説明

熱交換器の製造方法

【課題】 生産性の向上及びコストの低減化が図れ、大量且つ安価に製造することのできる熱交換器の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、多数並設したチューブ2の間にフィン3を介装し、複数のコア4が一体に連結されたコア連結体13を組み立てる工程と、各チューブ2の端部をヘッダプレート5に嵌挿すると共にヘッダプレート5にベンドプレート6を固着し、コア連結体13の端部に、複数のタンク7が一体に連結されたタンク連結体15を組み立てる工程と、コア連結体13及びタンク連結体15の各接合部をそれぞれ固定し、複数の熱交換器1が連結された熱交換器連結体17を製造する工程と、コア連結体13及びタンク連結体15の各連結部を切断し、熱交換器連結体17を複数個の熱交換器1に分割する工程とを具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス加工により成形されるベンドプレートから成るタンクを備えた熱交換器の製造方法に関し、特に、一度に複数の熱交換器を製造することのできる熱交換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用ラジエータ等の熱交換器は、チューブ及びフィンから成るコアと、チューブの両端部が嵌挿するヘッダプレート及び該ヘッダプレートに固着されるタンク本体から成るタンクとから概略構成されている。そして、この種の熱交換器は、各チューブの間にフィンを介装すると共に該チューブの両端部をヘッダプレートに嵌挿し、該ヘッダプレートにタンク本体を嵌着することにより組み立てられた後、炉内に挿入され、各接合部を一体ロウ付け固定され、製造されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、パソコンや電子機器の冷却用ラジエータ等、自動車用の熱交換器に比べて小型の熱交換器においては、プレス加工により成形したベンドプレートをヘッダプレートに固着してタンクを形成することも行なわれており、この場合の熱交換器も、上記した場合と同様の方法で製造されていた。
【特許文献1】特開2002−257493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の熱交換器の製造方法では、熱交換器を1個ずつ組み立て、ロウ付け固定していたため、生産性の向上が図れず、コストの低減化が図り難いといった問題があった。
【0005】
特に、パソコンや電子機器冷却用の小型の熱交換器では、大量且つ安価に製造する必要があるが、上記したように熱交換器を1個ずつ製造する従来の製造方法では、その要求を満たすのは困難であった。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、生産性の向上及びコストの低減化が図れ、大量且つ安価に製造することのできる熱交換器の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、多数並設したチューブ2の間にフィン3を介装し、複数のコア4が一体に連結されたコア連結体13を組み立てる工程と、各チューブ2の端部をヘッダプレート5に嵌挿すると共にヘッダプレート5にベンドプレート6を固着し、コア連結体13の端部に、複数のタンク7が一体に連結されたタンク連結体15を組み立てる工程と、コア連結体13及びタンク連結体15の各接合部をそれぞれ固定し、複数の熱交換器1が連結された熱交換器連結体17を製造する工程と、コア連結体13及びタンク連結体15の各連結部を切断し、熱交換器連結体17を複数個の熱交換器1に分割する工程とを具備することを特徴とする。
【0008】
そして、好ましくは、コア連結体13の連結部にはダミーのチューブ14が配設されており、ダミーのチューブ14の中心線に沿って切断する工程を具備しているのがよい。
【0009】
また、タンク連結体15の連結部にはダミーのチューブ14に対応した位置に視認孔16が形成されており、視認孔16を介してダミーのチューブ14を視認しながらタンク連結体15を切断する工程を具備していてもよい。
【0010】
さらに、コア連結体13の連結部にはフィン3が配設されており、フィン3に沿って切断する工程を具備していてもよい。
【0011】
さらにまた、タンク連結体15の連結部にはフィン3に対応した位置にスリット部19が形成されており、スリット部19に沿って切断する工程を具備していてもよい。
【0012】
また、コア連結体13の連結部にはコアサポート連結体20,21,22が配設されており、コアサポート連結体20,21,22の中心線に沿って切断する工程を具備していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の熱交換器を一度に製造することができるため、生産性の向上、及びコストの低減化を図ることができる等、種々の優れた効果を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1〜図3を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る熱交換器の製造方法について説明する。ここで、図1は本実施の形態に係る熱交換器の製造方法を示す斜視図、図2はその製造方法により製造した熱交換器を示す斜視図、図3は熱交換器連結体を示す斜視図である。なお、以下の説明では、本発明を、パソコンや電子機器を冷却するために使用される小型の熱交換器に適用した場合について説明する。
【0015】
初めに、本実施の形態における熱交換器の概略構成について説明する。
【0016】
この熱交換器1は、多数並設されたチューブ2及びチューブ2の間に介装されたフィン3から成るコア4と、チューブ2の両端部が嵌挿するヘッダプレート5,5’及び各ヘッダプレート5,5’に固着されるベンドプレート6,6’から成るタンク7,7’とから概略構成されている。そして、一方のベンドプレート6には、プレス加工により、中央及びその両側にそれぞれ中央膨出部8、入口側膨出部9、出口側膨出部10が形成されており、入口側膨出部9に流体導入管11が接続されていると共に出口側膨出部10に流体排出管12が接続されている。また、他方のベンドプレート6には、プレス加工により、入口側膨出部9’と出口側膨出部10’の2個の膨出部が左右対称に形成されている。さらに、好ましくは、チューブ2の両端部は縮径され、ヘッダプレート5に対するチューブ2の嵌挿長さが規制されるようになっているのがよい。
【0017】
次に、上記した熱交換器1の製造方法について説明する。
【0018】
先ず、多数並設したチューブ2の間にフィン3を介装し、複数のコア4が一体に連結されたコア連結体13を組み立てる。この時、コア連結体13の連結部には、ダミーのチューブ14を配設する。
【0019】
次いで、各チューブ2の両端部をそれぞれヘッダプレート5,5’に嵌挿すると共にヘッダプレート5,5’にベンドプレート6,6’を固着し、コア連結体13の端部に、複数のタンク7,7’が一体に連結されたタンク連結体15を組み立てる。この時、タンク連結体15の連結部には、ダミーのチューブ14に対応した位置にスリット状の視認孔16を形成させる。
【0020】
そして、各コア連結体13及びタンク連結体15をそれぞれ高温の炉内に入れ、各接合部に予め被覆されていたロウ材を溶融し、各接合部を一体にロウ付け固定し、複数の熱交換器1が連結された熱交換器連結体17を製造する。
【0021】
その後、切断機(図1ではカッター刃18)により、視認孔16を介してダミーのチューブ14を視認しながら、ダミーのチューブ14の中心線に沿ってコア連結体13及びタンク連結体15を切断し、熱交換器連結体17を複数個の熱交換器1に分割する。この時、ダミーのチューブ14が半割り状に切断されるため、切断後のチューブ14は熱交換器1のコアサポートとして機能するようになる。したがって、コア4の両側にコアサポートを別個に取り付けなくても、コア4の強度を十分に確保することができる。
【0022】
なお、コア連結体13の連結部には、図4に示すように、フィン3を配設させてもよく、さらに、タンク連結体15の連結部の前記フィン3に対応した位置にミシン目状にスリット孔19やスリット溝等のスリット部を形成させてもよい。この場合、タンク連結体15はスリット孔19に沿って切断されるため、切断作業を容易に行うことができる。
【0023】
また、このようにコア連結体13がフィン3において切断されたとしても、本実施の形態のように熱交換器1がパソコンや電子機器冷却用として使用される場合には、コアサポートを取り付けなくても強度的には問題ない。
【0024】
しかし、本発明は、パソコンや電子機器の冷却用としてだけでなく、他の用途の熱交換器にも適用可能であり、本発明を強度的にコアサポートが必要とされる熱交換器に適用する場合には、例えば、図5及び図6に示すように板金を折曲して形成させたコアサポート連結体20,21や、図7に示すように金属を押し出し加工して形成させたコアサポート連結体22を、コア連結体13の連結部に予め配設しておき、コアサポート連結体20,21,22の中心線に沿って切断し、それぞれのコア4のコアサポートとして機能させることもできる。
【0025】
さらに、上記実施の形態においては、切断機としてカッター刃18を使用しているが、メタルソー(丸ノコ)、レーザ、ウォータジェット等、他の切断機を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る熱交換器の製造方法を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る熱交換器の製造方法により製造した熱交換器を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る熱交換器の製造方法における熱交換器連結体を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る熱交換器の製造方法における熱交換器連結体の別の例を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る熱交換器の製造方法におけるコアサポートを示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る熱交換器の製造方法におけるコアサポートの別の例を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る熱交換器の製造方法におけるコアサポートのさらに別の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 熱交換器
2 チューブ
3 フィン
4 コア
5 ヘッダプレート
6 ベンドプレート
7 タンク
13 コア連結体
14 ダミーのチューブ
15 タンク連結体
16 視認孔
17 熱交換器連結体
19 スリット孔
20 コアサポート
21 コアサポート
22 コアサポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数並設したチューブの間にフィンを介装し、複数のコアが一体に連結されたコア連結体を組み立てる工程と、
前記各チューブの端部をヘッダプレートに嵌挿すると共に該ヘッダプレートにベンドプレートを固着し、前記コア連結体の端部に、複数のタンクが一体に連結されたタンク連結体を組み立てる工程と、
前記コア連結体及びタンク連結体の各接合部をそれぞれ固定し、複数の熱交換器が連結された熱交換器連結体を製造する工程と、
前記コア連結体及び前記タンク連結体の各連結部を切断し、前記熱交換器連結体を複数個の熱交換器に分割する工程と、
を具備することを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項2】
前記コア連結体の連結部にはダミーのチューブが配設されており、該ダミーのチューブの中心線に沿って切断する工程を具備する請求項1に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項3】
前記タンク連結体の連結部には前記ダミーのチューブに対応した位置に視認孔が形成されており、該視認孔を介して前記ダミーのチューブを視認しながら前記タンク連結体を切断する工程を具備する請求項2に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項4】
前記コア連結体の連結部には前記フィンが配設されており、該フィンに沿って切断する工程を具備する請求項1に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項5】
前記タンク連結体の連結部には前記フィンに対応した位置にスリット部が形成されており、該スリット部に沿って切断する工程を具備する請求項4に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項6】
前記コア連結体の連結部にはコアサポート連結体が配設されており、該コアサポート連結体の中心線に沿って切断する工程を具備する請求項1に記載の熱交換器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−3045(P2006−3045A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182265(P2004−182265)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】