方向に撹拌する機械的手段を備えている。この機械的手段を備えた洗浄槽52の構成については、実施例1〜実施例3にて後述する。尚、本構成ではpH調整に用いる酸として硫酸を例に挙げて示したが、これに限定されるものではなく、他の酸であってもよい。
洗浄槽52には、焼却灰の水洗時に洗浄水のpH値を測定するpH計63が設置されており、該洗浄水のpHを逐次監視している。pH調整は、バルブ61を制御して硫酸タンク56からの硫酸供給量を調整することにより行われる。硫酸は、焼却灰1tに対して10kgから100kg添加され、pHは10〜11に調整される。
後段側水洗処理設備は、前記前段側水洗処理設備と同様の構成を備える。
【0024】
本構成において、前段側の洗浄槽52では、焼却灰を粗洗浄することにより塩素濃度を大幅に低下させ、後段側の洗浄槽54では、仕上げ洗浄することにより塩素濃度を極めて低濃度となるまで洗浄するようになっている。
前段側水洗処理設備の洗浄槽52にて水洗された後の焼却灰を含む処理水は、固液分離装置53に導入され、該固液分離装置53にて焼却灰4と排水5とに分離される。焼却灰4は、後段側水洗処理設備の洗浄槽54に供給され、該洗浄槽54にて水洗された後、固液分離装置55にて処理灰7と排水8とに分離される。
【0025】
また、本構成では、排水発生量を低減するために以下の構成を備えることが好ましい。
前段側水洗処理設備の固液分離装置53にて分離された排水5を系外へ排出する排出ラインと、該排水5を洗浄槽52に返送する循環ラインとを備え、排出ライン上にはバルブ62が設置されている。また、排水5の電導度を測定する電導度計64を備えており、該電導度計64の測定値に基づいてバルブ62を制御し、洗浄槽52への循環量を制御するようになっている。即ち、水洗初期は排水5を循環して洗浄に用い、排水5中の不純物濃度、好適には塩素濃度が所定濃度以上となったらバルブ62を開放して系外へ排水6を排出するようにしている。排水6を系外に排出したときは、水3のバルブ60を制御して、新たに水3を補給する。
【0026】
同様に、後段側水洗処理設備においても、固液分離装置55にて分離された排水8を系外へ排出する排出ラインと、該排水8を洗浄槽54に返送する循環ラインとを備え、排出ライン上にはバルブ67が設置されている。また、排水8の電導度を測定する電導度計69を備えており、該電導度計69の測定値に基づいてバルブ67を制御し、洗浄槽54への循環量を制御するようになっている。即ち、水洗初期は排水8を循環して洗浄に用い、排水8中の不純物濃度が高くなったら系外へ排水9を排出する。排水9を系外に排出したときは、水3のバルブ65を制御して、新たに水3を補給する。このように、直列に2段配置された水洗処理設備にて、個々に排水を循環使用する構成とすることにより、排水発生量を低減することが可能である。
【実施例1】
【0027】
図1を参照して、本実施形態における具体的構成の一例として、実施例1に係るリフター方式の水洗処理装置につき以下に説明する。
本実施例1の水洗処理装置は、水3が貯留された洗浄槽10と、該洗浄槽上部に設けられた焼却灰投入部10aと、洗浄槽下部に設けられた処理灰排出部11と、洗浄槽底部に堆積した焼却灰1を洗浄槽内上方に持ち上げるリフター(機械的手段)12とを備える。図1では、鉛直方向に長辺を有する方形状の洗浄槽10を示しているが、洗浄槽10の形状は限定されない。また、洗浄槽10の底面をホッパ状に形成し、そのホッパ下端にバルブ(不図示)を設けて、水洗処理後にバルブを開放して処理灰2を排出する構成としているが、処理灰排出部11はこれに限定されるものではなく、例えば洗浄槽上方から処理灰をすくい出して排出する構成など、他の手段を用いることも可能である。
【0028】
前記リフター12は、洗浄槽上部と下部に、少なくとも一対のスプロケット13、13が設けられ、該スプロケット13、13に無端環状のチェーンガイド14が掛け渡され、該チェーンガイド14にはバケット15が所定間隔毎に複数取り付けられている。バケット15は、チェーンガイド14に対して外側に取り付けられる。スプロケット13、13には、これを回転駆動する駆動手段(不図示)が接続されており、該スプロケット13、13が同一方向に回転することによりチェーンガイド14が回転し、チェーンガイド14とともにバケット15も所定方向に移動するようになっている。バケット15は、回転方向前方に該バケット15の開口部が向くように取り付けられている。
【0029】
リフター12の最下部の位置は、洗浄槽底面から数mm〜数十mm、好適には2mm〜10mmに設定することが好ましい。これにより、焼却灰1がリフター12の最下部と洗浄槽底面の間に噛み込まれ、破損することを防止可能である。また、死水域が小さくなるように、洗浄槽10の形状、リフター12の構成を設定することが好ましく、これにより焼却灰1の堆積を軽減することが可能である。
【0030】
上記構成を備えた水洗処理装置において、焼却灰投入部10aより洗浄槽10内に投入された焼却灰1は、その比重により一旦、洗浄槽底部に沈降して堆積するが、リフター12を回転駆動させることにより、バケット15が洗浄槽底部に堆積した焼却灰1をすくい上げて洗浄槽上方に持ち上げ搬送し、チェーンガイド14の折り返し点で反転してバケット15内の焼却灰1を放出する。リフタの回転速度は、約1〜6m/分である。放出された焼却灰1は重力により落下し、洗浄槽底部に沈降して再度バケット15により上方に持ち上げられる。この動作を繰り返すことにより、洗浄槽10内で焼却灰は鉛直方向に撹拌される。所定時間、撹拌して水洗処理した後の処理灰2は、処理灰排出部11より排出される。
【0031】
本実施例1によれば、リフター12により焼却灰1を洗浄槽内上方に持ち上げた後、重力により沈降させるようにし、焼却灰1を鉛直方向に撹拌することにより、比重が大きい焼却灰であっても、撹拌混合性を高めることができ、焼却灰が水と十分に接触するため塩素除去率が向上するとともに、処理時間の短縮化が可能となる。また、リフター12により焼却灰1を強制的に持ち上げているため、確実に且つ十分に鉛直方向の撹拌を行うことができる。
【実施例2】
【0032】
図2を参照して、実施例に係る循環方式の水洗処理装置につき以下に説明する。
本実施例2の水洗処理装置は、水3が貯留された洗浄槽16と、該洗浄槽上部に設けられた焼却灰投入部16aと、洗浄槽下部に設けられた処理灰排出部16bと、洗浄槽底部に堆積した焼却灰1を上方に持ち上げる循環手段(機械的手段)17とを備える。図2では、鉛直方向に長辺を有する方形状の洗浄槽16を示しているが、洗浄槽16の形状は限定されない。また、処理灰排出部16bを洗浄槽下部に設けた構成を示しているが、これに限定されるものではなく、例えば洗浄槽上方から処理灰をすくい出して排出する構成など、他の手段を用いることも可能である。
【0033】
前記循環手段17は、洗浄槽上部から水3を吸引し、循環配管18を介して洗浄槽底部に設けたノズル18aより所定流速で噴出させる。循環配管18にはポンプ19が設けられている。ノズル18aは、洗浄槽底面に複数設置されている。また、循環配管18の水吸引口が接続される洗浄槽上部には、該水吸引口に焼却灰1が吸引されないように、フード16cが設けられている。
【0034】
上記構成を備えた水洗処理装置において、焼却灰投入部16aより洗浄槽16内に投入された焼却灰1は、その比重により一旦、洗浄槽底部に沈降して堆積するが、ポンプ19を駆動させて循環配管18で洗浄槽上部の水を吸引し、ノズル18aより噴出させることにより、洗浄槽16内に上昇流が形成され、洗浄槽底部に堆積した焼却灰1は上方に持ち上げられ、重力により沈降することによって鉛直方向に撹拌される。ノズル18aからの水の突出流速は、1m/s以上とする。
所定時間、撹拌して水洗処理した処理灰2は、処理灰排出部16bより排出される。
【0035】
本実施例2によれば、循環手段17により洗浄槽16内に上昇流を形成し、焼却灰1を洗浄槽内上方に持ち上げた後、重力により沈降させるようにし、焼却灰1を鉛直方向に撹拌することにより、比重が大きい焼却灰であっても、撹拌混合性を高めることができ、焼却灰が水と十分に接触するため塩素除去率が向上するとともに、処理時間の短縮化が可能となる。また、本実施例2では循環手段17により形成した上昇流によって焼却灰1を撹拌しているため、簡単な装置構成とすることが可能となる。さらに、循環させる水は、灰の少ない上澄み液を吸引しているため、循環配管18が焼却灰により閉塞したり、磨耗することを防止できる。
【実施例3】
【0036】
図3〜図5を参照して、実施例3に係るコンベア方式の水洗処理装置につき以下に説明する。
図3に示すように、本実施例3の水洗処理装置は、水3が貯留された洗浄槽20と、該洗浄槽上部に設けられた焼却灰投入部21と、洗浄槽下部に設けられた処理灰排出部22と、洗浄槽底部に堆積した焼却灰1を上方に持ち上げるコンベア(機械的手段)30とを備える。尚、本実施例3では、コンベア30が水洗処理後の処理灰2を排出する機能を兼ね備えた構成につき説明するが、撹拌用のコンベア30とは別に、処理灰排出用のコンベアを備えた構成としてもよい。
【0037】
コンベア30は、複数のスプロケット32と、これらのスプロケット32に掛け渡されたコンベアチェーン31と、該コンベアチェーン31の外側に取り付けられた複数のバケットスクレーパ40と、を備える。図3のX−X断面図を図4に示す。
コンベアチェーン31は、洗浄槽20底面に沿って平行に配置された部位Aと、部位Aから上方に向けて延設された部位Bと、部位Bから洗浄槽上面に沿って配置された部位Cと、部位Cから一旦上方に突出した後、下降するように配置された部位Dと、部位Dから斜め上方に向けて延設された部位Eと、部位Eから反転する部位Fと、部位Fから斜め下方に向けて延設された部位Gとからなる。スプロケット32は、この形状にコンベアチェーン31を形成する位置に夫々設置される。
【0038】
スプロケット32には、これを回転駆動する駆動手段(不図示)が接続されており、該スプロケット32が同時期に同一方向に回転することによりコンベアチェーン31が回転し、コンベアチェーン31とともにバケットスクレーパ40も所定方向に移動するようになっている。
バケットスクレーパ40は、図5に示すように、正回転時の進行方向には平板状のスクレーパ42を有し、逆回転時の進行方向にはバケット41を有する。
【0039】
コンベア30は、必要に応じて正回転、逆回転に切替可能になっており、図中、実線矢印で示す正回転時には、水洗処理後の処理灰2をスクレーパ42側で底面に沿って押し出し、部位A、部位Gを通って処理灰排出部22より排出するようになっている。一方、破線矢印で示す逆回転時には、洗浄槽20の底部に堆積した焼却灰1を、部位Aにてバケット41側ですくい取り、部位Bにて焼却灰1を上方に持ち上げた後、部位Dにてバケット41の開口部を下方に向けることにより焼却灰を落下させ、重力により沈降させる。この動作により焼却灰1は洗浄槽20内で鉛直方向に撹拌されることとなる。
【0040】
コンベア30の最下部の位置は、洗浄槽底面から数mm〜数十mm、好適には2mm〜10mmに設定することが好ましい。これにより、焼却灰1がコンベア30の最下部と洗浄槽底面の間に噛み込まれ、破損することを防止可能である。また、死水域が小さくなるように、洗浄槽20の形状、コンベア30の構成を設定することが好ましく、これにより焼却灰1の堆積を軽減することが可能である。
また、図4に示すように、死水域に対して水又は空気を吹き込むノズル25を設けることが好ましい。
【0041】
上記構成を備えた水洗処理装置において、焼却灰投入部21より洗浄槽20内に投入された焼却灰1は、その比重により一旦、洗浄槽底部に沈降して堆積するが、コンベア30を逆回転に駆動させることにより、バケットスクレーパ40のバケット41が洗浄槽底部に堆積した焼却灰1をすくい上げて洗浄槽上方に持ち上げ搬送し、コンベア40の部位Dにてバケット41内の焼却灰1を放出する。放出された焼却灰1は重力により落下し、洗浄槽底部に沈降して再度バケット41により上方に持ち上げられる。この動作を繰り返すことにより、洗浄槽20内で焼却灰は鉛直方向に撹拌される。
所定時間、撹拌して水洗処理した後、コンベア30の回転方向を正回転に切り替え、洗浄槽底部に堆積した処理灰2をバケットスクレーパ40のスクレーパ42で押し出し移動させ、処理灰排出部22より排出する。
【0042】
本実施例3によれば、コンベア30により焼却灰1を洗浄槽内上方に持ち上げた後、重力により沈降させるようにし、焼却灰1を少なくとも鉛直方向に撹拌することにより、比重が大きい焼却灰であっても、撹拌混合性を高めることができ、焼却灰が水と十分に接触するため塩素除去率が向上するとともに、処理時間の短縮化が可能となる。また、コンベア30により焼却灰1を強制的に持ち上げているため、確実に且つ十分に鉛直方向の撹拌を行うことができる。
さらに、焼却灰1の撹拌用コンベア30が、水洗処理後の処理灰排出機能を兼ね備えることにより、装置の高効率化、小型化が可能となる。
さらにまた、実施例1及び実施例3において、洗浄槽内に空気又は水を供給して水流を形成するようにしてもよく、これにより、バケットに収容された焼却灰近傍の水が局所的に塩素濃度が高くなった場合にも、水流により常に新しい水に入れ替わり、塩素除去効果を高めることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、洗浄槽内での焼却灰と水の撹拌混合性を高めて塩素除去効率を向上させ、水洗処理灰の塩素濃度を常に低く抑えることが可能であるため、焼却灰からセメント原料等の再資源化原料を製造する設備にて好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例1に係る水洗処理装置の概略側面図である。
【図2】本発明の実施例2に係る水洗処理装置の概略側面図である。
【図3】本発明の実施例3に係る水洗処理装置の概略側面図である。
【図4】図3に示した水洗処理装置のX−X断面図である。
【図5】図3に示した水洗処理装置が備えるバケットスクレーパの側面図である。
【図6】本発明の実施形態が適用される焼却灰処理システムの一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0045】
1 焼却灰
2 処理灰
3 水
10、16 洗浄槽
12 リフター
15 バケット
17 循環手段
18 循環配管
18a ノズル
19 ポンプ
20 洗浄槽
30 コンベア
31 コンベアチェーン
32 スプロケット
33 持ち上げ部
34 落下部
40 バケットスクレーパ
41 バケット
42 スクレーパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽に供給された焼却灰を水に浸漬させた状態で撹拌しながら水洗処理し、該焼却灰に含まれる塩素分を除去する焼却灰の水洗処理方法において、
前記焼却灰を機械的手段により洗浄槽内上方に持ち上げた後、重力沈降させて、該焼却灰を少なくとも鉛直方向に撹拌することを特徴とする焼却灰の水洗処理方法。
【請求項2】
前記機械的手段により洗浄槽底部に堆積した焼却灰をすくい上げて洗浄槽内上方まで持ち上げた後、該機械的手段から前記焼却灰を放出して焼却灰を重力沈降させることを特徴とする請求項1記載の焼却灰の水洗処理方法。
【請求項3】
前記機械的手段により洗浄槽内に上昇水流を形成し、該上昇水流に搬送させて焼却灰を洗浄槽内上方まで持ち上げた後、重力沈降させることを特徴とする請求項1記載の焼却灰の水洗処理方法
【請求項4】
焼却灰が供給される洗浄槽と、該洗浄槽内にて水に浸漬された焼却灰を撹拌する撹拌手段とを備える焼却灰の水洗処理装置において、
前記撹拌手段が、前記焼却灰を洗浄槽内上方に持ち上げる機械的手段であり、該機械的手段により持ち上げた焼却灰を重力沈降させて、該焼却灰を少なくとも鉛直方向に撹拌することを特徴とする焼却灰の水洗処理装置。
【請求項5】
前記機械的手段が、前記洗浄槽底部に堆積した焼却灰をすくい上げて洗浄槽内上方に搬送する灰搬送部と、前記灰搬送部が所定間隔で複数取り付けられた無端環状ガイドとを備え、
前記無端環状ガイドは、前記灰搬送部の灰載置面が上方に向いた状態で該灰搬送部を上方に移動させ、所定位置で前記灰搬送部を反転させて、該灰搬送部上の焼却灰を落下させるように形成されることを特徴とする請求項4記載の焼却灰の水洗処理装置。
【請求項6】
前記水洗処理した後の焼却灰を排出する灰排出コンベアを備えた焼却灰の水洗処理装置であって、
前記灰排出コンベアを前記無端環状ガイドとして用い、
前記無端環状ガイドは、前記焼却灰の排出時には正回転に駆動されて前記灰搬送部の裏面で前記焼却灰を押し出し排出し、前記焼却灰の水洗時には逆回転に駆動されて前記灰搬送部の灰載置面で前記焼却灰を持ち上げ、該焼却灰を撹拌することを特徴とする請求項5記載の焼却灰の水洗処理装置。
【請求項7】
前記灰搬送部は、前記焼却灰を載置する平板と、該平板の灰載置面側にツメが具備されたバケット状に形成されてなることを特徴とする請求項5若しくは6記載の焼却灰の水洗処理装置。
【請求項8】
前記洗浄槽の死水域に空気又は水を噴出して水流を形成する灰詰まり防止手段を備えることを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載の焼却灰の水洗処理装置。
【請求項9】
前記機械的手段が、前記洗浄槽上方からポンプにより吸引した水を洗浄槽底部に循環させる循環配管と、該循環させた水を前記洗浄槽底部から噴出させる複数のノズルとから構成され、前記ノズルから噴出させた水により洗浄槽内に上昇水流を形成することを特徴とする請求項4記載の焼却灰の水洗処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−82487(P2010−82487A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231750(P2008−231750)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(501370370)三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】