説明

熱と電気の伝導経路を分離させたチップオンボード用金属基板構造

【課題】熱と電気の伝導経路を分離させたチップオンボード用金属基板構造を提供する。
【解決手段】放熱基板10と、絶縁層20と、導体層40とによって構成する。放熱基板の片側の平面には凹んでいる積載領域11と突出している接続部12を設ける。絶縁層は、放熱基板上で化成処理(Conversion Coating)を行い化合物を形成させてなるとともに、放熱基板の積載領域を被覆する。絶縁層は、放熱基板の接続部の位置に窓状の熱伝導領域を形成させる。熱伝導領域は、放熱基板の接続部に対応させて設ける。導体層は絶縁層上に設け、チップ50を熱伝導領域に取り付け、導線60で導体層と接続させる。それにより、チップの熱は、素早く熱伝導領域から放熱基板に伝わり放熱が行われ、しかも電子部品の電気伝導には影響を与えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱と電気の伝導経路を分離させたチップオンボード用金属基板構造に関し、特に発光ダイオード(LED)やその関連技術に適用される(ただし、それに限定されない)、チップオンボード用金属基板に関する。
【背景技術】
【0002】
チップオンボード用金属基板は、電子製品の最も基本的な部材である。しかしながら、科学技術が進歩するにつれて、チップオンボード用金属基板上に設けられたチップの機能も更に向上しているため、発熱量も次第に増えてきている。発光ダイオード(LED)を例にとると、照明用の白色発光ダイオードの発光効率が高くなるにつれ発熱量も増えるため、安全と電子部品の寿命を確保するために、その発散された熱エネルギーを素早く排出しなければならない。図8に示すように、従来のチップオンボード用金属基板は、最下層の放熱基板80(一般的にはアルミ板)と、放熱基板80の側面に圧着された絶縁層81(一般的には酸化アルミニウム、略称AAOを用いる)とによって構成され、絶縁層81上には導体層82が設けられる。導体層82は複数の層にすることができ、具体的な実施例を挙げると、導体層82を第一基層821(例えば、金Au)、第二基層822(例えば、ニッケルNi)、及び第三基層823(例えば、銅Cu)に分け、導体層82上に発光ダイオード(LED)チップ83を設け、金線84をボンディングし回路と接続させ、回路基板を形成させる。しかしながら、この種の構造には欠点があり、例えば、チップ83から生じた熱エネルギー(矢印で図示)は、絶縁層81を通過し、さらに金属の放熱基板80に伝達されて放熱が行われるが、放熱速度が遅すぎる上、さらには、放熱基板80がチップ83と直接接触しておらず発熱源であるチップ83を直接放熱することができないため、チップオンボード基板全体に多くの熱エネルギーが残留することになり、素早く排出することができない。
【0003】
図9に示すように、図8とは別の従来のチップオンボード用金属基板は、アルミ基板91と、絶縁層90と、銅箔92とを圧着してなる。アルミ基板91は放熱の用途に用いられ、絶縁層90は、一般的には有機化合物からなり絶縁の用途に用いられる。銅箔92上にはチップなどの電子回路(図示せず)が設けられ、銅箔92回路のチップが発熱した時、その熱は、一定の厚さをもつ絶縁層90を通過し、アルミ基板91に伝わって放熱が行われる。このため、放熱の効果は高くなく、従来の技術に良く見られる欠点となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、熱と電気の伝導経路を分離させたチップオンボード用金属基板構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるチップオンボード用金属基板は、放熱基板と、絶縁層と、導体層とによってなる。放熱基板の片側の平面には、凹んでいる積載領域と突出している接続部とを設ける。絶縁層は、放熱基板上で化成処理(Conversion Coating)して化合物を形成させてなるとともに、放熱基板の積載領域を被覆する。また、絶縁層は、放熱基板の接続部の位置に窓状の熱伝導領域を形成させる。熱伝導領域は、放熱基板の接続部に対応させて設けられる。導体層は絶縁層上に設ける。以上の構造により、さらにチップを熱伝導領域に取りつけ、導線で導体層と接続させることで、熱伝導と電気伝導を異なる経路で伝導させ、チップの熱を素早く熱伝導領域から直接放熱基板に伝えて放熱を行うことができ、しかも電子部品の電気伝導には影響を与えない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明を使用した状態を示した説明図である。
【図2】本発明の一実施形態の構造を示した説明図(1)である。
【図3】本発明の一実施形態の構造を示した説明図(2)である。
【図4】本発明の一実施形態の構造を示した説明図(3)である。
【図5】本発明の一実施形態の構造を示した説明図(4)である。
【図6−1】本発明の製造フローを示した説明図(1)である。
【図6−2】本発明の製造フローを示した説明図(2)である。
【図6−3】本発明の製造フローを示した説明図(3)である。
【図6−4】本発明の製造フローを示した説明図(4)である。
【図6−5】本発明の製造フローを示した説明図(5)である。
【図6−6】本発明の製造フローを示した説明図(6)である。
【図6−7】本発明の製造フローを示した説明図(7)である。
【図7−1】本発明の製造フローの別の方法を示した説明図(1)である。
【図7−2】本発明の製造フローの別の方法を示した説明図(2)である。
【図8】従来のチップオンボード用金属基板を示した説明図である。
【図9】図8とは異なる従来のチップオンボード用金属基板を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1と図2を参照する。本発明のチップオンボード用金属基板は、放熱基板10と、絶縁層20と、導体層40とによって構成され、放熱基板10はアルミ基板であるのが好ましい。また、放熱基板10の適切な位置には、凹んでいる積載領域11と突出している接続部12を設ける。
【0008】
絶縁層20は放熱基板10の積載領域11を被覆すろとともに、絶縁層20は、放熱基板10自体に化成処理(Conversion Coating)して化合物(例えば、酸化アルミニウムや、その他の気体から形成されるアルミニウム化合物)を形成させてなる。また、絶縁層20は、放熱基板10の接続部12に窓状の熱伝導領域21を形成させる。
【0009】
熱伝導領域21は、放熱基板10の接続部12に対応させて設けられ、実際の需要に応じて様々な形状にすることができる。以下に、熱伝導領域21の形状の変化について、説明を行う。図3に示すように、熱伝導領域21の形状は、複数(或いは単一)の長い棒状にすることも、図4に示すように、複数(或いは単一)の四角形(格子状)にもすることができる。この二つの形状は最もよく適用される形状であり、その他の形状(例えば幾何形状)にすることもできるが、ここでは記載を省略する。
【0010】
図1、図2、図3、図4を参照する。熱伝導ペースト30を熱伝導領域21、21a、21b上に塗布し、その上に、図1に示すようにチップ50を取り付ける。
【0011】
図1に示すように、導体層40は絶縁層20上に設ける。本発明を発光ダイオードに適用する際は、熱伝導領域21に塗布された熱伝導ペースト30の上に発光ダイオードチップ50を取り付け、金線60をボンディングして導体層40と接続することで、回路構造が形成される。この構造により、発光ダイオードチップ50が発光した後、図1の矢印で示すように、その熱は熱伝導ペースト30を直接通過して、放熱基板10に直接吸収される。これにより、本発明のチップオンボード用金属基板は、従来に比べて放熱速度が速くなるため部品の寿命を長くさせることができるとともに、回路は熱エネルギーの影響をうけないため品質も安定させることができる。以上が、本発明の主な特徴である。
【0012】
図5は本発明の別の実施例であり、放熱基板100の平面位置に、複数の凹んでいる積載領域110と、絶縁層20を設ける。絶縁層20は、化成処理(Conversion Coating)によって化合物(例えば、酸化アルミニウムや、その他の気体によって形成されるアルミニウム化合物)を放熱基板100上に直接成型させることによってなる。放熱基板100平面の絶縁層20と接続部120の適切な位置にはスパッタ層42を設け、スパッタ層42は銅であるのが最も好ましい。絶縁層20のスパッタ層42上方には回路の導体層41を設けるとともに、接続部120のスパッタ層42には熱伝導ペースト31を塗布した後、チップ51を取り付け、金線60をボンディングすることで、素早く放熱し、熱と電気の伝導を分離する効果を達成することができる。これにより、熱エネルギーは、チップ51の下方から熱伝導領域を通過し放熱基板100まで伝わる。ただし、導体層41の回路の品質には影響を与えない。
【0013】
図8と図9に示すように、従来においては、熱は絶縁層81、90を通過して最下層の放熱基板80やアルミ基板91に伝達されていたが、図1から図5に示すように、本発明では、チップ50、51の熱は放熱基板10、100に直接伝達されるため、放熱効果が低いという従来の欠点を解決することができる。
【0014】
本発明を更に深く理解できるよう、以下に、本発明の製造フローを説明する。
【0015】
A、図6−1に示すように、まず、放熱基板10を製作する(切断/表面研磨/洗浄)。なお、放熱基板10はアルミ基板であるのが好ましい。
【0016】
B、図6−2に示すように、プリント基板技術によって、放熱基板10の予め設定した位置にマスク層70を塗布する。
【0017】
C、図6−3に示すように、放熱基板10上のマスク層70が塗布されていない部分に、化成処理(Conversion Coating)を行い、一定の深さをもつ絶縁層20を形成させる。本発明の実施例では、絶縁層20は、陽極酸化アルミニウム(即ちAnodic Aluminum Oxidation−−−AAO)である。
【0018】
絶縁層20は放熱基板10上で取り囲むようにして、チップ(図示せず)を取り付けるための、図2、図3、図4に示すような一つ或いは複数の熱伝導領域21、21a、21bを形成する。
【0019】
絶縁層20が放熱基板10を侵食することにより、放熱基板10の表面は積載領域11と接続部12を形成する。また、絶縁層20は成型する際に上に膨張し、接続部12から突出する。
【0020】
D、図6−3と図6−4に示すように、マスク層70を除去し、高さの差Hをもつ絶縁層20と接続部12を露出させ、図6−5に示すように、研磨をおこない表面を平らにする。
【0021】
E、図6−6に示すように、絶縁層20上に導体層40を設ける。その詳細な手順は以下の通りである。
5−1、化学メッキなどにより複数の導体層を形成させる。
5−2、プリント基板技術によって、予め設定した位置にマスク層を塗布する。
5−3、エッチングによって、マスク層を塗布していない箇所を除去する。
【0022】
図6−7に示すように、放熱基板10の接続部12に塗布された熱伝導ペースト30上方に、発光ダイオードチップ50を設け、さらに金線60をボンディングして導体層40と接続させることで、回路構造が形成される。この構造により、発光ダイオードチップ50が発光した後、その熱は、図1の下向き矢印が示すように、熱伝導ペースト30を通過した後、放熱基板10に直接吸收される。
【0023】
本発明の図6−5における放熱基板10の表面を研磨する手順の後、別の実施例においては、図7−1と図7−2に示すように、まず、スパッタ層42を設けた後、導体層41を設けるとともに、チップ51を取り付けて金線をボンディングすることで、回路構造を形成させる。この構造により、チップ51の熱は下方から放熱基板100に直接伝達される。
【符号の説明】
【0024】
10 放熱基板
100 放熱基板
11 積載領域
110 積載領域
12 接続部
120 接続部
20 絶縁層
200 絶縁層
21 熱伝導領域
21a 熱伝導領域
21b 熱伝導領域
30 熱伝導ペースト
31 熱伝導ペースト
40 導体層
41 導体層
42 スパッタ層
50 チップ
51 チップ
60 金線
70 マスク層
80 放熱基板
81 絶縁層
82 導体層
821 第一基層
822 第二基層
823 第三基層
83 チップ
84 金線
90 絶縁層
91 アルミ基板
92 銅箔
h 高さの差


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱基板と、絶縁層と、導体層とによって構成され、
該放熱基板の片側の平面に、凹んでいる積載領域と突出している接続部とを設け、
該絶縁層は、該放熱基板上で化成処理(Conversion Coating)を行うことによって形成された化合物であるとともに該放熱基板の積載領域を被覆し、該絶縁層は該放熱基板の接続部に窓状の熱伝導領域を形成させ、該熱伝導領域は該放熱基板の接続部に対応させて設け、
該導体層は該絶縁層上に設けることを特徴とする、熱と電気の伝導経路を分離させたチップオンボード用金属基板構造。
【請求項2】
前記放熱基板はアルミ基板であることを特徴とする、請求項1に記載の熱と電気の伝導経路を分離させたチップオンボード用金属基板構造。
【請求項3】
前記熱伝導領域は複数であることを特徴とする、請求項1に記載の熱と電気の伝導経路を分離させたチップオンボード用金属基板構造。
【請求項4】
前記熱伝導領域は長い棒状であることを特徴とする、請求項1に記載の熱と電気の伝導経路を分離させたチップオンボード用金属基板構造。
【請求項5】
前記熱伝導領域は四角形であることを特徴とする、請求項1に記載の熱と電気の伝導経路を分離させたチップオンボード用金属基板構造。
【請求項6】
前記放熱基板の接続部と熱伝導領域の上に熱伝導ペーストを塗布することを特徴とする、請求項1に記載の熱と電気の伝導経路を分離させたチップオンボード用金属基板構造。
【請求項7】
前記熱伝導領域にチップを設けることを特徴とする、請求項1に記載の熱と電気の伝導経路を分離させたチップオンボード用金属基板構造。
【請求項8】
前記接続部上にスパッタ層を設けることを特徴とする、請求項1に記載の熱と電気の伝導経路を分離させたチップオンボード用金属基板構造。
【請求項9】
前記絶縁層と導体層の間にスパッタ層を設けることを特徴とする、請求項1に記載の熱と電気の伝導経路を分離させたチップオンボード用金属基板構造。
【請求項10】
前記放熱基板の熱伝導領域は幾何形状であることを特徴とする、請求項1に記載の熱と電気の伝導経路を分離させたチップオンボード用金属基板構造。
【請求項11】
(A)金属の放熱基板を製作し、該放熱基板の一部にマスク層を塗布する手順と、
(B)該放熱基板上のマスク層が塗布されていない部分に、化成処理(Conversion Coating)を行い、一定の深さをもつ絶縁層を形成させ、該絶縁層によって該放熱基板上にチップを取り付けるための少なくとも一つの熱伝導領域を形成させ、該放熱基板の熱伝導領域に対応する位置に接続部を形成させる手順と、
(C)該マスク層を取り除き、該放熱基板の表面を平らにする手順と、
(D)該放熱基板の接続部上に熱伝導ペーストを塗布し、該絶縁層上に導体層を設ける手順と、
(E)該接続部の熱伝導ペースト上方にチップを設け、導線で該導体層と接続させ、熱伝導と電気伝導の経路を分離させる手順とからなる、
熱と電気の伝導経路を分離させたチップオンボード用金属基板構造の製造方法。
【請求項12】
前記絶縁層は、陽極酸化アルミニウム(即ちAAO)であることを特徴とする、請求項11に記載の熱と電気の伝導経路を分離させたチップオンボード用金属基板構造の製造方法。
【請求項13】
前記手順(C)で放熱基板の表面を平らにした後に、スパッタ層を設ける手順を加えることを特徴とする、請求項11に記載の熱と電気の伝導経路を分離させたチップオンボード用金属基板構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図6−5】
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【図6−6】
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【図6−7】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−139008(P2011−139008A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50081(P2010−50081)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(510063487)
【Fターム(参考)】