説明

熱可塑性樹脂製品および選択的な電気メッキにより複合製品を製造する方法

本発明は、スチレンを主成分とする熱可塑性エラストマを含むとともにポリオレフィンを含む第2の熱可塑性樹脂に粘着接合する第1の極性のエンジニアリング熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂製品に関する。選択的に電気メッキするととともに、硬い樹脂部分および柔らかい樹脂部分を用い、かつ柔らかい樹脂部分を製造するためにスチレンを主成分とするエラストマおよびポリオレフィンから成る熱可塑性樹脂を用いる複合製品の製造する方法もまた記載されている。また、この方法は、a)前記複合製品のための射出金型を作り出す段階、b)前記複合製品を射出成形する段階、およびc)前記複合製品を選択的に電気メッキする段階を備えている。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景および発明の概要】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂製品(熱可塑性プラスチック製品)に関する。また、本発明は、硬い樹脂部分(硬いプラスチック部分)および柔らかい樹脂部分(柔らかいプラスチック部分)からなり選択的に電気メッキされた複合製品を製造する方法に関する。
【0002】
ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂)、ABS/PC(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂/ポリカーボネート)、PC(ポリカーボネート)およびPMMA(ポリメチルメタクリレート)といった熱可塑性エンジニアリングプラスチック(エンジニアリング熱可塑性樹脂)における良好な粘着接合性(cohesive bonding)が、SEBS(ポリスチレンポリ(エチレン/ブチレン)ポリスチレン)をTPE−E(熱可塑性ポリエステルエラストマ)あるいはTPU(熱可塑性ポリウレタン)のような極性熱可塑性エラストマと組み合わせることによって得られることは公知である。そのような種類の製品は、例えば米国特許第5,149,589号に記載されている。
【0003】
SEBS/PP(ポリスチレンポリ(エチレン/ブチレン)ポリスチレン/ポリプロピレン)を主成分とする熱可塑性エラストマが、ポリプロピレンあるいはポリオレフィンのようなポリオレフィン系の物質と顕著な粘着接合性を呈することは知られている。この組成物の透明材料もまた公知である。
【0004】
Kunststoffeの2005年1月号,34〜36ページには、PC、PMMAおよびMABS(メタクリル酸メチルアクリロニトリル/ブタジエンスチレンコポリマー)に対する接合が、Styroflex(登録商標)の商標名で販売されているSSB(部分不飽和スチレン/ブタジエンブロックコポリマー)を主成分とする材料によって可能となる効果に関する報告が含まれている。この材料のショアA硬度は85である。これは、多くの絶縁用途においては硬すぎると考えられ、かつ、二重結合の存在によって多くの屋外用途に用いることができない
【0005】
従来技術には、一般的に以下の欠点がある。
− ショアA硬度で70以下のショア硬度に加えて良好な耐候性を具備しつつ、アモルファスエンジニアリング熱可塑性樹脂に対して優れた粘着接合性を呈する、透明な高分子化合物を製造することができない。
− TPE−EまたはTPUによるSEBSの改質、並びに、酸変性SEBSあるいは改質PP(ポリプロピレン)を用いた溶化は高価でありかつ困難である。ある種の成分では、多相構造はスプルーゲートの領域における層間剥離に帰着する。
− 加水分解を受けやすいTPE−EまたはTPUといった極性熱可塑性エラストマとブレンドされるので、前もって乾燥させなければならない。
− 関連技術によって接合性を改良した材料は、70℃より上の温度において絶縁材料として用いることができない。
【0006】
本発明の目的は、関連技術のこれらの欠点を解決することにある。
【0007】
驚くべきことに、この目的は、スチレンを主成分とする熱可塑性エラストマおよびポリオレフィンを含む第2の熱可塑性樹脂(熱可塑性物質)に対する粘着接合性を有した第1の極性エンジニアリング熱可塑性樹脂(極性エンジニアリング熱可塑性物質)を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂製品によって、解決されることが判明した。
【0008】
この物質の好ましい実施の形態において、スチレンを主成分とする熱可塑性エラストマの結晶部分は、そのエラストマの重量の20パーセントを上回らない。
【0009】
その結果、ABS、ABS/PC、PCあるいはPMMAといった極性エンジニアリング熱可塑性樹脂(極性エンジニアリング熱可塑性物質)と、ポリオレフィンと組み合わせたスチレンエラストマを主成分とする無極熱可塑性エラストマと、の間に、粘着接合を生じさせることができる。
【0010】
スチレンを主成分とする熱可塑性エラストマにおける低結晶度留分は、適切な、高分子量の側鎖を有するSEBSのグループの商業的に入手可能なスチレンエラストマを選択することによって、達成され得る。適切な商品は、例えばKraton(登録商標)MID 6932、Kratone(登録商標)MID 6924、あるいはKraton(登録商標)RP 6945である。
【0011】
これに関連する他のオプションは、その分子構造に起因してアモルファス軟質セグメントを有するSEPS(ポリスチレンポリ(エチレン/プロピレン)ポリスチレン)の選択である。そのような製品は、Septon(登録商標)の商品名で商業的に販売されている。
【0012】
さらに、Kraton(登録商標)G1851のような標準的なSEBSタイプ、あるいはSepton(登録商標)4055の商品名で販売されているSEEPS(ポリスチレンポリ(エチレン/エチレン/プロピレン)ポリスチレン)の軟質セグメントの結晶化は、商品名Engage(登録商標)の商品名で販売されているアルファオレフィンあるいはRextac(登録商標)の商品名で販売されているアタクチックポリプロピレンによって、防止され得る。
【0013】
ホモポリマーあるいはコポリマーのグループから選択される他のポリオレフィン、特にPPおよびPE(ポリエチレン)は、最高70%の量で第2の熱可塑性樹脂(熱可塑性物質)に添加することができる。
【0014】
加えて、無水マレイン酸で改質したポリオレフィン、あるいはOrevac(登録商標) CA 100またはKraton(登録商標)FG 1901の商品名で販売されている特殊なスチレンエラストマを、第2の熱可塑性樹脂(熱可塑性物質)に添加することができる。
【0015】
パラフィンあるいはエンジニアリング油のグループの軟化剤もまた、第2の熱可塑性樹脂(熱可塑性物質)に最高60重量%の量で添加することができる。
【0016】
第2の熱可塑性樹脂(熱可塑性物質)は、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、金属酸化物、水酸化物またはケイ酸といった通常の市販の充填剤および/または補強剤を、最高80重量%の量で含有することができる。
【0017】
抗酸化剤、光安定剤、潤滑剤または着色剤のような標準的な添加物もまた添加することができる。
【0018】
さらに本発明は、選択的に電気メッキが施された複合製品の製造方法に関連する。
【0019】
これまでは、標準的な市販の熱可塑性エラストマ(TPE)が柔らかい部分を構成しているときには、硬い部分と柔らかい部分の複合製品を選択的に電気メッキすることはできなかった。
【0020】
したがって、関連技術においては、装飾のために部分的に電気メッキを施した部分、あるいは、装飾のために電気メッキを施した多要素部分を製造するために、2つの基本的に異なる方法が用いられてきた。
【0021】
第1の方法では、硬い樹脂成形品を射出成形し、電気メッキを施し、かつ、TPEを押出コーティングする。この方法は、例えば、電気カミソリのサイドパネルを製造するために用いられている。
【0022】
この方法の短所は、工具およびプロセスが全体的に極めて精密な公差を必要とするため、高価であるということにある。さらに、この方法に関連する不合格率は、ほんの僅かいうわけではない。さらに、電気メッキは、他のファクタの中でもとりわけ電気メッキの治具上の位置によってその層の厚みが決定される、隙間に依存したプロセスである。このプロセスに固有な層の厚みの変動は、高度なプロセス誘導および監視システムによって制御されなければならない。
【0023】
また、様々なプロセス段階の多くに部分に手動による介入が必要であることも短所と考えられる。
【0024】
また、電気メッキを施した部分と柔らかい樹脂製品との間に能動的な係止接合だけが生成され、それらの間に不透過性が生成されないこともまた不利である。そのようなシールが必要な場合は、より複雑な設備構造および追加のシーリング剤によってのみ製造することがきる。
【0025】
第2の方法は、第1の方法において説明したようなプロセス段階の数を減少させることができるとともに設備構造を単純化することができるように、より複雑な部品設計を考慮に入れたものである。したがって、部品には、電気メッキされない樹脂から成形される複雑なシールストリップを設けなければならない。これは、電気メッキを施した層がツールを閉じたときに損傷することを防止するために必要である。
【0026】
この場合の短所は、より大きな投資を伴う3色射出成形される部分を必要とすることにある。
【0027】
本発明の意図はまた、関連技術の不都合を解決する、硬い樹脂部分(硬いプラスチック部分)および柔らかい樹脂部分(柔らかいプラスチック部分)から選択的に電気メッキした複合製品を製造する方法を提案することにある。
【0028】
驚くべきことに、このことは、選択的に電気メッキを用いて硬い樹脂部分および柔らかい樹脂部分から複合製品を製造する方法によって実現される。このとき、この方法は、スチレンを主成分とするエラストマおよびポリオレフィンを含有する熱可塑性樹脂(熱可塑性物質)を用いて柔らかい樹脂部分を製造するとともに、
a)複合製品のための射出成形金型を製作する工程と、
b)複合製品を射出成形する工程と、
c)複合製品に選択的に電気メッキを施す工程と、を備えることを特徴とする。
【0029】
本発明の好ましい実施の形態においては、射出成形および電気メッキの後に付加的なプロセス工程として合格検査段階を実行する。柔らかい樹脂部分を製造するために、スチレンベースのエラストマおよびポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂(熱可塑性物質)を用いることにより、以下の方法の実施が可能となる。本発明の方法に特有な利点を強調するために、上述した第1の方法と対比する。
【0030】
「本発明の方法」
複合製品のための射出金型の製作

複合製品の射出成形

複合製品の不合格品の検査

複合製品の選択的な電気メッキ

電気メッキを施された複合製品の不合格品の検査
【0031】
「従来技術の方法」
硬い樹脂成形品のための射出金型の製作

柔らかい樹脂成形品のための射出金型の製作

硬い樹脂成形品の射出成形

硬い樹脂成形品の不合格品の検査

硬い樹脂成形品の電気メッキ

電気メッキを施した硬い樹脂成形品の不合格品の検査

キャビティ内への硬い樹脂成形品の挿入

柔らかい樹脂成形品の射出成形

電気メッキを施した複合製品の不合格品の検査
【0032】
関連技術よりいくつかの段階の分が短いこととは別に、本発明の方法は、個々のパーツを粘着接合によって機械的に結合しないという更なる利点を有している。これには、一方ではいくつかの硬い樹脂部分が含まれ、かつ、他方ではいくつかの柔らかい樹脂部分が含まれる。
【0033】
本発明においては、エラストマおよびポリオレフィンから製造される熱可塑性樹脂(熱可塑性物質)を用いるが、これらの熱可塑性樹脂が3価クロム硫酸に対して耐性を示すので、硬い樹脂部分に電気メッキを施すことができる。
【0034】
複合製品はこのように製造することができるが、その後、標準的なプロセスと非常に類似するプロセスで電気メッキを施す。
【0035】
スチレンベースのエラストマおよびポリオレフィンから製造される熱可塑性樹脂(熱可塑性物質)は、60%以上の側鎖留分を含むポリスチレンポリ(エチレン/ブチレン)ポリスチレン(SEBS)とすることができる。これは、熱可塑性樹脂(熱可塑性物質)の軟質セグメント内における高いアモルファス留分に帰着する。そのような種類の熱可塑性樹脂(熱可塑性物質)は、Kraton(登録商標)MID 6932、Kraton(登録商標)RP 6924、あるいはSepton(登録商標)2063の商品名で販売されているものとポリプロピレンとの組み合わせである。
【0036】
柔らかい樹脂部分(柔らかいプラスチック部分)を製造するために、通常の軟化剤および充填剤を熱可塑性樹脂(熱可塑性物質)に加えることができる。
【0037】
柔らかい樹脂部分(柔らかいプラスチック部分)を製造するために用いるスチレンを主成分とするエラストマの熱可塑性樹脂(熱可塑性物質)の結晶質留分は、好ましくは、このエラストマの20重量%を超えることはない。
【0038】
硬い樹脂には、好ましくは、極性アモルファスエンジニアリング熱可塑性樹脂(極性アモルファスエンジニアリング熱可塑性物質)が用いられる。これらのうち、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)またはABSの混合物が特に適している。これらは、電気メッキを受けやすい。
【0039】
ABSに最も適しためっき法は、3価クロム硫酸による古典的な方法、並びに、イオンおよびコロイドによる方法である。
【0040】
樹脂の金属被覆については、Handbuch Kunststoff-Metallisierung「樹脂金属被覆マニュアル」、Leuzo Verlag、Saulgau/Wurttemberg、1991を参照されたい。
【0041】
本発明のさらに好ましい実施の形態において、この方法は、硬い樹脂部分(硬いプラスチック部分)が、スチレンを主成分とするエラストマおよびポリオレフィンから製造された熱可塑性樹脂(熱可塑性物質)でオーバーモールドされることを特徴とする。
【0042】
さらにもう一つの好ましい方法は、スチレンを主成分とするエラストマおよびポリオレフィンの熱可塑性樹脂(熱可塑性物質)が、金属効果スパングルで着色されることを特徴とする。
【0043】
他の好ましい実施の形態において、この方法は、硬い樹脂部分(硬いプラスチック部分)に印刷が付加されることを特徴とする。
【0044】
本発明の方法で製造される複合製品の用途の領域は、例えば、ひげ剃り、メッキ治具プロテクタ、包装、または小瓶である。
【0045】
硬い樹脂部分(硬いプラスチック部分)および柔らかい樹脂部分(柔らかいプラスチック部分)の透明度はまた、特別な光の効果と組み合わせてデザイナーに可能な幅(可能な範囲)をもたらすことができる。
【0046】
電気メッキを施すことができる硬い樹脂部分(硬いプラスチック部分)を着色するとともに、電気メッキを施することができない柔らかい樹脂部分(柔らかいプラスチック部分)をそれにオーバーモールドすることにより、特に印象的な効果を達成することができる。したがって、下地の色は、透明な柔らかい材料が付加されている領域においてのみ視認することができる。
【0047】
透明な柔らかい樹脂部分(柔らかいプラスチック部分)を金属効果スパングルで着色するとともに、深さの効果を与えるために着色された下地を有し、あるいはオーバーモールドされる領域部分を例えば印刷によって装飾することにより、特別な効果を創り出すことができる。
【0048】
このプロセスにおいては、電気メッキ槽内において表面の線を覆うように柔らかい樹脂部分(柔らかいプラスチック部分)の幾何学的形状を設計することにより、モールド成形した部分の表面が金属被覆を有しないようにし、それによってさらなる色彩効果が生じるようにすることもまた可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の方法により複合製品として製造される歯ブラシを示す図。
【図2】装飾的な複合製品の平面図。
【図3】図2の装飾的な複合製品の側面図。
【図4】スクリューキャップあるいは蓋の斜視図。
【図5】図4のスクリューキャップあるいは蓋の側面図。
【図6】スイッチまたはディスプレイの側面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下の文章においては、多くの実施例を参照しつつ、本発明の熱可塑性樹脂製品についてより詳細に説明する。
【実施例】
【0051】
実施例1
60%以上の側鎖留分を含む30.3重量%のSEBS (Kraton(登録商標)RP 6924)、24.2重量%のパラフィンホワイト油(Primol 382)、3.0重量%のホモポリマーポリプロピレン(Borealis HID 120 MO)、18.2重量%のコポリマーポリプロピレン(Hifax(登録商標)CA 60A)、および、24.3重量パーセントの炭化カルシウム(Calcilit 6G)から、通常の方法で高分子化合物を製造した。
【0052】
実施例2
60%以上の側鎖留分を含む84.7重量%のSEBS(Kraton(登録商標)MID 6932)、および、15.3重量%のPP−MAH(ポリプロピレンマレイン酸無水物)(Orevac (登録商標)CA 100)から、通常の方法で高分子化合物を製造した。
【0053】
実施例3
66.7重量%のSEPS(Septon (登録商標)2063)、16.7重量%のコポリマーポリプロピレン(Hifax (登録商標)CA 60A)、および、16.6重量%のアタクチックポリプロピレン(Rextac (登録商標)APAO 3585)から、通常の方法で高分子化合物を製造した。
【0054】
比較実施例1
19.2重量%のSEBS(Kraton (登録商標)G1654)、5.8重量%のSEBS−MAH(Kraton(登録商標)FG 1901)、23.1重量%のパラフィンホワイト油(Primol 382)、32.7重量%のTPE−E(Hytrel 4068)、および、19.2重量%の炭化カルシウム(Calcilit 6G)から通常の方法で高分子化合物を製造した。
【0055】
比較実施例2
100パーセントのS−SBS(Styroflex(登録商標)2G 66)を用いた。
【0056】
実施例および比較実施例の高分子化合物は、一対のスクリュー混合押出機(Berstorff ZE 50A)で均質化させるとともに、Klockner-Ferromatik F 110射出成形機で2部品の複合体を製造した。このため、150mm×100mm×2mmの寸法のABSディスク(Polylac 717)の表面を、実施例の混合物で2mmオーバーモールドした。次いで、全ての例の混合物の剥離力を、幅200mmのストリップ、90度の剥離角、および、Zwick 1445引張強さ材料試験機上において100mm/分の試験速度で比較する試験を行った。
【0057】
剥離力の平均値は、各混合物の硬度と共に以下の表に示されている。
【表1】

【0058】
本発明による熱可塑性樹脂製品は、関連技術の相当製品よりかなり強い材料ベースの粘着接合性を呈した。その結果、本発明の熱可塑性樹脂製品は、例えば水性媒体に対するシールとして用いることができる。
【0059】
本発明による熱可塑性樹脂製品は、関連技術に対し透明にできるという更なる利点を有しており、それによって例えばデザイナーに対して未知の可能性を提供することができる。
【0060】
本発明の熱可塑性樹脂製品の他の重要な利点は、ショアA硬度で50以下のショア硬度でも良好な粘着接合性を提供することにある。
【0061】
選択的に電気メッキした複合製品を製造するための本発明の方法およびその利点について、図面を参照しつつ以下により詳しく説明する。
【0062】
図1は、本発明の方法により複合製品として製造される歯ブラシ1を示している。
【0063】
歯ブラシ1は、ハンドルとブラシヘッドを有している。これらの2つのユニットは、ブラシネックによって接続されている。それらは共に硬い樹脂部分3’を代表している。硬い樹脂部分3’は透明でも着色されていてもよい。
【0064】
ハンドルは、電気メッキ層5’で包まれている。
【0065】
このハンドルは、絶縁材としての役割をする柔らかい樹脂部分4’により、外見的にブラシネックから切り離されている。2色射出成形を適用すると、3つの部品からなる外観が与えられる。
【0066】
図2は、装飾的な複合製品6の平面図を示している。
【0067】
押印または浮出模様7は、硬い樹脂部分3''としての着色された支持部を具備した装飾部分6に付加されている。押印または浮出模様7は、透明な柔らかい樹脂部分4”でオーバーモールドされる。
【0068】
硬い樹脂部分3”のうちオーバーモールドされない領域は、電気メッキ層5”で覆われている。
【0069】
図3は、図2の装飾的な複合製品6の側面図を示している。
【0070】
図4は、スクリューキャップあるいは蓋8の斜視図を示している。
【0071】
この場合、環状の柔らかい樹脂部分4'''は、スクリューキャップあるいは蓋8の略中央部分を囲んでいる。柔らかい樹脂部分4'''は着色されあるいは透明で絶縁効果を有している。硬い樹脂部分3'''は、基部としての役割を果たし、かつ着色されている。電気メッキ層5'''は、環状の柔らかい樹脂部分4'''によって占められている領域を除いて、硬い樹脂部分3'''に付加されている。
【0072】
スクリューキャップあるいは蓋8は、3部品の品物の外観を有して2色射出成形された製品である。
【0073】
図5は、図4のスクリューキャップあるいは蓋8の側面図を示している。
【0074】
ねじ山9は、選択肢として示されている。
【0075】
図6は、スイッチまたはディスプレイ10の側面図を示している。
【0076】
この場合、硬い樹脂部分3''''は、透明な支持材料としての役割をしている。この部分の上側および下側の中央部分は透明で柔らかい樹脂部分4''''でオーバーモールドされている。硬い樹脂部分3''''の残りの部分の表面は電気メッキ層5''''で覆われている。
【0077】
照明手段2は、スイッチまたはディスプレイ10の下方に配置されている。硬い樹脂部分3''''および柔らかい樹脂部分4''''の両方が透明であることは、このスイッチあるいはディスプレイ10の上側に特に印象的な光学的効果を作り出すことを可能としている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンを主成分とする熱可塑性エラストマおよびポリオレフィンを含む第2の熱可塑性樹脂に対する粘着接合性を有した第1の極性エンジニアリング熱可塑性樹脂を含む
ことを特徴とする熱可塑性樹脂製品。
【請求項2】
前記スチレンを主成分とする熱可塑性エラストマの結晶部分が、このエラストマの20重量%を上回らない
ことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂製品。
【請求項3】
前記第2の熱可塑性樹脂は、その側鎖が60パーセント以上の留分を有するSEBSを含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載した熱可塑性樹脂製品。
【請求項4】
前記第2の熱可塑性樹脂は、アモルファス軟質セグメントを有したSEPSを含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載した熱可塑性樹脂製品。
【請求項5】
前記第2の熱可塑性樹脂は、アタクチックポリプロピレンおよび/またはアルファオレフィンを含む
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載した熱可塑性樹脂製品。
【請求項6】
前記第2の熱可塑性樹脂は、ホモポリマーまたはコポリマーの群から選択されるポリオレフィンを含む
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載した熱可塑性樹脂製品。
【請求項7】
前記ポリオレフィンは、ポリエチレンまたはポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーである
ことを特徴とする請求項6に記載した熱可塑性樹脂製品。
【請求項8】
前記第2の熱可塑性樹脂は、酸変性ポリプロピレンまたは酸変性スチレンを主成分とする熱可塑性エラストマを含む
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載した熱可塑性樹脂製品。
【請求項9】
前記第2の熱可塑性樹脂は、パラフィンまたはエンジニアリング油のグループから選択される軟化剤を、前記第2の熱可塑性樹脂の重量の最高で60%の量で含む
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載した熱可塑性樹脂製品。
【請求項10】
前記第2の熱可塑性樹脂は、充填剤および/または補強剤を含む
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載した熱可塑性樹脂製品。
【請求項11】
前記第2の熱可塑性樹脂は、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、金属酸化物、金属水酸化物、または、ケイ酸を、前記第2の熱可塑性樹脂の重量の最高で80パーセントの量で含む
ことを特徴とする請求項10に記載した熱可塑性樹脂製品。
【請求項12】
前記第2の熱可塑性樹脂は、抗酸化剤、光安定剤、潤滑剤、または、着色剤を含む
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載した熱可塑性樹脂製品。
【請求項13】
前記第1の熱可塑性樹脂がアモルファス熱可塑性樹脂である
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載した熱可塑性樹脂製品。
【請求項14】
射出成形、押出成形、あるいは、カレンダー加工が可能である
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載した熱可塑性樹脂製品。
【請求項15】
硬い樹脂部分および柔らかい樹脂部分からなり選択的に電気メッキした複合製品を製造する方法であって、
前記柔らかい樹脂部分を製造するために、スチレンを主成分とするエラストマおよびポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂が用いられ、
前記方法が、
a)前記複合製品のための射出金型を作る工程と、
b)前記複合製品を射出成形する工程と、
c)前記複合製品を選択的に電気メッキする工程と、を備える
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記射出成形および前記電気メッキの工程の後に、不合格品の検査が追加のプロセス工程として実行される
ことを特徴とする請求項15に記載した方法。
【請求項17】
前記硬い樹脂部分が、スチレンを主成分とするエラストマおよびポリオレフィンから製造される熱可塑性樹脂でオーバーモールドされる
ことを特徴とする請求項15または16に記載した方法。
【請求項18】
前記スチレンを主成分とするエラストマおよびポリオレフィンから製造される前記熱可塑性樹脂が、金属効果スパングルで着色される
ことを特徴とする請求項15乃至17のいずれかに記載した方法。
【請求項19】
前記硬い樹脂部分に印刷が施される
ことを特徴とする請求項15乃至18のいずれかに記載した方法。
【請求項20】
極性アモルファスエンジニアリング熱可塑性樹脂が、前記硬い樹脂部分として用いられる
ことを特徴とする請求項15乃至19のいずれかに記載した方法。
【請求項21】
アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂が、前記硬い樹脂部分として用いられる
ことを特徴とする請求項20に記載した方法。
【請求項22】
前記スチレンベースのエラストマから製造される熱可塑性樹脂は、前記エラストマの20重量%を上回らない結晶部分を有する
ことを特徴とする請求項15乃至21のいずれかに記載した方法。
【請求項23】
前記柔らかい樹脂部分を製造するために、60%以上の側鎖留分を含むポリスチレンポリ(エチレン/ブチレン)ポリスチレンが用いられる
ことを特徴とする請求項15乃至22のいずれかに記載した方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−500423(P2010−500423A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523183(P2009−523183)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006874
【国際公開番号】WO2008/017423
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(591027846)ブラウン、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Braun GmbH
【Fターム(参考)】