説明

熱収縮性積層フィルム、並びに該フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル及び該成形品又は熱収縮性ラベルを装着した容器

【課題】 フィルムの低温収縮性、収縮仕上がり性、透明性に優れ、かつ再生添加しても良好な透明性を維持できる収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルム、及び該フィルムからなる熱収縮性ラベルが装着されたプラスチック製容器の提供。
【解決手段】 (I)層と(II)層との少なくとも2層からなる積層フィルムを少なくとも一方向に延伸してなる熱収縮性フィルムであって、(I)層をポリ乳酸系樹脂、(II)層を融点が90℃以上130℃以下でプロピレン単量体単位の含有率が80質量%以上99質量%以下のポリプロピレン系樹脂をそれぞれ主成分として構成し、80℃の温水中で10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率が20%以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂とを用いた熱収縮性積層フィルム、並びに該フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル及び該成形品又は該熱収縮ラベルを装着した容器に関する。より詳しくは、本発明は、優れた熱収縮特性、透明性、収縮仕上がり性を有し、かつフィルムの耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル可能な樹脂を添加(以下、「再生添加」という。)可能な収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルム、並びに該フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル、及び該成形品又は熱収縮性ラベルを装着した容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ジュース等の清涼飲料、ビール等のアルコール飲料等は、瓶、ペットボトル等の容器に充填された状態で販売されている。その際、他商品との差異化や商品の視認性を向上させる目的で、容器の外側に印刷を施した熱収縮性ラベルを装着させることがある。この熱収縮性ラベルの素材としては、従来、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン等が用いられていた。
【0003】
ポリエステル系熱収縮性フィルムは、室温において腰(常温での剛性)があり、低温収縮性を有し、かつ自然収縮性が非常に良好であるため、前記の用途に対して好適に使用されている。しかしながら、ポリエステル系熱収縮フィルムは、ポリ塩化ビニル系熱収縮性フィルムと比較すると加熱収縮時に収縮斑やしわが発生しやすいという問題があった。
【0004】
また、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂を主たる材料とするポリオレフィン系熱収縮フィルムも開発されているが、収縮時の斑やシワは発生しにくいものの、十分な低温熱収縮性が得られない、自然収縮性が劣る、ペットボトルラベルとして使用するに当たっての筒状製袋を行う際の有機溶剤シールが困難である、などの問題があった。
【0005】
上記ポリオレフィン系熱収縮性フィルムにおける課題を解決する目的で、ポリオレフィン樹脂を芯層とし、その両面に接着樹脂層を介してポリエステル系樹脂を積層した熱収縮性フィルムが報告されている(特許文献1参照)。しかしながら、この熱収縮性フィルムは両面層のポリエステル系樹脂と芯層のポリオレフィン樹脂との相溶性が劣るため、再生添加した際にフィルム全体の透明性が極端に低下してしまうという問題があった。
【0006】
一方、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする層とポリ乳酸系樹脂を主成分とする層を有する収縮シートも報告されている(特許文献2参照)。しかし、この収縮シートはコンビニエンスストアなどで販売される弁当、惣菜などの収縮包装用フィルムを目的として、インフレーション法により作製されたものであり、低温高収縮性が要求される熱収縮性ラベル用途として用いた場合、十分な低温収縮性を得ることはできないという問題があった。さらに、この収縮シートはポリ乳酸系樹脂層を芯材とし、ポリオレフィン系樹脂層を両外層に有する積層シートであるため、筒状シール製袋を行う場合、シール性や耐溶剤性に劣り、熱収縮性ラベル用途には不向きであるという問題があった。さらに、この収縮シートを再生添加した場合、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸系樹脂との界面で光散乱が起こるため、フィルムの透明性が低下し、良好な透明性が得られないという課題もあった。
【特許文献1】特開2002−347184号公報
【特許文献2】特開2002−019053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、本発明の課題は、優れた熱収縮特性、透明性、収縮仕上がり性を有し、かつ再生添加しても良好な透明性を維持できる収縮包装、収縮拘束包装、収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムを提供することにある。
【0008】
本発明のもう一つの課題は、収縮包装、収縮結束包装、収縮ラベル等の用途に適した前記フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル、及び該成形品又は熱収縮性ラベルを装着した容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決すべく、ポリ乳酸系樹脂層とポリオレフィン系樹脂層とを有する積層フィルムにおいて、ポリオレフィン系樹脂層にポリ乳酸系樹脂をブレンドした場合においても良好な透明性を維持できる系につき、鋭意検討した結果、特定のポリオレフィン系樹脂にポリ乳酸系樹脂をブレンドした場合に良好な透明性が維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の課題は、ポリ乳酸系樹脂を主成分としてなる(I)層と、融点が90℃以上130℃以下でプロピレン単量体単位の含有率が80質量%以上99質量%以下のポリプロピレン系樹脂を主成分としてなる(II)層との少なくとも2層からなる積層フィルムを少なくとも一方向に延伸してなる熱収縮性フィルムであって、各層が下記樹脂を主成分としてなり、80℃の温水中で10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率が20%以上であることを特徴とする熱収縮性積層フィルム(以下「本発明のフィルム」ともいう。)によって解決される。
【0011】
本発明のフィルムは、(II)層が前記ポリプロピレン樹脂100質量部に対して3質量部以上30質量部以下のポリ乳酸系樹脂を含有する層であることが好ましい。
【0012】
また本発明のフィルは、前記ポリ乳酸系樹脂としてD−乳酸及びL−乳酸の共重合体からなる樹脂であって、D−乳酸とL−乳酸の構成がD−乳酸/L−乳酸=0.2/99.8〜25/75、又は75/25〜99.8/0.2であるポリ乳酸系樹脂を用いることが好ましい。
【0013】
また本発明のフィルムは、(I)層と(II)層との間に、少なくとも一層の接着性樹脂を主成分とする(III)層を有することもできる。
【0014】
また本発明のフィルムは、JIS K7105に準拠したヘーズ値が10%以下であることが好ましい。
【0015】
また本発明のフィルムは、雰囲気温度0℃、引張速度100mm/分の条件下で測定される主収縮方向に直交する方向の引張破断伸度が100%以上500%以下であることが好ましい。
【0016】
本発明のもう一つの課題は、前記収縮性フィルムを基材として用いた成形品、熱収縮性ラベル、及び該成形品又は該熱収縮性ラベルを装着した容器により解決される。
【発明の効果】
【0017】
本発明のフィルムは、(I)層としてポリ乳酸系樹脂を主成分とする層、(II)層として特定の融点及び特定のプロピレン単量体単位からなるポリオレフィン系樹脂を主成分とする層を有する。そのため本発明であれば、優れた熱収縮特性及び収縮仕上がり性を有し、かつ再生添加した場合にも優れた透明性を維持可能な収縮包装、収縮拘束包装、収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムを提供することができる。
【0018】
さらに、本発明によれば、優れた収縮仕上がり性と優れた透明性を有する収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した成形品、熱収縮性ラベルを提供することができる。さらに、本発明によれば、装着物の形状にかかわらず所望の位置に密着固定させることができ、皺、アバタの発生、収縮不十分等の異常がなく、透明で綺麗な外観を呈した前記成形品又は熱収縮性ラベルを装着した容器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、発明のフィルム、本発明のフィルムを基材として用いた成形品、熱収縮性ラベル、及び該成形品又は熱収縮性ラベルを装着した容器(以下、順に「本発明の成形品」「本発明のラベル」及び「本発明の成形品」ともいう。)について詳細に説明する。
【0020】
なお、本明細書において、「主成分とする」とは、各層を構成する樹脂の作用・効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。さらに、この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、各層の構成成分全体の70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下の範囲を占める成分である。
【0021】
また、本明細書において「主収縮方向」とは、フィルムの縦方向(長手方向)とフィルムの横方向(幅方向)のうち熱収縮率の大きい方向を意味し、例えば、ボトルに装着する場合にはその外周方向に相当する方向を意味し、「直交方向」とは主収縮方向と直交する方向を意味する。
【0022】
[熱収縮性積層フィルム]
本発明のフィルムは、ポリ乳酸系樹脂を主成分とする(I)層と、融点が90℃以上130℃以下でプロピレン単量体単位の含有率が80質量%以上99質量%以下のポリプロピレン系樹脂を主成分とする(II)層の少なくとも2層からなる積層フィルムを少なくとも一方向に延伸してなる熱収縮性フィルムである。
【0023】
<(I)層>
本発明において、(I)層はポリ乳酸系樹脂(以下「PLA」という。)を主成分として構成される。(I)層で使用可能なPLAは、D−乳酸若しくはL−乳酸の単独重合体、又はそれらの共重合体であり、これらの混合物も含まれる。より具体的には、構造単位がd−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、L−乳酸とD−乳酸との共重合体であるポリ(DL−乳酸)、又はこれらの混合物である。
【0024】
本発明で用いられるPLAがD−乳酸及びL−乳酸の共重合体又はD−乳酸及びL−乳酸の単独重合体の混合物である場合、D−乳酸とL−乳酸の構成は、D−乳酸/L−乳酸=0.2/99.8〜25/75又は75/25〜99.8/0.2であることが好ましく、D−乳酸/L−乳酸=0.5/99.5〜20/80又は80/20〜99.5/0.5であることがより好ましく、D−乳酸/L−乳酸=1/99〜15/85又は85/15〜99/1であることがさらに好ましい。
【0025】
D−乳酸又はL−乳酸の単独からなるPLAは、非常に高い結晶性を示し、融点が高く、耐熱性及び機械的物性に優れる傾向がある。しかしながら、熱収縮性フィルムとして使用する場合は、通常、印刷及び溶剤を用いた製袋工程が伴うため、印刷適性及び溶剤シール性を向上させるために構成材料自体の結晶性を適度に下げることが必要となる。また、結晶性が過度に高い場合、延伸時に配向結晶化が進行し、収縮特性が低下する傾向がある。これらのことより、本発明に用いられるPLAのD−乳酸とL−乳酸の構成はD−乳酸/L−乳酸=0.5/99.5〜20/80又はD−乳酸/L−乳酸=80/20〜99.5/0.5であることが好ましい。
【0026】
本発明において、PLAとして異なる共重合比を有するD−乳酸とL−乳酸との共重合体をブレンドして使用することもできる。その場合には、複数の乳酸系重合体のD−乳酸とL−乳酸の共重合比を平均した値が上記範囲内に入るように調整すればよい。使用用途に合わせて、D−乳酸とL−乳酸との共重合体比の異なるPLAを2種以上混合し、結晶性を調整することにより、耐熱性と熱収縮特性のバランスをとることができる。
【0027】
また、(I)層で用いられるPLAは、乳酸(D−乳酸、L−乳酸)と、α−ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、又は脂肪族ジカルボン酸との共重合体であってもよい。ここで、PLAに共重合される「α−ヒドロキシカルボン酸」としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸をそれぞれ指す)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒロドキシ−3−メチル酪酸、2−メチル酪酸、2−ヒドロキシカプロラクトン酸などの2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸、及びカプロラクトン、ブチルラクトン、バレロラクトンなどのラクトン類が挙げられる。また、PLAに共重合される「脂肪族ジオール」としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。また共重合される「脂肪族ジカルボン酸」としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸及びドデカン二酸などが挙げられる。
【0028】
乳酸と、α−ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、又は脂肪族ジカルボン酸との共重合体の共重合比は乳酸:α−ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール又は脂肪族ジカルボン酸=90:10〜10:90が好ましく、より好ましくは80:20〜20:80、さらに好ましくは30:70〜70:30である。共重合比が上記範囲内であれば、剛性、透明性、耐衝撃性などの物性バランスの良好なフィルムを得ることができる。
【0029】
上記PLAは、縮合重合法、開環重合法などの公知の重合法により作製することができる。例えば、縮合重合法であれば、D−乳酸、L−乳酸、又はこれらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を有するPLAを得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状2量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤などを用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合することにより任意の組成を有するPLAを得ることができる。上記ラクチドには、L−乳酸の二量体であるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、任意の組成、結晶性を有するPLAを得ることができる。さらには、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、ジエポキシ化合物、酸無水物、酸クロライドなどを使用しても構わない。
【0030】
上記(I)層で用いられるPLAの重量(質量)平均分子量は、20,000以上、好ましくは40,000以上、さらに好ましくは60,000以上であり、上限が400,000以下、好ましくは350,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。重量(質量)平均分子量が20,000以上であれば、適度な樹脂凝集力が得られ、フィルムの強伸度が不足したり、脆化したりすることを抑えることができる。一方、重量(質量)平均分子量が400,000以下であれば、溶融粘度を下げることができ、製造、生産性向上の観点からは好ましい。
【0031】
上記PLAの市販品としては、例えば、「NatureWorks」(NatureWorksLLC製)、「LACEA」(三井化学社製)などが挙げられる。
【0032】
また上記(I)層にはフィルムの耐衝撃性を向上させるために、収縮特性及びフィルムの剛性(腰強さ)を損なわない範囲内で、PLA以外の他のゴム成分を添加することが好ましい。このゴム成分は特に限定されるものではないが、PLA以外の脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステル、ジオールとジカルボン酸とPLAとの共重合体やコアシェル構造ゴム、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メチル(メタ)アクリル酸共重合体(EMMA)などを好適に使用できる。
【0033】
ゴム成分としてPLA以外の脂肪族ポリエステルを使用する場合、この脂肪族ポリエステルとしては、ポリヒロドキシカルボン酸、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合して得られる脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステルなどが挙げられる。前記ポリヒドロキシカルボン酸の構成単位であるヒドロキシカルボン酸としては、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロラクロン酸などのヒドロキシカルボン酸の単独重合体や共重合体が挙げられる。
【0034】
脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステルとしては、次に説明する脂肪族ジオール及び脂肪族ジカルボン酸の中からそれぞれ1種類又は2種類以上を選んで縮合するか、あるいは必要に応じてイソシアネート化合物などで分子量をジャンプアップして所望の高分子として得ることができる重合体を挙げることができる。ここで脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを挙げることができ、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などを挙げることができる。
【0035】
また、環状ラクトン類を開環縮合した脂肪族ポリエステルとしては、環状モノマーであるε−カプロラクトン、σ−バレロラクトン、β−メチル−σ−バレロラクトンなどの開環重合体を挙げることができる。これらの環状モノマーは一種だけでなく、複数種を選択して共重合することもできる。
【0036】
また、合成系脂肪族ポリエステルとしては、環状酸無水物とオキシラン類との共重合体、例えば、無水コハク酸とエチレンオキサイドとの共重合体、プロピオンオキサイドなどとの共重合体などを挙げることができる。
【0037】
上記PLA以外の脂肪族ポリエステルの代表的なものとしては、コハク酸と1,4−ブタンジオールとアジピン酸とを重合して得られる「ビオノーレ」(昭和高分子社製)を商業的に入手することができる。また、ε−カプロラクトンを開環縮合して得られるものとしては、「セルグリーン」(ダイセル化学工業社製)が挙げられる。
【0038】
次に、ゴム成分として芳香族−脂肪族ポリエステルを使用する場合、この芳香族−脂肪族ポリエステルとしては、脂肪族鎖の間に芳香環を導入することによって結晶性を低下させたものを挙げることができる。芳香族−脂肪族ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸と、脂肪族ジカルボン酸と、脂肪族ジオールとを縮合して得られる。
【0039】
ここで、上記芳香族ジカルボン酸としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、テレフタル酸が最も好適に用いられる。また、脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などが挙げられ、アジピン酸が最も好適に用いられる。なお、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸あるいは脂肪族ジオールは、それぞれ二種類以上を用いてもよい。
【0040】
芳香族−脂肪族ポリエステルの代表的なものとしては、テトラメチレンアジペートとテレフタレートの共重合体、ポリブチレンアジペートとテレフタレートの共重合体などが挙げられる。テトラメチレンアジペートとテレフタレートの共重合体としてEasterBio(Eastman Chemicals社製)、またポリブチレンアジペートとテレフタレートの共重合体として、Ecoflex(BASF社製)を商業的に入手することができる。
【0041】
次に、ゴム成分としてPLAとジオールとジカルボン酸との共重合体を用いる場合、その構造としてはランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられ、いずれの構造でもよい。但し、フィルムの耐衝撃性及び透明性の観点から、ブロック共重合体又はグラフト共重合体が好ましい。 ランダム共重合体の具体例としては「GS−Pla」(三菱化学社製)が挙げられ、ブロック共重合体又はグラフト共重合体の具体例としては「プラメート」(大日本インキ化学工業社製)が挙げられる。
【0042】
PLAとジオールとジカルボン酸との共重合体の製造方法は、特に限定されないがジオールとジカルボン酸とを脱水縮合した構造を持つポリエステル又はポリエーテルポリオールを、ラクチドと開環重合あるいはエステル交換反応させて得る方法が挙げられる。また、ジオールとジカルボン酸とを脱水縮合した構造を持つポリエステル又はポリエーテルポリオールを、ポリ乳酸系樹脂と脱水・脱グリコール縮合あるいはエステル交換反応させて得る方法がある。
【0043】
PLAとジオールとジカルボン酸との共重合体は、イソシアネート化合物やカルボン酸無水物を用い手所定の分子量に調整することが可能である。但し、加工性、機械的特性の観点から、重量(質量)平均分子量は50,000以上、好ましくは100,000以上であり、かつ300,000以下、好ましくは250,000以下のものが望ましい。
【0044】
次に、ゴム成分としてコアシェル構造ゴムを使用する場合、コアシェル構造ゴムとしては、例えば、(メタ)アクリル酸−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などのジエン系コアシェル型重合体、(メタ)アクリル酸−スチレン−アクリロニトリル共重合体などのアクリル系コアシェル型重合体、シリコーン−(メタ)アクリル酸−メチル(メタ)アクリル酸共重合体、シリコーン−(メタ)アクリル酸−アクリロニトリル−スチレン共重合体などのシリコーン系コアシェル型共重合体が挙げられる。この中でもポリ乳酸系樹脂との相溶性が良好であり、フィルムの耐衝撃性、透明性のバランスのとれるシリコーン−(メタ)アクリル酸−メチル(メタ)アクリル酸共重合体がより好適に用いられる。
【0045】
具体的には、「メタブレン」(三菱レイヨン社製)、「カネエース」(カネカ社製)などが商業的に入手できる。
【0046】
(I)層が上記ゴム成分を含有する場合、その添加量は(I)層の主成分として含まれるPLA系樹脂100質量部に対し、100質量部以下、好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下であることが好ましい。ゴム成分の添加量が100質量部以下であれば、フィルムの剛性、透明性を損なわず、熱収縮ラベルとして好適に使用することができ、また下限は特に限定されないが、好ましくは10質量部以上とすることが、フィルムに良好な耐衝撃性を付与する観点から望ましい。
【0047】
<(II)層>
本発明のフィルムの(II)層は、融点が90℃以上130℃以下でプロピレン単量体単位の含有率が80質量%以上99質量%以下のポリプロピレン系樹脂を主成分として構成される。
【0048】
一般のポリプロピレン樹脂を用いて熱収縮性フィルムを作製した場合、ポリプロピレン樹脂の結晶性が高いため、熱成形する際に比較的高温領域で処理する必要があった。また、一般のポリプロピレン樹脂は、低温での熱収縮性に劣るため、熱収縮性フィルムを作製した場合には比較的低温での熱収縮特性や柔軟性を得ることは困難であった。さらに、一般のポリプロピレン樹脂にPLAを含有させた場合、一般のポリプロピレン樹脂は屈折率が高く、PLAとの界面で光散乱が起こるため、フィルム全体の透明性が低下してしまうという問題があった。
【0049】
本発明のフィルムでは、上記課題を解決するために、ポリプロピレン樹脂の中から、比較的低温域で熱成形可能であり、かつPLAを含有させた場合であって、透明性が維持できるようにするために、融点90℃以上130℃以下であり、かつプロピレン単量体単位の含有率が80質量%以上99質量%以下のポリプロピレン系樹脂を用いる。
【0050】
上記ポリプロピレン系樹脂の融点は90℃以上であり、好ましくは95℃以上であり、さらに好ましくは100℃以上であり、かつ130℃以下、好ましくは125℃以下である。融点が上記範囲内であるポリプロピレン系樹脂を用いた熱収縮性フィルムであれば、低温での熱収縮特性が得られ、かつ高温収縮時に直交方向の収縮率が抑えられるため、いわゆる縦引きの発生を抑制できる。
【0051】
また上記ポリプロピレン系樹脂のプロピレン単量体単位の含有率は80質量%以上、好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、かつ99質量%以下、好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。プロピレン単量体単位の含有率が上記範囲のポリプロピレン系樹脂から得られるフィルムであれば、結晶性が低いため屈折率を下げることができ、(II)層にPLAが添加された場合においても界面での乱反射を抑えて透明性を維持でき、また適度な結晶性より得られフィルムに腰を付与できるほか、比較的低温領域での熱処理が可能となり、低温での収縮特性を付与できる。
【0052】
上記ポリプロピレン系樹脂は、さらに低温特性や常温での柔軟性を付与させる目的で、α−オレフィン、例えば、エチレン、ブテン、又はヘキセンをプロピレンと共重合させることができる。中でもエチレン−プロピレン共重合体を用いた場合、PLAを含有させた際にフィルムの透明性を維持できるため特に好ましい。
【0053】
上記ポリプロピレン系樹脂は、ホモ、ランダム、ブロックなどの構造をとり得るが、延伸性、透明性、剛性などの観点からランダム構造を有するポリプロピレン系樹脂や、メタロセン触媒を用いて得られるランダム構造を有するポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0054】
また、上記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:230℃、荷重:21.2N(2.16kg))が、0.5g/10分以上、好ましくは1.0g/10分以上であり、15g/10分以下、好ましくは10g/10分以下であることが望ましい。ポリプロピレン系樹脂のMFRは、均一な厚みのフィルムを得るためにポリ乳酸系樹脂の溶融時の粘度に類似したものを選択することができる。
【0055】
上記ポリプロピレン系樹脂の製造方法は特に限定されず、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等やラジカル開始剤を用いた塊状重合法等で製造することができる。
【0056】
市販されている上記ポリプロピレン系樹脂を例示すれば、例えば、メタロセンポリプロピレンとして「ウィンテック」(日本ポリプロ社製)や、エチレン−プロピレン共重合体として「バーシファイ」(ダウ・ケミカル社製)など挙げられる。
【0057】
本発明において、(II)層は(I)層で使用可能なPLA、さらには後述する(III)層で使用可能な接着性樹脂を含有することができる。これにより、本発明のフィルムは、(II)層へ再生添加可能であり、フィルムのリサイクル性を向上させることができる。(II)層がPLAを含有する場合、その含有量は上記(II)層の主成分として含まれるポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、PLA100質量部以下、好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下を含有させることができる。下限は特に限定されないが10質量部以上であることが好ましい。本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂は、一般のポリプロピレン系樹脂より屈折率が低いため、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対してPLAの含有量が100質量部以下とすることにより、得られる積層フィルムの透明性、剛性、耐破断性、収縮仕上がり性(低温収縮性)等を維持できる。
【0058】
一方、(II)層が(III)層で使用可能な接着性樹脂を含有する場合、その含有量は接着性樹脂の種類により上限は異なるが、目安として上記(II)層の主成分として含まれるポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、接着性樹脂8質量部以下、好ましくは6質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下を含有させることができる。下限は特に限定されないが1質量部以上であることが好ましい。前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、接着性樹脂の含有量が8質量部以下であれば、得られる積層フィルムの透明性、耐破断性、収縮仕上がり性等を維持できる。
【0059】
また、(II)層にPLAを含有させる場合、PLAの分散径を小さくし、ヘーズ値を改善することを目的として相溶化剤を添加してもよい。
【0060】
<(III)層>
本発明のフィルムを構成する(III)層は、上記(I)層と(II)層とを接着させる接着性樹脂を主成分としてなる。(III)層の主成分として含まれる接着性樹脂は、(I)層と(II)層とを接着させ得る樹脂であれば特に限定されないが、(I)層のPLAに対して反応性又は親和性を有する部位と、(II)層に含まれるポリプロピレン系樹脂と親和性を有する部位を兼ね備えた樹脂が好ましく、例えば、下記(a)、(b)及び(c)からなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合体又は樹脂を好適に用いることができる。
【0061】
(a)エチレン単量体単位と、酢酸ビニル、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エチル、メチル(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、及びメタクリル酸グリシジルからなる群から選ばれる1種の単位とからなる共重合体(以下「エチレン系共重合体」ともいう。)
(b)軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体又はこれらの水素添加誘導体
(c)変性ポリオレフィン系樹脂
【0062】
先ず(a)のエチレン系共重合体について説明する。上記エチレン系共重合体としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(EMA)、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メチル(メタ)アクリル酸共重合体(EMMA)、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸三元共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸三元共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体が挙げられる。中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(EMA)、エチレン−メチル(メタ)アクリル酸共重合体(EMMA)を好適に使用できる。
【0063】
上記エチレン系共重合体は、エチレン単量体単位の含有率が50質量%以上、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上であり、95質量%以下、好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下であることが望ましい。エチレン単量体単位の含有率が50質量%以上であれば、フィルム全体の剛性を良好に維持できるため、好ましい。一方、エチレン単量体単位の含有率が95質量%以下であれば、柔軟性を十分に維持でき、フィルムに応力が加わった場合に、(I)層と(II)層の間に生じる応力への緩衝作用が働くため、層間剥離を抑えることができる。
【0064】
上記エチレン系共重合体は、MFR(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.2N(2.16kg))が0.1g/10分以上10g/10分以下のものが好適に用いられる。MFRが0.1g/10分以上であれば、押出加工性を良好に維持でき、一方、MFRが10g/10分以下で有れば積層フィルムの厚み斑や力学強度の低下を起こしにくく、好ましい。
【0065】
上記エチレン系共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体として「EVAFLEX EV40LX」(エチレン含有率78モル%、MFR2.5g/10分)、エチレン−アクリル酸共重合体として「NUCコポリマー」 (日本ユニカー社製)、エバフレックス−EAA (三井・デュポン ポリケミカル社製)、「REXPEARL EAA」(日本エチレン社製)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体として「ELVALOY」(三井・デュポン ポリケミカル社製)、「REXPEARL EMA」(日本エチレン社製)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体として「REXPEARL EEA」(日本エチレン社製)、エチレン−メチル(メタ)アクリル酸共重合体として「アクリフト」(住友化学社製)、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸三元共重合体として「ボンダイン」(住友化学社製)、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体として「ボンドファースト」(住友化学社製)などが商業的に入手できる。
【0066】
次に、上記(b)の軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体及びその水素添加誘導体について説明する。軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体を構成する芳香族系炭化水素としては、スチレンが好適に用いられ、α−メチルスチレン等のスチレン同族体なども用いることができる。また、共役ジエン系炭化水素としては、1,3−ブタジエン、1,2−イソプレン、1,4−イソプレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらは水素添加誘導体であってもよい。これらは単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0067】
上記芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体又はその水素添加誘導体は、芳香族系炭化水素の含有率が共重合体の全質量の5質量%以上、好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、かつ50質量%以下、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である軟質な共重合体であることが望ましい。芳香族系炭化水素の含有率が5質量%以上であれば、フィルムを(II)層に再生添加した場合に、良好な相溶性が得られ、フィルムの白濁化を抑えて、透明性を維持できる。一方、芳香族系炭化水素の含有率が50質量%以下であれば、(II)層の柔軟性を低下させることなく、フィルムに応力が加わった場合に、(I)層と(II)層の間に生じる応力への緩衝作用が働くため、層間剥離を抑えることができる。
【0068】
芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体の水素添加誘導体としては、スチレン−共役ジエン系ランダム共重合体の水素添加誘導体を好ましく用いることができる。スチレン−共役ジエン系ランダム共重合体の水素添加誘導体の詳細な内容及びその製造方法については、特開平2−158643号、特開平2−305814号及び特開平3−72512号の各公報に開示されている。
【0069】
芳香族系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体は、上記例示した各々の共重合体を単独に、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0070】
芳香族系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体の市販品としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体エラストマーとして商品名「タフプレン」(旭化成ケミカルズ社製)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加誘導体として商品名「タフテックH」(旭化成ケミカルズ社製)、商品名「クレイトンG」(クレイトンジャパン社製)、スチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素添加誘導体として商品名「ダイナロン」(JSR社製)、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加誘導体として商品名「セプトン」(クラレ)、スチレン−ビニルイソプレンブロック共重合体エラストマーとして商品名「ハイブラー」(クラレ社製)等が挙げられる。
【0071】
また、上記芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体又はその水素添加誘導体は、極性基を導入することで、ポリ乳酸系樹脂を主成分とする(I)層との層間接着性を一層向上させることができる。導入する極性基としては、酸無水物基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸塩化物基、カルボン酸アミド基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸塩化物基、スルホン酸アミド基、スルホン酸塩基、エポキシ基、アミノ基、イミド基、オキサゾリン基、水酸基などが挙げられる。極性基を導入したスチレン系化合物と共役ジエンの共重合体又はその水素添加誘導体としては、無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SEPS、エポキシ変性SEBS、エポキシ変性SEPSなどが代表的に挙げられる。これらの共重合体は、各々単独に又は2種以上を混合して使用することができる。
【0072】
上記極性基を導入した芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体又はその水素添加誘導体の商品名を例示すれば、例えば、「タフテックM」(旭化成ケミカルズ社製)、「エポフレンド」(ダイセル化学社製)などが挙げられる。
【0073】
次に、上記(c)の変性ポリオレフィン樹脂について説明する。本発明において、(III)層を構成し得る変性ポリオレフィン樹脂とは、不飽和カルボン酸又はその無水物、あるいはシラン系カップリング剤で変性されたポリオレフィンを主成分とする樹脂をいう。不飽和カルボン酸又はその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸あるいはこれらの誘導体のモノエポキシ化合物と上記酸とのエステル化合物、分子内にこれらの酸と反応し得る基を有する重合体と酸との反応生成物などが挙げられる。また、これらの金属塩も使用することができる。これらの中でも、無水マレイン酸がより好ましく用いられる。また、これらの共重合体は、各々単独に、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0074】
また、シラン系カップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、メタクロイルオキシトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリアセチルオキシシランなどを挙げることができる。
【0075】
変性ポリオレフィン樹脂を製造するには、例えば、予めポリマーを重合する段階でこれらの変性モノマーを共重合させることもできるし、一旦重合したポリマーにこれらの変性モノマーをグラフト共重合させることもできる。また変性はこれらの変性モノマーを単独で又は複数を併用し、その含有率が0.1質量%以上5質量%以下の範囲のものが好適に
使用される。この中でもグラフト変性したものが好適に用いられる。
【0076】
市販されている変性ポリオレフィン系樹脂を例示すれば、例えば「アドマー」(三井化学社製)、「モディック」(三菱化学社製)などが挙げられる。
【0077】
上記(III)層は、上記(a)乃至(c)の共重合体又は樹脂を単独で、又は2種以上を混合して使用することもできる。その場合、上記(a)乃至(c)の共重合体又は樹脂の含有率は、(I)層及び(II)層を構成する樹脂に応じて適宜決定することができる。
【0078】
<フィルムの層構成>
本発明のフィルムは、(I)層と(II)層の少なくとも2層を有すれば2層構造をとることができる。さらに(I)層と(II)層以外の他の層を有していてもよく、その場合、層構成は特に限定されない。本発明のフィルムの層構成を例示すれば、例えば、(I)層/(II)層、(I)層/(III)層/(II)層、(I)層/(III)層/(II)層/(III)層/(II)層、(I)層/(III)層/(II)層/(III)層/(I)層、(II)層/(III)層/(I)層/(III)層/(II)層などの層構成が挙げられる。中でもより効果的な積層構成としては、(I)層/(III)層/(II)層/(III)層/(I)層である。この層構成を採用することにより、本発明の目的である熱収縮特性に優れ、自然収縮が小さく、再生添加時の透明性に優れ、筒状シール製袋可能な収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムを生産性、経済性よく得ることができる。
【0079】
次に、本発明の好適な実施形態の一つである(I)層/(III)層/(II)層/(III)層/(I)層の5層構成のフィルムについて説明する。
【0080】
各層の厚み比は、上述した作用効果を考慮して設定すればよく、特に限定されるものではない。(I)層のフィルム全体の厚みに対する厚み比は10%以上、好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%であり、前記厚み比の上限は70%以下、好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下である。また(II)層のフィルム全体の厚みに対する厚み比は、30%以上、好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上であり、上限は90%以下、好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下である。さらに(III)層はその機能から、0.5μm以上、好ましくは0.75μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、上限は6μm以下、好ましくは5μm以下の範囲であることが望ましい。各層の厚み比が上記範囲内であれば、優れた熱収縮特性、透明性、溶剤シール性、収縮仕上がり性を有し、かつ再生添加の可能な収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムがバランスよく得ることができる。
【0081】
本発明のフィルムの総厚みは特に限定されるものではないが、透明性、収縮加工性、原料コスト等の観点からは薄い方が好ましい。具体的には延伸後のフィルムの総厚みが100μm以下であり、好ましくは90μm以下であり、さらに好ましくは80μm以下である。また、フィルムの総厚みの下限は特に限定されないが、フィルムのハンドリング性を考慮すると、10μm以上、好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。
【0082】
<物理的・機械的特性>
本発明のフィルムの腰(常温での剛性)は、フィルムの主収縮方向と直交する方向の引張弾性率が800MPa以上であることが好ましく、1,000MPaであることがより好ましく、1,200MPa以上であることがさらに好ましい。また、通常使用される熱収縮性フィルムの引張弾性率の上限値は4,000MPa程度であり、好ましくは3,500MPa程度であり、さらに好ましは3,000MPa程度である。フィルムの主収縮方向と直交する方向の引張弾性率が800MPa以上あれば、フィルム全体としての腰(常温での剛性)を高くすることができ、特にフィルムの厚みを薄くした場合においても、ペットボトルなどの容器に製袋したフィルムをラベリングマシン等で被せる際に、斜めに被ったり、フィルムの腰折れなどで歩留まりが低下したりしやすいなどの問題点が発生し難く、好ましい。引張弾性率は、JIS K7127に準じて、温度23℃の条件で測定することができる。
【0083】
フィルムの主収縮方向と直交する方向の引張弾性率を800MPa以上とするためには、各層の樹脂組成を本発明で規定する範囲とすることが重要であるが、特に(II)層のフィルム全体の厚みに対する厚み比を10%以上とすること、(III)層の厚みを5μm以下とするとよい。
【0084】
次に、本発明のフィルムは、80℃温水中に10秒浸漬したときの熱収縮率が主収縮方向において20%以上であることが重要である。
【0085】
これは、ペットボトルの収縮ラベル用途等の比較的短時間(数秒〜十数秒程度)での収縮加工工程への適応性を判断する指標となる。例えばペットボトルの収縮ラベル用途に適用される熱収縮性フィルムに要求される必要収縮率はその形状によって様々であるが一般に20〜70%程度である。
【0086】
また、現在ペットボトルのラベル装着用途に工業的に最も多く用いられている収縮加工機としては、収縮加工を行う加熱媒体として水蒸気を用いる蒸気シュリンカーと一般に呼ばれているものである。熱収縮性フィルムは被覆対象物への熱の影響などの点からできるだけ低い温度で十分熱収縮することが必要である。さらに、近年のラベリング工程の高速化に伴い、より低温で素早く収縮する要求が高くなってきた。このような工業生産性も考慮して、上記条件における熱収縮率が20%以上のフィルムであれば、収縮加工時間内に十分に被覆対象物に密着することができるため好ましい。これらのことから、80℃の温水中に10秒浸漬したときの熱収縮率は、少なくとも一方向、通常主収縮方向に20%以上、好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上であり、上限は85%以下、好ましくは80%以下、さらに好ましくは75%以下であることが望ましい。
【0087】
本発明のフィルムは、70℃の温水中で10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が5%以上、好ましくは7%以上、さらに好ましくは10%以上であり、上限は50%以下、好ましくは45%以下、さらに好ましくは40%以下である。70℃における主収縮方向の熱収縮率を5%以上とすることにより、蒸気シュリンカーでボトル装着を行う際に、局部的に発生し得る収縮ムラを抑え、結果的にシワ、アバタ等の形成を抑えることができる。また、熱収縮率の上限を50%以下とすることにより、低温における極端な収縮を抑えることができ、例えば、夏場などの高温環境下においても自然収縮を小さく維持することができる。
【0088】
本発明のフィルムが熱収縮性ラベルとして用いられる場合、80℃の温水中で10秒間浸漬したときの直交方向の熱収縮率は5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。80℃温水中に10秒間浸漬したときの直交方向の熱収縮率が5%以下のフィルムであれば、収縮後の主収縮方向と直交する方向の寸法自体が短くなったり、収縮後の印刷柄や文字の歪み等が生じやすかったり、角型ボトルの場合においては縦ひけ等のトラブルが発生し難く、好ましい。
【0089】
本発明のフィルムにおいて、80℃温水中に10秒間浸漬した後の主収縮方向の熱収縮率を20%以上、直交方向の熱収縮率を5%以下にするためには、各層の樹脂組成を本発明で規定する範囲とすることが重要であるが、さらにフィルム全体の厚みに対する(I)層の厚み比を10%以上とすること、(III)層の厚みを5μm以下とすること、及び延伸倍率を2倍以上10倍以下、延伸温度を60℃以上130℃以下の範囲で制御することが好ましい。
【0090】
本発明のフィルムの自然収縮率はできるだけ小さい方が望ましいが、一般的に熱収縮性フィルムの自然収縮率は、例えば、30℃50%RHで30日保存後の自然収縮率が3.0%未満であることが重要であり、好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。上記条件下における自然収縮率が3.0%未満であれば作製したフィルムを長期保存する場合であっても容器等に安定して装着することができ、実用上問題を生じにくい。上記フィルムの自然収縮率を調整する手段としては、各層の樹脂組成を本発明で規定する範囲とすることが重要であるが、特に(I)層のフィルム全体の厚みに対する厚み比を10%以上とすることが好ましい。
【0091】
本発明のフィルムの透明性は、例えば、厚み50μmのフィルムをJIS K7105に準拠して測定した場合、フィルムのヘーズ値は10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。フィルムのヘーズ値が15%以下であれば、フィルムの透明性が得られ、ディスプレー効果を奏することができる。
【0092】
また、本発明のフィルムは、(II)層が(I)層で使用したPLA又は(I)層で使用したPLA及び(III)層で使用した接着性樹脂を含有する場合においても、厚み50μmのフィルムをJIS K7105に準拠して測定した場合におけるフィルムのヘーズ値が10%以下、好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下である。(II)層にPLA又はPLA及び接着性樹脂を含有した際のフィルムのヘーズ値が10%以下であれば、(II)層に再生添加した場合においても良好な透明性を維持することができる。これにより、本発明のフィルムは、フィルムの製造工程において発生したフィルム両端部(耳)等を原料として再利用でき、かつ得られたフィルムにおける透明性を良好に維持することができる。再生添加後のフィルムのヘーズ値は、再生添加時の添加量を増減させることによりヘーズ値を調整することができる。例えば、(II)層へのPLAの添加量を10質量部以上100質量部以下、及び接着性樹脂の添加量を1質量部以上8質量部以下の範囲に調整することによりフィルムのヘーズ値を10%以下にすることができる。
【0093】
本発明のフィルムの耐衝撃性は、引張破断伸度により評価され、雰囲気温度0℃、引張速度100mm/分での引張試験において、直交方向、特にラベル用途ではフィルムの引き取り(流れ)方向(MD)の引張破断伸度が100%以上、好ましくは150%以上、さらに好ましくは200%以上ある。0℃環境下での引張破断伸度が100%以上あれば印刷・製袋などの工程時にフィルムが破断するなどの不具合を生じにくくなり、好ましい。また、印刷・製袋などの工程のスピードアップにともなってフィルムに対してかかる張力が増加するような際にも、引張破断伸度が100%以上あれば破断しづらく、好ましい。一方、直交方向の引張破断伸度の上限は特に制限はないが500%程度であることが好ましい。
【0094】
また、本発明のフィルムの製袋時における溶剤シール強度は、後述する実施例で記載された測定方法を用いて2N/15mm幅以上、好ましくは4N/15mm幅以上、より好ましくは6N/15mm幅以上である。ここでの溶剤シール強度とは、後述するセンターシールによりフィルムを筒状に製袋した際の、シール部の剥離強度値を指す。フィルム表面同士がシール溶剤に十分に膨潤しなかった場合や、(II)層と(I)層の層間接着力が乏しい場合、十分なシール強度が確保できない。本発明のフィルムは、表裏層として(I)層を積層することで有機溶剤によりフィルム表面が十分に膨潤し、製袋工程の際にフィルム表面同士がしっかりと接着されるため、使用時にシール部分が剥がれてしまう等のトラブルが生じることもない。
【0095】
本発明の溶剤シール強度を前記範囲にするためには、樹脂組成を本発明で記載するように調整することが重要であり、より具体的な調整方法としては、(I)層を構成するPLAのD−乳酸とL−乳酸との共重合比を調整して結晶性を下げる、層間剥離によるシール強度低下を防ぐための接着層を設ける等の方法が挙げられる。
【0096】
本発明のフィルムは、公知の方法によって製造することができる。フィルムの形態としては平面状、チューブ状の何れであってもよいが、生産性(原反フィルムの幅方向に製品として数丁取りが可能)や内面に印刷が可能という点から平面状が好ましい。平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、複数の押出機を用いて樹脂を溶融し、Tダイから共押出し、チルドロールで冷却固化し、縦方向にロール延伸をし、横方向にテンター延伸をし、アニールし、冷却し、(印刷が施される場合にはその面にコロナ放電処理をして、巻取機にて巻き取ることによりフィルムを得る方法が例示できる。また、チューブラー法により製造したフィルムを切り開いて平面状とする方法も適用できる。また、本発明のフィルムでは、(I)層と(II)層(及び(III)層)とが積層されてなることが重要であるが、積層方法としてはマルチマニフォード式の口金を用いて共押出する方法や、フィードブロックを用いて共押出する方法などを用いることができる。得られた積層未延伸ロールは、熱風、温風、紫外線、炭酸ガスレーザー、マイクロウェーブ等の方法で再加熱され、ロール法、テンター法、チューブラー法等により、少なくとも1軸方向または2軸方向に延伸処理が施される。
【0097】
延伸倍率は、用いる樹脂の特性、延伸手段、延伸温度、目的の製品形態等に応じて、熱収縮性ラベル用等、主として一方向に収縮させる用途では主収縮方向に相当する方向が1.5倍以上、好ましくは3.0倍以上、さらに好ましくは4.0倍以上であり、かつ10倍以下、好ましくは8.0倍以下、さらに好ましくは7.0倍以下であることが望ましい。また直交方向は、1倍以上(1倍とは延伸していな場合を指す)、好ましくは1.01倍以上、さらに好ましくは1.1倍以上であり、かつ2倍以下、好ましくは1.8倍以下、さらに好ましくは1.5倍以下の、実質的には一軸延伸の範疇にある倍率比を選定することが望ましい。上記範囲内の延伸倍率で延伸した二軸延伸フィルムは、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が大きくなりすぎることはなく、例えば、収縮ラベルとして用いる場合、容器に装着するとき容器の高さ方向にもフィルムが熱収縮する、いわゆる縦引け現象を抑えることができるため好ましい。
【0098】
延伸温度は、用いる樹脂のガラス転移温度や熱収縮性フィルムに要求される特性によって変える必要があるが、概ね50℃以上、好ましくは60℃以上であり、上限が130℃以下、好ましくは110℃以下の範囲で制御される。次いで、延伸したフィルムは、必要に応じて、自然収縮率の低減や熱収縮特性の改良等を目的として、50℃以上100℃以下程度の温度で熱処理や弛緩処理を行った後、分子配向が緩和しない時間内に速やかに冷却され、熱収縮性フィルムとなる。
【0099】
また本発明のフィルムは、必要に応じてコロナ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面処理や表面加工、さらには、各種溶剤やヒートシールによる製袋加工やミシン目加工などを施すことができる。
【0100】
本発明のフィルムは、各層のいずれか一層又は二層以上に対して、上述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、成形加工性、生産性及び熱収縮性フィルムの諸物性を改良・調整する目的で、フィルムの耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤などの添加剤を適宜添加できる。
【0101】
本発明のフィルムは、被包装物によってフラット状から円筒状等に加工して包装に供される。ペットボトル等の円筒状の容器で印刷を要するものの場合、まずロールに巻き取られた広幅のフラットフィルムの一面に必要な画像を印刷し、そしてこれを必要な幅にカットしつつ印刷面が内側になるように折り畳んでセンターシール(シール部の形状はいわゆる封筒貼り)して円筒状とすれば良い。センターシール方法としては、有機溶剤による接着方法、ヒートシールによる方法、接着剤による方法、インパルスシーラーによる方法が考えられる。この中でも、生産性、見栄えの観点から有機溶剤による接着方法が好適に使用される。
【0102】
[成形品、熱収縮性ラベル及び容器]
本発明のフィルムは、フィルムの低温収縮性、収縮仕上がり性、透明性、自然収縮等に優れているため、その用途が特に制限されるものではないが、必要に応じて印刷層、蒸着層その他機能層を形成することにより、ボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等の様々な成形品として用いることができる。特に本発明のフィルムを食品容器(例えば清涼飲料水用又は食品用のPETボトル、ガラス瓶、好ましくはPETボトル)用熱収縮性ラベルとして用いる場合、複雑な形状(例えば、中心がくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱など)であっても該形状に密着可能であり、シワやアバタ等のない美麗なラベルが装着された容器が得られる。本発明の成形品及び容器は、通常の成形法を用いることにより作製することができる。
【0103】
本発明のフィルムは、優れた低温収縮性、収縮仕上がり性を有するため、高温に加熱すると変形を生じるようなプラスチック成形品の熱収縮性ラベル素材のほか、熱膨張率や吸水性等が本発明の熱収縮性フィルムとは極めて異なる材質、例えば金属、磁器、ガラス、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種を構成素材として用いた包装体(容器)の熱収縮性ラベル素材として好適に利用できる。
【0104】
本発明のフィルムが利用できるプラスチック包装体を構成する材質としては、上記の樹脂の他、ポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、(メタ)アクリル酸−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。これらのプラスチック包装体は2種以上の樹脂類の混合物でも、積層体であってもよい。
【実施例】
【0105】
以下に本発明について、実施例を用いて詳細に説明する。実施例では、フィルムの引き取り(流れ)方向をMD、その直角方向をTDと記載する。
【0106】
(1)融点
使用したポリプロピレン系樹脂の融点を示差走査熱量測定(DSC)装置(Pyris1 DSC(パーキンエルマー社製))を用いて、−40℃から200℃までの温度範囲、昇温速度10℃/分で昇温して融解ピークを測定して融点を求めた。
【0107】
(2)プロピレン単量体単位の含有率
使用したポリプロピレン系樹脂に含まれるプロピレン単量体単位の含有率をNMRにより測定した。
【0108】
(3)貯蔵弾性率
得られたフィルムを縦4mm、横60mmに切り出し、粘弾性スペクトロメーターDVA−200を用い、振動周波数10Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、チャック間2.5cmで、−150℃から150℃までの範囲で縦方向の動的粘弾性を測定した。貯蔵弾性率としては20℃における貯蔵弾性率を示した。
【0109】
(4)熱収縮率
得られたフィルムを縦100mm、横100mmに切り出し、70℃及び80℃の温水バスに10秒間浸漬し、その収縮量を測定した。熱収縮率は、縦方向及び横方向について、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
【0110】
(5)ヘーズ
JIS K7105に準拠してフィルム厚み50μmでフィルムのヘーズ値を測定した。
【0111】
(6)低温引張破断伸度
JIS K7127に準拠してフィルムの引張破断伸度を測定した。
【0112】
(7)収縮仕上がり性
10mm間隔の格子目を印刷したフィルムを縦100mm×横298mmの大きさに切り取り、横方向のフィルム両端を10mm重ねてTHF溶剤で接着し、円筒状フィルムを作製した。この円筒状フィルムを、容量1.5Lの円筒型ペットボトルに装着し、蒸気加熱方式の長さ3.2m(3ゾーン)の収縮トンネル中を回転させずに、約4秒間で通過させた。各ゾーンでのトンネル内の雰囲気温度は蒸気バルブで調整し、70℃から85℃までの範囲とした。フィルム被覆後は下記基準で判断した。
◎:収縮が十分でシワ、アバタ、格子目の歪みが生じない。
○:収縮が十分であるが、所々シワ、アバタ、または格子目の歪みが生じている。
×:収縮が十分であるが、シワ、アバタ、格子目の歪みが顕著に生じる、または収縮が十分でなく、ボトルへの被覆が不十分である。
【0113】
[実施例1]
表1に示すように、(I)層を構成するPLAとして、Nature Works4060(NatureWorksLLC社製、L−乳酸/D−乳酸=88/12、以下「PLA1」と略称する。)50質量部と、Nature Works4050(NatureWorksLLC社製、L−乳酸/D−乳酸=95/5、以下「PLA2」と略称する。)40質量部、ゴム状成分として、メタブレンS2001(三菱レイヨン社製、シリコーン−アクリルコアシェル構造ゴム、以下「ゴム成分1」と略称する。)10質量部からなる樹脂組成物を用い、(II)層を構成するポリプロピレン系樹脂として、ウィンテックWFX6(日本ポリプロ社製、融点125℃、PP含有率97.6質量%、MFR2.0g/10分、以下「PP1」と略称する。)をそれぞれ用いた。
各樹脂をそれぞれ別個の三菱重工業株式会社製単軸押出機に投入し、設定温度220℃で溶融混合後、各層の厚みが(I)層/(II)層/(I)層=30μm/190μm/30μmとなるように2種3層ダイスで共押出し、50℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて幅220mm、厚さ250μmの2種3層の未延伸積層シートを得た。次いで、フィルムテンター(京都機械株式会社製)によって、予熱温度70℃、延伸温度65℃で5.0倍に横一軸延伸後、65℃で熱処理を行い、冷風で急冷して、厚さ50μmの熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0114】
[実施例2]
表1に示すように、(I)層を構成するPLAとしてPLA1を45質量部、PLA2を 45質量部、ゴム状成分としてゴム成分1を10質量部含む混合樹脂を用い、(II)層を構成するポリプロピレン系樹脂として、バーシファイ2300(ダウ・ケミカル社製、融点93℃、PP含有率:90質量%、MFR1.6g/10分以下「PP2」という。)を使用し、フィルムテンターの予熱温度を80℃、延伸温度を75℃で横一軸方向に5.0倍に延伸後、熱処理温度を80℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0115】
[実施例3]
表1に示すように、(I)層を構成する樹脂としてPLA1を54質量部、PLA2を36質量部、ゴム状成分としてゴム成分1を10質量部含む混合樹脂を用い、(II)層を構成する樹脂としてPP1を80質量部、PLA1を20質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0116】
[実施例4]
表1に示すように(I)層を構成する樹脂としてPLA1を50質量部、PLA2を 40 質量部、ゴム状成分としてゴム成分1を10質量部含む混合樹脂を用い、(II)層を構成する樹脂としてPP1を100質量部含むPP系樹脂を用い、(III)層を構成する樹脂として、クラレ(株)社製スチレン系熱可塑性樹脂 商品名「ハイブラー 7125」(スチレン含有率20質量%)、以下「TPS」と略称する。)を導入し、それぞれの樹脂を別個の三菱重工業株式会社製単軸押出機に投入し、設定温度200℃で溶融混合後、各層の厚みが(I)層/(III)層/(II)層/(III)層/(I)層=30μm/5μm/180 μm/5μm/30μmとなるよう3種5層ダイスより共押出し、50℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて幅220mm、厚さ250μmの未延伸積層シートを得た。次いで、京都機械株式会社製フィルムテンターにて、予熱温度70℃、延伸温度65℃で横一軸方向に5.0倍に延伸後、65℃にて熱処理を行い、厚さ50μmの熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0117】
[比較例1]
表1に示すように、(I)層を構成する樹脂として、PLA1を50質量部、PLA2を40質量部、ゴム状成分として、ゴム成分1を10質量部混合した樹脂組成物を用い、(II)層を構成するポリプロピレン系樹脂として、ノーブレンFH3315(住友化学株式会社製、融点:144℃、PP含有率:96%、MFR3.0g/10分、以下「PP3」という。)を用いた。
各層の厚みが(I)層/(II)層/(I)層=30μm/190μm/30μmとなるように2種3層ダイスで共押出し、50℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて幅220mm、厚さ250μmの2種3層の未延伸積層シートを得た。それ以外は実施例1と同様に実施して熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果は表1に示す。
【0118】
[比較例2]
(II)層を構成するPP系樹脂について、PP3を80質量部、PLA1を20質量部からなる樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に実施して熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果は表1に示す。
【0119】
[比較例3]
表1に示すように(I)層を構成する樹脂としてPLA1を50質量部、PLA2を40質量部、ゴム状成分としてゴム成分1を10質量部含む混合樹脂を用い、(II)層を構成する樹脂としてPP3を80質量部、PLA1を20質量部含むPP系樹脂を用い、(III)層を構成する樹脂として、「TPS」を導入し、それぞれの樹脂を別個の三菱重工業株式会社製単軸押出機に投入し、設定温度200℃で溶融混合後、各層の厚みが(I)層/(III)層/(II)層/(III)層/(I)層=30μm/5μm/180μm/5μm/30μmとなるよう3種5層ダイスより共押出し、50℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて幅220mm、厚さ200μmの未延伸積層シートを得た。
得られたフィルムは実施例1と同様に実施して熱収縮性フィルムを得た。評価した結果は表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
表1より本発明で規定される範囲の熱収縮性フィルムは、70℃と80℃の収縮率が良好であり、かつ透明性と収縮仕上がりも良好であった。これに対し、(II)層に融点が高いPOを使用した場合(比較例1)には良好な収縮仕上がり性が得られなかった。また融点が高いPOと共にPLAが含まれる場合(比較例2及び3)には透明性が劣っていた。
これより本発明のフィルムは、低温収縮性、透明性及び収縮仕上がり性に優れ、かつ(II)層へ再生添加した場合にも良好な透明性を維持できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
優れた熱収縮特性、透明性、収縮仕上がり性を有するため、熱収縮性を必要とする包装等の成形品、特にシュリンクラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムを提供することができる。また、PLA系樹脂は植物由来であるため、バイオマス利用を促進する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)層と(II)層との少なくとも2層からなる積層フィルムを少なくとも一方向に延伸してなる熱収縮性フィルムであって、各層が下記樹脂を主成分としてなり、80℃の温水中で10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率が20%以上であることを特徴とする熱収縮性積層フィルム。
(I)層:ポリ乳酸系樹脂
(II)層:融点が90℃以上130℃以下でプロピレン単量体単位の含有率が80質量%以上99質量%以下のポリプロピレン系樹脂
【請求項2】
(II)層が前記ポリプロピレン樹脂100質量部に対して3質量部以上30質量部以下のポリ乳酸系樹脂を含有する層である請求項1に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項3】
前記ポリ乳酸系樹脂が、D−乳酸及びL−乳酸の共重合体からなる樹脂であって、D−乳酸とL−乳酸の構成が、D−乳酸/L−乳酸=0.2/99.8〜25/75、又は75/25〜99.8/0.2である請求項1又は2に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項4】
(I)層と(II)層との間に、少なくとも一層の接着性樹脂を主成分とする(III)層を有する請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項5】
JIS K7105に準拠したヘーズ値が10%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項6】
雰囲気温度0℃、引張速度100mm/分の条件下で測定される主収縮方向に直交する方向の引張破断伸度が100%以上500%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた成形品。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベル。
【請求項9】
請求項7に記載の成形品又は請求項7に記載の熱収縮性ラベルを装着した容器。

【公開番号】特開2008−44364(P2008−44364A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187689(P2007−187689)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】