説明

熱回収システムを有するエンジン装置および熱回収方法

【課題】単純および効率的なやり方で熱を回収することが可能なエンジン装置を提供する。
【解決手段】内燃エンジンと、前記エンジンに機械的力を供給するのに適した、前記エンジンから排気ガスの排気ライン(1)上に配置された第1の復熱タービン(2、2’)と、作動流体、排気ガスから前記作動流体へと熱を伝達するのに適した前記第1のタービンの排気ライン下流に配置された熱交換器(8)および前記作動流体によって動かされるのに適した第2のタービン(9、9’)からなる閉回路(6)からなる熱回収システムと、からなり、前記第2のタービンは、前記エンジンに機械的力を供給するのに適していることを特徴とするターボが組み込まれたエンジン装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボが組み込まれた内燃エンジン、特には自動車のための内燃エンジンに関する。より詳しくは、熱回収システムが設けられた産業車両のための内燃エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンにおいて、特には、重車両のための大きなディーゼルエンジンにおいては、エンジンからの排気ガスの熱エネルギーは排気ラインに配置されているタービンによって回収される。タービンは、過給のための吸気ラインに配置されたコンプレッサを駆動するのに利用されることが可能である。ターボが組み込まれたエンジンにおいて、通常は過給器の下流側に配置されているタービンは、駆動シャフトを通してエンジンに機械的力を適切な伝達および減衰システムによって供給するのであり、該機械的力はタービンの回転速度が通常、適切な出力を得るために、エンジンの回転速度(毎分数万回転)よりも高いことによって得られている。この方法によってエンジンの性能は向上し、また汚染物質に関しても改善されている。
【0003】
しかしながら、熱エネルギーは完全には回収されない。ガスが周辺に排出される処理システムにおける圧力までガスを膨張させても、まだガスはある程度の余熱(300℃−500℃程度の温度)を有している。この熱を回収するために、変換器において閉回路に属している流体へと熱が移動するシステムが利用されており、該システムは発電器において通常利用される力を回収するように流体が膨張させられる第2のタービンに装備されている。そうすることで、流体は適切な熱交換手段で再循環する。もし流体が液化可能であるならば、熱交換器は蒸発器である。これらのシステムは既知のものであり、さらなる記載を必要としない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気エネルギーを生み出すために第2のタービンを使用することで、システムの全体寸法および複雑さが増大するという問題が生じる。エンジン装置においてすでに存在する構造を利用することで、単純および効率的なやり方で熱を回収することを可能とすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、本発明にしたがう、内燃エンジンと、前記エンジンに機械的力を供給するのに適した、前記エンジンから排気ガスの排気ライン(1)上に配置された第1の復熱タービン(2、2’)と、作動流体、排気ガスから前記作動流体へと熱を伝達するのに適した前記第1のタービンの排気ライン下流に配置された熱交換器(8)および前記作動流体によって動かされるのに適した第2のタービン(9、9’)からなる閉回路(6)からなる熱回収システムと、からなり、前記第2のタービンは、前記エンジンに機械的力を供給するのに適していることを特徴とするターボが組み込まれたエンジン装置、特にはモーター推進のためのエンジン装置によって解決される。
【0006】
さらに、本発明は、ターボが組み込まれたエンジン装置の内燃エンジンから排気ガスの熱を回収する方法であって、力を前記エンジンに伝達するのに適した第1の復熱タービンによって排気ガスを運ぶ工程と、前記第1の復熱タービンから運ばれたガスから閉回路の作動流体へと熱を伝達する工程と、前記作動流体によって第2のタービンを動かす工程と、前記第2のタービンから前記エンジンへ機械的力を伝達する工程と、からなることを特徴とする。
【0007】
従属請求項は、本発明の特別な目的の実施形態に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1に示されているのは、内燃エンジン(不図示)からなるターボが組み込まれたエンジン装置の一部である。排気ライン1は前記エンジンから排気ガスを適切に除去することができる。前記排気ガスライン上に配置されている第1の復熱タービン2は、排気ガスによって作動し、そして特別な減衰および伝達手段を通して、駆動シャフト3に機械的力を適切に供給することが可能である。ここで前記減衰および伝達手段は、例えば、適切な減衰比となるように組となったギア4および5からなっている。また、そこには通常、例えば油圧による結合手段が設けられており、それはエンジンの振動がタービンに伝達されるのを防ぐのに適しており、例えば油圧結合部7またはフォイトカップリング(Voith coupling)といったものであり、いずれにせよ、それは運動が直接的に機械的接触によって伝達されるのではなくオイルの流れによって伝達されるシステムである。もしエンジンが過給されるとき、本発明の好ましい実施形態にしたがうと、第1の復熱タービンはターボチャージャーのタービンの下流に配置される。
【0009】
また、エンジン装置は閉回路6を有しており、該閉回路はそこを循環するのに適した作動流体を有している。第1の復熱タービンの排気ガスライン下流に配置された熱交換器8において、熱は排気ガスから作動流体へと移動する。もし作動流体が適切なタイプのもの(例えば、フロン)であるなら、熱交換器8は蒸発器であってよい。作動流体は第2のタービン9において膨張させられ、それから、冷却器10において例えば外部環境へと移動するのであり、該冷却器は本発明の可能な実施形態にしたがえばラジエータであってよい。構造相転移する作動流体の上記場合において、凝固は冷却器10において実行される。ポンプなどの循環手段11は、流体が循環して再圧縮されることが可能なように設けられている。前記循環手段は既存の方法、例えば第2のタービン、エンジンまたは特別な電気モーターによって駆動されてよい。熱回収のための閉回路は、既存の方法でここに記載の特徴を有するように作ることが可能であり、さらなる説明を必要としない。
【0010】
従来技術とは異なり、第2のタービンはエンジンへと例えば駆動シャフト3および運動を伝達するための様々な手段を通して機械的力を伝達することが可能であり、その伝達手段の一部は第1の復熱タービンからエンジンへと力を伝達するためにすでに利用されているものでもよい。図1に示されている好ましい実施形態にしたがうと、ギア12は結合部7に連結されたギア5と組にされることが可能であり、また第1の復熱タービンのギア4と組にされることも可能である。この配置は、エンジンとそれぞれのタービンの間の最適な減衰比を実現する。一般的に、第2のタービンは第1の復熱タービンよりも小さく、好ましくは最適な出力を得るために第1の復熱タービンより速い速度で動作する。
【0011】
しかし、運動伝達のための他の配置も可能である。図2には別の配置が示されており、それは第2のタービン9’が第1の復熱タービン2’と同じ速度で回転する場合に適している。この場合、2つのタービンは同じシャフト12に結合されている。
【0012】
本発明にしたがうことによって、第2のタービンの力は第1の復熱タービンと同じ伝達および減衰システムの大部分を利用することによって引き出されることが可能であり、特別な発電器を必要とすることがなく、したがってシステムをよりコンパクトおよび安価にすることができる。
【0013】
また、本発明は、上記のエンジン装置を備える自動車にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にしたがうエンジン装置の概略的な部分図である。
【図2】本発明の別の実施形態にしたがうエンジン装置の概略的な部分図である。
【符号の説明】
【0015】
1 排気ライン
2、2’ 第1の復熱タービン
3 駆動シャフト
4 ギア
5 ギア
6 閉回路
7 結合部
8 熱交換器
9、9’ 第2のタービン
10 冷却器
11 循環手段
12 ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボが組み込まれたエンジン装置であって、
内燃エンジンと、
前記エンジンに機械的力を供給するのに適した、前記エンジンからの排気ガスの排気ライン(1)上に配置された第1の復熱タービン(2、2’)と、
作動流体、排気ガスから前記作動流体へと熱を伝達するのに適した前記第1のタービンの排気ライン下流に配置された熱交換器(8)および前記作動流体によって動かされるのに適した第2のタービン(9、9’)からなる閉回路(6)からなる熱回収システムと、
からなり、前記第2のタービンは、前記エンジンに機械的力を供給するのに適していることを特徴とするエンジン装置。
【請求項2】
前記第1の復熱タービンは、ターボチャージャーのタービンの下流にあることを特徴とする請求項1に記載のエンジン装置。
【請求項3】
前記第2のタービンおよび第1の復熱タービンは、同じ油圧結合部によってエンジンと連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン装置。
【請求項4】
前記第2のタービン(9)および第1の復熱タービン(2)は、異なる減衰比を有する伝達および減衰手段(4、5、12)によってエンジンと連結されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエンジン装置。
【請求項5】
前記第2のタービン(9’)および第1の復熱タービン(2’)は、同じシャフト(12)に結合されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエンジン装置。
【請求項6】
前記第2のタービンおよび第1の復熱タービンは、ギアによってエンジンに結合されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のエンジン装置。
【請求項7】
ディーゼルエンジンであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のエンジン装置。
【請求項8】
ターボが組み込まれたエンジン装置の内燃エンジンから排気ガスの熱を回収する方法であって、
力を前記エンジンに伝達するのに適した第1の復熱タービンによって排気ガスを運ぶ工程と、
前記第1の復熱タービンから運ばれたガスから閉回路の作動流体へと熱を伝達する工程と、
前記作動流体によって第2のタービンを動かす工程と、
前記第2のタービンから前記エンジンへ機械的力を伝達する工程と、
からなることを特徴とする内燃エンジンから排気ガスの熱を回収する方法。
【請求項9】
請求項7に記載のエンジン装置が装備されていることを特徴とする自動車。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−106747(P2008−106747A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270838(P2007−270838)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(507304915)イフェコ モトーレンフォアシュンク アクチェンゲゼルシャフト (10)
【Fターム(参考)】