説明

熱交換装置

【課題】多種類の熱媒体を流通させて相互に熱交換可能で、コンパクトで容易に製造できる熱交換装置を提供する。
【解決手段】熱媒体の流路を構成する複数の銅パイプ21a,21bを積層して接合した熱交換器20と、蓄熱媒体を収容する蓄熱槽と、を備え、各銅パイプ21a,21bには、断面長円形状が軸線方向に連続するように互いに略平行な一対の平面形状部23と、一対の平面形状部23を繋ぐ一対の突状曲面部25と、平面形状部の一部を凹ませた筋状凹部39と、を軸線方向に連続して設け、各銅パイプ21a,21bは長径に沿う方向に湾曲した複数の湾曲部31を備え、複数の湾曲部における平面形状部と複数の湾曲部間の中間部33における平面形状部23とが同一平面状に連続し、軸線同士が互いに重なるようにして平面形状部23同士をろう付けし、銅パイプ21a,21bの一部を蓄熱槽3aに接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱槽と複数の銅パイプ同士を互いに積層して接合した熱交換器とを備えた熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺の銅パイプなどを複数隣接して接合した構成を有し、各パイプ内を流動する熱媒体間で熱交換を行う熱交換器が種々提案されている。
例えば、下記特許文献1〜3には、断面円形又は楕円形のパイプや断面四角形のパイプを熱媒体流路として用いた熱交換器について記載されている。これらの文献では、熱源媒体が流動するパイプと出力媒体が流動するパイプとを、隣接させたり内外に二重に配置したりして、螺旋状に巻回して熱交換器が構成されている。
このような熱交換器では、各パイプに熱源媒体や出力媒体等の熱媒体を流動させると、長尺のパイプ同士が隣接しているため、熱交換器を流動する間に各熱媒体間で熱交換が行われる。特許文献2の図8等に示されるように、断面四角形のパイプを接合して熱交換器を構成すると、平面形状部分により接触面積を広く確保でき、良好な熱交換を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭55−65845号公報
【特許文献2】特開2003−65602号公報
【特許文献3】特開2006−46877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の熱交換器では、複数の熱交換用のパイプが螺旋状に巻回された構成を有するため、熱交換用のパイプの内側に中空部が必要である。しかも金属の熱交換用パイプでは不測の変形を防止しつつ曲率半径を小さく湾曲させることが困難である。そのため熱交換器の外形形状が大きくなり、熱交換器を用いた熱交換装置をコンパクトに構成することができなかった。多種類の熱媒体間で相互に熱交換するために、多数の熱交換用のパイプを用いて熱交換器を構成するとすれば、多数本のパイプを並列に配置した状態で螺旋構造を形成しなければならず、製造に手間を要していた。しかも熱媒体の種類を増加する場合であっても、新たに対応する本数のパイプを用いて螺旋構造を形成しなければならず、製造に手間を要していた。その結果、多種類の熱媒体が流動可能な多系統の熱交換装置を構成することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明では、多種類の熱媒体を流通させて相互に熱交換可能な熱交換装置であって、コンパクトで容易に製造できる熱交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の熱交換装置は、熱媒体の流路を構成する複数の銅パイプを有し複数の銅パイプが積層して接合された熱交換器と、蓄熱媒体が収容される蓄熱槽と、を備え、各銅パイプには、断面長円形状が軸線方向に連続するように互いに略平行な一対の平面形状部と、一対の平面形状部間を繋ぐ一対の突状曲面部と、平面形状部の一部を凹ませた筋状凹部と、が軸線方向に連続して設けられ、各銅パイプは長径に沿う方向に湾曲した複数の湾曲部を備え、複数の湾曲部における平面形状部と複数の湾曲部間の中間部における平面形状部とが同一平面状に連続し、銅パイプの軸線同士が互いに重なるようにして平面形状部同士がろう付けされ、複数の銅パイプのうちの一部が蓄熱槽に接続されている。
【0007】
上記目的を達成する本発明の他の熱交換装置は、熱媒体の流路を構成する複数の銅パイプを有し複数の銅パイプが積層して接合された熱交換器と、蓄熱媒体が収容される蓄熱槽と、を備え、各銅パイプには、断面長円形状が軸線方向に連続するように互いに略平行な一対の平面形状部と、一対の平面形状部間を繋ぐ一対の突状曲面部と、平面形状部の一部を凹ませた筋状凹部と、が軸線方向に連続して設けられ、各銅パイプは長径に沿う方向に湾曲した複数の湾曲部を備え、複数の湾曲部における平面形状部と複数の湾曲部間の中間部における平面形状部とが同一平面状に連続し、銅パイプの軸線同士が互いに重なるようにして平面形状部同士がろう付けされ、熱交換器が蓄熱槽の蓄熱媒体中に浸漬されている。
【0008】
これらの熱交換装置では、各銅パイプに設けられた複数の湾曲部が同じ曲率半径で湾曲しているのが好適である。
特に、各銅パイプが両端部を除く全長にわたり軸線同士が互いに重なるように形成されているのが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱交換装置によれば、銅パイプが複数の湾曲部を備えるので、湾曲部や中間部の形状を適宜選択することで種々の形状を構成できる。各銅パイプが互いに略平行な一対の平面形状部と、一対の平面形状部を繋ぐ一対の突状曲面部と、を軸線方向に連続して有するので、銅パイプの断面形状における直交方向の寸法比を適宜調整することで、熱交換器の積層方向の厚みを種々調整できる。しかも、長円形状の断面を有して湾曲部で長径に沿う方向に湾曲させているので、小さい曲率半径の湾曲部であっても不測の変形を防止して形成できる。よって、熱交換器の厚みや湾曲形状を小さくでき、熱交換器のコンパクト化を図ることができる。
【0010】
各銅パイプの平面形状部同士をろう付けするため、断面円形のパイプなどに比べて接合面積を大きくして熱交換効率を向上できることに加え、複数の湾曲部における平面形状部と中間部における平面形状部とが同一平面状に連続しているので、平坦な形状に構成できる。そのため、平面形状部同士を当接させて、各銅パイプを互いに隣接して接合することが容易であり、熱交換器を構成する銅パイプの積層数を自在に設定でき、積層する銅パイプも容易に追加できる。しかも平面形状部の一部を凹ませた筋状凹部が軸線方向に連続して設けられているので、平面形状部同士をろう付けする際、筋状凹部にろう材を保持できて十分な接合強度を確保することができる。よって、多系統の熱交換器であっても容易に製造可能である。
その結果、多種類の熱媒体を流通させて相互に熱交換可能な熱交換装置であって、コンパクトで製造も容易な熱交換装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態における熱交換システムの概念を示す概略図である。
【図2】(a)は本発明の実施形態における蓄熱装置の構成を示す概略図であり、(b)は他の実施形態に係る熱交換装置の構成を示す概略図である。
【図3】(a)は本発明の実施形態における熱交換器の平面図、(b)は(a)のA−A断面を示す斜視図である。
【図4】(a)(b)はそれぞれ、本発明の実施形態における銅パイプ成形体の平面図、(c)はその断面斜視図、(d)は変形例を示す断面斜視図である。
【図5】本発明の実施形態における変形例の銅パイプ成形体を示す部分側面図であり、管壁に多数の凹凸形状が設けられている例を示す。
【図6】(a)は本発明の実施形態における銅パイプの加圧工程を示す概略図であり、(b)は(a)のC−C断面図、(c)は(a)のD−D断面図である。
【図7】本発明の実施形態における銅パイプの湾曲工程を示す概略図である。
【図8】本発明の実施形態における熱交換器の変形例を示す平面図である。
【図9】本発明の実施形態における熱交換器の他の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図1乃至図9を用いて説明する。
この実施形態の熱交換装置を用いた熱交換システム1を図1に示す。熱交換システム1は、熱交換装置3と、水道水供給路4と、太陽熱温水パネル5及び太陽熱媒体循環回路6と、ヒートポンプ熱源機7及びヒートポンプ媒体循環回路8と、床暖房パネル9及び床暖房媒体循環回路10と、暖房ユニット11及び暖房媒体循環回路12と、浴槽13及び風呂温水回路14と、給湯蛇口15を有する給湯路16と、を備える。
【0013】
熱交換装置3は、図2(a)に示すように、蓄熱用の媒体が収容された蓄熱槽3aと、蓄熱槽3aの外部に配置された熱交換器20と、を備え、これらがケーシング等に収容配置されている。熱交換器20には蓄熱槽3a内の蓄熱媒体を循環する蓄熱循環回路2が接続され、太陽熱媒体循環回路6、ヒートポンプ媒体循環回路8、床暖房媒体循環回路10、暖房媒体循環回路12、風呂温水回路14、給湯路16が接続されており、各回路を流動する各熱媒体間で熱交換可能となっている。各回路には熱媒体を流動させるためのポンプ等の作動部を備えていてもよい。
【0014】
熱交換器20は、図3(a)(b)に示すように、図4(a)に示す銅パイプ成形体21aと図4(b)に示す銅パイプ成形体21bとが複数個積層して接合された構成を有する。
【0015】
各銅パイプ成形体21a,21bは、長尺の銅パイプ材を湾曲させて成形したものであり、内部にそれぞれ独立した流体流路が形成されている。各銅パイプ成形体21a,21bの両端部29に、蓄熱循環回路2、太陽熱媒体循環回路6、ヒートポンプ媒体循環回路8、床暖房媒体循環回路10、暖房媒体循環回路12、風呂温水回路14、水道水供給路4及び給湯路16がそれぞれ接続されている。
各銅パイプ成形体21a,21bの両端部29には、これらの回路の配管が直接接続されていてもよく、各端部29に図示しない接続部を設けて、それぞれに各回路の配管が接続されていてもよい。
【0016】
各銅パイプ成形体21a,21bは、それぞれ対向方向に互いに略平行な一対の平面形状部23と一対の平面形状部23間を繋ぐ一対の突状曲面部25とが軸線方向に連続した断面長円形状を有する。ここで軸線とは、銅パイプ材、銅パイプ成形体21a,21b等において長手方向に延びる仮想の中心線である。この実施形態では、各銅パイプ成形体21a,21bが両端部29を除く全長で一定の断面長円形状となっている。
【0017】
各銅パイプ成形体21a,21bの断面における各寸法は適宜選択可能であるが、例えば長径d1を11〜22mm、短径d2を6〜12mm、肉厚を0.5〜1.2mmとしてもよい。各銅パイプ成形体21a,21bは互いに同一断面形状を有してもよく、内部を流動させる熱媒体に応じて、互いに異なる形状や大きさに形成することも可能である。
【0018】
各銅パイプ成形体21a,21bは、このような断面形状の銅パイプを湾曲部31において湾曲させた形状となっている。ここでは銅パイプ成形体21a,21bの軸線方向における複数の位置に湾曲部31を有すると共に、複数の湾曲部31間に直線又は大きな曲率の中間部33を備えた形状としている。
【0019】
この銅パイプ成形体21a,21bでは、一対の平面形状部23の全長が平面視において他の部位に覆われることなく露出しているのがよい。好ましくは、より長い範囲で同一平面状となり、全体で同一平面状となるのがさらに好適である。この実施形態では、両端部29を除く全長にわたり各平面形状部23の平面が同一平面を構成している。このようにすれば、銅パイプ成形体21a,21bの平面形状部23同士を広い範囲で当接させて接合でき、銅パイプ成形体21a,21bとの広い接触面積を確保することで熱交換効率を向上することができる。
【0020】
なお、銅パイプ成形体21a,21bとして、図5に示すように、管壁に多数の凹凸が繰り返し設けられた銅パイプ材を用いた場合、平面形状部23は管壁の繰り返し配置される各凸部分35が平坦に設けられることで構成されていてもよい。
【0021】
このような銅パイプ成形体21a,21bでは、両面がそれぞれ略全長にわたり同一平面状に形成されて互いに略平行となっており、全体として二次元的に平たい形状となっている。全長にわたり軸線方向及び軸線と直交する方向において、管壁に角部を有しないのが好ましい。
【0022】
銅パイプ成形体21a,21bの各湾曲部31の曲率半径は、銅パイプ材37の径、肉厚など種々の要因に応じて適宜選択することができる。曲率半径を小さくするほど、軸線の全長が同じであっても銅パイプ成形体21a,21bをコンパクト化できて好ましい。例えば、各銅パイプ成形体21a,21bの軸線の曲率半径Rcは銅パイプ成形体21a,21bの長径d1の3倍以上、好ましくは4倍以上とする。コンパクト化のためには長径d1の4倍以下、好ましくは3.5倍以下の範囲とする。
また各湾曲部31の湾曲角度も、銅パイプ成形体21a,21bの形状に応じて適宜設定可能である。
【0023】
この実施形態では、複数の湾曲部31の曲率半径Rcがそれぞれ同じ曲率半径Rcで形成されており、最内側の湾曲部31ではこの曲率半径で180度程度湾曲し、外側の湾曲部31ではこの曲率半径で90度程度湾曲している。各銅パイプ成形体21a,21bは、内外に隣り合う湾曲部31間に隙間を設けることで、同じ曲率半径Rcの湾曲部31を多数設けて多重に巻回されている。これにより平面形状部23が全長で同一平面状に形成されて全体で平坦な形状となっている。
ここでは、一方の端部29を最内側に配置し、湾曲部31及び中間部33を順次繰り返すことで、一方周りで順次外側に巻回されて、他方の端部29が最外側に配置されるように巻回形状に形成されている。複数の銅パイプ成形体21a,21b、特に全ての銅パイプ成形体21a,21bが両端部を除く略全長で軸線同士が重なるように形成されている。なお、軸線同士が重なるように形成されるとは、軸線が完全に重なってもよく、互いに隣接する平面形状部23同士が積層可能な程度に近似したものであってもよい。
【0024】
各銅パイプ成形体21a,21bに長手方向に連続して設けられた平面形状部23には、図4(c)に示すように、平面形状部23の一部を軸線方向に連続して凹ませることで筋状凹部39が設けられている。この筋状凹部39は浅く形成されており、例えば銅パイプ成形体21a,21bの肉厚より浅い深さで形成されていてもよい。筋状凹部39の数、位置、形状等は加工条件などに応じて設定することができ、例えば図4(d)のように各平面形状部23に複数本の筋状凹部39を設けてもよい。
【0025】
熱交換器20は、このような全ての銅パイプ成形体21a,21bが互いに並列に隣接し、平面形状部23同士が上下に積層されてろう付けにより接合されて構成されている。ここでは、各銅パイプ成形体21a,21bの軸線同士が両端部29を除いて互いに重なるように形成されているため、略全長にわたり銅パイプ成形体21a,21b同士が並列に隣接した状態で接合一体化されている。
なお、各銅パイプ成形体21a,21bの間に介在されるろう材は互いに対向する平面形状部23の全長にわたり配置されており、ここでは各銅パイプ成形体21a,21bの両端部29を除く全長において隙間無くろう材が存在した状態で接合されている。
【0026】
次に、このような熱交換器20の製造方法の一例を説明する。
この実施形態では複数の銅パイプ成形体21a,21bを製造し、得られた銅パイプ成形体21a,21bを互いに接合することで製造する。
【0027】
具体的には、例えば断面円形で直線状の軸線を有する銅パイプ材37を用い、図6に示すように、加圧工程において断面円形の銅パイプ材37を対向方向から加圧ローラ41などにより加圧する。これにより互いに略平行な一対の平面形状部23と一対の突状曲面部25と筋状凹部39とを軸線方向に連続して有する断面長円形状に成形できる。突状曲面部25は断面円形の銅パイプ材37における管壁のままでも、変形されてもよいが、突状曲面部25全体において平面や角部が存在しない曲面からなるのがよい。なお、一対の平面形状部23と一対の突出曲面部との間も角部がなく曲面で連続するのが好適である。
【0028】
次いで、湾曲工程において、例えば図7に示すように断面長円形状に成形された銅パイプ材の向きを安定に保つように支持しつつ、長径D1方向に湾曲ローラ43に当接させて加圧することで湾曲させる。このとき内側に配置される湾曲ローラ43を湾曲部31の曲率半径Rcに対応する径にしておくことで、所望の曲率半径で容易に湾曲させることができる。この湾曲工程では長径に沿う方向に湾曲させることで、一対の平面形状部23を仮想の同一平面に沿う平面状態を維持して湾曲させるのが好ましい。
【0029】
この実施形態では、図4(a)(b)に示すように、中間部33を介して複数の湾曲部31を設けるため、軸線方向に互いに離間した複数位置でそれぞれ湾曲させる。複数の湾曲部31に設けられた平面形状部23と中間部33に設けられた平面形状部23とが全て仮想の同一平面に沿って平面状態を維持して湾曲される。これにより銅パイプ成形体21a,21bの両端部を除く全長において一対の平面形状部23が同一平面状に平坦に連続するように湾曲させることができる。
【0030】
その後、このようにして得られた銅パイプ成形体21a,21bを、熱媒体回路の数に対応する個数を積層して接合することで熱交換器20を製造する。
複数の銅パイプ成形体21a,21bを接合するには、各銅パイプ成形体21a,21bの平面形状部23同士をろう材等を介在させた状態で当接させ、ろう材に応じた温度に加熱することで接合すればよい。ろう材としては熱伝導性のよい銀、銅等を含有するものが好適である。
【0031】
ろう付けの際には、互いに対向する平面形状部23間の全てにろう材を配置することで、対向する平面形状部23の全体をろう付けすることが接合面積を広く確保できて好適である。この実施形態では、各銅パイプ成形体21a,21bが両端部29を除く略全長で軸線同士が互いに重なるように形成されているため、両端部29を除く略全長にわたり平面形状部23同士がろう付けされる。
なお、銅パイプ成形体21a,21bとして、図5に示すように多数の凹凸を有する銅パイプを用いた場合には平面形状部23同士が離間した部位が生じるが、平面形状部23間の間隙にろう材が十分に充填されることで全長において接合されるのが好ましい。
これにより複数の銅パイプ成形体21a,21bを必要な数だけ積層して接合することで熱交換器20を製造することができる。
【0032】
そして、得られた熱交換器20の各銅パイプ成形体21a,21bに、熱源媒体の回路として、太陽熱媒体循環回路6及びヒートポンプ媒体循環回路8を接合し、出力媒体の回路として、床暖房媒体循環回路10、暖房媒体循環回路12、風呂温水回路14及び給湯路16を接合する。これにより図1に示すような熱交換システム1を製造することができる。
【0033】
次に、このような熱交換システム1の使用状態について説明する。
このような熱交換システム1では、太陽熱媒体循環回路6、ヒートポンプ媒体循環回路8の一方又は双方を稼働して熱源媒体を循環させ、熱交換器20の各銅パイプ成形体21a,21b内を流動させる。この状態で、蓄熱循環回路2を稼働させて他の銅パイプ成形体21a,21b内を流動させれば、これらの熱媒体間で効率よく熱交換が行われる。これにより、蓄熱槽3a内の熱媒体が加熱又は冷却されて、熱量が蓄えられる。
【0034】
また蓄熱循環回路2を稼働させて、熱交換器20に蓄熱槽3a内の熱媒体を循環させた状態で、床暖房媒体循環回路10、暖房媒体循環回路12、風呂温水回路14、給湯路16の一部又は全部を稼働して、各出力媒体を熱交換器20内で流動させれば、これらの熱媒体間で効率よく熱交換が行われる。これにより、蓄熱槽3a内の熱媒体の熱量により、各出力媒体が加熱又は冷却されて、各使用部位に供給される。
【0035】
さらに、蓄熱循環回路2を稼働させることなく、太陽熱媒体循環回路6、ヒートポンプ媒体循環回路8の一方又は双方を稼働して熱源媒体を循環させた状態で、床暖房媒体循環回路10、暖房媒体循環回路12、風呂温水回路14、給湯路16の一部又は全部を稼働して出力媒体を循環又は流動させれば、熱交換器20では、各熱源媒体と各出力媒体との間で直接熱交換を行うことができ、各出力媒体を加熱又は冷却することができる。
【0036】
このような熱交換システム1では、多系統の熱交換器20を用いているため、従来の熱源媒体の回路と出力媒体の回路とを1対1で接続するような場合に比べ、大幅に配管の数、即ち銅パイプ成形体21a,21bの数を少なく抑えることができる。
【0037】
以上のような熱交換装置3によれば、熱交換器20の銅パイプ成形体21a,21bが複数の湾曲部31を備えるので、湾曲部31及び中間部33の形状を適宜選択することで種々の形状に形成できる。各銅パイプ成形体21a,21bが、互いに略平行な一対の平面形状部23と一対の平面形状部23を繋ぐ一対の突状曲面部25とを軸線方向に連続した長円形状の断面を有するので、銅パイプ成形体21a,21bの断面形状における直交方向の寸法比を適宜調整することで、熱交換器20の積層方向の厚みが種々調整できる。しかも、各銅パイプ成形体21a,21bが一対の平面形状部23と一対の突状曲面部25とを有する長円形状の断面であり、湾曲部31で長径に沿う方向に湾曲させているので、小さい曲率半径Rcで湾曲部31であっても不測の変化を防止して形成できる。その結果、長尺の銅パイプ成形体21a,21bや熱交換器20の形状の自由度が大きく、厚みや湾曲形状を小さくして熱交換器20のコンパクト化を図り得る。
【0038】
各銅パイプ成形体21a,21bの平面形状部23同士をろう付けするため、断面円形のパイプなどに比べて接合面積を大きく確保でき熱交換効率を向上できることに加え、複数の湾曲部31における平面形状部23と湾曲部31間の中間部33における平面形状部23とが同一平面状に連続しているので、平坦な二次元的な形状に形成できる。そのため、平面形状部23同士を当接させて、各銅パイプ成形体21a,21bを互いに隣接して接合することが容易であり、熱交換器20を構成する銅パイプ成形体21a,21bの層数を自在に設定して接合することができる。さらに複数の銅パイプ成形体21a,21bが接合されているものに更に他の銅パイプ成形体21a,21bを積層して接合することも可能である。そのため多系統の熱交換器20を容易に製造することが可能で、コンパクト化することができる。
【0039】
特に平面形状部23の一部を凹ませた筋状凹部39が軸線方向に連続して設けられているので、平面形状部23同士をろう付けする際、筋状凹部39にろう材を保持できて十分な接合強度を確保できる。ろう材が筋状凹部39の広い範囲に充満されることで、接合された平面形状部23間で十分な熱伝導性を確保でき、熱交換効率を向上できる。
【0040】
また各銅パイプ成形体21a,21bが、両端を除く略全長にわたり軸線同士が互いに重なるように成形されているので、略全長にわたり銅パイプ成形体21a,21b同士を容易に接合できると共に、接触面積を広く確保することができ、熱交換効率を向上することができる。
【0041】
この実施形態では、複数の湾曲部31で曲率半径Rcがそれぞれ同じであるので、各銅パイプ成形体21a,21bの湾曲部31を湾曲させる際の工具や条件などを共通化でき、容易に製造することができる。
【0042】
銅パイプ成形体21a,21bとして、図5に示すように、平面形状部23を構成する管壁に凹凸部が設けられ、管壁同士の間隙にろう材が充填されていれば、凹凸部により熱媒体と管壁との接触面積を向上できると共に内部を流動する熱媒体に乱流を形成できて熱媒体と管壁との間の熱交換効率を向上できる。一方、凹凸部により隣接する銅パイプ成形体21a,21b間に互いに当接できない間隙が存在していても、ろう材が充填されることで、隣接する銅パイプ成形体21a,21b間の熱交換効率を確保することができる。従って、熱交換器20の熱交換効率を向上することが可能である。
【0043】
なお、上記実施形態は、本願発明の範囲内において適宜変更可能である。
上記では、銅パイプ成形体21a,21bの形状を、それぞれ軸線を湾曲させて平面状に内外に重なるように巻回した例について説明したが、銅パイプ成形体21a,21bは他の形状であっても当然に本発明を適用可能である。
例えば図8に示すように、各銅パイプ成形体21a,21bをそれぞれ蛇行形状に形成し、各銅パイプ成形体21a,21bを重ねて接合して銅パイプ構造体を構成してもよい。また図9に示すように、両端部29を外側に配置して平面的に内外に巻回させたり、各湾曲部31を外側ほど大きな曲率半径となるように湾曲させて形成していてもよい。
【0044】
[第2実施形態]
第1実施形態では蓄熱槽3aの外部に熱交換器20が配設された例を説明したが、本実施形態の熱交換システム1では、図2(b)に示すように、熱交換器20が蓄熱槽3aの内部に配設されている。この熱交換器20に太陽熱媒体循環回路6、ヒートポンプ媒体循環回路8、床暖房媒体循環回路10、暖房媒体循環回路12、風呂温水回路14、水道水供給路4及び給湯路16が接続されている。その他は、第1実施形態と同様である。
このような熱交換システム1であっても実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0045】
なお上記実施形態1,2は本発明の範囲内で適宜変更可能である。例えば上記の熱交換システム1では、熱源媒体の回路として、太陽熱媒体循環回路6及びヒートポンプ媒体循環回路8を有し、出力媒体の回路として、床暖房媒体循環回路10、暖房媒体循環回路12、風呂温水回路14及び給湯路16を有する例を説明したが、熱源媒体及び出力媒体の数は任意に設定することができる。これらの一部だけを熱交換器20に接続して構成してもよく、これらの熱源媒体及び出力媒体以外の熱媒体を流動させる回路を熱交換器20に接続して構成してもよい。
その場合であっても、本発明の熱交換器20では、銅パイプ成形体21a,21bの積層数を適宜設定することが可能であるため、熱源媒体の回路及び出力媒体の回路の数に応じた数だけ積層して互いに接合することができる。
上記各実施形態では、水道水供給路4及び給湯路16を熱交換器3に接続した例を説明したが、水道水供給路4及び給湯路16の一方又は双方を蓄熱槽3aに接続してもよい。
【0046】
上記の加圧工程や湾曲工程では、それぞれローラを用いて成形したが、加圧工程では断面円形の銅パイプ材37を対向方向から加圧して一対の平面形状部を形成可能であればその方法は何ら限定されず、湾曲工程では軸線を長径に沿う方向に湾曲可能であればその方法は何ら限定されない。
【0047】
上記の加圧工程や湾曲工程では、銅パイプ材37を加熱したり、熱処理することなくそのまま加工したが、銅パイプ材37を加熱したり、焼鈍した後で加工することは当然に可能である。その場合にはより小さい曲率半径で湾曲させることも可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 熱交換システム
2 蓄熱循環回路
3 熱交換装置
3a 蓄熱槽
4 水道水供給路
5 太陽熱温水パネル
6 太陽熱媒体循環回路
7 ヒートポンプ熱源機
8 ヒートポンプ媒体循環回路
9 床暖房パネル
10 床暖房媒体循環回路
11 暖房ユニット
12 暖房媒体循環回路
13 浴槽
14 風呂温水回路
15 給湯蛇口
16 給湯路
20 熱交換器
21a,21b 銅パイプ成形体
23 平面形状部
25 突状曲面部
29 両端部
31 湾曲部
33 中間部
35 凸部分
37 銅パイプ材
39 筋状凹部
41 加圧ローラ
43 湾曲ローラ
Rc 曲率半径
d1 長径
d2 短径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体の流路を構成する複数の銅パイプを有し該複数の銅パイプが積層して接合された熱交換器と、蓄熱媒体が収容される蓄熱槽と、を備えた熱交換装置であって、
上記各銅パイプには、断面長円形状が軸線方向に連続するように互いに略平行な一対の平面形状部と、該一対の平面形状部間を繋ぐ一対の突状曲面部と、上記平面形状部の一部を凹ませた筋状凹部と、が上記軸線方向に連続して設けられ、
該各銅パイプは長径に沿う方向に湾曲した複数の湾曲部を備え、該複数の湾曲部における上記平面形状部と該複数の湾曲部間の中間部における上記平面形状部とが同一平面状に連続し、上記銅パイプの軸線同士が互いに重なるようにして上記平面形状部同士がろう付けされ、
上記複数の銅パイプのうちの一部が上記蓄熱槽に接続されている、熱交換装置。
【請求項2】
熱媒体の流路を構成する複数の銅パイプを有し該複数の銅パイプが積層して接合された熱交換器と、蓄熱媒体が収容される蓄熱槽と、を備えた熱交換装置であって、
上記各銅パイプには、断面長円形状が軸線方向に連続するように互いに略平行な一対の平面形状部と、該一対の平面形状部間を繋ぐ一対の突状曲面部と、上記平面形状部の一部を凹ませた筋状凹部と、が上記軸線方向に連続して設けられ、
該各銅パイプは長径に沿う方向に湾曲した複数の湾曲部を備え、該複数の湾曲部における上記平面形状部と該複数の湾曲部間の中間部における上記平面形状部とが同一平面状に連続し、上記銅パイプの軸線同士が互いに重なるようにして上記平面形状部同士がろう付けされ、
上記熱交換器が上記蓄熱槽の上記蓄熱媒体中に浸漬されている、熱交換装置。
【請求項3】
前記各銅パイプに設けられた複数の前記湾曲部が同じ曲率半径で湾曲している、請求項1又は2に記載の熱交換装置。
【請求項4】
前記各銅パイプは、両端部を除く全長にわたり軸線同士が互いに重なるように形成されている、請求項1乃至3の何れかに記載の熱交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−137217(P2012−137217A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288770(P2010−288770)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(390029089)高周波熱錬株式会社 (288)
【出願人】(308033113)株式会社GF技研 (8)
【Fターム(参考)】