説明

熱交換装置

【課題】用水路を有効活用し得る熱交換装置を提供する。
【解決手段】熱交換装置10は、用水路に取り付けられる配管20と、配管20の内部に設けられ、水密に隔離された中空の熱交換モジュール30と、熱交換モジュール30を支持するとともに、配管20の外部と該熱交換モジュール30の内部とを連通して、被冷却媒体Cを導入する少なくとも一組の導入管40A・40Bと、各導入管40A・40Bおよび熱交換モジュール30の内部に被冷却媒体Cを循環させる被冷却媒体循環ポンプ50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用水あるいは水道水を有効活用し得る熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場における機械などを冷却したり洗浄したりするために工業用水等が利用されている。
【0003】
工業用水は、一般の水道水と比較すると、単位流量当たりの冷却性能は劣るが、1m当たりの単価は安い。そのため、冷却用途や洗浄用途に関しては、一般の水道水より工業用水が利用されることが多い。
【0004】
工業用水を冷却用途に用いる場合には、工業用水路から配管を引き込み、工業用水を冷却用の熱交換器等に供給する。熱交換器等では、供給された工業用水を用いることにより、冷媒を冷却する。一方、冷媒を冷却した工業用水は昇温する。そこで、昇温した工業用水を冷却塔(クーリングタワー)で放熱する。放熱により工業用水は冷えるので、冷却用途に再利用することができる。なお、工業用水は、数回再利用された後、最終的には、下水や河川などに放流される。以下、具体例を挙げる。
【0005】
図26は従来の空調/冷房システム1の構成を示す模式図である。
【0006】
空調/冷房システム1は、蒸発器2・圧縮機3・凝縮器4・減圧器5を備え、冷却対象流通管6と低沸点媒体流通管7と被冷却媒体流通管8との間の熱交換を行なう。蒸発器2では、冷却対象流通管6と低沸点媒体流通管7とが熱交換し、凝縮器4では、低沸点媒体流通管7と被冷却媒体流通管8とが熱交換する。
【0007】
詳しくは、低沸点媒体流通管7には低沸点媒体が流れており、蒸発器2において、冷却対象流通管6を流れる水や空気などの冷却対象物質から低沸点媒体が熱を奪って蒸発する。また、低沸点媒体流通管7内の蒸発した低沸点媒体は、凝縮器4において、被冷却媒体流通管8を流れる工業用水等に熱を放出して液化する。なお被冷却媒体流通管8は冷却塔9と接続しており、被冷却媒体が冷却塔9を経由する際に放熱する。要するに、低沸点媒体流通管7を流れる低沸点媒体が状態変化することにより、冷却対象流通管6を流れる水や空気などの冷却対象物質が冷却される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−174438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来の空調/冷房システムにおいては、工業用水等を引き込み、冷却塔を用いるなどして、冷却対象物質を冷却する。
【0009】
しかしながら、従来の空調/冷房システムのように冷却塔などの設備を用いると、大量の廃熱によって「ヒートアイランド現象」を引き起こすことがある。それゆえ、冷却塔を用いないで、工業用水を冷却用途に有効活用することが望まれている。
【0010】
また、工場の減少などにより工業用水の利用が減少する地域等においては、工業用水が利用されていないにもかかわらず、工業用水路に水が流れていることになる。そのため、工業用水路が有効活用されていないことも多い。
【0011】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、工業用水あるいは水道水を有効活用し得る熱交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するために以下の手段を講じる。
【0013】
請求項1に対応する発明は、工業用水あるいは水道水配管の内部に設けられた熱交換モジュールと、前記熱交換モジュールを支持するとともに、前記配管の外部と該熱交換モジュールの内部とを連通して、被冷却媒体を導入する少なくとも一組の導入管と、前記各導入管および前記熱交換モジュールの内部に前記被冷却媒体を循環させる被冷却媒体循環手段とを備えた熱交換装置である。
【0014】
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する熱交換装置において、前記熱交換モジュールは、前記導入管に接続され、前記配管の管軸に沿って互いに向き合うような開口部を複数有する少なくとも一組の集合管と、前記各集合管の互いに向き合った開口部に設けられた複数の伝熱管とを備えた熱交換装置である。
【0015】
請求項3に対応する発明は、請求項1に対応する熱交換装置において、前記熱交換モジュールは、前記配管の管軸に沿って、該配管の内部を仕切る仕切り板と、前記仕切り板の両端部と前記配管の内壁との間をそれぞれ塞ぐ一組の隔壁とを備えた熱交換装置である。
【0016】
請求項4に対応する発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に対応する熱交換装置において、前記熱交換モジュールの外壁に、凹凸部材を備えた熱交換装置である。
【0017】
請求項5に対応する発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に対応する熱交換装置において、前記熱交換モジュール内の平均流路断面積が、前記配管の管軸に垂直な面の流路断面積の20%以内である熱交換装置である。
【0018】
請求項6に対応する発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に対応する熱交換装置において、前記熱交換モジュールが設けられた位置より下流の位置に、前記配管内を流れる水を攪拌するための攪拌部材を備えた熱交換装置である。
【0019】
請求項7に対応する発明は、請求項2に対応する熱交換装置において、前記伝熱管の外壁に、フィンを備えた熱交換装置である。
【0020】
請求項8に対応する発明は、請求項2に対応する熱交換装置において、前記配管内壁と前記伝熱管が設けられた領域との間に、流動抵抗を大きくするための抵抗部材を備えた熱交換装置である。
【0021】
請求項9に対応する発明は、請求項2に対応する熱交換装置において、前記各伝熱管の中心間距離と該伝熱管の外径との比が、1.3から2.4までのいずれかの値となるように、前記各伝熱管が配置される熱交換装置である。
【0022】
請求項10に対応する発明は、用水路の配管の径より大きい径を有し、該配管を被覆する被覆管と、前記被覆管の両端部と前記配管の外壁との間をそれぞれ閉塞するとともに、該被覆管を支持する一組の閉塞部材と、前記被覆管の内壁、前記配管の外壁及び前記各閉塞部材により形成される隔離領域の内部と、前記被覆管の外部とを連通して、被冷却媒体を導入する少なくとも一組の導入管と、前記各導入管および前記隔離領域の内部に前記被冷却媒体を循環させる被冷却媒体循環手段とを備えた熱交換装置である。
【0023】
請求項11に対応する発明は、請求項10に対応する熱交換装置において、前記配管の内壁に、凹凸部材を備えた熱交換装置である。
【0024】
請求項12に対応する発明は、請求項10または請求項11に対応する熱交換装置において、前記隔離領域の流路断面積が、前記配管の管軸に垂直な面の流路断面積の20%以内である熱交換装置である。
【0025】
<作用>
従って、本発明は以上のような手段を講じたことにより、以下の作用を有する。
【0026】
請求項1に対応する発明は、工業用水配管あるいは水道水配管の内部に設けられた熱交換モジュールと、熱交換モジュールを支持するとともに、配管の外部と該熱交換モジュールの内部とを連通して、被冷却媒体を導入する少なくとも一組の導入管と、各導入管および熱交換モジュールの内部に被冷却媒体を循環させる被冷却媒体循環手段とを備えた構成により、工業用水配管等から工業用水等を引き出さずに被冷却媒体を冷却することができ、工業用水等を有効活用し得る熱交換装置を提供できる。
【0027】
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する作用に加え、熱交換モジュールが、導入管に接続され、配管の管軸に沿って互いに向き合うような開口部を複数有する少なくとも一組の集合管と、各集合管の互いに向き合った開口部に設けられた複数の伝熱管とを備えているので、配管内部を流れる工業用水等と伝熱管の外壁との接触効率を高めることにより、伝熱管内部を流れる被冷却媒体を効率よく冷却することができる。
【0028】
請求項3に対応する発明は、請求項1に対応する作用に加え、熱交換モジュールが、配管の管軸に沿って、該配管の内部を仕切る仕切り板と、仕切り板の両端部と該配管の内壁との間をそれぞれ塞ぐ一組の隔壁とを備えており、配管内部を流れる水に仕切り板全体が接触するので、被冷却媒体を効率よく冷却することができる。
【0029】
請求項4に対応する発明は、請求項1〜3のいずれか1項に対応する作用に加え、熱交換モジュールの外壁に、凹凸部材を備えているので、配管内部を流れる水と熱交換モジュールとの接触効率を高めることができ、被冷却媒体を効率よく冷却することができる。
【0030】
請求項5に対応する発明は、請求項1〜4のいずれか1項に対応する作用に加え、熱交換モジュールの内部の平均流路断面積が、配管の管軸に垂直な面の流路断面積の20%以内であるので、配管を流れる工業用水等の温度上昇を1K未満に抑えることができる。
【0031】
請求項6に対応する発明は、請求項1〜5のいずれか1項に対応する作用に加え、熱交換モジュールが設けられた位置より下流の位置に、配管内を流れる水を攪拌するための攪拌部材を備えているので、攪拌部材の設置位置よりさらに下流に熱交換モジュールが設けられた場合、その下流に設けられた熱交換モジュールに流入する水温を均一化することができ、被冷却媒体を効率よく冷却することができる。
【0032】
請求項7に対応する発明は、請求項2に対応する作用に加え、伝熱管の外壁に、フィンを備えているので、配管内部を流れる工業用水等と伝熱管との接触効率を高めることができ、被冷却媒体を効率よく冷却することができる。
【0033】
請求項8に対応する発明は、請求項2に対応する作用に加え、配管内壁と伝熱管が設けられた領域との間に、流動抵抗を大きくするための抵抗部材を備えており、配管を流れる工業用水等を伝熱管の近傍に導くことができ、伝熱管を流れる被冷却媒体を効率よく冷却することができる。
【0034】
請求項9に対応する発明は、請求項2に対応する作用に加え、各伝熱管の中心間距離と該伝熱管の外径との比が、1.3から2.4までのいずれかの値となるように、各伝熱管が配置されるので、用水路のポンプ動力に対する、工業用水等と被冷却媒体との熱交換量を最大化することができる。
【0035】
請求項10に対応する発明は、用水路の配管の径より大きい径を有し、該配管を被覆する被覆管と、被覆管の両端部と配管の外壁との間をそれぞれ閉塞するとともに、該被覆管を支持する一組の閉塞部材と、被覆管の内壁、配管の外壁及び各閉塞部材により形成される隔離領域の内部と、被覆管の外部とを連通して、被冷却媒体を導入する少なくとも一組の導入管と、各導入管および隔離領域の内部に被冷却媒体を循環させる被冷却媒体循環手段とを備えた構成により、工業用水配管等から工業用水等を引き出さずに被冷却媒体を冷却することができ、工業用水等を有効活用し得る熱交換装置を提供できる。
【0036】
請求項11に対応する発明は、請求項10に対応する作用に加え、配管の内壁に、凹凸部材を備えているので、配管内部を流れる水と配管の内壁との接触効率を高めることができ、隔離領域を流れる被冷却媒体を効率よく冷却することができる。
【0037】
請求項12に対応する発明は、請求項10・11に対応する作用に加え、隔離領域の流路断面積が、配管の管軸に垂直な面の流路断面積の20%以内であるので、配管を流れる水の温度上昇を1K未満に抑えることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、工業用水あるいは水道水を有効活用し得る熱交換装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0040】
<第1の実施形態>
(1−1.構成)
図1は本発明の第1の実施形態に係る熱交換装置10の構成を示す模式図である。
【0041】
ここでは、熱交換装置10が、工業用水配管あるいは水道水配管(以下、工業用水配管等という)の内部を流れる工業用水Wあるいは水道水(以下、工業用水等という)に、空調/冷房システム1からの廃熱を排出するための構成例を示している。
【0042】
なお、既に説明した部分と同一の部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。また、以下の各実施形態についても同様にして重複した説明を省略する。
【0043】
熱交換装置10は、熱交換モジュール30・導入管40・被冷却媒体循環ポンプ50とを備え、空調/冷房システム1の凝縮器4に被冷却媒体流通管8を介して接続される。
【0044】
熱交換装置10を工業用水配管あるいは水道水配管に取り付ける際には、例えば工業用水配管等の一部を配管20に交換して取り付けても良い。
【0045】
熱交換モジュール30は、配管20の内部に設けられ、本実施形態においては、図2〜4に示すような熱交換モジュール30が用いられる。すなわち、熱交換モジュール30は、後述する導入管40A・40Bに接続され、配管20の管軸に沿って互いに向き合うような開口部Hを複数有する少なくとも一組の集合管31A・31Bと、各集合管31A・31Bの互いに向き合った開口部Hに水密に設けられた複数の伝熱管32とを備えている。それゆえ、各伝熱管32は、配管20の内部を工業用水等が流れる方向と平行に設けられることになる。
【0046】
導入管40は、熱交換モジュール30を支持するとともに、配管20の外部と該熱交換モジュール30の内部とを連通して、被冷却媒体Cを導入する少なくとも一組の管状部材である。ここでは、一組の導入管40Aと40Bとにより、複数の集合管31を介して伝熱管32に被冷却媒体Cが導入される。
【0047】
被冷却媒体循環ポンプ50は、各導入管40A・40Bおよび熱交換モジュール30の内部に被冷却媒体Cを循環させるものである。ここでは、空調/冷却システム1の凝縮器4と各伝熱管32とを通過するように被冷却媒体Cを循環させる。
【0048】
(1−2.作用)
次に本実施形態に係る熱交換装置10の作用について図5のフローチャートを用いて説明する。
【0049】
本実施形態では、熱交換装置10は、空調/冷房システム1に取り付けられている。
【0050】
空調/冷房システム1では、蒸発器2において、低沸点媒体流通管7を流れる低沸点媒体を蒸発させることにより、冷却対象流通管6を流れる空気あるいは水などの冷却対象物質から熱を奪って、冷風や冷水にする。一方、蒸発されて気体となった低沸点媒体は圧縮機3で昇圧されてから凝縮器4に送られる。そして、凝縮器4において、被冷却媒体流通管8を流れる被冷却媒体Cにより低沸点媒体流通管7の低沸点媒体が冷却される。すなわち、低沸点媒体流通管7から被冷却媒体流通管8へ、空調/冷房システム1の廃熱が放出される(ステップS1)。
【0051】
ここで、被冷却媒体流通管8の両端は、導入管40A・40Bとそれぞれ接続されている。それゆえ、被冷却媒体循環ポンプ50を稼動することにより、熱を受け取った被冷却媒体Cを一方向に移動して、熱交換モジュール30へ供給することができる(ステップS2)。
【0052】
熱交換モジュール30は、配管20の内部に設置されている。それゆえ、熱交換モジュール30の集合管31や伝熱管32の内部を被冷却媒体Cが通過すると、配管20の内部を流れる工業用水W等に廃熱が放出される(ステップS3)。この結果、被冷却媒体Cが冷却される。
【0053】
冷却された被冷却媒体Cは、再度、凝縮器4に流入する(ステップS4)。そして、凝縮器4において、被冷却媒体流通管8が低沸点媒体流通管7から廃熱を受け取る。
【0054】
この後、被冷却媒体循環ポンプ50が稼動している間、上述したステップS1〜S4の動作が繰り返される(ステップS5)。これにより、空調/冷房システム1の廃熱が、熱交換装置10を介して工業用水配管等に放出される。
【0055】
(1−3.効果)
以上説明したように、本実施形態に係る熱交換装置10は、工業用水配管あるいは水道水配管に取り付けられる配管20と、配管20の内部に設けられた熱交換モジュール30と、熱交換モジュール30を支持するとともに、配管20の外部と該熱交換モジュール30の内部とを連通して、被冷却媒体Cを導入する少なくとも一組の導入管40A・40Bと、各導入管40A・40Bおよび熱交換モジュール30の内部に被冷却媒体Cを循環させる被冷却媒体循環ポンプ50とを備えた構成により、工業用水配管あるいは水道水配管から工業用水W等を引き出さずに被冷却媒体Cを冷却することができ、工業用水あるいは水道水を有効活用することができる。
【0056】
すなわち、導入管40は、被冷却媒体Cを、工業用水配管等の内部に導く複数の集合管31に繋がっている。さらに各集合管31は、工業用水W等の流れる方向と平行に設けられた複数の伝熱管32に繋がっている。そのため、被冷却媒体Cは、これら伝熱管32の内部を流通する間に、伝熱管32の外部を流れる、より低温の工業用水W等と熱交換して冷却される。
【0057】
なお、被冷却媒体Cは、一組の集合管31A・31Bを介して、導入管40A・40Bから各伝熱管32に導入される。この際、被冷却媒体循環ポンプ50によって、被冷却媒体流通管8から、導入管40A・集合管31A・伝熱管32・集合管31B・導入管40B・被冷却媒体流通管8と循環するように被冷却媒体Cに圧力が加えられる。
【0058】
なお、熱交換装置10によれば、工業用水W等と被冷却媒体Cとが混ざらずに熱交換される。そのため、工業用水W等の品質劣化を引き起こすことなく、工業用水W等を冷却用途に用いることができる。
【0059】
また、熱交換装置10は、冷却塔を用いていない。そのため、都市部のビルの屋上に数多く設置されている冷却塔からの大量の廃熱によって引き起こされる「ヒートアイランド現象」を軽減できる。
【0060】
なお、本実施形態では、空調/冷房システム1の廃熱を放出する熱交換装置10を例として説明したが、これに限らず、発生した熱を外部に廃棄する必要があるものであれば、熱交換装置10を他のシステムと組み合わせても良いことは言うまでもない。
【0061】
また、本実施形態では、被冷却媒体Cを、工業用水W等の流れの下流側から導入したが、上流側から導入しても良いことは言うまでもない。
【0062】
また、導入管40を配管20に挿入する位置は、図1に示すものには限られない。すなわち、導入管40は、上面や下面・側面のいずれの方向から挿入してもよいものである。
【0063】
また、本実施形態に係る熱交換装置10においては、熱交換モジュール30の自重を支える為に、配管20の内部にスペーサが設置される場合がある。
【0064】
なお、本実施形態に係る熱交換装置10では、伝熱管32を複数本設置する多管式の熱交換モジュール30について述べているが、管状ではなく板状の隔壁を用いるプレートフィン式の熱交換モジュール30を採用しても良い。
【0065】
(低コスト化)
また、本実施形態に係る熱交換装置10は、工業用水W等を低コストで使用することに、資するものである。以下、この点について説明する。
【0066】
工業用水Wを使用する場合、一般的には、需要者は、工業用水の供給事業者と契約時に「責任水量」を決め、これに応じて一定の使用料金を支払う。しかし、使用量が「責任水量」未満でも支払う料金は同じである。逆に、責任水量を超えてしまった場合は、超過料金を支払う必要がある。
【0067】
また、地域冷暖房や未利用エネルギー利用のプロジェクトにおいては、冷却用途のために一旦、工業用水Wを引き込んでから使用し、その後で元の工業用水配管に戻すことがある。しかし、元の工業用水配管に工業用水を戻したとしても、使用料金が変わることはない。なぜならば、一旦、需要者側に引き込まれた工業用水を元の配管に戻されたとしても、品質劣化のリスクが生ずることに変わりはないため、供給事業者の立場からすると、使用料金を変える要因とはなりえないからである。
【0068】
いずれにしても、需要者にとっては、実使用量に対応した料金より過大な料金を支払う必要がある。そのため、過大な料金を支払う必要のない低コスト化を実現し得る熱交換システムが望まれている。
【0069】
ところで、工業用水配管の内部には、比較的低温の水が、常に一定流速以上で流れているという現状がある。さらに、工業用水の供給事業者には、各需要者の消費量にかかわらず、ある一定量以上の水を常に配水する義務が課せられている。また、水道水配管では水道水が需要者に到達するまでに、残留塩素が抜けてしまわないように、配管内を一定時間内に通過させる必要がある。
【0070】
一方、公共事業の民営化が進むにつれて、工業用水等の供給事業者として、地方治体等の公共事業体だけでなく、民間事業者も参入してきている。民間事業者が供給事業者である場合、水の供給形態や規制に縛られることがないので、需要者の料金負担が少なく、実使用量に見合った料金体系の設定をすることにより、需要を喚起することが可能となる。
【0071】
かかる背景から、本実施形態に係る熱交換システム10を用いれば、工業用水W等を配管外部に取り出さず、かつ工業用水W等と混ざること無しに被冷却媒体Cを冷却できるので、水質劣化のリスクは生じず、需要者に工業用水路を低コストで提供できるようになる。すなわち、本実施形態に係る熱交換装置10は、工業用水W等を低コストで使用することに、資するものである。
【0072】
<第2の実施形態>
図6は本発明の第2の実施形態に係る熱交換装置10Sの構成を示す模式図である。
【0073】
本実施形態に係る熱交換装置10Sは、第1の実施形態の熱交換モジュール30とは異なる熱交換モジュール30Sを用いたものである。
【0074】
熱交換モジュール30Sは、仕切り板33と隔壁34A・34Bとを備えている。具体的には、熱交換モジュール30Sの全体は図7のように示される。また、各部材を分解した状態は、図8のように示される。
【0075】
仕切り板33は、配管20の管軸に沿って、該配管20の内部を水密に仕切る部材である。ここでは、工業用水W等の流れと平行に設置される。
【0076】
隔壁34A・34Bは、仕切り板33の両端部と配管20の内壁20Wとの間をそれぞれ塞ぐ一組の部材である。ここでは、配管20の管軸と垂直に円弧状の部材が用いられる。
【0077】
上述したように、熱交換モジュール30Sは、仕切り板33と、仕切り板33の両端部を閉塞する隔壁34A・34Bとを備えているので、配管20の内部に、工業用水W等と隔離した隔離領域を有している。
【0078】
そこで、被冷却媒体循環ポンプ50を稼動して、凝縮器4を経由した被冷却媒体Cを、上記隔離領域に導入管40Aから導入し、導入管40Bから排出させて循環させれば、工業用水W等を工業用水配管等から外部に取り出さず、かつ被冷却媒体Cと混ぜないように熱交換させることができる。
【0079】
また、本実施形態に係る熱交換モジュール30Sでは、配管20の内部を流れる工業用水W等に仕切り板33全体が接触するので、被冷却媒体Cを効率よく冷却することができる。
【0080】
なお、本実施形態に係る熱交換装置10Sでは、一組の隔壁34A・34Bによって、工業用水W等と隔離した1つの隔離領域を示しているが、複数組の隔壁を用いて、複数の隔離領域を形成しても良いことは言うまでもない。
【0081】
また、各隔壁34A・34Bの取り付け角度は、流れ方向に対して、厳密に平行である必要は無い。例えば、工業用水W等の流動抵抗を減らすために、上流側に設置される隔壁34Aは上流側に向かって斜めに設置し、下流側に設置される隔壁34Bは下流側に向かって斜めに設置してもよい。
【0082】
<第3の実施形態>
図9は本発明の第3の実施形態に係る熱交換装置10Tの構成を示す模式図である。
【0083】
本実施形態に係る熱交換装置10Tは、配管20の内部ではなく、工業用水路等の配管20’の外部に被冷却媒体Cを循環させる。すなわち、熱交換装置10Tでは、工業用水配管等の外部に熱交換モジュール30Tを備えている。
【0084】
熱交換モジュール30Tは、被覆管35と閉塞部材36とを備えている。具体的には、熱交換モジュール30Tの全体は図10のように示される。また、各部材を分解した状態は、図11のように示される。
【0085】
被覆管35は、工業用水路等の配管20’の径より大きい径を有し、該配管20’を内部に収容する部材である。ここでは、被覆管35は、工業用水配管等と同心円上に、工業用水配管等の外径より大きな内径を有している。
【0086】
閉塞部材36A・36Bは、被覆管35の両端部と配管20’の外壁との間をそれぞれ閉塞する一組の部材である。ここでは、閉塞部材36A・36Bは、配管軸と垂直に設置されるリング状の部材である。
【0087】
上述したように、熱交換モジュール30Tは、被覆管35と、被覆管35の両端部と配管20’の外壁との間を閉塞する閉塞部材36A・36Bとを備えているので、配管20’の外壁面に隔離領域を形成する。
【0088】
そこで、被冷却媒体循環ポンプ50を稼動して、凝縮器4を経由した被冷却媒体Cを、上記隔離領域に導入管40Aから導入し、導入管40Bから排出させて循環すれば、工業用水W等を工業用水配管等から外部に取り出さず、かつ被冷却媒体Cと混ぜないように熱交換することができる。
【0089】
このように、本実施形態に係る熱交換装置10Tによれば、用水路から工業用水W等を引き出さずに被冷却媒体Cを冷却することができ、用水路を有効活用することができる。
【0090】
なお、本実施形態に係る熱交換装置10Tでは、同心円状の被覆管35を設けているが、同心円状のものに限る必要は無い。すなわち、工業用水配管等との間に、被冷却媒体Cが流れる隔離領域が確保できる形状であればよい。例えば、被覆管35の断面形状が多角形状のものであってもよい。
【0091】
なお、工業用水配管等は、一般的には地中に埋設されているが、地上に設置されているものもある。このような地上に設置された工業用水配管等に対して、本実施形態に係る熱交換装置10Tであれば、被覆管35を備えるだけでよく、配管20’等を取り替える必要がないので、建設作業等の負荷を格段に軽減することができる。
【0092】
<第4の実施形態>
本発明の第4の実施形態に係る熱交換装置10Uは、熱交換モジュール30・30S・30Tに、工業用水等と接触する接触部材を設けている。
【0093】
具体的には、図12に示すように、第1の実施形態に係る伝熱管32の外壁にフィン37を設けている。なお、図12(A)は伝熱管32の外観を示す模式図であり、図12(B)は伝熱管32の断面形状を示す模式図である。
【0094】
また、図13(A)・図13(B)に示すような凹凸部材38Aや38Bを、第1の実施形態に係る配管20の内壁や、第2の実施形態に係る配管20の内壁および仕切り板33の表面や、第3の実施形態に係る被覆管35の内壁および工業用水配管20’の外壁などに設けている。なお凹凸部材38Aは山と谷とが直線的に形成され、凹凸部材38Bは山と谷とが蛇行して形成される。
【0095】
このようなフィン37や凹凸部材38A・38Bを、工業用水等と接触する位置に設けることにより、配管20や伝熱管32・仕切り板33・被覆管35などにおける単位長さ当たりの熱交換面積を増加することができる。また、工業用水W等や被冷却媒体Cの流れに乱れを生起することができる。
【0096】
上述したように、本実施形態に係る熱交換装置10Uでは、配管20の内壁や熱交換モジュール30・30S・30Tの外壁にフィン37や凹凸部材38A・38Bを備えているので、配管20の内部を流れる工業用水W等と熱交換モジュールとの接触効率を高めることができ、被冷却媒体Cを効率よく冷却することができる。
【0097】
また、工業用水W等と被冷却媒体Cとの間の熱交換効率が高まるので、必要な熱交換量に対して、伝熱管32の総延長(長さ×本数)や、仕切り板33、被覆管35の長さを短くすることもできる。結果として、熱交換モジュール30等の設置コストの軽減に資することにもなる。
【0098】
また、工業用水W等の流れの圧力損失を少なくできるので、工業用水W等の送水ポンプの動力費の増加を抑えることもできる。さらに、送水ポンプの増設・取替え等の作業も抑えることができる。
【0099】
<第5の実施形態>
図14は本発明の第5の実施形態に係る熱交換装置10Vの構成を示す模式図である。
【0100】
本実施形態に係る熱交換装置10Vでは、第1の実施形態に係る熱交換装置10において、配管20の内壁と伝熱管32が設けられた領域との間の側面間隙部に、工業用水W等の流れを、せき止めたり、抑制したりするための抑制板70を設けている。
【0101】
すなわち、抑制板70は、配管20の内壁と伝熱管32の外壁との間の領域の流動抵抗を大きくするための抵抗部材であり、例えば図15に示すように、四角く中央をくりぬいたメッシュ形状のものが設置される。
【0102】
これにより、工業用水W等が、伝熱管32が設置された領域を通らずに、配管20の内壁近傍を通って下流へ抜けてしまうことを防止することができる。
【0103】
すなわち、一般的には、複数の伝熱管32が設置された領域は流動抵抗が大きいため、伝熱管32が設置されていない側面間隙部の方を工業用水等は流れることになる。そのため、工業用水W等と伝熱管32との熱交換効率が低くなる場合がある。
【0104】
これに関し、本実施形態に係る熱交換装置10Vは、抑制板70を備えているので、配管20を流れる工業用水W等を伝熱管32の近傍に導くことができ、熱交換のロスを最小に抑えることができる。結果として、熱交換装置10Vは、伝熱管32を流れる被冷却媒体Cを効率よく冷却することができる。
【0105】
但し、抑制板70により側面間隙部を塞ぎすぎると、圧力損失が過大となり、用水路のポンプ動力を上げる必要が生じる。そこで、抑制板70は、孔を開けてメッシュ状にしたり、配管20の内壁との間に隙間を設けたりすることが望ましい。換言すれば、適切な開孔率を有する抑制板70を設置することによって、熱交換効率と圧力損失とのバランスを最適化することができる。
【0106】
なお、本実施形態に係る熱交換装置10Vでは、環状の抑制板70を設けたが、側面間隙部における工業用水W等の流れを抑制する機能を有するものであれば、他の形状であってもよい。また、抑制板70として、分割した複数の構造物からなるものを用いてもよい。
【0107】
また、抑制板70は一箇所だけに設置するのではなく、複数個所に設置してもてよい。
【0108】
<第6の実施形態>
図16は本発明の第6の実施形態に係る熱交換装置10Wの構成を示す模式図である。
【0109】
本実施形態に係る熱交換装置10Wでは、第1の実施形態に係る熱交換モジュール30が設けられた位置より下流の位置に、配管20の内部を流れる工業用水W等を撹拌するためのガイドベーン71を設けている。
【0110】
具体的には、ガイドベーン71として、図17に示すような、工業用水W等の流れ方向に沿って径が小さくなる楕円柱形状の構造体71Aや、図18に示すような、流れ方向と対向して頂点を有する円錐形状の構造体71B、図19に示すような捩り板状の構造体71Cが挙げられる。なお、図17〜図19の添え字である(A)と(B)とは、それぞれ側面図と正面図とを示すものである。
【0111】
上述したように、本実施形態に係る熱交換装置10Wは、熱交換モジュール30が設けられた位置より下流の位置に、配管20の内部を流れる工業用水W等を攪拌するためのガイドベーン71を備えているので、ガイドベーン71よりさらに下流に熱交換モジュール30が設けられた場合、その下流に設けられた熱交換モジュール30に流入する水温を均一化することができ、効率よく冷却することができる。
【0112】
補足すると、熱交換モジュール30と接触した工業用水W等は、被冷却媒体Cと熱交換するため、熱交換モジュール30が設置された位置より下流の位置では昇温幅が大きい。
【0113】
一方、側面間隙部を通るなどして、熱交換モジュール30と殆ど熱交換しない工業用水等は、熱交換モジュール30が設置された位置より下流の位置では昇温幅が小さい。
【0114】
ここで、工業用水W等がそのまま下流に流れた場合には、図20に示すように、更に下流に設置された熱交換モジュール30’においては、昇温幅が大きい工業用水W1等と熱交換し、昇温幅の小さい工業用水等W2とは殆ど熱交換しないことになる。
【0115】
この場合、昇温幅が大きい工業用水W1等と熱交換したとしても、被冷却媒体Cとの温度差が小さいため、十分な冷却効果が発揮されないことになる。
【0116】
これに対し、本実施形態に係る熱交換装置10Wであれば、図21に示すように、2つの熱交換モジュール30と30’との間にガイドベーン71が設けられているので、熱交換モジュール30を通過後の昇温幅の大きい工業用水W1等と、昇温幅の小さい工業用水W2等とを混ぜあわされた、温度分布が均一な工業用水W3等にすることができる。
【0117】
これにより、下流に設ける別の熱交換モジュール30’において、工業用水等と被冷却媒体Cとの温度差を大きくすることができ、冷却性能の劣化を抑えることができる。
【0118】
なお、本実施形態では、円環状のもの、円錐状のもの、あるいは板を捩った形状のスワラーを設けたが、工業用水等の流れの方向を変える機能を有するものであれば、上記形状に限定するものではない。例えば、これ以外にも、配管の管軸付近から内壁近傍に工業用水等を導く多角錘状の構造体なども用いられる。
【0119】
<第7の実施形態>
本発明の第7の実施形態に係る熱交換装置10Xは、第1の実施形態に係る熱交換装置10において、伝熱管32の配列ピッチを最適化したものである。
【0120】
本実施形態においては、熱交換装置10Xは、図22に示すように、各伝熱管32の中心間距離Pが一定間隔になるように形成されている。
【0121】
ここで、中心間距離Pを小さくした場合、一定の領域においては、より多くの伝熱管32を収納できるので、伝熱面積は増加する。しかし、この場合、工業用水W等が流れる隙間が狭くなるので、流動抵抗は大きくなる。その結果、工業用水W等が、熱交換モジュール30の設置領域の外側の側面間隙部を流れるようになり冷却性能が劣化する場合が生じる。また、圧力損失が増大して、送水ポンプの動力が過大になる場合が生じる。
【0122】
そこで、最適な中心間距離Pの値を求めるための解析計算を行なうと、図23に示すような結果が得られる。
【0123】
解析計算の条件は、配管20の内径を43cm,配管20の内部を流れる工業用水の流量を1時間当たり475.3m,伝熱管32の外径Dを27.2cm,伝熱管32の長さを3.6m, 伝熱管32の内部を流れる被冷却媒体の流量を47.5mとする。
【0124】
解析計算の結果、伝熱管配列ピッチ比に対する単位圧力損失当たりの熱交換量(単位はW/Pa)は、図23の線L1に示す値となる。なお、「伝熱管配列ピッチ比」とは、互いに隣接する伝熱管32の中心間距離Pと伝熱管32の外径Dとの比のことである。また、伝熱管配列ピッチ比に対する圧力損失(単位はPa)は、線L2のように表される。伝熱管配列ピッチ比に対する熱交換量(単位はkW)は、線L3のように表される。
【0125】
図23の線L1によると、伝熱管配列ピッチ比(横軸)の値が、1.3以下と2.4以上の領域で、縦軸の単位圧力損失当り、即ち、単位ポンプ動力当りの熱交換量が、大幅に低下することがわかる。
【0126】
そこで、本実施形態に係る熱交換装置10Xは、伝熱管配列ピッチ比(P/D)の値が1.3〜2.4の領域になるように伝熱管32を配置する。これにより、熱交換装置10Xは、最小限のポンプ動力で最大の熱交換量を実現できるようになる。
【0127】
なお、本実施形態では、伝熱管32を正方形状に配置しているが、これに限定するものではなく、正三角形状等、他の配置においても適用できる。
【0128】
<第8の実施形態>
本発明の第8の実施形態に係る熱交換装置10Yは、第1および第2の実施形態に係る熱交換装置10・10Sにおいて、被冷却媒体Cが流通するための断面積の大きさを最適化したものである。
【0129】
熱交換装置10Yにおいて、熱交換モジュール30の内部を流れる被冷却媒体Cが配管20の内部を流れる工業用水W等から受ける熱量Qcは、下式(1)で表される。但し、ucは被冷却媒体Cの流速、Acは流路断面積、ΔTcは入口温度差、ρcは密度、Cpcは比熱である。
【0130】
Qc=ρc・Cpc・uc・Ac・ΔTc ・・・・・・(1)
一方、配管20の内部を流れる工業用水W等が熱交換モジュール30の内部を流れる被冷却媒体Cから受ける熱量Qwは、下式(2)で表される。但し、uwは工業用水W等の流速、Awは流路断面積、ΔTwは入口温度差、ρwは密度、Cpwは比熱である。
【0131】
Qw=ρw・Cpw・uw・Aw・ΔTw ・・・・・・(2)
ここで、密度ρや比熱Cpは変化量が小さいので同じ値となる。よって、Qc=Qwとなるときの状態においては、下式(3)・(4)が成り立つ。
【0132】
uc・Ac・ΔTc=uw・Aw・ΔTw ・・・・・・(3)
(Ac/Aw)=(uw・ΔTw)/(uc・ΔTc) ・・・・・・(4)
ところで、実際の工業用水W等の流速uwは約1m/s(秒速1m)である。
【0133】
また、熱交換装置10Yを工業用水路等に設置するためには、工業用水W等の温度上昇を1K未満に抑える必要がある。
【0134】
そのためには、空調/冷房システム1において、被冷却媒体Cを冷却する時の出入口の温度差ΔTcが5K〜6Kとなるようにする必要がある。また、被冷却媒体Cの流速ucは、熱伝達効率を少なくとも工業用水W等と同等以上にするために、工業用水W等の流速uwである1m/s以上にする必要がある。すなわち、下式(5)を満たすようにする必要がある。
【0135】
(Ac/Aw)<(1・1)/(1・5)=0.2 ・・・・・・(5)
そこで、本実施形態に係る熱交換装置10Yでは、図24(A),(B)に示すように、熱交換モジュール30の内部の平均流路断面積Acを、配管20の管軸に垂直な面の流路断面積Awの20%以内となるようにする。これにより、熱交換装置10Yは、配管20を流れる水の温度上昇を1K未満に抑えることができ、複数の熱交換システムを工業用水配管等に設置することができるようになる。
【0136】
<第9の実施形態>
本発明の第9の実施形態に係る熱交換装置10Zは、第3の実施形態に係る熱交換装置10Tにおいて、被冷却媒体Cが流通するための断面積の大きさを最適化したものである。
【0137】
本実施形態では、図25に示すように、被冷却媒体Cが流れる領域の流路断面積をAcとし、工業用水等が流れる領域の流路断面積をAwとすると、AcのAwに対する比(Ac/Aw)が0.2以下になるように被覆管35を設置する。
【0138】
すなわち、本実施形態においても、第8の実施形態で述べたのと同様の理由により、隔離領域の流路断面積が、配管の管軸に垂直な面の流路断面積の20%以内になるように、被覆管35の内径を設定する。
【0139】
詳しくは、被覆管35の内径をDic、工業用水配管等の外径をDow、内径をDiwと表記すると、下式(6),(7)が成り立つ。
【0140】
Ac=π(Dic−Doc)/4 ・・・・・・(6)
Aw=π Diw/4 ・・・・・・(7)
そこで、下式(8)が成り立つように、被覆管35の内径Diwを決定する。
【0141】
(Ac/Aw)=(Dic−Dow)/Diw <0.2 ・・・・・・(8)
これにより、本実施形態に係る熱交換装置10Zでは、隔離領域の流路断面積Acを、配管20’の管軸に垂直な面の流路断面積Awの20%以内となるようにする。これにより、熱交換装置10Zは、配管20’を流れる工業用水等の温度上昇を1K未満に抑えることができ、複数の熱交換システムを工業用水配管等に設置することができるようになる。
【0142】
<その他>
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る熱交換装置10の構成を示す模式図である。
【図2】同実施形態に係る熱交換モジュール30の一例を示す模式図である。
【図3】同実施形態に係る熱交換モジュール30の一例を示す模式図である。
【図4】同実施形態に係る熱交換モジュール30の一例を示す模式図である。
【図5】同実施形態に係る熱交換装置10の作用について説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る熱交換装置10Sの構成を示す模式図である。
【図7】同実施形態に係る熱交換モジュール30Sの全体を示す模式図である。
【図8】同実施形態に係る熱交換モジュール30Sの各部材を分解した状態を示す模式図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る熱交換装置10Tの構成を示す模式図である。
【図10】同実施形態に係る熱交換モジュール30Tの全体を示す模式図である。
【図11】同実施形態に係る熱交換モジュール30Tの各部材を分解した状態を示す模式図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係るフィン37を伝熱管32の外壁に設けた状態を示す模式図である。
【図13】同実子形態に係る凹凸部材38Aや38Bの外観を示す模式図である。
【図14】本発明の第5の実施形態に係る熱交換装置10Vの構成を示す模式図である。
【図15】同実施形態に係る抑制板70の構成を示す模式図である。
【図16】本発明の第6の実施形態に係る熱交換装置10Wの構成を示す模式図である。
【図17】同実施形態に係るガイドベーンの一例を示す模式図である。
【図18】同実施形態に係るガイドベーンの一例を示す模式図である。
【図19】同実施形態に係るガイドベーンの一例を示す模式図である。
【図20】同実施形態に係る熱交換装置10Wの作用を説明するための模式図である。
【図21】同実施形態に係る熱交換装置10Wの作用を説明するための模式図である。
【図22】本発明の第7の実施形態に係る伝熱管32の配列状態を示す模式図である。
【図23】同実施形態に係る解析計算の結果を示す図である。
【図24】本発明の第8の実施形態に係る熱交換装置10Yの構成を示す模式図である。
【図25】本発明の第9の実子形態に係る熱交換装置10Zの構成を示す模式図である。
【図26】従来の空調/冷房システム1の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0144】
1・・・空調/冷房システム、2・・・蒸発器、3・・・圧縮機、4・・・凝縮器、5・・・減圧器、6・・・冷却対象流通管、7・・・低沸点媒体流通管、8・・・被冷却媒体流通管、9・・・冷却塔、10・・・熱交換装置、20・・・配管、30・・・熱交換モジュール、31A・31B・・・集合管、32・・・伝熱管、33・・・仕切り板、34A・34B・・・隔壁、35・・・被覆管、36・・・閉塞部材、37・・・フィン、38・・・凹凸部材、40A・40B・・・導入管、50・・・被冷却媒体循環ポンプ、70・・・抑制板、71・・・ガイドベーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業用水配管あるいは水道水配管の内部に設けられた熱交換モジュールと、
前記熱交換モジュールを支持するとともに、前記配管の外部と該熱交換モジュールの内部とを連通して、被冷却媒体を導入する少なくとも一組の導入管と、
前記各導入管および前記熱交換モジュールの内部に前記被冷却媒体を循環させる被冷却媒体循環手段と
を備えたことを特徴とする熱交換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換装置において、
前記熱交換モジュールは、
前記導入管に接続され、前記配管の管軸に沿って互いに向き合うような開口部を複数有する少なくとも一組の集合管と、
前記各集合管の互いに向き合った開口部に設けられた複数の伝熱管と
を備えたことを特徴とする熱交換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の熱交換装置において、
前記熱交換モジュールは、
前記配管の管軸に沿って、該配管の内部を仕切る仕切り板と、
前記仕切り板の両端部と前記配管の内壁との間をそれぞれ塞ぐ一組の隔壁と
を備えたことを特徴とする熱交換装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の熱交換装置において、
前記熱交換モジュールの外壁に、凹凸部材を備えたことを特徴とする熱交換装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の熱交換装置において、
前記熱交換モジュール内の平均流路断面積が、前記配管の管軸に垂直な面の流路断面積の20%以内である
ことを特徴とする熱交換装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の熱交換装置において、
前記熱交換モジュールが設けられた位置より下流の位置に、前記配管内を流れる水を攪拌するための攪拌部材
を備えたことを特徴とする熱交換装置。
【請求項7】
請求項2に記載の熱交換装置において、
前記伝熱管の外壁に、フィンを備えたことを特徴とする熱交換装置。
【請求項8】
請求項2に記載の熱交換装置において、
前記配管内壁と前記伝熱管が設けられた領域との間に、流動抵抗を大きくするための抵抗部材
を備えたことを特徴とする熱交換装置。
【請求項9】
請求項2に記載の熱交換装置において、
前記各伝熱管の中心間距離と該伝熱管の外径との比が、1.3から2.4までのいずれかの値となるように、前記各伝熱管が配置される
ことを特徴とする熱交換装置。
【請求項10】
用水路の配管の径より大きい径を有し、該配管を被覆する被覆管と、
前記被覆管の両端部と前記配管の外壁との間をそれぞれ閉塞するとともに、該被覆管を支持する一組の閉塞部材と、
前記被覆管の内壁、前記配管の外壁及び前記各閉塞部材により形成される隔離領域の内部と、前記被覆管の外部とを連通して、被冷却媒体を導入する少なくとも一組の導入管と、
前記各導入管および前記隔離領域の内部に前記被冷却媒体を循環させる被冷却媒体循環手段と
を備えたことを特徴とする熱交換装置。
【請求項11】
請求項10に記載の熱交換装置において、
前記配管の内壁に、凹凸部材を備えたことを特徴とする熱交換装置。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の熱交換装置において、
前記隔離領域の流路断面積が、前記配管の管軸に垂直な面の流路断面積の20%以内である
ことを特徴とする熱交換装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2008−190827(P2008−190827A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28401(P2007−28401)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】