説明

熱処理炉

【課題】低コストかつ作業効率が高い熱処理炉を提供する。
【解決手段】熱処理によって処理物品から揮発成分を除去する熱処理炉であって、内部空間を有する炉本体と、前記炉本体の内部空間内に配置され、前記処理物品が配置され前記内部空間から隔離された処理空間を形成する覆い部と、前記炉本体と覆い部との間の空間を加熱するバーナ手段と、前記処理空間と流体連通された二次燃焼装置と、を備える。二次燃焼装置は、バーナ手段から炉本体の内部空間に導入される燃焼ガスを通過させる必要がないため、処理能力(処理容量)が少なくてよい。このため、二次燃焼装置による熱処理炉のコスト上昇が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱処理炉に関し、詳細には、熱処理によって処理対象の物品から揮発成分を除去する熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
処理対象の物品を加熱して、処理対象の物品に含まれる揮発成分を処理対象の物品から除去する熱処理炉が知られている。このような熱処理炉の例として、高炉樋用耐火ブロックなどの耐火物の製造工程で使用される熱処理炉が挙げられる。この熱処理炉は、ピッチ含浸処理を施したブロック体からピッチ中の揮発成分を除去するベーキング処理(特許文献1)を行うために使用される炉である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−137663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような熱処理炉の一例を図1に示す。図1に示されているように、熱処理炉1は、バーナ2によって内部空間が加熱される炉本体4を備えている。炉本体4の上部には排気管6が接続された排気口8が形成され、炉本体4の内部空間内のガスを排気できるように構成されている。
【0005】
炉本体4の内部には、ピッチ含浸処理を施したブロック体10(処理対象の物品)が載置された台車12が配置される。台車12上には、ブロック体10を覆うように箱状の覆い14が被せられ、ブロック体10が台車12上に配置された空間を、炉本体4内の空間から隔離している。覆い14の下端部と台車12の上面との間には、サンドシール16が設けられている。
【0006】
このような熱処理1でベーキング処理を行う際には、先ず、炉本体4の外で、ピッチ含浸処理を施したブロック体10を台車12に載置して覆い14を被せ、さらに、覆い14の下端部と台車12の上面との間をサンドシール16でシールする。そして、この台車12を、図1に示すように炉本体4内に配置し、バーナ2で、炉本体4の内部空間を加熱していく。
【0007】
この加熱によって、覆い14内のブロック体10も間接的に加熱され、ブロック体10内に含浸させられているピッチの揮発成分が気化し、ブロック体10から出て、覆い14内の処理空間を満たす。この揮発成分は、サンドシール16を通して覆い14の処理空間から炉本体4の内部空間(炉本体4と覆い14の間の空間)に漏れ出し、その後、バーナ2の燃焼ガス等に同伴され、排気管6が接続された排気口8から排出される。
【0008】
熱処理炉1では、排気管6の下流側には、図示しない二次燃焼装置が設けられ、燃焼ガスに同伴された揮発成分を燃焼させ、この揮発成分が外部に排出されないように構成されている。
【0009】
上記熱処理炉1では、揮発成分が燃焼ガスに同伴されて炉外に排出されるので、ブロック体10から発生した揮発成分を燃焼させるためには、多量に発生する燃焼ガスを処理する必要がある。このため、従来の熱処理炉1では、二次燃焼装置を通過するガスの量は多くなる。この結果、処理能力が高い二次燃焼装置が必要となり、この処理能力が高い二次燃焼装置が熱処理炉のコストを押し上げていた。
【0010】
また、覆い14の処理空間から炉本体4の内部空間(炉本体4と覆い14の間の空間)に漏れ出した揮発成分等が、炉本体4の壁付近で冷却されて析出し、壁の内面に付着するため、定期的に空だきをして、炉本体4の内面に付着した揮発成分等を除去する作業が必要であり、作業効率が悪かった。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、低コストかつ作業効率が高い熱処理炉を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、
熱処理によって処理物品から揮発成分を除去する熱処理炉であって、
内部空間を有する炉本体と、
前記炉本体の内部空間内に配置され、前記処理物品が配置され前記内部空間から隔離された処理空間を形成する覆い部と、
前記炉本体と覆い部との間の空間を加熱するバーナ手段と、
前記処理空間と流体連通された二次燃焼装置と、を備えている、
ことを特徴とする熱処理炉が提供される。
【0013】
このような構成によれば、二次燃焼装置は、バーナ手段から炉本体の内部空間に導入される燃焼ガスを通過させる必要がないため、処理能力(処理容量)が少なくてよい。このため、二次燃焼装置による熱処理炉のコスト上昇が抑制される。
さらに、処理物品から放出された種々の物質が炉本体と覆い部との間の空間に流出することが抑制されるので、炉本体の内周面の汚染が抑制され、作業効率が向上する。
【0014】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記処理空間に気体を導入する気体導入手段を更に備えている。
【0015】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記気体導入手段が加熱気体を前記処理空間に導入する。
このような構成によれば、処理空間内の温度を効率的に上昇させ、処理物品の熱処理を促進させることができる。
【0016】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記気体が不活性ガスである。
【0017】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記加熱手段が、前記内部空間の対角線上の対向位置に配置された2つのバーナを含む。
このような構成によれば、内部空間の温度を均一に上昇させ、処理物品の熱処理を促進させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低コストかつ作業効率が高い熱処理炉が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来技術の熱処理炉の内部構造を示す模式的な図面である。
【図2】本発明の好ましい実施形態の熱処理炉の内部構造を示す模式的な側面図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態の熱処理炉の内部構造を示す模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態の熱処理炉20について説明する。
図2は、本発明の好ましい実施形態の熱処理炉20の内部構造を示す模式的な側面図であり、図3は、熱処理炉20の内部構造を示す模式的な正面図である。
【0021】
先ず、熱処理炉20の構成を説明する。
本実施形態の熱処理炉20は、高炉樋用耐火ブロックなどの耐火物の製造工程で使用される熱処理炉である。この熱処理炉20は、ピッチ含浸処理を施したブロック体からピッチ中の揮発成分を除去するベーキング処理を行うために使用されるベーキング炉である。
【0022】
しかしながら、本願発明はこのようなベーキング炉に限定されるものではなく、処理対象の物品を加熱して、処理対象の物品に含まれる揮発成分を処理対象の物品から除去する処理を行う他の熱処理炉にも適用可能である。
【0023】
図2および図3に示されているように、熱処理炉20は、内部空間22を有する炉本体24と、炉本体24の内部空間22内に配置される覆い部26とを備えた二重構造を有している。本実施形態の炉本体24では、炉本体24内に、6台の覆い部26が、2×3(2行3列)で配置されている(図3には1行目の3台のみを図示)。尚、各覆い部26は、基本的には同一構造を有している。
【0024】
本実施形態の熱処理炉20では、炉本体24は前壁24a、後壁24b、左右側壁24c、24dの4枚の側壁と、天井24eおよび床部分24fに囲まれたチャンバ形状であり、側壁等は煉瓦等の耐火物で構成されている。
また、各覆い部26は、処理物品であるピッチ含浸処理を施したブロック体28が配置される処理空間30を内部に形成する底部が開いた箱状の構造体であり、鉄、ステンレス等の金属で形成されている。この覆い部26は、熱処理炉20の作動時には、図2に示されているように、開いた底部が炉本体24の床部分24fに配置された板24gで閉鎖されるように、床部分24f上に配置される。このような配置によって、覆い部26内の処理空間30は、覆い部26の壁によって、炉本体24の内部空間22から隔離されることになる。
【0025】
また、熱処理炉20は、内部空間22、詳細には炉本体24と覆い部26との間の空間を加熱するバーナ32を備えている。バーナ32は、炉本体24の壁を貫通するように12基が設けられている。詳細には、炉本体24の前壁24aの下部に6基と、後壁24bの上部に6基、取り付けられ、内部空間22の対角線上の対向位置に配置されている。バーナ32の燃料として、ガス、または重油等の燃料が用いられる。
【0026】
本実施形態の熱処理炉20は、炉底部24fの底面に車輪が設けられ、炉底部24fを、側壁から切り離して移動させることができるように構成されている。
処理物品を炉内に設置するときは、炉底部24fを側壁から切り離して炉外に移動させ、覆い部26を取り外し、処理物品28を炉底部24f上に配置する。その後、処理物品28を覆うように覆い部26を炉底部24上に取り付け、炉底部24fと覆い部26との接続部をサンドシールSでシールした後、炉底部24fを炉内に戻す。
【0027】
さらに、熱処理炉20では、底部24fにパイプ34が接続されている。このパイプ34は、覆い部26内の処理空間30内に加熱した不活性ガスを導入する気体導入手段を構成するものであり、図示しない加熱不活性ガス源に連通している。
不活性ガスとして、300〜800℃の温度範囲に加熱された窒素、炭酸ガス、アルゴン等の不活性なガスが使用される。
【0028】
さらにまた、本実施形態の熱処理炉20は、二次燃焼装置36を備えている。この二次燃焼装置36は、管路38を介して覆い部26内の処理空間30に連通し、処理空間30内のガスを導入して燃焼させ、処理空間30内のガスに含まれる(同伴される)物質、例えばブロック体28から気化してきた揮発成分等を燃焼させるように構成されている。
【0029】
図2に示されているように、二次燃焼装置36は、内部に蛇行した流路を備えた箱状の燃焼部40と、流路の上流部に設けられた二次燃焼バーナ42とを備えている。この二次燃焼バーナ42からの火炎によって、処理空間30から導入したガスを加熱し、このガスに含まれる物質を燃焼させる。
【0030】
更に、図2に示されているように、本実施形態の熱処理炉20の天井24eは開口部24hを有し、開口部24hに上方に延びる煙突44が接続されている。開口部24hには、可動ダンパー46が設けられており、内部空間22と煙突44とを選択的に流体連通可能としている。バーナ32の燃焼によって生じた内部空間22内の排気ガスを排出するときは、ダンパー46を開いて内部空間22と煙突44内とを連通させて、煙突44を通して、排気ガスを排出する。
【0031】
次に、熱処理炉20の作用について説明する。
先ず、ピッチ含浸処理を施したブロック体28を、所定の積載状態で、覆い部26内に配置する。覆い部26および炉本体24の開口部分を閉鎖し、処理空間30および内部空間22を閉鎖した後、バーナ32によって、内部空間22を処理物品に応じて設定された所定温度まで、加熱する。
【0032】
内部空間22を加熱することにより、処理空間30内のブロック体28も間接的に加熱され、ブロック体28に含浸しているピッチ中の揮発成分が気化して処理空間30内に出て、処理空間30内の圧力が上昇する。バーナ32の点火と同時に、または、ピッチ中の揮発成分が気化し始めたタイミングで、不活性ガスをパイプ34を通して処理空間30内に流す。
【0033】
所定のタイミングで、二次燃焼装置36の二次燃焼バーナ40を点火し、処理空間30から二次燃焼装置36に導入されたガスを加熱し、処理空間30から導入されたガスに含まれる(同伴される)物質、例えばブロック体28から気化してきた揮発成分等を燃焼させる。
【0034】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものである。
【符号の説明】
【0035】
1 熱処理炉
4 炉本体
14 覆い
16 サンドシール
20 熱処理炉
24 炉本体
26 覆い部
32 バーナ
36 二次燃焼装置
42 二次燃焼バーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理によって処理物品から揮発成分を除去する熱処理炉であって、
内部空間を有する炉本体と、
前記炉本体の内部空間内に配置され、前記処理物品が配置され前記内部空間から隔離された処理空間を形成する覆い部と、
前記炉本体と覆い部との間の空間を加熱するバーナ手段と、
前記処理空間と流体連通された二次燃焼装置と、を備えている、
ことを特徴とする熱処理炉。
【請求項2】
前記処理空間に気体を導入する気体導入手段を更に備えている、
請求項1に記載の熱処理炉。
【請求項3】
前記気体導入手段が加熱気体を前記処理空間に導入する、
請求項2に記載の熱処理炉。
【請求項4】
前記気体が不活性ガスである、
請求項2または3に記載の熱処理炉。
【請求項5】
前記加熱手段が、前記内部空間の対角線上の対向位置に配置された2つのバーナを含む、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱処理炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−127852(P2011−127852A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288041(P2009−288041)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000110734)ニイミ産業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】