説明

熱交換器

【課題】熱交換性能を確保するために必要なサイズの熱電素子を容易に作製できるようにする。
【解決手段】熱電素子(22)は、互いに積層されて帯状に延びる第1絶縁性基板(A)及び第2絶縁性基板(B)を備えている。また、第1絶縁性基板(A)の上面に形成された複数の吸熱側電極(2)と、その両面に形成されスルーホール(7)で接続された複数の放熱側電極(3)と、吸熱側電極(2)と放熱側電極(3)とにそれぞれ接するように薄膜形成されたp型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)とを備えている。さらに、第2絶縁性基板(B)の両面に形成され、スルーホール(7)で接続されるとともに下面が吸熱側電極(2)に接続された複数の吸熱側電極(8)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱電素子を用いて流体同士を熱交換させる、いわゆる熱電素子型の熱交換器が知られている。例えば、特許文献1には、熱電素子型の熱交換器であるペルチェ式ヒートポンプが開示されている。また、非特許文献1には、マイクロチャネルの両面を挟み込むようにペルチェ素子を配置した熱交換器が開示されている。この熱交換器では、熱電素子に通電すると、例えば、マイクロチャネル側が放熱側となり、フィン群側が吸熱側となる。そして、マイクロチャネルを流れる液体が加熱され、フィン群を流通する空気が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−106958号公報
【非特許文献1】ICT‘86 “Performance of Cross-Flow Thermoelectric Liquid Coolers”,6th Int Conf. on Thermoelectrics (ICT‘86),1986,pp.69-73
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した熱交換器では、熱交換性能を確保するために必要なサイズの熱電素子を作製することが困難であるという問題があった。図10(a)は、従来の熱電素子の構成を示す縦断面図である。図10(a)に示すように、この熱電素子(50)は、セラミック等で形成された第1絶縁性基板(A)と第2絶縁性基板(B)との間に電極(51)と、p型及びn型熱電材料(5,6)とを挟み込んだ構造となっている。この熱電素子(50)に電流を流すと、第1及び第2絶縁性基板(A,B)間に温度差が生じる。
【0005】
例えば、第1絶縁性基板(A)が放熱側、第2絶縁性基板(B)が吸熱側となる場合には、図10(b)に示すように、熱電素子(50)は、第1絶縁性基板(A)が膨張するとともに第2絶縁性基板(B)が収縮するように変形する。そのため、p型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)の端面に熱応力が発生し、電極(51)とp型及びn型熱電材料(5,6)との接合部が破壊されてしまうおそれがある。また、このような熱応力は、熱電素子(50)のサイズが大きくなるほどその長手方向の端部で増加するため、帯状に延びる熱電素子(50)を作製することが困難となる。
【0006】
また、熱応力を低下させるために、第1及び第2絶縁性基板(A,B)をポリイミド等のフレキシブルな材質のものに変更したり、第1及び第2絶縁性基板(A,B)自体を無くしてしまう等の対策を施すことも考えられるが、熱電素子(50)の平面精度や強度が低下してしまうため好ましくない。さらに、熱電素子(50)の作製時には、電極(51)とp型及びn型熱電材料(5,6)とを半田で接合するために炉内で半田を溶融させる処理を行っているが、炉内のサイズに制限があるため、大きなサイズの熱電素子(50)を作製することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱交換性能を確保するために必要なサイズの熱電素子を容易に作製できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明は、絶縁性基板の面内方向に延びる帯状電極列が形成された熱電素子を用いて熱交換器を構成するようにした。
【0009】
具体的に、本発明は、熱電素子(22)と、該熱電素子(22)を挟み込むように配置され、該熱電素子(22)と対象流体との間で熱交換を行うための第1流体流路部材(21)及び第2流体流路部材(25)とを備えた熱交換器を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明は、前記熱電素子(22)は、
互いに積層されるとともに前記第1流体流路部材(21)及び第2流体流路部材(25)の長手方向に沿って帯状に延びる第1絶縁性基板(A)及び第2絶縁性基板(B)と、
前記第1絶縁性基板(A)の前記第2絶縁性基板(B)側の面に、該第1絶縁性基板(A)の長手方向に互いに間隔をあけて形成された複数の第1電極(2)と、
前記第1絶縁性基板(A)の両面に、前記各第1電極(2)に隣り合うように該第1電極(2)と離隔してそれぞれ形成され、該第1絶縁性基板(A)の厚さ方向に延びるスルーホール(7)によって両面が接続された複数の第2電極(3)と、
前記第2絶縁性基板(B)の両面に、該第2絶縁性基板(B)の長手方向に互いに間隔をあけて形成され、該第2絶縁性基板(B)の厚さ方向に延びるスルーホール(7)によって両面が接続されるとともに、前記第1絶縁性基板(A)側の面が前記第1電極(2)に接続された複数の第3電極(8)と、
前記第1絶縁性基板(A)の前記第2絶縁性基板(B)側の面に、前記第1電極(2)と該第1電極(2)の両隣の前記第2電極(3)とにそれぞれ接するように薄膜形成された第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)とを備えていることを特徴とするものである。
【0011】
第1の発明では、薄膜形成された第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)の面内方向に電流を流すと、第1電極(2)と第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)との界面、並びに第2電極(3)と第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)との界面において、ペルチェ効果により吸熱及び発熱が発生する。つまり、第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)の両端には、それに相当した温度差が生じる。その結果、例えば、第1電極(2)が吸熱側電極となり、第2電極(3)が放熱側電極となる。
【0012】
そして、第1絶縁性基板(A)において、第2電極(3)における第2絶縁性基板(B)側の面とそれとは反対の面とがスルーホール(7)によって接続されているため、第1絶縁性基板(A)の表面側から放熱される。
【0013】
一方、第2絶縁性基板(B)の第1絶縁性基板(A)側の面に形成された第3電極(8)が第1電極(2)と接続されているため、その第3電極(8)が吸熱側電極となる。そして、第2絶縁性基板(B)において、第3電極(8)における第1絶縁性基板(A)側の面とそれとは反対の面とがスルーホール(7)によって接続されているため、第2絶縁性基板(B)の表面側から吸熱される。
【0014】
これにより、第1絶縁性基板(A)の一方の面から放熱し、第2絶縁性基板(B)の一方の面から吸熱する形式の熱電素子(22)を用いた熱交換器が実現される。つまり、第1絶縁性基板(A)及び第2絶縁性基板(B)において、対向する面を除く基板表面側において吸熱及び放熱が発生する。
【0015】
吸熱及び放熱が発生すると、第1絶縁性基板(A)及び第2絶縁性基板(B)との間に温度差が発生し、吸熱側が収縮、放熱側が膨張するような熱変形が発生するが、第1絶縁性基板(A)と第2絶縁性基板(B)との間は中立面となり、熱変形が最も小さくなる。この第1絶縁性基板(A)と第2絶縁性基板(B)との間にのみ第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)を薄膜形成するため、第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)に作用する熱応力は小さく、熱電素子(22)のサイズを大きくしても熱応力が増加することが抑制される。
【0016】
また、薄膜形成された第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)の面内方向に電流を流して温度差を生じさせるため、低温側から高温側までの距離が大きくなり、温度差が大きくなる。また、第1絶縁性基板(A)と第2絶縁性基板(B)との間に第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)が設けられているため、第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)を表面に設ける場合に比べて、曲げ力が作用したときでも第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)に作用する引張応力又は圧縮応力が小さくなって、破損しにくくなる。
【0017】
また、例えば、ロール状に巻かれたフレキシブル基板に回路パターンを印刷し、別のロール状に巻かれた封止膜と貼り合わせてから再びロール状に巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール方式で熱電素子(22)を作製することができ、製造コストを大幅に低減することができる。
【0018】
第2の発明は、第1の発明において、
前記第1及び第2流体流路(21,25)のうち一方は、対象流体としての冷媒が流れる冷媒管(21)で構成され、他方は、対象流体としての空気と熱交換するフィン群(25)で構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
第2の発明では、第1及び第2流体流路(21,25)のうち一方が、対象流体としての冷媒が流れる冷媒管(21)で構成される。また、他方が、対象流体としての空気と熱交換するフィン群(25)で構成される。このような構成とすれば、例えば、冷媒管(21)側の面が加熱面(放熱面)となり、フィン群(25)側の面が冷却面(吸熱面)となると、冷媒管(21)を流れる冷媒が加熱される一方、フィン群(25)を流通する空気が冷却される。そして、この冷却された空気は利用側へ送られ、熱電素子(22)を用いた熱交換器が実現される。
【0020】
第3の発明は、第2の発明において、
前記熱電素子(22)は、前記冷媒管(21)を挟み込むように一対で設けられ、
前記各熱電素子(22)の前記冷媒管(21)側とは反対側の面には、前記フィン群(25)が設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
第3の発明では、冷媒管(21)は、一対の熱電素子(22)で挟み込まれる。各熱電素子(22)の冷媒管(21)側とは反対側の面には、フィン群(25)が設けられる。このような構成とすれば、冷媒管(21)が一対の熱電素子(22)で挟まれているため、熱電素子が1つの場合に比べて、冷媒管(21)と熱電素子(22)との接触面積が多くなる。したがって、冷媒管(21)の冷媒に対する放熱作用及び吸熱作用が増す。一方、各熱電素子(22)にフィン群(25)が設けられているため、対象流体に対する吸熱作用及び放熱作用が増す。
【0022】
第4の発明は、第2又は第3の発明において、
前記熱電素子(22)には、前記第1乃至第3電極(2,3,8)、並びに前記第1及び第2導電型熱電材料(5,6)で構成される帯状電極列(9)が、空気流通方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、
前記各帯状電極列(9)には、それぞれ異なる電流値の電流が供給されていることを特徴とするものである。
【0023】
第4の発明では、熱電素子(22)には、空気流通方向に互いに間隔をあけて帯状電極列(9)が複数設けられる。この帯状電極列(9)は、第1乃至第3電極(2,3,8)、並びに第1及び第2導電型熱電材料(5,6)で構成され、各帯状電極列(9)には、それぞれ異なる電流値の電流が供給される。
【0024】
このような構成とすれば、各帯状電極列(9)における熱交換効率(COP)を最大化することができる。具体的に、熱電素子(22)では、空気流通方向の上流側の方が下流側に比べて空気と冷媒との温度差が大きくなっている。そのため、熱電素子(22)に供給する電流の電流値が一定の場合には、熱交換効率が低下してしまう。そこで、温度差の大きい上流側に配置された帯状電極列(9)に供給する電流値を大きくする一方、温度差の小さい下流側に配置された帯状電極列(9)に供給する電流値を小さくすることで、全ての帯状電極列(9)において熱交換効率を最大化することができる。
【0025】
第5の発明は、第2又は第3の発明において、
前記熱電素子(22)には、前記第1乃至第3電極(2,3,8)、並びに前記第1及び第2導電型熱電材料(5,6)で構成される帯状電極列(9)が、空気流通方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、
前記各帯状電極列(9)は、電気的に直列に接続されていることを特徴とするものである。
【0026】
第5の発明では、熱電素子(22)には、空気流通方向に互いに間隔をあけて帯状電極列(9)が複数設けられる。この帯状電極列(9)は、第1乃至第3電極(2,3,8)、並びに第1及び第2導電型熱電材料(5,6)で構成され、各帯状電極列(9)は、電気的に直列に接続される。このような構成とすれば、各帯状電極列(9)を電気的に直列に接続して、薄膜形成された第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)の面内方向に電流を流すことができる。
【0027】
第6の発明は、第2又は第3の発明において、
前記熱電素子(22)には、前記第1乃至第3電極(2,3,8)、並びに前記第1及び第2導電型熱電材料(5,6)で構成される帯状電極列(9)が、空気流通方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、
前記各帯状電極列(9)は、電気的に並列に接続されていることを特徴とするものである。
【0028】
第6の発明では、熱電素子(22)には、空気流通方向に互いに間隔をあけて帯状電極列(9)が複数設けられる。この帯状電極列(9)は、第1乃至第3電極(2,3,8)、並びに第1及び第2導電型熱電材料(5,6)で構成され、各帯状電極列(9)は、電気的に並列に接続される。このような構成とすれば、各帯状電極列(9)を電気的に並列に接続して、薄膜形成された第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)の面内方向に電流を流すことができる。
【0029】
第7の発明は、第4乃至第6の発明のうち何れか1つにおいて、
前記各帯状電極列(9)は、空気流通方向の上流側と下流側とで前記第1及び第2導電型熱電材料(5,6)の幅が異なっていることを特徴とするものである。
【0030】
第7の発明では、各帯状電極列(9)の第1及び第2導電型熱電材料(5,6)の幅が、空気流通方向の上流側と下流側とで異なる。このような構成とすれば、各帯状電極列(9)における熱交換効率(COP)を最大化することができる。
【0031】
具体的に、熱電素子(22)では、空気流通方向の上流側の方が下流側に比べて空気と冷媒との温度差が大きくなっている。そのため、熱電素子(22)に供給する電流の電流値が一定の場合には、熱交換効率が低下してしまう。ここで、第1及び第2導電型熱電材料(5,6)には、その幅を狭くするほど熱交換効率が最大となる電流が大きくなるという特徴がある。そこで、これを利用して、温度差の大きい上流側に配置された帯状電極列(9)の第1及び第2導電型熱電材料(5,6)の幅を広くする一方、温度差の小さい下流側に配置された帯状電極列(9)の第1及び第2導電型熱電材料(5,6)の幅を狭くすることで、全ての帯状電極列(9)において熱交換効率を最大化することができる。
【0032】
第8の発明は、第4乃至第6の発明のうち何れか1つにおいて、
前記各帯状電極列(9)は、空気流通方向の上流側と下流側とで前記第1及び第2導電型熱電材料(5,6)の厚みが異なっていることを特徴とするものである。
【0033】
第8の発明では、各帯状電極列(9)の第1及び第2導電型熱電材料(5,6)の厚みが、空気流通方向の上流側と下流側とで異なる。このような構成とすれば、各帯状電極列(9)における熱交換効率(COP)を最大化することができる。具体的に、第1及び第2導電型熱電材料(5,6)には、その厚みが厚くなるほど熱交換効率が最大となる電流が大きくなるという特徴があるから、温度差の大きい上流側に配置された帯状電極列(9)の第1及び第2導電型熱電材料(5,6)の厚みを薄くする一方、温度差の小さい下流側に配置された帯状電極列(9)の第1及び第2導電型熱電材料(5,6)の厚みを厚くすることで、全ての帯状電極列(9)において熱交換効率を最大化することができる。
【0034】
第9の発明は、第4乃至第6の発明のうち何れか1つにおいて、
前記各帯状電極列(9)は、空気流通方向の上流側と下流側とで前記第1及び第2導電型熱電材料(5,6)の数量が異なっていることを特徴とするものである。
【0035】
第9の発明では、各帯状電極列(9)の第1及び第2導電型熱電材料(5,6)の数量が、空気流通方向の上流側と下流側とで異なる。このような構成とすれば、各帯状電極列(9)における熱交換効率(COP)を最大化することができる。具体的に、第1及び第2導電型熱電材料(5,6)の数量を多くするほど熱交換効率が最大となる電圧が大きくなるから、温度差の大きい上流側に配置された帯状電極列(9)の第1及び第2導電型熱電材料(5,6)の数量を少なくする一方、温度差の小さい下流側に配置された帯状電極列(9)の第1及び第2導電型熱電材料(5,6)の数量を多くすることで、全ての帯状電極列(9)において熱交換効率を最大化することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、第1絶縁性基板(A)の一方の面から放熱し、第2絶縁性基板(B)の一方の面から吸熱する形式の熱電素子(22)を用いた熱交換器が実現される。つまり、第1絶縁性基板(A)及び第2絶縁性基板(B)において、対向する面を除く基板表面側において吸熱及び放熱が発生する。
【0037】
このように、第1絶縁性基板(A)と第2絶縁性基板(B)との間にのみ第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)を薄膜形成するため、熱電素子(22)のサイズを大きくしても、第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)に作用する熱応力が増加することが抑制される。また、薄膜形成された第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)の面内方向に電流を流して温度差を生じさせるため、低温側から高温側までの距離が大きくなり、温度差が大きくなる。また、第1絶縁性基板(A)と第2絶縁性基板(B)との間に第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)が設けられているため、第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)を表面に設ける場合に比べて、曲げ力が作用したときでも第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)に作用する引張応力又は圧縮応力が小さくなって、破損しにくくなる。
【0038】
また、第1乃至第3電極(2,3,8)、並びに第1及び第2導電型熱電材料(5,6)で構成される帯状電極列(9)を空気流通方向に互いに間隔をあけて複数設け、各帯状電極列(9)に供給する電流の電流値を変更したり、各帯状電極列(9)の第1及び第2導電型熱電材料(5,6)の幅、厚み、数量等をそれぞれ変更することで、各帯状電極列(9)における熱交換効率(COP)を最大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態1に係る熱交換器の構成を概略的に示す正面図である。
【図2】(a)は熱交換器の縦断面図、(b)は(a)のX−X断面図である。
【図3】図2のY−Y断面図である。
【図4】熱電素子の絶縁性基板間における横断面図である。
【図5】熱電素子の構成を示す平面図である。
【図6】熱電素子の構成を示す縦断面図である。
【図7】(a)は電流値と温度差に対する最大COPの変化を示すグラフ図、(b)は本実施形態2に係る熱電素子の構成を示す平面図である。
【図8】(a)は熱電材料の形状に対する最大COPの変化を示すグラフ図、(b)は本実施形態3に係る熱電素子の図7相当図である。
【図9】(a)は熱電材料の数量に対する最大COPの変化を示すグラフ図、(b)は本実施形態4に係る熱電素子の図7相当図である。
【図10】従来の熱電素子の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0041】
《実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る熱交換器の構成を概略的に示す正面図、図2は熱交換器の構成を示す断面図、図3は図2のY−Y断面図である。図1〜図3に示すように、この熱交換器(10)は、対象流体として空気(以下、対象空気という)を冷却する気体冷却器であり、複数の熱交換モジュール(20)と、入口側ヘッダ(35)と、出口側ヘッダ(36)とを備えている。
【0042】
前記熱交換モジュール(20)は、冷媒が流れる冷媒管としてのマイクロチャネル(21)と、マイクロチャネル(21)を挟み込むように配置された一対の熱電素子(22)と、一対のフィン群(25)とを備えている。なお、マイクロチャネル(21)は、本発明に係る第1流体流路部材を構成している。フィン群(25)は、本発明に係る第2流体流路部材を構成している。
【0043】
前記マイクロチャネル(21)は、内部に複数の微小流路(21a)を有する多孔扁平管で構成されている。このマイクロチャネル(21)は、対象空気の流通方向に扁平な矩形体に形成されている。また、マイクロチャネル(21)は、微小流路(21a)が対象空気の流通方向に一列に並ぶように形成されている。
【0044】
前記熱電素子(22)は、マイクロチャネル(21)の長手方向(すなわち、図1や図2(a)における上下方向)に延びる帯状に形成されている。そして、各熱電素子(22)は、マイクロチャネル(21)をその扁平面側から挟み込むように配置されている。この熱電素子(22)の詳細な構成については後述する。
【0045】
前記各熱電素子(22)は、マイクロチャネル(21)よりも長さが短く、マイクロチャネル(21)の両端部以外で重なっている。つまり、マイクロチャネル(21)の両端部には熱電素子(22)が重なっていない。さらに、各熱電素子(22)の幅は、マイクロチャネル(21)の幅と略等しい(マイクロチャネル(21)の幅の方が僅かに長い)。
【0046】
前記フィン群(25)は、各熱電素子(22)のマイクロチャネル(21)側とは反対側の扁平面に設けられている。各フィン群(25)は、熱電素子(22)に接するベース板(24)と、ベース板(24)に設けられて流通する空気との間で熱交換を行う複数の放熱フィン(27)とで形成された、いわゆるコルゲートフィンにより構成されている。なお、コルゲートフィンは、一般に、フィン厚さが薄く、フィン高さが低く、フィンピッチが狭い。
【0047】
そして、前記フィン群(25)は、ベース板(24)の放熱フィン(27)側とは反対側の面が熱電素子(22)の扁平面に接着されている。ベース板(24)の長さ、すなわちフィン群(25)の長さは、マイクロチャネル(21)の長さよりも短く、熱電素子(22)の長さよりも若干長い。ベース板(24)の幅、すなわちフィン群(25)の幅は、熱電素子(22)の幅よりも長い。
【0048】
前記フィン群(25)のベース板(24)の空気流通方向における端縁部及び長手方向における端縁部には、それぞれシール材(26)が充填されており、マイクロチャネル(21)とベース板(24)との隙間が塞がれている。
【0049】
前記熱交換モジュール(20)では、マイクロチャネル(21)と熱電素子(22)とが接着剤によって接合されている。また、熱電素子(22)とフィン群(25)のベース板(24)とが接着剤によって接合されている。ここで、接着剤は熱伝導型のものが用いられる。これにより、マイクロチャネル(21)と熱電素子(22)とフィン群(25)とが一体に形成されて熱交換モジュール(20)を構成している。そして、熱交換モジュール(20)が対象空気の流通方向に直交する方向に複数並列されている。
【0050】
前記入口側ヘッダ(35)及び出口側ヘッダ(36)は、何れも対象空気の流通方向に直交する方向に延びる円形管で構成されている。入口側ヘッダ(35)は、各熱交換モジュール(20)のマイクロチャネル(21)の入口端である一端側(図2(a)の上側)に接続されている。出口側ヘッダ(36)は、各熱交換モジュール(20)のマイクロチャネル(21)の出口端である他端側(図2(a)の下側)に接続されている。マイクロチャネル(21)の入口端及び出口端は、入口側ヘッダ(35)及び出口側ヘッダ(36)の内部に突出して開口している。つまり、各熱交換モジュール(20)が入口側ヘッダ(35)及び出口側ヘッダ(36)に対して並列に接続されている。
【0051】
なお、図示しないが、入口側ヘッダ(35)には外部から冷媒が流入する冷媒流入口が、出口側ヘッダ(36)には外部へ冷媒が流出する冷媒流出口がそれぞれ設けられている。
【0052】
前記入口側ヘッダ(35)は、外部から流入した冷媒が各熱交換モジュール(20)のマイクロチャネル(21)の微小流路(21a)へ分配流入するように構成されている。出口側ヘッダ(36)は、各マイクロチャネル(21)の微小流路(21a)から流出した冷媒が合流して外部へ流出するように構成されている。
【0053】
そして、前記入口側ヘッダ(35)及び出口側ヘッダ(36)の両端開口には、蓋(35a,36a)が取り付けられている。また、熱交換器(10)は、入口側ヘッダ(35)及び出口側ヘッダ(36)の蓋(35a,36a)に取り付けられる側板(37)を備えている。つまり、この側板(37)は、空気の流通方向から見て熱交換器(10)の右側片及び左側片を構成している。なお、この熱交換器(10)では、フィン群(25)の隙間が空気流通部(16)を構成している。
【0054】
また、前記熱交換器(10)には、ヘッダ用断熱材(31)と、側板用断熱材(32)と、管用断熱材(33)とが設けられている。具体的に、入口側ヘッダ(35)及び出口側ヘッダ(36)の外周面にはヘッダ用断熱材(31)が巻かれている。また、側板(37)の内側面(すなわち、空気流通部(16)に接する面)には側板用断熱材(32)が取り付けられている。また、対象空気の流通方向における熱電素子(22)の前面側(図3における下側)と後面側(図3における上側)に管用断熱材(33)が設けられている。つまり、マイクロチャネル(21)及び熱電素子(22)の前面及び後面が管用断熱材(33)によって覆われて対象空気に触れないようになっている。
【0055】
−熱電素子の構成−
図4は、熱電素子の絶縁性基板間における横断面図、図5は平面図、図6は縦断面図である。図4〜図6に示すように、熱電素子(22)は、第1絶縁性基板(A)と第2絶縁性基板(B)とが積層されて構成されている。
【0056】
前記第1絶縁性基板(A)の上面には、吸熱側電極(2)、放熱側電極(3)、p型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)がそれぞれ細帯状に且つ複数形成されている。これらは放熱側電極(3)、n型熱電材料(6)、吸熱側電極(2)、p型熱電材料(5)、放熱側電極(3)、・・・、p型熱電材料(5)、放熱側電極(3)の順に配置されて、帯状電極列(9)を構成している。この帯状電極列(9)の両端の放熱側電極(3)には、電線(17,18)が接続されている。p型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)の各々は、両隣の各電極(2,3)に接するように蒸着等の方法により薄膜状に形成されている。
【0057】
このように、前記第1絶縁性基板(A)と第2絶縁性基板(B)との間にp型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)を設ける(すなわちp型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)を第1絶縁性基板(A)と第2絶縁性基板(B)とで挟み込む)ようにしたので、熱電素子(22)のサイズを大きくしても、p型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)に作用する熱応力が増加することが抑制される。また、曲げ力が作用したときでもp型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)に作用する引張応力又は圧縮応力が小さくなる。したがって、p型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)が破損してしまうことを抑制でき、信頼性の高い熱電素子(22)を提供することができる。
【0058】
前記第1絶縁性基板(A)の両面には、細帯状の複数の放熱側電極(3)が形成されている(図5参照)。第1絶縁性基板(A)の上面に形成された放熱側電極(3)の各々は、スルーホール(7)によって、第1絶縁性基板(A)の下面の対応する放熱側電極(3)に接続されている。スルーホール(7)は、例えば基板(A)に形成された孔をペーストで埋める等により形成される。
【0059】
なお、前記吸熱側電極(2)は、本発明に係る第1電極を構成している。放熱側電極(3)は、本発明に係る第2電極を構成している。p型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)は、それぞれ本発明に係る第1導電型熱電材料及び第2導電型熱電材料を構成している。
【0060】
一方、前記第2絶縁性基板(B)の両面には、細帯状の複数の吸熱側電極(8)が形成されている(図4及び図5参照)。第2絶縁性基板(B)の上面に形成された吸熱側電極(8)の各々は、スルーホール(7)によって、第2絶縁性基板(B)の下面の対応する吸熱側電極(8)に接続されている。
【0061】
そして、第2絶縁性基板(B)の下面に形成された吸熱側電極(8)は、第1絶縁性基板(A)の上面に形成された吸熱側電極(2)に接合層(12)を介して接続されている。接合層(12)は、伝熱性が必要であり、半田等の導電性材料の他に、導電性を有しない熱伝導性の接着剤等であってもよい。導電性を有しない材料を用いた場合、基板(B)の各吸熱側電極(8)及びスルーホール(7)には電流は流れず、熱のみが流れることとなる。なお、吸熱側電極(8)は、本発明に係る第3電極を構成している。
【0062】
前記第1絶縁性基板(A)及び第2絶縁性基板(B)については絶縁性で且つ断熱性の高いものが望ましい。これは放熱側(高温側)から吸熱側(低温側)への熱漏れを防ぐためである。例えば、ガラス、樹脂及び発泡樹脂等を用いることが考えられる。
【0063】
前記各電極(2,3,8)は、電気抵抗が小さく熱伝導率が高い材料(例えば、銅やアルミ等)で形成されることが望ましい。また、p型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)との接合を良好にしたり、耐久性を上げるために、各電極(2,3,8)にはニッケルや金等のメッキを施すことが望ましい。
【0064】
また、図6に示すように、前記第1絶縁性基板(A)には、絶縁層(11)を介して放熱側伝熱板(13)が設けられている。一方、第2絶縁性基板(B)には、絶縁層(11)を介して吸熱側伝熱板(14)が設けられている。また、第2絶縁性基板(B)の下面には、p型熱電材料(5)と、n型熱電材料(6)及び放熱側電極(3)との間の熱伝導を避けるために、溝状の空間(15)が形成されている。空間(15)の内部は熱伝導を小さくするために、真空又は熱伝導率の低いガス(フロン、キセノン等)を封入することが望ましい。
【0065】
前記熱電素子(22)では、放熱側電極(3)間に電線(17,18)によって電流を流すことにより、各吸熱側電極(2)と各熱電材料(5,6)との界面において吸熱が発生し、各放熱側電極(3)と各熱電材料(5,6)との界面において放熱が発生する。その結果、各熱電材料(5,6)の両端には、それに相当した温度差が生じる。
【0066】
このように、薄膜形成された熱電材料(5,6)の面内方向に電流を流して温度差を生じさせるため、低温側から高温側までの距離を大きくすることができ、温度差を大きく取ることができる。具体的に、各熱電材料(5,6)の厚みをt、幅をW(図4参照)、長さをL(図6参照)、各電極(2,3)との接合部分の長さをLc(図6参照)として説明すると、電流は薄膜の面内方向に流れるため、温度差も面内方向に付くことになり、薄膜であってもLを大きく取れるため、温度差を大きく取ることができる。また、tに比べWを極端に大きく(例えば、1000倍程度)、Lをtの例えば10倍程度とすることにより、素子の形状因子(L/tW)を通常のペルチェモジュールと同等にすることができる。したがって、通常のペルチェモジュールと同様の特性(抵抗、吸熱量、効率等)を得ることができる。さらに、tを10μm程度の薄膜とし、tに比べWを極端に大きく(例えば、1000倍程度)、Lをtの例えば10倍程度とすることにより、熱電材料の体積(LtW)を通常のペルチェモジュールに使用される熱電材料の体積の1/100程度に減らすことができる。これにより、省資源によるコストダウン、環境適合性が大幅に向上する。
【0067】
なお、各電極(2,3)と各熱電材料(5,6)との接合面は、接合部の電気抵抗及び熱抵抗を小さくし、且つ、周辺の電流密度及び熱密度を小さくして損失を小さくするために、大きく取ることが望ましい(具体的には、Lc>t)。ただし、大きすぎると材料を無駄に使用することとなるため最適値が存在する。また、同様の理由により、各電極(2,3)の厚みは各熱電材料(5,6)の厚みよりも大きくすることが望ましい。
【0068】
前記熱電素子(22)は、第1絶縁性基板(A)の両面に形成された放熱側電極(3)がスルーホール(7)によって互いに接続されているため、下面の放熱側電極(3)及び放熱側伝熱板(13)から放熱する。また、熱電素子(22)では、第2絶縁性基板(B)の両面の吸熱側電極(8)がスルーホール(7)によって互いに接続され且つ第1絶縁性基板(A)上面の吸熱側電極(2)と接合層(12)を介して接続されているため、第2絶縁性基板(B)上面の吸熱側電極(8)及び吸熱側伝熱板(14)から吸熱する。
【0069】
前記熱交換器(10)では、放熱側伝熱板(13)側にマイクロチャネル(21)が設けられて加熱面となり、吸熱側伝熱板(14)側にフィン群(25)が設けられて冷却面となっている。これにより、マイクロチャネル(21)が放熱側となり、フィン群(25)が吸熱側となる。
【0070】
前記入口側ヘッダ(35)に流入した冷媒(液体)は、各熱交換モジュール(20)のマイクロチャネル(21)に流入する。一方、各熱交換モジュール(20)のフィン群(25)に対象空気が流入する。マイクロチャネル(21)に流入した冷媒は、両側の熱電素子(22)から放熱されて蒸発する。フィン群(25)を流通する対象空気は、フィンによって吸熱されて所定温度に冷却される。冷却された対象空気は利用側へ供給される。
【0071】
−実施形態1の効果−
以上のように、本実施形態1に係る熱交換器(10)によれば、第1絶縁性基板(A)と第2絶縁性基板(B)との間にのみp型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)を薄膜形成するため、熱電素子(22)のサイズを大きくしても、p型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)に作用する熱応力が増加することが抑制される。また、薄膜形成されたp型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)の面内方向に電流を流して温度差を生じさせるため、低温側から高温側までの距離が大きくなり、温度差が大きくなる。また、第1絶縁性基板(A)と第2絶縁性基板(B)との間にp型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)が設けられているため、p型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)を表面に設ける場合に比べて、曲げ力が作用したときでもp型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)に作用する引張応力又は圧縮応力が小さくなって、破損しにくくなる。
【0072】
《実施形態2》
図7(a)は電流値と温度差に対する最大COPの変化を示すグラフ図、図7(b)は本実施形態2に係る熱電素子の構成を示す平面図である。前記実施形態1との違いは、各帯状電極列(9)に対してそれぞれ異なる電流値の電流を供給するようにした点であるため、以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0073】
本実施形態2に係る熱電素子(22)は、図7(b)に示すように、空気流通方向に間隔をあけて帯状電極列(9)が3つ設けられている。そして、各帯状電極列(9)の両端の放熱側電極(3)には、電線(17,18)がそれぞれ独立して接続されている。これにより、各帯状電極列(9)に対してそれぞれ異なる電流値の電流を供給することができる。
【0074】
ここで、前記熱電素子(22)では、空気流通方向の上流側における空気と冷媒との温度差が大きく、下流側ではその温度差が小さくなっている。そのため、熱電素子(22)の各帯状電極列(9)に供給する電流の電流値が一定の場合には、図7(a)に示すように、熱交換効率(COP)の最大位置が変化してしまい、各帯状電極列(9)において熱交換効率を最大化することができない。
【0075】
そこで、本発明では、空気と冷媒との温度差が大きい上流側に配置された帯状電極列(9)に供給する電流値を大きくする一方、温度差が小さい下流側に配置された帯状電極列(9)に供給する電流値を小さくするようにした。これにより、全ての帯状電極列(9)において熱交換効率を最大化することができる。
【0076】
《実施形態3》
図8(a)は熱電材料の形状に対する最大COPの変化を示すグラフ図、図8(b)は本実施形態3に係る熱電素子の図7相当図である。前記実施形態1との違いは、各帯状電極列(9)におけるp型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)の幅や厚みを変更するようにした点である。
【0077】
本実施形態3に係る熱電素子(22)は、図8(b)に示すように、空気流通方向に間隔をあけて帯状電極列(9)が3つ設けられている。図8(b)で上側の帯状電極列(9)の左端の放熱側電極(3)には電線(17)が接続される一方、右端の放熱側電極(3)には中央の帯状電極列(9)の右端の放熱側電極(3)が接続されている。また、下側の帯状電極列(9)の左端の放熱側電極(3)には中央の帯状電極列(9)の左端の放熱側電極(3)が接続される一方、右端の放熱側電極(3)には電線(18)が接続されている。これにより、各帯状電極列(9)が電気的に直列に接続される。
【0078】
ここで、図8(a)に示すように、p型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)の形状に応じて、熱交換効率の最大位置が変化していることが分かる。具体的に、p型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)の幅が狭くなるほど、又は厚みが厚くなるほど、熱交換効率が最大となる電流値が大きくなっている。
【0079】
そこで、本発明では、空気と冷媒との温度差が大きい上流側に配置された帯状電極列(9)のp型及びn型熱電材料(5,6)の幅を広く(又は厚みを薄く)する一方、温度差の小さい下流側に配置された帯状電極列(9)のp型及びn型熱電材料(5,6)の幅を狭く(又は厚みを厚く)するようにした。これにより、全ての帯状電極列(9)において熱交換効率を最大化することができる。
【0080】
《実施形態4》
図9(a)は熱電材料の数量に対する最大COPの変化を示すグラフ図、図9(b)は本実施形態4に係る熱電素子の図7相当図である。前記実施形態1との違いは、各帯状電極列(9)間で熱電材料の数量を変更するようにした点である。
【0081】
本実施形態4に係る熱電素子(22)は、図9(b)に示すように、空気流通方向に間隔をあけて帯状電極列(9)が3つ設けられている。各帯状電極列(9)の両端の放熱側電極(3)には電線(17,18)が接続されて、各帯状電極列(9)が電気的に並列に接続されている。
【0082】
ここで、図9(a)に示すように、p型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)の数量に応じて、熱交換効率の最大位置が変化していることが分かる。具体的に、p型熱電材料(5)及びn型熱電材料(6)の数量が多くなるほど熱交換効率が最大となる電圧が大きくなっている。
【0083】
そこで、本発明では、空気と冷媒との温度差が大きい上流側に配置された帯状電極列(9)のp型及びn型熱電材料(5,6)の数量を少なくする一方、温度差の小さい下流側に配置された帯状電極列(9)のp型及びn型熱電材料(5,6)の数量を多くするようにした。これにより、全ての帯状電極列(9)において熱交換効率を最大化することができる。
【0084】
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0085】
例えば、前記実施形態では、対象空気を冷却する気体冷却器としての熱交換器(10)について説明したが、本発明は、対象空気を加熱する気体加熱器としても適用することができる。その場合、熱電素子(22)に逆電流を流すことにより、マイクロチャネル(21)側が吸熱側となり、フィン群(25)側が放熱側となる。これにより、対象空気がフィン群(25)によって放熱されて加熱される。
【0086】
また、前記実施形態では、フィン群(25)を流通する気体(空気)を利用するようにしているが、マイクロチャネル(21)を流れる液体(冷媒)を利用するようにしてもよい。
【0087】
また、前記入口側ヘッダ(35)及び出口側ヘッダ(36)を省略して、1つの熱交換モジュール(20)で構成した熱交換器(10)であってもよい。
【0088】
また、前記実施形態において、コルゲートフィン以外のフィン形式をフィン群(25)に用いてもよいし、マイクロチャネル(21)ではなく流路を1つ有する管を冷媒管として用いてもよい。
【0089】
また、前記実施形態では、フィン群(25)を流通する気体(空気)を冷却又は加熱して利用するようにしているが、この形態に限定するものではない。例えば、本発明の熱交換器(10)は、熱電素子(22)の電源の代わりに負荷を接続し、吸熱側に外部より熱入力を与えて放熱側より放熱させることにより、すなわち吸熱側の温度が放熱側の温度よりも高くなることにより、ゼーベック効果を利用した発電モジュールとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明したように、本発明は、熱交換性能を確保するために必要なサイズの熱電素子を容易に作製することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0091】
2 吸熱側電極(第1電極)
3 放熱側電極(第2電極)
5 p型熱電材料(第1導電型熱電材料)
6 n型熱電材料(第2導電型熱電材料)
7 スルーホール
8 吸熱側電極(第3電極)
10 熱交換器
21 マイクロチャネル(第1流体流路部材、冷媒管)
22 熱電素子
25 フィン群(第2流体流路部材)
A 第1絶縁性基板
B 第2絶縁性基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電素子(22)と、該熱電素子(22)を挟み込むように配置され、該熱電素子(22)と対象流体との間で熱交換を行うための第1流体流路部材(21)及び第2流体流路部材(25)とを備えた熱交換器であって、
前記熱電素子(22)は、
互いに積層されるとともに前記第1流体流路部材(21)及び第2流体流路部材(25)の長手方向に沿って帯状に延びる第1絶縁性基板(A)及び第2絶縁性基板(B)と、
前記第1絶縁性基板(A)の前記第2絶縁性基板(B)側の面に、該第1絶縁性基板(A)の長手方向に互いに間隔をあけて形成された複数の第1電極(2)と、
前記第1絶縁性基板(A)の両面に、前記各第1電極(2)に隣り合うように該第1電極(2)と離隔してそれぞれ形成され、該第1絶縁性基板(A)の厚さ方向に延びるスルーホール(7)によって両面が接続された複数の第2電極(3)と、
前記第2絶縁性基板(B)の両面に、該第2絶縁性基板(B)の長手方向に互いに間隔をあけて形成され、該第2絶縁性基板(B)の厚さ方向に延びるスルーホール(7)によって両面が接続されるとともに、前記第1絶縁性基板(A)側の面が前記第1電極(2)に接続された複数の第3電極(8)と、
前記第1絶縁性基板(A)の前記第2絶縁性基板(B)側の面に、前記第1電極(2)と該第1電極(2)の両隣の前記第2電極(3)とにそれぞれ接するように薄膜形成された第1導電型熱電材料(5)及び第2導電型熱電材料(6)とを備えていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1及び第2流体流路(21,25)のうち一方は、対象流体としての冷媒が流れる冷媒管(21)で構成され、他方は、対象流体としての空気と熱交換するフィン群(25)で構成されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項2において、
前記熱電素子(22)は、前記冷媒管(21)を挟み込むように一対で設けられ、
前記各熱電素子(22)の前記冷媒管(21)側とは反対側の面には、前記フィン群(25)が設けられていることを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記熱電素子(22)には、前記第1乃至第3電極(2,3,8)、並びに前記第1及び第2導電型熱電材料(5,6)で構成される帯状電極列(9)が、空気流通方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、
前記各帯状電極列(9)には、それぞれ異なる電流値の電流が供給されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項5】
請求項2又は3において、
前記熱電素子(22)には、前記第1乃至第3電極(2,3,8)、並びに前記第1及び第2導電型熱電材料(5,6)で構成される帯状電極列(9)が、空気流通方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、
前記各帯状電極列(9)は、電気的に直列に接続されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項6】
請求項2又は3において、
前記熱電素子(22)には、前記第1乃至第3電極(2,3,8)、並びに前記第1及び第2導電型熱電材料(5,6)で構成される帯状電極列(9)が、空気流通方向に互いに間隔をあけて複数設けられ、
前記各帯状電極列(9)は、電気的に並列に接続されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項7】
請求項4乃至6のうち何れか1つにおいて、
前記各帯状電極列(9)は、空気流通方向の上流側と下流側とで前記第1及び第2導電型熱電材料(5,6)の幅が異なっていることを特徴とする熱交換器。
【請求項8】
請求項4乃至6のうち何れか1つにおいて、
前記各帯状電極列(9)は、空気流通方向の上流側と下流側とで前記第1及び第2導電型熱電材料(5,6)の厚みが異なっていることを特徴とする熱交換器。
【請求項9】
請求項4乃至6のうち何れか1つにおいて、
前記各帯状電極列(9)は、空気流通方向の上流側と下流側とで前記第1及び第2導電型熱電材料(5,6)の数量が異なっていることを特徴とする熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−71338(P2011−71338A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221322(P2009−221322)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】