説明

照明装置および車両用前照灯

【課題】少なくとも暗所において照射対象の視認性が高い照明光を出射する照明装置、車両用前照灯を提供する。
【解決手段】ヘッドランプ1は、励起光を出射する半導体レーザ2と、500nm以上、520nm以下の範囲に発光スペクトルのピークを有する第1の蛍光体と、当該第1の蛍光体とは異なる発光スペクトルのピークを有する第2の蛍光体とを含み、半導体レーザ2が出射した励起光を受けて発光する発光部5とを備えている。発光部5から出射される光のスペクトルにおいて、540nm以上、570nm以下の範囲の発光スペクトルの発光強度よりも、第1の蛍光体の発光スペクトルのピークにおける発光強度の方が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励起光源と当該励起光源からの励起光により蛍光を発する発光部とを備える照明装置、特に車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
青色発光ダイオードと蛍光体とを組み合わせた白色LED(Light Emitting Diode)を用いた車両用前照灯が実用化され始めている。発光ダイオードを用いることにより、従来光源であるハロゲンランプやHID(High Intensity Discharge)ランプに比べて圧倒的に長寿命を実現できている。さらに、将来的にはHIDランプよりもさらに低消費電力化できると考えられている。
【0003】
このような前照灯の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の車両用前照灯は、異なる色を発する複数のLEDチップを備えている。より具体的には、特許文献1には、青色LEDと蛍光体とで白色光を得る構成に加えて、青緑または緑色LEDを追加することが記載されている。この特許文献1には、追加されたLEDの具体的な波長としては530nm(緑)が開示されているのみである。
【0004】
ところで、人間は、網膜に存在する視細胞において光を感じている。この視細胞には、錐体と桿体という光に対する感度の異なる細胞が含まれている。光量が十分にある状況(明所)での目の視覚を明所視と呼び、この明所視では錐体が働いており、主に色みおよび形を感じている。一方、暗所での目の視覚を暗所視と呼び、この暗所視では桿体が働いており、主に光の明暗を感じている。
【0005】
明所視では555nmの黄緑色の波長の光に対する感度が最も高いのに対して、暗所視では507nmという少し青よりの光に対する感度が最も高い。すなわち、明所視と暗所視とにおいて視感度のピーク波長が異なり、暗所視の方がより短波長側に視感度のピークがシフトする。このような現象は、プルキンエ現象(プルキニェ現象、プルキニエ現象とも称される)と呼ばれている。
【0006】
このプルキンエ現象を考慮した再帰性反射体が特許文献2に開示されている。この再帰性反射体は、その基材を青色とし、かつ有色透明層を黄緑色とすることにより、日中や薄昏時の明るい時間帯は明所比視感度が高い黄緑色に見え、夜間の暗闇時はヘッドライトの光により暗所比視感度が高い青色(色波長507nm付近)に見えるため、昼夜問わず良好に視線誘導をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−351369号公報(2006年12月28日公開)
【特許文献2】特開2004−301977号公報(2004年10月28日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に従来の白色LEDなどの照明光源は明所視とすることを前提に作られている。明所視では色の判別が十分にでき、逆に色の判別が十分にできる状態が明所視であるとも言えるが、一般の照明において色の判別ができる程度に明るくすることは当然の要求である。
【0009】
ここで、従来の白色LEDの問題点について説明する。図9は、青色発光ダイオードと蛍光体とを組み合わせた従来の白色LEDの発光スペクトルを示すグラフである。
【0010】
図9のグラフに示す点線は、青色LEDと黄色蛍光体とを組み合わせた一般に擬似白色LEDと呼ばれるもののスペクトルである。また、実線のスペクトルは、擬似白色LEDより演色性を高めた白色LEDのスペクトルである。
【0011】
図9より、どちらの白色LEDも明所視を大前提にしているために、明所視における視感度が最も高い緑色(555nm)付近のスペクトル成分が高くなっている。
【0012】
上記のような白色LEDを用いた前照灯を搭載した車両は、カタログスペック上の値(光束値)は非常に高いにもかかわらず、夜間にはさほど明るく感じられない。このような問題は、従来のハロゲンランプ・HIDランプでは見られないため、本発明の発明者は、鋭意研究の結果、従来の白色LEDにおける510nm付近のスペクトル成分の落ち込みにより、このような問題が生じることを見出した。
【0013】
すなわち、室内のような明所での利用を想定した白色LEDでは、明所視での明るさ、効率が重視されているため、夜間の屋外のような暗所では明るく感じられないという問題があることを見出した。
【0014】
また、明所において物体の視認性を高めることについては、いずれの特許文献にも記載されていない。
【0015】
なお、特許文献1の車両用前照灯では、白色光に加えて緑色または緑青色の光を車両の前方部分に照射している。この構成では、車両用前照灯の色が部分的に異なることになるが、このような構成は、日本国における法律で認められていない。それゆえ、特許文献1の車両用前照灯は、少なくとも日本国では実現できないものである。また、特許文献1には、緑色または緑青色の光の波長について記載されておらず、510nm付近のスペクトル成分の落ち込みが解消されているかどうかは不明である。
【0016】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、その目的は、少なくとも暗所において照射対象の視認性が高い照明光を出射する照明装置、特に車両用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る照明装置は、上記の課題を解決するために、励起光を出射する励起光源と、500nm以上、520nm以下の範囲に発光スペクトルのピークを有する第1の蛍光体と、当該第1の蛍光体とは異なる発光スペクトルのピークを有する第2の蛍光体とを含み、上記励起光源が出射した励起光を受けて発光する発光部とを備え、上記発光部から出射される光のスペクトルにおいて、540nm以上、570nm以下の範囲の発光スペクトルの発光強度よりも上記第1の蛍光体の発光スペクトルのピークにおける発光強度の方が大きいことを特徴としている。
【0018】
人間の目において、光は網膜の視細胞で感知されているが、明るい場所と暗い場所とでは、視細胞の働きが異なっている。具体的には、明るい場所では黄緑色の光を一番明るく感じ、赤色も鮮やかに見える半面、青色はあまり明るく感じない(明所視)。一方、暗い場所では黄緑色よりも波長が短い青緑色がより明るく感じるようになり、波長の長い赤色は黒ずんで見える(暗所視)。これは、プルキンエ現象と呼ばれる、視感度がずれる現象である。人間の目は暗所視では、507nmの波長の光に対する感度が最も高くなる。
【0019】
このプルキンエ現象を考慮して、本発明の発明者は、夜間時には、人間の目は、暗所視の状態になっており、それゆえ、青緑色のスペクトルを多く含む光で前方を照射することにより、道路上の物体(障害物)がより鮮明に見えると考えた。すなわち、通常、明所視の状態で評価される光束(ルーメン)に代表される光源の明るさは、その数値が高いからといって、暗所視状態である夜間時には、必ずしも感覚的にフィットしない(明るく感じられない)ことを見出した。なお、「物体がより鮮明に見える」とは、物体の形(シルエット)または存在そのものの識別性が高まることを意味し、当該物体の色が鮮やかに見えることは必須ではない。
【0020】
また、本発明の発明者は、暗所のみならず明所においても、青緑色のスペクトルを多く含む光を照射することにより桿体が刺激され、物体の形状を識別するときの識別性が高まると考えた。
【0021】
上記の構成では、励起光源から出射された励起光を受けて発光部が発光することにより照明光が得られる。この発光部には、第1および第2の蛍光体が含まれている。第1の蛍光体の発光スペクトルのピークは、500nm以上、520nm以下の範囲に存在するため、発光部から出射される光は、500nm以上、520nm以下の範囲に少なくとも一つのピークを有するものになる。
【0022】
また、発光部から出射される光のスペクトルにおいて、540nm以上、570nm以下の範囲の発光スペクトルの発光強度よりも、第1の蛍光体の発光スペクトルのピークにおける発光強度の方が大きい。
【0023】
すなわち、明所視における視感度のピークが位置する範囲である540nm以上、570nm以下の範囲における発光スペクトルの発光強度よりも、暗所視における視感度のピークの近傍に位置する、第1の蛍光体の発光スペクトルのピークにおける発光強度の方が大きい。
【0024】
それゆえ、暗所視の状態で視感度の高い光を発光部から出射することができ、暗所において照明装置によって照らされた物体の視認性を高めることができる。
【0025】
なお、明所において500nm以上、520nm以下の波長範囲の光を照射することにより、物体の形状の認識に関わる桿体が刺激され、明所における物体の視認性を高めることができると考えられる。それゆえ、本発明は、暗所で使用される照明装置に限定されず、明所で使用される上記照明装置も本発明の技術的範囲に含まれる。ただし、本発明は、暗所および明所の両方において物体の視認性を高めることができるものに限定されない。すなわち、本発明の照明装置は、少なくとも暗所における物体の視認性を高めることができるものである。
【0026】
また、上記第1の蛍光体は、Ce3+を発光中心に有するものであることが好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、Ce3+を発光中心に有する蛍光体を第1の蛍光体として用いることにより、500nm以上、520nm以下の範囲に発光スペクトルのピークを有し、かつ非常にブロードで明所視における視感度のピーク付近の波長を含む発光スペクトルを有する光を容易に生成できる。
【0028】
そのため、まだ薄明かりが残る夕闇時(明所視)から完全な夜間時(暗所視)にかけて視感度が変化していく際にも、明るさ感に不連続感のない照明装置を実現することができる。なお、Ce3+を発光中心に有する蛍光体の一例としてCaα−SiAlON:Ce3+を挙げることができる。
【0029】
また、上記第2の蛍光体は、600nm以上、680nm以下の範囲に発光スペクトルのピークを有していることが好ましい。
【0030】
上記の構成により、第2の蛍光体の蛍光は、600nm以上、680nm以下の波長範囲にピークを有するものになる。第1の蛍光体の蛍光は、500nm以上、520nm以下の波長範囲にピークを有しているものであるため、第1および第2の蛍光体の割合を変化させることで発光部から出射される光の色を、白色の範囲で容易に調整できる。
【0031】
また、上記励起光源は、400nm以上、420nm以下の波長の励起光を出射することが好ましい。
【0032】
上記波長範囲の励起光を出射する励起光源と第1の蛍光体(発光ピーク波長が500nm以上、520nm以下)とを組み合わせることにより、白色光を発光する発光部を有する照明装置を実現するために必要な第2の蛍光体の選択の幅が広がる。具体的には、600nm以上、680nm以下の範囲に発光スペクトルのピークを有する蛍光体を、第2の蛍光体として使用することができるようになる。
【0033】
上記第1の蛍光体は、Caα−SiAlON(silicon aluminum oxynitride):Ce蛍光体であることが好ましい。
【0034】
上記の構成によれば、Caα−SiAlON:Ce蛍光体は耐熱性が高いため、高い出力の励起光を高い光密度で発光部に照射しても発光部が劣化する可能性が少ない。それゆえ、高輝度・高光束の照明装置を実現できる。
【0035】
また、上記第1の蛍光体は、III−V族化合物半導体を含むナノ粒子蛍光体であることが好ましい。
【0036】
ナノ粒子蛍光体は、粒子のサイズを均一にすれば、発光スペクトルのピークはシャープになり、不均一にすれば当該ピークはなだらかになる。それゆえ、上記の構成により、第1の蛍光体に含まれる粒子のサイズの分布を調整することにより、発光部の発光スペクトルを容易に調整できる。
【0037】
また、上記第2の蛍光体は、CaAlSiN:Eu蛍光体であることが好ましい。
【0038】
上記の構成によれば、CaAlSiN:Eu(CASN)蛍光体は耐熱性が高いため、高い出力の励起光を高い光密度で発光部に照射しても発光部が劣化する可能性が少ない。それゆえ、高輝度・高光束の照明装置を実現できる。
【0039】
また、上記第2の蛍光体は、Sr0.8Ca0.2AlSiN:Eu蛍光体であることが好ましい。
【0040】
上記の構成によれば、SrCaAlSiN:Eu(SCASN)蛍光体は耐熱性が高いため、高い出力の励起光を高い光密度で発光部に照射しても発光部が劣化する可能性が少ない。さらに、当該蛍光体の発光ピーク波長は615nm〜630nmであり、暗所視における視感度のピークにより近いところにある。それゆえ、少なくとも暗所視での視認性がより高く、高輝度・高光束の照明装置を実現できる。
【0041】
また、本発明の車両用前照灯は、上記照明装置を用いた車両用前照灯であって、上記発光部から出射される光の色が、車両用前照灯の色に関して法的に規定されている範囲の白色になるように調整されていることを特徴としている。
【0042】
車両用前照灯の光の色は、所定の範囲の色度を有する白色にしなければならないことが、日本国、米国などにおいて法律により規定されている。
【0043】
上記の構成では、第2の蛍光体は、第1の蛍光体とは異なる発光スペクトルのピークを有しており、第2の蛍光体の蛍光色および発光部における第1の蛍光体と第2の蛍光体との割合は、励起光が発光部に照射されたときに当該発光部から発せられる蛍光色が、車両用前照灯の色に関して、当該車両用前照灯が使用される国または地域(州など)において法的に規定されている範囲の白色になるように設定されている。
【0044】
それゆえ、500nm以上、520nm以下の範囲に発光スペクトルのピークを有しつつ、法律に規定された範囲内の色度を有する光を生成することができ、かつ、少なくとも暗所視の状態での見やすさが改善された車両用前照灯を実現できる。
【発明の効果】
【0045】
本発明に係る照明装置は、以上のように、励起光を出射する励起光源と、500nm以上、520nm以下の範囲に発光スペクトルのピークを有する第1の蛍光体と、当該第1の蛍光体とは異なる発光スペクトルのピークを有する第2の蛍光体とを含み、上記励起光源が出射した励起光を受けて発光する発光部とを備え、上記発光部から出射される光のスペクトルにおいて、540nm以上、570nm以下の範囲の発光スペクトルの発光強度よりも、上記第1の蛍光体の発光スペクトルのピークにおける発光強度の方が大きい構成である。
【0046】
それゆえ、暗所視の状態で視感度の高い光を出射することができ、少なくとも暗所において照明装置によって照らされた物体の視認性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの概略構成を示す断面図である。
【図2】(a)は、半導体レーザの回路図を模式的に示した図であり、(b)は、半導体レーザ2の基本構造を示す斜視図である。
【図3】Caα−SiAlON:Ce3+およびCaAlSiN:Eu2+の特性を示す図である。
【図4】車両用前照灯に要求される白色の色度範囲を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施例に係る発光部の発光スペクトルを示すグラフである。
【図6】本発明の別の実施例に係る発光部の発光スペクトルを示すグラフである。
【図7】本発明の別の実施形態に係るヘッドランプの概略構成を示す断面図である。
【図8】光ファイバーの端部と発光部との位置関係を示す図である。
【図9】青色発光ダイオードと蛍光体とを組み合わせた従来の白色LEDの発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1〜図3に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0049】
(本発明の技術的思想)
本発明の発明者は、上述のプルキンエ現象を考慮して、夜間時には、人間の目は、暗所視の状態になっており、それゆえ、青緑色のスペクトルを多く含む光で前方を照射することにより、道路上の物体(障害物)がより鮮明に見えると考えた。すなわち、通常、明所視の状態で評価される光束(ルーメン)に代表される光源の明るさは、その数値が高いからといって、暗所視状態である夜間時には、必ずしも感覚的にフィットしない(明るく感じられない)ことを見出した。なお、「物体がより鮮明に見える」とは、物体の形(シルエット)または存在そのものの識別性が高まることを意味し、当該物体の色が鮮やかに見えることは必須ではない。
【0050】
また、本発明の発明者は、暗所のみならず明所においても、青緑色のスペクトルを多く含む光を照射することにより桿体が刺激され、物体の形状を識別するときの識別性が高まると考えた。
【0051】
本発明の照明装置は、このような技術的思想に基づいてなされたものであり、暗所視の状態で視感度の高い光を出射することにより、暗所(例えば、夜間走行時)において物体の視認性を高めることができるものである。また、本発明の照明装置によれば、暗所のみならず明所においても物体の視認性を高めることができる場合もある。すなわち、本発明の照明装置は、少なくとも暗所における物体の視認性を高めることができるものである。
【0052】
ここでは、本発明の照明装置として、自動車用の走行用前照灯(ハイビーム)の配光特性基準を満たすヘッドランプ(車両用用前照灯)1を例に挙げて説明する。ただし、本発明の照明装置は、自動車以外の車両・移動物体(例えば、人間・船舶・航空機・潜水艇・ロケットなど)のヘッドランプとして実現されてもよいし、サーチライトなどその他の照明装置として実現されてもよい。
【0053】
(ヘッドランプ1の構成)
まず、本実施形態に係るヘッドランプ(照明装置)1の構成について図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るヘッドランプ1の概略構成を示す図である。同図に示すように、ヘッドランプ1は、半導体レーザ2、非球面レンズ3、導光部4、発光部5、反射鏡6および透明板7を備えている。
【0054】
(半導体レーザ2)
半導体レーザ2は、励起光を出射する励起光源として機能するものである。この半導体レーザ2は1つでもよいし、複数設けられてもよい。また、半導体レーザ2として、1つのチップに1つの発光点を有するものを用いてもよいし、複数の発光点を有するものを用いてもよい。本実施形態では、1チップに1つの発光点を有する半導体レーザ2を用いている。
【0055】
半導体レーザ2は、例えば、1チップに1つの発光点(1ストライプ)を有し、405nm(青紫色)のレーザ光を発振し、光出力が1.0W、動作電圧が5V、電流が0.7Aのものであり、直径5.6mmのパッケージ(ステム)に封入されているものである。本実施形態では、半導体レーザ2を10個用いており、光出力の合計は10Wである。なお、図1には便宜上、半導体レーザ2を1つのみ図示している。
【0056】
半導体レーザ2が発振するレーザ光の波長は、405nmに限定されず、400nm以上460nm以下、より好ましくは400nm以上420nm以下の波長範囲にピーク波長を有するものであればよい。
【0057】
半導体レーザ2の波長を、400nm以上420nm以下の波長範囲にピークを有するものにすることにより、白色光を発光する発光部5を形成するために第1の蛍光体(発光ピーク波長が500nm以上、520nm以下)と組み合わせる第2の蛍光体の選択の幅が広がる。具体的には、600nm以上、680nm以下の範囲に発光スペクトルのピークを有する蛍光体を、第2の蛍光体として使用することができるようになる。
【0058】
なお、酸窒化物蛍光体や窒化物蛍光体を発光部5の蛍光体として用いた場合、半導体レーザ2の光出力は、1W以上20W以下であり、発光部5に照射されるレーザ光の光密度は、0.1W/mm以上50W/mm以下であることが好ましい。この範囲の光出力であれば、車両用のヘッドランプに要求される光束および輝度を実現できるとともに、高出力のレーザ光によって発光部5が極度に劣化することを防止できる。すなわち、高光束かつ高輝度でありながら、長寿命の光源を実現できる。
【0059】
ただし、後述の半導体ナノ粒子蛍光体を発光部5の蛍光体として用いた場合には、発光部5に照射されるレーザ光の光密度は、50W/mmよりも大きくてもよい。
【0060】
(非球面レンズ3)
非球面レンズ3は、各半導体レーザ2から発振されたレーザ光を、導光部4の一方の端部である光入射面4aに入射させるためのレンズである。例えば、非球面レンズ3として、アルプス電気製のFLKN1 405を用いることができる。上述の機能を有するレンズであれば、非球面レンズ3の形状および材質は特に限定されないが、405nm近傍の透過率が高く、かつ耐熱性のよい材料であることが好ましい。
【0061】
なお、非球面レンズ3は、半導体レーザ2から発振されたレーザ光を収束させ、比較的小さな(例えば、直径1mm以下)光入射面に導くためのものである。そのため、導光部4の光入射面4aが、レーザ光を収束させる必要のない程度に大きい場合には、非球面レンズ3を設ける必要はない。
【0062】
(導光部4)
導光部4は、半導体レーザ2が発振したレーザ光を集光して発光部5(発光部5のレーザ光照射面)へと導く円錐台状の導光部材であり、非球面レンズ3を介して(または、直接的に)半導体レーザ2と光学的に結合している。導光部4は、半導体レーザ2が出射したレーザ光を受光する光入射面4a(入射端部)と当該光入射面4aにおいて受光したレーザ光を発光部5へ出射する光出射面4b(出射端部)とを有している。
【0063】
光出射面4bの面積は、光入射面4aの面積よりも小さい。そのため、光入射面4aから入射した各レーザ光は、導光部4の側面に反射しつつ前進することにより収束されて光出射面4bから出射される。
【0064】
導光部4は、BK7、石英ガラス、アクリル樹脂その他の透明素材で構成する。また、光入射面4aおよび光出射面4bは、平面形状であっても曲面形状であってもよい。
【0065】
なお、導光部4は、角錐台状であってもよく、光ファイバーであってもよく、半導体レーザ2からのレーザ光を発光部5に導くものであればよい。また、導光部4を設けずに、半導体レーザ2からのレーザ光を非球面レンズ3を介して、または直接に発光部5に照射してもよい。半導体レーザ2と発光部5との間の距離が短い場合には、このような構成が可能になる。
【0066】
(発光部5の組成)
発光部5は、導光部4の光出射面4bから出射されたレーザ光を受けて発光するものであり、レーザ光を受けて発光する複数種類の蛍光体が蛍光体保持物質(封止材)の中に分散されたものである。より詳細には、発光部5は、第1の蛍光体と当該第1の蛍光体とは異なる発光スペクトルのピークを有する第2の蛍光体とを含むものである。第1の蛍光体は、暗所視の状態において視感度のピークとなる507nmの近傍に発光スペクトルのピークを有するものであり、より具体的には、500nm以上、520nm以下の範囲に発光スペクトルのピークを有するものである。また、第2の蛍光体は、例えば、600nm以上、680nm以下の範囲に発光スペクトルのピークを有するものである。
【0067】
さらに、発光部5から出射される光のスペクトルにおいて、540nm以上、570nm以下の範囲の発光スペクトルの発光強度よりも、第1の蛍光体の発光スペクトルのピークにおける発光強度の方が大きくなるように発光部5の組成が調整されている。
【0068】
第1および第2の蛍光体は、酸窒化物蛍光体や窒化物蛍光体またはIII−V族化合物半導体のナノメータサイズの粒子を用いた半導体ナノ粒子蛍光体である。
【0069】
酸窒化物蛍光体としては、サイアロン(SiAlON(silicon aluminum oxynitride))蛍光体と通称されるものを用いることができる。サイアロン蛍光体とは、窒化ケイ素のシリコン原子の一部がアルミニウム原子に、窒素原子の一部が酸素原子に置換された物質である。このサイアロン蛍光体は、窒化ケイ素(Si)にアルミナ(Al)、シリカ(SiO)および希土類元素などを固溶させて作ることができる。第1の蛍光体は、酸窒化物蛍光体の一例としての、Caα−SiAlON:Ce3+蛍光体であり、第2の蛍光体は、窒化物蛍光体の一例としての、CaAlSiN:Eu2+蛍光体である。
【0070】
一方、半導体ナノ粒子蛍光体の特徴の一つは、同一の化合物半導体(例えばインジュウムリン:InP)を用いても、その粒子径をナノメータサイズに変更することにより、量子サイズ効果によって発光色を変化させることができる点である。例えば、InPでは、粒子サイズが3〜4nm程度のときに赤色に発光する。ここで、粒子サイズは透過型電子顕微鏡(TEM)にて評価した。
【0071】
また、この半導体ナノ粒子蛍光体は、半導体ベースであるので蛍光寿命が短く、励起光のパワーを素早く蛍光として放射できるのでハイパワーの励起光に対して耐性が強いという特徴もある。これは、この半導体ナノ粒子蛍光体の発光寿命が10ナノ秒程度と、希土類を発光中心とする通常の蛍光体材料に比べて5桁も小さいためである。
【0072】
さらに、上述したように、発光寿命が短いため、レーザ光の吸収と蛍光体の発光を素早く繰り返すことができる。その結果、強いレーザ光に対して高い変換効率を保つことができ、蛍光体からの発熱を低減させることができる。よって、発光部5が熱により劣化(変色や変形)するのをより抑制することができる。これにより、ヘッドランプ1の寿命を延ばすことができる。
【0073】
封止材は、シリコーン樹脂などの樹脂であってもよいし、ガラス材料(例えば、無機ガラス、有機ハイブリッドガラス)であってもよい。なお、発光部5は、蛍光体のみを押し固めたものであってもよいが、蛍光体が封止材の中に分散されたものであることが好ましい。蛍光体のみを押し固めた場合には、レーザ光が照射されることにより生じる発光部5の劣化が促進される可能性があるからである。
【0074】
(発光部5の配置および形状)
発光部5は、透明板7の内側(光出射面4bが位置する側)の面において、反射鏡6の焦点位置またはその近傍に固定されている。発光部5の位置の固定方法は、この方法に限定されず、反射鏡6から延出する棒状または筒状の部材によって発光部5の位置を固定してもよい。
【0075】
発光部5の形状は、特に限定されず、直方体であっても、円柱状であってもよい。本実施形態では、発光部5は、直径3mm、厚み(高さ)3mmの円柱状である。また、発光部5にレーザ光が照射される面であるレーザ光照射面は、平面である必要は必ずしもなく、曲面であってもよい。ただし、レーザ光の反射を制御するためには、レーザ光照射面は、平面であることが好ましい。レーザ光照射面が曲面の場合、少なくとも曲面への入射角度が大きく変わるため、レーザ光が照射される場所によって、反射光の進む方向が大きく変わってしまう。そのため、レーザ光の反射方向を制御することが困難な場合がある。これに対してレーザ光照射面が平面であれば、レーザ光の照射位置が若干ずれたとしても反射光の進む方向はほとんど変わらないため、レーザ光が反射する方向を制御しやすい。場合によっては反射光が当たる場所にレーザ光の吸収材を置くなどの対応がとり易くなる。
【0076】
また、発光部5の厚みは3mmでなくともよい。上記厚みは、レーザ光が発光部5において全て白色光に変換されるか、またはレーザ光が発光部5において十分に散乱される厚みであればよい。つまり、人体に有害なコヒーレント光の強度が、安全なレベルにまで低くなるか、無害なインコヒーレント光に変換されるだけの厚みを発光部5が有していればよい。
【0077】
ここで必要とされる発光部5の厚みは、発光部5における封止材と蛍光体との割合に従って変化する。発光部5における蛍光体の含有量が多くなれば、レーザ光が白色光に変換される効率が高まるため発光部5の厚みを薄くできる。
【0078】
(反射鏡6)
反射鏡6は、発光部5が出射したインコヒーレント光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成するものである。すなわち、反射鏡6は、発光部5からの光を反射することにより、ヘッドランプ1の前方へ進む光線束を形成する。この反射鏡6は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された曲面形状(カップ形状)の部材であり、反射した光の進行方向に開口している。
【0079】
また、反射鏡6は、半球面ミラーに限定されず、楕円面ミラーやパラボラミラーまたはそれらの部分曲面を有するミラーあってもよい。すなわち、反射鏡6は、回転軸を中心として図形(楕円、円または放物線)を回転させることによって形成される曲面の少なくとも一部をその反射面に含んでいるものであればよい。
【0080】
(透明板7)
透明板7は、反射鏡6の開口部を覆う透明な樹脂板であり、発光部5を保持している。この透明板7は、半導体レーザ2からのレーザ光を遮断するとともに、発光部5においてレーザ光を変換することにより生成された白色光(インコヒーレント光)を透過する材質で形成することが好ましく、樹脂板以外に無機ガラス板等も使用できる。
【0081】
発光部5によってコヒーレントなレーザ光は、その発光点サイズが拡大され、かつインコヒーレントな白色光に変換される。しかし、何らかの原因で発光点サイズが十分に拡大されない場合も考えられる。このような場合でも、透明板7によってレーザ光を遮断することにより、レーザ光が外部に漏れることを防止できる。なお、このような効果を期待せず、かつ透明板7以外の部材によって発光部5を保持する場合には、透明板7を省略することが可能である。
【0082】
(半導体レーザ2の構造)
次に半導体レーザ2の基本構造について説明する。図2(a)は、半導体レーザ2の回路図を模式的に示したものであり、図2(b)は、半導体レーザ2の基本構造を示す斜視図である。同図に示すように、半導体レーザ2は、カソード電極19、基板18、クラッド層113、活性層111、クラッド層112、アノード電極17がこの順に積層された構成である。
【0083】
基板18は、半導体基板であり、本願のように蛍光体を励起する為の青色〜紫外の励起光を得る為にはGaN、サファイア、SiCを用いることが好ましい。一般的には、半導体レーザ用の基板の他の例として、Si、GeおよびSiC等のIV属半導体、GaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSbおよびAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体、ZnO、Al、SiO、TiO、CrOおよびCeO等の酸化物絶縁体、並びに、SiNなどの窒化物絶縁体のいずれかの材料が用いられる。
【0084】
アノード電極17は、クラッド層112を介して活性層111に電流を注入するためのものである。
【0085】
カソード電極19は、基板18の下部から、クラッド層113を介して活性層111に電流を注入するためのものである。なお、電流の注入は、アノード電極17・カソード電極19に順方向バイアスをかけて行う。
【0086】
活性層111は、クラッド層113及びクラッド層112で挟まれた構造になっている。
【0087】
また、活性層111およびクラッド層の材料としては、青色〜紫外の励起光を得る為にはAlInGaNから成る混晶半導体が用いられる。一般に半導体レーザの活性層・クラッド層としては、Al、Ga、In、As、P、N、Sbを主たる組成とする混晶半導体が用いられ、そのような構成としても良い。また、Zn、Mg、S、Se、TeおよびZnO等のII−VI属化合物半導体によって構成されていてもよい。
【0088】
また、活性層111は、注入された電流により発光が生じる領域であり、クラッド層112及びクラッド層113との屈折率差により、発光した光が活性層111内に閉じ込められる。
【0089】
さらに、活性層111には、誘導放出によって増幅される光を閉じ込めるために互いに対向して設けられる表側へき開面114・裏側へき開面115が形成されており、この表側へき開面114・裏側へき開面115が鏡の役割を果す。
【0090】
ただし、完全に光を反射する鏡とは異なり、誘導放出によって増幅される光の一部は、活性層111の表側へき開面114・裏側へき開面115(本実施の形態では、便宜上表側へき開面114とする)から出射され、励起光L0となる。なお、活性層111は、多層量子井戸構造を形成していてもよい。
【0091】
なお、表側へき開面114と対向する裏側へき開面115には、レーザ発振のための反射膜(図示せず)が形成されており、表側へき開面114と裏側へき開面115との反射率に差を設けることで、低反射率端面である、例えば、表側へき開面114より励起光L0の大部分を発光点103から照射されるようにすることができる。
【0092】
クラッド層113・クラッド層112は、n型およびp型それぞれのGaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSb、及びAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、並びに、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体のいずれの半導体によって構成されていてもよく、順方向バイアスをアノード電極17及びカソード電極19に印加することで活性層111に電流を注入できるようになっている。
【0093】
クラッド層113・クラッド層112および活性層111などの各半導体層との膜形成については、MOCVD(有機金属化学気相成長)法やMBE(分子線エピタキシー)法、CVD(化学気相成長)法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。各金属層の膜形成については、真空蒸着法やメッキ法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。
【0094】
(発光部5の発光原理)
次に、半導体レーザ2から発振されたレーザ光による蛍光体の発光原理について説明する。
【0095】
まず、半導体レーザ2から発振されたレーザ光が発光部5に含まれる蛍光体に照射されることにより、蛍光体内に存在する電子が低エネルギー状態から高エネルギー状態(励起状態)に励起される。
【0096】
その後、この励起状態は不安定であるため、蛍光体内の電子のエネルギー状態は、一定時間後にもとの低エネルギー状態(基底準位のエネルギー状態または励起準位と基底準位との間の準安定準位のエネルギー状態)に遷移する。
【0097】
このように、高エネルギー状態に励起された電子が、低エネルギー状態に遷移することによって蛍光体が発光する。
【0098】
白色光は、等色の原理を満たす3つの色の混色、または補色の関係を満たす2つの色の混色で構成でき、この原理・関係に基づき、半導体レーザから発振されたレーザ光の色と蛍光体が発する光の色とを、上述のように組み合わせることにより白色光を発生させることができる。
【0099】
(実施例1)
次に発光部5の実施例についてより具体的に説明する。本実施例では、500〜520nmに発光ピークを有する第1の蛍光体としてCaα−SiAlON:Ce3+蛍光体(以下では、Caα−SiAlON蛍光体と略称する)を用い、第2の蛍光体として620〜680nmに発光ピークを有するCASN:Eu(CaAlSiN:Eu2+)蛍光体(以下では、CASN蛍光体と称する)を用いている。
【0100】
(蛍光体の特性)
図3は、Caα−SiAlON:Ce3+蛍光体およびCaAlSiN:Eu2+蛍光体の特性を示す図である。同図に示すように、Caα−SiAlON蛍光体は、青色から緑色にかけての蛍光を発し、その発光ピークの波長は510nmである。また、この蛍光体は、発光の半値幅が110nmとブロードであり、暗所視における比視感度の高い波長域を十分カバーしている。さらに、上記蛍光体の発光効率は58%であり、発光効率も高い。また、Caα−SiAlON蛍光体は、耐熱性が高いため、高い出力のレーザ光を高い光密度で発光部5に照射しても発光部5が劣化する可能性が少ない。それゆえ、高輝度・高光束の前照灯を実現できる。
【0101】
CASN蛍光体は、赤色の蛍光を発し、その発光ピークの波長は650nmである。この蛍光体の発光効率は71%であり、発光の半値幅は93nmである。CASN蛍光体も耐熱性が高いため、高い出力の励起光を高い光密度で発光部5に照射しても発光部5が劣化する可能性が少ない。それゆえ、高輝度・高光束の前照灯を実現できる。
【0102】
図3に示す数値は、励起波長が405nmのときのものである。Caα−SiAlON蛍光体では、励起波長が長くなると、発光ピーク波長は長くなり、吸収率・内部量子効率は下がり、その結果、発光効率も下がる。なお、このとき半値全幅は若干広くなる。
【0103】
逆に励起波長が短くなると、350nm位までは吸収率・内部量子効率・発光効率は若干上がる。また発光ピーク波長は若干短くなり、半値全幅も若干狭くなる。350nmよりも短い励起波長では、Caα−SiAlON蛍光体は光らなくなってくる。
【0104】
CASN蛍光体では、350nm〜450nmの励起波長の範囲において、ほとんど特性(発光ピーク波長、吸収率、内部量子効率、発光効率、半値全幅)は変わらない。450nm以上から若干特性が悪くなってくる。また350nm以下では、αSiAON蛍光体と同様、CASN蛍光体は光らなくなってくる。
【0105】
(白色光の調整)
これらの蛍光体を含む発光部5に、405nmで発振する半導体レーザ2のレーザ光を照射することにより照明光を発生させた。この照明光の色温度が3000〜7000Kであり、かつ、道路運送車両法で定められた前照灯に求められる白色の範囲に適合する白色光とするために、Caα−SiAlON蛍光体およびCASN蛍光体の、発光部5における割合を調整した。なお、色温度については、市場において多くのユーザに好まれる色温度になるように調整している。
【0106】
図4は、車両用前照灯に要求される白色の色度範囲を示すグラフである。同図に示すように、日本国では、車両用前照灯に要求される白色の色度範囲が法律により規定されている。当該色度範囲は、6つの点35を頂点とする多角形の内部である。
【0107】
このグラフにおいて、Caα−SiAlON蛍光体の発光ピークの波長を示す点31と、CASN蛍光体の発光ピークの波長を示す点32と、励起光源である半導体レーザ2の発振波長405nmを示す点33とを結ぶ三角形30内の点が示す色度を実現することができる。Caα−SiAlON蛍光体およびCASN蛍光体の発光部5における割合、および、Caα−SiAlON蛍光体およびCASN蛍光体と、封止材との発光部5内での混合比、および励起光の強さを変化させることによって、実現される照明光の色度を示す点が三角形30内を移動する。例えば、Caα−SiAlON蛍光体の割合が高くなれば、照明光の色度を示す点は、点31に近づき、照明光はより青みがかった色になる。
【0108】
三角形30は、上記多角形を含んでおり、この多角形内の点が示す色度を実現するように、Caα−SiAlON蛍光体およびCASN蛍光体の発光部5における割合、およびCaα−SiAlON蛍光体およびCASN蛍光体と封止材との発光部5内での混合比、および励起光の強さを設定すればよい。
【0109】
特に点31、点34aおよび点34cを頂点とする三角形で囲まれる範囲で、かつ、点35を頂点とする多角形で囲まれる範囲の色度となるように照明光の色度を設定すればよい。
【0110】
なお、点34aは、CASN:Eu2+の蛍光の放射束と半導体レーザ2のレーザ光の放射束との比が1:0.1となる点であり、点34bは、上記比が1:1となる点であり、点34cは、上記比が1:2.5となる点である。レーザ光そのものも色度を有しているため、発光部5の組成を一定にしてレーザ光の放射束を変化させることで、照明光の色度を示す点が点32と点33とを結ぶ線分上を移動する。
【0111】
第1の蛍光体と第2の蛍光体との割合は、各蛍光体の蛍光色とともに発光効率によっても変わる。また、照射するレーザ光の色および強度、封止材の種類および量によっても最終的な照明光の色が変化するため、これらの要因を考慮して、第1の蛍光体と第2の蛍光体との割合を調整する。
【0112】
本実施例では、Caα−SiAlON蛍光体と、CASN蛍光体と、封止材としてのシリコーン樹脂との割合を、1:3.6:100として、直径3mm、高さ3mmの発光部5を形成した。この発光部5に405nmの波長のレーザ光を照射し、得られた照明光のスペクトルおよび色度を測定した。
【0113】
その結果、照明光の色度は、図4のグラフにおいてx=0.4101、y=0.4017の座標が示す色度であり、日本国における道路運送車両の保安基準を満たすものであった。すなわち、発光部5から出射される光の色が、車両用前照灯の色に関して法的に規定されている範囲の白色になるように調整されていることが確認できた。また、当該照明光の色温度は3500Kであり、平均演色評価数Raは86.6であり、特殊演色評価数R9は57.6であった。
【0114】
図5は、本実施例の発光部5の発光スペクトルを示すグラフである。Caα−SiAlON蛍光体の発光スペクトルのピークは、500mm以上、520nm以下の波長範囲にあり、暗所視における視感度のピークの近傍に位置している。そのため、同図に示すように、暗所視における視感度ピークとなる510nm付近の強度が十分に大きい発光スペクトルが得られた。また、発光部5から出射される光のスペクトルにおいて、540nm以上、570nm以下の範囲の発光スペクトルの発光強度よりも、Caα−SiAlON蛍光体の発光スペクトルのピークにおける発光強度の方が大きい。すなわち、明所視における視感度のピークが位置する範囲である540nm以上、570nm以下の範囲における発光スペクトルの発光強度よりも、第1の蛍光体であるCaα−SiAlON蛍光体の発光スペクトルのピークにおける発光強度の方が大きい。
【0115】
そのため、この白色光源を車両用前照灯に適用すると、暗所視状態である夜間走行時の障害物視認性に優れた前照灯が実現できる。
【0116】
また、明所において500nm以上、520nm以下の波長範囲の光(特に、波長507nm付近の光)を照射することにより、物体の形状の認識に関わる桿体が刺激され、明所における物体の視認性を高めることができる。それゆえ、完全な暗所視状態でなくても、暗所視状態と明所視状態との中間的な状態における障害物視認性にも優れた前照灯が実現できる。
【0117】
また、510nm付近のピークは、非常にブロードであり、まだ薄明かりが残る夕闇時(明所視)から完全な夜間時(暗所視)にかけて視感度が変化していく際にも明るさ感に不連続感のない前照灯を実現することができる。
【0118】
また、この白色光源は、平均演色評価数Raの値も86.6と非常に良好であり、夜間走行時にも各種道路標識をはっきり視認できる。
【0119】
なお、上述の蛍光体の割合は、あくまで一例であり、本発明は当該蛍光体の割合に限定されない。
【0120】
(実施例2)
次に発光部5の別の実施例について説明する。本実施例では、実施例1と同様に第1の蛍光体としてCaα−SiAlON蛍光体を用い、第2の蛍光体としてCASN蛍光体を用いた。ただし、本実施例では、Caα−SiAlON蛍光体と、CASN蛍光体と、封止材としてのシリコーン樹脂との割合を、1:3.6:250として、直径3mm、高さ5mmの発光部5を形成した。この発光部5に405nmの波長のレーザ光を照射し、得られた照明光のスペクトルおよび色度を測定した。
【0121】
その結果、照明光の色度は、図4のグラフにおいてx=0.3102、y=0.3189の座標が示す色度であり、日本国における道路運送車両の保安基準を満たすものであった。また、当該照明光の色温度は6700Kであり、平均演色評価数Raは80.3であり、特殊演色評価数R9は57.7であった。実施例2は、実施例1と比較すると、封止材であるシリコーン樹脂の割合が高く、蛍光体の割合が低い。蛍光体濃度を薄くした結果として、405nmの励起光成分が強くなって色温度が高くなったと考えられる。
【0122】
図6は、本実施例の発光部5の発光スペクトルを示すグラフである。同図に示すように、暗所視における視感度ピークとなる510nm付近の強度が十分に大きい発光スペクトルが得られた。また、明所視における視感度のピークが位置する範囲である540nm以上、570nm以下の範囲における発光スペクトルの発光強度よりも、第1の蛍光体であるCaα−SiAlON蛍光体の発光スペクトルのピークにおける発光強度の方が大きい。
【0123】
実施例1と比較すると、実施例2の方が、510nm付近の強度が、540nm以上、570nm以下の範囲における発光スペクトルの発光強度よりも相対的に大きくなっている。
【0124】
それゆえ、実施例2の白色光源を車両用前照灯に適用すれば、夜間走行時の障害物視認性に優れた前照灯が実現できる。
【0125】
なお、実施例2の白色光源は、完全な暗所において使用されるものに限定されず、夕闇時など薄明るい光環境下で使用されてもよい。
【0126】
(変更例)
なお、励起光源について、405nmで発振する半導体レーザのみを例示したが、本発明に適用できる励起光源はこれに限られない。例えば、従来の450nm付近で発光する発光ダイオードを励起光源として用いてもよい。この場合も、510nm付近に発光ピークを有するCaα-SiAlON:Ce3+蛍光体を用いることで、暗所視における障害物視認性が改善された前照灯を実現可能な白色光源を得ることができる。
【0127】
また、第1の蛍光体であるCaα-SiAlON:Ce3+蛍光体が500〜520nmに発光ピークを有しているのは、発光中心にCe3+が存在しているためである。そのため、発光中心にCe3+を有する蛍光体であれば、Caα-SiAlON:Ce3+蛍光体の代わりに第1の蛍光体として用いることができる。
【0128】
また、第2の蛍光体としてSr0.8Ca0.2AlSiN:Eu蛍光体を用いてもよい。SrCaAlSiN:Eu(SCASN)蛍光体は耐熱性が高いため、高い出力の励起光を高い光密度で発光部に照射しても発光部が劣化する可能性が少ない。さらに、当該蛍光体の発光ピーク波長が615nm〜630nmであり、620〜680nmに発光ピークを有するCASN蛍光体よりも、暗所視における視感度のピークにより近いところに発光ピークがある。それゆえ、暗所視での視認性がより高く、高輝度・高光束の前照灯を実現できる。
【0129】
また、III−V族化合物半導体を含む半導体ナノ粒子蛍光体を第1の蛍光体として用いてもよい。半導体ナノ粒子蛍光体の場合には、ナノ粒子のサイズによって蛍光波長が変化する。それゆえ、半導体ナノ粒子蛍光体を第1の蛍光体として用いる場合には、500〜520nmの範囲に発光ピークを有するようにナノ粒子のサイズを調整すればよい。
【0130】
また、ナノ粒子蛍光体は、粒子のサイズを均一にすれば、発光スペクトルのピークはシャープになり、不均一にすれば当該ピークはなだらかになる。それゆえ、半導体ナノ粒子蛍光体に含まれる粒子のサイズの分布を調整することにより、発光部5の発光スペクトルを容易に調整できる。
【0131】
半導体ナノ粒子蛍光体に含まれる粒子のサイズの調整方法は、大きく分けて2つある。半導体ナノ粒子蛍光体の作製には化学的合成の手法を用いるが、一つ目の調整方法は、この合成時のプロセスパラメータ(例えば、温度や時間)を変更することで、作製される粒子のサイズを調整できる。
【0132】
もうひとつの調整方法は、半導体ナノ粒子蛍光体を作製した後に、出来上がったものを、そのサイズに応じて分級する(ふるいにかける)ことである。現実には、一つ目の方法と二つ目の方法とを組み合わせて所望の粒子サイズを持つ半導体ナノ粒子蛍光体を得ればよい。
【0133】
500〜520nmの範囲に発光ピークを有する半導体ナノ粒子のサイズは、半導体ナノ粒子蛍光体を構成する材料によって異なってくるが、例えばInPでは、1.7〜2.0nmであり、CdSeでは2.0〜2.2nmである。
【0134】
また、第1の蛍光体、第2の蛍光体ともに半導体ナノ粒子蛍光体を用いてもよい。この場合には、ナノ粒子のサイズが互いに異なる2種類の半導体ナノ粒子蛍光体を混合することになる。
【0135】
また、酸窒化物蛍光体または窒化物蛍光体を第1の蛍光体として用い、半導体ナノ粒子蛍光体を第2の蛍光体として用いてもよいし、その逆でもよい。
【0136】
また、本発明は、第1および第2の蛍光体に加え、第3の蛍光体をさらに含む発光部を用いることを、その技術的範囲から排除するものではない。重要なのは、第1の蛍光体が500〜520nmに発光ピークを有していることであり、そのために照明光の発光スペクトルにおいて500〜520nm付近の強度が十分に高く、他の波長範囲の強度と比較して落ち込んでいないことである。この要件を満たすのであれば、第1の蛍光体以外の蛍光体および封止材の種類および割合はどのようなものであってもよい。
【0137】
ただし、自動車用の前照灯として実現する場合には、上述のように、道路運送車両の保安基準を満たす白色を実現できるように、各蛍光体の種類および割合を調整する。
【0138】
(ヘッドランプ1の効果)
以上のように、本発明の技術的思想を車両用前照灯に適用すれば、少なくとも暗所視において良好な視認性を有するヘッドランプ1を実現することができる。さらに、このヘッドランプ1では、日本国などにおける保安基準を満たす白色光が得られ、かつ、その白色光は演色性が非常に高い。
【0139】
なお、上述した例は、日本国における道路運送車両の保安基準に基づくものであるが、ヘッドランプが発する照明光の色は、そのヘッドランプが使用される国または地域(州など)において定められた規則に従って調整されればよい。
【0140】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について図7に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、実施の形態1と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、プロジェクタ型のヘッドランプ20について説明する。
【0141】
(ヘッドランプ20の構成)
まず、本実施形態に係るヘッドランプ20の構成について図7を用いて説明する。図7は、プロジェクタ型のヘッドランプであるヘッドランプ20の構成を示す断面図である。このヘッドランプ20は、プロジェクタ型のヘッドランプである点、並びに、導光部4の代わりに光ファイバー40を備えた点でヘッドランプ1とは異なる。
【0142】
同図に示すように、ヘッドランプ20は、半導体レーザ2、非球面レンズ3、光ファイバー(導光部)40、フェルール9、発光部5、反射鏡6、透明板7、ハウジング10、エクステンション11、レンズ12、凸レンズ13およびレンズホルダ8を備えている。半導体レーザ2、光ファイバー40、フェルール9および発光部5によって発光装置の基本構造が形成されている。
【0143】
ヘッドランプ20は、プロジェクタ型のヘッドランプであるため、凸レンズ13を備えている。その他のタイプのヘッドランプ(例えば、セミシールドビームヘッドランプ)に本発明を適用してもよく、その場合には凸レンズ13を省略できる。
【0144】
(非球面レンズ3)
非球面レンズ3は、半導体レーザ2から発振されたレーザ光(励起光)を、光ファイバー40の一方の端部である入射端部に入射させるためのレンズである。非球面レンズ3は、光ファイバー40aの数だけ設けられている。
【0145】
(光ファイバー40)
光ファイバー40は、半導体レーザ2が発振したレーザ光を発光部5へと導く導光部材であり、複数の光ファイバー40aの束である。この光ファイバー40は、中芯のコアを、当該コアよりも屈折率の低いクラッドで覆った2層構造をしている。コアは、レーザ光の吸収損失がほとんどない石英ガラス(酸化ケイ素)を主成分とするものであり、クラッドは、コアよりも屈折率の低い石英ガラスまたは合成樹脂材料を主成分とするものである。
【0146】
例えば、光ファイバー40は、コアの径が200μm、クラッドの径が240μm、開口数NAが0.22の石英製のものであるが、光ファイバー40の構造、太さおよび材質は上述のものに限定されず、光ファイバー40の長軸方向に対して垂直な断面は矩形であってもよい。
【0147】
この光ファイバー40は、上記レーザ光を受け取る複数の入射端部と、入射端部から入射したレーザ光を出射する複数の出射端部とを有している。複数の出射端部は、後述するように、フェルール9によって、発光部5のレーザ光照射面(受光面)に対して位置決めされている。
【0148】
(フェルール9)
図8は、光ファイバー40aの出射端部と発光部5との位置関係を示す図である。同図に示すように、フェルール9は、光ファイバー40aの出射端部を発光部5のレーザ光照射面に対して所定のパターンで保持する。このフェルール9は、光ファイバー40aを挿入するための孔が所定のパターンで形成されているものでもよいし、上部と下部とに分離できるものであり、上部および下部の接合面にそれぞれ形成された溝によって光ファイバー40aを挟み込むものでもよい。
【0149】
フェルール9の材質は、特に限定されず、例えばステンレススチールである。なお、図8では、光ファイバー40aを3つ示しているが、光ファイバー40aの数は3つに限定されない。また、フェルール9は、反射鏡6から延出する棒状の部材等によって固定されればよい。
【0150】
フェルール9が光ファイバー40aの出射端部を位置決めすることにより、複数の光ファイバー40aから出射されるレーザ光がそれぞれ有する光強度分布における最も光強度の大きい部分(最大光強度部分)が、発光部5の互いに異なる部分に対して照射される。この構成により、レーザ光が一点に集中することにより発光部5が著しく劣化することを防止できる。なお、出射端部は、レーザ光照射面に接触していてもよいし、僅かに間隔をおいて配置されてもよい。
【0151】
なお、各光ファイバー40aの出射端部を分散させて配置する必要は必ずしもなく、光ファイバー40の束をひとまとめにしてフェルール9で位置決めしてもよい。
【0152】
(発光部5)
発光部5は、実施の形態1と同様のものであり、後述する反射鏡6の第1焦点の近傍に配置される。この発光部5は、反射鏡6の中心部を貫いて延びる筒状部の先端に固定されてもよい。この場合には、筒状部の内部に光ファイバー40を通すことができる。
【0153】
(反射鏡6)
反射鏡6は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された部材であり、発光部5から出射した光を反射することにより、当該光をその焦点に収束させる。ヘッドランプ20がプロジェクタ型のヘッドランプであるため、反射鏡6の基本形状は、反射した光の光軸方向に平行な断面が楕円形状となっている。反射鏡6には、第1焦点と第2焦点とが存在し、第2焦点は、第1焦点よりも反射鏡6の開口部に近い位置に存在している。後述する凸レンズ13は、その焦点が第2焦点の近傍に位置するように配置されており、反射鏡6によって第2焦点に収束された光を前方に投射する。
【0154】
(凸レンズ13)
凸レンズ13は、発光部5から出射された光を集光し、集光した光をヘッドランプ1の前方へ投影する。凸レンズ13の焦点は、反射鏡6の第2焦点の近傍であり、その光軸は、発光部5が有する発光面のほぼ中央を貫いている。この凸レンズ13は、レンズホルダ8によって保持され、反射鏡6に対する相対位置が規定されている。なお、レンズホルダ8を、反射鏡6の一部として形成してもよい。
【0155】
(その他の部材)
ハウジング10は、ヘッドランプ20の本体を形成しており、反射鏡6等を収納している。光ファイバー40は、このハウジング10を貫いており、半導体レーザ2は、ハウジング10の外部に設置される。半導体レーザ2は、レーザ光の発振時に発熱するが、ハウジング10の外部に設置することにより半導体レーザ2を効率良く冷却することが可能となる。また、半導体レーザ2は、万一故障した時のことを考慮して、交換しやすい位置に設置することが好ましい。これらの点を考慮しなければ、半導体レーザ2をハウジング10の内部に収納してもよい。
【0156】
エクステンション11は、反射鏡6の前方の側部に設けられており、ヘッドランプ20の内部構造を隠して見栄えを良くするとともに、反射鏡6と車体との一体感を高めている。このエクステンション11も反射鏡6と同様に金属薄膜がその表面に形成された部材である。
【0157】
レンズ12は、ハウジング10の開口部に設けられており、ヘッドランプ20を密封している。発光部5が発した光は、レンズ12を通ってヘッドランプ1の前方へ出射される。
【0158】
以上のように、ヘッドランプの構造そのものは、どのようなものであってもよく、本発明において重要なのは、発光部5から出射される光が、少なくとも暗所視状態において視認性が高い波長の光を十分に含んでいるということである。
【0159】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明は、物体の視認性を高めることが求められる状況(特に暗所)において使用される照明装置や前照灯、特に車両用等のヘッドランプに適用することができる。
【符号の説明】
【0161】
1 ヘッドランプ(照明装置、車両用前照灯)
2 半導体レーザ(励起光源)
5 発光部
20 ヘッドランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を出射する励起光源と、
500nm以上、520nm以下の範囲に発光スペクトルのピークを有する第1の蛍光体と、当該第1の蛍光体とは異なる発光スペクトルのピークを有する第2の蛍光体とを含み、上記励起光源が出射した励起光を受けて発光する発光部とを備え、
上記発光部から出射される光のスペクトルにおいて、540nm以上、570nm以下の範囲の発光スペクトルの発光強度よりも上記第1の蛍光体の発光スペクトルのピークにおける発光強度の方が大きいことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
上記第1の蛍光体は、Ce3+を発光中心に有するものであることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
上記第2の蛍光体は、600nm以上、680nm以下の範囲に発光スペクトルのピークを有していることを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
上記励起光源は、400nm以上、420nm以下の波長の励起光を出射することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
上記第1の蛍光体は、Caα−SiAlON(silicon aluminum oxynitride):Ce蛍光体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
上記第1の蛍光体は、III−V族化合物半導体を含むナノ粒子蛍光体であることを特徴とする請求項1、3、4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
上記第2の蛍光体は、CaAlSiN:Eu蛍光体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
上記第2の蛍光体は、Sr0.8Ca0.2AlSiN:Eu蛍光体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の照明装置を用いた車両用前照灯であって、
上記発光部から出射される光の色が、車両用用前照灯の色に関して法的に規定されている範囲の白色になるように調整されていることを特徴とする車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−233511(P2011−233511A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66136(P2011−66136)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】