説明

熱分解ガスの処理方法と処理装置

【課題】 プラスチックを熱分解する熱分解器で得られた熱分解ガスに含まれる微細な固形分が蒸留装置の内部等に付着することを防止する。
【解決手段】 熱分解器1から流出する熱分解ガスを凝縮器6に供給して高沸点成分を凝縮し、凝縮器6から流出する凝縮成分を第1遠心分離機9に供給して固形分を分離し、さらに得られた油分を第2遠心分離機10で残留する僅かな固形分を分離し、清浄な油分を得る。さらに第1遠心分離機9から流出する固形分リッチな流出物を第3遠心分離機11に供給し、そこで僅かな油分を分離して配管kから第1遠心分離機9に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチックの熱分解器で生成した熱分解ガスの処理方法および処理装置に関し、特に熱分解ガスに含まれている微細な固形分を分離して、蒸留装置等の内部に固形分が付着することを防止した処理方法および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や家庭からは多量のプラスチック類が排出されるが、この廃プラスチックを資源としてリサイクルするために適した方法として熱分解方法がある。この熱分解方法は廃プラスチックを酸素不存在下に加熱して熱分解し、生成する熱分解ガスを凝縮器で凝縮することにより油分を回収する方法である。回収した油分はそのまま燃料として利用されるか、または更にその油分を蒸留装置に供給して精製し、プラスチック原料となるモノマーとして回収される。
【0003】
熱分解を行う熱分解器には槽型と管型がある。槽型の熱分解器は底部が円錐形に形成された筒状の槽本体に攪拌および残渣掻き取り用のスクレーパを設けたもので、ある程度の滞留時間をかけて熱分解する方式であり、バッチ処理に適しているが連続運転も可能である。
【0004】
管型の熱分解器は周囲に加熱部を配置した細長い反応管の内部に溶融プラスチックを通過させながら熱分解を行うものであり、連続運転に適している。これら熱分解器は常圧運転と減圧運転のどちらも可能であるが、例えばポリスチレンの熱分解を行う場合には、熱分解に際して生成するトルエンやエチルベンゼン等の副生物の割合を抑制できるように減圧状態で運転することが好ましい。このように熱分解器を減圧状態で運転する方法は例えば特許文献1に記載されている。
【0005】
槽型と管型のいずれの熱分解器も、そこから流出する熱分解ガスには原料の廃ポリスチレンに含まれていた無機粉塵や、熱分解に際して生成する炭化物等の微細な固形分が僅かに含まれるが、流出する固形分は管型のほうが一般に多くなる。管型の熱分解器は細長い反応管の流出部から熱分解ガスとともに固形分および残渣が排出する。
【0006】
そこでその残渣を一時的に貯留するために、反応管の3〜5倍程度の直径を有する熱分解滞留槽を反応管の出口部分に設けることが多い。熱分解ガスに含まれて流出する固形分の一部はその熱分解滞留槽で残渣とともに捕捉されて分離する。このような熱分解滞留槽として、例えばサイクロン効果を目的としたものが特許文献2に提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−199875号公報
【特許文献2】特開2000−212571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
槽型の熱分解器と管型の熱分解器のいずれであっても、流出する熱分解ガスに微細な固形分が残留することは避けられず、管型の熱分解器に前記のように熱分解滞留槽を設けた場合でも完全に固形分を捕捉することは困難である。そのような微細な固形分は蒸留装置やポンプなどの機器や周辺配管等に付着して伝熱性や流通性に悪影響を及ぼす。
【0009】
機器や配管等に付着した固形分を取り除くためには定期的に運転を停止し、内部清掃等のメンテナンスを行う必要があるが、その都度連続運転が中断されるのでシステムの運転効率が低下する。またその問題を回避するために予備の系列を並列して設置することも考えられるが、その場合には設置コスト,運転コストがともに増加するので、解決策として好ましい案ではない。
【0010】
そこで本発明はこのような従来の固形物付着問題を解決することを課題とし、そのための新しい熱分解ガスの処理方法の提供を目的とする。また本発明は、該処理方法を好適に実施できる処理装置の提供も目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決する本発明の熱分解ガスの処理方法は、プラスチックを熱分解する熱分解器で得られた微細な固形分を含む熱分解ガスを処理する方法であって、前記熱分解ガスを凝縮器に供給し、そこで熱分解ガスに含まれる高沸点成分を凝縮し、凝縮器から流出する凝縮成分を固液分離装置に供給し、そこで凝縮成分から固形分を分離して油分を得ることを特徴とする(請求項1)。
【0012】
上記処理方法において、前記固液分離装置として第1遠心分離機を用いることができる(請求項2)。
【0013】
上記処理方法において、前記固液分離装置として前記第1遠心分離機に加え、第2遠心分離機および第3遠心分離機の少なくとも一方を用い、
前記凝縮成分を第1遠心分離機に供給し、そこで凝縮成分から固形分を分離し、
第2遠心分離機を用いる場合は、第1遠心分離機の油分流出部からの流出物を第2遠心分離機に供給し、そこで前記流出物を油分と固形分に分離し、
第3遠心分離機を用いる場合は、第1遠心分離機の固形分流出部からの流出物を第3遠心分離機に供給し、そこで前記流出物を油分と固形分に分離することにより、
油分を得ることができる(請求項3)。
【0014】
上記処理方法において、第2遠心分離機を用いる場合には、その第2遠心分離機を2基以上用い、第1遠心分離機の油分流出部からの流出物を各第2遠心分離機に順次供給してそれぞれ前記流出物を油分と固形分に分離し、第3遠心分離機を用いる場合には、その第3遠心分離機を2基以上用い、第1遠心分離機の固形分流出部からの流出物を各第3遠心分離機に順次供給してそれぞれ前記流出物から油分と固形分に分離することができる(請求項4)。
【0015】
上記処理方法において、各第2遠心分離機または各第3遠心分離機が分離操作をしていない間に、その内部を洗浄液で洗浄し、次いで乾燥し、乾燥により蒸発する残留油分を前記凝縮器に回収することができる(請求項5)。
【0016】
上記いずれかの処理方法において、前記熱分解器の運転を停止した際に、固液分離装置の内部に付着した固形分を乾燥操作により除去することができる(請求項6)。
【0017】
また前記課題を解決する本発明の熱分解ガスの処理装置は、プラスチックを熱分解する熱分解器で得られた微細な固形分を含む熱分解ガスを処理する装置であって、前記熱分解ガスを凝縮する凝縮器と、凝縮器で得られた凝縮成分から固形分を分離して油分を得る固液分離装置を備えていることを特徴とする(請求項7)。
【0018】
上記処理装置において、前記固液分離装置を第1遠心分離機により構成することができる(請求項8)。
【0019】
上記処理装置において、前記固液分離装置を前記第1遠心分離機と、第2遠心分離機および第3遠心分離機の少なくとも一方により構成し、第1遠心分離機の供給側を前記凝縮器の凝縮液排出側に接続し、
第2遠心分離機を設置する場合は、第2遠心分離機の供給側を第1遠心分離機の油分流出部に接続し、
第3遠心分離機を設置する場合は、第3遠心分離機の供給側を第1遠心分離機の固形分流出部に接続することができる(請求項9)。
【0020】
上記処理装置において、前記第2遠心分離機を設置する場合には、その第2遠心分離機を2基以上設置してそれぞれに液面検出手段を設け、各第2遠心分離機の供給側を第1遠心分離機の油分流出部にそれぞれ自動開閉弁を介して接続し、いずれかの第2遠心分離機に設けた液面検出手段の液面検出信号が予め設定された値に達したときに、当該第2遠心分離機に設けた前記自動開閉弁を閉じて分離操作を行うように制御する制御装置を設け、 前記第3遠心分離機を設ける場合には、その第3遠心分離機を2基以上設置してそれぞれに液面検出手段を設け、各第3遠心分離機の供給側を第1遠心分離機の固形分流出部にそれぞれ自動開閉弁を介して接続し、いずれかの第3遠心分離機に設けた液面検出手段の液面検出信号が予め設定された値に達したときに、当該第3遠心分離機に設けた前記自動開閉弁を閉じて分離操作を行うように制御する制御装置を設けることができる(請求項10)。
【0021】
上記処理装置において、前記各第2遠心分離機または各第3遠心分離機の内部を洗浄する洗浄手段および乾燥手段を設け、前記各第2遠心分離機または各第3遠心分離機が分離操作を終了したときに、その内部の洗浄および乾燥を行えるように構成することができる(請求項11)。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の本発明の処理方法は、凝縮器から流出する凝縮成分に含まれている微細な固形分を固液分離装置で分離することにより、油分中に含まれる微細な固形分を大幅に低減できる。そのため下流側における配管や蒸留装置等の内部に固形分が多量に付着することを防止でき、システムを長期間安定に運転できる。また本処理方法は熱分解器の連続運転を中断することなく油分から固形分を除去できる。
【0023】
上記処理方法において、請求項2に記載のように、固液分離装置として第1遠心分離機を用いる場合は、凝縮成分から固形分を迅速且つ効率よく分離できる。
【0024】
上記処理方法において、請求項3に記載のように、固液分離装置として前記第1遠心分離機に加え、第2遠心分離機および第3遠心分離機の少なくとも一方を用いる場合は、第1遠心分離機の油分流出部からの流出物、すなわち油分リッチな流出物を第2遠心分離機で油分と固形分に分離し、第1遠心分離機の固形分流出部からの流出物、すなわち固形分リッチな流出物を第3遠心分離機で油分と固形分に分離することができるので、固形分含有量が極めて低い油分を高い効率で回収できる。
【0025】
上記処理方法において、請求項4に記載のように、2基以上の第2遠心分離機または2基以上の第3遠心分離機を用い、それらの分離操作を順に行うようにした場合は、第1遠心分離機を停止させることなく、2段階分離を連続的に行うことができる。
【0026】
上記処理方法において、請求項5に記載のように、各第2遠心分離機または各第3遠心分離機が分離操作をしていない間に、その内部を洗浄液で洗浄、乾燥等を行う場合は、各第2遠心分離機または各第3遠心分離機の分離性能を最適に維持しながら2段階分離を連続的に行うことができる。また乾燥に際して発生する残留油分の蒸気を凝縮器に戻すことにより、油分の回収率をより高めることができる。
【0027】
上記いずれかの処理方法において、請求項6に記載のように、熱分解器の運転を停止した際に、固液分離装置の内部に付着した固形分を乾燥操作により除去する場合は、熱分解器が運転を停止している間に固液分離装置を構成する各機器の内部に付着した固形分が硬く固化することを防止できる。
【0028】
また請求項7に記載の本発明の処理装置は、凝縮器で得られた凝縮成分から固形分を分離して油分を得る固液分離装置を備えているので、前記本発明の処理方法を好適に実施できる。
【0029】
上記処理装置において、請求項8に記載のように、固液分離装置を第1遠心分離機により構成する場合は、凝縮成分から固形分を迅速且つ効率よく分離できる。
【0030】
上記処理装置において、請求項9に記載のように、固液分離装置を第1遠心分離機と、第2遠心分離機および第3遠心分離機の少なくとも一方により構成した装置の場合は、固形分含有量が極めて低い油分を高い効率で回収可能な装置を構成できる。
【0031】
上記処理装置において、請求項10に記載のように、2基以上の第2遠心分離機または2基以上の第3遠心分離機を設置した場合は、前記自動開閉弁の操作でそれらの分離操作を自動的に切り変えることにより、第1遠心分離機を停止させることなく2段階分離を連続的に行える装置を構成できる。
【0032】
上記処理装置において、請求項11に記載のように、各第2遠心分離機または各第3遠心分離機の内部を洗浄する洗浄手段および乾燥手段を設けた場合は、各第2遠心分離機または各第3遠心分離機の分離性能を最適に維持しながら2段階分離を連続的に行える装置を構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。図1は本発明に係る熱分解ガスの処理装置のプロセスフロー図である。なお本実施形態はプラスチックの熱分解器として管型の熱分解器を用いた例であるが、本発明は槽型の熱分解器を用いた場合にも同様に適用できる。また以下の説明ではプラスチックとしてスチレンホモ重合体やAS、ABS等のスチレン共重合体等のスチレン系ポリマー(以下、これらをポリスチレンという)を熱分解する例であるが、本発明は熱分解に適したポリエチレン等のポリオレフィン系のような他のプラスチックにも同様に適用できる。
【0034】
図中、1は管型の熱分解器、2は細長い反応管、3は反応管2の周囲に配置した加熱部、4は供給部、5は加熱ガス発生装置、6は凝縮器、7は減圧装置、8は固液分離装置、9は第1遠心分離機、10は第2遠心分離機、11は第3遠心分離機、12,13は廃棄物容器、14,15,16,17,18はポンプ、19は第1蒸留装置、19aはリボイラ、20は第2蒸留装置、20aはリボイラ、21はホッパ、22は押出部、23は回転スクリュー、24はモータ等の駆動部、25は開閉弁、26はバーナ,27は油分貯留槽、a〜uは配管、D1,D2はダクトである。
【0035】
反応管2はステンレス管などの伝熱性および耐熱性の良い金属の直管または曲管で作られ、その寸法は処理能力、処理対象物により異なるが、通常、口径は50mm〜200mm程度、長さは5m〜十数m程度の範囲とされる。反応管2の周囲に配置した加熱部3はセラミックファイバーやキャスタブル等の断熱材で断熱された周壁を有し、その一方に加熱ガス発生装置5に接続したダクトD1が連通し、他方に熱交換後の加熱ガスを排ガスとして排出するダクトD2が連通する。加熱ガス発生装置5は燃焼室と気体燃料または液体燃料を燃焼するバーナ26を有し、バーナ26には重油などの液体燃料が供給されるが、後述するように低沸点成分を気体燃料として供給することもできる。
【0036】
供給装置4は細かく粉砕した廃ポリスチレンを加熱溶融し,得られた溶融ポリスチレンを熱分解器1の反応管2に供給するものである。図1に示す供給装置4は一般にプラスチック射出成形機用として用いられている押出機、またはそれに類する構造の押出機を使用しており、ポリスチレンを投入するホッパ21と押出部22を備えている。押出部22はポリスチレンを加熱溶融する加熱溶融部とそれから延長する筒体を備え、筒体の内部に溶融ポリスチレンを押し出す回転スクリュー23が配置され、その回転スクリュー23はモータ等の駆動部24で回転駆動される。なおホッパ21内には所望により超音波式等のブリッジブレーカが設けられる。
【0037】
凝縮器6は冷却水が流通する冷却管を備え、熱分解器1から流出する熱分解ガスをその冷却管と熱交換して冷却し、スチレンを含む高沸点を凝縮して凝縮成分を排出するものである。凝縮器6にはその供給側に熱分解ガスを流入させる配管bと、凝縮成分をその排出側から排出する配管cと、低沸点成分をその排出側から流出する配管dが接続され、配管dに真空ポンプ等の減圧装置7が設けられる。
【0038】
本実施形態では固液分離装置8を第1遠心分離機9、第2遠心分離機10および第3遠心分離機11で構成している。第1遠心分離機9は処理容量が比較的大きものを使用し、第2遠心分離機10および第3遠心分離機11は処理容量が比較的小さいものを使用する。第1遠心分離機9は配管cから供給される凝縮成分に含まれる油分と固形分を遠心分離するもので、配管eから分離された油分リッチな流出物が流出し、配管fから分離された固形分リッチな流出物が流出する。
【0039】
第2遠心分離機10は第1遠心分離機9の油分流出部からの油分リッチな流出物を油分と固形分に分離するもので、分離した油分を配管jからポンプ14によって油分貯留槽27に排出し、分離した固形分を配管hから廃棄物容器12に排出する。第3遠心分離機11は第1遠心分離機9の固形分流出部からの固形分リッチな流出物を油分と固形分に分離するもので、分離した油分を配管kからポンプ15によって配管cに排出して第1遠心分離機9の供給側に戻し、分離した固形分を配管iから廃棄物容器13に排出する。なお廃棄物容器12,13は、熱分解器1を連続運転する平均的な時間に排出する固形分量の120%程度の内容積を有するものを設置する。
【0040】
第2遠心分離機10および第3遠心分離機11は、後述するように、それぞれの分離操作を終了後にその内部の洗浄と乾燥を行うように構成されるが、乾燥に際して内部に残留する油分が蒸発するので、その蒸発した油分を配管gにより凝縮器6に戻す。なお、図1には第2遠心分離機10および第3遠心分離機11が1基ずつ示されているが、後述するように、これらはそれぞれ2基ずつ設けられ,交互に切り換えて分離操作するようになっている。しかし第2遠心分離機10および第3遠心分離機11をそれぞれ3基もしくはそれ以上設け、それらを順に切り換えて分離操作を行うように構成することもできる。
【0041】
図2は上記第1遠心分離機9の1例を示す横断面図である。図2に示す第1遠心分離機9は一般に下水汚泥の固液分離などに用いられている所謂「デカンタ型」の遠心分離機である。この遠心分離機は筒状のボウル30と、ボウル30内に配置されたスクリュコンベア31を備え、ボウル30の軸32に駆動プーリ33が設けられ、その駆動プーリ33が図示しない駆動モータで回転駆動される。
【0042】
スクリュコンベア31の軸34は一部が中空部とされ、その中空部の周壁に噴出孔が形成され、端部から導入管35が挿入される。さらに軸34の外周部に螺旋翼37が設けられ、軸34の外部に延長した部分に駆動プーリ36が連結され、その駆動プーリ36が図示しない駆動モータで回転駆動される。そして導入管35の入口部が第1遠心分離機9への凝縮成分の供給側を構成する。
【0043】
ボウル30は駆動プーリ33からの駆動力により、例えば1000〜2000回転/分で回転駆動され、スクリュコンベア31は駆動プーリ36からの駆動力により、ボウル30より僅かの回転差で回転駆動される。分離すべき凝縮成分は図2の右端から矢印のように軸35の内部に供給され、スクリュコンベア31の中空部を経てその噴出孔からボウル30の内部に噴出する。
【0044】
ボウル30内に噴出した凝縮成分は高速回転による遠心力を受け、油分と固形分とに分けられ、油分はボウル30の内壁面に沿って左方向に移動し、油分流出部38から配管eに油分リッチな流出物として流出する。一方、遠心力によりボウル30の内壁面に押し付けられた固形分は、スクリュコンベア31の螺旋翼37に押されて右方向に移動し、固形分流出部39から配管fに固形分リッチな流出物として流出する。
【0045】
図3は第2遠心分離機10の周辺部分を具体的に示すプロセスフロー図である。(なお第3遠心分離機11の場合も図3に示す第2遠心分離機10とその周辺部分は同様に構成される。)第2遠心分離機10は、第2遠心分離機10aと第2遠心分離機10bの2基を並列に接続して構成される。また第2遠心分離機10aと第2遠心分離機10bは同じように構成され、その分離容量は第1遠心分離機9の分離容量の50〜60%程度とされる。
【0046】
第2遠心分離機10a,10bは筒状で縦型のケーシング50と、ケーシング50の外側に設けた電熱ヒータ等の加熱部51と、内部に回転自在に配置した細かいメッシュ(好ましくは最もメッシュ値の大きいもの、例えば440メッシュ)の円筒形のステンレススクリーン容器を有する。そして前記加熱部51が乾燥手段を構成する。なお、第2遠心分離機10a,10bは一般に使用されている中心軸回転式円筒形のものを縦置きにして使用することもできる。
【0047】
ケーシング50の上部の供給側に第1遠心分離機9からの油分リッチな流出物を導入する配管eが連通し、その配管eに電磁弁等の自動開閉弁53が設けられる。またケーシング50の上部には蒸発する残留油分を排出する配管gが連通するとともに、分離した油分を排出する配管jが連通し、その配管jに自動開閉弁54とポンプ14が設けられる。そしてこれら配管j,自動開閉弁54およびポンプ14により第2遠心分離機10a,10bの油分排出手段を構成する。一方、ケーシング50の下部はテーパ状に断面が縮小され、その底部に分離した固形分を廃棄物容器12a(12b)に排出する配管iが連通し、その配管に自動開閉弁60が設けられる。
【0048】
第2遠心分離機10a,10bには油分を溶解する洗浄液、例えばスチレン溶液を洗浄液槽55から供給する配管rと、その洗浄液を洗浄液槽55に戻す配管sが接続され、配管rにポンプ56と自動開閉弁57が設けられる。洗浄液槽55には自動開閉弁63を設けた配管tにより清浄なスチレン溶液が補給され、洗浄液槽55から自動開閉弁62を設けた配管uにより洗浄によって汚れた洗浄液が排出され、例えば図1の加熱ガス発生装置5のバーナ26に液体燃料として供給される。そして前記洗浄液槽55、配管r、配管s、ポンプ56、自動開閉弁57等により洗浄手段が構成される。
【0049】
第2遠心分離機10a,10bには油分の液面を検出する液面検出手段58が設けられ、その液面検出手段58の液面検出信号が制御装置59に入力される。そして制御装置59から自動電磁弁53,54,57,ポンプ14,56等に後述するような各種の制御信号が出力される。制御装置59は例えばコンピュータ装置により構成され、その記憶部に格納された制御プログラムによって各種制御が実行される。
【0050】
なお図3のプロセスフローは前記のように第3遠心分離機11についても適用されるが、第3遠心分離機11の場合は、その供給側に第1遠心分離機9の固形分流出部39が接続され、その油分流出側から流出する油分が点線で示す配管k(および図示しないポンプ15)から配管cを経由して第1遠心分離機9に戻る点が異なる。
【0051】
再び図1において、油分貯留槽27にはポンプ16を設けた配管lが接続され、配管lの先端は第1蒸留装置19の中段に連通する。第1蒸留装置19の底部にリボイラ19aが設けられ、上部にトルエンやエチルベンゼン等の低沸点成分を流出する配管mが連通し、下部にスチレンを含む高沸点成分を流出する配管nが連通し、その配管nにポンプ17が設けられる。そして配管nの先端は第2蒸留装置20の中段に連通する。
【0052】
第2蒸留装置20の底部にリボイラ20aが設けられ、上部にスチレンからなる低沸点成分を流出する配管oが連通し、その配管oの先端は図示しないスチレン回収タンクに連通する。また第2蒸留装置20の下部にスチレンのトリマーやダイマーを含む高沸点成分(重質油)を流出する配管pが連通し、その配管pにポンプ18が設けられる。そして配管pの先端は図示しない重質油回収タンクに連通する。
【0053】
リボイラ19a,20aには前記加熱部3から熱分解器1を介しダクトD2が接続され、その排ガスがリボイラ19a,20aの加熱源になる。なお第1蒸留装置19、第2蒸留装置20は多段の棚またはラッシリングを充填した一般的な蒸留塔を使用することができる。
【0054】
次に、上記プロセスフローにより熱分解ガスを処理する方法について説明する。最初に熱分解系統と蒸留系統の運転準備を行う。先ず加熱ガス発生装置5を運転して800℃〜1000℃程度の加熱ガスを熱分解器1の加熱部3に供給し、反応管2の内部をポリスチレンの熱分解温度である600〜800℃程度になるように昇温する。さらに減圧装置7を運転して溶融ポリスチレン系統および熱分解ガス系統の内部空気を排出して酸素不存在状態とするとともに、系統内の圧力を例えば2kPa〜10kPa程度に減圧する。その際、配管aに設けた開閉弁25を閉じ、外部から窒素等の不活性ガスを供給して系統内を酸素不存在状態にする。
【0055】
さらに蒸留系統の内部も図示しない減圧装置で2kPa〜10kPa程度に減圧するとともに、リボイラ19a,20aに外部から熱源を供給し、第1蒸留装置19および第2蒸留装置20の内部を例えば60〜150℃程度の蒸留に適した温度に昇温する。
【0056】
次に、供給装置4を運転して溶融ポリスチレンを反応管2に供給することにより熱分解運転を開始する。すなわち図示しない粉砕装置などで細かく粉砕した廃ポリスチレンを空気輸送やコンベアでホッパ21に供給し、その廃ポリスチレンを加熱溶融部に供給し、そこで200〜250℃程度に加熱して溶融ポリスチレンにする。溶融ポリスチレンは駆動部24で駆動される回転スクリュー23により押し出され、配管aを経て反応管2の導入部に流入する。なお発泡ポリスチレンの場合は溶剤で減容処理をしてから供給装置4に供給する。また配管aの外周は断熱層で被覆される。
【0057】
反応管2に流入した溶融ポリスチレンは、その内部を通過する間に周囲から加熱されて徐々に熱分解し、排出部から生成した熱分解ガスが配管bに流出する。配管bの熱分解ガスは凝縮器6に流入し、そこで冷却されてスチレン、スチレンのダイマー、スチレンのトリマー等の高沸点成分が凝縮し、油分として配管cから1次遠心分離機9に排出する。一方トルエンやエチルベンゼン等の低沸点成分は低沸点ガスとして配管dから排出し、例えば前記加熱ガス発生装置5に気体燃料の少なくとも一部として供給される。
【0058】
図2,図3に示すように、1次遠心分離機9に流入した凝縮成分はそこで1000〜2000回転/分程度で回転するボウル30内で油分と固形分に分離される。分離操作により油分流出部38から流出する油分リッチな流出物は、配管eを経て1番目の第2遠心分離機10aに供給され、1次遠心分離機9の固形分流出部39から流出する固形分リッチな流出物は配管fを経て1番目の第3遠心分離機11a(図1では符号11)に供給される。
【0059】
すなわち、最初に1番目の第2遠心分離機10aと1番目の第3遠心分離機11aにそれぞれ前記流出物を供給するように、制御装置59はそれらの自動開閉弁53を開け、自動開閉弁54,57,60を閉じた状態とする。なお1次遠心分離機9の油分流出部38から流出する油分リッチな流出物は、油分が主成分で、未分解ポリスチレンの微細な粒と不純物固形物の微細な粒を僅かに含む粘性の低い液体であり、固形分流出部39から流出する固形分リッチな流出物は、上記未分解ポリスチレンの微細な粒と不純物固形物の微細な粒が主体で、それに僅かな油分が付着した全体的に粘性の高いゲル状物である。
【0060】
先ず第2遠心分離機10についてその動作を説明する。1番目の第2遠心分離機10aの内部における前記流出物の液面が前記液面検出手段58により検出され、その液面検出値が予め設定された値に達すると、制御装置59から1番目の第2遠心分離機10aに制御信号が出力され、自動開閉弁53を閉状態として前記流出物の供給を停止する。更にその駆動モータを駆動して1番目の第2遠心分離機10aの分離操作を開始する。なお分離操作は2500〜3000回転/分程度の高速回転で所定時間行われる。以上の制御信号に加えて制御装置59から2番目の第2遠心分離機10bにも制御信号が出力され、その自動開閉弁53を開状態、自動開閉弁54,57,60を閉状態とし、配管eからの前記流出物を2番目の第2遠心分離機10bに供給する。
【0061】
1番目の第2遠心分離機10aの分離操作が完了すると、その完了信号(例えばタイマーのセットアップ信号)により制御装置59から1番目の第2遠心分離機10aに制御信号が出力され、駆動モータを停止し、自動開閉弁54を開け、ポンプ14を運転する。すなわち1番目の第2遠心分離機10aは分離した油分を配管jから油分貯留槽27へ排出する排出操作に移る。
【0062】
1番目の第2遠心分離機10aの油分が排出されると、例えば1番目の第2遠心分離機10a底部付近に設けた液面検出手段(図示せず)から制御装置59に排出完了信号が出力されて、それによって制御装置59から制御信号が出力され、自動開閉弁54を閉じ、ポンプ14を停止して油分の排出操作を終了する。
【0063】
1番目の第2遠心分離機10aにおける油分の排出操作が終了したら、次に制御装置59から制御信号が出力され、その自動開閉弁57を開けて洗浄液槽55の洗浄液を配管rからポンプ56により1番目の第2遠心分離機10aの内部に供給する。なお該内部から流出する洗浄液は配管sを経て洗浄液槽55に循環する。洗浄液の循環を所定時間続けると1番目の第2遠心分離機10aの内部(具体的にはステンレススクリーン容器やケーシング50の内壁面)に付着している油分が洗浄液に溶解して除去される。すなわちスチレン、熱分解時の副生物や未分解ポリスチレン、その他の油成分などの有機物質の大半がスチレンに溶解して除去される。
【0064】
油分が溶解した時点(例えばタイマーのセットアップ)で制御装置59から制御信号が出力され、自動開閉弁57を閉じて洗浄操作を終了し、次にその加熱部51を作動して内部の乾燥操作に移る。1番目の第2遠心分離機10aの内部を加熱部51で60〜80℃程度に加熱して乾燥すると、固形分を内壁に付着させていた油分が蒸発するので、該固形分が内壁から剥離しやすくなり、ある程度乾燥が進行すると固形分は自重により底部に自然落下する。
【0065】
底部に落下した固形分がある程度堆積したら、制御装置59に設けた操作部(図示せず)からの指令により、制御信号を出力して自動開閉弁60を開け、配管iから廃棄物容器12aに固形分を排出する。一方、乾燥により固形分に付着していた油分、および内部に残留していた油分は前記のように蒸発するが、その蒸発した油分は配管gを経て凝縮器6に回収される。乾燥操作が終了したら制御装置59から前記加熱部51に加熱停止の制御信号を出力する。そして2番目の第2遠心分離機10bへの前記流出物の供給の終了後の次の切換に備えて待機する。
【0066】
2番目の第2遠心分離機10bへの前記流出物の供給が終了したら、すなわち液面が予め設定した値に達したら、前記1番目の第2遠心分離機10aについて説明した手順で、制御装置59からの制御信号により、2番目の第2遠心分離機10bの分離操作、油分排出操作、洗浄操作および乾燥操作を順次行う。一方、1番目の第2遠心分離機10aへの前記流出物の供給操作を再び開始する。このようにして1番目の第2遠心分離機10aと2番目の第2遠心分離機10bを交互に切り換えて固形分の分離を連続して行うことができる。なお、第2遠心分離機10を3基以上設ける場合にはそれらを順に切り換えて固形分の分離を行うことができる。
【0067】
上記一連の操作において、第2遠心分離機10a,10bにおける1回の分離操作による内部汚染の程度が比較的少ない場合は、洗浄操作および乾燥操作を分離操作ごとに行う必要がないので、数回の分離操作ごとに一回行うようにしてもよい。なお切換操作の確実性からいえば、一方の第2遠心分離機10における分離操作、油分排出操作、洗浄操作および乾燥操作は、他方の第2遠心分離機10への前記流出物の供給操作が終わるまでに終了することが望ましい。なお実験によれば、第2遠心分離機10における前記流出物を運転適合量まで充填する時間は通常5〜6分程度かかるが、分離操作は1分程度、洗浄操作は1.5〜2分程度、乾燥と固形分排出操作は1.5〜2分程度であり、上記条件を十分に満足する。
【0068】
一方、洗浄液槽55の洗浄液は前記のような洗浄操作を繰り返すことで次第に不純物により汚染してくる。洗浄液が汚染するとその洗浄力も低下し、それにより第2遠心分離機10や第3遠心分離機11の分離能力が低下する。実験によれば、このような分離能力の低下は配管jまたは配管kを流れる油分の流量から判断できることが分かった。
【0069】
そこで本実施形態では配管jおよび配管kにそれぞれ流量検出手段61を設け、その流量検出信号が予め設定された値を下回った時点で、洗浄液が汚染されたものと判断し、その信号を受けた制御装置59は洗浄液槽55に制御信号を出力して洗浄液の更新を行う。すなわち配管uに設けた自動開閉弁62を開けて洗浄液槽55から汚染した洗浄液を排出し、新しい洗浄液を配管tに設けた自動開閉弁63を開けて補給する操作を行う。
【0070】
第3の遠心分離機11における固形分の分離手順も上記第2の遠心分離機10における固形分の分離手順と同様に、2基の第3の遠心分離機11a,11bを交互に切り換えて分離操作、油分排出操作、洗浄操作および乾燥操作を実施できるが、その動作説明は上記第2の遠心分離機10の場合と重複するので省略する。また3基以上の第3の遠心分離機11を設ける場合も前記第2の遠心分離機10における操作と同様な操作で固形分を分離することができる。なお第3遠心分離機11の分離操作は3000〜3500回転/分程度の速度で行われる。
【0071】
これまでに説明した固液分離装置8を構成する第1遠心分離機9の分離操作時におけるボウル30の回転数、スクリュコンベア31の回転数、あるいは第2遠心分離機10と第3遠心分離機11の分離操作時における回転数、洗浄操作時における回転数、乾燥操作における温度範囲等は、それら装置に投入する材料組成などを考慮し,予め実験によって設定することが望ましい。
【0072】
次に蒸留操作について説明する。図1において、第1蒸留装置19の中段に供給した油分はそこで蒸留により分離され、トルエン,エチルベンゼン等の低沸点成分が上部から配管mに流出して図示しない回収タンクに回収され、その少なくとも一部は前記加熱ガス発生装置5に燃料ガスとして供給される。一方、スチレン,スチレンのダイマーやトリマーなどの高沸点成分は下部から配管nに流出し、ポンプ17で第2蒸留装置20の中段に供給される。
【0073】
第2蒸留装置20に供給された高沸点成分は、そこでさらに蒸留により分離され、スチレンからなる低沸点成分が上部から配管oに流出して図示しないスチレン回収タンクに回収される。スチレン回収タンクに貯留されたスチレンの一部は前記洗浄液槽55に洗浄液として補給される。またスチレンのダイマーやトリマーを含む高沸点成分は下部から配管pに流出し、ポンプ18で図示しない重質油回収タンクに回収され、貯留された重質油の少なくとも一部は前記加熱ガス発生装置5に燃料油として供給される。
【0074】
以上の実施形態では、固液分離装置8を第1遠心分離機9、第2遠心分離機10および第3遠心分離機11で構成しているが、本発明の処理装置は必ずしもこの構成に制限されるものではない。例えば、第1遠心分離機9で凝縮成分から固形分を分離して得られる油分が、下流側の配管類や機器にかなり長期間流通させた場合でも、それらに悪影響を及ぼさない程度の固形分含有量であれば、第2遠心分離機10を設ける必要性は少ない。
【0075】
また、第1遠心分離機9から流出する固形分リッチな流出物に含まれる油分の含有量が極めて少ない場合は、第3遠心分離機11を設けずに、その流出物を直接廃棄物容器13に排出することもできる。
【0076】
長時間連続運転をした熱分解器1を停止した際に、凝縮器6より下流側の機器内部に固形分が付着している場合には、それら固形分が硬く固着する前に除去しておくことが望ましい。除去対象は第1遠心分離機9、第2遠心分離機10、第3遠心分離機11、廃棄物容器12,13などの内部であり、それら内部を乾燥して剥離し易くしてから除去する。なお、第2遠心分離機10と第3遠心分離機11については前記の乾燥,除去操作を同じ操作を行えばよい。
【実施例】
【0077】
図1のプロセスフローにより廃ポリスチレンの熱分解および生成した熱分解ガスの処理を行った。原料としてポリスチレンペーパ(PSP)廃棄物を直径0.3〜0.5cmの粒度に加工し、それを供給装置4のホッパ21に供給した。供給装置4で得られた溶融ポリスチレンを150Kg/時間の割合で連続的に熱分解器1の反応管2に供給し、700℃程度の熱分解温度で熱分解を100時間行った。
【0078】
ポリスチレンペーパには成形核剤として無機物質であるタルクが1%程度含まれている。そこで凝縮器6から流出する凝縮成分から固形分を分離する第1遠心分離機9の分離操作時におけるボウル30の回転数を2000rpm、スクリュコンベア31の回転数をそれより僅か異なる回転にし、第2の遠心分離機10(10a,10b)の分離操作時における回転数を3000rpm、洗浄時における回転数を100rpm、乾燥温度を80℃に設定し、第3遠心分離機11(11a,11b)の分離時における回転数を3500rpm、洗浄時における回転数を100rpm、乾燥温度を80℃に設定して、固形分の分離操作等を行った。
【0079】
100時間の運転期間中、固液分離装置8から油分回収槽27に流出した油分には固形分が実質的に含まれておらず、第1蒸留装置19および第2蒸留装置20による蒸留操作の効率も低下しなかった。また固液分離装置8を構成する各遠心分離機も運転中断することなく連続運転ができた。なお100時間の運転期間の終了近くにおけるスチレンの収率および純度は、従来装置におけるメンテナンス良好な場合の収率および純度のレベルを維持していた。
【0080】
100時間の連続運転を終了した後、固液分離装置8の系統温度が常温に冷却してから固形分を排出した廃棄物容器12a,12b,13a,13bを調べたところ、原料ポリスチレンに対し、0.020%、0.022%、0.610%、0.588%の割合で乾燥状態の固形分がそれぞれ堆積しており、その総和は1.240%であった。また凝縮器6、第1遠心分離機9、第2遠心分離機10a,10b、第3遠心分離機11a,11bの内部、および観察可能な範囲での配管類の内部に汚れ物質の付着は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の熱分解ガスの処理方法および処理装置は、ポリスチレンの熱分解により得られた熱分解ガスに含まれている微細な固形分を分離して除去するために利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る熱分解ガスの処理装置のプロセスフロー図。
【図2】第1遠心分離機9の1例を示す横断面図。
【図3】第2遠心分離機10の周辺部分を具体的に示すプロセスフロー図。
【符号の説明】
【0083】
1 熱分解器
2 反応管
3 加熱部
4 供給部
5 加熱ガス発生装置
6 凝縮器
7 減圧装置
8 固液分離装置
9 第1遠心分離機
10,10a,10b 第2遠心分離機
【0084】
11,11a,11b 第3遠心分離機
12,12a,12b,13,13a,13b 廃棄物容器
14〜18 ポンプ
19 第1蒸留装置
19a リボイラ
20 第2蒸留装置
20a リボイラ
【0085】
21 ホッパ
22 押出部
23 回転スクリュー
24 駆動部
25 開閉弁
26 バーナ
27 油分貯留槽
30 ボウル
【0086】
31 スクリュコンベア
32 軸
33 駆動プーリ
34 軸
35 導入管
36 駆動プーリ
37 螺旋翼
38 油分流出部
39 固形分流出部
50 ケーシング
【0087】
51 加熱部
53,54 自動開閉弁
55 洗浄液槽
56 ポンプ
57 自動開閉弁
58 液面検出手段
59 制御装置
60 自動開閉弁
61 流量検出手段
62,63 自動開閉弁
a〜u 配管
D1,D2 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを熱分解する熱分解器1で得られた微細な固形分を含む熱分解ガスを処理する方法において、前記熱分解ガスを凝縮器6に供給して高沸点成分を凝縮し、凝縮器6から流出する凝縮成分を固液分離装置8に供給し、固形分を分離して油分を得ることを特徴とする熱分解ガスの処理方法。
【請求項2】
請求項1において、前記固液分離装置8として第1遠心分離機9を用いることを特徴とする熱分解ガスの処理方法。
【請求項3】
請求項2において、前記固液分離装置8として前記第1遠心分離機9に加え、第2遠心分離機10および第3遠心分離機11の少なくとも一方を用い、
前記凝縮成分を第1遠心分離機9に供給し、そこで凝縮成分から固形分を分離し、
第2遠心分離機10を用いる場合は、第1遠心分離機9の油分流出部38からの流出物を第2遠心分離機10に供給し、そこで前記流出物を油分と固形分に分離し、
第3遠心分離機11を用いる場合は、第1遠心分離機9の固形分流出部39からの流出物を第3遠心分離機11に供給し、そこで前記流出物を油分と固形分に分離することにより、
油分を得ることを特徴とする熱分解ガスの処理方法。
【請求項4】
請求項3において、前記第2遠心分離機10を用いる場合には、その第2遠心分離機10を2基以上用い、第1遠心分離機9の油分流出部38からの流出物を各第2遠心分離機(10a,10b)に順次供給してそれぞれ前記流出物を油分と固形分に分離し、前記第3遠心分離機11を用いる場合には、その第3遠心分離機11を2基以上用い、第1遠心分離機9の固形分流出部39からの流出物を各第3遠心分離機(11a,11b)に順次供給してそれぞれ前記流出物から油分と固形分に分離することを特徴とする熱分解ガスの処理方法。
【請求項5】
請求項4において、前記各第2遠心分離機(10a,10b)または各第3遠心分離機(11a,11b)が分離操作をしていない間に、その内部を洗浄液で洗浄し、次いで乾燥し、乾燥により蒸発する残留油分を前記凝縮器6に回収することを特徴とする熱分解ガスの処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、前記熱分解器1の運転を停止した際に、固液分離装置8の内部に付着した固形分を乾燥操作により除去することを特徴とする熱分解ガスの処理方法。
【請求項7】
プラスチックを熱分解する熱分解器1で得られた微細な固形分を含む熱分解ガスを処理する装置において、前記熱分解ガスを凝縮する凝縮器6と、凝縮器6で得られた凝縮成分から固形分を分離して油分を得る固液分離装置8を備えていることを特徴とする熱分解ガスの処理装置。
【請求項8】
請求項7において、前記固液分離装置8を第1遠心分離機9により構成したことを特徴とする熱分解ガスの処理装置。
【請求項9】
請求項8において、前記固液分離装置8を前記第1遠心分離機9と、第2遠心分離機10および第3遠心分離機11の少なくとも一方により構成し、第1遠心分離機9の供給側を前記凝縮器6の凝縮液排出側に接続し、
第2遠心分離機10を設置する場合は、第2遠心分離機10の供給側を第1遠心分離機9の油分流出部38に接続し、
第3遠心分離機11を設置する場合は、第3遠心分離機11の供給側を第1遠心分離機9の固形分流出部39に接続することを特徴とする熱分解ガスの処理装置。
【請求項10】
請求項9において、前記第2遠心分離機10を設置する場合には、その第2遠心分離機10を2基以上設置してそれぞれに液面検出手段58を設け、各第2遠心分離機(10a,10b)の供給側を第1遠心分離機9の油分流出部38にそれぞれ自動開閉弁53を介して接続し、いずれかの第2遠心分離機(10a,10b)に設けた液面検出手段58の液面検出信号が予め設定された値に達したときに、当該第2遠心分離機(10a,10b)に設けた前記自動開閉弁53を閉じて分離操作を行うように制御する制御装置59を設け、
前記第3遠心分離機11を設ける場合には、その第3遠心分離機11を2基以上設置してそれぞれに液面検出手段58を設け、各第3遠心分離機(11a,11b)の供給側を第1遠心分離機9の固形分流出部39にそれぞれ自動開閉弁53を介して接続し、いずれかの第3遠心分離機(11a,11b)に設けた液面検出手段58の液面検出信号が予め設定された値に達したときに、当該第3遠心分離機(11a,11b)に設けた前記開閉弁53を閉じて分離操作を行うように制御する制御装置59を設けたことを特徴とする熱分解ガスの処理装置。
【請求項11】
請求項9において、前記各第2遠心分離機10または各第3遠心分離機11の内部を洗浄する洗浄手段および乾燥手段を設け、前記各第2遠心分離機(10a,10b)または各第3遠心分離機(11a,11b)の分離操作が終了したときに、その内部の洗浄および乾燥を行えるように構成したことを特徴とする熱分解ガスの処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−2088(P2006−2088A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181630(P2004−181630)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】