説明

煙感知器

【課題】発光部の周囲温度が変化した場合であっても、煙の検出感度を可及的一定とすることのできる煙感知器を提供する。
【解決手段】本体ケースと、前記本体ケース内の検知空間へ光を出射する発光部と、前記検知空間内に侵入した煙による前記発光部からの光の散乱光を受光する受光部と、前記発光部を制御して前記検知空間へ光を出射させ、このときの前記受光部からの出力が所定の煙検知閾値以上のときに前記検知空間内へ煙が侵入したと判定する制御部と、を備えた煙感知器において、前記発光部の周囲温度を検知する温度検知部と、前記発光部の周囲温度に対する調整情報であって、当該発光部の個体差に対応した調整情報を記憶した調整情報記憶部と、を備え、前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記煙検知閾値の補正を行なうこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光電式のセンサを備えた煙感知器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、天井などに設置される煙感知器として、本体ケースと、前記本体ケース内の検知空間へ光を出射する発光部と、前記検知空間内に侵入した煙による前記発光部からの光の散乱光を受光する受光部とを備えたものがある。
【0003】
そして、発光部から検知空間へ光を出射させ、検知空間内の煙により生じた散乱光が受光部に入射し、このときの受光部からの出力が所定の煙検知閾値以上のときに前記検知空間内へ煙が侵入したと判定するようにしている(例えば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開平11−312281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の煙感知器では、発光部の周囲温度によって出射する光量が異なるという点に着目されておらず、発光部の周囲温度が変化することで、煙の検出感度が変化してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、発光部の周囲温度が変化した場合であっても、煙の検出感度を可及的一定とすることのできる煙感知器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る煙感知器では、本体ケースと、前記本体ケース内の検知空間へ光を出射する発光部と、前記検知空間内に侵入した煙による前記発光部からの光の散乱光を受光する受光部と、前記発光部を制御して前記検知空間へ光を出射させ、このときの前記受光部からの出力が所定の煙検知閾値以上のときに前記検知空間内へ煙が侵入したと判定する制御部と、を備えた煙感知器において、前記発光部の周囲温度を検知する温度検知部と、前記発光部の周囲温度に対する調整情報であって、当該発光部の個体差に対応した調整情報を記憶した調整情報記憶部と、を備え、前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記煙検知閾値の補正を行なうこととした。
【0007】
また、以下の点にも特徴を有するものである。
【0008】
(1)前記調整情報は、前記発光部の周囲温度を煙検知閾値に関連づけたテーブル又は演算情報であり、前記制御部は、前記温度検知部で検出した前記発光部の周囲温度に応じた前記煙検知閾値を前記調整情報記憶部から読み出し、当該煙検知閾値を前記所定の煙検知閾値として設定すること。
【0009】
(2)調整情報書込装置から情報を入力する入力部と、前記受光部からの出力を前記調整情報書込装置へ出力する出力部と、を備え、前記制御部は、当該煙検知器のテストモード時に、前記調整情報書込装置から前記入力部を介して電力設定命令を取得すると、前記発光部から前記検知空間へ光を出射させて、このときに前記受光部から出力される受光信号を前記出力部を介して前記調整情報書込装置へ出力し、前記受光部からの出力に基づいて前記調整情報書込装置で生成された調整情報を前記入力部を介して入力し、当該入力された前記調整情報を前記調整情報記憶部に記憶すること。
【0010】
(3)前記制御部は、前記電力設定命令を取得すると、前記発光部から前記検知空間へ光を2点以上強度を変えて順次出射させること。
【0011】
(4)前記調整情報書込装置で生成される調整情報は、前記発光部の温度を2点以上変化させたときに前記受光部から出力される受光信号に基づいて生成される情報であること。
【0012】
(5)前記発光部の発光特性を検出する発光特性検出部を備え、前記調整情報記憶部には、前記発光部の周囲温度に対する調整情報が前記発光特性検出部での検出結果に対応して複数記憶されており、前記制御部は、前記発光特性検出部の検出結果に対応する調整情報を前記調整情報記憶部から読み出して、前記煙検知閾値の補正を行なうこと。
【0013】
(6)前記発光部の発光特性を検出する発光特性検出部を備え、前記制御部は、前記発光特性検出部による検出結果に応じて前記調整情報を生成し、当該調整情報を前記調整情報記憶部に記憶すること。
【0014】
(7)前記発光特性検出部は、前記発光部への供給電力を2点以上変えたときのそれぞれの前記発光部の発光レベルを検出して前記発光部の発光特性を検出すること。
【0015】
(8)前記発光特性検出部は、前記発光部の温度を2点以上変えたときのそれぞれの前記発光部の発光レベルを検出して前記発光部の発光特性を検出すること。
【0016】
(9)前記発光特性検出部は、当該煙感知器のテストモード時に前記発光部の発光レベルを検出すること。
【0017】
また、本発明に係る煙感知器では、本体ケースと、前記本体ケース内の検知空間へ光を出射する発光部と、前記検知空間内に侵入した煙による前記発光部からの光の散乱光を受光する受光部と、前記発光部を制御して前記検知空間へ光を出射させ、このときの前記受光部からの出力に基づいて前記検知空間内への煙の侵入を検知する制御部と、を備えた煙感知器において、前記発光部の周囲温度を検知する温度検知部と、前記発光部の周囲温度に対する調整情報であって、当該発光部の個体差に対応した調整情報を記憶した調整情報記憶部と、を備え、前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記発光部の出力を補正することとした。
【0018】
この場合、前記発光部は、制御部の制御信号を電力調整可能に増幅する可変増幅器と、この可変増幅器で電力調整された制御信号に基づいて発光する発光素子と、を備え、前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記可変増幅器を制御することによって、前記発光部の出力の補正を行なうことにも特徴を有する。
【0019】
また、本発明に係る煙感知器では、本体ケースと、前記本体ケース内の検知空間へ光を出射する発光部と、前記検知空間内に侵入した煙による前記発光部からの光の散乱光を受光する受光部と、前記発光部を制御して前記検知空間へ光を出射させ、このときの前記受光部からの出力に基づいて前記検知空間内への煙の侵入を検知する制御部と、を備えた煙感知器において、前記発光部の周囲温度を検知する温度検知部と、前記発光部の周囲温度に対する調整情報であって、当該発光部の個体差に対応した調整情報を記憶した調整情報記憶部と、を備え、前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記受光部の出力を補正することとした。
【0020】
この場合、前記受光部は、受光素子と、この受光素子の出力を増幅する可変増幅器と、を備え、前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記可変増幅器を制御することによって、前記受光部の出力の補正を行なうことにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、発光部の周囲温度が変化した場合であっても、煙の検出感度を可及的一定とすることのできる煙感知器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、本体ケースと、前記本体ケース内の検知空間へ光を出射する発光部と、前記検知空間内に侵入した煙による前記発光部からの光の散乱光を受光する受光部と、前記発光部を制御して前記検知空間へ光を出射させ、このときの前記受光部からの出力が所定の煙検知閾値以上のときに前記検知空間内へ煙が侵入したと判定する制御部と、を備えた煙感知器において、前記発光部の周囲温度を検知する温度検知部と、前記発光部の周囲温度に対する調整情報であって、当該発光部の個体差に対応した調整情報を記憶した調整情報記憶部と、を備え、前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記煙検知閾値の補正を行なうことを特徴とする煙感知器を提供するものである。
【0023】
煙感知器は、煙を感知して火災を報知するという用途に用いられるものであるため、実際に機能する際には、火災の熱にさらされることとなる。
【0024】
一方、近年の煙感知器では、発光部として発光ダイオードが多く使用されており、この発光ダイオードは、一般的に温度が高い程発光量が減少するという性質を有している。
【0025】
それゆえ、煙感知器を高温下で使用した場合と、低温下で使用した場合とを比較すると、高温下で使用した場合の方が、発光ダイオードからの発光量が少なく、検出感度が鈍くなるという現象が生じる。
【0026】
そこで、このような問題を回避するためには、個々の煙感知器それぞれについて、温度に応じた検出感度の調整(キャリブレーション)が必要であるが、従来は温度について何ら考慮されていなかった。
【0027】
すなわち、従来のキャリブレーションは、ある単一の温度で実施されるのみであり、温度変化を踏まえたキャリブレーションが行われていなかった。
【0028】
それゆえ、煙感知器の使用温度が、キャリブレーションが行われた温度から離れるにしたがって、煙を検出する感度に誤差が生じてしまうという問題があった。
【0029】
しかも発光ダイオードは、同じ製品であっても個体差があり、一定電力を供給した状態で温度を変化した場合における光量変化が固体によって異なっている。
【0030】
そのため、上述の誤差に加えて、個々の製品個体差による誤差も生じてしまうという問題があった。
【0031】
そこで、本発明では、前記発光部の周囲温度に対する調整情報であって、当該発光部の個体差に対応した調整情報を備えることにより、煙検出の感度誤差と、個々の製品個体差による誤差との両者を踏まえた煙検知閾値の補正を行なうようにしている。
【0032】
すなわち、本発明によれば、温度検知部から得られる発光部の周囲温度と、周囲温度に対する調整情報とに基づいて、煙検知閾値の調整を行うことができ、発光部の周囲温度が変化した場合であっても、煙の検出感度を可及的一定とすることができることとなり、前述のような問題を回避することができるのである。
【0033】
また、前記調整情報は、前記発光部の周囲温度を煙検知閾値に関連づけたテーブル又は演算情報であり、前記制御部は、前記温度検知部で検出した前記発光部の周囲温度に応じた前記煙検知閾値を前記調整情報記憶部から読み出し、当該煙検知閾値を前記所定の煙検知閾値として設定することとしても良い。
【0034】
このようにすることで、発光部の周囲温度から容易に煙検知閾値を算出することができ、発光部の周囲温度に対応した煙検知閾値で煙を検出することができる。すなわち、発光部の周囲温度に対応して煙感知器の感度を調整することができる。
【0035】
また、前記発光部の発光特性を検出する発光特性検出部を備え、前記調整情報記憶部には、前記発光部の周囲温度に対する調整情報が前記発光特性検出部での検出結果に対応して複数記憶されており、前記制御部は、前記発光特性検出部の検出結果に対応する調整情報を前記調整情報記憶部から読み出して、前記煙検知閾値の補正を行なうようにして、前記調整情報を発光部の個体差に対応した調整情報としても良い。
【0036】
換言すれば、発光部に配設した発光素子の製品個体差に応じて、予め記憶させた複数の調整情報の中から、発光部周囲温度と煙検知閾値との対応が最も近似した調整情報を選択し、この選択した調整情報に基づいて煙検知閾値の調整を行うようにしても良い。
【0037】
これにより、発光部に使用する発光素子の製品個体差によっても、発光部の周囲温度によって変化する発光量の変化量が異なるため、煙の検出感度が変化してしまうという問題を回避することができる。
【0038】
また、前記発光部の発光特性を検出する発光特性検出部を備え、前記制御部は、前記発光特性検出部による検出結果に応じて前記調整情報を生成し、当該調整情報を前記調整情報記憶部に記憶するようにしても良い。
【0039】
例えば、発光特性検出部により、所定煙濃度下において、発光部周囲の温度と散乱光を捉えた受光部から出力される受光信号との対応データを1点若しくは複数点取得し、この対応データに基づいて前記温度と受光信号との対応を示すテーブルや検量線(標準曲線)、同検量線の演算情報等を調整情報として生成し、調整情報記憶部に記憶させるようにしても良い。
【0040】
これにより、調整情報記憶部に、前記発光部の周囲温度に対する調整情報が前記発光特性検出部での検出結果に対応して複数記憶されていなくとも、発光部に使用する発光素子の製品個体差により、発光部の周囲温度によって変化する発光量の変化量が異なるため、煙の検出感度が変化してしまうという問題を回避することができる。
【0041】
なお、前記温度と受光信号との対応データを1点だけ取得して検量線(標準曲線)や同検量線の演算情報等を生成する場合には、製品個体差にかかわらずその発光部が平均的に示す発光特性曲線を、前記対応データのポイントを通過するよう補正して生成するようにしても良い。
【0042】
また、前記発光特性検出部は、前記発光部への供給電力を2点以上変えたときのそれぞれの前記発光部の発光レベルを検出して前記発光部の発光特性を検出するようにしても良い。
【0043】
これにより、さらに製品個体差の補正精度を向上させることができ、より正確に発光部の周囲温度によって変化する発光量の変化量が異なるため、煙の検出感度が変化してしまうという問題を回避することができる。
【0044】
また、前記発光特性検出部は、前記発光部の温度を2点以上変えたときのそれぞれの前記発光部の発光レベルを検出して前記発光部の発光特性を検出するようにしても良い。
【0045】
この場合も、前述の供給電力を2点以上変えたときと同様に、さらに製品個体差の補正精度を向上させることができ、より正確に発光部の周囲温度によって変化する発光量の変化量が異なるため、煙の検出感度が変化してしまうという問題を回避することができる。
【0046】
また、前記発光特性検出部は、当該煙感知器のテストモード時に前記発光部の発光レベルを検出するようにしても良い。
【0047】
例えば、工場で煙感知器の出荷時に、出荷前の煙検知感度テストを行う場合、煙感知器をテストモードとし、生成した調整情報を調整情報記憶部に記憶させることにより、工場出荷時の初期設定(デフォルト)の状態で製品個体差を補正した煙感知器を提供することができる。
【0048】
なお、調整情報の生成や、生成した調整情報の調整情報記憶部への記憶は、煙感知器内で行っても良いが、煙感知器とは別体に設けた調整情報書込装置によって行い、前記調整情報を発光部の個体差に対応した調整情報としても良い。
【0049】
すなわち、煙感知器は、調整情報書込装置から情報を入力する入力部と、前記受光部からの出力を前記調整情報書込装置へ出力する出力部と、を備え、前記制御部は、当該煙検知器のテストモード時に、前記調整情報書込装置から前記入力部を介して電力設定命令を取得すると、前記発光部から前記検知空間へ光を出射させて、このときに前記受光部から出力される受光信号を前記出力部を介して前記調整情報書込装置へ出力し、前記受光部からの出力に基づいて前記調整情報書込装置で生成された調整情報を前記入力部を介して入力し、当該入力された前記調整情報を前記調整情報記憶部に記憶することとしても良い。
【0050】
このような構成とすることにより、個々の煙感知器にキャリブレーションの機能を持たせずとも、工場出荷時の初期設定の状態で製品個体差を補正した煙感知器を提供することができる。
【0051】
しかも、制御部は、前記電力設定命令を取得すると、前記発光部から前記検知空間へ光を2点以上強度を変えて順次出射させることとしたり、また、調整情報書込装置で生成される調整情報は、前記発光部の温度を2点以上変化させたときに前記受光部から出力される受光信号に基づいて生成される情報であることとすることにより、製品個体差の補正精度を向上させることができ、より正確に発光部の周囲温度によって変化する発光量の変化量が異なるため、煙の検出感度が変化してしまうという問題を回避することができることとなる。
【0052】
ところで、上述してきた本発明に係る煙感知器は、発光部周囲の温度に依存して変化する発光部からの発光量に由来して検出感度が変化してしまうという問題を、煙検知閾値を調整することにより解決することとしたが、例えば、発光部周囲の温度測定結果に応じて発光部からの出力(発光量)を調整することにより、発光部の周囲温度が変化した場合であっても、煙の検出感度を可及的一定とすることのできる煙感知器としても良い。
【0053】
すなわち、本体ケースと、前記本体ケース内の検知空間へ光を出射する発光部と、前記検知空間内に侵入した煙による前記発光部からの光の散乱光を受光する受光部と、前記発光部を制御して前記検知空間へ光を出射させ、このときの前記受光部からの出力に基づいて前記検知空間内への煙の侵入を検知する制御部と、を備えた煙感知器において、前記発光部の周囲温度を検知する温度検知部と、前記発光部の周囲温度に対する調整情報であって、当該発光部の個体差に対応した調整情報を記憶した調整情報記憶部と、を備え、前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記発光部の出力を補正する。
【0054】
またこの場合、前記発光部は、制御部の制御信号を電力調整可能に増幅する可変増幅器と、この可変増幅器で電力調整された制御信号に基づいて発光する発光素子と、を備え、前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記可変増幅器を制御することによって、前記発光部の出力の補正を行なうこととしても良い。
【0055】
これにより、発光部周囲の温度測定結果に応じて発光部からの出力(発光量)を調整して、発光部の周囲温度が変化した場合であっても、煙の検出感度を可及的一定とすることができる。
【0056】
また、発光部周囲の温度測定結果に応じて発光部からの出力(発光量)を調整することに替えて、発光部周囲の温度測定結果に応じて受光部からの出力を調整するようにしても良い。
【0057】
すなわち、本体ケースと、前記本体ケース内の検知空間へ光を出射する発光部と、前記検知空間内に侵入した煙による前記発光部からの光の散乱光を受光する受光部と、前記発光部を制御して前記検知空間へ光を出射させ、このときの前記受光部からの出力に基づいて前記検知空間内への煙の侵入を検知する制御部と、を備えた煙感知器において、前記発光部の周囲温度を検知する温度検知部と、前記発光部の周囲温度に対する調整情報であって、当該発光部の個体差に対応した調整情報を記憶した調整情報記憶部と、を備え、前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記受光部の出力を補正する。
【0058】
また、この場合、前記受光部は、受光素子と、この受光素子の出力を増幅する可変増幅器と、を備え、前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記可変増幅器を制御することによって、前記受光部の出力の補正を行なうこととしても良い。
【0059】
これにより、発光部周囲の温度測定結果に応じて受光部からの出力を調整して、発光部の周囲温度が変化した場合であっても、煙の検出感度を可及的一定とすることができる。
【0060】
以下、本発明に係る煙感知器について、図面を参照しながら更に詳説する。なお、説明を分かりやすくするために、発光部周囲の温度測定結果に応じて煙検知閾値を調整することにより、発光部の周囲温度が変化した場合であっても、煙の検出感度を可及的一定とすることのできる煙感知器を第1実施形態で述べ、発光部周囲の温度測定結果に応じて発光部からの出力(発光量)を調整することにより、煙の検出感度を可及的一定とすることのできる煙感知器を第2実施形態で述べ、発光部周囲の温度測定結果に応じて受光部からの出力を調整することにより、煙の検出感度を可及的一定とすることのできる煙感知器を第3実施形態で述べる。
【0061】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る煙感知器Sの使用状態を示した説明図である。図1にも示すように、本実施形態に係る煙感知器Sは、屋内(本実施形態では居室1)の天井面Tに配設している。
【0062】
この煙感知器Sは、屋内に漂う煙3を感知して警報音を発したり、また図示しない火災報知機と連動させることにより、警報を発報して火災の迅速な消火に貢献するものである。
【0063】
具体的には、例えば図1に示したように、居室1での火災際には、燃焼物2からは炎と共に煙3が発生する。
【0064】
この煙3は、燃焼の熱により上方へ立ち上ることとなり、天井面Tに配設した煙感知器Sの内部に侵入する。
【0065】
煙感知器Sの内部には、光学式の煙センサが配設されており、同煙センサが煙3を感知して、警報を発報する。
【0066】
次に、この煙感知器Sの構成について図2を用いながら説明する。
【0067】
図2は、本実施形態に係る煙感知器Sの断面図を示している。図2にも示すように煙感知器Sは、先端を床面方向に向けた断面視略凸字状の形状を有しており、煙感知器Sを天井面Tに固定するための取付基部4と、同取付基部4に配設され煙センサAを備える検煙部本体5と、前記煙センサAを覆うように床面方向に向けて突設された検知空間形成部6とで構成している。
【0068】
また、検煙部本体5は検煙部ケーシング7を備え、検知空間形成部6は保護カバー8を備えており、この検煙部ケーシング7と保護カバー8とで、煙感知器S略全体を保護する本体ケース9としている。
【0069】
取付基部4は、床面方向に開口する断面視略コ字状としとしており、複数箇所に取付基部4(煙感知器S)を天井面Tに固定するための固定ネジ挿通孔50を穿設して、固定ネジ(図示せず)により煙感知器Sを天井面Tに取付可能に構成している。
【0070】
また、取付基部4の略中央部には、ケーブル挿通孔51を穿設しており、天井面Tの裏側(天井裏)に敷設した電源ケーブル(図示せず)をケーブル挿通孔51を介して煙感知器S内に引き込んで、煙感知器Sに電力を供給可能としている。
【0071】
また、このケーブル挿通孔51には、煙感知器Sが煙3を検知した際に発報した情報信号を、予め接続した火災報知機等(図示せず)に送信したり、火災報知機等から発せられた情報信号を煙感知器Sへ向けて送信するための通信ケーブル等(図示せず)も挿通される。
【0072】
また、コ字状に折曲した取付基部4の縁部15は、その外側面に前述の検煙部ケーシング7を取付可能としている。
【0073】
検煙部本体5は、前述の取付基部4に取り付けられる検煙部基板52と、同検煙部基板52に配設した回路基板53と、同回路基板53上に形成した煙センサAとを備えており、その周囲を検煙部ケーシング7で覆って構成している。
【0074】
煙センサAは、回路基板53上に形成した発光回路部87(後述)を備える発光部20、及び、受光回路部88(後述)を備える受光部21とで構成している。
【0075】
発光部20は、後述する検知空間70内に侵入した煙3により散乱光を得るための光源として機能するものであり、発光素子としての発光ダイオード55を備える発光回路部87と、後述する光路形成プレート54の発光部開口57とで構成している。
【0076】
そして、発光部20では、発光ダイオード55から放射された光が、図2において符号61の発光軸で示すように、水平方向に対して下方斜め方向に出射される。
【0077】
なお、本実施形態では、発光部20の発光素子として発光ダイオード55を使用しているが、長きに亘り比較的安定した光量を放射できるものであれば、特にこれに限定されるものではない。
【0078】
また、発光素子として用いる発光ダイオード55は、例えば、赤外線発光ダイオードとすることにより、一般家庭での火災で多く生じる白煙系の煙を感度良く捉えることができる。なお、本明細書において、「光」とは、可視光線の他に赤外線や紫外線をも含む概念である。
【0079】
一方、受光部21は、後述する検知空間70内に浸入した煙3により散乱した散乱光を検知する受光素子としてのフォトダイオード56を備える受光回路部88と、後述する光路形成プレート54の受光部開口58とで構成している。
【0080】
そして、受光部21の受光方向は、図2において、符号62の受光軸で示すように、発光部20の照射方向と交差するよう構成している。
【0081】
なお、本実施形態では、受光部21の受光素子としてフォトダイオード56を使用しているが、発光部20より出射された光で生じた散乱光を検知可能であれば特に限定されるものではなく、例えば、フォトトランジスタやフォトダーリントンを使用しても良い。
【0082】
光路形成プレート54は、発光ダイオード55とフォトダイオード56とを覆うように回路基板53上に配設されたものであり、発光ダイオード55からの光の出射方向や、フォトダイオード56へ入射する光の入射方向を規制するためのものである。
【0083】
具体的には、光路形成プレート54は、発光ダイオード55からの光の放射方向を規制する発光部開口57と、フォトダイオード56へ入射する光の入射方向を規制する受光部開口58とを備えている。
【0084】
発光部開口57は、発光ダイオード55の放射面59から水平方向に対して下方斜め方向に穴を穿設して形成しており、発光ダイオード55から放射された光は、発光部開口57を通じて水平方向に対して下方斜め方向に放射されることとなる。
【0085】
また、受光部開口58は、フォトダイオード56の受光面60から水平方向に対して下方斜め方向に穴を穿設して形成しており、検知空間70内の煙3にて散乱された散乱光のうち、この受光部開口58へ向かう光のみをフォトダイオード56へ導くようにしている。
【0086】
そして、発光部開口57の照射方向を示す発光軸61と、受光部開口58の受光方向を示す受光軸62とは交差するようにしており、検知空間70内に煙3がない場合には、発光ダイオード55から放射される光がフォトダイオード56に直接入射することを防ぎつつ、検知空間70内に煙3がある場合には、煙3にて散乱された散乱光がフォトダイオード56に入射可能となるようにしている。
【0087】
検知空間形成部6は、検知空間70を有するキャップ部30と、スピーカ63とを備えており、この両者を保護カバー8で覆って形成している。
【0088】
キャップ部30は、図2及び図3(a)に示すように、中央部に円錐山形部65を有する略円盤状のキャップ基部64と、同キャップ基部64に周壁構成体10を所定間隔を開けながら円環状に配設して形成したラビリンス壁Bとを備えており、ラビリンス壁Bの内方を検知空間70としている。
【0089】
換言すると、ラビリンス壁Bは、キャップ部30の側周、すなわち、周壁構成体10の外周壁を形成するようにしている。
【0090】
そして、キャップ部30は、煙センサAを覆うように取り付けられている。具体的には、煙センサAの発光部開口57及び受光部開口58が、検知空間70に露出するようにキャップ部30を配設している。
【0091】
なお、キャップ部30の周方向外面には、メッシュ状の防虫網16を配設しており、キャップ内に虫や埃が侵入するのを防ぐようにしている。
【0092】
スピーカ63は、保護カバー8によりキャップ部30の裏面66側に配設されている。
【0093】
このスピーカ63は、図示しない配線によって回路基板53に接続されており、煙センサAにより煙3が感知された場合や、予め接続した火災報知機等から発せられた情報信号を受信した場合には、煙を検出したことを報知する警告音や音声を出力する。
【0094】
保護カバー8は、前述の検煙部ケーシング7と共に本体ケース9を構成するものであり、また、キャップ部30とスピーカ63とを一体的にまとめて検知空間形成部6を構成するものでもある。
【0095】
また、この保護カバー8は、キャップ部30の側周(周壁構成体10の外周壁)と相対する位置を、周方向に断続的に切り欠いて煙流入口67を形成しており、煙感知器S周囲の煙3を、煙流入口67を介し、ラビリンス壁Bを通じて検知空間70内に誘導できるようにしている。
【0096】
次に、キャップ部30の構成について図3を用いながら、より詳細に説明する。図3(a)はキャップ部30の平面図を示しており、図3(b)は、平面視におけるラビリンス壁Bの一部を拡大した説明図である。
【0097】
図3(a)にも示すように、キャップ部30は、前述のキャップ基部64と、同キャップ基部64のキャップ基部端縁68に沿って定義した仮想の所定円周C内に円環状に周壁構成体10を並設して構成したラビリンス壁Bとで構成している。
【0098】
また、キャップ基部64は、キャップ基部端縁68に沿ってドーナツ状に形成した平坦部69と、キャップ基部64の略中央部分、すなわち、平坦部69内方に形成した円錐山形部65を備えている。
【0099】
円錐山形部65は、底面を検知空間70側に円錐状に突出させて形成しており、発光ダイオード55から出射する光の拡散を抑制する機能を果たすものである。
【0100】
なお、図3(a)において符号72は、キャップ部30を光路形成プレート54に固定するための係止凸部である。
【0101】
一方、ラビリンス壁Bは、水平方向に平坦な平坦部69上に周壁構成体10を並設して構成している。
【0102】
周壁構成体10は、図3(b)にも示すように、第1遮蔽壁構成片11と、同第1遮蔽壁構成片11に連設した第2遮蔽壁構成片12とで構成している。
【0103】
そして、この周壁構成体10は、以下に説明する所定の位置及び角度にて複数並設し、ラビリンス壁Bを構成することにより、煙3を効率的にラビリンス壁B内や検知空間70に誘導すると共に、検知空間70内に煙感知器Sの外の光(以下、単に外光という)が侵入するのを可及的防止するという役割を担っている。
【0104】
第1遮蔽壁構成片11は、所定円周Cにの近傍に配設された、平面視略く字状(略逆く字状)の形状を有する部材である。
【0105】
この第1遮蔽壁構成片11は、所定円周Cに沿って配置した周壁片11aを一辺とし、所定円周Cの内方に向かうべく配置した内方誘導片11bを他辺として、2つの辺で構成しており、周壁片11aと内方誘導片11bとの連結部で、所定円周Cの外方へ向かって屈曲させた部位近傍は、第1遮蔽壁構成片11の頂部71としている。
【0106】
周壁片11aは、キャップ部30周囲の煙を所定円周Cに沿って流す役割を有するとともに、後述する内方誘導片11bによりラビリンス壁B内に誘導された煙3が再び外方へ戻るのを防止する役割を果たすものであり、同周壁片11aや頂部71近傍の所定円周C上における接線と略平行となるように配設している。
【0107】
内方誘導片11bは、周壁片11a(所定円周C)に沿ってラビリンス壁B外周を流れる煙を、ラビリンス壁B内方に誘導する役割を有するものである。
【0108】
この内方誘導片11bは、前述の周壁片11aの仮想延長線nに対し、角度iだけ所定円周Cの内方へ向けて傾けて配設している。
【0109】
この角度iは、煙感知器Sの使用環境や設計等に応じて適宜設定することができるが、例えば40〜50度、好ましくは43〜47度とすることができる。
【0110】
角度iを40〜50度、好ましくは45度近傍の角度(例えば、43〜47度)とすることにより、ラビリンス壁B内に煙3を効率的に誘導することができ、しかも、外光が検知空間70内に侵入するのを可及的防止することができる。特に、43〜47度の範囲とすることで、設計精度の許容範囲を広げることができて、製造を容易にすることができる。
【0111】
第2遮蔽壁構成片12は、第1遮蔽壁構成片11の頂部71の内側(劣角側)から伸延する横断面視略レ字状の形状を有する部材である。
【0112】
具体的には、第2遮蔽壁構成片12は、第1遮蔽壁構成片11の頂部71劣角側を基端として所定円周Cの内方へ伸延する長辺形成片12bと、同長辺形成片12bの先端部を周壁片11a側へ角度pにて鋭角に折曲させて形成した折り返し部12aとで構成している。
【0113】
長辺形成片12bは、第1遮蔽壁構成片11の頂部71劣角側から、周壁片11aに対して角度k、内方誘導片11bに対して角度jとなるように伸延させている。
【0114】
ここで、角度kは、40〜50度、好ましくは43〜47度であり、角度jは、85〜95度、好ましくは88〜92度である。
【0115】
角度kを40〜50度、好ましくは45度近傍の角度(例えば、43〜47度)とし、角度jを85〜95度、好ましくは90度近傍の角度(例えば、88〜92度)とすることにより、ラビリンス壁B内に煙3を効率的に誘導することができ、しかも、外光が検知空間70内に侵入するのを可及的防止することができる。特に、角度kを43〜47度の範囲としたり、角度jを88〜92度の範囲とすることで、設計精度の許容範囲を広げることができて、製造を容易にすることができる。
【0116】
折り返し部12aは、後述する屈曲煙案内路40を所定の円周Cの外方へ屈曲させて検知空間70内に外光が侵入するのを防止すると共に、同折り返し部12aに到達した煙3を、並設した他の周壁構成体10の内方誘導片11bの内側面(角度jを形成する面)に向けて送り出す役割を有する。
【0117】
この折り返し部12aと長辺形成片12bとが成す角度pは65〜75度、好ましくは68〜72度である。
【0118】
角度pを65〜75度、好ましくは70度近傍の角度(例えば、68〜72度)とすることにより、煙3を並設した他の周壁構成体10の内方誘導片11bの内側面へ円滑に送り出すことができ、しかも、屈曲煙案内路40において狭隘部が形成されるのを可及的防止することができる。特に、68〜72度の範囲とすることで、設計精度の許容範囲を広げることができて、製造を容易にすることができる。
【0119】
また、折り返し部12aの先端部分には、隣接する周壁構成体10の長辺形成片12bに対して平行に切り欠いた切欠部14が形成されている。
【0120】
このように切欠部14を形成することにより、並設した他の周壁構成体10の内方誘導片11bの内側面へ折り返し部12aによって送り出された煙3が、長辺形成片12bに沿って検知空間70内に浸入する際に、折り返し部12aで再び流れが阻害されてしまうのを防止することができる。
【0121】
なお、周壁構成体10は、図3(a)及び図3(b)を用いて説明してきた上記構成を有するものであるが、この周壁構成体10は掌対象の形状としても良いのは言うまでもない。
【0122】
そして、ラビリンス壁Bは、このような周壁構成体10を複数所定の円周C内に円環状に並設して構成している。
【0123】
この各周壁構成体10の配置レイアウトは、図3(b)に示すように、内方誘導片11bが、並設した他の周壁構成体10の長辺形成片12bの長手方向中途部(例えば、中間点m付近)へ向くようにし、また、折り返し部12aは角度jを有する角へ向くように配置している。
【0124】
また、図3(a)に示すように、並設した第1遮蔽壁構成片11間に煙導入口13を形成すると共に、隣り合う前記第1遮蔽壁構成片11間から前記キャップ部30内までの間に、屈曲煙案内路40を形成し、キャップ部30外周の煙3が検知空間70に流入できるよう構成している。
【0125】
なお、周壁片11a、内方誘導片11b、折り返し部12aの長さは、煙感知器Sに光が照射された場合に、煙導入口13から検知空間70へ向けて直接的に外光が侵入せず、しかも、煙3の円滑な流動を可及的妨げない長さとしている。
【0126】
このように各周壁構成体10を配置することにより、外部からの光の侵入を可及的に防止するとともに、煙をより効率的に侵入可能とすることができる。
【0127】
次に、本実施形態に係る煙感知器Sの電気的構成について図4を用いながら説明する。図4は、本実施形態に係る煙感知器Sの電気的な構成を示したブロック図である。
【0128】
本実施形態に係る煙感知器Sは、前述の回路基板53上にマイコン80を備えており、煙感知器S全体を制御するための制御部として機能する。
【0129】
このマイコン80は、CPU90と、ROM91と不揮発性メモリ92とRAM86とA/D変換器93とを備えており、ROM91、不揮発性メモリ92、RAM86、A/D変換器93は、それぞれCPU90に接続されている。
【0130】
ROM91には、CPU90により後述するフローを実行し、煙感知器Sの動作を制御するためのプログラムが記憶されている。
【0131】
また、不揮発性メモリ92には、煙を検知したか否かを判定をする際に参照される調整情報としての煙検知閾値テーブル(図5(a)参照)が記憶されており、この不揮発性メモリ92は、調整情報記憶部として機能する。
【0132】
具体的には、CPU90が、温度センサからの温度データと、この不揮発性メモリ92(調整情報記憶部)に記憶された煙検知閾値テーブルとを照合することにより、煙検出閾値を算出すると共に、後述する受光回路部88からの受光信号と、この算出した煙検出閾値とを比較して、煙を検知したか否かについて判断を行う。なお、煙検知閾値テーブルについては、後に詳述する。
【0133】
RAM86は、CPU90の一時記憶領域として種々のフラグや変数の値を記憶する機能を有する。記憶されるフラグの例としては、例えば、煙を検知したと判断した場合「1」の値をとり、その他の場合(煙を検知したと判断していない場合)に「0」の値をとる煙検知フラグがある。
【0134】
A/D変換器93は、後述する受光回路部88により送信されるアナログの電圧値の受光信号を、CPU90が処理可能なデジタルの電圧値の受光信号に変換するものである。
【0135】
また、このマイコン80には、前述の検知空間70に向けて光を出射するための発光回路部87と、検知空間70内の煙3により生じた散乱光を受光するための受光回路部88と、温度を測定するための温度センサ81と、マイコン80を再起動させるためのリセットボタン82と、テストモードスイッチ99と、スピーカ63とが接続されている。
【0136】
発光回路部87は、前述した発光部20を構成するもので、可変アンプ84と発光素子としての発光ダイオード55とを備えており、発光ダイオード55は、可変アンプ84を介してマイコン80に接続している。
【0137】
また、可変アンプ84は、マイコン80の制御により、発光ダイオード55へ出力する電力を調整可能としており、この可変アンプ84から出力される電力に応じて発光ダイオード55の発光量を変化できるようにしている。
【0138】
受光回路部88は、前述した受光部21を構成するもので、受光素子としてのフォトダイオード56とI−Vアンプ85とを備えており、フォトダイオード56はI−Vアンプ85を介してマイコン80に接続している。
【0139】
また、I−Vアンプ85は、フォトダイオード56に光が入射することで得られた電流による受光信号を、電圧による受光信号に変換し、また、信号強度を増幅する役割も担っている。また、特に限定されるものではないが、本実施形態では、フォトダイオード56に入射する光量に比例した電圧が出力されるように構成している。
【0140】
温度センサ81は、受光回路部88の発光ダイオード55近傍に配設されており、マイコン80は、この温度センサ81から送信される温度データに基づいて、同発光ダイオード55周囲の温度を測定することができる。なお、この温度センサ81は、温度検知部として機能するものである。
【0141】
リセットボタン82は、煙感知器Sを天井面Tに設置した状態で、使用者が押圧可能な場所(例えば、煙感知器Sの側面部等)に配設されており、このリセットボタン82を押下することにより、後述する実行中のフローを中断すると共に、処理中に使用していたフラグや変数の値を初期値に戻すことができる。
【0142】
テストモードスイッチ99は、煙感知器Sをテストモード(後述)とするためのスイッチである。テストモードスイッチ99をON操作することで、後述する調整情報書込装置94からの命令に基づいて、発光回路部87の可変アンプ84がテスト用の所定電力を出力するよう設定されると共に、不揮発性メモリ92へのCPU90による書き込みが許可される状態となる。
【0143】
スピーカ63は、マイコン80の制御により、警報音や警告の音声等を出すものである。
【0144】
また、本実施形態に係る煙感知器Sの特徴的な構成として、後にフローを用いて詳述するが、使用環境温度に由来する煙検知感度の変化を補正する機能を備えている。
【0145】
具体的に説明すると、発光ダイオード55は、使用環境の温度に依存して発光量が異なることが知られており、一般に、温度が高い程発光量が減少することとなる。
【0146】
それゆえ、仮に、「煙を検知した」と判断するための閾値(煙検知閾値)を、発光部20周囲の温度に関係なく一定の値とした場合、煙感知器Sの使用環境温度が高い場合と低い場合とでは、発光ダイオード55からの発光量が異なるため、煙を検知する感度に差異が生じることとなる。
【0147】
換言すると、一般的な発光ダイオード55の場合、温度が高い程発光量が減少するため、煙感知器Sを高温下で使用した場合と、低温下で使用した場合とを比較すると、高温下で使用した場合の方が、発光ダイオード55からの発光量が少なく、検出感度が鈍くなる。
【0148】
このような現象を回避するために、本実施形態に係る煙感知器Sでは、発光部20(発光回路部87)の周囲の温度に応じて、煙を検出したか否かの判断の境界となる煙検知閾値の調整を行う。
【0149】
特に、本実施形態では、CPU90が、不揮発性メモリ92内に記憶させた煙検知閾値テーブルと、温度センサ81から得られる温度データに基づいて算出した温度とを照合することにより、煙検知閾値を調整する。
【0150】
煙検知閾値テーブルは、具体的には図5(a)に示すように、温度と、受光信号の所定の電圧値を煙検出閾値とした複数の数値群で構成している。
【0151】
図5(a)の表によれば、温度が20℃の場合の煙検知閾値はZth〔V〕であり、0℃の場合の煙検知閾値は1.07×Zth〔V〕、30℃の場合の煙検知閾値は0.98×Zth〔V〕となっている。
【0152】
そして、例えば発光部20の周囲温度が30℃の場合、受光回路部88から出力された受光信号の電圧値が0.98×Zth〔V〕を越えると、CPU90は煙を検知したものとして警報を発報する。
【0153】
また、例えば、発光部20の周囲温度が10℃の場合では、煙検知閾値が1.04×Zth〔V〕であるので、受光回路部88から出力された受光信号の電圧値が30℃の際の煙検出閾値である0.98×Zth〔V〕を越えるZth〔V〕であっても、CPU90は煙を検知していないものとして処理を行うこととなる。
【0154】
なお、ここで示した煙検知閾値テーブルは、温度を10℃刻みとしているが、特にこれに限定されるものではなく、煙感知器Sの使用環境等に応じて適宜設定することができる。
【0155】
また、この煙検知閾値テーブルは、図5(b)に示すように、複数のそれぞれ異なった煙検知閾値テーブル群(以下、調整情報データベース97という。)の中から、適宜選択された所定の煙検知閾値テーブルであっても良い。
【0156】
この調整情報データベース97は、発光素子の製品個体差による煙検出感度の補正に使用することができる。
【0157】
具体的に説明すると、一般に、同一メーカーで同一型番の発光ダイオードであっても、個々の製品の個体差が存在することが知られており、温度に依存する発光量の変化もまた異なっている。
【0158】
したがって、同一型番の発光ダイオード55を使用し、同じ温度環境下に置かれた2つの煙感知器がある場合、同じ煙検知閾値テーブルを使用し、同じ濃度の煙3を検知空間70に送給した場合であっても、煙3を検出したと判断する煙感知器と、煙3を検出したと判断しない煙感知器とが出現する可能性がある。
【0159】
そこで、このような現象を回避するために、本実施形態に係る煙感知器Sでは、予め各温度に対応する煙検出閾値が異なるさまざまなパターンの煙検知閾値テーブルを複数備えた調整情報データベース97を構築しておき、同データベースの中から個々の煙感知器Sの発光ダイオード55の発光特性に最も近似した煙検知閾値テーブルを選択し、不揮発性メモリ92に記憶させるようにしている。
【0160】
なお、調整情報データベースから所定の煙検知閾値テーブルを選択する作業は、煙感知器Sの製造時や出荷前の煙検出感度テストの際に行っておき、出荷後は既に選択された煙検知閾値テーブルを不揮発性メモリ92(調整情報記憶部)から読み出して、煙検知閾値の調整を行うと良い。
【0161】
ここで、便宜上、図4が煙感知器Sの出荷前の煙検出感度テスト時であると仮定して説明すると、本実施形態では、煙感知器Sとは別体に、発光特性検出部として機能する調整情報書込装置94を用意されており、この調整情報書込装置94により煙感知器Sに備えられた発光ダイオード55の製品個体差に最も近似した煙検知閾値テーブルを不揮発性メモリ92へ記憶させるようにしている。
【0162】
ここで、符号103は、受光回路部88とマイコン80との間に設けられた端子部であり、符号100は、温度センサ81とマイコン80との間に設けられた端子部であり、符号95で示す一点鎖線は、調整情報書込装置94から伸延し、端子部103に接触させて、受光信号を取得するためのテストリードであり、符号101で示す一点鎖線は、調整情報書込装置94から伸延し、端子部100に接触させて、温度データを取得するためのテストリードであり、符号96で示す一点鎖線は、調整情報書込装置94からCPU90を介して不揮発性メモリ92へ煙検知閾値テーブル(調整情報)を書き込むためのデータ通信ケーブルである。
【0163】
また、調整情報書込装置94には、受光信号の電圧値を測定する受光信号測定器98と、前述の調整情報データベース97と、調整情報書込装置94全体を制御するマイコン102とが備えられており、受光信号測定器98と調整情報データベース97とはマイコン102にそれぞれ接続されている。
【0164】
また、調整情報書込装置94のマイコン102は、後に図10を用いて説明するフローを処理するためのプログラムを実行する。
【0165】
そして、煙検出感度テストの際に、煙感知器Sを所定温度下に置いて所定濃度の煙3を検知空間70内に供給し、前述のテストモードスイッチ99をON操作して煙感知器Sをテストモードとし、受光回路部88から出力される受光信号をテストリード95を介して調整情報書込装置94に取り込む。また、温度センサ81から出力される温度データをテストリード101を介して調整情報書込装置94に取り込む。
【0166】
調整情報書込装置94では、受光信号測定器98により受光回路部88から出力された受光信号の電圧値と、温度センサ81から出力された温度データに基づく温度とが測定され、調整情報データベース97の中から、図5(b)で示すように、前記所定温度における受光信号の電圧値と最も近似した値を有する煙検知閾値テーブルを選択し、データ通信ケーブル96を介して不揮発性メモリ92に所定の煙検知閾値テーブルとして書き込む。
【0167】
このようにして、製品個体差による煙検出閾値の違いを調整するようにしている。
【0168】
なお、出荷後は、調整情報書込装置94、テストリード95、テストリード101、データ通信ケーブル96は、煙感知器Sから取り外される。また、テストモードスイッチ99はOFF状態に戻される。
【0169】
なお、本実施形態では、発光回路部87(発光部20)へ一度だけ所定の電力を供給し、得られた受光信号及び温度情報に基づいて調整情報データベース97から所定の煙検知閾値テーブルを選択することとしたが、発光回路部87(発光部20)へ供給する電力を2点以上変えて、それぞれの発光部20(発光回路部87の発光ダイオード55)の発光レベルを検出して発光特性を検出し、調整情報データベース97から所定の煙検知閾値テーブルを選択するようにしても良い。
【0170】
また、テストモード時の温度環境を2点以上変えて、それぞれの温度での発光部20(発光回路部87の発光ダイオード55)の発光レベルを検出して発光特性を検出し、調整情報データベース97から所定の煙検知閾値テーブルを選択するようにしても良い。
【0171】
サンプリング回数を増やすことにより、製品個体差による感度の差異の補正に適した煙検知閾値テーブル(調整情報)を選択することができることとなる。
【0172】
また、本実施形態では、調整情報は、温度と閾値との対応が離散的な煙検知閾値テーブルとしていたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、温度と閾値との対応が連続的な演算情報としても良い。換言すれば、温度と閾値の相関式を調整情報として、調整情報記憶部としての不揮発性メモリ92に記憶させても良い。
【0173】
具体的には、図5(a)に示した煙検知閾値テーブルの代替として、図5(c)に示すような式とすることができる。また、この際、調整情報データベース97に格納しておくべき複数の調整情報は、図5(b)に示したような、各温度に対応する閾値をそれぞれ違えた煙検知閾値テーブル群に変えて、図5(d)に示す係数と切片とをそれぞれ違えた演算情報群としても良い。勿論、係数のみや切片のみを変えたものであっても良い。この演算情報群もまた、調整情報データベースとして使用することができる。なお、演算情報群を構成する演算情報は、例えば相関式とした場合、その相関式の次数等は適宜設定することができる。
【0174】
また、調整情報は、調整情報書込装置94の検出結果(測定結果)に応じて生成し、不揮発性メモリ92へ書き込むようにしても良い。
【0175】
例えば、テストモード時の温度環境を2点以上変えて、それぞれの温度での調整情報書込装置94の検出結果(測定結果)に応じて、煙検知閾値テーブルや、温度と閾値の相関式を生成するようにしても良い。
【0176】
なお、相関式は、近似式であっても良い。例えば、1次曲線の場合は、最小二乗法等により生成することができる。
【0177】
次に、本実施形態に係る煙感知器Sの処理について、図6〜図10を用いて説明する。図6は、本実施形態に係る煙感知器Sのメイン処理を示したフローであり、図7はテストモード処理を示したすフローであり、図8は光出射処理を示したフローであり、図9は受光信号解析処理を示したフローである。
【0178】
まずは、図6を用いてメインフローについて説明する。制御部として機能するマイコン80のCPU90は、まず、RAMアクセス許可、作業領域を初期化等の初期設定処理を実行する(ステップS10)。また、この際、RAM86に煙検知フラグを設定し、同煙検知フラグの値を「0:未検出」とする。
【0179】
次いで、CPU90は、テストモード処理(ステップS11)を実行する。このテストモード処理では、テストモードスイッチ99がONであるか否かを判断し、ONである場合には、発光部20の周囲温度に応じて発光ダイオード55の発光特性を検出する。CPU90は、このテストモード処理を実行することで、発光特性検出部として機能する。なお、このテストモード処理については、後に図7を用いて説明する。
【0180】
次いで、CPU90は、発光部20から検知空間70へ向けて光を出射する光出射処理を実行する(ステップS12)。なお、この光出射処理については、後に図8を用いて説明する。
【0181】
次に、CPU90は、受光部21(受光回路部88)から出力される受光信号を解析する受光信号解析処理を実行する(ステップS13)。
【0182】
この受光信号解析処理では、受光回路部88からマイコン80に送られた受光信号が、煙検知閾値を上回るか否かについて判断を行う。なお、この受光信号解析処理は、後に図9を用いて詳説する。
【0183】
次に、CPU90は、リセットボタン82が押下されたか否かについて判断を行う(ステップS14)。
【0184】
ここで、CPU90が、リセットボタン82が押下されていると判断した場合(ステップS14:Yes)は、処理をステップS10へ移して再度初期設定を行う。
【0185】
一方、CPU90が、リセットボタン82が押下されていないと判断した場合(ステップS14:No)は、処理をステップS15へ移す。
【0186】
ステップS15では、CPU90は、RAM86を参照し、煙検知フラグが「1:煙検出」であるか否かについて判断を行う。
【0187】
ここで、煙検知フラグが「1:煙検出」ではないと判断した場合(ステップS15:No)には、処理をステップS11へ移してテストモード処理を実行する。
【0188】
また、煙検知フラグが「1:煙検出」であると判断した場合(ステップS15:Yes)には、煙が検知されたとして処理をステップS16へ移す。
【0189】
ステップS16では、煙を検知したことを報知する警報発報処理を行う。この警報発報処理では、例えば、煙感知器Sに内蔵されたスピーカ63から警報音や音声等を出力するようにしている。
【0190】
次に、ステップS17では、マイコン80は、リセットされたか否かについて判断する。
【0191】
このステップS17において、リセットされていないと判断した場合(ステップS17:No)は、再びステップS17の処理を行う。すなわち、リセットされるまで、警報の発報は維持される。
【0192】
一方、ステップS17において、リセットされたと判断した場合(ステップS17:Yes)は、処理をステップS10へ移して初期設定を行う。
【0193】
なお、このステップS17において判断する「リセット」は、リセットボタン82が押下されたか否かについて判断するのは勿論のこと、図示しない火災報知システム等により、遠隔操作でリセット信号が受信されたか否かについて判断するようにしても良い。
【0194】
次に、前述のステップS11で行うテストモード処理について図7を用いながら詳説する。なお、本テストモード処理で関連する調整情報書込装置94での処理については、後に図10を用いて説明する。
【0195】
テストモード処理では、まず、CPU90は、マイコン80に接続されたテストモードスイッチ99がONであるか否かについて判断を行う(ステップS21)。
【0196】
ここで、CPU90は、テストモードスイッチ99を参照し、テストモードスイッチがONであると判断した場合(ステップS21:Yes)には、処理をステップS22へ移す。なお、ここで、CPU90が処理をステップS22へ移すことにより、煙感知器Sはテストモードとなる。
【0197】
一方、CPU90が、テストモードスイッチがONではないと判断した場合(ステップS21:No)は、分岐前のアドレスに復帰して処理を続行する。
【0198】
ステップS22では、調整情報書込装置94からの電力設定命令を受信したか否かについて判断を行う。
【0199】
この調整情報書込装置94から送信される電力設定命令は、発光回路部87の可変アンプ84から出力される電力値を所定の値に設定する命令である。
【0200】
ここで、CPU90は、電力設定命令を受信したと判断した場合(ステップS22:Yes)には、処理をステップS23へ移す。
【0201】
一方、CPU90が、電力設定命令を受信していないと判断した場合(ステップS22:No)には、処理をステップS21へ移す。
【0202】
ステップS23では、CPU90は、不揮発性メモリ92内の調整情報を消去する。
【0203】
次いで、CPU90は、調整情報書込装置94からの電力設定命令に基づき、所定電力が出力可能となるよう、発光回路部87の可変アンプ84の設定を行い(ステップS24)、発光部20(発光回路部87の発光ダイオード55)を点灯させる(ステップS25)。
【0204】
次に、CPU90は、調整情報書込装置94からの書込終了信号を受信したか否かについて判断を行う(ステップS26)。
【0205】
この調整情報書込装置94から送信される書込終了信号は、調整情報書込装置94が、前述のテストリード95及びテストリード101を介して受光信号及び温度データを取得し、同受光信号及び温度データに基づいて調整情報データベース97から所定の調整情報を選択し、この選択した調整情報を不揮発性メモリ92へ書き込んだことをCPU90へ知らせるための信号である。
【0206】
ここで、CPU90は、書込終了信号を受信したと判断した場合(ステップS26:Yes)には、発光回路部87の発光ダイオード55を消灯し(ステップS27)、処理を前述のステップS21へ移す。
【0207】
一方、CPU90が、書込終了信号を受信していないと判断した場合(ステップS26:No)には、処理をステップS28へ移す。
【0208】
ステップS28では、CPU90は、再度、電力設定命令を受信したか否かについて判断を行う。
【0209】
ここで、CPU90が、電力設定命令を受信していないと判断した場合(ステップS28:No)には、処理を前述のステップS25へ移す。
【0210】
一方、CPU90が、電力設定命令を受信したと判断した場合(ステップS28:Yes)には、処理を前述のステップS24へ移す。
【0211】
次に、前述のステップS12で行う光出射処理について図8を用いながら詳説する。
【0212】
光出射処理では、まず、CPU90は、発光回路部87の可変アンプ84から出力される電力の設定値を、予め定めた電力値が出力できる値に設定する(ステップS30)。
【0213】
次いで、マイコン80は、発光回路部87の発光ダイオード55を点灯し(ステップS31)、処理を分岐前のアドレスに戻す。
【0214】
次に、前述のステップS13で行う受光信号解析処理について図9を用いながら説明する。
【0215】
受光信号解析処理では、まず、CPU90は、受光回路部88から得られた受光信号を所定時間(例えば、0.1秒)分、RAM86に記憶する(ステップS40)。
【0216】
次いで、CPU90は、RAM86に記憶した所定時間分の受光信号に基づいて、受光信号の電圧の平均値を算出する(ステップS41)。
【0217】
また、CPU90は、温度センサ81からの温度データを取得して、発光部20周囲の温度を測定する温度測定処理を行う(ステップS42)。
【0218】
そして、CPU90は、不揮発性メモリ92に記憶された煙検出閾値テーブルを参照し、測定した温度における煙検出閾値を取得する(ステップS43)。
【0219】
続いて、CPU90は、ステップS43にて取得した煙検出閾値と、ステップS41で算出した電圧の平均値とを比較し、受光信号の電圧の平均値が煙検出閾値よりも大きいか否かについて判断を行う(ステップS44)。
【0220】
ここで、電圧の平均値が煙検出閾値よりも大きいと判断した場合(ステップS44:Yes)は、煙検知フラグに、「1:煙検出」のフラグを設定し(ステップS45)、分岐前のアドレスに復帰する。
【0221】
一方、受光信号の電圧の平均値が煙検出閾値よりも大きくないと判断した場合(ステップS44:No)は、処理をステップS46へ移す。
【0222】
ステップS46では、CPU90は、マイコン80に内蔵したタイマ(図示せず)を参照し、所定の発光時間(例えば1秒)が終了したか否かを判断する。
【0223】
ここでCPU90は、所定の発光時間が終了していないと判断した場合(ステップS46:No)は、処理をステップS40へ移す。
【0224】
一方、CPUが発光時間が終了したと判断した場合(ステップS46:Yes)は、発光回路部87の発光ダイオード55を消灯し(ステップS47)、分岐前のアドレスに復帰する。
【0225】
次に、ステップS11のテストモード処理で関連する調整情報書込装置での処理について、図10を用いて説明する。
【0226】
図4のブロック図で示したように、本実施形態に係る煙感知器Sの不揮発性メモリ92(調整情報記憶部)に記憶される調整情報は、発光特性検出部としての調整情報書込装置94により書き込まれることとしている。
【0227】
そこでここでは、この調整情報書込装置94での調整情報の書き込み処理について言及する。
【0228】
調整情報書込装置処理では、まず、発光部20(発光回路部87)の可変アンプ84にて出力する電力値と、温度情報及び受光信号の測定回数との設定を行う(ステップS50)。
【0229】
ここで、測定回数の設定は任意であり、1回でも良く、また、2回以上としても良い。この測定回数は、例えるならば、検量線(標準曲線)の測定ポイント数に該当するものである。
【0230】
また、可変アンプ84にて出力する電力値、すなわち、発光ダイオード55の発光量は、測定毎に違えても良く、また、同じ電力値(発光量)で複数連の測定を行うようにしても良い。
【0231】
この電力値及び測定回数の設定は、調整情報書込装置94の使用者が、キーボード等の図示しない入力装置を介して入力した値を設定する。
【0232】
次いで、調整情報書込装置94のマイコン102は、煙感知器SのCPU90に対し、前述の設定された電力値と共に、電力設定命令を送信する(ステップS51)。
【0233】
なお、測定回数を2回以上に設定した場合でも、ここでは1回分の電力値のみ送信する。
【0234】
次に、マイコン102は、受光信号及び温度データを、煙感知器Sから取得したか否かについて判断を行う(ステップS52)。
【0235】
すなわち、データ通信ケーブル96がマイコン80に適正に接続され、電力設定命令が煙感知器Sに伝達された上で、端子部103からテストリード95を介して受光信号が受信されると共に、端子部100からテストリード101を介して温度データが受信されたか否かについて判断する。
【0236】
ここでマイコン102が、受光信号及び温度データが受信されていないと判断した場合(ステップS52:No)には、処理をステップS53へ移す。
【0237】
ステップS53では、マイコン102は、電力設定命令を送信してから所定時間が経過したかを判断し、所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS53:No)には、処理を再びステップS52へ移す。また、マイコン102が、所定時間が経過したと判断した場合(ステップS53:Yes)には、タイムアウトとして処理を終了する。
【0238】
翻って、ステップS52において、マイコン102が、受光信号及び温度データが受信されたと判断した場合(ステップS52:Yes)には、処理をステップS54へ移す。
【0239】
ステップS54では、マイコン102は、取得した温度データに基づいて、発光部20周囲の温度を算出する。
【0240】
次いで、マイコン102は、得られた受光信号に基づいて所定時間あたりの平均受光電圧値を受光信号測定器98で算出させ、同平均受光電圧値を取得(ステップS55)し、温度と平均受光電圧値とを、マイコン102内の一時記憶領域に記憶する(ステップS56)。
【0241】
次に、マイコン102は、測定回数が、ステップS50にて設定した測定回数に達したか否かについて判断を行う(ステップS57)。
【0242】
ここでマイコン102が、設定した測定回数に達していないと判断した場合(ステップS57:No)は、処理をステップS51へ移す。
【0243】
なお、次に行われるステップS51の処理では、予めステップS50で設定した2回目以降の電力設定値を煙感知器Sへ電力設定命令と共に送信することとなる。
【0244】
一方、ステップS57において、マイコン102が設定した測定回数に達したと判断した場合(ステップS57:Yes)には、マイコン102は、調整情報データベース97を参照し、得られた温度と平均受光電圧との関係が同一、若しくは、最も近似している調整情報を決定する(ステップS58)。
【0245】
そして、マイコン102は、決定した調整情報を煙感知器Sの不揮発性メモリ92(調整情報記憶部)に書き込みを行い(ステップS59)、煙感知器Sへ書込終了信号を送信(ステップS60)して、処理を終了する。
【0246】
上述してきたようにして、本実施形態に係る煙感知器Sは、使用環境温度に由来する煙検知感度の変化を調整し、検知空間70内の煙3を感知して発報するように構成している。
【0247】
なお、本実施形態では、調整情報書込装置94は煙感知器Sと別体に設けることとしたが、特にこれに限定されるものではなく、調整情報書込装置94を煙感知器Sに内蔵するようにしても良い。換言すれば、マイコン80に調整情報書込装置94の役割を担わせて発光特性検出部として機能させても良い。
【0248】
具体的には、調整情報データベース97は予めROM91内に記憶させておき、CPU90によって受光信号の電圧値及び温度センサ81から取得した温度データに基づく温度を測定させて受光信号測定器98と同様の機能を行わせる。なお、この場合、調整情報記憶部は、ROM91と不揮発性メモリ92とで構成されるものとなる。
【0249】
そして、前述の出荷時の製品テストと同様に、煙感知器Sを所定温度下に置いて所定濃度の煙3を検知空間70内に供給し、テストモードスイッチ99をON操作して煙感知器Sをテストモードとし、受光回路部88から出力される受光信号の電圧値を発光特性検出部としてのマイコン80で測定し、所定温度における受光信号の電圧値と最も近似した値を有する煙検知閾値テーブルを選択して不揮発性メモリ92に所定の煙検知閾値テーブルとして書き込むことによっても実現することができる。
【0250】
また、前述のように、調整情報データベースを予め備えることなく、調整情報を生成するようにしても良い。
【0251】
ここでは、図7で示したテストモード処理に替えて、マイコン80自体を発光特性検出部として機能させた場合、すなわち、マイコン80に調整情報書込装置94の役割を担わせた場合の処理について図11を用いながら説明する。
【0252】
なお、ここでの説明は、発光ダイオード55に低電力と高電力との2種の電力を供給し、各電力の際に得られた受光信号の電圧値から、温度と煙検知閾値の相関式を生成して調整情報とし、調整情報記憶部に記憶させる処理について述べる。
【0253】
図11に示すように、テストモード処理では、まずCPU90は、テストモードスイッチがON状態であるか否かについて判断を行う(ステップS120)。
【0254】
ここで、CPU90により、テストモードスイッチがON状態ではないと判断された場合(ステップS120:No)、処理を分岐前のアドレスに移す。
【0255】
一方、CPU90により、テストモードスイッチがON状態であると判断された場合(ステップS120:Yes)は、処理をステップS121へ移す。
【0256】
ステップS121では、CPU90は、予めROM91内に記憶されたテスト用低電力値を、発光回路部87の可変アンプ84に設定し、同可変アンプ84から発光ダイオード55へテスト用の低電力を出力できるようにし、処理をステップS122へ移す。
【0257】
次に、CPU90は、発光部20の発光ダイオード55を点灯させ(ステップS122)、次いで、温度センサ81から温度信号を取得して発光部20周囲の温度を算出する温度測定処理を行う(ステップS123)。
【0258】
そして、CPU90は、受光回路部88からの受光信号を取得し、測定した温度に対応させながら、RAM86に記憶させる(ステップS124)。
【0259】
このステップS124が終了すると、CPU90は、高電力測定が終わったか否かについて判断を行う(ステップS125)。
【0260】
ここで、CPU90により、高電力測定が終わっていないと判断された場合(ステップS125:No)、すなわち、低電力測定が終わったのみであると判断した場合には、処理をステップS126へ移す。
【0261】
ステップS126では、発光回路部87の可変アンプ84に測定用の高電力が出力可能となるように設定を行い、処理をステップS122へ移す。
【0262】
このようにステップS126にて可変アンプ84が高電力に設定された後のステップS122〜ステップS124では、まず、CPU90は、発光回路部87(発光部20)の発光ダイオード55を、可変アンプ84の設定(高電力)に応じた比較的大きい光量で点灯し(ステップS122)、温度センサ81からの情報を取得して、温度測定処理を行い(ステップS123)、そして、受光回路部88より得られた受光信号の強度を測定してRAM86に記憶する(ステップS124)こととなる。
【0263】
一方、CPU90が、高電力測定が終わったと判断した場合(ステップS125:Yes)、すなわち、低電力測定及び高電力測定の両方が終わったと判断した場合には、処理をステップS127へ移す。
【0264】
次に、CPU90は、前述のRAM86に記憶した低電力時及び高電力時の受光信号の電圧値及び発光部20周囲の温度から近似式を生成する(ステップS127)。
【0265】
そして、CPU90は、決定した煙検知閾値テーブルを調整情報として不揮発性メモリ92に記憶させる(ステップS128)。
【0266】
次いで、CPU90は、テストモードスイッチ99がON状態か否かについて判断を行う(ステップS129)。
【0267】
ここでCPU90が、テストモードスイッチ99がON状態であると判断した場合(ステップS129:Yes)には、処理を再度ステップS129へ移す。すなわち、テストモードスイッチ99がOFF状態となるまで、このステップS129を繰り返す。
【0268】
一方、CPU90が、テストモードスイッチ99がON状態でないと判断した場合(ステップS129:No)には、処理を分岐前のアドレスへ移す。
【0269】
このように、図11に示す処理を行わせることにより、マイコン80に調整情報書込装置94の役割を担わせて、発光特性検出部として機能させることができる。
【0270】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態として、発光部周囲の温度測定結果に応じて発光部からの出力(発光量)を調整することにより、煙の検出感度を可及的一定とすることのできる煙感知器Dについて述べる。
【0271】
なお、本第2実施形態で説明する煙感知器Dは、第1実施形態にて説明した煙感知器Sと比較して、主に、回路基板53の構成で相違する。そこで、前述の煙感知器Sと同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0272】
図12は、本第2実施形態に係る煙感知器Dの電気的な構成を示したブロック図である。
【0273】
ここで、マイコン80内のROM110には、温度センサ81からの温度情報により算出された温度とに基づいて、発光部20の出力(発光量)を調整する調整情報が予め備えられている。
【0274】
この調整情報は、具体的には、図13に示すような、各温度に対応する可変アンプ84の出力設定値を示す可変アンプ出力テーブルとすることができる。
【0275】
図13の表によれば、温度が20℃の場合の可変アンプ84の出力設定値はY〔V〕であり、0℃の場合の可変アンプ84の出力設定値は0.95×Y〔V〕、30℃の場合の可変アンプ84の出力設定値は1.02×Y〔V〕となっている。
【0276】
すなわち、煙感知器Dの発光素子は発光ダイオード55を使用しており、同一電力で温度が低くなる程発光量が多くなる傾向があるため、可変アンプ出力テーブル上では、温度が低くなる程可変アンプの出力設定値の電圧を下げることにより、発光部20からの出力(発光量)を略一定とし、煙の検出感度が可及的一定となるようにしている。
【0277】
なお、この可変アンプ出力テーブルは、第1実施形態で述べた煙検知閾値テーブルと同様に、複数のそれぞれ異なった可変アンプ出力テーブル群(以下、調整情報データベースという。)の中から、発光ダイオードの製品個体差に合わせて適宜選択された所定の可変アンプ出力テーブルとしても良い。
【0278】
また、本第2実施形態では、調整情報は、発光部20周囲の温度と可変アンプの出力との対応を示したテーブル(可変アンプ出力テーブル)としているが、第1実施形態でも述べたように、発光部20周囲の温度と可変アンプの出力とを対応付けた演算情報(相関式)としても良いのはいうまでもない。
【0279】
また、ROM110内には、予め設定された煙検出閾値が記憶されており、受光回路部88からの受光信号の電圧値が煙検出閾値を越えるか否かについてCPU90で判断することにより、煙の検出判定を行うようにしている。
【0280】
次に、本実施形態に係る煙感知器Dの処理について、図14〜図16を用いて説明する。図14は、本実施形態に係る煙感知器Dのメイン処理を示したフローであり、図15は光出射処理を示したフローであり、図16は受光信号解析処理を示したフローである。
【0281】
なお、以下に説明する煙感知器Dの処理では、前述の第1実施形態と同様の処理を行う部分もあるが、説明の便宜上、重複して説明する場合もある。
【0282】
煙感知器Dの制御部として機能するマイコン80のCPU90は、まず図14に示すように、RAMアクセス許可、作業領域を初期化等の初期設定処理を実行する(ステップS70)。また、この際、RAM86に煙検知フラグを設定し、同煙検知フラグの値を「0:未検出」とする。
【0283】
次いで、CPU90は、発光部20から検知空間70へ向けて光を出射する光出射処理を実行する(ステップS71)。なお、この光出射処理については、後に図15を用いて説明する。
【0284】
次に、CPU90は、受光部21(受光回路部88)から出力される受光信号を解析する受光信号解析処理を実行する(ステップS72)。
【0285】
この受光信号解析処理では、受光回路部88からマイコン80に送られた受光信号が、煙検知閾値を上回るか否かについて判断を行う。なお、この受光信号解析処理は、後に図16を用いて詳説する。
【0286】
次に、CPU90は、リセットボタン82が押下されたか否かについて判断を行う(ステップS73)。
【0287】
ここで、CPU90が、リセットボタン82が押下されていると判断した場合(ステップS73:Yes)は、処理をステップS70へ移して再度初期設定を行う。
【0288】
一方、CPU90が、リセットボタン82が押下されていないと判断した場合(ステップS73:No)は、処理をステップS74へ移す。
【0289】
ステップS74では、CPU90は、RAM86を参照し、煙検知フラグが「1:煙検出」であるか否かについて判断を行う。
【0290】
ここで、煙検知フラグが「1:煙検出」ではないと判断した場合(ステップS75:No)には、処理をステップS71へ移して光射出処理(ステップS71)を実行する。
【0291】
また、煙検知フラグが「1:煙検出」であると判断した場合(ステップS74:Yes)には、煙が検知されたとして処理をステップS75へ移す。
【0292】
ステップS75では、煙を検知したことを報知する警報発報処理を行う。この警報発報処理では、例えば、煙感知器Sに内蔵されたスピーカ63から警報音や音声等を出力するようにしている。
【0293】
次に、ステップS76では、CPU90は、リセットされたか否かについて判断する。
【0294】
このステップS76において、リセットされていないと判断した場合(ステップS76:No)は、再びステップS76の処理を行う。すなわち、リセットされるまで、警報の発報は維持される。
【0295】
一方、ステップS76において、リセットされたと判断した場合(ステップS76:Yes)は、処理をステップS70へ移して初期設定を行う。
【0296】
なお、このステップS76や前述のステップS73において判断する「リセット」は、リセットボタン82が押下されたか否かについて判断するのは勿論のこと、図示しない火災報知システム等により、遠隔操作でリセット信号が受信されたか否かについて判断するようにしても良い。
【0297】
次に、前述のステップS71で行う光出射処理について図15を用いながら詳説する。
【0298】
光出射処理では、まず、CPU90は、温度センサ81から温度データを取得して、発光部20周囲の温度を算出する温度測定処理を行う(ステップS80)。
【0299】
次に、CPU90は、ROM110(調整情報記憶部)に予め記憶させた可変アンプ出力テーブル(調整情報)を参照し、測定した温度との照合を行い(ステップS81)、測定した温度に対応する電力値を決定する(ステップS82)。なお、本第2実施形態では、電力値として電圧値を用いることとしているが、これに限定されるものではなく、電流値や、電流と電圧を乗じた値を決定するようにしても良い。
【0300】
次いで、CPU90は、発光回路部87の可変アンプ84を、ステップS82にて決定した電力値が出力できるよう設定を行う(ステップS83)。
【0301】
そして、CPU90は、発光回路部87に通電させて発光部20(発光ダイオード55)を前述の決定した電力値にて発光させる(ステップS84)。この処理が終了すると、CPU90は、分岐前のアドレスに処理を移す。
【0302】
次に、前述のステップS72で行う受光信号解析処理について図16を用いながら説明する。
【0303】
受光信号解析処理では、まず、CPU90は、受光回路部88から得られた受光信号を所定時間(例えば、0.1秒)分、RAM86に記憶する(ステップS90)。
【0304】
次いで、CPU90は、RAM86に記憶した所定時間分の受光信号に基づいて、受光信号の電圧の平均値を算出する(ステップS91)。
【0305】
また、CPU90は、温度センサ81からの温度データを取得して、発光部20周囲の温度を測定する温度測定処理を行う(ステップS92)。
【0306】
そして、CPU90は、ROM110(調整情報記憶部)に予め記憶させた煙検出閾値を取得する(ステップS93)。
【0307】
続いて、CPU90は、ステップS93にて取得した煙検出閾値と、ステップS91で算出した電圧の平均値とを比較し、受光信号の電圧の平均値が煙検出閾値よりも大きいか否かについて判断を行う(ステップS94)。
【0308】
ここで、電圧の平均値が煙検出閾値よりも大きいと判断した場合(ステップS94:Yes)は、煙検知フラグに、「1:煙検出」のフラグを設定し(ステップS95)、分岐前のアドレスに復帰する。
【0309】
一方、受光信号の電圧の平均値が煙検出閾値よりも大きくないと判断した場合(ステップS94:No)は、処理をステップS96へ移す。
【0310】
ステップS96では、CPU90は、マイコン80に内蔵したタイマ(図示せず)を参照し、所定の発光時間(例えば1秒)が終了したか否かを判断する。
【0311】
ここでCPU90は、所定の発光時間が終了していないと判断した場合(ステップS96:No)は、処理をステップS90へ移す。
【0312】
一方、CPUが発光時間が終了したと判断した場合(ステップS96:Yes)は、発光回路部87の発光ダイオード55を消灯し(ステップS97)、分岐前のアドレスに処理を移す。
【0313】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態として、発光部周囲の温度測定結果に応じて受光部21からの出力(受光信号電圧)を調整することにより、煙の検出感度を可及的一定とすることのできる煙感知器Eについて述べる。
【0314】
なお、本第3実施形態で説明する煙感知器Eは、第1実施形態にて説明した煙感知器Sや第2実施形態にて説明した煙感知器Dと比較して、主に、回路基板53の構成が一部で相違している。そこで、前述の煙感知器Sや煙感知器Dと同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0315】
図17は、本第3実施形態に係る煙感知器Eの電気的な構成を示したブロック図である。
ここで、本第3実施形態に特徴的には、受光回路部88にI−Vアンプ85から出力される受光信号の電圧値を増幅する可変アンプ111を備えている。
【0316】
また、マイコン80内のROM110には、第2実施形態と同様に、調整情報が予め記憶されている。但し、本第3実施形態で記憶されている調整情報は、温度センサ81からの温度情報により算出された温度とに基づいて、受光部21(可変アンプ111)の出力(受光信号電圧)を調整するものである。
【0317】
この調整情報は、具体的には、図18に示すような、各温度に対応する可変アンプ84の増幅割合を示す可変アンプ増幅割合テーブルとすることができる。
【0318】
図18の表によれば、温度が20℃の場合の可変アンプ111の増幅割合は1〔倍〕であり、0℃の場合の可変アンプ84の増幅割合は0.93〔倍〕、30℃の場合の可変アンプ84の増幅割合は1.05〔倍〕となっている。
【0319】
すなわち、煙感知器Eの発光素子は発光ダイオード55を使用しており、同一電力で温度が低くなる程発光量が多くなる傾向があるため、可変アンプ増幅割合テーブル上では、温度が低くなる程可変アンプの増幅割合を下げることにより、発光部20からの出力(発光量)を略一定とし、煙の検出感度が可及的一定となるようにしている。
【0320】
なお、この可変アンプ増幅割合テーブルは、第1実施形態で述べた煙検知閾値テーブルと同様に、複数のそれぞれ異なった可変アンプ増幅割合テーブル群(以下、調整情報データベースという。)の中から、発光ダイオード55の製品個体差に合わせて適宜選択された所定の可変アンプ増幅割合テーブルとしても良い。
【0321】
また、本第3実施形態では、調整情報は、発光部20周囲の温度と可変アンプの増幅割合との対応を示したテーブル(可変アンプ増幅割合テーブル)としているが、第1実施形態でも述べたように、発光部20周囲の温度と可変アンプの増幅割合とを対応付けた演算情報(相関式)としても良いのはいうまでもない。
【0322】
また、ROM110内には、予め設定された煙検出閾値が記憶されており、受光回路部88からの受光信号の電圧値(可変アンプ111にて増幅後の電圧値)が煙検出閾値を越えるか否かについてCPU90で判断することにより、煙の検出判定を行うようにしている。
【0323】
次に、本実施形態に係る煙感知器Eの処理について、図19を用いて説明する。図19は、本実施形態に係る煙感知器Eの受光信号解析処理を示したフローである。なお、本第3実施形態に係る煙感知器Eのメインフローは、第2実施形態で示した図14と同様であり、また、光出射処理は、第1実施形態で示した図8と同様であるため、説明を省略する。
【0324】
煙感知器Eの制御部として機能するマイコン80のCPU90は、受光信号解析処理において、まず図19に示すように、温度センサ81からの温度データを取得して、発光部20周囲の温度を測定する温度測定処理を行う(ステップS100)。
【0325】
次いで、CPU90は、ROM110(調整情報記憶部)内の調整情報を参照し、ステップS100にて測定した温度に対応する増幅割合を決定する(ステップS101)。
【0326】
続いて、CPU90は、受光部21(受光回路部88)の可変アンプ111を、ステップS101にて決定した増幅割合に設定する(ステップS102)。
【0327】
そして、可変アンプ111の増幅割合が上述の様に設定された状態で、受光回路部88から得られた受光信号を所定時間(例えば、0.1秒)分、RAM86に記憶する(ステップS103)。
【0328】
次いで、CPU90は、RAM86に記憶した所定時間分の受光信号に基づいて、受光信号の電圧の平均値を算出する(ステップS104)。
【0329】
続いて、CPU90は、予めROM110内に記憶されている煙検出閾値と、ステップS104で算出した電圧の平均値とを比較し、受光信号の電圧の平均値が煙検出閾値よりも大きいか否かについて判断を行う(ステップS105)。
【0330】
ここで、電圧の平均値が煙検出閾値よりも大きいと判断した場合(ステップS105:Yes)は、煙検知フラグに、「1:煙検出」のフラグを設定し(ステップS106)、分岐前のアドレスに復帰する。
【0331】
一方、受光信号の電圧の平均値が煙検出閾値よりも大きくないと判断した場合(ステップS105:No)は、処理をステップS107へ移す。
【0332】
ステップS107では、CPU90は、マイコン80に内蔵したタイマ(図示せず)を参照し、所定の発光時間(例えば1秒)が終了したか否かを判断する。
【0333】
ここでCPU90は、所定の発光時間が終了していないと判断した場合(ステップS107:No)は、処理をステップS103へ移す。
【0334】
一方、CPUが発光時間が終了したと判断した場合(ステップS107:Yes)は、発光回路部87の発光ダイオード55を消灯し(ステップS108)、分岐前のアドレスに処理を移す。
【0335】
上述してきたように、本発明によれば、本体ケース(例えば、本体ケース9)と、前記本体ケース内の検知空間(例えば、検知空間70)へ光を出射する発光部(例えば、発光部20)と、前記検知空間内に侵入した煙による前記発光部からの光の散乱光を受光する受光部(例えば、受光部21)と、前記発光部を制御して前記検知空間へ光を出射させ、このときの前記受光部からの出力が所定の煙検知閾値以上のときに前記検知空間内へ煙が侵入したと判定する制御部(例えば、マイコン80)と、を備えた煙感知器において、前記発光部の周囲温度を検知する温度検知部(例えば、温度センサ81)と、前記発光部の周囲温度に対する調整情報であって、当該発光部の個体差に対応した調整情報(例えば、煙検知閾値テーブルや温度と閾値の相関式)を記憶した調整情報記憶部(例えば、不揮発性メモリ92)と、を備え、前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記煙検知閾値の補正を行なうことを特徴とする煙感知器(例えば、煙感知器S)とすることにより、発光部の周囲温度が変化した場合であっても、煙の検出感度を可及的一定とすることのできる煙感知器を提供することができる。
【0336】
また、前記発光部の周囲温度を検知する温度検知部と、前記発光部の周囲温度に対する調整情報(例えば、可変アンプ出力テーブル)を記憶した調整情報記憶部(例えば、ROM110)と、を備え、前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記発光部の出力を補正することを特徴とする煙感知器(例えば、煙感知器D)とすることによっても、煙の検出感度を可及的一定とすることのできる煙感知器を提供することができる。
【0337】
さらに、前記発光部の周囲温度を検知する温度検知部と、前記発光部の周囲温度に対する調整情報(例えば、可変アンプ増幅割合テーブル)を記憶した調整情報記憶部(例えば、ROM110)と、を備え、前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記受光部の出力を補正することを特徴とする煙感知器(例えば、煙感知器E)とすることによっても、煙の検出感度を可及的一定とすることのできる煙感知器を提供することができる。
【0338】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんである。
【0339】
本明細書では、発光部周囲の温度測定結果に応じて煙検知閾値を調整する煙感知器を第1実施形態、発光部周囲の温度測定結果に応じて発光部からの出力(発光量)を調整する煙感知器を第2実施形態、発光部周囲の温度測定結果に応じて受光部からの出力を調整する煙感知器を第3実施形態でそれぞれ別個に述べたが、これらの処理を適宜組み合わせた煙感知器としても良いのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0340】
【図1】第1実施形態に係る煙感知器の使用状態を示した説明図である。
【図2】第1実施形態に係る煙感知器の断面図である。
【図3】第1実施形態に係るキャップ部の平面図及び、平面視におけるラビリンス壁の一部を拡大した説明図である。
【図4】第1実施形態に係る煙感知器の電気的な構成を示したブロック図である。
【図5】第1実施形態に係る調整情報及び調整情報データベースの概念を示した説明図である。
【図6】第1実施形態に係る煙感知器の処理を示したフローである。
【図7】第1実施形態に係る煙感知器の処理を示したフローである。
【図8】第1実施形態に係る煙感知器の処理を示したフローである。
【図9】第1実施形態に係る煙感知器の処理を示したフローである。
【図10】第1実施形態に係る調整情報書込装置での処理を示したフローである。
【図11】第1実施形態に係る煙感知器の処理を示したフローである。
【図12】第2実施形態に係る煙感知器の電気的な構成を示したブロック図である。
【図13】第2実施形態に係る調整情報の概念を示した説明図である。
【図14】第2実施形態に係る煙感知器の処理を示したフローである。
【図15】第2実施形態に係る煙感知器の処理を示したフローである。
【図16】第2実施形態に係る煙感知器の処理を示したフローである。
【図17】第3実施形態に係る煙感知器の電気的な構成を示したブロック図である。
【図18】第2実施形態に係る調整情報の概念を示した説明図である。
【図19】第3実施形態に係る煙感知器の処理を示したフローである。
【符号の説明】
【0341】
3 煙
9 本体ケース
10 周壁構成体
20 発光部
21 受光部
53 回路基板
55 発光ダイオード
56 フォトダイオード
80 マイコン
81 温度センサ
84 可変アンプ
85 I−Vアンプ
86 RAM
87 発光回路部
88 受光回路部
90 CPU
91 ROM
92 不揮発性メモリ
94 調整情報書込装置
97 調整情報データベース
99 テストモードスイッチ
110 ROM
111 可変アンプ
A 煙センサ
D 煙感知器
E 煙感知器
S 煙感知器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、
前記本体ケース内の検知空間へ光を出射する発光部と、
前記検知空間内に侵入した煙による前記発光部からの光の散乱光を受光する受光部と、
前記発光部を制御して前記検知空間へ光を出射させ、このときの前記受光部からの出力が所定の煙検知閾値以上のときに前記検知空間内へ煙が侵入したと判定する制御部と、を備えた煙感知器において、
前記発光部の周囲温度を検知する温度検知部と、
前記発光部の周囲温度に対する調整情報であって、当該発光部の個体差に対応した調整情報を記憶した調整情報記憶部と、を備え、
前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記煙検知閾値の補正を行なう
ことを特徴とする煙感知器。
【請求項2】
前記調整情報は、前記発光部の周囲温度を煙検知閾値に関連づけたテーブル又は演算情報であり、
前記制御部は、前記温度検知部で検出した前記発光部の周囲温度に応じた前記煙検知閾値を前記調整情報記憶部から読み出し、当該煙検知閾値を前記所定の煙検知閾値として設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の煙感知器。
【請求項3】
調整情報書込装置から情報を入力する入力部と、
前記受光部からの出力を前記調整情報書込装置へ出力する出力部と、を備え、
前記制御部は、当該煙検知器のテストモード時に、前記調整情報書込装置から前記入力部を介して電力設定命令を取得すると、前記発光部から前記検知空間へ光を出射させて、このときに前記受光部から出力される受光信号を前記出力部を介して前記調整情報書込装置へ出力し、前記受光部からの出力に基づいて前記調整情報書込装置で生成された調整情報を前記入力部を介して入力し、当該入力された前記調整情報を前記調整情報記憶部に記憶することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の煙検知器。
【請求項4】
前記制御部は、前記電力設定命令を取得すると、前記発光部から前記検知空間へ光を2点以上強度を変えて順次出射させることを特徴とする請求項3に記載の煙検知器。
【請求項5】
前記調整情報書込装置で生成される調整情報は、前記発光部の温度を2点以上変化させたときに前記受光部から出力される受光信号に基づいて生成される情報であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の煙検知器。
【請求項6】
前記発光部の発光特性を検出する発光特性検出部を備え、
前記調整情報記憶部には、前記発光部の周囲温度に対する調整情報が前記発光特性検出部での検出結果に対応して複数記憶されており、
前記制御部は、前記発光特性検出部の検出結果に対応する調整情報を前記調整情報記憶部から読み出して、前記煙検知閾値の補正を行なう
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の煙感知器。
【請求項7】
前記発光部の発光特性を検出する発光特性検出部を備え、
前記制御部は、前記発光特性検出部による検出結果に応じて前記調整情報を生成し、当該調整情報を前記調整情報記憶部に記憶する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の煙感知器。
【請求項8】
前記発光特性検出部は、前記発光部への供給電力を2点以上変えたときのそれぞれの前記発光部の発光レベルを検出して前記発光部の発光特性を検出する
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の煙感知器。
【請求項9】
前記発光特性検出部は、前記発光部の温度を2点以上変えたときのそれぞれの前記発光部の発光レベルを検出して前記発光部の発光特性を検出する
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の煙感知器。
【請求項10】
前記発光特性検出部は、当該煙感知器のテストモード時に前記発光部の発光レベルを検出する
ことを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の煙関知器。
【請求項11】
本体ケースと、
前記本体ケース内の検知空間へ光を出射する発光部と、
前記検知空間内に侵入した煙による前記発光部からの光の散乱光を受光する受光部と、
前記発光部を制御して前記検知空間へ光を出射させ、このときの前記受光部からの出力に基づいて前記検知空間内への煙の侵入を検知する制御部と、を備えた煙感知器において、
前記発光部の周囲温度を検知する温度検知部と、
前記発光部の周囲温度に対する調整情報であって、当該発光部の個体差に対応した調整情報を記憶した調整情報記憶部と、を備え、
前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記発光部の出力を補正する
ことを特徴とする煙感知器。
【請求項12】
前記発光部は、制御部の制御信号を電力調整可能に増幅する可変増幅器と、この可変増幅器で電力調整された制御信号に基づいて発光する発光素子と、を備え、
前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記可変増幅器を制御することによって、前記発光部の出力の補正を行なう
ことを特徴とする請求項11に記載の煙感知器。
【請求項13】
本体ケースと、
前記本体ケース内の検知空間へ光を出射する発光部と、
前記検知空間内に侵入した煙による前記発光部からの光の散乱光を受光する受光部と、
前記発光部を制御して前記検知空間へ光を出射させ、このときの前記受光部からの出力に基づいて前記検知空間内への煙の侵入を検知する制御部と、を備えた煙感知器において、
前記発光部の周囲温度を検知する温度検知部と、
前記発光部の周囲温度に対する調整情報であって、当該発光部の個体差に対応した調整情報を記憶した調整情報記憶部と、を備え、
前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記受光部の出力を補正する
ことを特徴とする煙感知器。
【請求項14】
前記受光部は、受光素子と、この受光素子の出力を増幅する可変増幅器と、を備え、
前記制御部は、前記温度検知部の検知結果と前記調整情報記憶部に記憶した調整情報とから、前記可変増幅器を制御することによって、前記受光部の出力の補正を行なう
ことを特徴とする請求項13に記載の煙感知器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2010−44536(P2010−44536A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207479(P2008−207479)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000164461)九州日立マクセル株式会社 (338)
【Fターム(参考)】