説明

熱効率にすぐれるマイクロマシンデバイス

熱的処理を効率的に行なうマイクロマシンデバイスであって、肉厚が50μmよりも小さい領域を少なくとも有する流体流通管(5)を少なくとも1つ有している。マイクロマシンデバイスは、流体流通管(5)の第1断熱部と第2断熱部と熱伝達が行われる1又は2以上の熱伝導性構造体を選択的に含んでいる。デバイスはまた、熱伝導性領域を含んでおり、流体流通管(5)の少なくとも一部分が熱伝導性領域の中に配備される。流体流通管(5)の壁から管の内部空間へ突出する複数の構造体が設けられる。この構造体は、管内の流体と管壁との熱伝達を高める作用を有する。基板(3)から、流体の流れを処理するためのマイクロマシンデバイスを製造する方法では、基板(3)の一部を選択的に取り除いて、装置内に所望の構造体を組み込まれる。例えば、マイクロマシンデバイスは、流体反応物質を効率良く反応させて、装置に連繋された燃料電池の燃料を製造することができ、化学から電気に変換できるシステムが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的には、流体の熱的処理(thermal processing)を効率的に行なうマイクロマシンデバイスに関する。より具体的には、本発明は、流体の処理を、熱効率良く行なうマイクロマシンデバイスに関する。本明細書の中で使用する「流体処理(fluid processing)」の語は、例えば、流体の流れの化学反応、加熱 、冷却、濾過、吸着、脱離及び/又は相変化(例えば、蒸発と凝縮)を含んでいる。本発明は、例えば、発電のために化学物質の処理に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
マイクロマシン流体デバイスの分野には、構成要素(例えば、気体、流体、固体粒子(例えば、ビーズ)、複雑な分子(例えば、DNA)、それらの混合物)を処理すると共に、小さいという特徴(最小サイズは500μmよりも小さい)を具える全てのシステムが含まれる。このようなマイクロマシンデバイスは、化学的及び生物学的な分析(例えば、キャピラリー電気泳動分離)、小規模の化学合成、反応速度の測定などの多くの分野で有用であることが明らかにされている。サイズが小さいことはマイクロマシンデバイスに固有の特徴であり、これにより、流体の流量を著しく少なくすることができ、システムの小型化が可能であり、多くの場合、性能が改善される。
【0003】
これまでにも、流体処理を行なう様々なマイクロマシンデバイスが提案されている。例えば、米国特許第6,192,596号は、アクティブ・マイクロチャンネル流体処理装置及び該装置を製造する方法を開示している。平行なマイクロチャンネルを熱伝導性フィンを隔てて配列することにより、マイクロチャンネルを流れる流体との熱交換が行われる。
【0004】
米国特許第6,193,501号は、サブミリサイズのマイクロコンバスタを開示している。好ましい実施例では、3以上のウエハからなるウエハスタックを有しており、中央のウエハに燃焼チャンバーが収容されている。反応物質を導入し、炎を排出するために、少なくとも1つの入口と出口が設けられている。
【0005】
米国特許第4,516,632号は、マイクロチャンネルを有するクロスフロー型流体熱交換器及びその製造方法を開示している。熱交換器は、薄い金属シートが互いに接着されたスタックから形成されている。
【0006】
流体処理マイクロマシンデバイスを利用可能な用途の1つに、ポータブル発電装置がある。この用途は将来的に有望である。なぜならば、化学燃料のエネルギー密度は、現在利用されているバッテリーのエネルギー密度よりも約2桁も大きいからである。しかしながら、化学燃料の高エネルギー密度の利点を利用し、ポータブル電源用バッテリーと競うには、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する燃料処理装置/発生器を微小化するのに適した構造を作り出さねばならない。燃料処理装置/発生器は、一般的には、所望の反応を持続するための高温領域を必要とする。その温度を維持するのに電力が消費されるため、システム全体の効率が低下する。デバイスの大きさが小さくなるにつれて、燃料処理を効率良く行なうのに必要な温度勾配と断熱性を維持することが益々困難になっている。既存のマイクロマシン燃料処理デバイスの場合、デバイスの高温領域の温度を維持するのに、燃料に含まれるエネルギーよりも多くの電力を必要とすることもあり、ポータブル発電への適用の妨げとなっている。
【0007】
異なる温度に保持される機構を別に配備し、その機構で動作するように設計された高効率デバイスを製造するために、熱の管理を行なうことが重要である。特に、マイクロマシン発電システムにおいて、反応ゾーンを断熱することは最も重要である。非流体式のマイクロマシンデバイスの場合、その熱管理は、長く、薄く、及び/又は非伝導性の支持体を用いて簡単な断熱が行われる。なお、支持体はしばしば真空パッケージングされる。熱管理機構を具えた非流体式マイクロマシンデバイスとして、例えば、米国特許第5,021,663号及び第5,789,753号に開示されたボロメータがある。
しかしながら、本発明者らは、マイクロマシン流体デバイスには、次の3つの特有の問題があると考える。すなわち、熱領域と接続される流体構造を密封する必要があり、対流による熱の流れが生ずる可能性があり、流体流通管の壁を等温に保持する領域を設けることがしばしば要請されることである。それゆえ、マイクロマシン流体デバイスの熱管理機構が成功を収めるには、非流体式熱デバイスで用いられる幾つかの既知の発明及び技術に加えて、固定構造体又は移動流体によって過剰の熱の流れを生じさせることなく、高温領域と流体の伝達を行なうことのできる手段を設けなければならない。この場合、デバイスの特定領域で熱の均一性を確保する手段を含めることがしばしば望まれる。
【0008】
それゆえ、高温反応領域が周囲環境から断熱され、少なくとも1種の流体が関与する化学プロセスを効率良く行なうことができるマイクロマシンデバイスを提供することは有益であろう。また、反応物質流体の化学反応を行なうマイクロマシンデバイスにおいて、デバイスの動作に消費されるエネルギーが、反応物質流体から生ずるエネルギーよりも実質的に少なくすることは有益であろう。このようなデバイスは、ポータブル発電装置一部として用いることができるであろう。
【発明の開示】
【0009】
上記要請に応えるために、本発明は、少なくとも1種の流体の流れを熱的処理するマイクロマシンデバイスであって、少なくとも1つの流体流通管を具え、該流体流通管の少なくとも一部の領域は肉厚が50μmよりも小さいマイクロマシンデバイスを提供するものである。
【0010】
上記要請に応えるために、本発明また、少なくとも1種の流体の流れを熱的処理するマイクロマシンデバイスであって、少なくとも1つの流体流通管と、少なくとも1つの熱伝導性構造体とを具えるマイクロマシンデバイスを提供するものである。熱伝導性構造体は、流体流通管の第1断熱部と、流体流通管の第2断熱部との間で熱移動を可能にする。
【0011】
上記要請に応えるために、本発明はまた、少なくとも2種の流体の流れを熱的処理するマイクロマシンデバイスであって、第1の流体流通管と、第2の流体流通管と、少なくとも1つの熱伝導性構造体とを具えるマイクロマシンデバイスを提供するものである。熱伝導性構造体は、第1流体流通管の断熱部と、第2流体流通管の断熱部との間で熱移動を可能にする。
【0012】
上記問題を解消するために、本発明は、少なくとも1種の流体の流れを処理するマイクロマシンデバイスであって、熱伝導性領域と、少なくとも1つの断熱部を有する少なくとも1つの流体流通管とを具えるマイクロマシンデバイスを提供するものである。流体流通管の少なくとも一部分は、熱伝導性領域の中に配置される。
【0013】
本発明はまた、流体の流れを処理する方法に関する。この方法は、断熱入口部及び断熱出口部を有する少なくとも1つの流体流通管と、入口部及び出口部と熱伝達可能な少なくとも1つの熱伝導性構造体とを具えるマイクロマシンデバイスを配備することを含んでいる。少なくとも1種の流体の流れは、流体流通管の入口部に導入され、流体流通管の中で処理される。熱伝導性構造体は、流体流通管の入口部と出口部との間で熱エネルギーを伝導する。
【0014】
本発明はまた、本発明に基づいて構成されたマイクロマシンデバイスを含むポータブル発電装置を提供する。マイクロマシンデバイスは、少なくとも1つの流体流通管と、少なくとも1つの熱伝導性構造体とを具えている。熱伝導性構造体は、流体流通管の第1断熱部と、流体流通管の第2断熱部との間で熱移動を可能にする。燃料電池は、流体流通管と流体の移動が可能である。燃料は、流体流通管の中で作られ、燃料電池に運ばれて、電力の生成に用いられる。
【0015】
本発明はまた、少なくとも1種の流体の流れを処理するデバイスを製造する方法を開示する。この方法は、環境にアクセス可能な壁を有する少なくとも1つの管モールドと、環境にアクセス不可能な少なくとも1つの放出ピット(release pit)を形成できるように、基板をパターニングする工程、管モールドの壁はコートするが、放出ピットは覆わないように薄膜を設ける工程、少なくとも1つの流体流通管を形成できるように、化学エッチング剤を用いて基板の選択された領域を取り除く工程を含んでいる。
【0016】
本発明はまた、マイクロマシンデバイスをポータブル型発電に用いる際に生ずる前記不都合を解消するものである。本発明に係るマイクロマシンデバイスは、反応物質流体との化学反応を行なうのに適しており、デバイスが消費するエネルギーは、流体生成物から生じるエネルギーよりも実質的に小さい。本発明のこれら及びその他の利点は、以下に記す本発明の実施例の詳細な説明を参照することによって明らかになるであろう。また、本発明のマイクロマシンデバイスを製造及び又は使用する際に、本発明のさらなる詳細及び利点を理解し得るであろう。
【0017】
望ましい実施例の説明
本発明は、マイクロマシンデバイスにおける効率的な流体処理に必要な温度勾配と断熱性の維持に関する問題を解消するものである。マイクロマシン流体用システムの熱管理に関する課題解決策は、持ち運び可能な燃料処理及び発電装置を実現可能にする技術である。本発明を燃料処理及び発電分野に適用することにより、従来のバッテリーよりも少なくとも1桁上のエネルギー密度を供給できるポータブル型マイクロマシン用電源を開発することができるであろう。
【0018】
持ち運び可能な発電装置の分野に本発明を適用することにより、実質的な利益がもたらされる。ポータブル型発電装置の供給電力のエネルギー密度が1桁改善されると、数十億ドル規模のバッテリー産業に大きなインパクトを与えるであろう。それはまた、低エネルギー密度のバッテリでは実用化されていなかった技術及び用途に対しても、全く新しい市場が作り出される可能性がある。
本発明は、電力分野と関係のない他の広範囲の分野においても使用可能性があり、例えば、小規模の化学合成、化学的検出及び分析、マイクロ冷却(例えば、電子機器又は超伝導体)、マイクロ熱量測定(microcalorimetry)、熱光起電力(thermophotovoltaic)発電、スターリングサイクル(stirling cycles)、触媒試験、並びに広範囲の化学及び生物学実験(例えば、生物学的検定法、化学的及び生物学的検出、高スループットスクリーニング)などがある。
【0019】
本明細書で用いられる「流体(fluid)」という語は、1種又は2種以上の気体、液体、固体粒子(例えば、ビーズ)、複合分子(例えば、DNA)、及びそれらの組合せを意味する。
【0020】
本明細書で用いられる「マイクロマシンデバイス(micromachined device)」という語は、当該分野で一般的に理解されているとおり、最小寸法が500μmより小さい構造を含むデバイスを意味する。
【0021】
本明細書で用いられる「ポスト(post)」という語は、任意の幾何学的断面形状を有する中空又は中実の細長い構造を意味する。ポストの断面形状として、円形、楕円形、正方形、矩形等を挙げることができるが、これらに限定されるものと解すべきではない。
【0022】
本明細書で用いられる「実質的に等温(substantially isothermal」という語は、ほぼ等温の領域での温度変化が、デバイス全体の温度変化の5分の1より小さいことを意味する。デバイス内部の温度変化については、当該分野の専門家であれば、種々の方法で測定することができるであろう。このような方法の1つとして、熱赤外線(IR)によるデバイスの作像がある。他の方法として、デバイスの様々な位置に温度センサーを配置することもできる。
【0023】
本明細書で用いられる「断熱(thermally insulating)」及び「熱伝導(thermally conducting)」という語は、本発明の具体的実施例の中での熱伝導の相対的差異(relative difference)を意味する。特に、断熱構造体と伝熱性構造体の伝導性について、構造体を横切る温度差を維持するのに必要な電力によって比べると、断熱構造体の伝導性は、約2倍以上、望ましくは10倍以上小さい。伝導性は、例えば、直接測定により、又は、場合によっては、モデル化することによって求めることができる。例えば、「断熱」管として、管に薄い壁、好ましくは厚さ50μmよりも小さい壁を設けることによって得ることができるが、これに限定されるものではない。
【0024】
本明細書で用いられる「管(tube)」という語は、内周及び外周を有し、断面が任意形状で、内部を流体が流通可能な中空体を意味する。例えば、管の断面形状は、円形、楕円形、正方形、長方形などの任意形状であってよく、これら形状に限定されるものではない。
【0025】
本発明の一実施例として、単一の薄壁を有する管を、例えば、高温の流体処理管として用いることができる。発明者らは、管の薄壁の厚さは、好ましくは50μmより薄く、より好ましくは5μmより薄いものが、この種用途に好ましいことを見い出した。その理由は、壁が薄いと、長さ方向に実質的な温度差がある場合でも、管の軸方向の伝熱量を少なくできるからである。熱伝導をさらに少なくするには、管を断熱性材料で形成することが好ましい。
【0026】
このような薄壁を有する管は、当該分野で既知の多くの技術を用いて作製することができる。以下に詳しく説明する望ましい技術は、相対的ソリッドモールド(relatively solid mold)に包み込んで管を形成し、管材料に薄膜を形成し、次に周囲モールドをエッチングによって管を取り外す。この技術により、壁厚が成膜厚さによって規定される自立タイプの管が得られる。
【0027】
本発明のマイクロマシンデバイスの一実施例において、少なくとも1つの熱伝導性構造体は、流体流通管の第1断熱部及び流体流通管の第2断熱部と熱伝達が行われる。熱伝導性構造体が熱伝達を行なう2つの断熱部では、温度が異なっており、熱エネルギーは熱い部分から冷たい部分に伝達される。
【0028】
質量保存則により、定常状態で動作するデバイスの場合、ある領域を出る質量と、該領域に流れ込む質量とは正確に一致する。それゆえ、ある領域から出て行くガスの熱損失をできるだけ少なくするには、その熱を、入ってくる流体の流れに移すようにすればよい。本発明の他の実施例において、熱交換は、流体流通管の断熱性入口部と流体流通管の断熱性出口部との間に熱伝導性構造体を配置することによって行われる。管は、U字状に形成され、入口部と出口部の管軸線がほぼ平行となるように構成するのが好ましい。対流による熱の流れは、高温反応生成物が通る出口部から、流体流通管の入口部へ伝達されることによって改善される。理想的には、熱伝導性構造体は、デバイスの動作中はほぼ等温であり、その最小寸法は、通常、管壁の最小寸法よりも大きく、熱の流れが促進されるように、比較的高伝導性の材料で形成される。熱伝導性構造体は、シリコンで形成されるのが好ましい。
【0029】
本発明の他の実施例において、流体流通管には、流体流通管の断熱性入口部及び断熱性出口部と熱伝達が行われる熱伝導性構造体が配備される。これらの熱伝導性構造体は、対流損失を低減する作用があるので、高温で、及び/又は、少ない流量で流体処理を行なうことが可能となる。入口部と出口部との間で熱伝達が行われるようにし、管の長さ方向に沿って熱伝達量が多くならないようにするため、例えば、熱伝導性構造体は、流体流通管の管軸にほぼ直交する方へ向けられる。流体の流れの方向は、流体流通管の特定領域の管軸線とほぼ平行であることは理解されるであろう。複数の熱伝導性構造体は、流体流通管の入口部と出口部に沿って間隔をあけて設けられており、管の所望の長さ部分における熱交換を向上させるために用いられる。
【0030】
本発明の一実施例において、流体流通管の中に柱状体のポストが設けられる。ポストを設けることによって得られる利点については、後で記載する。
【0031】
本発明の他の実施例では、ほぼ等温の熱伝導性領域が与えられ、その中に、流体流通管の少なくとも一部分が配置される。流体流通管の少なくとも一部の領域は、断熱される。例えば、流体流通管の当該部分について、全体又は一部分を熱伝導性領域の中に埋め込むか又は挿入することができるが、これに限定されるものではない。熱伝導性領域を均一な熱分布とすることにより、壁厚が薄い管の埋込み部又は収容部における反応は均一に行われるので、反応生成物の活性向上及び/又は変換効率の向上がもたらされる。前記領域の熱分布が均一になると、ホットスポットの発生がないので材料の制約が少なくなり、熱光起電力(TPV)発電用では放射量が多くなり、及び/又は、熱電(thermoelectric; TE)発電では利用される接触面積が増大する。物理的特性を既知温度及び均一温度で測定することが重要な分析に適用される場合にも、熱分布は均一であることが極めて望ましい。熱伝導性領域内の流体流通管の壁が、流体処理中にほぼ等温であっても、管内に収容された流体が必ずしも実質的等温でなくてもよいことは理解されるべきである。
【0032】
本発明にあっては、流体流通管内の流体は、熱伝導性が低くて、管壁から管中心の流体領域へ温度勾配が生じてもよい。この不均一性を小さくするには、流体を通じて熱が管壁に達するまでの平均距離が小さくなるように構成された構造体を、流体流通管内に設けるとよい。例えば、ポストは、チューブの中に並べて配置され、チューブの内壁からチューブの内側容積に向かって突出する。ポストの配置例として、例えば、管の内壁から管の内部に向けて伸びるように配備することができるが、これに限定されるものではない。ポストは、熱伝導性であって、流体流通管の壁厚よりも直径が大きく、管壁材料よりも比較的高伝導性の材料で作られるのが好ましい。ポストはまた、管の入口部と出口部の間に配備された前記熱伝導性構造体と共に用いることにより、高温の流体が収容された流体流通管の出口部と、比較的低温の流体が収容された流体流通管の入口部との熱交換及び/又は回復はさらに向上する。ポストはまた、ほぼ等温の構造体と共に用いることにより、ほぼ等温構造体の中に収容された流体の熱均一性が向上する。
【0033】
本発明のマイクロマシンデバイスの他の実施例において、少なくとも1つの熱伝導性構造体は、第1流体流通管の断熱部と第2流体流通管の断熱部との間で熱伝達が行われる。熱伝導性構造体と熱伝達が行われる2つの断熱部は温度が異なり、熱エネルギーは高温部から低温部へ移動する。
【0034】
一実施例では、複数の管を、略等温の熱伝導性領域及び/又は熱伝導性構造体と結合することができるが、これに限定されるものではない。この組合せがもたらすさらなる利点として、例えば、1つの反応によって発生した熱を、その他の吸熱反応で利用できるようにしたことである。例えば、水素を空気の存在下で燃焼させると、水が生成する。この反応は熱エネルギーを生成し、次に、このエネルギーは、アンモニアの水素及び窒素への分解反応に用いられる。
【0035】
本発明の実施例では、環境への接続を容易にするために、管の開口端部を共通基板の中に収容することができる。
【0036】
本発明のマイクロマシンデバイスの実施例では、管の両端を収容することにより、マイクロマシンデバイスの一部に密封チャンバーが形成される。密封チャンバーは、構造体周囲の雰囲気環境を制御するのに有用である。例えば、密封チャンバーを脱気する(evacuate)ことにより、マイクロマシンデバイスの外表面からの伝導損失及び対流損失を少なくすることができる。伝導損失、対流損失及び/又は輻射損失を低減するために、脱気に代えて又は脱気に加えて、チャンバーにエーロゲルを充填することもできる。さらにまた、チャンバーの内部表面を反射性材料でコーティングしたり、マイクロマシンデバイスの外表面を非放出性材料(non-emittign material)でコーティングすることにより、放射損失を少なくすることができる。
【0037】
本発明のマイクロマシンデバイスの実施例としては、デバイスの高温部を利用して電気エネルギーを直接変換することもできる。これは、例えば、熱電(TE)又は熱光起電力(TPV)法を用いて行なうことができる。
【0038】
本発明の実施例として、流体流通管は2以上の入口部及び/又は2以上の出口部を有することもできる。このような管は、適当に変形を加えて、複数の入口部及び/又は出口部を形成することができる。
【0039】
本発明の実施例として、流体流通管を2以上の管に分岐させることもできる。また、2以上の管の連結部から1本の管を形成することもできる。
【0040】
また、次の中から任意の2以上を組み合わせることもできるが、本発明をそれら組合せに限定するものと解すべきでない。例えば、薄壁を有する管、断熱管、ポスト、熱伝導性構造体、ほぼ等温の領域、熱伝導性ポスト、複数の管、複数の入口部及び出口部、1本の管を2本以上の管に分岐すること、複数の管を1本の管に連結すること、管の両端を被覆すること、様々な特徴を有する密封チャンバーの中に実施例の構成をパッケージングすること、及び/又はエネルギーの直接変換デバイスを配備することを挙げることができる。本発明は、これらの要素を、他の要素、デバイス及び流体デバイスで有用なものとして知られた特徴と組み合わせることも含むものである。これらには、例えば、発電、冷蔵(refrigeration)、温度検知に有用なサーモパイルが含まれる。また、熱光起電力発電装置に用いるために、熱から光を発するのに用いられる選択エミッター又は黒体エミッターを本発明のデバイスに組み込むことができる。また、抵抗温度センサー、光音響分光分析(photoacoustic spectroscopy)デバイス、IR分光分析デバイス、キャパシタンスセンサー、熱コンダクタンスセンサー、流量センサー、化学センサーなどの様々なセンサーを、マイクロマシンデバイスに組み込むことができる。また、例えば、抵抗ヒータ、電気泳動流又は電気浸透流、電気化学用電極、バルブ、ポンプなどの様々なアクチュエータを、マイクロマシンデバイスに組み込むことができる。
【0041】
本発明に基づいて構成されるマイクロマシンデバイスの一実施例として、熱伝導性領域に配置された流体流通管の中間部へ流体が流れる断熱入口部を有する少なくとも1つの流体流通管がある。流体流通管はまた、流体流通管の中間部を出た流体が通る断熱出口部を有している。熱伝導性構造体は、入口部と出口部の両方で接触する。それゆえ、流体の流れ方向と、伝導熱の流れ方向を別個に制御することができる。即ち、流体の流れ方向は管の方向であるのに対し、伝導熱の流れ方向の少なくとも一部は熱伝導性構造体を通る方向にある。
流体の流れと伝導熱の流れを分離することは、前述したように、管の断熱部と熱伝導性構造体との熱コンダクタンスの大きな差によって可能となる。熱コンダクタンスのこの差は、管に薄肉部(50μmよりも小さい)を設け、熱伝導性構造体を大面積にすることによって得ることができる。熱コンダクタンスの差をさらに大きくするために、断熱部を有する管に用いる材料と熱伝導性構造体に用いる材料を異なるものを使用し、熱伝導性構造体に、管の断熱部よりも熱伝導性の高い材料を用いることが望ましい。
デバイスは、当該分野で既知のマイクロ加工技術を用いて、入口部、出口部及び中間部を真空環境にパッケージングすることもできる。また、デバイスの輻射熱損失を最少にするために、デバイスのパッケージングの際、IR反射体を真空キャビティにライニングしたり、デバイス自体に低放射性コーティングを施すこともできる。例えば、シリコン基板に、アルミニウムのようなIR反射体材料でコートすることができるが、これに限定されるものではない。
【0042】
本発明に基づいて構成されたマイクロマシンデバイスの一実施例では、低温の流体反応物質が、常温の基板を通して、流体流通管の断熱入口部に導入される。流体は、次に、熱伝導性領域に収容された流体流通管の中間部に送られる。反応は、流体流通管の中間部で行われる。しかしながら、重要なことは、流体の反応は、流体流通管の中間部及び/又は他のどの部分で行われてもよいことである。反応の後、流体生成物は、流体流通管の断熱出口部に送られる。入口部と出口部の間に、これらと接触するように1又は2以上の熱伝導性構造体を設けることにより、熱は、流体流通管の出口部の流体生成物から、流体流通管の入口部の流体反応物質へ伝達される。熱の損失は、流体流通管から基板への対流だけであるので、熱損失量は最少になる。
【0043】
周囲環境との断熱を効果的に行なえる構造体の1つの方式として、セラミック(窒化シリコン)の薄膜断熱材から作られた流体流通管を、シリコンの支持フレームに吊るして取り付けた構造がある。流体流通管は、熱管理のためのシリコン製スラブと一体化されている。シリコンスラブは、熱伝達及び/又は実質的等温構造が形成されるような形状に作られて配置され、様々なプロセスの流れの間で、局部的な熱均一領域の維持と熱交換を可能ならしめ、流体流通管の入口部と出口部の間での熱回収が可能となる。流体流通管のさらなる断熱のために、エーロゲルを用いたり、真空パッケージングすることができる。流体流通管は、通常、基板の中の密封キャビティの中でパッケージングされている。伝導損失を少なくし、輻射損失を最少にするために、キャビティにエーロゲルを充填することができる。また、対流/伝導損失を最少にするために、脱気することもできる。なお、前述したIR反射体及び/又は低放射性コーティングを、単独で、又は真空及び/又はエーロゲルと共に使用することもできる。
【0044】
本発明の一実施例では、2つのU字形窒化シリコン管を、互いに近接して配置し、4つの流路が形成される。管を略U字形にすることは、熱膨張によって起こる管の応力を小さくできる点で重要な役割を果たす。応力を小さくすることにより、座屈等の不都合を回避することができる。それゆえ、ここではU字形の実施例のみについて説明するが、本発明の管はU字形に限定されるものではなく、応力を低減できるものであればどんな形状であってもよいことは理解されるべきである。適当な条件下では、他の形状を用いることは可能である。各管のU端部(中間部)は、シリコンから作られた比較的厚肉の単一層の中に収容される。シリコンは、2つの管の中間部での熱交換を可能にする。化学的熱源は、他の加熱形態とは異なって発熱反応であるから、このような熱交換は、吸熱反応を実施するために好ましい。
一例として、水素燃焼を挙げることができる。これは、反応ゾーンの温度維持に必要な熱を供給するために、主に一方の管の中間部で水素を燃焼させ、主に他方の管の中間部で吸熱型水素発生反応を行なうもので、正味水素が生成される。
シリコン構造体の熱コンダクタンス特性は、シリコン層の全体を通じて、略共通した温度がもたらされるようにすべきである。それゆえ、中間部が収容されるシリコンその他の熱伝導性材料の領域は、「ほぼ等温の熱伝導性領域」と称することもできる。なお、この明細書では、通常は、単に「熱伝導性領域(thermally conductive region)」と称するものとする。なお、前述の「他の熱伝導性材料」として、銅などの金属を挙げることができるが、これに限定されるものではない。発明者らは、そのような領域を設けることが、マイクロマシンデバイスにおける複数のプロセスの熱交換において利点がもらされると考える。
【0045】
流体流通管にスパンを設けるために、熱伝導性領域と基板との間に1又は2以上の熱伝導性シリコン構造体を配備することができる。熱伝導性構造体を設けることにより、窒化シリコン管の出口部を通って熱伝導性領域から出て行く高温流体と、窒化シリコン管の入口部を通って熱伝導性領域に入る低温流体との間で熱回収を行なうための熱リンクが形成される。プラチナヒータ/温度検知抵抗器(TSR)は、4つのリード線が管の上方に吊され、熱伝導性領域の上を曲がりくねって配備される。当該分野で知られているように、ヒータ/TSRは本質的に抵抗式ヒータである。この抵抗器での電圧降下と電流を測定し、基準温度での抵抗を知ることにより、ヒータの温度を求めることができる。それゆえ、ヒータとセンサーは、複数の機能を有するものであれば単一のデバイスでもよいが、別個のデバイスにすることもできる。ヒータ/TSRを製造するために使用する材料は、当該分野で知られている。加熱は、放射加熱でもよいし、熱電加熱を用いてもよい。熱伝導性領域と、それを取り囲むシリコンチップ(基板)との間にシリコンの直接の通路はない。
【0046】
本発明はまた、流体の流れを処理するためのマイクロマシンデバイスを有するポータブル式発電装置を提供するものである。発電装置は、以下の実施例3〜実施例5に記載するように、燃料電池に連繋されるマイクロマシンデバイスを具えている。マイクロマシンデバイスによる望ましい生成物は水素であり、これは、多くの燃料電池の燃料として用いられる。或いはまた、マイクロマシンデバイスによって、水素と一酸化炭素を生成することもでき、これらもある種の燃料電池に用いられる。
【0047】
本発明の他の実施例として、熱分離された構造体が周囲環境よりも低温の冷蔵デバイスがある。例えば、ペルチェ冷却デバイスにより、熱分離された管領域と基板が接続される。ペルチェデバイスに電圧を印加すると、熱は、熱分離された管領域から基板へ流れるので、熱分離された管領域の温度を、基板及び環境よりも効果的に下げることができる。
一実施例において、熱伝導性構造体は、流体流通管の断熱入口部と出口部を接続する。熱伝導性構造体は、入ってくる流体の流れを冷却し、出て行く流体の流れを加熱して、熱効率を改善する。熱分離された管と、入口部の流れ及び出口部の流れの間で交換された熱は、ペルチェデバイスへの適用に必要な電力を最少にし、低温状態を維持するのに利用される。このように、ここに記載した高温とは、環境温度よりも低温での運転を想定しているものと解されるべきである。
【0048】
本発明に基づいて構成されるマイクロマシンデバイスの一実施例では、流体流通管は、管壁から管の内部へ内向きに突出する少なくとも1つの流体混合用静的構造体を含んでいる。これらの混合用構造体は、流体の混合を改善するために、当該分野で用いられている構造であり、熱伝達だけでなく反応に対しても重要である。これらの混合用構造体は、不規則パターンで配置することにより、管内の流体の混合挙動が向上する。混合によって、管内の流体の熱均一性は向上し、流体要素の壁に対する拡散距離は小さくなる。混合用静的構造体はまた、異なる2種類以上の流体の流れを混合するのに用いることができる。
【0049】
本発明はまた、異種の触媒を、マイクロマシンデバイスの様々な部分に含めることができることを示唆している。流体流通管の中間部の内部空間は、熱伝導性領域に収容されており、この中に触媒を含めることができる。触媒面積を大きくし、流体要素が触媒と接触するのに必要な拡散距離を少なくするために、前述のポスト又はそれと同等の構造体を、触媒支持用として用いることもできる。本発明のマイクロマシンデバイスはまた、流体システムで一般に用いられるその他の触媒用構造体を含めることができる。このような構造体として、例えば、多孔性の触媒支持体、短い間隔で配備されて粉末触媒をトラップするのに用いられるポスト、溶液から析出した触媒を局在化させることができるように設計された受動型流体ストップバルブを挙げることができる。なお、「短い間隔で配備されたポスト」において、その間隔は、保持されるべき触媒の粒子サイズよりも小さい。
【0050】
発明者らはまた、標準の湿式含浸技術を用いて、貴金属触媒を、本発明の流体流通管に導入することにも成功した。この方法では、貴金属の化合物(例えば、プラチナの場合、H2PtCl6)が水の中で溶解し、ウイックによる毛細管現象又はピペット採取によって流体流通管に入れられる。受動型ストップバルブは、触媒の析出領域を制御するために、触媒先駆体溶液に浸される管領域を求めるのに用いられる。水の蒸発中、金属化合物は、流体流通管の壁の少なくとも一部の領域で析出する。この固体は、当該分野で知られた要領にて、高温の水素を反応させることにより、純金属へ還元される。
【0051】
本発明の実施例をパッケージングするために多くの技術を購入した。ガラス封止技術を用いることを検討した。最も良い結果を得られたのは、基板とパッケージング層との間に望ましい接着層としてガラステープを用いた場合である。ガラステープは、高温での熱安定性にすぐれており、フレキシビリティをもたらす利点がある。
【0052】
本発明の代表的な適用例は、小システムで効率的に高温反応を行なうことができるように設計された気相化学反応器である。この種の気相反応器の適用例の1つとして、前述したように、ポータブル発電装置の燃料処理がある。
【0053】
本発明の一実施例では、気相化学反応器が、特にポータブル型燃料処理及び発電用として設計されており、図1(a)−図1(c)の中で符号(1)として示されている。この具体的実施例は、化学反応が行われる熱伝導性領域(2)を具えている。領域(2)の構成材料の熱伝導及びその構造体の幾何学的構造により、反応が行われたとき、領域(2)をほぼ略等温にすることができる。2つの別個の流体の流れが領域(2)を通過できるように、領域(2)は、2本の流体流通管(5)(6)によって基板(3)に接続される。流体は、各々の流体流通管(5)(6)の管軸線に沿って流れる。以下では、説明容易化のために、流体流通管(5)に焦点を当てて説明する。しかし、以下の説明では、管(6)についても等しく適用される。管(5)は略U字形であり、断熱性入口部(5b)、断熱性出口部(5a)及び中間部(5c)を有している。図1(a)に示すように、管(5)は周囲が矩形である。しかし、管(5)の断面形状は円形又はその他の閉じた形状であってもよいことは理解されるであろう。流体流通管(5)の入口部(5b)及び出口部(5a)は、上記の如く、熱回収のために、幾つかの熱伝導性構造体(7)によって熱的に接続される。流体流通管(5)の入口部(5b)は、熱伝導性構造体(7)を経て、流体流通管(5)の出口部(5a)に熱的に接続される。流体流通管(5)の出口部(5a)及び入口部(5b)は、基板(3)に連通しており、基板(3)のポート(4)を通してアクセスできる。流体は入口部(5b)に導かれるか、又は出口部(5a)から除去される。
【0054】
流体流通管(5)は、好ましくは後述する金型と離型技術を用いて、化学蒸着(CVD)された窒化シリコンから作られ、肉厚は0.1−3μmが好ましい。肉厚が非常に薄いと、管(5)に沿う熱エネルギーの伝導を抑制できる。熱伝導性構造体(7)及び熱伝導性領域(2)は、高い熱伝導性を有するシリコンから構成される。熱伝導性構造体(7)及び熱伝導性領域(2)の最小厚さ寸法は、20−200μmである。基板(3)から熱伝導領域(2)まで延びる流体流通管(5)の入口部(5b)の領域及び出口部(5a)の領域は、長さ3mmであり、入口部と出口部の間に、3〜14個の熱伝導性構造体が配備されている。この構造体を追加することによって熱回収が改善され、各構造体に限界効用(marginal utility)の低下が認められる。熱伝導性構造体(7)は幅50−500μm(流体流通管(5)の管軸と平行に測定したとき)であり、流体流通管(5)の入口部(5b)の領域と流体流通管(5)の出口部(5a)の領域を完全に取り囲む。熱伝導性領域(2)は長さ約2mmで、幅約1.6mmである。領域(2)の中では、流体流通管(5)の入口部(5b)と流体流通管(5)の出口部(5a)は、流体流通管(5)の中間部(5c)によって接続されている。ほぼU字形の部分が領域(2)の中に収容されており、中間部(5c)の中で発生した熱は、領域(2)の中及びその全体に伝達される。流体流通管(5)(6)、熱伝導性構造体(7)及び熱伝導性領域(2)は、伝導熱及び対流熱の周囲への熱損失が最少となるように、真空中でパッケージングされる。領域(2)はまた、管(5)と管(6)の中間部(5c)で熱を伝達する役割を有する。熱伝導性構造体(7)は、管(5)の入口部(5b)と出口部(5a)の間の熱回復(heat recuperation)に用いられる。
【0055】
図2は、図1(a)−図1(c)の如く構成された本発明の実施例を20倍に拡大した走査型電子顕微鏡写真である。このため、図2では、図1(a)−図1(c)で用いた各要素と同じ符号を用いている。抵抗ヒータトレース(9)は温度センサとしても供されるもので、構造体の中に組み込まれて、電気加熱(例えば、スタートアップ中)の他に、動作中の温度測定を行なう。抵抗ヒータトレース(9)は、熱伝導領域(2)の外面に配備され、熱伝導領域(2)を所望の動作温度にまで加熱する。抵抗ヒータトレース(9)は、複数の電気リード線(10)を有する。流体流通管(5)(6)の入口部(5b)(6b)とび流体流通管(5)(6)の出口部(5a)(6a)は、電気リード線(10)の下方に配備される。流体流通管(5)(6)の中間部(図示せず)は、熱伝導領域(2)の中に収容される。熱伝導性構造体(7)は、管(5)の入口部(5b)と出口部(5a)の間、及び、管(6)の入口部(6b)と出口部(6a)の間に設けられる。
【0056】
図3は、流体流通管(5)の走査型電子顕微鏡写真であり、流体流通管(5)の内部空間内にて、管壁に突設されたポスト(15)を示している。ポスト(15)は流体流通管の底壁(5f)と流体流通管の上壁(図示せず)の間に配備される。なお、ギャップによってポスト(15)から取り除かれた流体流通管の側壁(5e)も示されている。これらのポスト(15)は、流体流通管の1又は2以上の入口部、流体流通管の出口部、流体流通管の中間部に配備される。図3に示すポスト(15)の配置は単なる例示であって、本発明が企図するポストの構成を限定するものではない。
【0057】
また、図4(a)及び図4(b)に示されるポスト(15)の配置例についても、限定するものでないことは理解されるべきである。図4(a)は、本発明の一実施例を図示示しており、特に、ポスト(15)を配置できる位置として、流体流通管(5)の入口部(5b)の中に熱伝導性構造体(7)と共に示している。ポスト(15)は、熱伝導性構造体(7)の近傍にある流体から管(5)の壁への熱エネルギー伝導を向上させるのに有用であり、熱は、熱伝導性構造体(7)を通って、低温の領域に伝達される。このように、ポスト(15)と熱伝導性構造体(7)を組み合わせることは、管(5)の中間部(5c)からの熱損失の防止に寄与する。ポスト(15)は、流体流通管(5)の中間部(5c)の中にも配備される。中間部(5c)は熱伝導領域(2)の中に収容されている。
【0058】
図4(b)は、図4(a)の実施例の平面図である。図4(b)は、2つの流体流通管(5)(6)を示している。図4(b)に示す実施例もまた、管の中に触媒を付着(deposition)させるために、受動型流体バルブ(11)を有する。ストップバルブ(11)は流体流通管(5)内の流体の流れを制御するために用いられ、触媒は、触媒含有流体の蒸発によって流体流通管(5)の壁に付着する。
【0059】
本発明のデバイスは、図5(a)乃至図5(k)に示す方法に基づいて製造される。この方法の最初の数工程は、モールドとして供される構造体を提供し、該構造体の上に管を作る材料を付着させることを目的とする。モールドは、管を構成する構造だけでなく、埋設された排出ピットをも含んでいる。金型は、管への付着工程では材料がコートされず、後で、熱伝導性構造体及び熱伝導領域を構成するのに用いられる。排出ピットは、製造工程で重要である。排出ピットはモールド内のキャビティであり、管材料の付着中はアクセスできないが、化学エッチングによってモールドの一部を取り除くときにアクセスできる。本質的に、排出ピットは管モールドの側壁の厚さを決定し、モールドの側壁の一部は完全に取り除かれる一方、他の領域の側壁材料は残る。これについては後で説明する。
【0060】
次に、少なくとも2つの基板を用いる工程に焦点を当てて説明する。しかし、基板を1つだけ用いる場合を含め、モールド構造を提供するのに多くの方法が用いられる。この構造を得るために、パターニングされたものとパターニングされていない異なる厚さの基板層を3層以上積層する。ここで記載するのは、2層の基板を製造する工程であり、幾つかの変形例を有している。発明者らは、2層基板の製造工程を用いて、本発明のマイクロマシンデバイスの流体流通管を作るのに用いられる管モールド構造を形成するのに成功した。
【0061】
2層基板の製造工程は、薄い基板を用いることから始まる。基板に用いられる材料として、例えばSOI(silicon on insulator)ウエハとプレーンシリコンウエハを挙げることができる。SOIウエハは、その後の加工工程にて管の形状をより均一に構成することができ、プレーンシリコンウエハも同様である。基板(103)は、図5(a)−図5(c)に示すように、片側に比較的浅い穴のパターニングが施されている。基板(103)をパターニングするのに、乾性又は湿性のエッチング剤が用いられる。本発明の実施例では、シリコンをパターニングするのに、ディープ反応性イオンエッチ(DRIE)法が用いられる。
【0062】
次に、基板(103)は反対側からパターニングされ、最初の浅いパターン領域の全体がパターニングされる。このパターニングもまた、任意の乾性又は湿性エッチング剤を用いて行なうことができ、この例にもDRIE法を用いた。このパターニング工程は、最終のデバイス形状を定めるのに重要である。図5(d)及び図5(e)に示されるように、第1管モールド(135a)(135b)と第2管モールド(140a)(140b)の形状は、この工程で決定される。図5(e)は、図5(d)のデバイスを、位置I-I、II-II、III-III、及びIV-IVで切断した図である。説明を容易にするため、特に指定しない限り、管モールド(135a)(135b)についてのみ説明する。しかし、管モールド(135a)(135b)に関する説明は、管モールド(140a)(140b)に対しても等しく適用される。排出ピット(120)の幾何学形状もまた、この工程で決定される。管モールド(135a)(135b)の形状及びこれを取り囲む排出ピット(120)の形状によって、モールド壁の厚さが決まる。この厚さを変えることと、モールド壁(122)の部分を取り除くためのエッチング剤とによって、最終的なデバイス形状が決まる。例えば、図5(e)に示されるように、管モールドの位置II-IIの壁は、管モールドの位置III-IIIの壁よりも薄い。従って、両者が同じ時間、同じエッチング剤に暴露されると、位置III-IIIでは壁の一部が残るが、位置II-IIでは残らない。
【0063】
この第2のパターニング工程中にも、管壁から管の中へ延びる要素を設ける。図5(d)は、受動型流体ストップバルブを示しており、これは後の工程で、触媒付着作用を補助する。受動型流体ストップバルブは、前述のDRIE法を用いて形成される。
同様に、基板材料から作られたポストは、DRIE法を用いて、管モールド空間の全体にパターニングされる。ポストは触媒の表面積を増加させ、管の中央部の流体から管壁へ均一な熱分布の達成に寄与する。基板材料から作られた流体混合構造体もまた、DRIE法を用いて管モールド空間の全体に亘ってパターニングされる。これらの混合構造体は、流体の混合を改善することができ、熱伝達や反応に重要である。この方法は、工程全体に影響を与えることなく、殆ど全ての複雑なデバイスの幾何学形状に適用できるので、最適な設計を行なう上で重要である。
【0064】
管モールド及び排出ピットのパターニングの後、管モールド及び排出ピットは、図5(f)乃至図5(i)に示されるように、基板材料のルーフ(125)、即ち第4の壁で被覆される。図5(g)は、図5(f)のデバイスの位置I-I、II-II、III-III、及びIV-IVで切断した図であり、図5(i)は、図5(h)のデバイスの位置I-I、II-II、III-III、及びIV-IVで切断した図である。
また、前記と同様、管モールドの位置II-IIの壁は、管モールドの位置III-IIIの壁よりも薄い。従って、両者が同じ時間、同じエッチング剤に暴露されると、位置III-IIIでは壁の一部が残るが、位置II-IIでは残らない。層を覆うのに、幾つかの方法を用いることができる。厚い基板素材料ルーフ(125)を、当初基板(103)に接合し、次に、化学的に又は機械的マシニンにより、所望の厚さに薄肉化することができる。或いはまた、SOIウエハを薄いシリコンの側部を下にして接合することができる。この場合の埋設酸化物は、基板材料ルーフ(125)を化学的に薄肉化するために、エッチング停止機能を有しており、SOI層の当初厚さに相当する薄いルーフ層が残される。他の実施例において、所望の厚さを有する基板を、パターニングされた基板(103)に直接接合することができる。
【0065】
製造工程では、SOIウエハと同じように、厚さ20μmのシリコン被覆基板を用いた。重要なことは、被覆基板の厚さによって、図5(i)に示されるように、構造体(102)(107)の上壁の厚さが決まることである。図5(f)及び図5(g)は、基板材料ルーフ(125)として用いられるSOIウエハ(125)を薄くする前の工程を示しており、図5(h)及び図5(i)は、SOIウエハ(125)を薄くした後の工程を示している。
【0066】
被覆工程により、排出ピットが埋設された管モールド基板の製造が完了する。上記の如く、この製造は他の様々な方法によっても行なうことができる。モールド構造及び排出ピットを基板層を作るのに、例えば3層以上積層することができる。該構造はまた、犠牲層に電気メッキしたり、他のラピッドプロトタイピング法を用いて作成することもできる。
【0067】
図5(f)及び図5(g)に示すように、被覆工程の後、管材料(130)をモールドの露出面の上に付着させる。発明者らは、厚さ2μmのシリコンリッチ窒化シリコンフィルムを付着するのに、低圧CVD技術を用いた。他の管材料を成膜するのに、電気メッキ又は無電解メッキ、ゾルゲルを用いたセラミックの湿性沈着(wet deposition)、及び当業者に知られた他の工程が用いることができる。この工程の重要な特徴は、被覆工程中、排出ピット(120)は密封され、成膜工程中、露出させないことである。従って、管材料は、排出ピット(120)の内部では成膜されない。この後の工程で、一旦排出ピット(120)が露出すると、これらの排出ピット(120)を取り囲む基板(103)は選択的に除去されるが、管モールド(135a)(135b)の中に形成された管は原形のままである。この除去は、管材料ではなく、基板を選択的に除去する液相又は気相のエッチング剤を用いて行なうことができる。
【0068】
次の工程は、図5(h)及び図5(i)に示されるように、基板(103)の上面及び底面の領域の少なくとも一部にマスキング層をパターニングすることである。選択される被覆層が極薄の基板の場合、基板モールドの両側が、管材料で被覆される。このパターニングは、例えばフォトリソグラフィやエッチングを用いて行なうことができる。
SOIの被覆層が用いられる場合、シリコンは埋設酸化層まで薄肉化される。この場合、埋設酸化層がパターニングされる。厚いプレーン基板が用いられる場合、基板を薄肉化し、適切なマスキング層をマスキング面に成膜してパターニングしなければならない。これらのマスキング層は、デバイスのエッチング中、戦略領域(strategic areas)が除去されないように基板を保護する。
【0069】
この工程では、基板モールドの表面に他の材料を成膜しパターニングすることもできる。一例として、発明者らは、ヒーター及び抵抗性温度センサーとして利用するために、当該分野で既知の方法により、プラチナの薄膜に薄いチタン接着層を形成した。特に、電子ビーム蒸着による物理蒸着法を用いた。
【0070】
基板(103)の戦略領域が露出すると、基板は、所定時間エッチングが行われる間、基板用エッチング剤に露出する。図5(j)及び図5(k)は、露出した管の最終構造を示している。図5(k)は、図5(j)のデバイスの位置I-I、II-II、III-III、及びIV-IVで切断した図である。エッチングは、例えば時間の長さによって調節することができる。薄い基板の壁が完全に取り除かれると、基板には、マスキングされているか又は厚い壁の領域が残る。シリコン基板の場合、シリコンエッチング剤として、例えば、水酸化カリウム溶液、2フッ化キセノン、フッ素、硝酸/フッ化水素酸混合物などがあり、これらは良好な結果をもたらしている。2つの流体流通管(105)(106)を図示している。以下の説明では、便宜上、流体流通管(105)について説明するが、同じ説明は管(106)にも当てはまる。流体流通管は断熱入口部(105b)、断熱出口部(105a)及び中間部(105c)を有している。中間部(105c)の少なくとも一部は、少なくとも1つの受動型流体ストップバルブ(111)を含んでおり、熱伝導領域(102)の中に収容される。入口部(105b)と出口部(105a)は、熱伝導性構造体(107)と接触する。流体流通管(105)は基板(103)の中に収容され、入口部(105b)と出口部(105a)はポート(104)を経てアクセス可能である。
【0071】
触媒は、例えば、湿式含浸技術、CVD又はメッキなどの様々な方法によって、管の内部へ付着させることができる。
重要なことは、前述のDRIEエッチング法により、基板モールドのどの部分についても、管材料との一体状態が維持されるように作られることである。この方法により、熱伝導性構造体は、断熱管と一体化される。さらに、基板材料が、管材料の1又は2又は3又は4の全ての側部にとどまるように選択することができる。
【0072】
管と一体化された基板材料の厚さの制御は、上部/底部被覆層の厚さ並びに図5(d)及び図5(e)のパターンの厚さ及び形状を調節することによって行なうことができる。管の深さの制御は、5(d)及び図5(e)でパターニングされる基板の厚さを制御することにより、及び/又はエッチング深さを調節することによって行なうことができる。
【0073】
管と一体化された基板モールドの一部分を残すことを制御できるようにしたことは、従来と比べて実質的な改良である。これは、除去されるモールドの領域の当初モールド基板の中に、明確な排出ピットを含めることにより、また、最終のマイクロマシンデバイスの中に保持されるモールドの領域の中に、基板表面を所定パターンでマスキングすることによって達成することができる。図5(a)−図5(k)はマイクロマシンデバイスを対象としており、一体化構造を形成るためのモールドは、材料を除去した後にも残る構造であるが、このモールドの使用方法は、マイクロマシン以外の様々な用途にも有用である。
【0074】
図6(a)は、本発明の一実施例の平面図であり、真空パッケージ(12)、反射性コーティング(31)及び低放射率コーティング(32)の使用を示しており、その利点については前述の通りである。図6(b)は、図6(a)の実施例の側面図であり、デバイス層(1a)の上下にパッケージング層(33)を使用した例を示している。
【0075】
図7は、本発明の薄壁管の一実施例を示している。この実施例では、流体流通管(5)は略U字形状であり、入口部(5b)、出口部(5a)及び中間部(5c)を含んでいる。
【0076】
<実施例1>
図8(a)及び図8(b)は、本発明に基づいて作製された燃料燃焼用マイクロマシンデバイスにおいて、1つの流体流通管(205)における流体と熱の流れに関する有限要素シミュレーションの結果を示している。この特定のシミュレーションは、基板を86OF(30℃)に保持し、1652OF(900℃)の温度でブタン−空気の理論混合気を1ワット燃焼させたデバイスにおける熱交換をモデルにしたもので、管及び熱伝導性構造体の外表面からの損失を無視している。しかしながら、どんな可燃性燃料を用いてもよいことは留意されるべきである。流体の低温流れは、基板(203)から流体流通管(205)の入口部(205b)に入り、熱伝導領域(202)を出て行く流体によって予熱され、流体流通管の中間部(熱伝導領域(202)の中に収容される)の中で燃焼し、流体流通管(205)の出口部(205a)を経由して基板(203)へ戻される。これらのシミュレーションでは、熱伝導性領域から出た高温流れの50〜70%の熱を、この構造によって回収することができ、回収された熱は、流体流通管(205)の長さ3mmの熱回収部を越えて入ってくる流れを予熱するのに用いられる。計算結果によれば、管を通る伝導損失は、熱伝導性領域の運転温度が1652OF(900℃)のとき、約0.1Wである。
【0077】
<実施例2>
アンモニア分解装置について、熱伝導性領域の挙動を理論的に分析した。この分析結果は図9に示されている。このシステムでは、アンモニアの吸熱分解反応を行なうために、熱伝導性領域の中を高温にするエネルギーを供給するのに、燃料電池アノードの水素燃焼を使用するものと仮定した。また、アンモニアを1652OF(900℃)の温度で30sccm分解するのに十分な触媒が存在しているものと仮定した。アンモニアの分解温度を高くし、アンモニア流量を増やしたいという要請に応えるために、熱伝導性領域の温度を変えた。低電力運転での伝導熱損失、並びに電力量及びアンモニア流量が多いときの排気熱の復熱不足が重大さを増すにつれて、デバイスの動作温度を最適にすることが期待されている。
【0078】
<実施例3>
図10(a)は、ポータブル発電装置用として、本発明の前記気相反応器を用いる具体的方法の1つを示しており、流体反応物質が流体生成物に熱分解される例である。この実施例では、流体反応物質はアンモニアガスであり、流体生成物は、燃料電池で用いられる水素と窒素である。水素は、多くの燃料電池システムにおいて好ましい燃料である。しかしながら、水素は、貯蔵と移送が困難であり、危険である。この方法では、移送するのはアンモニアであり、エネルギー貯蔵密度が向上する。
【0079】
アンモニア分解法では、アンモニアガスを、流体流通管(5)の中間部(5c)へ運ぶのに、流体流通管(5)の断熱入口部(5b)を用いる。中間部(5c)は、シリコンその他の高熱伝導性材料から構成される熱伝導性領域(2)の中に収容される。熱伝導性領域(2)は、高温に維持され、アンモニアガスを熱分解させることができる(おそらく、中間部(5c)の触媒による補助作用がある)。熱伝導性領域(2)を構成する材料は、領域(2)が、図10(a)のデバイスの運転中、実質的に等温となるように選択される。アンモニアの分解生成物の窒素と水素は、流体流通管(5)の断熱出口部(5a)を通って基板(3)に運ばれ、ここで燃料電池(図示せず)に送られる。燃料電池で消費されない水素は、空気と共に、第2の流体流通管(6)の入口部(6b)を通って、第2の流体流通管(6)の中間部(6c)に供給される。
図10(a)に示されるように、第2の流体流通管は、中間部(5c)(6c)が隣接するように熱伝導性領域(2)の中に収容される。第2の流体流通管(6)を通って供給される水素は、中間部(6c)の中で空気(おそらく触媒による補助作用がある)と反応し、水と熱が生成される。水素の燃焼によって発生した熱を利用して、熱伝導性領域(2)は高温状態に維持され、アンモニアの分解によって吸収されたエネルギーを供給し、さらなる水素を発生させて、燃料電池に供される。
【0080】
<実施例4>
図10(b)は、ポータブル発電装置に用いられる本発明の実施例を示しており、図10(a)の実施例とは、メタノールの水蒸気改質を行なう点が異なる。実施例3のアンモニア分解の場合と同様、所望の生成物は水素である。システム設計は、アンモニア分解の場合とほぼ同様であるが、1:1のメタノール−水混合物の反応物質から、流体生成物として、水素と二酸化炭素が供給される。燃料電池で消費されなかった水素の一部は、空気と共に、熱伝導性領域(2)の高温状態を維持するために用いられ、反応のための熱を供給する。
【0081】
<実施例5>
図10(c)は、1本の流体流通管を用いた本発明の実施例で行われるブタンの部分酸化を示している。ブタンの部分酸化により、水素と一酸化炭素が生成する。生成物は次に燃料電池へ運ばれて使用される。
【0082】
<実施例6>
図10(d)は、ポータブル発電装置において、前記デバイスを用いて電気を作り出す他の方法を示しており、デバイス内では、空気とブタンの発熱反応が行われる。図10(d)に示す実施例は、熱電素子(28)を使用している。ブタンと空気の混合物は燃焼して、水と二酸化炭素が生成する。
【0083】
<実施例7>
本発明のマイクロマシンデバイスの重要な特徴は、高温反応を、その環境と断熱して行なうことができる点にある。本発明の反応器/熱交換器は、図10(a)−(d)の熱伝導性領域及び熱伝達管構造によって示されており、真空下で適切にパッケージングされると、環境へ放出される熱はほんの少量にすぎない。真空パッケージングの重要性に鑑み、必要な真空度を調べるために、一連のテストを実施した。このテストは、既知電圧を抵抗ヒータに印加して、熱伝導性領域を様々な雰囲気圧力で加熱する試験である。使用したデバイスは図13(a)に示されている。ヒータに沿って電流を測定し、ヒータの抵抗を計算によって求めた。抵抗は、反応器の温度の関数であるので、温度を推定することができる。これらのテストによって、図10(a)−(d)に示されるように、反応器/熱交換器の伝熱特性が明らかになっている。
【0084】
図11は試験結果をまとめたものである。約40mTorrより下では、反応器の温度に対する雰囲気圧力の影響は殆どなく、システムの定常状態の熱損失への影響は殆どなかった。しかしながら、40mTorrを越えると、雰囲気圧力が高くなると、大気への熱損失が増える結果となった。図11は、真空パッケージングが本発明に重要な役割を果たすことを示している。
【0085】
<実施例8>
図12(a)及び図12(b)は、内壁(305g)(306g)にインジウム触媒が成膜された流体流通管(305)(306)を示している。触媒の成膜は、前述の技術を用いた。これらの図の中に、熱伝導性構造体(307)も示されている。これらの図は、触媒が管の内側に有効に成膜されていることを示している。
【0086】
図12(c)は、アンモニアの流量4sccmで実施したテストの試験結果を示している。グラフでは、水素、窒素及びアンモニアについて、四重極質量分析計(QMS)からの信号が時系列をプロットしている。集積ヒータの電圧は時間経過によって増加し、反応温度が上昇した。グラフでは、ヒータの電圧が大きくなる(温度の上昇に相当)と、アンモニア(NH3曲線で示される)から、水素及び窒素(H2及びN2曲線で示される)への変換が増加することを示している。最も高い電圧設定では、アンモニアの変換は約35%である。これを換算すると、約2sccmのH2が生成されたことになる。最も高い電圧での推定温度は、約1832OF(1000℃)である。
【0087】
<実施例9>
図13(a)及び図13(b)は、マイクロマシンデバイス(1)の像を示している。図13(a)は、デバイス(1)の完成品の室温での像を示している。吊された熱伝導性領域(2)は自立しており、管(5)(6)は、熱膨張による応力をできるだけ少なくするためにU字形である。図13(b)に示すデバイスは、熱伝導性領域(2)が、抵抗ヒータトレース(9)を用いて、約1832OF(1000℃)まで加熱されている。なお、抵抗ヒータトレース(9)は、熱伝導性領域(2)の温度検出のための温度センサーとしても用いられる。熱伝導性領域(2)を雰囲気空気中で1832OF(1000℃)まで昇温させるのに必要な電力量は1.4Wである。
この試験は、温度勾配に対する装置(1)の挙動を調べるものである。熱伝導性領域(2)だけが昇温し、隣接する流体流通管(5)(6)は実質的に降温する。周囲の基板(3)は、本質的に常温状態であり、これは、基板(3)に配置された基準温度センサー(26)を測定することによって確認される。これらの結果に示されるように、熱伝導性領域(2)は、燃料処理及び基板の温度勾配を確保するのに必要とされる断熱レベルに達している。基板に温度勾配を要求されるのは、単一のマイクロマシンデバイスにおいて、検出部、計算部、動作部及び発電部を共同配置するためである。
【0088】
ここでの説明は、発明の理解を明瞭にするという観点に基づいてなされたものであることは理解されるべきである。当該分野の専門家にとって発明の目的は明らかであろうから、発明の理解を高めると思われななかった事項については、説明を簡素化するために記載していない。
本発明を具体的実施例に関連して説明したが、当該分野の専門家であれば、前記説明に基づいて、多くの変形をなし得るであろう。発明のそのような変形は、前記説明及び特許請求の範囲に含まれるものと解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1(a)】流体処理用として、本発明に基づいて構成されたマイクロマシンデバイスの一実施例の略説明図である。
【図1(b)】図1(a)の実施例の側面図である。
【図1(c)】図1(a)の実施例の平面図である。
【図2】流体処理用として、本発明に基づいて構成されたマイクロマシンデバイスの一実施例を約20倍に拡大して示す走査電子顕微鏡写真である。
【図3】流体処理用として、本発明に基づいて構成されたマイクロマシンデバイスの一実施例を約100倍に拡大して示す走査電子顕微鏡写真であって、特に、本発明のポストを示している。
【図4(a)】ポストを有する本発明の一実施例の略説明図である。
【図4(b)】図4(a)の実施例に受動型流体ストップバルブをさらに含む実施例の平面図である。
【図5(a)】本発明に基づいて構成されるマイクロマシンデバイスの製造プロセスの一工程を説明する図である。
【図5(b)】本発明に基づいて構成されるマイクロマシンデバイスの製造プロセスの一工程を説明する図である。
【図5(c)】本発明に基づいて構成されるマイクロマシンデバイスの製造プロセスの一工程を説明する図である。
【図5(d)】本発明に基づいて構成されるマイクロマシンデバイスの製造プロセスの一工程を説明する図である。
【図5(e)】本発明に基づいて構成されるマイクロマシンデバイスの製造プロセスの一工程を説明する図である。
【図5(f)】本発明に基づいて構成されるマイクロマシンデバイスの製造プロセスの一工程を説明する図である。
【図5(g)】本発明に基づいて構成されるマイクロマシンデバイスの製造プロセスの一工程を説明する図である。
【図5(h)】本発明に基づいて構成されるマイクロマシンデバイスの製造プロセスの一工程を説明する図である。
【図5(i)】本発明に基づいて構成されるマイクロマシンデバイスの製造プロセスの一工程を説明する図である。
【図5(j)】本発明に基づいて構成されるマイクロマシンデバイスの製造プロセスの一工程を説明する図である。
【図5(k)】本発明に基づいて構成されるマイクロマシンデバイスの製造プロセスの一工程を説明する図である。
【図6(a)】真空パッケージング、反射コーティング及び低放射率コーティングを用いた本発明の一実施例の平面図である。
【図6(b)】図13(a)の実施例にパッケージング層をさらに用いた実施例の側面図である。
【図7】略U字形の薄壁を具える本発明の管の一実施例を示す図である。
【図8(a)】本発明に基づいて構成される流体処理用マイクロマシンデバイスの実施例において、流体流通管の入口部及び出口部の流体及び熱の流れについて有限要素シミュレーションの結果を示す図である。
【図8(b)】本発明に基づいて構成される流体処理用マイクロマシンデバイスの実施例において、流体流通管の入口部及び出口部の流体及び熱の流れについて有限要素シミュレーションの結果を示す図である。
【図9】本発明に基づいて構成され、公知のプロトン交換膜(PEM)型燃料電池システムを含むマイクロマシンデバイスについて、シミュレートしたアンモニア分解装置及びシステムの効率をシステム電力の関数として示すグラフである。
【図10(a)】本発明に基づいて構成されたマイクロマシンデバイスで行われるアンモニア分解プロセスの説明図である。
【図10(b)】本発明に基づいて構成されたマイクロマシンデバイスで行われるメタノール改質プロセスの説明図である。
【図10(c)】本発明に基づいて構成されたマイクロマシンデバイスで行われるブタンの部分酸化プロセスの説明図である。
【図10(d)】本発明に基づいて構成されたマイクロマシンデバイスで行われる熱電発電プロセスの説明図である。
【図11】マイクロマシンデバイスの抵抗ヒータに異なる3種類の電圧を印加し、抵抗を雰囲気圧力の関数として示すグラフである。
【図12(a)】本発明に基づいて構成されるマイクロマシンデバイスの一実施例の流体流通管に含浸したイリジウム触媒を、約20倍に拡大して示す反射型光学顕微鏡写真である。
【図12(b)】本発明に基づいて構成されるマイクロマシンデバイスの一実施例の流体流通管に含浸したイリジウム触媒を、約50倍に拡大して示す反射型光学顕微鏡写真である。
【図12(c)】本発明に基づいて構成されるマイクロマシンデバイスの熱伝導性領域において、イリジウム触媒のアンモニア分解に対して、アンモニア流量が4sccm(1分当たりの標準立方センチメートル)のとき、四重極質量分析計(QMS)の時間経過による信号強度の変化を示すグラフである。
【図13(a)】流体処理用として、本発明に基づいて構成されたマイクロマシンデバイスの写真である。
【図13(b)】図13(a)の一実施例であって、熱伝導領域が約1832OF(1000℃)の温度に加熱されたときの像を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1の流体の流れを熱的処理するマイクロマシンデバイスであって、少なくとも1つの流体流通管を具え、該流体流通管の少なくとも一部の領域は、壁の肉厚が50μmよりも小さいマイクロマシンデバイス。
【請求項2】
流体流通管は、入口部と、出口部と、入口部及び出口部の中間に中間部を有している請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項3】
流体流通管は窒化シリコンから形成される請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項4】
流体流通管の少なくとも一部の領域は、壁の肉厚が5μmよりも小さい請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項5】
流体流通管の少なくとも一部の領域は、壁の肉厚が0.1〜3μmである請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項6】
マイクロマシンデバイスは、流体流通管の中に流体を導入する入口部を少なくとも1つ有している請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項7】
マイクロマシンデバイスは、流体流通管からの流体を案内する出口部を少なくとも1つ有している請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項8】
流体流通管は応力除去可能な形状である請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項9】
流体流通管は略U字形である請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項10】
少なくとも1つのポストを具え、該ポストは流体流通管の中に配備される請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項11】
ポストは触媒を含んでいる請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項12】
少なくとも1つの流体混合用静的構造体を具え、該構造体は流体流通管の中に配備される請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項13】
少なくとも1つの受動型流体ストップバルブを具え、該バルブは流体流通管の中に配備される請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項14】
基板をさらに含んでおり、流体流通管は、前記基板の中に配備された入口部及び出口部の1又は2以上の領域を含んでいる請求項2のマイクロマシンデバイス。
【請求項15】
触媒を具え、該触媒は流体流通管の中に配備される請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項16】
触媒を具え、該触媒は流体流通管の中間部の中に配備される請求項2のマイクロマシンデバイス。
【請求項17】
センサーをさらに具えている請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項18】
アクチュエータをさらに具えている請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項19】
密閉されたキャビティを構成する基板をさらに含んでおり、流体流通管の実体的部分は、密封されたキャビティの内部に配備されている請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項20】
熱電装置をさらに具えている請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項21】
マイクロマシンデバイスは熱光起電力装置の構成要素である請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項22】
マイクロマシンデバイスは、携帯型発電装置の構成要素である請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項23】
マイクロマシンデバイスは冷蔵装置である請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項24】
少なくとも1の流体の流れを処理するマイクロマシンデバイスであって、少なくとも1つの流体流通管と、流体流通管の第1断熱部及び流体流通管の第2断熱部と熱伝達可能な少なくとも1つの熱伝導性構造体とを具えているマイクロマシンデバイス。
【請求項25】
流体流通管の第1断熱部は入口部であり、流体流通管の第2断熱部は出口部である請求項24のマイクロマシンデバイス。
【請求項26】
熱伝導性構造体はシリコンを含んでいる請求項24のマイクロマシンデバイス。
【請求項27】
流体流通管の少なくとも一部の領域は、壁の肉厚が50μmよりも小さい請求項24のマイクロマシンデバイス。
【請求項28】
流体流通管の少なくとも一部の領域は、壁の肉厚が5μmよりも小さい請求項24のマイクロマシンデバイス。
【請求項29】
流体流通管の少なくとも一部の領域は、壁の肉厚が0.1〜3μmである請求項24のマイクロマシンデバイス。
【請求項30】
少なくとも1つのポストを具え、該ポストは流体流通管の中に配備される請求項24のマイクロマシンデバイス。
【請求項31】
流体流通管は応力除去可能な形状である請求項24のマイクロマシンデバイス。
【請求項32】
触媒を具え、該触媒は流体流通管の中に配備される請求項24のマイクロマシンデバイス。
【請求項33】
密閉されたキャビティを構成する基板をさらに含んでおり、該基板の中に、入口部の少なくとも一部の領域と出口部の少なくとも一部の領域が配備され、流体流通管の実体的部分は、密封されたキャビティの内部に配備される請求項25のマイクロマシンデバイス
【請求項34】
2以上の流体の流れを処理するマイクロマシンデバイスであって、第1の流体流通管と、第2の流体流通管と、第1流体流通管の断熱部及び第2流体流通管の断熱部と熱伝達可能な少なくとも1つの熱伝導性構造体とを具えているマイクロマシンデバイス。
【請求項35】
第1流体流通管及び第2流体流通管の少なくとも1つの少なくとも一部の領域は、壁の肉厚が50μmよりも小さい請求項34のマイクロマシンデバイス。
【請求項36】
第1流体流通管及び第2流体流通管の少なくとも1つの少なくとも一部の領域は、壁の肉厚が5μmよりも小さい請求項34のマイクロマシンデバイス。
【請求項37】
第1流体流通管及び第2流体流通管の少なくとも1つの少なくとも一部の領域は、壁の肉厚が0.1〜3μmである請求項34のマイクロマシンデバイス。
【請求項38】
少なくとも1の流体の流れを処理するマイクロマシンデバイスであって、熱伝導性領域と、少なくとも1つの断熱部を有する少なくとも1つの流体流通管とを具えており、該流体流通管の少なくとも一部分は、熱伝導性領域の中に配備されているマイクロマシンデバイス。
【請求項39】
少なくとも1つのポストを具え、該ポストは熱伝導性領域の中に配備された流体流通管の前記部分の中に配備されている請求項38のマイクロマシンデバイス。
【請求項40】
ポストは熱伝導性である請求項39のマイクロマシンデバイス。
【請求項41】
熱伝導性領域は、マイクロマシンデバイスの運転中、実質的に等温である請求項38のマイクロマシンデバイス。
【請求項42】
熱伝導性領域はシリコンを含んでいる請求項38のマイクロマシンデバイス。
【請求項43】
熱伝導性領域の中に配備された流体流通管の前記部分は、熱伝導性領域の中に収容される請求項38のマイクロマシンデバイス。
【請求項44】
第1流体流通管及び第2流体流通管の少なくとも1つの少なくとも一部の領域は、壁の肉厚が50μmよりも小さい請求項38のマイクロマシンデバイス。
【請求項45】
第1流体流通管及び第2流体流通管の少なくとも1つの少なくとも一部の領域は、壁の肉厚が0.5μmよりも小さい請求項38のマイクロマシンデバイス。
【請求項46】
第1流体流通管及び第2流体流通管の少なくとも1つの少なくとも一部の領域は、壁の肉厚が0.1〜3μmである請求項38のマイクロマシンデバイス。
【請求項47】
少なくとも1つのポストを具え、該ポストは少なくとも1つの流体流通管の中に配備される請求項38のマイクロマシンデバイス。
【請求項48】
少なくとも1の流体の流れを処理する方法であって、
断熱入口部及び断熱出口部を有する少なくとも1つの流体流通管と、前記入口部及び出口部と熱伝達可能な少なくとも1つの熱伝導性構造体とを具えるマイクロマシンデバイスを配備し、
少なくとも1の流体の流れを、流体流通管の入口部に導入し、
流体流通管内の流体の流れを処理し、
熱伝導性構造体を通して、入口部と出口部の間で熱エネルギーを伝達する、
工程を含んでいる方法。
【請求項49】
マイクロマシンデバイスは熱伝導性領域をさらに具えており、該熱伝導性領域の中に流体流通管の少なくとも一部が配備される請求項48の方法。
【請求項50】
少なくとも1の流体が流体流通管の中で反応して、2種以上の反応生成物を生成し、流体はアンモニアを含んでおり、流体の反応生成物は水素と窒素を含んでいる請求項48の方法。
【請求項51】
2以上の流体が流体流通管の中で反応して、2種以上の反応生成物を生成し、流体はメタノールと水を含んでおり、流体の反応生成物は二酸化炭素と水素を含んでいる請求項48の方法。
【請求項52】
2以上の流体が流体流通管の中で反応して、2種以上の反応生成物を生成し、流体は空気とブタンを含んでおり、流体の反応生成物は水と二酸化炭素を含んでいる請求項48の方法。
【請求項53】
2以上の流体が流体流通管の中で反応して、2種以上の反応生成物を生成し、流体は空気とブタンを含んでおり、流体の反応生成物は水素と一酸化炭素を含んでいる請求項48の方法。
【請求項54】
入口部及び出口部を有する第2の流体流通管を配備し、該流体流通管の少なくとも一部分を熱伝導性領域の中に配備し、
流体の反応生成物の少なくとも一部を、流体流通管の出口部から燃料電池へ移動させ、
燃料電池から出た流体の少なくとも一部を、第2流体流通管の入口部に移動させ、
燃料電池から出た流体の一部を第2の流体流通管の中で反応させ、熱エネルギーを生成して、熱伝導性領域を加熱する、工程をさらに含んでいる請求項49の方法。
【請求項55】
流体流通管の少なくとも一部の領域の中に触媒を配備する工程をさらに含んでいる請求項48の方法。
【請求項56】
少なくとも1つの流体流通管と、該流体流通管の第1断熱部及び第2断熱部と熱伝達可能な少なくとも1つの熱伝導性構造体とを有するマイクロマシンデバイスと、
前記流体流通管と流体の流通が可能な燃料電池と、
を具えているポータブル型電力発生装置。
【請求項57】
電力を発生させる方法であって、
少なくとも1つの流体流通管と、該流体流通管の第1断熱部及び流体流通管の第2断熱部と熱伝達可能な少なくとも1つの熱伝導性構造体を具えるマイクロマシンデバイスを配備し、
流体流通管と流体が流通可能となるように、燃料電池を配備し、
流体流通管の中で燃料を生成し、
生成した燃料を燃料電池へ送給する、工程を含んでいる方法。
【請求項58】
燃料は水素を含んでいる請求項57の方法。
【請求項59】
燃料を生成する工程は、少なくとも1の流体の流れを流体流通管の中で反応させて、2種以上の反応生成物を生成し、流体はアンモニアを含んでおり、流体の反応生成物は水素と窒素を含んでいる請求項57の方法。
【請求項60】
燃料を生成する工程は、2種以上の流体の流れを流体流通管の中で反応させて、2種以上の反応生成物を生成し、流体はメタノールと水を含んでおり、流体の反応生成物は二酸化炭素と水素を含んでいる請求項57の方法。
【請求項61】
燃料を生成する工程は、2種以上の流体の流れを流体流通管の中で反応させて、2種以上の反応生成物を生成し、流体は空気とブタンを含んでおり、流体の反応生成物は水素と一酸化炭素を含んでいる請求項57の方法。
【請求項62】
少なくとも1の流体の流れを処理するデバイスを製造する方法であって、
基板をパターニングして、環境にアクセス可能な壁を有する少なくとも1つの管モールドと、環境にアクセスできない少なくとも1つの放出ピットとを形成し、
管モールドの壁に薄膜のコーティングを形成し、
化学エッチング剤を用いて、基板の選択された領域を取り除いて、少なくとも1つの流体流通管を形成する、工程を含んでいる方法。
【請求項63】
管モールドの壁に形成された薄膜の厚さを調節することにより、流体流通管の少なくとも一部の領域の厚さを決めることを含んでいる請求項62の方法。
【請求項64】
少なくとも1つの開口端部が基板の中に設けられた流体流通管を配備することを含んでいる請求項62の方法。
【請求項65】
エッチングにより、基板には、流体流通管と熱伝達可能な不連続部が残される請求項62の方法。
【請求項66】
基板の選択された領域を取り除くことにより、基板に少なくとも1つの熱伝導性構造体が形成され、熱伝導性構造体は、流体流通管の第1断熱部及び流体流通管の第2断熱部と熱伝達可能である請求項62の方法。
【請求項67】
基板の選択された領域を取り除くことにより、基板に少なくとも1つの熱伝導性構造体が形成され、熱伝導性構造体は、第1流体流通管の断熱部及び第2流体流通管の断熱部と熱伝達可能である請求項62の方法。
【請求項68】
流体流通管の一部分は、基板のエッチングされていない熱伝導性部分に残されたままである請求項62の方法。
【請求項69】
デバイスは流体流通管の中に設けられたポストを含んでいる請求項62の方法。
【請求項70】
ポストは基板材料から構成される請求項62の方法。
【請求項71】
基板をパターニングすることにより、管モールドの中に、流体流通管の流体混合用静的構造体が形成される請求項62の方法。
【請求項72】
基板をパターニングすることにより、管モールドの中に、流体流通管の受動型流体ストップバルブとなる構造体が形成される請求項62の方法。
【請求項73】
流体流通管は、1つの管が2以上の管に接続される連結部を少なくとも1つ具えている請求項1のマイクロマシンデバイス。
【請求項74】
ポストは熱伝導性である請求項30のマイクロマシンデバイス。
【請求項75】
燃料は水素と一酸化炭素を含んでいる請求項57の方法。

【図9】
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【図11】
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【図12(c)】
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【公表番号】特表2004−537425(P2004−537425A)
【公表日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−518722(P2003−518722)
【出願日】平成14年7月23日(2002.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2002/023305
【国際公開番号】WO2003/013729
【国際公開日】平成15年2月20日(2003.2.20)
【出願人】(591013573)マサチューセッツ・インスティチュート・オブ・テクノロジー (26)
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【Fターム(参考)】