説明

煮釜

【課題】水添加煮沸用原料がムラ炊きとなることがなく、品質の良い呉やゆで小豆等の煮沸物をきわめて安価に製造できる煮釜、特に上面に開口部を有し、バッチ式処理に好適な開放式の煮釜を提供する。
【解決手段】内部に煮沸される水添加煮沸用原料を収容し、円形底部の中央に原料を煮沸するための蒸気を外部から導入するための蒸気導入口28を備える円筒状煮釜本体14と、煮釜本体の円形底部の中央に立設され、下端が蒸気導入口に連結され、内部に蒸気が充填される円筒状蒸気支柱管20と、これに回転可能に被装される円筒状回転支持管22と、その外側周面に放射状に気密に取り付けられて支持され、蒸気を煮釜本体内に噴射する複数の蒸気噴射口を外周面に持つ複数の蒸気噴射管24と、これに対応してその上方に所定距離離間して、回転支持管の外側周面に所定角度傾斜して取り付けられて支持される複数の偏向羽根26と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆乳や豆腐、湯葉等を製造する原料となる「ご(豆汁)」(以下、呉又は煮呉と称する)や、濾し餡等の原料となるゆで小豆等を製造する煮釜に関し、詳しくは、水に浸した大豆を擂り潰した磨砕大豆や小豆や磨砕小豆等の豆又はその磨砕物と水との混合物、例えば生呉、もしくはその混合物の加熱物(呉又は煮呉)からなる原料に蒸気噴射管から蒸気を噴射して加熱すると共に、蒸気噴射管を自立回転させて攪拌し、品質の良い呉やゆで小豆等の原料煮沸物を製造する自立回転方式の開放式又は密閉式煮釜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から豆乳や豆腐、湯葉等や濾し餡やゆで小豆の製造に用いることのできる煮釜としては、上下の両端を閉塞した円筒形の煮沸釜本体の下部に、磨砕大豆に水を加えたもの又はその加熱物等の呉の原料、所謂生呉や、磨砕小豆に水を加えたもの又はその加熱物等の濾し餡の原料の注入口を設け、煮沸釜本体の上部に、原料煮沸物である呉やゆで小豆の注出口を設け、煮沸釜本体の内部に、複数の噴射口を穿孔した蒸気噴射管を取り付けた、連続処理ができる煮釜が用いられている(例えば、本出願人に係る特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示の煮釜では、原料注入口と注出口とを備えた円筒形煮沸釜本体内に、原料を煮沸する蒸気を噴射するための複数の蒸気噴射口を煮沸釜本体の長手方向に沿って設けた少なくとも1本の蒸気噴射管を有し、上記蒸気噴射口から噴射される蒸気が、煮沸釜本体内の円周方向に送られるように、蒸気の噴射方向を斜めにしたことを特徴とするものである。
【0004】
そして、この煮釜においては、蒸気噴射管の蒸気噴射口から煮沸釜本体の噴射口後側に回り込み、その周囲にある原料(生呉等)に接触して、蒸気の熱を原料に充分に伝達することができ、蒸気を均一かつ充分に原料と接触しながら煮沸釜内に留めることができるので、極めて効率的な原料の加熱処理を行うことが可能になり、この煮釜では、処理される原料の加熱ムラが生じない特徴がある。
【0005】
また、バッチ処理を行うことができる呉製造用煮釜として、円筒形の密閉式缶体内に磨砕大豆や生呉を導入する呉液導入パイプが缶体内上部に連結され、缶体内に導入された磨砕大豆や生呉を加熱処理するための蒸気を缶体の上部に向かって吹き込む多数の蒸気噴射管と、缶体内において加熱処理される磨砕大豆や生呉や加熱処理された呉液(呉汁、呉)を攪拌する攪拌羽根を持つ呉液攪拌装置とを缶体内下部に配設されたバッチ式蒸煮缶による直接蒸気吹き込み加熱装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
このような密閉式煮釜の他にも、従来から、缶体の上部が開放され、同様に、缶体の下部に配設された、缶体上部に向かって蒸気を吹き込む多数の蒸気噴射管と、攪拌羽根を持つ攪拌装置とを備える開放式煮釜も用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3004981号公報
【特許文献2】WO2008/081948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示の煮釜は、性能的には、原料の加熱ムラが生じ難く、原料煮沸物中に酸素が混入したり溶存したりすることを防止でき、高品質の呉やゆで小豆等の原料煮沸物を得ることができるという利点を有するものではあるものの、原料注入口と注出口とを備えた円筒形の煮沸釜本体は、基本的に密閉式であり、連続加熱処理が可能であるが、煮沸釜本体が比較的細い管体であることから、ある程度以上の処理能力を確保するためには、この煮沸釜本体を複数本まとめた形にする必要があるため、全体として、装置が複雑な構造となり、また大型化するとともに、装置が高価になってしまい、製造コストが高くなるという問題があった。
【0008】
また、上述した従来の開放式煮釜や特許文献2に開示の密閉式煮釜において、水に浸漬した大豆を豆擂り機で擂りつぶした磨砕大豆からなる生呉等の原料を攪拌せずに煮沸する場合、原料となる生呉は粘度があるため、缶体下部に配設された多数の蒸気噴射管の噴射口から缶体上部に蒸気を噴射すると、蒸気噴射管の周りから加熱され、加熱が進むにつれて生呉の対流が徐々に始まり、時間がたつと均一に熱交換されるが、対流が始まる前において、蒸気噴射管の周り、特に噴射口の近傍だけ先に加熱されることになるため、蒸気噴射管の周りの生呉は先に大豆蛋白に熱変性することになり、対流が始まって時間がたって均一に熱交換されるようになったとしても、呉の熱変性の変性度に差があるために、得られる呉が均一な蛋白変性とはならず、その結果、得られる豆乳の粘度が高くなり、苦汁による凝固ムラできてしまう。
このため、これらの従来の煮釜においては、缶体内の下部に配設された攪拌羽根によって生呉を強制的に攪拌して生呉の大豆蛋白への熱変性の均一度を図っているが、十分に均一な熱変性が行われているとは言えず、これらの従来の煮釜において得られた呉を用いて得られた豆乳は、苦汁による凝集反応が早く、品質の良い豆乳や湯葉や豆腐製品ができないという問題があった。
【0009】
本発明の主目的は、上記従来技術の問題点を解消し、水に浸漬した大豆等又はその加熱物等の呉の原料や、水に浸した小豆等又はその加熱物等のゆで小豆等の原料等の水添加煮沸用原料を蒸気噴射管から蒸気を噴射して加熱すると共に、蒸気噴射管を自立回転させて攪拌し、ムラ炊きとなることがなく、品質の良い呉やゆで小豆等の原料煮沸物を容易に、極めて安価に製造することのでき、その結果、品質の良い豆乳や湯葉や豆腐製品や濾し餡を製造することができる蒸気噴射管自立回転方式の煮釜を提供することにある。
本発明の他の目的は、バッチ式処理に好適に用い得る、上面に開口部を有する容器本体を有する、呉やゆで小豆等の原料煮沸物を極めて簡単にかつ極めて安価に製造することのでき、その結果、品質の良い豆乳や湯葉や豆腐製品や濾し餡を製造することができる開放式又は密閉式の煮釜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記主目的及び他の目的を達成するために、品質の良い豆乳や湯葉や豆腐製品や濾し餡を製造することができる、品質の良い呉やゆで小豆等の原料煮沸物を容易にかつ極めて安価に製造するために、鋭意研究を重ねた結果、従来のバッチ式蒸煮缶による直接蒸気吹き込みを行う煮釜においては、蒸気吹き込みの初期段階においては、攪拌羽根で攪拌したとしても、生呉等やゆで小豆の水添加煮沸用原料の粘度が高いため、思うように均一な攪拌を行うことができず、蒸気噴射管の噴射口の周りにある生呉等の原料の熱変性が先行し、熱交換にムラができてしまうことを知見すると共に、水添加煮沸用原料の煮沸が進み、缶体内の原料が沸騰状態になると、蒸気噴射管の噴射口から缶体上方に噴射された蒸気は、生呉等の原料と共に同時にほとんど真上に上昇し、攪拌羽根による攪拌効果がなくなり、攪拌装置が役に立たなくなることを知見し、その結果、これらの従来の煮釜で製造された呉等の原料煮沸物から得られた豆乳の日もちが2〜3日程度であり、ドロつき固まってしまうため、苦汁による凝集反応が早く、品質の良い豆乳や湯葉や豆腐製品ができないことを知見し、本発明に至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明は、内部に煮沸される水添加煮沸用原料を収容し、円形底部の中央に前記原料を煮沸するための蒸気を外部から導入するための蒸気導入口を備える円筒状煮釜本体と、該煮釜本体の前記円形底部の中央に立設され、上端が閉塞し、下端が前記蒸気導入口に連結され、内部に前記蒸気が充填され、下部側面に、前記内部に充填された前記蒸気を排出する複数の蒸気穴を備える円筒状蒸気支柱管と、該蒸気支柱管に回転可能に被装され、上端が閉塞し、下端が開放された円筒状回転支持管と、該回転支持管の内部と連通するように前記回転支持管の外側周面に放射状に気密に取り付けられて支持され、前記蒸気支柱管の前記蒸気穴から前記回転支持管の内部を経て導入された前記蒸気を前記煮釜本体内に噴射する複数の蒸気噴射口をその外周面に持つ持つ複数の蒸気噴射管と、該蒸気噴射管に対応してその上方に所定距離離間して、前記回転支持管の外側周面に該回転支持管の回転軸に直交する方向にかつ所定角度傾斜して取り付けられて支持される複数の偏向羽根と、を有することを特徴とする煮釜を提供するものである。
【0012】
ここで、 前記煮釜本体は、上面に開口部を有するのが好ましく、また、更に、前記煮釜本体の前記開口部を覆う蓋体を有するのが好ましい。
また、前記蒸気噴射口は、前記蒸気噴射管から蒸気を実質的に水平方向に噴射するものであるのが好ましい。
また、前記複数の蒸気噴射口は、前記蒸気噴射管の長手方向に延びた同一直線上に設けられているのが好ましい。
また、前記複数の蒸気噴射管は、3本以上設けられているのが好ましい。
また、前記回転支持管の回転軸に直交する方向における前記偏向羽根の長さは、前記蒸気噴射管の長さと実質的に同じであるのが好ましい。
また、前記偏向羽根の傾斜角度は、垂直方向からプラスマイナス40°の範囲であるのが好ましい。
【0013】
さらに、前記蒸気噴射管に供給するための蒸気を発生する蒸気発生手段を有するのが好ましい。
また、記蒸気発生手段は、脱酸素手段を有するのが好ましい。
また、前記蒸気は、実質的に酸素を含有しない過熱蒸気であるのが好ましい。
また、前記原料は、豆又はその摩砕物と水との混合物、もしくはその混合物の加熱物からなるのが好ましい。
または、前記原料は、水に浸した大豆の摩砕物、この磨砕大豆と水の混合物、もしくはその加熱物であるのが好ましい。
または、前記原料は、小豆又は摩砕小豆と水との混合物、またはその加熱物であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、煮釜本体底部の中央に立設された蒸気支柱管に回転可能に支持された回転支持管の外側周面に放射状に取り付けられ、煮釜本体内を水平に回転する蒸気噴射管の複数の蒸気噴射口から蒸気、好ましくは過熱蒸気を噴射するので、蒸気噴射管を自立して回転させることができ、蒸気吹き込みの初期段階においても、煮釜本体内の磨砕大豆、生呉、磨砕第小豆、その水添加物、またはその加熱物等の水添加煮沸用原料が蒸気噴射口の周りに留まることが無く、特定の原料領域だけに偏って加熱されて熱変性することが無いし、原料の煮沸が進み、缶体内の原料が沸騰状態になって、蒸気噴射管の複数の噴射口から噴射された蒸気が原料と共に同時にほとんど真上に上昇しても、傾斜して配置された偏向羽根に衝突して偏向羽根を回転駆動させて、蒸気噴射管及び偏向羽根を自立して回転駆動させて攪拌羽根として機能させ、沸騰による原料や蒸気の上昇が強くかつ早い程、偏向羽根の回転も強くかつ早くなるので、煮釜本体内の原料をより均一に攪拌することができ、最終的に得られる原料煮沸物の熱変性のムラ、すなわち呉やゆで小豆等の原料煮沸物に熱変性度の差が生じることが無いので、均一な熱変性による均一に蛋白変性された呉やゆで小豆等の原料煮沸物を製造することができる。
その結果、本発明によれば、呉から得られる豆乳の粘度が高くならず、日持ちの良い高品質の豆乳を得ることができ、また、苦汁による凝固も均一となり、凝固ムラのない品質の高い湯葉や豆腐製品を得ることができるし、均一に加熱されたゆで小豆から加熱ムラのない濾し餡等を製造することができる。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、蒸気吹き込みの初期段階においては、蒸気噴射管の外周面(側面)から煮釜本体内に供給される蒸気を水平方向に噴出させることにより、その反力によって蒸気噴射管を蒸気の噴出方向と逆の方向に自立してゆっくりと効率よく回転させ、対流しがたい原料中においても蒸気噴射管を移動させることができ、蒸気を噴出する噴射口の位置を移動させることができるので、蒸気による加熱を特定の原料に偏らせることが無く、均一に満遍なく加熱し、均一に満遍なく熱交換させ、均一に満遍なく熱変性させることができる。また、本態様によれば、原料の煮沸が進み、煮釜本体内の原料やその煮沸物の沸騰状態において、蒸気を蒸気噴射管の側面の複数の蒸気噴射口から煮釜本体内に水平方向に噴出させても、水平方向に噴射された蒸気は原料と共に同時にほとんど真上に上昇するので、蒸気噴射の反力による蒸気噴射管の回転力は弱まってしまうが、上昇する蒸気は原料と共に傾斜する偏向羽根に衝突し、偏向羽根及び蒸気噴射管を効率よく回転駆動させることができ、攪拌効果を維持できるし、蒸気や原料の上昇が強くかつ早くなればなるほど偏向羽根及び蒸気噴射管を強くかつ早く回転駆動できるので、攪拌効果を強くかつ高くすることができる。すなわち、本態様によれば、煮釜本体内部の煮沸用原料に対して、蒸気噴射管及び偏向羽根による水平方向の回転による水平方向の攪拌効果と沸騰による上下方向への攪拌効果との相乗効果も増大するので、原料全体を煮釜中において満遍なく攪拌し、均一に満遍なく加熱し、均一に満遍なく熱交換させ、均一に満遍なく熱変性させることができ、原料煮沸物の加熱ムラや凝固ムラ等の好ましくない現象の発生を防止するという効果が得られる。
【0016】
また、本発明によれば、蒸気を噴射する反力及び蒸気による水添加煮沸用原料の沸騰による蒸気や原料の運動によって、蒸気噴射管及び偏向羽根を自立して回転させることができるので、特別な駆動源が無くても煮釜本体内の原料を均一に攪拌することができ、また、煮釜本体の容積を大きく出来るので、所定の処理能力を確保することができ、簡単な構造で安価な構成とすることができ、製造コストも安価にすることができ、品質の高い呉やゆで小豆等の原料煮沸物を簡単にかつ安価に製造することができ、その結果、品質の良い豆乳や湯葉や豆腐製品や濾し餡等の製品を簡単にかつ安価に製造することができる。
また、本発明において、煮釜本体の上面に開口部を有するものでは、開放式煮釜として用いることもできるし、煮釜本体の上面の開口部を蓋体で覆い、密閉式煮釜として使用することができるので、生呉やゆで小豆原料などの水添加煮沸用原料を簡単に煮釜本体内に入れることができ、その結果、品質の高い呉やゆで小豆等の原料煮沸物を極めて簡単にかつ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の係る煮釜の一実施例の要部を示す部分断面側面図である。
【図2】図1に示す煮釜の上面図である。
【図3】図1に示す煮釜内における水添加煮沸用原料の流れの様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る煮釜を図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の係る煮釜の一実施例の要部構成を示す部分断面側面図であり、図2は、図1に示す煮釜の上面図である。
図1に示す呉製造用煮釜10は、架台12と、架台12により支承される煮釜本体14と、煮釜本体14と、煮釜本体14内に配置される蒸気噴射攪拌機構16とを有する。
この煮釜本体14は、その内部に、加熱処理すべき水添加煮沸用原料(以下、単に原料という)を貯留するための容器である。
また、この蒸気噴射攪拌機構(以下、単に攪拌機構という)16は、詳細は後述するように、煮釜本体14の内部に噴射する蒸気、好ましくは過熱蒸気を原料の加熱源として用いると共に原料を攪拌するための動力源としても用いるものである。
【0019】
なお、煮釜本体14は、円筒形をなし、その上部が開放されて円形開口部14aを形成し、底部は閉塞されて円板状底部14bをなし、加熱処理の対象となる原料は、別の場所(装置)で液中磨砕法などにより事前に調整されて、円形開口部14aから煮釜本体14に供給される。
この煮釜本体14に供給される原料としては、呉(ご(豆汁)、又は煮呉)や、ゆで小豆などの原料煮沸物を得るための加熱処理前の原料であって、豆又はその摩砕物と水との混合物、もしくはその混合物の加熱物、例えば、水に浸した大豆の摩砕物(磨砕大豆)、この磨砕大豆と水の混合物、又は、小豆又は摩砕小豆と水との混合物、、もしくはそれらの加熱物などを挙げることができる。
【0020】
また、煮釜本体14の側面(外周面)の下方には、加熱処理が終了した原料煮沸物を取出すための開閉可能な取出口18が備えられている。
なお、図1に示す煮釜10は、煮釜本体14の上部開口部14aが開放されたバッチ式開放式煮釜としても用いることができるが、図示ないが、円形開口部14aを覆う蓋体を煮釜本体14に被せて、煮釜本体14の内部を密閉したバッチ式密閉式煮釜としても用いることができる。なお、上記蓋体に開閉可能な原料の投入口を設け、投入口から原料を連続的又は断続的に供給できるように、また、取出口18から原料煮沸物を連続的又は断続的に取出すことができるように構成して、連続式煮釜、例えば連続式密閉式煮釜や連続式開放式煮釜として用いてもよい。
さらに、煮釜本体14の底部には、外部の蒸気源(図示せず)から攪拌機構16への蒸気入口となる蒸気導入口28が配置されている。
【0021】
攪拌機構16は、煮釜本体14の底部14bの中央に立設固定される円筒状蒸気支柱管20と、蒸気支柱管20に回転可能に被装される円筒状回転支持管22と、回転支持管22の外側周面(側面)に放射状に気密に取り付けられて支持された複数、図示例では4本の蒸気噴射管24と、蒸気噴射管24に対応してその上方に所定距離離間して、回転支持管22の外側周面にその回転軸に直交する方向にかつ所定角度傾斜して取り付けられて支持され、多数の蒸気噴射口24aを持つ複数、図示例では4枚の偏向羽根26とを備え、蒸気噴射管24の蒸気噴射口24aから噴出される蒸気及びこの蒸気による加熱によって引き起こされる原料の流動によって、回転支持管22に植設された蒸気噴射管24並びに偏向羽根26を自立して回転させるものであり、特に動力を有しない自立して回転自在の構造体となっている。
【0022】
攪拌機構16において、蒸気支柱管20は、煮釜本体14の底部14bの中央に固定されて支持されるが、内部が中空であり、上端が閉塞し、下端が開放された円筒状であり、開放された下端は蒸気導入口28に気密に連結され、中空である内部に蒸気が充填され、下部側面、好ましくは、蒸気支柱管20に被装された回転支持管22の回転支持管22の取付位置近傍に、内部に充填された蒸気を排出する複数の蒸気穴(図示せず)を備える。
蒸気支柱管20の下端は、煮釜本体14の底部中央に設けられた蒸気導入口28に連結され、蒸気導入口28は、図示しない外部の蒸気源に気密に接続されるので、蒸気支柱管20と外部の蒸気源とは蒸気導入口28を介して連結される。その結果、外部の蒸気源から蒸気導入口28を介して蒸気支柱管20の内部に充填された蒸気は、複数の蒸気穴を通って排出され、回転支持管22の内部に充填される。
蒸気支柱管20の頂部(上端外側)には、ベアリング32が取り付けられ、蒸気支柱管20は、ベアリング32を介して回転支持管22を回転可能に支持する。
【0023】
回転支持管22は、内部が中空で、上端が閉塞し、下端が開放された円筒状を成し、下端側に複数(4本)の蒸気噴射管24が放射状に取り付けられ、その上側に所定距離離間して各蒸気噴射管24に対応して複数、図示例では4つの偏向羽根26が同様に取り付けられ、蒸気噴射管24及び偏向羽根26と共に、蒸気支柱管20の上部にベアリング32を介して回転可能に保持される。なお、蒸気噴射管24の取付位置より下側の下端側において、回転支持管22と蒸気支柱管20との間は、回転支持管22の下端側からの蒸気の流出を防止できる程度にシールされているのが好ましい。回転支持管22の下端側において、蒸気支柱管20との間をシールすることにより、蒸気支柱管20内の蒸気を効率よく蒸気支柱管20供給することができる。
また、ベアリング32は、蒸気支柱管20の頂部(上端外側)と回転支持管22の上端内側との間に配置されるが、回転支持管22を蒸気支柱管20に対して回転可能に支持できればよく、飲食品用加熱装置に使用されているベアリングであれば、公知のベアリングを用いることができる。
【0024】
複数(4本)の蒸気噴射管24は、回転支持管22の下端側の外周面(側面)にこの回転支持管22の回転軸に直交する方向に、したがって放射状に、即ち図示例では十字状に気密に取り付けられて、回転支持管22に支持され、回転支持管22の回転に伴って水平方向に、即ち水平面内を回転する。回転支持管22に設けられている蒸気噴射管24の本数は、図示例では、4本であるが、本発明はこれに限定されず、煮釜本体14内の原料中を回転でき、原料を均一に満遍なく加熱処理できれば特に制限的ではなく、煮釜本体14の大きさ(容量)や特性、加熱処理される原料やの量や種類、例えば、原料を加熱処理する蒸気の量や温度などの特性等に応じて適宜設定すればよいが、3本以上であるのが好ましい。また、複数の蒸気噴射管24が回転支持管22に設けらる間隔も、特に制限的ではなく、均等でなくてもよいが、均等な間隔で放射状に設けられるのが好ましい。また、各蒸気噴射管24の長手方向の長さは、その先端が、煮釜本体14の内壁面に当接しなければ、特に制限的ではないが、煮釜本体14の内壁面との間に所定の間隔を開けて配置される長さとするのがよい。なお、複数の蒸気噴射管24の長手方向の長さは、等しいのが好ましい。
【0025】
各蒸気噴射管24は、先端が閉塞し、基端、即ち取付端が開放された円筒状であり、開放された取付端は、回転支持管22の内部と連通するように、その側面に穿孔された複数(4つ)の蒸気渡口30のそれぞれに気密に連結される。その結果、外部の蒸気源から蒸気導入口28を介して蒸気支柱管20の内部に導入され、蒸気支柱管20の複数の蒸気穴を介して回転支持管22の内部に充填された蒸気は、各蒸気渡口30を通って各蒸気噴射管24内に充填される。
【0026】
各蒸気噴射管24の横側面の一方の側には、その中心軸に平行に一列に配列されるように、その横側面に穿孔された複数の蒸気噴射口24aを有しており、各蒸気噴射管24内に充填された蒸気を各蒸気噴射管24の複数の蒸気噴射口24aから水平方向、例えば、図2に矢印aで示す水平方向に、煮釜本体14内の原料中に噴射することにより、各蒸気噴射管24を一定の方向、図2に示す例では矢印b方向に自立して回転させることができるようになっている。特に、蒸気吹き込みの初期段階においては、蒸気噴射管24の複数の蒸気噴射口24aから煮釜本体14内に蒸気を水平方向(矢印a方向)に噴出させることにより、その反力によって蒸気噴射管24を蒸気の噴出方向(矢印a方向)と逆の方向(矢印b方向)にゆっくりと効率よく回転させ、対流しがたい原料中においても蒸気噴射管24を移動させることができ、蒸気を噴出する蒸気噴射口24aの位置を移動させることができる。
【0027】
図示例では、複数の蒸気噴射口24aは、蒸気をに水平方向に噴射するように、各蒸気噴射管24の真横の側面(中心を通る水平面上の管壁面)の一方の側に、その長手方向に延びた同一直線上に一列に設けられているが、本発明はこれに限定されず、蒸気噴射管24を蒸気噴射の反力によって回転できれば、どのような方向に噴射してもよいし、一列に配置されていなくてもよいし、個々に噴射する方向が異なっていてもよいが、実質的に一列に配置され、実質的に水平方向に噴射するのが好ましく、図示例のように、一列に配置され、水平方向に噴射するのがより好ましい。
各蒸気噴射管24に形成される蒸気噴射口24aの数及びサイズは、特に制限的ではなく、煮釜本体14の大きさ(容量)や特性、加熱処理される原料やの量や種類、例えば、原料を加熱処理する蒸気の量や温度などの特性等に応じて適宜設定すればよい。
【0028】
複数(4枚)の偏向羽根26は、複数(4本)の蒸気噴射管24に対応して各蒸気噴射管24の上方に所定距離離間して、回転支持管22の外側周面に回転支持管22の回転軸に直交する方向に放射状に、かつ回転支持管22の回転軸、即ち鉛直方向に対して所定角度傾斜させて取り付けられる平板状の羽根であり、平板状の羽根の短手方向の中心の位置で回転支持管22の外側周面に固定され、回転支持管22に支持される。
偏向羽根26は、原料の煮沸が進み、特に、煮釜本体14内の原料やその煮沸物の沸騰状態において、図3に示すように、煮釜本体14内に蒸気噴射管24の側面の複数の蒸気噴射口24aから図3に矢印aで示す水平方向に噴射された蒸気が、沸騰により上下方向に流動している原料の上昇と共に、図3に矢印cで示すように、同時にほとんど真上に上昇して、蒸気噴射の反力による蒸気噴射管24の回転力が弱まった際に、上昇蒸気及び上昇原料を傾斜して取り付けられた平板状の羽根に衝突させてその反力で回転力を得て回転するものであり、偏向羽根26の回転力により、回転支持管22を、図3に矢印dで示す方向に回転駆動し、その結果、蒸気噴射管24を矢印d方向に回転駆動するためのものである。なお、図3においては、説明を容易にするために、2枚の偏向羽根26を省略し、1枚の偏向羽根26のみを描いている。
【0029】
こうして、偏向羽根26は、蒸気水平噴射の反力による蒸気噴射管24の回転力が弱まった際にも、蒸気噴射管を効率よく回転駆動させることができ、攪拌効果を維持できる。なお、蒸気や原料の上昇が強くかつ早くなればなるほど、偏向羽根26は強くかつ早く回転するので、蒸気噴射管24を強くかつ早く回転駆動でき、攪拌効果を強くかつ高くすることができる。
なお、図示例においては、各偏向羽根26は、各蒸気噴射管24の真上に設けられているが、本発明は特に制限的ではなく、対応して設けられており、上昇する蒸気及び原料(原料煮沸物を含む)によって蒸気噴射管24を回転させるだけの回転力を得ることができれば、いかなる位置に設けられていてもよい。例えば、各偏向羽根26は、少しずれた位置に設けられていてもよいが、実質的に同じ位置であるのが好ましく、同時位置であるのがより好ましい。また、偏向羽根26の枚数も、特に制限的ではなく、蒸気噴射管24の本数と異なっていてもよいが、同一であるのが好ましいが、煮釜本体14の大きさ(容量)や特性、加熱処理される原料やの量や種類、例えば、原料を加熱処理する蒸気の量や温度などの特性等に応じて決定すればよい。
【0030】
また、偏向羽根26の長手方向の長さ、即ち回転支持管22の回転軸に直交する方向における偏向羽根26の長さは、特に制限的ではないが、蒸気噴射管24の長さと実質的に同じであるのが好ましく、蒸気噴射管24の長さと同一であるのがより好ましい。
また、偏向羽根26の鉛直方向からの傾斜角度は、下方に位置する蒸気噴射管24の各蒸気噴射口24aから噴出される蒸気が原料と共に上昇して攪拌羽根26に回転力を付与できれば何度でも良く、蒸気や原料等に応じて適宜決定すればよいが、鉛直方向からプラスマイナス40°の範囲であるのが好ましい。
【0031】
各蒸気噴射管24の上側面には、複数の蒸気噴射口24aの上方を覆うように、偏向板34が取り付けられている。この偏向板34は、蒸気噴射管24の複数の蒸気噴射口24aから水平方向に噴射された蒸気が直ちに上昇することが無く、蒸気が水平噴射方向への移動を維持するように補助するためのものである。煮釜本体14内の原料の沸騰時には、蒸気噴射管24の複数の蒸気噴射口24aから水平方向に噴射された蒸気も、上下方向に流動する原料の上昇に伴って同時に真上に上昇しようとするが、この偏向板34によって蒸気が直ちに上昇することを防止して、所定距離水平方向に移動させることができる。
本発明においては、偏向板34は、必ずしも蒸気噴射管24に設けなくてもよいが、原料の上昇に伴って生じる、水平方向に噴射された蒸気の上昇が早すぎる場合には設けた方が好ましく、設ける場合にも1本以上の蒸気噴射管24に設ければよい。
【0032】
本発明の煮釜10においては、蒸気導入口28から煮釜本体14内に導入する蒸気を外部の蒸気源(図示せず)から供給しているが、本発明に用いることができる蒸気源としては、煮釜本体14内に回転可能に設置される蒸気噴射管24に供給する蒸気、特に過熱蒸気を発生することができれば、特に制限はなく、従来公知のボイラなどを用いることができるが、好ましくは、蒸気噴射管24に供給する過熱蒸気を実質的に酸素を含有しない過熱蒸気とするために、脱酸素手段(図示せず)を有していることが好ましい。
本発明の煮釜10において、特に、密閉式煮釜の場合には、蒸気源に脱酸素手段を備えることにより、実質的に酸素を含有しない過熱蒸気を回転移動している蒸気噴射管24に供給して、その複数の蒸気噴射口24aから煮釜本体14内に位置を変えながら噴射することができる。
【0033】
このため、煮釜本体14内の原料、例えば生呉を実質的に酸素を含有しない過熱蒸気で煮沸することができ、原料、例えば生呉を酸化させることなく煮沸することができる。従って、得られる原料煮沸物、特に、呉の液体成分中に溶存する酸素を極限まで低減させることができる。なお、本明細書では、実質的に酸素を含まない状態も含めて酸素を含まない状態という。
その結果、例えば、呉の場合、こうして得られた呉から固型分(おから)を分離して得られる豆乳中の溶存酸素を実質的になくすことができ、細菌等の繁殖を防止できるので、豆乳を新鮮な状態で従来より極めて長期間保存することができる。
【0034】
本発明において、蒸気源に備える脱酸素手段は、特に制限的ではないが、例えば、蒸気源の蒸気発生部に空気や酸素が混入しないようにするために減圧する手段のみならず、蒸気源の蒸気発生部(図示せず)に供給する水の中に溶存する酸素を除去するために事前に減圧したり、減圧加熱して脱酸素する手段であってもよいし、蒸気発生部に供給する水に脱酸素剤を添加して溶存酸素を除去するようにしてもよいし、この他従来公知の脱酸素手段を用いてもよいし、従来公知の脱酸素方法を行ってもよい。
【0035】
本発明に係る煮釜は、基本的に以上のように構成されるが、以下に、図1、図2及び図3を参照して、本発明に係る煮釜の作用について詳細に説明する。以下では、原料として生呉(水添加磨砕大豆)、原料煮沸物として呉、原料煮沸物から得られる製品として豆乳や湯葉や豆腐製品、蒸気として過熱蒸気を代表例として説明するが、本発明はこれに限定されないことは、上述した通りである。
【0036】
まず、図1及び図2に示す本発明の煮釜10の煮釜本体14内には、別の場所(装置)で液中磨砕法等により事前に調整された処理対象となる原料である水添加磨砕大豆(生呉)が供給される。
次いで、この生呉を加熱処理すべく、所定の温度圧力に調整された過熱蒸気が、外部の蒸気源から煮釜本体14の蒸気導入口28を介して煮釜本体14内の攪拌機構16の蒸気支柱管20内に導入され、その複数の蒸気穴(図示せず)を経て回転支持管22の内部に充填され、その4つの蒸気渡口30を経てそれぞれ4つの蒸気噴射管24内に送り込まれる。
【0037】
その結果、各蒸気噴射管24内に送り込まれた過熱蒸気は、複数の蒸気噴射口24aから煮釜本体14内に、図2及び図3に矢印aで示す水平方向に噴射される。
蒸気噴射口24aから煮釜本体14内の生呉に向かって水平方向に噴射された過熱蒸気は、生呉中においてほぼ水平方向に、かつ複数の蒸気噴射口24aから各蒸気噴射管24の長手方向に垂直な方向に噴出される。
こうして、煮釜本体14内の生呉の加熱処理(煮沸)が開始される。
【0038】
過熱蒸気吹き込みの初期段階、即ち加熱処理の初期段階においては、4本の蒸気噴射管24の複数の蒸気噴射口24aから煮釜本体14内に過熱蒸気を水平方向(矢印a方向)に噴出させることにより、その反力によって蒸気噴射管24は、煮釜本体14内の生呉と共に、過熱蒸気の噴出方向(矢印a方向)と逆の方向(矢印b方向)に自立してゆっくりと対称的に又は左右対称に回転する。4本の蒸気噴射管24の回転に伴い、回転支持管22及び4枚の偏向羽根26が同様に回転する。
その結果、本発明の煮釜10においては、対流しがたい生呉中においても蒸気噴射管24及び偏向羽根26を回転移動させることができ、過熱蒸気を噴出する蒸気噴射口24aを煮釜本体14内の生呉内において均等に移動させることができ、上述の従来の煮釜で発生していた加熱処理の初期段階における生呉の部分的な加熱を防止し、均一に満遍なく加熱し、平均して均等な熱交換を満遍なく行うことができ、均一に満遍なく熱変性させることができる。
【0039】
この初期段階においては、蒸気噴射管24の回転は低速であり、偏向羽根26の回転も低速であるので、蒸気噴射管24及び偏向羽根26による攪拌効果はあるがそれほど大きくはない。しかし、過熱蒸気による生呉の加熱が進み、煮釜本体14内の生呉が所定の温度に達すると、蒸気噴射管24及び偏向羽根26による攪拌効果により水平方向に回転移動している生呉は、煮沸や沸騰により煮釜本体14内を上下方向にも流動し始める。その結果、蒸気噴射管24の側面の複数の蒸気噴射口24aから煮釜本体14内に、図3に矢印aで示す水平方向に噴射された過熱蒸気は、始めは水平方向に噴出するが、煮釜本体14内において流動により上昇する生呉と共に、図3に矢印cで示す垂直上方に上昇する。特に、生呉の沸騰状態では、生呉は上下方向に激しく流動するので、水平方向に噴射された過熱蒸気は、上昇する生呉と同時にほとんど真上に上昇する。
このため、過熱蒸気の噴射の反力による蒸気噴射管24の矢印b方向への回転力が弱まるが、煮釜本体14内において上昇する生呉と共に矢印c方向に上昇する過熱蒸気は、生呉と共に、蒸気噴射管24の上方に傾斜して設けられている偏向羽根26に衝突して図3に矢印e1で示す左方向に流動して図3に矢印eで示す方向に右回転するので、その反力で偏向羽根26を右方向に移動させて図3に矢印dで示す方向に左回転させることができる。
【0040】
したがって、過熱蒸気による生呉の加熱が進み、煮釜本体14内の生呉が煮沸状態や沸騰状態に移行して、加熱蒸気の噴射反力による蒸気噴射管24の矢印b方向への回転力が弱まっても、それに伴って、煮釜本体14内の上昇する生呉及び過熱蒸気による偏向羽根26の回転駆動力が増大するので、4枚の偏向羽根26は、自立して効率よく対称的に回転することができ、この4枚の偏向羽根26回転に伴い、回転支持管22及び4本の蒸気噴射管24も同様に回転することができる。
その結果、偏向羽根26は、蒸気水平噴射の反力による蒸気噴射管24の回転力が弱まった際にも、蒸気噴射管を効率よく回転駆動させることができ、攪拌効果を維持できる。なお、蒸気や原料の上昇が強くかつ早くなればなるほど、偏向羽根26は強くかつ早く回転するので、蒸気噴射管24を強くかつ早く回転駆動でき、攪拌効果を強くかつ高くすることができる。
【0041】
本発明の煮釜10においては、過熱蒸気による生呉の加熱が進んだ段階でも、生呉の沸騰状態でも、対流しがたい生呉中において、蒸気噴射管24及び偏向羽根26を確実にかつ効率よく回転移動させることができ、過熱蒸気を噴出する蒸気噴射口24aを煮釜本体14内の生呉内において均等に移動させ、均等に攪拌することができ、上述の従来の煮釜で発生していた加熱処理の初期段階における生呉の部分的な加熱を防止し、均一に満遍なく加熱し、平均して均等な熱交換を満遍なく行うことができ、均一に満遍なく熱変性させることができる。したがって、従来の煮釜のように、煮釜本体の下部に位置する生呉等の原料の滞留するムラ(いわゆる、凝固ムラ)が生じることがなくなり、全体が高度に均一に均一に熱変性、従って蛋白変性された呉等の原料煮沸物を製造することができる。
【0042】
そして、このように、呉等の原料煮沸物が高度に均一に熱変性化されることにより、この後の処理(固形分の除去、凝固剤との均一な混合・反応等)もスムーズに進めることができる。
その結果、本発明の煮釜10においては、例えば、原料煮沸物が呉である場合、呉から得られる豆乳の粘度が高くならず、日持ちの良い高品質の豆乳を得ることができ、また、苦汁による凝固も均一となり、凝固ムラのない品質の高い湯葉や豆腐製品を得ることができるし、原料煮沸物がゆで小豆である場合にも、均一に加熱されたゆで小豆から加熱ムラのない濾し餡等を製造することができる。
【0043】
また、蒸気源に脱酸素手段を備えた煮釜を用いて、実質的に溶存酸素のない蒸気で煮沸することによって得られた溶存酸素の含有が実質的になく、かつムラ炊きのない高品質の呉から得られた豆乳は、上記効果に加え、細菌の繁殖がなく、新鮮度の劣化が少なく、長期間の保存が可能である。また、このような豆乳から作った豆腐は、上記効果に加え、溶存酸素に起因する巣などができず、味や風味や香りの落ちない美味しい豆腐となる。
【0044】
なお、本発明の煮釜10においては、煮釜本体14内に設けられる蒸気噴射管24の本数、ここに穿孔される蒸気噴射口24aの大きさやその個数、及び偏向羽根26の形状やその数等は、上述した煮釜本体14、原料及び蒸気の特性や容量の他、原料煮沸物から製造する製品、例えば呉から製造する豆乳やゆで小豆から製造する濾し餡等の品種、あるいは原料となる水添加磨砕大豆や磨砕小豆等を製造するための元原料、例えば大豆や小豆の産地等々の条件によって、適宜に選択して決定してもよい。
【0045】
以上、本発明に係る煮釜について種々の実施形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行っても良いのはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る煮釜は、全体が高度に均一に均一に熱変性、従って蛋白変性された呉やゆで小豆等の原料煮沸物を製造することができ、その結果、粘度が高くなっていない、日持ちの良い高品質の豆乳を得ることができ、また、苦汁による凝固も均一となり、凝固ムラのない品質の高い湯葉や豆腐製品を得ることができ、また、均一に加熱されたゆで小豆から加熱ムラのない濾し餡等を製造することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 煮釜
12 架台
14 煮釜本体
16 蒸気噴射攪拌機構(攪拌機構)
18 取出口
20 蒸気支柱管
22 回転支持管
24 蒸気噴射管
24a 蒸気噴射口
26 偏向羽根
28 蒸気導入口
30 蒸気渡口
32 ベアリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に煮沸される水添加煮沸用原料を収容し、円形底部の中央に前記原料を煮沸するための蒸気を外部から導入するための蒸気導入口を備える円筒状煮釜本体と、
該煮釜本体の前記円形底部の中央に立設され、上端が閉塞し、下端が前記蒸気導入口に連結され、内部に前記蒸気が充填され、下部側面に、前記内部に充填された前記蒸気を排出する複数の蒸気穴を備える円筒状蒸気支柱管と、
該蒸気支柱管に回転可能に被装され、上端が閉塞し、下端が開放された円筒状回転支持管と、
該回転支持管の内部と連通するように前記回転支持管の外側周面に該回転支持管の回転軸に直交する方向に気密に取り付けられて支持され、前記蒸気支柱管の前記蒸気穴から前記回転支持管の内部を経て導入された前記蒸気を前記煮釜本体内に噴射する複数の蒸気噴射口をその外周面に持つ複数の蒸気噴射管と、
該蒸気噴射管に対応してその上方に所定距離離間して、前記回転支持管の外側周面に該回転支持管の回転軸に直交する方向にかつ所定角度傾斜して取り付けられて支持される複数の偏向羽根と、を有することを特徴とする煮釜。
【請求項2】
前記煮釜本体は、上面に開口部を有する請求項1に記載の煮釜。
【請求項3】
更に、前記煮釜本体の前記開口部を覆う蓋体を有する請求項2に記載の煮釜。
【請求項4】
前記蒸気噴射口は、前記蒸気噴射管から蒸気を水平方向に噴射するものである請求項1〜3のいずれかに記載の煮釜。
【請求項5】
前記複数の蒸気噴射口は、前記蒸気噴射管の長手方向に延びた同一直線上に設けられている請求項1〜4のいずれかに記載の煮釜。
【請求項6】
前記複数の蒸気噴射管は、3本以上設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の煮釜。
【請求項7】
前記回転支持管の回転軸に直交する方向における前記偏向羽根の長さは、前記蒸気噴射管の長さと同じである請求項1〜6のいずれかに記載の煮釜。
【請求項8】
前記偏向羽根の傾斜角度は、垂直方向からプラスマイナス40°の範囲である請求項7に記載の煮釜。
【請求項9】
さらに、前記蒸気噴射管に供給するための蒸気を発生する蒸気発生手段を有する請求項1〜8のいずれかに記載の煮釜。
【請求項10】
前記蒸気発生手段は、脱酸素手段を有することを特徴とする請求項9に記載の煮釜。
【請求項11】
前記蒸気は、酸素を含有しない過熱蒸気であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の煮釜。
【請求項12】
前記原料は、豆又はその摩砕物と水との混合物、もしくはその混合物の加熱物からなることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の煮釜。
【請求項13】
前記原料は、水に浸した大豆の摩砕物、この磨砕大豆と水の混合物、もしくはその加熱物であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の煮釜。
【請求項14】
前記原料は、小豆又は摩砕小豆と水との混合物、またはその加熱物であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の煮釜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−81396(P2013−81396A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222125(P2011−222125)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(594016344)有限会社ヤヒメ商事 (1)
【Fターム(参考)】